第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。

また、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

①経営成績の状況

当中間連結会計期間の我が国経済は、個人消費の一部に足踏みが残るものの、企業の生産活動を中心に持ち直しの動きが見られました。海外経済は、米国では雇用情勢に減速感が見られましたが、個人消費や企業の設備投資を背景に景気は底堅く推移しました。欧州では製造業や建設業の低迷は継続しておりますが、サービス業を中心に景気は緩やかな回復を辿りました。中国では不動産市場の低迷の継続や個人消費の伸び悩みなどにより、景気回復のペースは鈍化しました。

このような中、当中間連結会計期間の売上高は、前年同期並の1兆2,485億円となりました。営業利益は、素形材や溶接などで価格転嫁が進展したことや、円安に伴う在庫評価影響の改善などがあったものの、鉄鋼メタルスプレッドの悪化や固定費を中心としたコストの増加、電力での燃料費調整の時期ずれによる増益影響の縮小などにより、前年同期比144億円減益の777億円となり、経常利益は、前年同期比206億円減益の709億円となりました。親会社株主に帰属する中間純利益は、当中間連結会計期間に建設機械の中国子会社において土地使用権の譲渡益を特別利益に計上したものの、前年同期に計上した固定資産の譲渡益が剥落したことなどから、前年同期比237億円減益の565億円となりました。

 

当中間連結会計期間のセグメント毎の状況は次のとおりであります。

 

[鉄鋼アルミ]

(鉄鋼)

当中間連結会計期間の売上高は、自動車向けを中心に販売数量が減少した一方、価格転嫁が進展したことなどにより、前年同期比2.0%増の4,616億円となりました。経常利益は、円安に伴う在庫評価影響の改善があったものの、一時的な鉄鋼メタルスプレッドの縮小や、労務費・保全費を中心としたコストの増加などにより、前年同期比70億円減益の188億円となりました。

(アルミ板)

当中間連結会計期間の売上高は、主にディスク材の販売数量が増加したことや、価格転嫁が進展したことなどにより、前年同期比2.4%増の988億円となり、経常損益は、前年同期比7億円改善の43億円の損失となりました。

 

鉄鋼アルミ全体では、当中間連結会計期間の売上高は、前年同期比2.1%増の5,604億円となり、経常利益は、前年同期比63億円減益の144億円となりました。

 

[素形材]

当中間連結会計期間の売上高は、価格転嫁が進展したことなどにより、前年同期比7.8%増の1,529億円となり、経常損益は、前年同期比23億円改善の23億円の利益となりました。

 

[溶接]

当中間連結会計期間の売上高は、自動車・建築向けを中心に販売数量は減少したものの、価格転嫁が浸透したことなどにより、前年同期並の468億円となり、経常利益は、前年同期比5億円増益の21億円となりました。

 

 

[機械]

当中間連結会計期間の受注高は、エネルギー・石油化学向けを中心に需要が堅調に推移したことなどにより、前年同期比3.0%増の1,193億円となり、当中間連結会計期間末の受注残高は2,522億円となりました。

当中間連結会計期間の売上高は、圧縮機を中心としたサービス売上が堅調に推移したことなどから、前年同期比16.3%増の1,200億円となり、経常利益は、前年同期比19億円増益の123億円となりました。

 

[エンジニアリング]

当中間連結会計期間の受注高は、還元鉄関連事業や廃棄物処理関連事業で大型案件を受注した前年同期と比較すると、51.4%減の595億円となり、当中間連結会計期間末の受注残高は4,431億円となりました。

当中間連結会計期間の売上高は、前年同期比13.1%減の653億円となり、経常利益は、前年同期比15億円減益の46億円となりました。

 

[建設機械]

当中間連結会計期間の売上高は、エンジン認証問題からの回復や価格転嫁の進展などにより、前年同期比2.5%増の1,975億円となり、経常利益は、前年同期比10億円増益の61億円となりました。

 

[電力]

当中間連結会計期間の売上高は、販売電力量の減少や石炭市況の変動による販売電力単価の下落などにより、前年同期比22.7%減の1,336億円となり、経常利益は、燃料費調整の時期ずれによる増益影響の縮小などにより、前年同期比181億円減益の292億円となりました。

 

[その他]

当中間連結会計期間の売上高は、前年同期比19.1%減の37億円となり、経常利益は、前年同期比2億円増益の20億円となりました。

 

②財政状態の状況

当中間連結会計期間末の総資産は、法人税等や配当金の支払、借入金の返済などにより、現金及び預金が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ724億円減少し2兆8,473億円となりました。負債については、未払法人税等や借入金の減少に加えて、支払手形及び買掛金が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ1,244億円減少し1兆6,680億円となりました。純資産については、親会社株主に帰属する中間純利益を計上したことなどから、前連結会計年度末に比べ519億円増加し1兆1,792億円となりました。

 

 

③資本の財源及び資金の流動性に関する情報

a.キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローに係る収入が123億円、投資活動によるキャッシュ・フローに係る支出が△504億円、財務活動によるキャッシュ・フローに係る支出が△536億円となりました。

以上の結果、フリーキャッシュ・フローは△381億円の支出となり、当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて833億円減少の1,954億円となりました。

 

当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

原料市況上昇などに伴う棚卸資産の増加により運転資金が悪化したことや、法人税等の支払額が増加したことなどから、当中間連結会計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べて1,480億円収入が減少し、123億円となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

前年同期において固定資産の売却による一過性の収入があったことなどから、当中間連結会計期間における投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べて367億円支出が増加し、△504億円となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

借入金の返済による支出が減少したことなどから、当中間連結会計期間における財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べて101億円支出が減少し、△536億円となりました。

 

 

(単位:億円)

 

前中間

連結会計期間

当中間

連結会計期間

差異

営業キャッシュ・フロー

1,603

123

△1,480

投資キャッシュ・フロー

△137

△504

△367

フリーキャッシュ・フロー

1,465

△381

△1,847

財務キャッシュ・フロー

△638

△536

101

(うち、株主還元)

(△98)

(△177)

(△78)

株主還元後のフリーキャッシュ・フロー

1,366

△559

△1,925

現金及び現金同等物の期末残高

2,918

1,954

△964

 

b.有利子負債の状況

有利子負債は、社債の新規発行を行った一方、借入金の返済などにより前連結会計年度から332億円減少の8,402億円となり、株主資本は、親会社株主に帰属する中間純利益の計上などにより、378億円増加の9,522億円となりました。

当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることなどから、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要があり、当中間連結会計期間末の有利子負債の構成は、返済期限が1年以内のものが1,900億円、返済期限が1年を超えるものが6,502億円となっております。

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度末

当中間連結会計期間末

有利子負債 ※1

(リース債務を含む)

8,735

8,402

株主資本

9,143

9,522

 

※1 当中間連結会計期間末現在の有利子負債の内訳(リース債務を含む)

(単位:億円)

 

合計

1年内

1年超

短期借入金

421

421

長期借入金

6,156

1,026

5,130

社債

1,350

350

1,000

リース債務

473

102

371

合計

8,402

1,900

6,502

 

(2) 研究開発活動

当中間連結会計期間における当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発費は、202億円であります。

また、当中間連結会計期間における研究開発活動の状況の変更の内容は、次のとおりであります。

 

技術開発本部では、清水建設(株)及びシーカ・ジャパン(株)と共同で、構成材料における産業副産物の活用率を最大96%(重量比)まで高められる資源循環促進型のジオポリマーコンクリートの配合技術を開発しました。本技術では、ジオポリマーの活性フィラー(粉体)に利用する高炉スラグ微粉末やフライアッシュのみならず、コンクリートの骨材と練混ぜ水にも産業副産物を有効活用することで、産業副産物の活用率を最大化しています。同時に、ジオポリマーの課題とされてきた施工性や硬化後の強度発現についても、一般的なコンクリートと同等の性能を確保することに成功しました。

 

[溶接]

溶接システムでは、2018年にコベルコROBOTiX(株)よりREGARCTM搭載石松TMを建築鉄骨市場に投入し、その低スパッタ性と能率向上効果に対して高い評価を頂いてきました。この度、タッチパネルを採用した新型コントローラに、New REGARCTMを搭載したデジタル溶接電源SENSARCTMRA500と本プロセス専用ワイヤであるFAMILIARC™ MG-56R(A)を組合わせたNew REGARCTM搭載石松TMを新たに商品化し、初号機をお客様に納入しました。更なる低スパッタ化と高能率化を実現するとともに、操作性も大きく向上しており、溶接技能者不足を課題としている建築鉄骨市場に対して、今後、技量レスや生産性向上、品質安定化を果たす溶接ソリューションとして提案してまいります。

 

[機械]

回転機・機器関連分野では、当社高砂製作所において、液化水素用オープンラック式気化器(Open Rack Vaporizer、以下ORV)※1を新たに設置し、気化性能の実証試験(以下、本実証)を2025年3月に開始することを決定しました。大規模液化水素気化器の候補であるORVで実際の液化水素を使用しての実証は、世界的にも先進的な取組みとなります。本実証では、当社グループが提案する「ハイブリッド型水素ガス供給システム」の実証試験を発展させる位置付けとして、液化水素気化器の製品ラインナップを以下3つのタイプへと拡充し、水素エネルギーの社会実装に向け、様々なニーズや陸上での使用から船舶への搭載といった使用環境での液化水素利用への対応を目指します。

①中間媒体式気化器(Intermediate Fluid Vaporizer):液化水素による気化実証試験は2023年3月に完了。

②マイクロチャネル熱交換器(Diffusion-bonded Compact Heat Exchanger):液化水素による気化実証試験は2024年3月に完了。

③オープンラック式気化器(ORV):2025年3月から液化水素による気化実証を予定(本実証)。

なお、本実証では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業において、2023年3月末に完了した「液化水素冷熱の利用を可能とする中間媒体式液体水素気化器の開発」の液化水素供給設備を利用することにより、短い準備期間で液化水素用ORVの伝熱挙動や気化性能の確認を実現します。

 

※1 オープンラック式気化器(ORV)は世界中のLNG受入基地において、海水を熱源とした主力のLNG気化器として使用されており、当社ORVは40年以上の実績と高い信頼性を有しています。

 

[建設機械]

ショベルでは、コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)は、燃料電池ショベルのプロトタイプ機を開発中であり、実用化に向けた取組みを進めています。2024年5月22日には幕張メッセで開催された「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO)」にプロトタイプ機を展示、水素を燃料に稼働するデモを初めて社外公開しました。

コベルコ建機は、燃料電池ショベルの開発を加速するため、高砂製作所に水素供給と稼働評価環境を整備し、当社と燃料電池ショベルの連続掘削評価を実施します。本取組みにより、当社グループ全体で水素供給から利用までの課題解決を図ります。また、水素を活用した製品・サービスの開発に積極的に取り組み、水素社会の構築に貢献します。

また、コベルコ建機が、(株)冨島建設、鹿島建設(株)と取り組んだ、土砂災害対策工事現場での「K-DIVE®」を活用した重機遠隔操作の実用化検証が、日本建設機械施工協会が主催する「日本建設機械施工大賞部門 優秀賞」を受賞しました。

クレーンでは、コベルコ建機は、Autodesk社製3D-CADのアドインソフトとして開発した、クレーン施工計画・策定支援ソフト「K-D2 PLANNER®」に、コベルコ建機と(株)タダノのクレーンに加えて、新たに(株)加藤製作所と住友重機械建機クレーン(株)のクレーンを標準搭載しました。2社モデルを追加搭載したことにより、同社製クレーンを利用する現場において「K-D2 PLANNER®」を利用出来るようになりました。これにより、国が推進する働き方改革や現場の安全性・生産性向上へ貢献します。

また、コベルコ建機は、ドローンを活用した移動式クレーンの点検ソリューション「K-AIR REAL」(ケイ・エア・リアル)を開発し、2024年5月末より提供を開始しました。クローラクレーンはブームを立ち上げると数十メートル以上になり、通常は地上にブームを伏せて点検を実施します。ブームを地上に伏せるスペースのない狭隘な現場では、双眼鏡で確認する手法が一般的ですが、見えない部分が多いという課題があり、本課題を解決するため、「K-AIR REAL」を開発しました。ドローンの自動飛行機能を活用し、確実に狙った場所を撮影でき、撮影予定の画角やアングルを3Dシミュレーションシステム上で事前に確認できるため、高所の点検作業を短時間で行えます。

 

3【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、決定又は締結した経営上の重要な契約は、次のとおりであります。

 

1)中国での自動車用アルミパネル合弁会社設立に関する合弁契約締結について

 当社は、2024年8月7日開催の取締役会において、自動車用アルミパネル(以下、アルミパネル)の製造・販売子会社である神鋼汽車鋁材(天津)有限公司と、中国宝武鋼鉄集団有限公司(以下、宝武集団)が過半出資する宝武鋁業科技有限公司(以下、宝武アルミ)のアルミパネル用連続熱処理及び精整工程を統合した合弁会社を設立することについて決議し、8月8日付で合弁契約を締結しました。

 

合弁会社の概要

会社名

宝鋼神鋼汽車鋁板(上海)有限公司(仮称)

Kobelco Baosteel Automotive Aluminum Rolled Products Co., Ltd.(仮称)

出資比率

当社(中国統括会社である神鋼投資有限公司を通じて)50%、

宝武集団傘下の宝山鋼鉄股份有限公司と宝武アルミの合計で50%

資本金

約9億人民元(約180億円)

登録地

中国・上海市

製造拠点

三門峡(中国・河南省)・天津の2拠点

 

 

2)関西熱化学(株)の株式譲渡契約締結について

 当社は、2024年9月30日開催の取締役会において、当社の関連会社である関西熱化学(株)の株式を三菱ケミカル(株)より取得することについて決議し、同日付けで株式譲渡契約を締結しました。なお、本譲渡契約に基づき、10月31日付で株式を追加取得しました。

 詳細は、「第4 経理の状況 1 中間連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。