第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、いかなる経営環境の変化にも対応できる企業体質を確立することを重要課題と認識し、競争力ある事業の育成を通じて、持続的かつグローバルに発展することを経営の基本方針としております。

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
 

(1)経営環境及び対処すべき課題

① 当社グループの現状認識について

  当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルスの影響により大幅に悪化した経済活動の回復が進んでいます。建設機械業界においては、昨年度後半から急回復した需要は引き続き好調が見込まれます。また、自動車業界においては、半導体をはじめとする部品供給不足が続くと予想されるものの、国内及び海外の需要は回復が進んでいます。一方で、原材料・エネルギー価格等の高騰と円安影響による生産コストの増加に加え、中国におけるロックダウンやロシア・ウクライナ情勢等もあり、先行き不透明感が増しています。

こうした状況の中、当社グループでは、全社的なコスト構造改革及び財務体質強化などの取り組みを行って まいりました。課題となっていた海外事業の収益性改善については、北米ばね子会社(MSSC)の損益が大幅に悪化しています。一方、インドネシア特殊鋼子会社(PT.JATIM TAMAN STEEL MFG.)は、2020年度下期より黒字転換を達成し、成長局面へと移行しています。また、国内においては希望退職者の募集をはじめとした固定費削減を行い、損益分岐点を引き下げることで事業環境に左右されずに利益を確保できる事業体質への変革を行っております。

 足元では、原料炭・スクラップ・合金鉄及びエネルギー価格等の高騰や急激な円安に伴う原材料コスト増加への対応と、マージン回復が大きな課題となっています。収益確保に向けて、販売価格の改善に引き続き注力してまいります。また、北米拠点において、半導体をはじめとする部品不足や新型コロナウイルスの影響が続く中、主要需要先である自動車メーカーの急激な生産変動や材料調達の不安定化等による、生産混乱が発生しています。現在、安定在庫の確保や三菱製鋼室蘭特殊鋼㈱を含めた複社購買による材料調達体制の構築等の各種施策を進めており、2022年度下期中での解消を見込んでおります。

 なお当社は、本年4月の東証市場再編に際しプライム市場へ移行しておりますが、上場維持基準の適合判定時においては、流通株式時価総額の項目が基準未達でありました。足元の株価水準では基準を満たしているものの、さらなる業績の改善に加え、中長期的な企業価値向上に向けて、各種取り組みを推進してまいります。

 

②  中長期的な企業価値の向上

 当社グループは、中長期的な企業価値向上を目指し、サステナビリティに関する取り組みを強化しております。

2021年11月には、サステナビリティに関する基本方針を定めるとともに、当社グループの持続的な成長を担保するための施策を協議・立案することを目的として、「サステナビリティ委員会」を新設しました。また、サステナビリティ委員会の下部組織として、従来の「地球環境委員会」に加え、「カーボンニュートラル委員会」と「ESG分科会」を新設、当社のサステナビリティ推進に向けて、全社横断的に対応できるマネジメント体制にしております。

なお、サステナビリティ委員会の議論の内容については、適宜取締役会にも報告・審議する体制としており、2021年度では「カーボンニュートラルの取り組み」や「人権の取り組み」について、報告・審議を行っております。

 


 

  [(E)環境への取り組み]

 カーボンニュートラルに向けた取り組みとして、CO2排出量削減目標とカーボンニュートラルに向けたロードマップを公表しております。

 

                     [CO2削減目標]

2030年度までに、2013年度比
 
  鋼材部門:(事業拡大のため)原単位で10%削減
その他の部門:総排出量50%削減
オフィス部門:カーボンニュートラル
           ↓
     2050年カーボンニュートラル実現

 

 

      (カーボンニュートラルに向けたロードマップ)

 


 

また 、各事業部においてお客様のニーズを集めて以下のコンセプトで製品開発を行う等、当社製品を通じた環境負荷低減にも取り組んでおります。

 

・特殊鋼鋼材事業: お客様の工場のエネルギー消費削減に貢献する製品開発

・ばね事業      : EV社会に向けて自動車部品の更なる軽量化への対応

・素形材事業    : 省エネに役立つ金属素材の開発

・機器装置事業  : 再生エネルギー・資源循環ビジネス関連機器への取り組み

 


                     軽量化ばねの開発    熱処理時間を大幅に短縮する鋼材の開発

                             (建設機械向け大型歯車)

 

 

[(S)社会への取り組み ]

 従業員の人材育成と働き方改革及びダイバーシティに取り組んでおります。新人事処遇制度の導入を行い、社員ひとり一人の働き甲斐やモチベーションの向上を図るとともに、特に女性が働きやすい職場環境づくりや制度面の整備を進める等、多様な人材の活躍を目指した取り組みを進めております。


 また、DX推進室を設置し、DX活用による業務の付加価値化や、業務スタイルの変換も進めてまいります。

 

    [(G)ガバナンスへの取り組み ]

2021年度には、コーポレート・ガバナンス体制の基盤整備を行い、経営の客観性・透明性を確保すべく、新体制へと移行しました。今後もさらなる企業価値の向上に向け、コーポレート・ガバナンスの一層の充実を図ってまいります。

・取締役の任期短縮(2年→1年)
・社外取締役による牽制機能の強化(取締役会における社外取締役比率1/3以上)
・ガバナンス委員会の指名報酬機能強化
・執行役員制度への移行
・政策保有株式の売却(純資産比率 15%→4%)
・SR活動の取り組み強化(社外役員の参加等)

 

 

③ 中長期的な経営戦略

    当社は、2020年5月に、2020年度~2022年度の3ヵ年を対象とする「2020中期経営計画」を公表いたしました。

 初年度である2020年度は赤字海外事業の構造改革に注力し、海外子会社の収益性改善を進めるとともに、希望退 職を含む固定費削減により、損益分岐点の引き下げを行いました。その結果、2021年度では3期ぶりの最終利益黒字化を達成しました。また、中期経営計画で掲げた3大方針については、北米MSSCの再建を除き、概ね計画通り進捗しております。

 最終年度となる2022年度では、北米MSSCの損益改善を徹底的に進めるとともに、さらなる企業価値の向上に向けて、次期中期経営計画の策定を進めてまいります。

 

2020中期経営計画」の概要は以下のとおりです。

a.「2020中期経営計画」スローガン

   素材から製品まで一貫したモノづくりでお客様に付加価値を提供する

 

b.目指す姿

  ・グループ総合力の発揮による利益率の向上と収益安定化を図る

  ・お客様のニーズの半歩先行く製品を開発し、新たな価値として提供する

 

c.3大方針

    ◆海外事業の構造改革<海外拠点の早期収益力アップが急務>

     ・インドネシアJATIMの黒字化と北米MSSCの早期止血・立て直し

     ・海外事業・拠点の統廃合の実施

    ◆製品力のさらなる強化<顧客ニーズの半歩先を行く製品>

     ・お客様の声をスピーディに汲み上げ、製品に反映する総合力の強化

     ・メリハリをつけた技術開発項目見直しによる開発スピードアップ

    ◆素材から一貫生産ビジネスモデルの拡大

 ・三菱製鋼室蘭特殊鋼(株)の鋼材を用いた軽量化ばねや、JATIM材を用いた板ばねの一貫生産ビジネスモデル

   を、建設機械用ばねやスタビライザ等に展開し、当社の素材から一貫生産の強みを発揮する

 ・単品的な製品ラインナップに留まっていた素形材製品を、その上下流含めた一貫生産ビジネスモデルとし

   て強化する

 

 

 d.重要経営指標(KPI

       2022年度目標

       ・売上高1,500億円

       ・営業利益70億円

       ・ROE 8%以上

 

(2)各事業における重点施策

 [特殊鋼鋼材事業]

新型コロナウイルスや半導体不足の動向に加えて、ロシア・ウクライナ問題等、先行きが不透明な中、原料 炭・スクラップ・合金鉄など資材価格やエネルギー価格高騰への対応とマージン回復が大きな課題であり、収益確保に向けて、販売価格の改善に引き続き注力してまいります。

また、インドネシアのPT.JATIM TAMAN STEEL MFG.については、操業安定化に向けた設備投資や取り組みが進み、業績への効果が現れてきました。今後は国内事業同様、原材料や資材価格の高騰に対応する、価格転嫁の時期ズレ短縮に引き続き注力してまいります。

 

[ばね事業]

国内では、軽量化・性能向上を軸に製品力強化を継続するとともに、マザー工場として海外子会社のモノづくり力強化を進めてまいりました。その結果、国内・海外各拠点において、提案強化による新規受注が順調に増加しております。今後も継続して製品力強化を推進することで、さらなる拡大を進めてまいります。

海外では、課題である北米拠点の黒字化について、再建計画として、カナダ工場への生産移管を進めてまいりました。また原材料価格上昇への対応として、市況変動に対する売価反映指標の一致は完了いたしました。材料価格が高止まりする中、需給ひっ迫によるベース価格上昇や購入部品代高騰が続いておりますが、これに対しては販売価格への反映を進めてまいります。また足元では、世界的な半導体をはじめとする部品の需給ひっ迫が続く中、自動車メーカーの急激な生産変動や材料調達が不安定となったことから、新型コロナウイルス感染拡大や、豪雪・トラック運転手デモによる物流影響等も重なったことにより、生産混乱が発生しています。これに対しては、アメリカ工場一時再稼働による安定在庫の確保と、自社を含めた複社購買による材料調達体制の構築の推進等により、受注変動に対応できる体制を整え、 2022年度下期中の解消に向けて、取り組みを進めてまいります。

 

[素形材事業]

特殊合金粉末及び精密鋳造品の新規拡販推進に加え、千葉製作所内に新設した千葉AMC(アドバンスト・マテリアルズ・センター)については、先端材料や将来テーマに向けた新製品等の開発を全社レベルで推進する組織体制とするため、事業部から分離し、その機能を技術開発センターに統合しました。これにより、精密鋳造試作ライン、VIM(真空誘導溶解炉)、ガスアトマイズ粉末量産設備を用いた各種研究開発を加速してまいります。また、広田製作所に新設した金属微粉末製造用の水アトマイズ試作ラインも最大限に活用し、「製品力の向上」「新技術の開発」「モノづくり力の強化」を推進し、国内外拠点の支援強化を図ってまいります。

 

[機器装置事業]

三菱長崎機工()では、既存事業における製品力強化による受注確保とコア技術を生かした新たな事業基盤の再構築を進め、お客様の多様なニーズへ対応する総合エンジニアリングメーカーとして持続的成長を目指してまいります。特に、今後需要が高まると見られる洋上風力関連設備等を中心に、新たな事業機会を追及してまいります。

また、三菱製鋼グループ内の連携を強化し、製品コスト削減と輸出の拡大を進めてまいります。

 

(3)来期の見込みと配当

当社グループの主要な取引先である建設機械業界においては、需要は引き続き好調に推移すると見込まれます。また自動車業界においては、半導体をはじめとする部品供給不足が少なくとも上期中は続くと予想されるものの、需要の回復が進んでいます。一方で、原材料・エネルギー価格等の高騰と円安影響に加え、中国におけるロックダウンやロシア・ウクライナ情勢等もあり、先行き不透明感が増しています。
 こうした状況のなか、当社グループの2023年3月期の通期業績見通しについて、売上高は、原材料価格高騰分の価格転嫁が進むことに加え、自動車需要の回復が進むことから、増収を見込んでいます。
 営業利益は、ばね事業において、売上数量の回復に加え、北米における材料メーカーの破綻に伴う輸送コストの解消により、損失が減少するものの、特殊鋼鋼材事業において、さらなる原材料価格上昇に値上げが追い付かず減益となり、全体としても減益となる見込みです。
 以上のことを踏まえ、2023年3月期の業績予想は連結売上高1,700億円、連結営業利益45億円、連結経常利益31億円、親会社株主に帰属する当期純利益27億円を見込んでおります。

 


 

(4)中期経営計画の進捗

■海外拠点の収益性改善
    ◇競争力のある製品開発で拡販が進捗、人員整理を伴う固定費の削減を断行。
  ◇2021年度は、北米MSSCとドイツを除く海外子会社が黒字化。
  ◇北米MSSCの再建達成が最大の課題。


■インドネシアJATIM社


 

◇インドネシアJATIM社再建計画進捗

・再建計画の施策に基づき生産性改善に注力、2020年に従来受注量で営業赤字解消まで改善。

・2021年はコロナ禍の影響で一時的な操業低下もあったが、旺盛な需要に支えられ、黒字化を達成。

・現調化支援及び品質が評価され、トヨタインドネシア様より“Excellent in Local Material Development”賞を受賞。

・なお、2022年度は、スクラップの一段高に加え副資材・エネルギーの急騰もあり、それらの売価反映を進める。

・今後は、財務体質強化や室蘭との2本柱化に向けて次の一手を検討するステージへ。

 

■北米MSSC(アメリカ・カナダ工場)

 

 

今中計は、JATIMと北米MSSCの

再建なくして完了とは言えない。
       ⇓
今期は北米MSSCの改善を徹底的に
進める。

 

 

 


 

 

 ◇北米MSSC再建計画進捗

 ・カナダへの生産移管による生産性改善が途上の中、第3四半期以降に受注急増・急な発注変更及び材料供給

  不足が重なり、生産混乱となったことで損益が大幅に悪化。
   ・また、期を通じて原材料価格が高騰(材料指標の統一は完了も、材料ベース価格や購入部品等が高騰)
  <生産混乱への対策>
   ・US工場の一時再稼働による製品在庫の積み増しや、調達先追加(自社材を含む)による材料調達の安定化に

   より、受注変動耐性を高めて安定操業を図る。
   ・また、設備故障の対策(保守強化)を行っているが、投資を行ってでも故障率を引き下げる。
  <材料高騰への対策>
   ・材料高騰の影響は、市況変動、ベース価格、購入部品代に分けられる。
   ・市況変動の売価反映指標の一致は完了。材料価格が高止まりする中、需給ひっ迫によるベース価格上昇や購

   入部品代高騰の売価転嫁も進める。

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

[経営環境に関するリスク]

(1)製品需要の変動

当社グループの製造する特殊鋼鋼材は、国内外の需要分野の需給や市況等、需要分野の動向によって数量、価格とも影響を受けます。また、中国の粗鋼生産膨張や新興国の増産が世界の鋼材価格の引き下げ要因となり、当社グループの生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社の主要製品の多くは、主に自動車・建設機械業界に納入されており、日本、北米、中国、アジアを含む当社グループの主要市場における、同業界の景気後退及び需要の縮小は、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症につきましては、ワクチン普及により徐々に経済活動の正常化が進むことが期待されますが、先行きについては依然として不透明な状況にあります。変異種の流行による感染の再拡大などにより需要が縮小する場合には、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。当社といたしましては、素材となる特殊鋼から製品までを一貫して製造するメーカーであることを強みとし、顧客のニーズに対応した製品に対応してまいります。

 

(2)原材料・副資材・エネルギー価格の上昇

当社グループの主要製品は、鉄鉱石、石炭を使用して生産される溶鋼及び合金鉄を主要原料としており、これ らを外部調達しております。また、電極・耐火物等の副資材につきましても同様であり、さらには電力・ガス等のエネルギーを消費しております。これらの主要原料及び副資材等の価格上昇分につきましては売価転嫁に努めておりますが、市況の高騰分を売価転嫁できなかった場合には、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。原材料価格が急騰しているため、売価の改善に強く取り組んでまいります。

 

(3)海外拠点及び周辺国におけるリスク

当社グループは、北米・欧州・中国・東南アジア等に海外事業拠点を有しております。当該国及び周辺国における政治・経済・社会的混乱(戦争・内乱・紛争・暴動・テロを含む。)や法的規制等、更には国際的な貿易規制や関税の変更、国家・経済圏間における貿易協定に起因する影響を受けるリスクがあり、これらの影響を受けた場合には、業績に影響が生じる可能性があります。

貿易規制や関税の変更等に対しては、適切な対応を行うとともに、各拠点の原材料調達構造改革を進めることで影響の軽減に努めております。

 

(4)外国為替相場の変動

当社グループは、原材料等の輸入及び製品等の輸出において外貨建取引を行っております。また、当社グループの外貨建取引及び連結財務諸表作成のための海外子会社の財務諸表数値は、外貨から円貨への換算において、為替相場変動の影響を受けることとなります。ヘッジ契約等の対応をしておりますが、為替相場変動のリスクを完全に排除することは困難であり、変動影響を大きく受けた場合には、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(5)金融市場の変動や資金調達環境の変化

当社グループは、事業活動に必要な資金を金融機関からの借入により調達しており、金利情勢、その他の金融市場の変動が業績等に影響を与える可能性があります。また、健全な財務体質の維持に努めておりますが、景気の後退や金融市場が悪化した場合や、当社グループの信用低下等により必要な資金を必要な時期に適切な条件で調達できない場合には、資金調達コストが増加することにより、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

[事業戦略・計画の遂行に関するリスク]

(6)中期経営計画の未達

 当社グループは2020年5月に「2020中期経営計画」を策定、公表いたしました。策定当時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定されておりますが、こうした情報や分析等には不確定要素が含まれており、事業環境の悪化その他の要因により、期待される成果の実現に至らない可能性があります。

 当計画では「海外事業の構造改革」「製品力のさらなる強化」「素材から一貫生産ビジネスモデルの拡大」を3大方針とする各種施策を実施し、これまでに北米MSSC社の再建を除き、概ね計画通りに進捗しております。当計画最終年度の2022年度営業利益目標70億円に対し、原材料価格やエネルギー価格等の上昇、ロシアのウクライナ侵攻の影響、コロナ禍再拡大による中国都市部のロックダウン、急激な為替変動等といった市場環境の変化もあり、営業利益45億円と見通しておりますが、厳しい事業環境の変化への対策を積み上げてまいります。

 特に北米MSSC社は数年前より営業損失が続いており、2021年度においても、半導体等の部品供給不足の影響等に加え、自動車メーカーの急激な生産変動や一部材料メーカーからの供給不足等に伴う生産混乱により、営業損失を計上し、減損の兆候が見られます。安定在庫の確保や三菱製鋼室蘭特殊鋼㈱を含めた複社購買による材料調達体制の構築等、各種施策を進め、再建に向け取り組みを行っておりますが、再建計画の進捗に遅れが生じた場合に、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(7)設備投資、コスト改善の取り組み

当社グループは、持続的成長に向けた設備投資を計画しておりますが、様々な外部要因や内部要因等により、新たな設備が計画通りに立ち上がらず効果が十分に発揮されない場合や、コストを計画通り改善することができない場合、固定資産の減損損失の計上等により、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

設備投資については、「2020中期経営計画」の重点施策の1つである「モノづくり向上」を通じて、国内のマザー機能を強化し、事後解決型から問題の未然防止型の体制へシフトすることで、投資効果を確実に回収してまいります。また投融資委員会を設け、中立的立場から妥当性やリスクを精査する体制を整えております。同委員会の意見をもとに、重要案件は経営会議もしくは取締役会でも審議するとともに、その進捗や立ち上げ後の改善効果の計画対比についても適宜フォローしていくことで、損失の発生を未然に防いでまいります。

 

(8)競争優位性及び新技術・新製品の開発・事業化に係るリスク

当社グループが展開する各事業においては、当社グループと同種の製品を供給する競合会社が存在しております。顧客ニーズの把握、新技術・新製品の開発・事業化に努めておりますが、顧客ニーズの変化に適切に対応できなかった場合や新技術・新製品の開発・事業化が長期化した場合、開発案件が事業化できなかった場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社業績に影響が生じる可能性があります。また、脱炭素社会の実現をはじめとする社会課題への取り組み強化として、環境負荷低減に向けた研究・製品の開発が強く求められております。このようなニーズに適切に対応できなかった場合や、研究や製品の開発・事業化に要する期間が長期化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、素材となる特殊鋼から製品までを一貫して製造するメーカーである競争優位性を維持できるよう、各事業に分散していたR&D機能を集約し、かつ開発要員の強化を図っております。千葉製作所内へ新設し本格稼働を開始する千葉AMC(アドバンスト・マテリアルズ・センター)を最大限活用し、「製品力の向上」「新技術の開発」「モノづくり力の強化」を推進し、材料開発から製品量産を加速しています。また、営業戦略室を中心にマーケティング力を強化し、顧客ニーズに合った製品をタイムリーに開発する体制としております。今後も、技術開発を加速させ顧客ニーズに対応してまいります。

 

[事業運営に関するリスク]

(9)自然災害・事故・感染症等の発生

当社グループは、大規模な自然災害等不測の事態の発生に備え、耐震面の強化など防災対策を強化しております。また、当社グループの生産設備の中には、高温、高圧での操業を行っている設備があり、高熱の生産物等を取り扱っている事業所もあります。対人・対物を問わず、事故の防止対策には万全を期しておりますが、万一重大な労働災害、設備事故等が発生した場合には、当社グループの生産活動等に支障をきたし、業績に影響が生じる可能性があります。また、新型コロナウイルス等の感染症が世界的に流行した場合には、感染拡大防止による法令等に基づく事業活動及び社会活動の自粛要請等により、当社グループの事業活動に制約が生じる可能性があります。BCP(事業継続計画)に関する施策としてサプライチェーンのリスクを想定し、国内外の供給体制を維持してまいります。

 

(10)環境規制や気候変動に伴う社会変革への対応に関するリスク

当社グループでは、事業活動において廃棄物、副産物等が発生いたします。そのため、環境マネジメントシステムを構築・運用し国内外の法規制を遵守し、環境保全活動を行っております。過去、現在、将来の事業活動に関し、環境に関する責任リスクを有しており、関連法規制の強化等によっては対応するための費用が発生する可能性があります。また、関連法規制の強化等によって、売却した工場跡地等であっても土壌汚染の浄化のための費用が発生するなど、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

また、国際社会では、2050年カーボンニュートラルへの要請が高まり、脱炭素化の動きが加速しております。今後カーボンプライシングや国境炭素税等が導入された場合には、CO2排出量が多い鉄鋼業に属する当社は、コスト圧迫要因となる可能性があります。当社としても、2021年度に当社グループの持続的な成長を担保するための施策を協議・立案することを目的として、「サステナビリティ委員会」を新設し、下部組織に「カーボンニュートラル委員会」を配置し、CO2削減に向けた施策を推進しています。しかし、脱炭素の目標未達や環境対応が不十分な場合に、当社グループの評価の低下等により、業績に影響が生じる可能性があります。

 

(11)製品の瑕疵・欠陥に係るリスク

当社グループの製品には、重要保安部品に該当するもの等、高い信頼性を要求されるものが存在し、各製造拠点において、世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造しております。製品の製造に当たっては、瑕疵・欠陥の生じた製品及び顧客とあらかじめ取り決めた仕様に満たない製品が市場に流出することのないよう厳格な品質管理体制を構築しております。また、本社管理部門にリスク管理室を置き、品質データー改ざん・偽装の防止が効果的にかつ確実に実施されることを目的とする監査マニュアルを作成し、それに基づいた各拠点の監査を実施しております。それでも尚、瑕疵・欠陥のある製品又は顧客とあらかじめ取り決めた仕様に満たない製品が万が一市場へ流出し、製品の補修、交換、回収、損害賠償請求又は訴訟等に対応する費用が発生した場合には、当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(12)情報システムの障害、情報漏洩等

当社グループの事業活動は、情報システムの利用に大きく依存しており、情報システムの利用とその重要性は増しております。震災等による情報システムのBCP対策としてシステムのクラウド化または二重化等でより安定的なシステム運用の取り組みを行っております。また、自社及び顧客・取引先の営業機密や技術情報、個人情報等の機密情報を保有しておりますが、機密情報の漏洩対策については最重要の経営課題として認識し、システムによる防御対策に加えて従業員への教育を含む、情報セキュリティ強化を行っております。しかしながら、当社グループの情報システムにおいて、悪意ある第三者からのウイルス感染等のサイバー攻撃により、システム停止、機密情報の外部漏洩や棄損・改ざん等の事故が起きた場合、生産や業務の停止、知的財産における競争優位性の喪失、訴訟、社会的信用の低下等により、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(13)人材確保に係るリスク

当社グループは、事業の維持、成長のため、必要な人材の確保に努めておりますが、今後、少子化、景気回復による労働市場の需給バランスの変化や人材の流動化の進展等により、人材の確保が想定どおりに進まない場合、安定した生産体制が損なわれる等、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。当社グループといたしましては、多様な背景を持つ従業員が持てる力を最大限に発揮するため、働き方改革や女性活躍の推進といったダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでまいります。また、2020年度に人材開発施策及び教育体系の構築に特化した部署を新設しました。教育体系の再構築と人事制度の整備を通じて、優秀な人材の安定的確保に努めてまいります。

 

[その他のリスク]

(14)法令・公的規制

当社グループは、日本国内及び事業展開する各国において、環境、労働・安全衛生、通商・貿易・為替、知的財産、租税、独占禁止法等の事業関連法規、その他関連する様々な法令・公的規制の適用を受けております。

当社グループは、内部統制体制の充実を図り、従業員に向けての周知、徹底を行い、法令・公的規制の遵守に努めておりますが、万が一、遵守できなかった場合、課徴金や行政処分を課されるなどにより業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、これら法令・公的規制が改正もしくは変更される場合、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(15)継続企業の前提に関する重要事象等

当社は、2020年3月期における海外子会社での固定資産の減損損失計上に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響及び高炉改修費用による原材料コストの高騰などによる厳しい経営環境を受けて純損失が発生したことにより、前連結会計年度において当社を借入人とする財務制限条項付きのタームローン契約のうち、借入金50億円が財務制限条項に抵触し、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していました。

当連結会計年度においては、財務制限条項の修正を伴う変更契約を締結したことにより、財務制限条項に抵触している状況を解消いたしました。

また、需要回復やコスト構造改革の施策実施により業績が回復し、当連結会計年度末において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は存在しておりません。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

なお、会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。このため、前年同期比較は基準の異なる算定方法に基づいた数値を用いております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご確認ください。

 

(1) 経営成績の状況の概要

 

当連結会計年度(2021年4月~2022年3月)における当社グループを取りまく経営環境は、自動車業界において、半導体等の部品供給不足の長期化により、生産減の影響は続いているものの、国内及び海外の需要は回復が進んでいます。一方、建設機械業界においては、昨年度後半から急回復した需要は、引き続き好調を維持しています。
 

このような状況下、当社グループの連結売上高は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前期からの反動増により、前期比484億8千7百万円(49.6%)増収1,462億9千2百万円となりました。連結営業利益は、売上げの回復、増産によるコスト改善と、前期に実施した固定費削減に加え、特殊鋼鋼材事業における昨年度の高炉改修に伴う一過性費用の解消等により、前期比112億1千4百万円増益62億7千万円(前期は営業損失49億4千3百万円)となりました。

また、親会社株主に帰属する当期純利益は、当社グループ会社であるMSSC Ahle GmbHにおける工場火災に伴う特別損失を計上したものの、損害の一部に対する保険金や政策保有株式及び遊休不動産の売却に伴う特別利益の計上を行ったことから、40億6千8百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失55億2千8百万円)となりました。

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 

特殊鋼鋼材事業の売上高は、建設機械及び産業機械・工作機械メーカーの需要増に加え、新型コロナウイルス影響からの回復もあり、前期比416億2千3百万円(92.7%)増収865億3百万円となりました。営業利益は、国内事業では売上数量増、増産によるコスト改善効果と、昨年度の高炉改修に伴う一過性費用の解消により、大幅な増益となりました。一方、インドネシア事業では、構造改革の施策の進捗に加え、旺盛な需要にも支えられ、今年度は営業黒字化を達成し、再建から成長の局面へと移行しています。特殊鋼鋼材事業全体としては、国内外ともに原材料価格上昇の売価反映タイムラグによるマイナス要因があったものの、前期比102億3千5百万円増益66億1千5百万円(前期は営業損失36億1千9百万円)となりました。

 

ばね事業の売上高は、自動車向けは世界的な半導体等の部品供給不足による生産減の影響は続いているものの、新型コロナウイルスの影響からの回復が進み、建設機械向けについても需要が堅調に推移し、前期比100億9千8百万円(26.3%)増収485億5千5百万円となりました。営業利益は、売上げの回復により、国内を中心に損益が改善したものの、北米では損失が拡大しました。北米子会社では、上期において材料メーカーの破綻に伴う日本からの緊急供給対応による一過性輸送コストが発生しました。下期は、この影響が解消し、米国工場からカナダ工場への生産移管も計画通りに進捗しているものの、半導体等の部品供給不足と新型コロナウイルスの影響が継続する中、自動車メーカーの挽回生産に向けた急激な生産変動、一部材料メーカーからの供給不足、豪雪やトラック運転手によるデモ等に伴う生産混乱により、生産性の低下や特便費用が発生しました。その結果、ばね事業全体としては、前期比2千9百万円の改善に留まり、18億2千7百万円の損失(前期は営業損失18億5千7百万円)となりました。

 

素形材事業の売上高は、新型コロナウイルスの影響からの回復による需要増に加え、特殊合金粉末及び精密鋳造品の新規受注品の売上げが好調に推移したことにより、前期比19億4千万円(23.1%)増収103億5千7百万円となりました。営業利益は、売上数量増、増産によるコスト改善により、前期比8億3千5百万円増益の8億5千7百万円(前期は営業利益2千1百万円)となりました。

 

機器装置事業の売上高は、受注から売上げを計上するまでの期間が比較的長いことから、新型コロナウイルスの影響による昨年度の商談遅延の影響を受けたものの、大型案件の売上計上により、前期比6億5千1百万円(7.3%)増収95億8千4百万円となりました。営業利益は、前期比1億7百万円(23.7%)増益5億6千万円となりました。

なお今期の受注は、注力している洋上風力発電関連機器を中心とした大型受注が積み上がり、前期実績を上回る進捗となりました。

 

その他の事業は、流通及びサービス業等でありますが、売上高は、前期比9億6千8百万円(34.2%)増収38億2百万円、営業利益は、前期比4千6百万円(83.6%)増益1億2百万円となりました。

 

(2) 財政状態

①資産

当連結会計年度末の総資産は1,429億6千2百万円で、前連結会計年度末と比較し106億4千2百万円の増加となりました。その内訳は次のとおりであります。

1 流動資産:137億3千9百万円増加

需要回復等による売掛金及び電子記録債権の増加87億7千9百万円、生産増等による棚卸資産の増加76億5千2百万円等によるものであります。

 

2 有形固定資産:1億4千6百万円増加

設備投資による増加26億2千3百万円、減価償却による減少32億3千9百万円、為替変動による増加11億1千2百万円、減損損失による減少2億6千9百万円等によるものであります。

 

3 無形固定資産:4億3千7百万円減少

減価償却による減少4億5千3百万円等によるものであります。

 

4 投資その他の資産:28億6百万円減少

投資有価証券の売却等による減少45億2百万円、退職給付に係る資産の増加13億6千7百万円等によるものであります。

 

②負債

当連結会計年度末の負債総額は943億1千5百万円で、前連結会計年度末と比較し67億6千8百万円の増加となりました。その内訳は次のとおりであります。

1 流動負債:92億7千4百万円増加

生産量増加による仕入債務の増加55億9千万円、利益増による未払法人税等の増加29億8千4百万円、火災損失関連の支出に備えるための引当金増加8億6千9百万円等によるものであります。

 

2 固定負債:25億6百万円減少

借入金返済による減少6億1千5百万円、リース契約解消等によるリース債務の減少11億4千9百万円、退職給付に係る負債の減少9億3千6百万円等によるものであります。

 

③純資産

当連結会計年度末の純資産は、486億4千7百万円となり、前連結会計年度末と比較して38億7千3百万円の増加となりました。これは利益増による利益剰余金の増加39億1千7百万円、投資有価証券の売却によるその他有価証券評価差額金の減少23億1千5百万円、退職給付に係る調整累計額の増加23億4千6百万円等によるものであります。

この結果、自己資本比率は29.8%となり、前連結会計年度末と比較して0.4%増加いたしました。

また、1株当たりの純資産額は、前連結会計年度末の2,528円35銭から2,774円13銭となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローは営業活動による19億2千4百万円の支出、投資活動で19億6千7百万円の収入、財務活動では35億2千3百万円の支出となりました。

この結果、現金及び現金同等物は当連結会計年度に30億2千8百万円減少し、当連結会計年度末残高は199億5千1百万円となりました。

 

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

税金等調整前当期純利益84億4千8百万円、減価償却費37億2百万円、需要回復により生産量を増加したことによる仕入債務の増加52億3千1百万円があった一方、売上債権の増加85億3千9百万円や棚卸資産の増加68億9千7百万円等の支出がありましたので、営業活動全体として19億2千4百万円の支出となりました。

 

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

有形固定資産の取得による支出24億6千4百万円があった一方、有価証券の売却による収入44億1千8百万円がありましたので、投資活動全体として19億6千7百万円の収入となりました。

 

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

借入金による収入が63億7千3百万円あった一方で、長期借入金の返済81億9千3百万円、リース債務の返済15億1千1百万円等により、財務活動全体として35億2千3百万円の支出となりました。

 

(4) 生産、受注及び販売の状況

(1)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

特殊鋼鋼材事業

72,589

68.4

ばね事業

41,062

29.7

素形材事業

10,935

29.9

機器装置事業

9,594

7.7

合計

134,182

45.7

 

(注)金額は販売価格によっております。

 

(2)受注状況

当社グループでは、主に国内外の需要家への最近の納入実績、各需要家の予測情報などに基づいた生産を行っており、該当事項はありません。

 

(3)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

特殊鋼鋼材事業

86,503

ばね事業

48,555

素形材事業

10,357

機器装置事業

9,584

その他の事業

3,802

調整額

△12,511

合計

146,292

 

(注)1.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、対前年同期比増減率は記載しておりません。

   2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

日本製鉄株式会社

12,248

12.5

21,163

14.5

 

 

 

(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 資本の財源及び資金の流動性

 1 資金需要

当社グループの主な資金需要は、製品製造のための材料や部品の購入及び設備投資によるものであります。

 

2 財務政策

当社グループは、設備投資を厳選して実施することで財務の健全性を保ちながら、営業活動によるキャッシュ・フロー収入を基本に、将来必要な運転資金及び設備資金を調達していく考えであります。

 

② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。当社グループが採用している会計方針において使用されている重要な会計上の見積り及び前提条件は、以下の事項及び「第5  経理の状況(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は決算日における資産・負債の金額、並びに報告期間における収益・費用の金額のうち、見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績・現在の状況を勘案して可能な限り正確な見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に関して、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。

 

 (減損会計における将来キャッシュ・フロー)

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。

 当社グループは、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※8減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(269百万円)を計上しております。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1) 技術導入

 

契約会社名

相手側当事者

国籍

契約の内容

契約締結日

契約期限

三菱製鋼㈱
(当社)

ESCO CORPORATION

アメリカ合衆国

土木、建設機械用耐摩耗部品の製造に関する技術提携

1964年
6月24日

 

2022年
10月31日

(注)

 

(注)契約期限について2021年12月1日から2022年10月31日までの更新を行いました。

 

(2)技術援助契約

契約会社名

相手先の名称

相手先の

所在地

契約の内容

契約締結日

契約期限

三菱製鋼㈱
(当社)

PT.JATIM TAMAN STEEL MFG.

インドネシア

特殊鋼のビレット、棒鋼及び平鋼の製造技術に関する技術提携

2014年
8月11日

2024年
8月10日

三菱製鋼㈱
(当社)

PT.INDOSPRING Tbk.

インドネシア

自動車用板ばねの製造技術に関する技術提携

1978年
6月19日

2022年
2月13日

(自動更新)

三菱製鋼㈱
(当社)

STUMPP SCHUELE &SOMAPPA AUTO SUSPENSION SYSTEMS PVT.LTD

インド

自動車サスペンション用巻ばね及びスタビライザの製造技術に関する技術提携

2014年
4月1日

2023年
3月31日

三菱製鋼㈱

(当社)

PT.INDOSPRING Tbk.

PT.INDONESIA PRIMA SPRING

インドネシア

熱間及び冷間成形巻ばねの製造技術に関する技術提携

2019年

3月11日

2022年
3月31日

(自動更新)

三菱製鋼㈱

(当社)

PT.INDOSPRING Tbk.

PT.INDONESIA PRIMA SPRING

インドネシア

スタビライザの製造技術に関する技術提供

2019年
3月11日

2022年

3月31日

(自動更新)

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、技術開発センターに各セグメントの研究開発機能を集約し、材料から製品までの一貫した研究開発を進めてまいりました。また、産学連携等の共同研究により新しい分野も効率的に取り込んでまいりました。

当連結会計年度における研究開発費は1,290百万円で、その主な活動は以下のとおりであります。

特殊鋼鋼材事業関連では、高清浄度鋼の製造技術の開発に取り組みました。

ばね関連では、ばね軽量化への対応(材料の開発、製造技術の開発)、グローバル化対応(海外材の評価、自動化・高生産性ラインの構築)に取り組みました。

素形材関連では、特殊合金の粉末や精密鋳造品の評価技術の開発に取り組みました。

機器装置関連では、鍛圧機械、計装機器や環境装置の開発に取り組みました。

また、全社としてIoT技術の開発(生産ラインの効率化・高付加価値製品の開発)に取り組みました。