文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、人体が本来備えている組織修復能力を引き出す「再生誘導医薬®」をはじめとした最先端生命科学研究の成果をもとに、新しいコンセプトの治療薬を生み出し続けることで、世界の健康と幸福の実現に貢献することを経営理念として掲げております。
(2)目標とする経営指標等
現在、研究開発段階にある当社は、ROA、ROEその他の数値的な目標となる経営指標等は用いておりません。現在、当社の主要な開発品目であるレダセムチドについては、栄養障害型表皮水疱症、脳梗塞を適応症とする開発が先行する段階にあり、慢性肝疾患、変形性膝関節症、心筋症を適応症とする開発が続いております。当社は、これらの開発を推進することはもちろん、更なる他の適応症への展開や後発パイプラインの開発推進、新たな開発候補品の探索等を行い、開発パイプラインを質・量ともに充実させることが、企業価値を高め、経営を安定させる上で不可欠の目標と認識しております。当該目標達成のために、共同研究や事業提携を推進するとともに、より充実した研究・開発体制の確立のための設備導入等の施策を実施してまいります。
(3)経営環境及び対処すべき課題等
当社が属する再生医薬品分野は、世界的にも普及段階まで至っておらず、このような最先端医療分野は環境変化のスピードが極めて早いと考えられ、潜在的な競争相手に先行し、他社の知的財産権を上回る開発をする必要性があります。
このような経営環境の下、当社が対処すべき当面の課題としては、主に下記①~④の4点があります。
① 既存事業の展開支援と新規事業の開発推進
レダセムチドについては、塩野義製薬への導出が完了していることから、今後も引き続き、導出先企業による臨床開発が滞りなく進められ、さらに、将来幅広い適応症に対して開発が展開されるよう、導出先企業に対する側面支援を継続していくことが、当社の重要な役割であると考えております。また、大阪大学において虚血性心筋症を対象として実施されている医師主導治験、新潟大学において慢性肝疾患を対象として実施されている医師主導治験、弘前大学において変形性膝関節症を対象として実施されている医師主導治験に対する継続的な支援も、引き続き、当社の重要な役割であると認識しております。
レダセムチド以外の再生誘導医薬®開発候補品については、再生誘導医学協働研究所における産学連携による大阪大学をはじめとした各大学とのコラボレーションの推進など、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物質スクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する複数の新規候補化合物を同定するに至っております。それらの再生誘導医薬®開発候補品の導出活動を促進し、新たな事業提携に繋げていくことが、今後の当社の重要な経営課題であると考えております。
具体的には以下のような内容になります。
■ 新規再生誘導医薬®の開発について
開発リスクの分散と企業価値の向上を目指して、当社では、新規再生誘導医薬®候補物質の探索研究を積極的に進めております。これまでの研究を通じて同定した複数の候補物質について、疾患モデル動物を用いた薬効試験で治療効果を確認し、その一部につき特許出願を完了するなど、着実に成果を積み重ねております。この探索研究を更に推し進め、既存の開発品を補完する新たな薬効プロファイルを有する新規再生誘導医薬®の開発を進めます。
■ 生体内治療用細胞採取デバイスの開発について
再生誘導医薬®の研究成果を基礎として、生体内に埋没したデバイス内に集積させた治療用の細胞を採取する技術を研究中です。対象疾患は、皮膚や骨、軟骨、筋肉などの難治性損傷性疾患等になります。
■ 間葉系幹細胞を標的とした遺伝子治療技術開発について
脳梗塞、心筋梗塞といった後天的組織障害の治療に対して、再生誘導医薬®は循環血流を介した骨髄由来間葉系幹細胞供給という極めて画期的な治療効果を発揮します。しかし、表皮水疱症、血友病、代謝異常症など、先天的機能障害の根治的治療を実現するためには、それぞれの病態における根本原因である遺伝子異常の改善、すなわち遺伝子治療が必要であることは言うまでもありません。遺伝子治療の成功は、生体内のどの細胞をどのように遺伝子治療するかにかかっており、特に長期間の根治的な治療効果を得るためには、それぞれの臓器・組織で長期間細胞を供給し続ける組織幹細胞の遺伝子治療が必要不可欠です。再生誘導医薬®開発の経験を活かし、生体内で長期間機能する可能性のある骨髄間葉系幹細胞を標的とした、遺伝子治療の開発を目指します。直近では、現在治療法の全くない遺伝性皮膚難病に苦しむ患者に向けて、低侵襲性生体組織採取法による高度な根治的治療の研究を進めています。
■ 生体組織の網羅的単一細胞機能評価技術を基盤にした生体幹細胞高機能化医薬開発について
創薬成功確率を高める鍵は、開発候補品を投与した後の各臓器・組織の生体反応を如何に正確かつ漏れなく把握できるかにあります。当社は大阪大学と共同で、生体内間葉系幹細胞の単一細胞レベルの遺伝子発現解析、網羅的遺伝子構造解析の研究を進め、その技術を確立しています。
以上の技術を利用して、現在当社と大阪大学は、第1、第2、第3世代の再生誘導医薬®が生体の各臓器・組織の個々の細胞に与える網羅的遺伝子発現変化、網羅的遺伝子構造変化について、詳細なデータベースの蓄積を進めております。現在、本邦はもとより世界的視点から見ても、単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析、網羅的遺伝子構造解析が可能な施設はNIH(アメリカ国立衛生研究所)などの限られた大規模研究施設に限定されており、ベンチャー企業レベルでその技術を有していることは当社の創薬開発技術が世界に通用し得ることを示すものと確信しております。今後、当社の創薬研究のみならず、国内外のアカデミア研究者や製薬企業とこの技術を共有することにより、国内外の創薬開発の確率向上、安全性及び有効性評価に大きく貢献するとともに、組織幹細胞のもつ組織再生作用を安全に最大化する、世界に類の無い再生誘導医療®の開発を進めて行く予定です。
■ 細胞治療分野の再生誘導技術基盤における今後の展開について
当社が注力してきた再生誘導技術基盤は、効率よく循環血流中に幹細胞を動員し、動員した幹細胞を損傷組織に集積させ、分化能を損なわせることなく、自己の幹細胞を活用し損傷組織の再生を誘導する技術です。これらの技術基盤は、医薬品で生体の組織再生を促進するという、細胞治療領域において計り知れないポテンシャルを有するものと考えております。
当社は、当該技術基盤を用いて、低コストかつ高い安全性を保ちながら機能回復や組織再生を可能にすることにより、「細胞治療の常識を変えていく」ことを課題として開発を推進していきます。
② 臨床応用の加速
再生誘導医薬®は生体内に存在する間葉系幹細胞を活性化することにより、損傷組織の機能的再生を促進しますが、生体内における間葉系幹細胞については、正確な局在、機能、性質、種類など不明な点も数多く存在します。
一方で、大阪大学と当社は、これまで10年以上の長期間にわたり、再生誘導医薬®の共同研究を続け、数多くの知見やノウハウを手にしています。また、これまでに再生誘導医薬®における表皮水疱症、急性期脳梗塞、慢性肝疾患及び変形性膝関節症を対象とした臨床治験が実施されております。大阪大学と当社が蓄積してきた基礎研究の膨大なデータと臨床研究及び治験のデータの相互評価及び相互利用によって、今後も引き続き再生誘導医薬®における臨床応用を加速させることが、当社の重要な経営課題であると認識しております。
③ 研究助成金の獲得
医薬品の研究開発には、多額の先行投資が必要とされ、同時に少なからぬ開発リスクが伴います。当社では、プロジェクトが非臨床試験若しくは早期臨床開発段階に達した時点で、製薬企業との提携若しくは候補品の導出を行い、比較的早期に自社の開発費負担を低減させることを基本戦略としておりますが、それでもなお、候補物質スクリーニング法の開発と薬効メカニズム検討のための基礎研究、候補化合物の探索研究、パイロット製造、薬効薬理・安全性試験など、臨床試験に至るまでの過程で多大な研究開発費を自社で負担する必要が生じます。
これまで当社は、公的研究助成金を積極的に活用することで、これらリスクの高い早期探索研究に要する研究開発費の負担を補ってまいりました。既存プロジェクトの導出が完了し、今後、探索研究段階にある新規プロジェクトの数が増加していくことからも、引き続き、公的研究助成金を積極的に獲得し活用していくことが、当社の重要な経営課題であると認識しております。
④ 優秀な人材の育成及び獲得
当社が取り組む再生誘導医薬®の分野は、今後、国内外バイオ・製薬企業との競争が激化することが予想され、より一層の研究開発の加速と競合他社との差別化が必要になると考えております。そのため、独創的な研究活動を支える優秀な研究人材の育成及び獲得は、当社の喫緊の経営課題であると認識しております。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
・サステナビリティに関する考え方
当社は、「再生誘導®で難治性疾患を克服する」を企業理念に掲げ、大阪大学をはじめとする各大学との共同研究並びに再生誘導医学協働研究所での研究成果を最大限に活用し、従来の再生医療及び細胞治療が抱える課題を克服した次世代の医薬品である「再生誘導医薬®」の開発に注力しております。当社のミッションである「再生誘導医薬®の開発を通じて、難治性疾患に苦しむ世界中の患者の皆様に笑顔をお届けすること」は、社会に多大な影響をもたらすものと確信しております。今後も、再生誘導医薬®の開発事業を通じて社会の発展に寄与するとともに、事業に関連する社会の重要課題への取り組みを継続してまいります。
・マテリアリティについて
当社では、「社会・ステークホルダーにとっての重要性」と「ステムリムにとっての重要性」の2つの視点から課題を精査し、その中でも特に重要と判断した6つを重要課題(マテリアリティ)として特定し、そのうち4つを最優先課題として設定いたしました。特定したマテリアリティに対する取り組みを推進することにより、「再生誘導医薬®の実現を通じて難治性疾患に苦しむ世界中の患者の皆様に笑顔をお届けする」という当社のミッションのもと、社会課題の解決と持続的成長の両立を目指して邁進してまいります。
※マテリアティの分類をE(環境)S(社会)G(ガバナンス)で記載しております。
(1)ガバナンス
当社は、サステナビリティに関する取り組みを企業経営における最重要課題の一つとして位置付け、これを推進するためのガバナンス体制を厳格に構築しております。具体的には、代表取締役が責任者として全体の統括を行い、経営管理部が事務局の役割を担い、当該分野における具体的な方針や戦略の検討および計画の策定を実施しております。経営管理部は、サステナビリティに関する考え方に則り、各種課題に対して適切に対応するための体制を整備し、当社の持続的成長に寄与するための活動を着実に推進してまいります。
また、当社はサステナビリティ関連のリスク及び機会を、その他の経営上のリスク及び機会と一体的に監視及び管理しております。詳細は、「
(2)戦略
■再生誘導医薬®の開発を通じて、社会的課題の解決に取り組む
当社は、再生誘導医薬®の実現に向けた開発活動を通じ、社会的課題の解決に積極的に取り組んでおります。難治性疾患や高齢化に伴う慢性疾患の増加など、現代社会が抱える多様な医療ニーズに対応するため、新たな治療法の開発に注力し、様々な医療課題に革新的なアプローチで対応してまいります。また、これらの取り組みを通じ、当社は単に医薬品の開発にとどまらず、医療アクセスの向上や地域医療の支援といった幅広い社会的課題の解決に寄与できると確信しております。レダセムチドについては、塩野義製薬への導出が完了しているため、引き続き塩野義製薬による臨床開発が滞りなく進められ、将来幅広い適応症に対して開発が展開されるよう、支援を継続してまいります。レダセムチド以外の再生誘導医薬®開発候補品については、引き続き導出活動を促進し、新たな事業提携に繋げていくことができるよう取り組んでまいります。
■多様な人材が活躍できる職場風土の醸成
「再生誘導医薬®の開発を通じて、難治性疾患に苦しむ世界中の患者の皆様に笑顔を届けたい」という当社のミッションを実現するためには、高度な専門的知識、技能及び経験を有する多様な人材の確保と継続的な育成、さらに社員がいきいきと活躍できる職場風土の醸成が、重要課題の一つであると認識しております。この課題の維持・向上に向け、当社は基本的な人事施策の実施に取り組んでおります。具体的には、2021年にフレックスタイム制度を導入し、社員がライフスタイルに応じて出勤時間、退勤時間、及び労働時間を柔軟に選択できるようにすることで、生産性の向上に寄与しております。また、従業員及び派遣社員を対象としたストック・オプション制度を導入しており、優秀な人材確保及び定着に向けた取り組みを進めております。さらに、研修管理システムを活用し、コンプライアンス研修、情報セキュリティ研修、ハラスメント防止研修等、多岐にわたるオンライン研修を定期的に実施することで、人材育成に努めております。
■安全で働きやすい職場環境の構築
当社では、社員の多様性を尊重し、各人がその能力を最大限に発揮できるよう成長を支援することが、持続的かつ安定的な組織の成長に直結すると考え、各種人事施策の推進に積極的に取り組んでおります。社員にとって働きやすい職場環境を実現するため、施策の内容については定期的に見直しを行っております。具体的には、出産や育児などのライフステージの変化に柔軟に対応できるよう、仕事と育児の両立を支援するための出産育児休暇・休業制度、時短勤務制度等の各種制度を整備し、社員の多様なニーズに応える環境を整えております。
■資源の循環利用の促進
当社では、すべての経営資源を最大限に有効活用することにより、グローバルな持続可能社会の実現を目指し活動を推進しています。また、分別廃棄の徹底や節電を通じたCO2排出削減を図るほか、社内における紙資源等の効率的な活用を推進し、持続可能社会並びに資源循環型社会の構築に向けて全社的に取り組んでおります。今後も、社会及び事業の持続的発展に貢献するべく、不用品の消費の見直しを含めた資源の有効利用を徹底し、貴重な資源の最適な活用に努めてまいります。
■知的財産の保護・強化
当社のビジネスモデルは、製薬企業に対し当社が開発する医薬品の開発権・販売権等をライセンスアウトし、その対価として契約一時金、研究進捗に応じたマイルストーン収入、並びに製品販売時の一定割合のロイヤリティ収入を通じて収益を確保するというものであります。このため、当社の保有する知的財産を適切に管理・活用することは、企業価値の向上において極めて重要な要素と位置付けております。企業価値の向上を図るべく、自社の事業を支える知的財産の戦略的な確保及び取得済み知的財産の適切な維持・管理に注力しております。さらに、当社の知財部門には、弁理士資格を有するもののみならず、再生誘導医薬®に関する高度な専門的知識を持つ人材が在籍しており、国内外の市場における特許出願及び知的財産の保護に積極的に取り組んでおります。
■コンプライアンスの徹底
当社では、役員、派遣社員を含む従業員のコンプライアンス意識の向上を図ることを目的として、研修管理システムを活用したコンプライアンス研修、情報セキュリティ研修、ハラスメント防止研修等、多岐にわたるオンライン研修を定期的に実施しております。これらを通じて、役職員におけるコンプライアンスに対する理解力の向上や、コンプライアンスを意識した業務上の適切判断の実践に努めております。
また、社内外でのコンプライアンス違反、兆候の通報・相談窓口として内部通報窓口を整備し、コンプライアンス違反の早期発見及び未然防止に努めております。内部通報窓口には部門長、弁護士のみならず、比較的相談しやすい人員を窓口に配置することで、より早期に問題事案を把握することが期待でき、内部通報制度を通じた透明性の高い組織構築の実現を目指す方針です。
さらに、コンプライアンス体制の有効性を確認や実効性の確保を目的として、リスク・コンプライアンス委員会を定期的に開催しております。リスク・コンプライアンス委員会では、内部通報制度の実効性、社内コンプライアンス体制について定期的に見直しを行い、社内コンプライアンスの遵守体制の整備に努めております。
詳細については、「
(3)リスク管理
当社ではサステナビリティに関連するリスク及び機会を、その他の経営上のリスク及び機会と一体的に監視・管理しております。詳細は、「
(4)指標及び目標
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしも事業上のリスク要因に該当しないと考えられる事項についても、投資家の判断において重要と考えられる事項は、積極的な情報開示の観点から記載しています。当社は、これら事業等のリスクを認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応を図り事業活動を行っていますが、このような諸策の成否には不確実性が存在します。また、当社の事業はこれら以外にも様々なリスクを伴っており、下記の記載はリスクを網羅するものではありません。当社は、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)再生医療事業全般に係るリスク
① 医薬品パイプラインの開発及びそれに伴う収益獲得の不確実性
医療用医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い年月を要しますが、臨床試験で有用な効果を発見できないこと等により、研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断を行うことは稀ではありません。また、日本国内はもとより、海外市場の展開においては、各国の薬事関連法等の法的規制の適用を受けており、新薬の製造及び販売には各国別に厳格な審査に基づく承認を取得しなければならないため、有効性、安全性及び品質等に関する十分なデータが得られず、予定していた時期に上市できずに延期になる、又は上市を断念する可能性があります。
これは、当社のパイプラインを他社にライセンスアウトした場合も同様であり、当社が研究開発を行った医療用医薬品候補及び他社にライセンスアウトした医療用医薬品の候補の上市が延期又は中止された場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。
② 再生誘導医薬®の開発に関するリスク
(ⅰ)先端医療に関する事業であることに由来するリスク
当社が研究開発を進める再生誘導医薬®とは、患者本人の体内に存在する幹細胞の働きを高めることで、怪我や病気によって損傷した組織や臓器の自己修復/再生を促進させる新しいタイプの医薬品です。再生誘導医薬®は、細胞の採取や生体外培養を一切必要とせず、医薬品の投与のみによって、患者本人の体内に存在する幹細胞を損傷部位に動員し、組織の機能的な再生を促します。医薬品により「再生医療」を実現する再生誘導医薬®は、細胞を一旦生体外に取り出し培養したのちに体内に戻す、従来型の「再生医療」の実用化に伴う課題を一気にクリアし、難病に苦しむ世界中の患者の手に届く、革新的な治療手段となり得るものと考えております。
しかしながら、現在において、再生誘導医薬®が医療用医薬品として当局から製造承認を受けたものはありません。また、他の再生医療技術についても、現時点では本格的な普及段階には至っておらず、主に特定の医療機関や研究機関が用いる高度な医療技術として比較的限定された範囲での臨床研究・臨床試験を中心として行われております。
こういった現状の背景には、最先端の医療・医薬品に特有の課題やリスクが存在します。まず再生医療の基盤となる学問や技術が急速な進歩を遂げている中で再生医療そのものに関する研究開発も非常に速いスピードで進んでおり、日々新しい研究開発成果や安全性・有効性に関する知見が生まれてきております。
当社の再生誘導医薬®は現時点では新規性の高い再生医療技術であり、また学術的に見ても安全性・有効性・応用可能性ともに他の再生細胞薬等よりも優れていると自負しておりますが、一方で常に急激な技術革新の波に追い越されるリスクや想定していない副作用が出るリスクが存在し、またそのために当社の事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(ⅱ)法規制改正・政府推進政策等の変化に由来するリスク
再生誘導医薬®に関連する法規制についても、最新の技術革新の状況に対応すべく常時変更や見直しがなされる可能性があります。例えば、法律・ガイドライン等の追加・改正により、これまで使用が認められてきた原材料が突然全く使用できなくなるといったリスクや当社の想定通りの内容で薬事承認が下りない又は薬事承認の取得に想定以上の時間を要するといったリスクも否定できません。また世界的な医療費抑制の流れの中で、当社が想定している製品価値よりも低い薬価・保険償還価格となる可能性もあります。当然このような場合には、当社の事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また現在、米国や日本をはじめとする医療先進国においては先端医療に係る各種の推進政策が実施されております。これらの推進政策は、当社が推進する再生誘導医薬®に大きな影響を与える可能性がありますが、その影響の内容・大きさはまだ定かではないことから、当社の今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。
③ 副作用発現、製造物責任
医薬品には、臨床試験段階から更には上市後以降において、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。当社は、こうした事態に備えて、製造物責任を含めた各種賠償責任に対応するための適切な保険に加入する予定ですが、最終的に当社が負担する賠償額の全てに相当する保険金が支払われる保証はありません。
また、当社に対する損害賠償の請求が認められなかったとしても、製造物責任請求等がなされたこと自体によるネガティブ・イメージにより、当社及び当社の製品に対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。これら予期せぬ副作用が発現した場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響が及ぶ可能性があるとともに、社会的信頼の失墜を通じて当社の事業展開にも重大な影響を及ぼす可能性があります。
④ 競合
医薬品業界は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの企業や研究機関等による激しい競争状態にあり、その技術革新は急速に進んでいる状況であります。これら競合相手との競争において必ずしも当社が優位性をもって継続できるとは限らず、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動における競争の結果により、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 医療費抑制策
世界各国において、政府は増え続ける医療費に歯止めをかけるため、医療費の伸びを抑制していく方針を示しており、定期的な薬価引き下げをはじめ、ジェネリック医薬品の使用促進等が進んでいます。今後の医療費政策の動向が当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)固有のパイプラインに関するリスク
① 特定のパイプラインに関する提携契約への依存、収益の不確実性
当社は、塩野義製薬株式会社に、レダセムチド又は同化合物を有効成分として含有する医薬品の医薬品用途、及びそれらの製法又は製剤に関連する全世界における特許に基づき、全世界において当該医薬品の医薬品用途での独占的な開発、製造、使用又は販売するための再実施許諾権付のライセンスを付与しており、これらの提携契約による収益を中心とした事業収益計画を有しています。
しかしながら、このような提携契約は、相手先企業の経営方針の変更や経営環境の極端な悪化等の、当社がコントロールし得ない何らかの事情により、期間満了前に終了する可能性があります。現時点ではこれらの契約が終了となる状況は発生していませんが、本契約が終了した場合は、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、製品上市前の収益として、所定の成果達成に基づくマイルストーン収益を見込んでいますが、この発生時期は開発の進捗に依存した不確定なものであり、開発に遅延が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社では今後、後続パイプラインによる収益化に努め、現状の提携契約に基づく収益への依存度を低減していく方針ですが、それらの収益化についても、開発の進捗に依存した不確実なものであり、これらの開発に遅延が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3)その他事業活動に関するリスク
① マイナスの繰越利益剰余金の計上
当社は、医薬品の研究開発を主軸とするベンチャー企業であります。医薬品の研究開発には多額の初期投資を要し、その投資資金回収も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、ベンチャー企業が当該事業に取り組む場合は、一般的に期間損益のマイナスが先行する傾向にあります。当社も過去5事業年度において第15期(2020年7月期)及び第18期(2023年7月期)は、営業利益及び当期純利益を計上しておりますが、第16期(2021年7月期)、第17期(2022年7月期)及び第19期(2024年7月期)と営業損失及び当期純損失を計上しています。
当社は、レダセムチドを始めとするパイプラインの開発を推し進めることにより、将来の利益拡大を目指しております。しかしながら、開発の進捗状況によっては、将来において計画通りに当期純利益を計上できない可能性もあります。仮に、当社事業が計画通りに進展せず収益を獲得できない場合には、繰越利益剰余金がプラスとなる時期が著しく遅れる可能性があります。
② 剰余金の分配について
当社は、当面は、多額の先行投資を行う研究開発活動の継続的かつ計画的な実施に備えた資金の確保を優先するため、配当等の株主還元は行わない方針としております。しかし、株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を行うことを考えております。
剰余金の分配には、配当可能利益が必要となりますが、「① マイナスの繰越利益剰余金の計上」に記載したとおり、当社事業の進捗いかんによっては、繰越利益剰余金がマイナスとなり、配当可能利益が確保できる時期が著しく遅れる可能性があります。この場合、剰余金の分配を行う時期についても遅延する可能性があります。
③ 収益計上が大きく変動する傾向
当社の事業収益は、レダセムチドを始めとする現在開発中のパイプラインのライセンスアウト時の契約一時金及び開発進捗に伴うマイルストーン収入に大きく影響されるため、過年度の事業収益、当期純損益は不安定に推移しています。この傾向は、現在開発中のパイプラインが上市され安定的な収益基盤となるまで続くと見込まれます。
④ 再生誘導医薬®の市場規模に係るリスク
当社が研究開発を進める再生誘導医薬®は、投与によって患者の体内で誘導される幹細胞が、血液循環を介して体内を巡り、損傷した組織特異的に集積し、神経や皮膚、骨、軟骨、筋肉、血管など、様々な種類の組織に分化する能力を有するため、再生誘導医薬®という共通のプラットフォームによって、脳梗塞や脊髄損傷などの中枢神経系疾患、心筋梗塞や心筋症などの循環器系疾患、難治性皮膚潰瘍などの上皮系疾患、難治性骨折などの間葉系疾患など、組織損傷を伴う数多くの難病に対して幅広い治療効果をもたらすことが期待されます。
よって、再生誘導医薬®は、大きな市場を獲得できると考えており、当社収益にも大きく寄与するものと考えております。しかしながら、何らかの事情により当社の想定通りに適応範囲が拡大できない場合、将来の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 小規模組織及び少数の事業推進者への依存
当社は、提出日現在、取締役4名、監査役3名(非常勤監査役2名を含む。)及び、2024年7月末現在、従業員71名(執行役員、臨時雇用者含む)の小規模組織であり、現在の内部管理体制はこのような組織規模に応じたものとなっています。今後、業容拡大に応じて内部管理体制の拡充を図る方針であります。
また、当社の事業活動は、現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者及び少数の研究開発人員に強く依存するところがあります。そのため、常に優秀な人材の確保と育成に努めていますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 特定の提携契約に依存した事業計画について
当社は、現時点で、特定の製薬企業との限られた共同研究契約及びライセンス契約を主軸とする事業計画を有しております。
しかしながらこのような提携契約は、相手先企業の経営環境の極端な悪化や経営方針の変更など、当社がコントロールし得ない何らかの事情により、期間満了前に終了する可能性及び当社の想定と異なる事態が生じる可能性があります。
このような事態が発生した場合には、他の製薬企業との新たな提携等により当社事業計画への影響を最小限に食い止める所存ではありますが、これが適時に実現できる保証はなく、このため当社の希望通りの事業活動ができず、若しくは制約を受け、その結果、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社が現時点で有している提携契約としては、2014年11月に塩野義製薬株式会社との間で締結した、レダセムチド又は同化合物を有効成分として含有する医薬品の医薬品用途、及びそれらの製法又は製剤に関連する全世界における特許に基づき、全世界において当該医薬品の医薬品用途での独占的な開発、製造、使用又は販売するための再実施許諾権付のライセンス契約があります。
塩野義製薬株式会社とは2010年4月よりレダセムチドに関する共同研究を開始しております。一般論として、候補物質に係る研究を進め、およそ2億円から3億円の投資である非臨床試験の研究ステージから、最終的には少なくとも数百億円規模の投資となる臨床開発ステージに進むことは、巨大な製薬企業といえども、大きな決定です。塩野義製薬株式会社がステージを進めることを決定するためには、多面的な審査をうけ、塩野義製薬株式会社の要求する基準を充足する必要があります。
当社プロジェクトは当該基準をクリアし、2014年11月にレダセムチドに係るライセンス契約を締結しております。当社は当該ライセンス契約に基づき、これまでに契約一時金、マイルストーン収益として、総額4,046百万円を受領しております。
ライセンス契約によるライセンスアウト後の収入については、所定条件の達成が条件となることから、ライセンスアウト後の開発の進捗状況によっては予定された収益の計上時期が遅れる、それが得られない等の事態があり得ます。
なお、塩野義製薬株式会社とのライセンス契約に係る開発の進捗状況としては、先行する栄養障害型表皮水疱症の追加第Ⅱ相医師主導治験が2022年7月より開始され2023年3月には第一例目となる患者への投与が開始いたしました。また、脳梗塞については日本、米国、欧州及び中国においてグローバル第Ⅱ相試験の実施中、慢性肝疾患、変形性膝関節症においては第Ⅱ相医師主導治験が完了し、虚血性心筋症においては2024年3月より第Ⅱ相医師主導治験が開始されております。
これらの治験の実施においては前述のとおり相当の費用が発生することが見込まれるため、当然将来的な上市を期待した上で、治験を実施することになりますが、必ずしも望ましい結果が得られるとは限りません。仮に、治験の結果が望ましいものとならなかった場合、当社事業にも重要な影響を及ぼす可能性があります。
これらを含め、当社の事業展開上、重要と思われる契約の概要は「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載しておりますが、当該契約が期間満了、解除、その他の理由に基づき終了した場合若しくは当社にとって不利な改定が行われた場合、又は契約の相手方の財務状況が悪化したり、経営方針が変更されたりした場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 資金繰り
当社は、研究開発型企業として多額の研究開発資金を必要とし、また研究開発費用の負担により長期にわたって先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。当事業年度においては、営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しており、かつ現状では、当社は継続的なロイヤリティ収入などの安定的な収益源を有しておらず、今後の収益獲得については、レダセムチドの開発の進捗状況や、その他のパイプラインのライセンス交渉等の結果に大きく左右されるため、未だ、営業活動から安定的に資金が得られる状況にあるとは言えません。
このため、安定的な収益源を確保するまでの期間においては、必要に応じて適切な時期に資本市場からの資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合は、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
⑧ 設備投資に係るリスク
当社は、研究事業拡大のために、2020年6月に大阪大学と共同で再生誘導医学協働研究所を開設し、2021年1月に本社研究所を拡張し、同建屋内に動物実験施設を新設いたしました。当社として研究開発を推進する上でその意義は大きく、今後事業進展の拡大に寄与するものと考えております。
しかしながら、現時点において当該設備投資の効果が十分に実現する保証はありません。仮に、当社が想定したとおりに事業を展開できない場合、減損会計の適用による減損処理が必要となるなど、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 新株発行による資金調達
当社は医薬品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
⑩ 株式の希薄化について
当社は医薬品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
また、当社は取締役(社外取締役を含む)及び監査役に対する中長期的なインセンティブの付与及び株主価値の共有を目的として譲渡制限付株式報酬制度を導入しており、また、役職員に対して、業績向上意欲や士気を高めることを目的として、ストック・オプション制度を採用しています。今後、譲渡制限付株式報酬制度に基づき新株式が発行された場合又は発行済みの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。今後も優秀な人材の確保のため、株式価値の希薄化に配慮しつつも同様のインセンティブ・プランを継続する可能性があります。従って、今後割当が行われる譲渡制限付株式及び付与される新株予約権等によっても、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
⑪ 知的財産権
当社では研究開発をはじめとする事業展開において様々な知的財産権を使用しており、これらは当社所有の権利であるか、あるいは適法に使用許諾を受けた権利であるものと認識しています。
また、当社が保有している現在出願中の特許が全て成立する保証はありません。更に、特許が成立した場合でも、当社の研究開発を超える優れた研究開発により、当社の特許に含まれる技術が淘汰される可能性は常に存在しています。当社の特許権の権利範囲に含まれない優れた技術が開発された場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社では他社の特許権の侵害を未然に防止するため、当社として必要と考える特許の調査を実施しており、これまでに、当社の開発パイプラインに関する特許権等の知的財産権について第三者との間で訴訟が発生した事実はありません。しかし、当社のような研究開発型企業にとって知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 国立大学法人大阪大学との関係について
当社は、自社での研究活動の他、国立大学法人大阪大学と共同研究を実施しており、特許権について共同保有するなどしております。
当社は、同大学との間で、レダセムチドにかかる同大学との共有特許について同大学から独占的実施権の許諾を受け、その対価として、当社の新株予約権1,460個を同大学に割り当てること、契約一時金及びかかる特許権を第三者に実施許諾したことによる収入(契約一時金、マイルストーン収入、ロイヤリティ収入)の一定料率に相当する金額を同大学に支払うこと等を定めた契約を締結しており、当該契約に基づき、塩野義製薬株式会社等から上記に該当する収入を受け取った場合には、一定率の金額を大阪大学に支払うことになります。
当社は、今後も同大学との間で良好な関係を維持し、共同研究を継続していく方針であります。また、2020年4月より、同大学と共同で再生誘導医学協働研究所を設置しており、研究拠点を確保すると共に、幅広い学部・学科との緊密かつ横断的・効率的な連携を図り、より一層研究能力を強化しております。しかしながら、何らかの理由で、これらの契約の更新が困難となった場合又は解除等により取引が困難となった場合、当社の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、同大学との取引については、良好な関係を維持しつつも当社又は株主の利益を害することのないよう、法規制を遵守するとともに、取締役会の監視等を通じて十分留意しております。しかしながら、このような留意にかかわらず、利益供与を疑われるなどの事態が発生した場合には、当社の利益及び社会的評価を損ねる可能性があり、その結果として当社の事業、業績や財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。
① 経営成績等の状況
当事業年度(2023年8月1日から2024年7月31日まで)の事業の概況としましては、再生誘導医薬®開発品レダセムチド(HMGB1より創製したペプチド医薬)について、新たな臨床試験開始に向けた研究開発が引き続き進捗するとともに、レダセムチドに続く第二世代の再生誘導医薬®TRIM3、TRIM4について、非臨床開発及びライセンスアウトに向けた事業開発活動が引き続き進捗いたしました。再生誘導医薬®は、従来の再生医療とは異なり、体外で人工的に培養した細胞の移植や投与を一切必要とせず、医薬品の投与によって患者自身の体内で間葉系幹細胞の集積誘導による再生医療を実現する全く新しい作用メカニズムに基づく医薬品であり、再生医療・細胞治療と比較し、より手軽かつ安価に損傷組織の再生を促すことが可能であり、再生医療・細胞治療と同等もしくはそれ以上の効果を発揮することができる、次世代の医薬品です。
近年、当社の事業領域である再生医療業界においては、iPS細胞、CRISPRなどの遺伝子編集技術や、3Dバイオプリンティング、AIによるビッグデータの活用など急速に技術革新が進んでいるほか、創薬ベンチャー支援に対する政府予算額が大幅に増額されるなど、実用化に向けた期待が広がる一方で、コストの高騰や、長期的な安全性の確保、治療法の普及など、多くの課題が生じています。また世界の再生医療における市場規模は2023年160億米ドルから2028年490億米ドルに推移することが予測されているなど、従来の医薬品や医療では治療が困難であった疾患に対する新たな医療への期待がいかに大きいものかがわかります。このような状況の中、「生きた細胞を一切用いることなく、物質(化合物)の投与によって、再生医療/細胞治療を実現する」をコンセプトとする再生誘導医薬®は、移植治療や従来型の再生医療が抱える数多くの問題を克服する革新的な再生医療技術として、日本のみならず世界的な再生医療業界のゲームチェンジャーになることが期待されます。
(*)「再生誘導」、「再生誘導医薬」、「再生誘導医学」、「再生誘導医療」は当社の登録商標です。
各パイプラインにおける対象疾患ごとの進捗は以下のとおりです。
■PJ1:レダセムチド(HMCB1 より創製したペプチド医薬)
a)栄養障害型表皮水疱症治療薬(PJ1-01)の開発について、2022年7月より追加第Ⅱ相臨床試験が開始され、2023年3月に第一例目の患者への投与が開始されました。2020年3月に終了した栄養障害型表皮水疱症患者を対象とした医師主導治験及び追跡調査(第Ⅱ相試験)のデータ解析結果について、本治験に参加した栄養障害型表皮水疱症患者全例(9例)の解析で、レダセムチド投与により主要評価項目(全身皮膚の水疱、びらん、潰瘍の合計面積の治療前値からの変化率)で、統計学的に有意な改善が確認されました。医師主導治験におけるレダセムチド投与終了後の最終観察時点(投与開始28週後)においても、9例中7例が治療前値を下回る改善を示し、そのうち4例は50%以上の著明な改善を示しました。また、有効性維持の評価を目的とした追跡調査の観察時点(投与開始52週後)においても有効性を確認したことから、栄養障害型表皮水疱症に対するレダセムチド治療効果の長期持続性も確認されました。副次評価項目(安全性評価)では懸念となる有害事象は観察されず、本治験において栄養障害型表皮水疱症患者におけるレダセムチド投与の有効性と安全性が確認されております。本治験の結果を踏まえ医薬品の承認申請を行うべく、レダセムチドのライセンス先である塩野義製薬株式会社(以下「塩野義製薬」)において規制当局との協議を進めておりましたが、本治験の結果は著効例が認められるものの、更なる有効例の積み上げが必要との結論に至っており、本治験結果の再現性を確認することを目的として、追加第Ⅱ相臨床試験を実施するに至っております。追加第Ⅱ相臨床試験は、難治性潰瘍を有する栄養障害型表皮水疱症患者を対象に、難治性潰瘍の閉鎖を指標として、レダセムチドの難治性潰瘍に対する有効性を検討することを目的とし、実施被験者数は3例以上を予定しています。
表皮水疱症治療薬について、対象となる栄養障害型表皮水疱症は、全国の患者数が400名前後と推定される希少難治性疾患であり現在有効な治療法が存在せず、大規模な第Ⅲ相試験を計画することが困難であります。そのため、追加第Ⅱ相臨床試験の結果を踏まえ医薬品の承認申請を行う予定です。
なお、レダセムチドは2023年5月に厚生労働省より栄養障害型表皮水疱症を対象とした希少疾病用医薬品の指定を受けました。レダセムチドが希少疾病用医薬品の指定を受けたことは、表皮水疱症に対して有効である可能性及び現在の開発計画の妥当性について厚生労働省から一定の評価を受けたことになります。また、塩野義製薬においては、レダセムチドをできるかぎり早く医療の現場に提供できるよう、他の医薬品に優先して承認審査を受けることやその他の支援措置を享受することが可能になり、審査期間の短縮による早期の承認取得、販売開始が期待されます。
b)脳梗塞治療薬(PJ1-02)の開発について、2023年4月10日より日本において、2023年4月28日より米国において、2023年7月25日より欧州及び中国において、グローバル後期第Ⅱ相臨床試験がそれぞれ開始しております。2022年10月に開示された第Ⅱ相臨床試験においては、薬剤投与開始90日後のmRS(脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの神経疾患といった神経運動機能に異常を来す疾患の重症度を評価するためのスケールであり、スコア0(症状なし)~スコア6(死亡)の7段階評価)を評価した結果、5日間投与完了の翌日に介助が必要な状態(mRS≧3)の患者が投与開始90日後に介助不要(mRS≦2)になった(症状が改善した)割合について、プラセボ投与群では18%(11例/60例)であることに対し、レダセムチド投与群では34%(23例/68例)となり、急性期脳梗塞患者に対するレダセムチドの有効性が示唆されました。要介護の脳梗塞患者において、介助不要となり社会的自立が可能なレベルにまで症状が改善することの社会的意義は大きく、レダセムチドの投与による急性期脳梗塞患者のQOL(Quality of Life)の向上が見込まれます。
本治験の良好な結果を踏まえグローバル第Ⅲ相試験を開始すべく進めて参りましたが、各規制当局との協議の結果、用量設定を目的としたグローバル後期第Ⅱ相試験を実施する運びとなっております。急性期脳梗塞の治療においては、血管再開通療法である血栓溶解療法は発症後4.5時間まで、機械的血栓回収療法は発症後8時間までと発症から治療までに時間的な制約があり、十分な治療効果が得られていない領域です。従来の血管溶解療法・機械的血栓回収療法と比較し、より時間的制約が緩和されたレダセムチドによる治療の選択肢は、これらのアンメット・メディカル・ニーズを満たすことが期待されます。
c)虚血性心筋症治療薬(PJ1-03)の開発について、2024年3月より、大阪大学医学部附属病院を中心とした複数の施設において第Ⅱ相医師主導治験が開始されました。本治験は冠動脈バイパス手術を施行した虚血性心筋症患者に対し、レダセムチド若しくはプラセボ(各10例)を5日間投与し、レダセムチドの有効性、安全性を評価することを主たる目的としています。有効性においては投与開始52週後の心エコーなどによる各種心機能検査等について評価することが予定されております。
虚血性心筋症は心筋が血流不足や酸素不足により損傷を受ける状態を指し、心筋の主な血流供給源である冠動脈が狭窄または閉塞することによって発生します。発症すると心筋の機能障害を引き起こし、最終的には心不全を招く可能性があります。非臨床においては、レダセムチドの投与による心筋の壊死部分の縮小や心臓の繊維化の減少が確認されており、虚血性心筋症の新たな治療薬となることが期待されます。
d)変形性膝関節症治療薬(PJ1-04)の開発について、弘前大学医学部附属病院において実施された医師主導治験(第Ⅱ相試験、レダセムチド群10例、プラセボ群10例)について、2023年3月に主要評価項目を達成した旨の連絡を受けました。主要目的として設定したレダセムチド投与時の安全性評価については、重篤な有害事象及び本剤との関連性が認められると判定された副作用は認められず、変形性膝関節症を対象とする本剤投与時の安全性について確認されました。また、副次目的として設定した本剤投与時の有効性評価につきましては、変形性膝関節症の根本的な原因の一つである軟骨の損傷部位の形態学的評価としてMRI撮像を行ったところ、投与開始後52週時点の大腿骨内側顆軟骨欠損面積率の変化量(中央値)はプラセボ群で-3.5%であったのに対し、レダセムチド群では-7.5%であり、レダセムチド群でより欠損部位が縮小した傾向でした。なお、事後解析の結果になりますが、専門医師による内視鏡での肉眼観察においても、良好な軟骨再生の所見がレダセムチド群では5例に認められました(プラセボ群では2例)
変形性膝関節症は膝関節軟骨の摩耗により膝の形が変形し、痛みや腫れをきたす疾患で、重度の症例では強い痛みのため歩行困難になることも多く、QOL (Quality of Life) 及び日常生活動作の低下が顕著になります。国内の潜在患者数は約2,500万人、そのうち自覚症状を有する患者数は約1,000万人と推定されています。主な原因は加齢によるものが多く、40代以降の中高年に多く発症します。損傷をうけた関節軟骨は自己修復しにくいことが知られており、損傷した軟骨組織の修復促進、あるいは人工関節置換術への移行を回避できるような新たな治療法の開発が望まれています。レダセムチドは、マウス膝関節軟骨欠損モデルを用いた本剤の非臨床試験で軟骨修復作用等が確認されており、変形性膝関節症患者に対する新たな治療薬となることが期待されます。
e)慢性肝疾患治療薬(PJ1-05)の開発について、新潟大学医歯学総合病院により実施された医師主導治験(第Ⅱ相試験、レダセムチド群10例)について、2023年4月に主要評価項目を達成した旨の連絡を受けました。主要目的として設定したレダセムチド投与時の安全性評価については、10例の患者のうち2例で治験薬との因果関係が否定できない有害事象(発声障害、発熱)が発現しましたが、いずれも軽度で回復しています。また、重篤な有害事象(肝生検実施時の出血)が1例発現しましたが、処置なく回復し、レダセムチドとの因果関係は否定されたことから、レダセムチドの忍容性は良好であると考えられます。副次目的として設定した探索的な有効性評価については、レダセムチド1.5mg/kg(体重換算)を週1回4週間投与(計4回投与)した5例において、投与開始78日後及び162日後の時点で、MRエラストグラフィを指標とした肝硬度の改善傾向が認められました(投与開始前と比較して平均12%及び8%の減少率)。また、MRエラストグラフィによる肝硬度の改善だけでなく、他の線維化指標(線維化インデックス、線維化マーカー、modified HAIのFibrosis stage値)も随伴して改善傾向を示す症例が複数例認められました。これら各種有効性評価指標結果をふまえた治験責任医師による総合評価では、レダセムチド1.5mg/kg(体重換算)を週1回4週間投与(計4回投与)した5例のうち3例(60%)、1週目に4日間連続投与及び2~4週目に週1回投与(計7回投与)した5例のうち2例(40%)で肝線維化の改善傾向が示唆されたと考察しています。以上の結果を踏まえ、慢性肝疾患に対する今後の開発方針が検討されています。
線維化が進行した肝硬変は、肝機能低下、門脈圧亢進、発癌など生命予後を左右する様々な問題が生じうる疾患であり、肝硬変の患者数は国内40~50万人と推定されております。現状、一般治療において、線維化が進行した肝硬変に対し完治が期待できる治療法は肝移植を除き確立されておらず、移植医療に頼らない新たな肝線維化改善薬や組織再生促進薬の開発が期待されております。レダセムチドは、有効な治療法の乏しい線維化を伴う慢性肝疾患の患者に対し、新たな治療の選択肢になり得る可能性があります。
■PJ2:TRIM3、TRIM4(全身投与型再生誘導医薬®新規ペプチド)
レダセムチドに続く新規再生誘導医薬®候補物質の探索プロジェクトについて、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物質スクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する新規候補化合物(TRIM3、TRIM4)を同定するに至っております。次世代の再生誘導医薬®TRIM3,TRIM4はPJ1:レダセムチドと同様に抹消血中の間葉系幹細胞を増加させることで、組織損傷を伴う幅広い疾患に対する組織再生を誘導します。当事業年度においては、各疾患モデル動物での実験データを着実に蓄積し、ライセンスアウトに向けた事業開発活動が引き続き進捗いたしました。
■PJ5:SR-GT1(表皮水疱症の根治治療を目的とした幹細胞遺伝子治療)
当社が大阪大学との共同研究で開発を進めている幹細胞遺伝子治療(PJ5:SR-GT1)は、表皮水疱症患者の水疱から間葉系幹細胞を採取する独自の開発技術を基盤として、レンチウイルスベクタ―を用いてⅦ型コラーゲン遺伝子を患者皮膚由来間葉系幹細胞に効率的に導入し、水疱内へと戻して持続的Ⅶ型コラーゲン供給を可能にする根治的表皮水疱症治療技術です。患者由来皮膚細胞を用いて表皮水疱症モデル皮膚組織を作製し、吸引法により水疱を人工的に形成したところ、Ⅶ型コラーゲン遺伝子を導入した間葉系幹細胞を水疱内と同じ領域に投与して作製した表皮水疱症モデル皮膚組織では、Ⅶ型コラーゲンタンパク質を広範囲に基底膜領域へ供給しており、水疱が形成されないことが確認されました。また、他の投与経路と比較して水疱内投与は生体内において高い生着能を確認しております。遺伝子導入細胞の表皮シートを介した移植や皮内投与と比較し、より患者の負担が少なく高い薬効を長期間持続的に示す幹細胞遺伝子治療は、現在有効な根治療法のない栄養障害型表皮水疱症の根治的治療法となることが期待されます。また当社は、2022年4月より国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する令和4年度「難治性疾患実用化研究事業」において、共同研究企業として参画しております。本AMED採択研究では、当社においてこれまで蓄積された幹細胞遺伝子治療研究の豊富なデータと知見を活用しながら、栄養障害型表皮水疱症の根治的治療の実現を目的としています。
これらの結果、当事業年度の経営成績の状況は以下のとおりであります。
(事業収益)
当事業年度における事業収益はなし(前年同期は2,350,000千円の事業収益)となりました。
(事業費用)
当事業年度における研究開発費は前事業年度に比べて113,277千円減少し1,453,969千円(前年同期比7.2%減)、販売費及び一般管理費は前事業年度に比べて18,246千円減少し622,114千円(前年同期比2.8%減)となりました。研究開発費の減少は、主に研究用機材費の減少によるものであります。販売費及び一般管理費の減少は、主に株式報酬費用の減少によるものであります。この結果、当事業年度における事業費用は前事業年度に比べて131,523千円減少し2,076,084千円(前年同期比6.0%減)となりました。
(営業損益)
当事業年度において、事業収益なし、事業費用2,076,084千円を計上した結果、営業損失は2,076,084千円(前年同期は142,391千円の営業利益)となりました。
(営業外損益・経常損益)
当事業年度における営業外収益は前事業年度に比べて2,812千円減少し295千円(前年同期比90.5%減)、営業外費用は前事業年度に比べて1,957千円増加し2,083千円(前年同期は126千円の営業外費用)となりました。営業外収益の主な内訳は物品売却益256千円であります。また、営業外費用の主な内訳は契約解除損失1,354千円であります。これらの結果、経常損失は2,077,872千円(前年同期は145,373千円の経常利益)となりました。
(特別損益・税引前当期純損益)
当事業年度における特別利益は59,047千円(前年同期比137.8%増)となりました。特別利益の主な内訳は従業員の退職に伴う新株予約権戻入益58,989千円であります。これらの結果、税引前当期純損失は2,018,825千円(前年同期は170,207千円の税引前当期純利益)となりました。
(当期純損益)
当事業年度における法人税等は3,341千円となりました。この結果、当期純損失は2,022,166千円(前事業年度は168,350千円の当期純利益)となりました。
なお、当社は再生誘導医薬®事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。
② 財政状態
(資産)
当事業年度末における流動資産合計は8,877,489千円となり、前事業年度末に比べ1,562,917千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が1,807,315千円減少したことによるものです。また、固定資産合計は202,925千円となり、前事業年度末に比べ63,149円減少いたしました。これは主に、減価償却により有形固定資産が41,148千円減少、ソフトウエアの取得及び償却により無形固定資産が1,640千円増加、主に長期前払費用の流動資産への振替により投資その他の資産が23,641千円減少したことによるものです。この結果、資産合計は9,080,415千円となり、前事業年度末に比べ1,626,066千円減少となりました。
(負債)
当事業年度末における流動負債合計は67,527千円となり、前事業年度末に比べ150,026千円減少いたしました。これは主にその他流動負債に含まれる未払消費税等が117,680千円減少したことによるものです。また、固定負債合計は118,353千円となり、前事業年度末に比べ114千円減少いたしました。これは主に繰延税金負債が288千円減少したことによるものです。この結果、負債合計は185,880千円となり、前事業年度末に比べて150,141千円減少となりました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は8,894,534千円となり、前事業年度末に比べ1,475,925千円減少いたしました。これは主に当期純損失2,022,166千円を計上した一方、新株予約権が140,102千円増加、新株予約権の行使及び役員の株式報酬としての譲渡制限付株式の発行により資本金及び資本準備金がそれぞれ203,069千円増加したことによるものです。なお、2024年7月30日効力発生の減資により資本金が208,071千円減少し、資本準備金が208,071千円増加しております。この結果、資本金10,750千円、資本剰余金9,422,825千円、利益剰余金△1,853,816千円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は8,410,449千円と前事業年度末と比べ1,807,315千円の減少となりました。
営業活動の結果支出した資金は1,881,497千円(前事業年度は1,135,315千円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純損失の計上2,018,825千円、株式報酬費用の計上501,501千円、未収消費税等の増加187,137千円、未払消費税等の減少117,680千円等によるものであります。
投資活動の結果支出した資金は4,784千円(前事業年度は344千円の支出)となりました。これは主にソフトウエアの取得によるものであります。なお、研究用機器については取得時に研究開発費として費用処理しております。
財務活動の結果得られた資金は78,966千円(前事業年度は202,602千円の収入)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式発行収入によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a)生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b)受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c)販売実績
当社は再生誘導医薬®事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。また、当事業年度における販売実績はないため記載を省略しております。
なお、最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。前事業年度においては、レダセムチドにおける急性期脳梗塞を対象とした治療薬開発に関するマイルストーン・ペイメントの条件をみたし、2,350,000千円の事業収益を計上いたしました。当事業年度における事業収益はありませんでした。
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相手先 |
前事業年度 (自 2022年8月1日 至 2023年7月31日) |
当事業年度 (自 2023年8月1日 至 2024年7月31日) |
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
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塩野義製薬㈱ |
2,350,000 |
100.0 |
- |
- |
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合計 |
2,350,000 |
100.0 |
- |
- |
(2)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。当社の財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計方針」に記載のとおりであります。また、当社における重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計上の見積り」に記載の通りであります。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資金需要の主なものは、継続的な候補物質の探索や候補物質の製品化に向けた開発に関する研究開発費と、販売費及び一般管理費などの事業費用であります。これらの資金需要に対して安定的な資金供給を行うための財源については主に内部資金を活用することにより確保しております。手元資金については、資金需要に迅速かつ確実に対応するため、流動性の高い銀行預金により確保しております。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(1)共同研究契約
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相手先の名称 |
契約締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
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国立大学法人 大阪大学 |
2009年9月10日 |
2009年9月10日から 2025年9月30日まで |
・骨髄幹細胞動員因子の大量生産系を基にして、皮膚潰瘍、脳梗塞を始めとする種々の難治性組織損傷に対する非瘢痕性機能的組織再生誘導医薬®開発に必要な共同研究を行う。 |
(2)共同研究講座設置契約
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相手先の名称 |
契約締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
|
国立大学法人 大阪大学 |
2019年3月20日 |
2019年4月1日から 2027年3月31日まで |
・再生誘導医薬®開発研究を基盤とし、体内再生誘導治療を遺伝性難病の根治的治療へと発展させるべく、間葉系幹細胞を標的とした遺伝子治療技術を開発し、現在根治的治療法の無い遺伝性難病に苦しむ患者に低侵襲かつ効率的な遺伝子治療を提供することを目的とした研究開発を行う。 |
(3)実施許諾契約
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相手先の名称 |
契約締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
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塩野義製薬㈱ |
2014年11月14日 |
2014年11月14日から塩野義製薬㈱が本医薬品を開発し販売している期間中 |
・当社は塩野義製薬㈱に対し、本特許(蛋白特許及びペプチド特許を含み、本契約期間中に当社が(ⅰ)単独又は第三者若しくは塩野義製薬㈱と共同で所有又は出願し、又は(ⅱ)実施権を保有し又は取得する化合物(骨髄由来幹細胞動員作用を有するHMGB1蛋白及びHMGB1ペプチド)又は化合物を有効成分として含有する医薬品の医薬品用途、及びそれらの製法又は製剤に関連する全世界における特許)に基づき、全世界において先行化合物及び先行製品の医薬品用途での独占的な開発、製造、使用又は販売するための再実施許諾権付のライセンスを付与する。 ・許諾の対価として当社は契約一時金、マイルストーン収入及びロイヤリティ収入を受領する。 ・皮膚疾患領域を含め、ヒトの疾病の治療又は予防のための使用を許諾領域とする。 |
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国立大学法人 大阪大学 |
2014年12月26日 |
2014年12月26日から特許存続期間 |
・当社と国立大学法人大阪大学が共有する特許について、国立大学法人大阪大学が当社へ独占的実施権を許諾する。 ・許諾の対価として、当社及び国立大学法人大阪大学は一定の実施料の支払い又は受領をする。 |
(4)協働研究所設置契約
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相手先の名称 |
契約締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
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国立大学法人 大阪大学 |
2020年3月23日 |
2020年4月1日から 2030年3月31日まで |
・再生誘導医薬®の作用機構を基盤とした創薬等新規医療への応用研究及び、生体内間葉系幹細胞の活性化機構を基盤とした創薬等新規医療を課題とし、大阪大学とともに、多面的な産学協働活動の推進、研究の高度化、高度人材育成の充実を図る組織を設置する。 |
「第1 企業の概況 3 事業の内容」をご参照ください。
当社は、医薬品の研究開発を主たる業務としております。自社研究若しくは大学等研究機関との共同研究を通じて、生体内における組織再生誘導メカニズムの解明と幹細胞の特性解析、幹細胞の制御技術に関する基礎研究を行い、その成果を活用したスクリーニング系によって、再生誘導医薬®シーズの探索を行っております。
同定した候補物質については、自社単独若しくは共同研究を実施した大学等研究機関と共同で特許を出願し、研究開発活動の果実である知的財産の構築を進めております。大学等研究機関と共同で出願した特許については、当社が独占的な実施権の許諾を受け、以後の製品化に向けた研究開発を当社主導で進めております。
当社は、設立以来積極的な研究開発を行っており、当事業年度における研究開発費の総額は、