第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、いかなる経営環境の変化にも対応できる企業体質を確立することを重要課題と認識し、競争力ある事業の育成を通じて、持続的かつグローバルに発展することを経営の基本方針としております。

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
 

(1)経営環境及び対処すべき課題

新型コロナウイルス感染拡大による世界的な需要の落ち込みや生産活動の減退により、世界経済の減速が懸念されております。当社の主要な取引先である自動車、建設機械、産業機械業界等の活動水準にも影響が及んでおり、現段階では感染拡大による影響や収束の時期は見通すことが出来ない状況にあります。
 このような状況のなか、当社グループといたしましては、主要な取引先の稼働状況に合わせて生産計画を柔軟に見直すとともに、原価低減活動のさらなる推進により、生産コストをミニマム化してまいります。BCP(事業継続計画)に関する施策としてサプライチェーンのリスクを想定し、国内外の供給体制を維持してまいります。雇用維持に関しては、各事業所において、雇用調整助成金制度を活用した一時帰休を4月から実施しております。資金面については、フリーキャッシュ・フローの悪化に備えた取り組みを進めています。
 また、2020年に概要を公表いたしました「2020中期経営計画」に基づく諸施策について、着実に実行し収益確保に努めてまいります。

 

<2020中期経営計画>

 

2019年度までの当社を取り巻く事業環境は、米中貿易摩擦や保護貿易主義の台頭の影響等により、主要な取引先である自動車・建設機械業界の需要低迷が見られました。また、自動車メーカーのグローバル調達方針に基づいて海外展開を進めてまいりましたが、その方針転換があったことに加え、技術開発や安定調達等の問題発生に対する抜本的解決の遅れなどの自社要因もあり、中期経営計画に対して実績が大きく乖離する結果となりました。この反省を踏まえ、2016中期経営計画は一年前倒しで終了し、2020年度から2022年度の3ヶ年を対象とした「2020中期経営計画」を策定・公表することといたしました。

 

「2020中期経営計画」の概要は以下のとおりです。
 

2020中期経営計画は、10年後を見据えた3ヶ年計画とし、赤字海外事業の事業再生を初年度に実施するとともに、製品力の強化や素材から一貫生産のビジネスの拡大を通じて持続的な成長を目指してまいります。

 

① 「2020中期経営計画」スローガン

素材から製品まで一貫したモノづくりでお客様に付加価値を提供する

 

② 目指す姿

・グループ総合力の発揮による利益率の向上と収益安定化を図る

・お客様のニーズの半歩先行く製品を開発し、新たな価値として提供する

 

③ 3大方針

◆海外事業の構造改革 <海外拠点の早期収益力アップが急務>

・インドネシアJATIMの黒字化と北米MSSCの早期止血・立て直し

・海外事業・拠点の統廃合の実施

 

◆製品力のさらなる強化 <顧客ニーズの半歩先を行く製品>

・お客様の声をスピーディに汲み上げ、製品に反映する総合力の強化

・メリハリをつけた技術開発項目見直しによる開発スピードアップ

 

◆素材から一貫生産ビジネスモデルの拡大

・三菱製鋼室蘭特殊鋼株式会社の鋼材を用いた軽量化ばねや、JATIM材を用いた板ばねの一貫生産ビジネスモデルを、建設機械用ばねやスタビライザ等に展開し、当社の素材から一貫生産の強みを発揮する

・単品的な製品ラインナップに留まっていた素形材製品を、その上下流含めた一貫生産ビジネスモデルとして強化する

 

 

④ 重要経営指標(KPI)

2022年度目標

売上高    1,500億円

営業利益     70億円

ROE          8%以上

※2022年度数値目標には、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を織り込んでいません。このため、必要に応じて数値目標を見直す可能性があります。

 

 

(2)各事業における重点施策

[特殊鋼鋼材事業] 

国内の生産拠点では、大幅な需要減に対応するために関連会社である北海製鉄株式会社において高炉改修のための操業休止前倒しを予定しているなど、大きな生産変動が見込まれています。室蘭コンビナートとして、これらの変動に適した操業に迅速に対応し、操業の効率化に取り組むことでコスト低減を進めてまいります。

海外事業におきましては、生産拠点である連結子会社「PT.JATIM TAMAN STEEL MFG.」の2019年上期営業利益に対して、下期は5億円の改善を達成し、営業利益黒字化の目途が付きました。しかし、2020年度の需要減に対応するため、要員を含めたコスト削減への取り組みと、品質の更なる向上を進めてまいります。

 

[ばね事業]

国内では、軽量化・性能向上を軸に製品力強化を継続するとともに、マザー工場として海外子会社のものづくり力サポートを積極的に進めてまいります。

また海外拠点では、喫緊の課題である北米拠点の黒字化については、巻ばねに続きスタビライザもカナダ工場に集約し生産能力の適正化を図ることにより実現してまいります。また、他の海外拠点についてもコスト改善並びに軽量化製品による新規受注も増加しており、さらなる拡大を進めてまいります。

 

[素形材事業]

千葉製作所内へ新設し、稼働を開始した千葉AMC(アドバンスト・マテリアルズ・センター)を最大限活用し、「製品力の向上」「新技術の開発」「モノづくり力の強化」を推進し、マザー工場として国内外拠点の支援強化を図ってまいります。

 

[機器装置事業]

三菱長崎機工株式会社では、コア技術の継承と開発の積極的な推進により、主力製品の拡充および新分野・新顧客への拡販に注力するとともに、継続的な設備投資により、総合エンジニアリング会社として持続的成長を目指してまいります。

また、三菱製鋼グループ内の連携を強化し、製品コスト削減と輸出の拡大を進めてまいります。

  

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)感染症リスク

 新型コロナウイルス感染拡大による世界的な消費の落ち込みや生産活動の停滞により、世界経済が大きく減速することが懸念されております。当社の主要な取引先である自動車、建設機械、産業機械業界等の活動にも大きな影響が及んでおりますが、現段階では感染拡大による影響や収束の時期を見通すことができない状況にあります。

 当社グループといたしましては、主要な取引先の稼働状況に合わせて生産計画を柔軟に見直すとともに、原価低減活動のさらなる推進により、生産コストをミニマム化してまいります。BCP(事業継続計画)に関する施策としてサプライチェーンのリスクを想定し、国内外の供給体制を維持してまいります。また、感染予防対策としては、時差出勤・フレックスタイム制度の有効活用・在宅勤務・有給休暇取得の奨励、Web会議推進等を進めております。

 

(2)中期経営計画の未達

 当社グループは2016年5月に発表した中期経営計画の進捗状況を踏まえて同計画の見直しを実施し、2020年5月に「2020中期経営計画」を策定、公表いたしました。策定当時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定されておりますが、こうした情報や分析等には不確定要素が含まれており、事業環境の悪化その他の要因により、期待される成果の実現に至らない可能性があります。

 「2020中期経営計画」に掲げた具体的諸施策を推進し、事業環境の変化やその他の要因に柔軟に対応し、新中期経営計画達成に向け、グループ一丸となってまい進してまいります。

 

(3)設備投資、コスト改善の取り組み

 当社グループは、「2020中期経営計画」期間内において最適生産体制の構築のため、約150億円の設備投資を計画しています。様々な外部要因や内部要因等により、新たな設備が計画通りに立ち上がらず効果が十分に発揮されない場合や、コストを計画通り改善することができない場合、固定資産の減損損失の計上等により、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 設備投資については、「2020中期経営計画」の重点施策の1つである「モノづくり向上」を通じて、国内のマザー機能を強化し、事後解決型から問題の未然防止型の体制へシフトすることで、投資効果を確実に回収してまいります。また、コーポレート部門を横断したメンバーで構成する投融資委員会を設け、中立的立場から妥当性やリスクを精査する体制を整えております。同委員会の意見をもとに、重要案件は経営会議もしくは取締役会でも審議するとともに、その進捗や立ち上げ後の改善効果の計画対比についても適宜フォローしていくことで、損失の発生を未然に防いでまいります。

 

(4)競争優位性及び新技術・新製品の開発・事業化に係るリスク

 当社グループが展開する各事業においては、当社グループと同種の製品を供給する競合会社が存在しております。顧客ニーズの把握、新技術・新製品の開発・事業化に努めておりますが、顧客ニーズの変化に適切に対応できなかった場合や新技術・新製品の開発・事業化が長期化した場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社業績に影響が生じる可能性があります。当社グループでは、素材となる特殊鋼から製品までを一貫して製造するメーカーである競争優位性を維持できるよう、各事業に分散していたR&D機能を集約し、かつ開発要員の強化を図り、適切な開発のための設備投資を行っています。また、千葉製作所内にアドバンスト・マテリアルズ・センターを新設し、材料開発から製品量産を加速していきます。さらに、マーケティング力を強化し顧客ニーズに合った製品をタイムリーに開発するため、営業戦略室を新設いたしました。今後も、技術開発を加速させ自動車業界の大変革期にも対応してまいります。

 

(5)製品需要の変動

 当社グループの製造する特殊鋼鋼材は、国内外の需要分野の需給や市況等、需要分野の動向によって数量、価格とも影響を受けます。また、中国の粗鋼生産膨張や新興国の増産が世界の鋼材価格の引き下げ要因となり、当社グループの生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社の主要製品の多くは、主に自動車・建設機械業界に納入されており、日本、北米、中国、アジアを含む当社グループの主要市場における、同業界の景気後退及び需要の縮小は、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。当社といたしましては、素材となる特殊鋼から製品までを一貫して製造するメーカーであることを強みとし、顧客のニーズに対応した製品に対応してまいります。

 

(6)原材料価格の上昇

当社グループの主要製品は、鉄鉱石、石炭を使用して生産される溶鋼及び合金鉄を主要原料としており、これらを外部調達しております。また、電極・耐火物等の副資材につきましても同様であり、さらには電力・ガス等のエネルギーを消費しております。これらの主要原料及び副資材等の価格上昇分につきましては売価転嫁に努めておりますが、市況の高騰分を売価転嫁できなかった場合には、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。2020年度は、特殊鋼鋼材事業における原材料供給元である関連会社の北海製鉄株式会社において、高炉改修のための操業休止を予定しており、原材料価格の上昇が見込まれております。室蘭コンビナートとして、これらの生産変動に適した操業に迅速に対応し、操業の効率化に取り組むことでコスト低減を進めてまいります。

 

(7)海外拠点におけるリスク

 当社グループは、北米・欧州・中国・東南アジア等に海外事業拠点を有しております。当該国における政治・経済・社会的混乱や法的規制等、更には国際的な貿易規制や関税の変更、国家・経済圏間における貿易協定に起因する影響を受けるリスクがあり、これらの影響を受けた場合には、業績に影響が生じる可能性があります。

 貿易規制や関税の変更等に対しては、適切な対応を行うとともに、各拠点の調達構造改革を進めることで影響の軽減に努めております。当該国における政治・経済・社会的混乱や法的規制等につきましては、各拠点の内部管理並びにガバナンス等に係る体制の整備及び強化を行っていきます。

 

(8)外国為替相場の変動

 当社グループは、原材料等の輸入及び製品等の輸出において外貨建取引を行っております。また、当社グループの外貨建取引及び連結財務諸表作成のための海外子会社の財務諸表数値は、外貨から円貨への換算において、為替相場変動の影響を受けることとなります。ヘッジ契約等の対応をしておりますが、為替相場変動のリスクを完全に排除することは困難であり、変動影響を大きく受けた場合には、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(9)金融市場の変動や資金調達環境の変化

 当社グループは、事業活動に必要な資金を金融機関からの借入により調達しており、金利情勢、その他の金融市場の変動が業績等に影響を与える可能性があります。また、健全な財務体質の維持に努めておりますが、景気の後退や金融市場が悪化した場合や、当社グループの信用低下等により必要な資金を必要な時期に適切な条件で調達できない場合には、資金調達コストが増加することにより、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(10)災害・事故等の発生

 当社グループは、大規模な自然災害等不測の事態の発生に備え、耐震面の強化など防災対策を強化しております。また、当社グループの生産設備の中には、高温、高圧での操業を行っている設備があり、高熱の生産物等を取り扱っている事業所もあります。対人・対物を問わず、事故の防止対策には万全を期しておりますが、万一重大な労働災害、設備事故等が発生した場合には、当社グループの生産活動等に支障をきたし、業績に影響が生じる可能性があります。

 

(11)法令・公的規制

 当社グループは、日本国内および事業展開する各国において、環境、労働・安全衛生、通商・貿易・為替、知的財産、租税、独占禁止法等の事業関連法規、その他関連する様々な法令・公的規制の適用を受けております。当社グループは、内部統制体制の充実を図り、従業員に向けての周知、徹底を行い、法令・公的規制の遵守に努めておりますが、万が一、遵守できなかった場合、課徴金や行政処分を課されるなどにより業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、これら法令・公的規制が改正もしくは変更される場合、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
 

(12)環境規制等の影響

 当社グループでは、事業活動において廃棄物、副産物等が発生いたします。環境マネジメントシステムを構築・運用し国内外の法規制を遵守し、環境保全活動を行っています。過去、現在、将来の事業活動に関し、環境に関する責任リスクを有しており、関連法規制の強化等によっては対応するための費用が発生する可能性があります。また、関連法規制の強化等によって、売却した工場跡地等であっても土壌汚染の浄化のための費用が発生するなど、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(13)製品の瑕疵・欠陥に係るリスク

 当社グループの製品には、重要保安部品に該当するもの等、高い信頼性を要求されるものが存在し、各製造拠点において、世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造しています。製品の製造に当たっては、瑕疵・欠陥の生じた製品、及び顧客とあらかじめ取り決めた仕様に満たない製品が市場に流出することのないよう厳格な品質管理体制を構築しております。また、本社管理部門にリスク管理室を新設し、この組織が主幹となり、品質データー改ざん・偽装防止が効果的にかつ確実に実施されることを目的とする監査マニュアルを作成し、それに基づいた各拠点の監査を開始いたします。それでも尚、瑕疵・欠陥のある製品又は顧客とあらかじめ取り決めた仕様に満たない製品が万が一市場へ流出し、製品の補修、交換、回収、損害賠償請求又は訴訟等に対応する費用が発生した場合には、当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(14)情報システムの障害、情報漏洩等

 当社グループの事業活動は、情報システムの利用に大きく依存しており、情報システムの利用とその重要性は増しております。震災等による情報システムのBCP対策としてシステムのクラウド化または二重化等でより安定的なシステム運用の取り組みを行っています。また、自社及び顧客・取引先の営業機密や技術情報、個人情報等の機密情報を保有していますが、機密情報の漏洩対策については最重要の経営課題として認識し、システムによる防御対策に加えて従業員への教育を含む、情報セキュリティ強化を行っています。しかしながら、当社グループの情報システムにおいて、悪意ある第三者からのウイルス感染等のサイバー攻撃により、システム停止、機密情報の外部漏洩や棄損・改ざん等の事故が起きた場合、生産や業務の停止、知的財産における競争優位性の喪失、訴訟、社会的信用の低下等により、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(15)人材確保に係るリスク

 当社グループは、事業の維持、成長のため、必要な人材の確保に努めておりますが、今後、少子化、景気回復による労働市場の需給バランスの変化や人材の流動化の進展等により、人材の確保が想定どおりに進まない場合、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。当社グループといたしましては、就業制度の充実等を行い、優れた人材の獲得及び定着に対する取り組みを進めております。

 

(16)有価証券の価格変動

 当社グループは個別の政策保有株式について保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に検証し、保有の適否を判断しております。その結果を踏まえ、相手企業との関係強化を図るために販売・仕入に係る取引先やその他の会社の株式を保有しており、投資先の業績や株価の変動により当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(17)退職給付債務

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。金利の変動や制度資産の公正価値が変動した場合、及び退職金制度を変更した場合には、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(18)継続企業の前提に関する重要事象等

 当社は、当連結会計年度において、事業計画の見直しに伴い海外子会社における固定資産に係る減損損失を計上したことにより、当連結会計年度の末日における連結の貸借対照表の純資産の部の金額が、2018年3月期の末日における連結の貸借対照表における純資産の部の金額の75%の金額以上に維持する規定に違反していることにより、当社を借入人とする財務制限条項付きのタームローン契約のうち、短期借入金5,000百万円が抵触している状況にあります。

 当社は、継続企業の前提に関する重要事象等が存在しておりますが、金融機関からは、期限の利益請求喪失事由の発生により貸付人が取得した契約上の借入人としての当社に対する権利を放棄することについて了承を得ております。従いまして、当社グループとしては継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 なお、減損損失に対する改善施策は以下のとおりです。
 特殊鋼鋼材事業におけるインドネシア子会社につきましては、品質改善と大幅な人員削減を伴うコストダウンに加え、顧客への承認活動も進展しております。今後さらに丸鋼の拡販を進め、あわせてばね事業とのシナジーによる平鋼の拡販により、事業を再生してまいります。
 ばね事業における海外子会社につきましては、拠点の統廃合を含め、事業の再構築を進めてまいります。
 素形材事業におけるタイ子会社つきましては、千葉マザー工場を活用して競争力を強化し、ガソリン用ターボチャージャー部品の拡販に注力して、業績改善に努めてまいります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績の状況の概要

 

当連結会計年度(2019年4月~2020年3月)における当社グループを取りまく経営環境は、自動車業界において、国内では昨年10月の消費増税の影響等により新車販売は減少し、海外においては、米中貿易摩擦の長期化等により新車販売が減少しました。建設機械業界においては、上期の国内需要は堅調に推移したものの、下期には台風被害による建設機械メーカーの生産減に伴う販売減があり、また、東南アジアを中心とした需要の伸び悩みによる輸出の低迷等に伴う在庫調整がありました。産業機械・工作機械業界においても、内需・外需ともに需要が大幅に減少しております。
 足元、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響によるメーカー各社の生産一時停止や需要の急減があり、現在も先行き不透明な状況が続いております。

このような状況下、当社グループの連結売上高は、前期比122億3千2百万円(9.5%)減収1,171億3千8百万円となりました。連結営業利益は、主に特殊鋼鋼材事業における建設機械需要の低迷とばね事業における海外子会社での販売減の影響があり、減損損失の計上に伴う償却負担減少があるものの、前期比6億1千8百万円(58.6%)減益4億3千6百万円となりました。

また、親会社株主に帰属する当期純損失は、第2四半期連結会計期間において海外子会社における減損損失として、特別損失150億4千9百万円を計上したため、140億7千万円の損失(前期は親会社株主に帰属する当期純利益2億8千万円)となりました。

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 

特殊鋼鋼材事業につきましては、国内事業における建設機械向けをはじめとした需要低迷による販売数量減の影響が大きく、また海外事業では、インドネシア商用車需要の低迷により、売上高は、前期比88億6千4百万円(13.7%)減収558億9千6百万円となりました。営業利益は、国内事業においては販売数量減が大きく影響し、売価の改善と2020年度の高炉改修に備えた在庫積上げ並びにこれを活用した能率向上によるコスト改善により補うも減益となりました。一方、海外事業においては、第1四半期から第3四半期には副資材高騰及び生産トラブルによるコスト増があったものの、第4四半期からは操業改善の成果があり、また固定資産の減損損失の計上による償却負担減少もあり赤字は大幅に縮小いたしました。これにより、前期比2千8百万円(2.3%)増益12億4千6百万円となりました。

 

ばね事業につきましては、北米子会社をはじめとした海外子会社での自動車向け販売減や、国内建設機械向けでの需要低迷に加え、為替の影響を受けたことにより、売上高は、前期比44億2千1百万円(8.9%)減収452億3千2百万円となりました。営業利益は、固定資産の減損損失の計上による償却負担の減少及び固定費・一般管理費等のコスト削減があったものの、国内外での売上減の影響が大きく、北米の新製品立ち上げ時の生産トラブルによるコスト増もあり、前期比4億8千6百万円損失が拡大し、14億2千万円の損失(前期は営業損失9億3千3百万円)となりました。
 喫緊の課題である北米拠点の黒字化については、巻ばねに続きスタビライザもカナダ工場に集約し生産能力の適正化を図ることにより実現してまいります。

 

素形材事業につきましては、中国や台湾市場の低迷の影響を受けた特殊合金粉末と精密鋳造品の需要減及び合金原材料価格下落による特殊合金粉末の売価下落があり、売上高は、前期比17億4千6百万円(15.3%)減収96億4千1百万円となりました。営業利益は、売上げの減少に加えマザー工場立ち上げ費用増加により、前期比2億8千5百万円(76.2%)減益8千9百万円となりました。

 

機器装置事業につきましては、鍛圧機械の売上減があったものの、新分野の海洋機器関連製品等の売上増により、売上高は、前期比9億9千万円(10.7%)増収102億4千3百万円となりました。営業利益は、売上げの増加及び前期に計上した電力機器製品の一過性在庫調整コストが無くなったことから、前期比1億5千8百万円(66.8%)増益3億9千6百万円となりました。

 

その他の事業につきましては、流通及びサービス業等でありますが、売上高は、前期比6億円(14.4%)減収35億7千万円、営業利益は、前期比7千9百万円(43.1%)減益1億5百万円となりました。

 

 

(2) 財政状態

①資産

当連結会計年度末の総資産は1,413億9千1百万円で、前連結会計年度末と比較し119億3千5百万円の減少となりました。その内訳は次のとおりであります。

1 流動資産:7億2千4百万円増加

現金及び預金の増加31億9千1百万円、売上債権の減少92億3千9百万円、たな卸資産の増加82億5千1百万円、投資有価証券の売却代金回収等による未収金の減少11億4千4百万円によるものであります。

 

2 有形固定資産:4億8百万円減少

設備投資による増加71億2千8百万円、減価償却による減少31億4千6百万円、減損損失計上による減少116億4千8百万円、IFRS第16号適用による無形固定資産から有形固定資産への振替73億8千8百万円等によるものであります。

 

3 無形固定資産:104億9千1百万円減少

設備投資による増加4億1千7百万円、償却による減少6億1千5百万円、減損損失計上による減少34億円、IFRS第16号適用による無形固定資産から有形固定資産への振替73億8千8百万円等によるものであります

 

4 投資その他の資産:17億6千万円減少

投資有価証券の時価評価による減少8億3千万円、退職給付に係る資産の減少7億9千1百万円等によるものであります。

 

②負債

当連結会計年度末の負債総額は930億7千5百万円で、前連結会計年度末と比較し71億1百万円の増加となりました。その内訳は次のとおりであります。

1 流動負債:6億2千8百万円増加

仕入債務の減少39億2千1百万円、短期借入金の増加65億3千6百万円、未払法人税等の減少15億5千9百万円等によるものであります。

 

2 固定負債:64億7千3百万円増加

長期借入金の増加63億5千5百万円等によるものであります。

なお、当連結会計年度末の借入金残高は、短期・長期を合計して551億3千4百万円となり、前連結会計年度末と比較して128億9千1百万円増加いたしました。

 

③純資産

当連結会計年度末の純資産は、483億1千5百万円となり、前連結会計年度末と比較して190億3千7百万円の減少となりました。これは資本剰余金の減少11億7百万円、利益剰余金の減少145億9百万円、非支配株主持分の減少26億5百万円等によるものであります。

この結果、自己資本比率は30.1%となり、前連結会計年度末と比較して8.4%減少いたしました。

また、1株当たりの純資産額は、前連結会計年度末の3,837円65銭から2,769円51銭となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローは営業活動による9億2千4百万円の支出、投資活動で75億4千6百万円の支出、財務活動では118億1千3百万円の収入となりました。

この結果、現金及び現金同等物は当連結会計年度に31億8千9百万円増加し、当連結会計年度末残高は292億8千1百万円となりました。

 

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

税金等調整前当期純損失159億1千万円減価償却費35億7千7百万円、減損損失150億4千9百万円、売上高減少による売上債権の減少90億3千4百万円があった一方、たな卸資産の増加83億8千9百万円、法人税の納付による26億8千万円等の支出がありましたので、営業活動全体として9億2千4百万円の支出となりました。

 

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

有形固定資産の取得による支出81億2千4百万円等により、投資活動全体として75億4千6百万円の支出となりました。

 

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

投資活動に充当するための長期借入金による収入が189億8千5百万円あった一方で、長期借入金の返済64億6千8百万円、リース債務の返済5億9千6百万円、配当金の支払い5億5千万円等により、財務活動全体として118億1千3百万円の収入となりました。

 

(4) 生産、受注及び販売の状況

(1)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

特殊鋼鋼材事業

49,034

△14.2

ばね事業

37,038

△8.8

素形材事業

9,796

△17.9

機器装置事業

10,193

11.0

合計

106,063

△10.8

 

(注)金額は販売価格によっております。

 

(2)受注状況

当社グループでは、主に国内外の需要家への最近の納入実績、各需要家の予測情報などに基づいた生産を行っており、該当事項はありません。

 

(3)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

特殊鋼鋼材事業

55,896

△13.7

ばね事業

45,232

△8.9

素形材事業

9,641

△15.3

機器装置事業

10,243

10.7

その他の事業

3,570

△14.4

調整額

(△7,445)

(―)

合計

117,138

△9.5

 

注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。なお、日本製鉄株式会社の前連結会計年度については、当該割合が10%未満のため、記載を省略しております。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

日本製鉄株式会社

-

-

17,253

14.7

 

 

(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 資本の財源及び資金の流動性

 1 資金需要

当社グループの資金需要のうち主なものは、製品製造のための材料や部品の購入、及び設備投資によるものであります。

 

2 財務政策

当社グループは、設備投資を厳選して実施することで財務の健全性を保ちながら、営業活動によるキャッシュ・フロー収入を基本に、将来必要な運転資金及び設備資金を調達していく考えであります。

 

② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。当社グループが採用している会計方針において使用されている重要な会計上の見積りおよび前提条件は、以下の事項及び「第5  経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(追加情報)」に記載しております。

連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は決算日における資産・負債の金額、並びに報告期間における収益・費用の金額のうち、見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績・現在の状況を勘案して可能な限り正確な見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に関して、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。

 

(a)繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

(b)退職給付債務及び退職給付費用の算定

当社グループは、退職給付債務及び退職給付費用について、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(c)減損会計における将来キャッシュ・フロー

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、将来キャッシュ・フローや回収可能性価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。

 当社グループは、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※7減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(15,049百万円)を計上しており、回収可能価額は正味売却価額により算定しており、正味売却価額は不動産鑑定評価基準に基づいた金額及び売却見込額から処分費用見込額を控除した金額により評価しております。 

 当該評価について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失(特別損失)が発生する可能性があります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1) 技術導入

 

契約会社名

相手側当事者

国籍

契約の内容

契約締結日

契約期限

三菱製鋼㈱
(当社)

ESCO CORPORATION

アメリカ合衆国

土木、建設機械用耐摩耗部品の製造に関する技術提携

1964年
6月24日

 

2020年
11月30日

 

 

 

(2)技術援助契約

契約会社名

相手先の名称

相手先の所在地

契約の内容

契約締結日

契約期限

三菱製鋼㈱
(当社)

PT.JATIM TAMAN STEEL MFG.

インドネシア

特殊鋼のビレット、棒鋼及び平鋼の製造技術に関する技術提携

2014年
8月11日

2024年
8月10日

(注)1

三菱製鋼㈱
(当社)

PT.INDOSPRING Tbk.

インドネシア

自動車用板ばねの製造技術に関する技術提携

1978年
6月19日

2021年
2月13日

(自動更新)

三菱製鋼㈱
(当社)

STUMPP SCHUELE &SOMAPPA AUTO SUSPENSION SYSTEMS PVT.LTD

インド

自動車サスペンション用巻ばね及びスタビライザの製造技術に関する技術提携

2014年
4月1日

2023年
3月31日

(注)2

三菱製鋼㈱

(当社)

PT.INDOSPRING Tbk.

PT.INDONESIA PRIMA SPRING

インドネシア

熱間及び冷間成形巻ばねの製造技術に関する技術提携

2019年

3月11日

2021年
3月31日

(自動更新)

三菱製鋼㈱

(当社)

PT.INDOSPRING Tbk.

PT.INDONESIA PRIMA SPRING

インドネシア

スタビライザの製造技術に関する技術提供(注)3

2019年
3月11日

2021年

3月31日

(自動更新)

 

(注)1.契約期限について2019年8月11日から2024年8月10日までの更新を行いました。

2.契約期限について2020年3月31日から2023年3月31日までの更新を行いました。

3.熱間成形中実スタビライザの製造技術に関する技術提供から、技術提供範囲を広げております。

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、技術開発センターに各セグメントの研究開発機能を集約し、材料から製品までの一貫した研究開発を進めてまいりました。また、産学連携等の共同研究により新しい分野も効率的に取り込んでまいりました。

当連結会計年度における研究開発費は1,441百万円で、その主な活動は以下のとおりであります。

特殊鋼鋼材事業関連では、高清浄度鋼の製造技術の開発に取り組みました。

ばね関連では、ばね軽量化への対応(材料の開発、製造技術の開発)、グローバル化対応(海外材の評価、自動化・高生産性ラインの構築)に取り組みました。

素形材関連では、特殊合金の粉末や精密鋳造品の評価技術の開発に取り組みました。

機器装置関連では、鍛圧機械、計装機器や環境装置の開発に取り組みました。

また、全社としてIoT技術の開発(生産ラインの効率化・高付加価値製品の開発)に取り組みました。