当中間連結会計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。また、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績に関する経営者の説明および分析
地球温暖化が引き起こす気候変動により、深刻な大災害が世界各地で頻発しています。2023年11月には第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催され、世界の気温上昇を1.5度に抑えるという目標に対し、二酸化炭素など地球温暖化の主な原因となる温室効果ガスを、2019年対比で2030年までに43%、2035年までに60%排出削減する必要があることが、採択された決定文書に明記されました。
温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言する国や地域が増加し、GX(※1)に向けた取組みの成否が企業、ひいては国家の競争力に直結すると考えられる中、我が国においては「GX推進法」に基づき、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時に実現することを目指し、脱炭素電源への転換等の取組みや、官民で150兆円のGX投資を行う等の方針が掲げられています。企業は継続的価値創造のためにデジタルテクノロジーを活用し、企業組織やビジネスモデルそのものを脱炭素型・社会課題解決型へ変容させることが求められています。
国内DX(デジタルトランスフォーメーション)市場は、企業のデジタル投資の活況を背景に、2022年度3兆4,838億円(実績)から2030年度には8兆350億円に拡大すると予測されています(株式会社富士キメラ総研 2024 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、2024年3月7日発刊)。一方で、企業がインターネットやデジタルテクノロジーに精通したクリエイター人材を自社で採用・育成することは難しい状況であり、人材不足が企業のデジタル推進を阻む大きな壁となっています。DX動向2024によると、日本企業の8割以上が、DXを推進する人材は質・量ともに不足していると回答しています。特に、人材の質ないし量が「大幅に不足している」と回答した割合が前年度と比較しともに増加しており、DXの取組みが推進される中、人材不足は深刻化していると言えます(独立行政法人情報処理推進機構 DX動向2024、2024年6月27日発行)。
このような状況において、当社グループはミッション「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、顧客企業へのDX現場支援を通じGXを実現させ、顧客企業とともに経営スタイルやマーケティング活動、サービスおよびプロダクトを「地球と社会を持続可能なもの」へと転換させることを目指しております。
<事業の概況>
2024年4月より、顧客企業のDXニーズに合わせ、各本部および専門カンパニーを「制作/UIUX」「デジタルマーケティング」「デジタルサービス開発」「データ活用支援」の4つの事業領域に再編しました。各事業領域においては、様々な専門スキルを持ったデジタルクリエイターが3名以上で顧客専任チームを編成し、顧客企業のDXプロジェクトの現場を顧客と共に実際に手を動かしながら改善、伴走支援するモデル「DGT(Digital Growth Team)」を提供し、顧客企業一社あたりの取引規模拡大を図ります。
加えて2024年4月より、「中期的な成長に向けた戦略」に基づき事業を推進しており、2025年3月期は、2027年3月期までに高収益ならびに高成長率体制を実現するべく、その土台を固めるための初年度と位置付け、事業基盤を再構築してまいります。
<連結決算の概況>
当中間連結会計期間の売上収益は10,384百万円(前年同期比8.0%増)、営業損失は479百万円(前年同期は551百万円の営業損失)、税引前中間損失は464百万円(前年同期は562百万円の税引前中間損失)、親会社の所有者に帰属する中間損失は321百万円(前年同期は398百万円の親会社の所有者に帰属する中間損失)となりました。
売上収益は前年同期比8.0%増、重要指標としている付加価値売上高(売上収益から外注・仕入を差し引いた社内リソースによる売上高)は9,961百万円、前年同期比10.3%増となり、中間連結会計期間としては過去最高を更新しました。UIUXデザインやプロダクト・サービス開発、データなどの専門カンパニーのサービスを中心に、より高い需要が見込まれるDX領域において人材育成ならびに営業体制を戦略的に強化したことにより、従来主力領域であったWeb運用領域の付加価値売上高の成長率が鈍化した一方、DX領域の付加価値売上高は高い成長率を継続しています。
新卒社員が入社したこと等による人員増加率に対し付加価値売上高の成長率が下回り、売上総利益率は前年同期比で低下したものの、当第2四半期連結会計期間の売上総利益率は19.2%と、第1四半期連結会計期間の売上総利益率13.8%に比して改善しました。また、中途採用抑制や教育投資の効率化などコストコントロールを徹底したことにより、売上収益に対する販売費及び一般管理費の比率は前年同期比で改善しました。その結果、当第2四半期連結会計期間は営業黒字に転じ、当中間連結会計期間における営業損失は479百万円と前年同期比で71百万円改善いたしました。
「中期的な成長に向けた戦略」で掲げる主要戦略、当中間連結会計期間末におけるKPIの進捗および今後の取組みは下記のとおりです。
1.収益性の回復・高収益事業の確立
2024年4月に新卒社員が411名入社しましたが、2025年以降は新卒社員の採用数を付加価値売上高の成長率の範囲内に抑制し、人材ポートフォリオにおける新卒割合の改善を図ります。併せて、グループ全体で利益重視のマネジメントを徹底し、稼働率が適切な水準になるまで中途採用の抑制、人員配置の最適化などにより、新卒1、2年目を除くデジタルクリエイターの稼働率向上に最注力し、未稼働人材を解消いたします。それらの取組みにより、売上総利益率を改善し収益性を回復することで、営業利益率を中期的には段階的に5%、10%と高めてまいります。
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KPI |
実績値 |
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・新卒1、2年目を除くデジタルクリエイターの稼働率 ・売上総利益率(連結) |
82.8%(前年同期比2.6ポイント低下) 16.6%(前年同期比1.2ポイント低下) |
当中間連結会計期間末におけるデジタルクリエイター数は2,762名、前期末比280名増(増加率は11.3%)、新卒1、2年目を除くデジタルクリエイター数は1,828名、前期末比363名増(増加率は24.8%)となりました。KPIである新卒1、2年目を除くデジタルクリエイターの稼働率、ならびに売上総利益率は第1四半期連結会計期間に比して改善傾向にあるものの前年同期比で低下しました。
更なる収益性の回復に向け、引き続きコストコントロールを徹底するとともに、新卒1、2年目を除くデジタルクリエイターの稼働率の改善に最注力いたします。加えて、付加価値売上高の成長率を引き上げるべく、人材育成ならびに営業体制の強化に取り組み、DX領域におけるデジタルクリエイター数の増加ならびに稼働拡大を図ります。
2.高成長事業の確立
上記施策と並行し、以下2点を強力に推進することで、付加価値売上高成長率20%超へと中期的に引き上げを図ります。
①サービス戦略の抜本的強化
顧客企業のDX支援領域として「制作/UIUX」「デジタルマーケティング」「デジタルサービス開発」「データ活用支援」の4つの事業領域で、当社のグループとしての強みを築き上げるサービスを明確にすると同時に、事業領域内でのクロスセルにより主力顧客へのサービスを進化させ、取引拡大につなげます。主要顧客に対しては事業領域を跨いだアカウントマネジメントを強化し、既存の顧客企業一社あたり売上収益の最大化を強力に推進してまいります。この取組みにより、年間取引額1億円以上を基準とした大口取引社数を増加させてまいります。
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KPI |
実績値 |
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・DGT一社あたり付加価値売上高 ・年間売上収益1億円以上の取引社数 |
2,820万円(前年同期比9.5%低下) 50社見込み(前期末比4社増) |
前連結会計年度において新規の取引社数が増加した影響で、当第2四半期連結会計期間におけるDGT一社あたり付加価値売上高は低下しました。一方、DGT上位50社の一社あたり付加価値売上高は、Web運用領域が中心であった顧客企業に対してデータ活用支援やプロダクト開発等のDX領域のサービスを展開し、6,330万円(前年同期比2.6%増)と成長しました。なお、当中間連結会計期間における専門カンパニーの付加価値売上高は3,197百万円、前年同期比42.3%増と引き続き順調に成長しました。
当連結会計年度は一社あたり年間売上収益の拡大に注力する方針であり、年間1億円以上の取引社数は当中間連結会計期間末時点で50社(前期末比4社増)を見込んでおります。今後更に拡大させるべく、顧客との関係構築に一層注力してまいります。また、アカウントマネジメントを強化し、顧客の投資需要が見込まれるAI・データ活用支援やプロダクト開発などのDX領域におけるサービスを中心にクロスセルを進めてまいります。
②顧客のDX内製化伴走支援ポジションの獲得
顧客企業のDXの内製化の取組みが大きく進む中で、当社はこれまで「実行運用」フェーズに集中してサービスを提供してまいりましたが、今後はこれまでに培ってきたUIUXデザインやアジャイル開発などによるデジタルビジネス成果向上支援の強みを活かしつつ、顧客のDX投資効果最大化の実現に貢献するために、「実行企画・推進」フェーズにおけるサービスをより注力し、各段階においてデジタルクリエイターが顧客に伴走支援する体制へとポジションを転換します。これを実現するべく、プロジェクトの進行、品質および予算管理、プロジェクトチームの人材調整などのプロジェクト全体のマネジメントを行うPMO人材(※2)の育成を強化します。従来のデジタルの専門技術育成のみならず、ビジネススキルやコンピテンシーの育成も強化し、業界一、顧客企業のDX現場の改善に伴走できるデジタル人材を数多く輩出することを目指します。
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KPI |
実績値 |
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・売上単価 ・PMO人材数 |
870,189円(前年同期比1.1%増) 152名(前期末比85名増) |
売上単価は、新卒1、2年目のデジタルクリエイターの稼働が増えたことにより第1四半期実績に比べ低下し、前年同期比微増となりました。
また、PMO人材数は前期末比85名増の152名と、2025年3月期末の目標である120名を超過しており、注力しているPMO人材育成は順調に進捗しております。さらに今後はUXデザイナーやマーケティングDX人材など顧客に伴走するDX人材の育成を強化し、DX領域への転換を加速させます。またクリエイターが自主的に学び続けられる環境を整備し、加えて、顧客企業の現場支援におけるノウハウの蓄積などによりPMO・DX人材の稼働を推進し、売上単価の向上を図ります。
3.将来への投資
当社のミッションおよびVISIONの実現に向けて更なる成長を目指すべく、脱炭素DX(※3)事業の確立と脱炭素DX人材の育成に取組み、顧客企業のサステナブル経営に向けた基盤確立を支援してまいります。
当中間連結会計期間における脱炭素DXカンパニーの付加価値売上高は前年同期比で大幅に拡大しました。急激な気候変動の影響や国際情勢によりGX市場は急速に拡大し、GXリテラシーとデジタルスキルを兼ねそなえた脱炭素DX人材のニーズは加速度的に高まると予想しております。今後3年で脱炭素DX人材1,000名の育成・輩出を目指します。
上記の通り、新卒・中途採用を抑制すると同時に、新卒1、2年目を除くデジタルクリエイターの稼働率の引き上げに最注力し収益化フェーズへの転換を推進しております。これにより、営業利益率を2026年3月期は5%、2027年3月期は10%を目標とし、高収益事業を確立させてまいります。
中長期的には、付加価値売上高の更なる成長を目指し、人材育成ならびに営業体制を強化し、顧客企業のDX支援領域として4事業でのサービス展開とDX内製化伴走支援のポジションを確立させ、20%以上の高い成長率へ引き上げることを目指します。
以上の方針を着実に実行することで、2027年3月期において、付加価値売上高成長率25%、営業利益率10%の達成を目指してまいります。
デジタルテクノロジーの更なる進化や世界的な脱炭素への取組み、および日本の人口減少の影響等を受け、企業のデジタル投資は一段と加速すると同時に、IT/デジタル人材の不足は更に拡大するものと捉えております。そのような環境において、当社グループは引き続き専門スキル育成等への人材投資を通じて、顧客への価値創造の源泉であるデジタルクリエイターのスキルの向上ならびに社員エンゲージメントの向上等、人的資本の拡充に取組み、顧客企業へのDX現場支援を通じ、顧客と共に社会変革をリードすることを目指してまいります。
(※1)GX(グリーントランスフォーメーション):化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用するための変革やその実現に向けた活動のこと。経済産業省では、「2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組みを経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けた、経済社会システム全体の変革」と定義。
(※2)PMO(Project Management Office):企業や各組織のプロジェクトを円滑に進めるために、部署の枠をこえて横断的にプロジェクトマネジメントを統括する部門や体制を指す。プロジェクトを統括し、様々な意思決定を担う立場であるPM(Project Manager)に対し、PMOはPMが円滑に意思決定できるよう情報収集や関係各所との調整を行い、PMのプロジェクトマネジメントを支援する立場。
(※3)脱炭素DX:GHG(Greenhouse Gas=二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス)排出量を減らしながら経済成長を続ける「デカップリング・モデル」をデジタルテクノロジーの力で実現することを指す。
(2)財政状態の分析
資産、負債及び資本の状況
当中間連結会計期間末の資産合計は10,358百万円(前連結会計年度末比1,168百万円の減少)となりました。これは主として、繰延税金資産が156百万円、棚卸資産が126百万円、使用権資産が117百万円増加したものの、営業債権及びその他の債権が972百万円、現金及び現金同等物が557百万円減少したことによるものです。
負債合計は、5,130百万円(前連結会計年度末比462百万円の減少)となりました。これは主として、リース負債が136百万円増加したものの、営業債務及びその他の債務が425百万円、その他の流動負債が189百万円減少したことによるものです。
資本合計は、5,228百万円(前連結会計年度末比706百万円の減少)となりました。これは主として、利益剰余金が717百万円減少したことによるものです。
(3)キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末より557百万円減少し、3,219百万円となりました。当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間において営業活動の結果獲得した資金は、110百万円(前年同期は212百万円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、営業債権及びその他の債権の減少額976百万円、減価償却費及び償却費309百万円、法人所得税の還付額114百万円によるものであり、支出の主な内訳は、税引前中間損失464百万円、営業債務及びその他の債務の減少額428百万円、その他247百万円、棚卸資産の増加額126百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間において投資活動の結果使用した資金は、23百万円(前年同期は35百万円の使用)となりました。収入の主な内訳は、投資の売却による収入49百万円、敷金及び保証金の回収による収入27百万円によるものであり、支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出48百万円、投資の取得による支出44百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間において財務活動の結果使用した資金は、644百万円(前年同期は543百万円の使用)となりました。支出の主な内訳は、配当金の支払額396百万円、リース負債の返済による支出250百万円によるものです。
(4)連結業績予想などの将来予測情報に関する説明
2024年5月10日に発表した2025年3月期通期の連結業績予想に変更はありません。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当中間連結会計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
該当事項はありません。
(7)従業員数
当中間連結会計期間において、当社グループの従業員数は281名増加し3,087名、臨時従業員数(平均雇用人員)は62名となりました。これは主に業務拡大に伴う採用によるものであります。
(8)主要な設備
前連結会計年度末において計画中であった主要な設備の新設、休止、大規模改修、除却、売却等について、当中間連結会計期間に著しい変更があったものは、次のとおりであります。
(新設)
当中間連結会計期間に完了した主要な設備の新設は次のとおりであります。
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事業所名 (所在地) |
セグメントの名称 |
設備の内容 |
投資額(千円) |
完了年月 |
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武蔵小杉オフィス (神奈川県川崎市) |
ネットビジネス支援事業 |
事務所内装設備・什器等 |
98,270 |
2024.5 |
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大阪オフィス (大阪府大阪市) |
ネットビジネス支援事業 |
事務所内装設備・什器等 |
32,523 |
2024.9 |
該当事項はありません。