当中間連結会計期間における、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生はありません。
なお、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更があった事項の現在の状況は以下のとおりであります。以下の見出しに付された項目番号は前事業年度の有価証券報告書に記載した「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」の項目番号に対応するものであります。文中における将来に関する事項は当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、世界各国に生産・販売の拠点を持ち、海外売上比率は6割を超えております。そのため、貿易摩擦による関税の引き上げ、地域紛争によるサプライチェーン分断等、地政学的問題が発生した場合には、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外における事業活動には法律や規制の変更、労務環境の違いによる争議等の発生、人材の採用と確保の難しさ、テロ・戦争・その他の要因による社会的混乱等のリスクが内在しており、これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社とサウジアラビアン オイル カンパニー社(以下「サウジ・アラムコ社」という。)が共同で設立した当社の持分法適用会社であるラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニー社(以下「ペトロ・ラービグ社」という。)は、サウジアラビアのラービグにおいて、石油精製・石油化学の統合コンプレックス事業(「ラービグ第1期計画」及び「ラービグ第2期計画」)を運営しております。
当社は、プロジェクト総投資額に対し、不測の事態による損害に備え、独立行政法人日本貿易保険の規約に従い、海外投資保険等に加入しております。加えて、ペトロ・ラービグ社の行っている銀行借入の一部に対して債務保証を行っております。ペトロ・ラービグ社は、新興国を中心とした新増設設備の稼働や、世界的な景気減速に伴う市況悪化等を要因として業績が低迷しております。その結果、同社の資本金に対する累積損失比率は2024年8月末時点で36.16%に至っております。将来の不確実な経済条件の変動の結果によって、ペトロ・ラービグ社に対する投資の回収可能価額が大きく減少した場合及び債務保証が履行された場合には、当社グループの経営成績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当中間連結会計期間における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。また、当中間連結会計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した当社グループの財政状態または経営成績に重要な影響を及ぼす会計上の見積り、判断及び仮定の記載について重要な変更を行っております。
詳細は、「第4 経理の状況 1 要約中間連結財務諸表 要約中間連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
当社グループの当中間連結会計期間における売上収益は、前年同中間連結会計期間(以下「前年同期」という。)に比べ545億円増加し、1兆2,414億円となりました。損益面では、コア営業利益は295億円、営業利益は1,212億円、親会社の所有者に帰属する中間損益は65億円の損失となり、それぞれ前年同期と比べ改善しました。
医薬品において、基幹3製品であるオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)の売上が拡大しました。情報電子化学においては、需要の拡大に伴い出荷が増加しました。エッセンシャルケミカルズにおいては、原料価格の上昇に伴い販売価格が上昇しました。この結果、売上収益は、前年同期の1兆1,869億円に比べ545億円増加し、1兆2,414億円となりました。
(コア営業損益/営業損益)
医薬品において、基幹3製品の売上が拡大したことに加え、研究開発費を含む販売費及び一般管理費が大幅に減少しました。また、健康・農業関連事業において、メチオニン(飼料添加物)の市況上昇による交易条件の改善等があったことに加え、情報電子化学において、出荷増加の影響が大きく残りました。この結果、コア営業損益は、前年同期の967億円の損失に比べ1,261億円改善し、295億円の利益となりました。
コア営業損益の算出にあたり営業損益から控除した、非経常的な要因により発生した損益は、債務免除に伴うペトロ・ラービグ社に係る持分法による投資利益や固定資産売却益を計上したことにより、918億円の利益となりました。
以上の結果、営業損益は、前年同期の1,337億円の損失に比べ2,549億円改善し、1,212億円の利益となりました。
(金融収益及び金融費用/税引前中間損益)
金融収益及び金融費用は、ペトロ・ラービグ社に対する貸付金の債権放棄に伴う損失や為替差損の計上により1,518億円の損失となり、前年同期の299億円の利益に比べ1,817億円悪化しました。この結果、税引前中間損益は、前年同期の1,038億円の損失に比べ733億円改善し、305億円の損失となりました。
(法人所得税費用/親会社の所有者に帰属する中間損益及び非支配持分に帰属する中間損益)
法人所得税費用は103億円となり、税引前中間損益から法人所得税費用を控除した中間損益は、203億円の損失となりました。
非支配持分に帰属する中間損益は、主として住友ファーマ株式会社等の連結子会社の非支配持分に帰属する中間損益からなり、前年同期の307億円の損失に比べ169億円改善し、138億円の損失となりました。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する中間損益は、前年同期の763億円の損失に比べ698億円改善し、65億円の損失となりました。
当中間連結会計期間のセグメント別の業績の概況は、次のとおりであります。
なお、セグメント損益は、持分法による投資損益を含む営業損益から非経常的な要因により発生した損益を控除した経常的な収益力を表す損益概念であるコア営業損益で表示しております。
(エッセンシャルケミカルズ)
合成樹脂やメタアクリル、各種工業薬品等は原料価格の上昇により、販売価格が上昇しました。この結果、売上収益は前年同期に比べ、127億円増加し4,030億円となりました。コア営業損益は持分法適用会社であるペトロ・ラービグ社の業績が悪化した一方で、市況の改善により、77億円改善し367億円の損失となりました。
(エネルギー・機能材料)
正極材料の原料金属の市況が低水準で推移しました。また、アルミニウムの出荷が減少しました。一方、前年同期低調であった自動車関連用途の出荷は増加しました。この結果、売上収益は前年同期に比べ、111億円減少し1,388億円となり、コア営業利益は固定費の減少等により前年同期に比べ、22億円増加し87億円となりました。
(情報電子化学)
ディスプレイ関連材料、半導体プロセス材料である高純度ケミカルやフォトレジストのいずれも、需要の拡大により出荷が増加しました。この結果、売上収益は前年同期に比べ、206億円増加し2,243億円となり、コア営業利益は前年同期に比べ、197億円増加し375億円となりました。
(健康・農業関連事業)
農薬は米州地域において市況が悪化した一方で、インド等において出荷が堅調に推移しました。また、メチオニンは前年同期に比べ市況が上昇しました。この結果、売上収益は前年同期並みの2,384億円となりました。コア営業利益は前年同期に比べ、212億円改善し136億円となりました。
北米において基幹3製品の売上が拡大しました。一方、国内においては、薬価改定等の影響がありました。この結果、売上収益は前年同期に比べ、283億円増加し1,952億円となりました。コア営業利益は、売上収益の増加に加え、北米グループ会社の再編等による事業構造改善効果の発現や研究開発投資の選択と集中による削減等により、研究開発費を含む販売費及び一般管理費が大きく減少したことから、前年同期に比べ、660億円改善し5億円となりました。
上記5部門以外に、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析業務等を行っております。これらの売上収益は前年同期に比べ、68億円増加し416億円となり、コア営業利益は、持分法適用会社であった住友ベークライト株式会社の一部株式譲渡により、前年同期に比べ114億円増加し157億円となりました。
当中間連結会計期間末の資産合計は、期首から為替が円高方向に変動したことによる換算差等により、前連結会計年度末に比べ2,158億円減少し、3兆7,190億円となりました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,379億円減少し、2兆6,325億円となりました。有利子負債は、前連結会計年度末に比べ691億円減少し、1兆4,944億円となりました。
資本合計(非支配持分を含む)は、その他の資本の構成要素が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ779億円減少し、1兆865億円となりました。
親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末と同水準の24.5%となりました。
当中間連結会計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前中間損益の改善や運転資金の改善により前年同期に比べ1,789億円増加し、635億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資の売却及び償還による収入の増加により、前年同期に比べ1,542億円増加し、744億円の収入となりました。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前年同期の1,951億円の支出に対して、当中間連結会計期間は1,380億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の減少等により、754億円の支出となりました。
以上の結果、売却目的で保有する資産への振替額を加味した当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物の中間期末残高は、売却目的で保有する資産への振替額を加味した前連結会計年度末に比べ559億円増加し、2,734億円となりました。
(4) 経営方針・経営戦略等
当中間連結会計期間において、当社グループの経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
当中間連結会計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
当中間連結会計期間の研究開発費の総額は708億円であります。
また、当中間連結会計期間における、当社グループの研究開発活動の状況の変更の内容は、次のとおりであります。
(健康・農業関連事業)
新規有効成分ピリダクロメチル(一般名)を含有する殺菌剤「フセキフロアブル」の国内販売を2024年5月より開始いたしました。ピリダクロメチルは、当社が独自に発明した、農業用殺菌剤として全く新しい化学グループに分類される化合物であります。「フセキフロアブル」は、既存薬剤の耐性菌が問題となっているだいずの紫斑病やてんさいの褐斑病の防除に寄与することが期待されております。
また、2024年7月にはアルゼンチンにおいて新規除草剤「ラピディシル」(有効成分商標。一般名:エピリフェナシル)及び同有効成分を含む製品の農薬登録を世界で初めて取得いたしました。「ラピディシル」は、当社が独自に開発した有効成分で、速効性があり、幅広い広葉雑草やイネ科雑草に対して高い効果を発揮します。また、不耕起栽培に適した性能を有しており、土壌保全と二酸化炭素排出量の削減によるカーボンニュートラルへの貢献が期待できます。2024年の作付けシーズン向けに「ラピディシル」を含む製品の販売を同国で開始します。
(医薬品)
がん領域では、2024年6月、米国において、enzomenib(開発コード:DSP-5336)について、米国食品医薬品局(FDA)より、MLL(mixed-lineage leukemia)遺伝子の再構成またはNucleophosmin 1(NPM1)遺伝子の変異を有する再発または難治性の急性骨髄性白血病を対象としたファストトラック※の指定を受けました。
その他の領域では、2024年5月、ベルギーにおいて、ユニバーサルインフルエンザワクチン候補製剤(開発コード:fH1/DSP-0546LP)について、フェーズ1試験を開始しました。
※ファストトラック:重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患に対し、治療効果が期待される治療法の開発・審査の迅速化を目的とした制度
(全社共通)
デジタル技術の活用による新規事業創出(DX戦略3.0)として、2024年7月に成分分析を介して天然素材の売り手と買い手をつなぐデジタル・プラットフォーム「Biondo」(ビオンド)をリリースし、専用webサイトをオープンしました。当社が持つ高度な分析技術と豊富な天然資源のデータをベースとし、天然素材を売りたい人と買いたい人をつなぐことにより、お客様の素材探しを効率的にサポートします。
千葉地区にて環境負荷低減技術や新素材の開発拠点として2024年6月に新研究棟「Innovation Center MEGURU」が竣工し、稼働を開始しました。環境負荷低減テーマの加速と早期実現化を目指し、研究体制の強化を図ってまいります。また、本施設では研究者間の交流を促進する空間設計を導入するとともに、建築物省エネルギー表示制度(BELS)の最高ランクを獲得し、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減に適合した建築である「ZEB Ready」の認証も取得するなど、環境に配慮した設計が施されております。
当中間連結会計期間において締結した、経営上の重要な契約等は以下のとおりであります。
(1) ニュージーランド アルミニウム スメルター社及びボイン スメルター社の株式売却に関する契約
当社は、2024年5月、当社が保有するニュージーランド アルミニウム スメルター社及びボイン スメルター社の全株式を、リオ ティント社に売却する契約を締結しました。
(2) ペトロ・ラービグ社の株式売却に関する契約
当社は、2024年8月、ペトロ・ラービグ社株式の当社持分約22.5%を、サウジ・アラムコ社に売却する契約を締結しました。本再編は、規制当局及び第三者の承認を含む条件を前提としております。なお、本契約において、当社及びサウジ・アラムコ社は、当社の株式売却対価(総額約702百万米ドル)と、それに加えてサウジ・アラムコ社からその同額のペトロ・ラービグ社への拠出、及びペトロ・ラービグ社に対してそれぞれ750百万米ドルの貸付金の債権放棄について合意しました。
(3) ペトロ・ラービグ社向け貸付金の債権放棄に関する契約
当社は、2024年8月、(2)に記載した債権放棄についてのサウジ・アラムコ社との合意に基づき、ペトロ・ラービグ社に対する貸付金500百万米ドルの債権放棄実施に関する契約を締結し、当該債権の放棄を実施しました。なお、残り250百万米ドルの貸付金については、2025年1月に債権放棄実施に関する契約締結及び債権放棄の実施を予定しております。
(4) 住友ベークライト株式会社の株式譲渡に関する契約
当社は、2024年9月、当社が保有する住友ベークライト株式会社の株式の一部を、シンガポール政府投資公社に譲渡する契約を締結し、本譲渡を完了しました。なお、本売却に伴い住友ベークライト株式会社は当社の持分法適用会社から除外されております。
(5) 借入契約
当社の連結子会社である住友ファーマ株式会社は、前連結会計年度において、2023年3月に実施したマイオバント サイエンシズ リミテッドの完全子会社化に係る資金の一部の追加借入として、短期資金借入契約を締結しており、当中間連結会計期間において、これらに関連する借入契約の契約期限を2024年12月末まで延長しております。なお、これらの借入契約に対し、当社が債務保証を行っております。
当中間連結会計期間において契約の更改により契約の相手先を変更した、経営上の重要な契約等は以下のとおりであります。
技術導入関係