当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「インターネットテクノロジーカンパニー」として高い技術力をもった人材を豊富に抱え、数多くのサービスを世に送り出してきました。これからも技術力の向上や活用に一層注力し、便利で質の高いインターネットサービスを提供してまいります。また、当社が提供するサービスを通じて、質の高いインターネットコンテンツの発信や伝播を支援しています。楽しく役に立つコンテンツが増え、手に届きやすくすることで「より豊かなインターネット社会」を実現してまいります。
当社は、インターネットを活用して『「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする』ことをミッションに掲げ、一般の利用者がコンテンツを発信するコンテンツプラットフォームサービス「はてな」を、技術の力を梃子に一貫して提供し続けてまいりました。
現在、上記サービスの他にコンテンツマーケティングサービスやテクノロジーソリューションサービスを新たな事業領域として、事業拡大に努めております。
コンテンツマーケティングサービスは、顧客が自らウェブサイトを所有し(オウンドメディアと呼ばれます)、コンテンツを発信、ソーシャルメディアにおいて拡散する際に、オウンドメディアを構築・運用支援するサービス「はてなブログMedia」、アフィリエイト広告等を提供しております。
テクノロジーソリューションサービスは、創業以来培ってきたサービス開発力やITインフラ構築力、保有する大規模データとその分析力を活かし、顧客にソリューションサービス(受託開発・運用サービス、サーバー監視サービス「Mackerel(マカレル)」)を提供しております。
上記の3サービスを基軸として、更なる良質なサービスや価値を創造し、発信・提供していくことで企業価値・株主価値の向上を目指しております。
また、当社は、持続的成長を見据えた戦略的投資を強化してまいります。「はてなブログMedia」「はてなブックマークネイティブ広告」等のコンテンツマーケティングサービスの営業人員強化や、コンテンツプラットフォームサービスにおけるテクノロジー基盤への投資、サービス開発の制作人員強化など、各有力分野で未来成長を意識した攻めの重点投資を実施します。
(2)目標とする経営指標
当社が重視している経営指標は、売上高、営業利益及び経常利益であります。売上高、営業利益及び経常利益を継続的に成長させることにより、事業の安定的な成長による企業価値の向上、株主価値の向上を目指してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
インターネットを取り巻く市場は、通信速度の向上、テクノロジーの進化等を背景に、引き続き高い成長が見込まれております。目まぐるしく変化する市場の中で、新技術、新サービスの実現により、顧客に対してより付加価値の高いサービスを提供できるよう、努めてまいります。
当社は自社コンテンツプラットフォームの開発・運営を通して新規顧客を開拓しつつ、そこで獲得した資産、知見を最大限に活用して「はてなブログMedia」「Mackerel(マカレル)」などの法人顧客向けサービスを提供するハイブリッド戦略を採用しております。当該戦略を通して、読者・利用者誘導や開発ノウハウなど強みをさらに強化し、自社コンテンツプラットフォームへの還元によるシナジー効果を図ってまいります。当社の主要な3サービスに関する経営戦略は以下のとおりであります。
① コンテンツプラットフォームサービス
当社は、個人向けにユーザーが文章や画像などのコンテンツを発信・閲覧・拡散するプラットフォームを提供するコンテンツプラットフォームサービスからスタートしました。ユーザーがコンテンツを発信・拡散するUGCサービスとして「はてなブログ」「はてなブックマーク」等のサービスを展開しています。任意のWebページにユーザーがコメントを簡潔に付けることができる「はてなブックマーク」があることで、「はてなブログ」の記事に他のユーザーの意見や批評が集まりやすいことや、長い文章や論考、コラムのようなものを発信するITリテラシーの高いブロガーが比較的多いことが「はてなブログ」の特長であり、競合優位性となっております。コンテンツプラットフォームサービスにおいては、「はてなブログ」「はてなブックマーク」を始めとしたUGCサービスの利用は、スマートフォンの普及とともに、ユーザーがコンテンツを発信、拡散するサービスとして伸張しており、登録ユーザー数やユニークブラウザ数は、今後も拡大する見通しであります。より競合優位性を確保するため、機能開発を継続してまいります。
② コンテンツマーケティングサービス
オウンドメディア(企業が顧客等に向けて伝えたい情報を発信するための自社メディア)の構築・運用支援サービス「はてなブログMedia」を2014年より開始しています。「はてなブログMedia」はSaaSで提供されており、当社がUGCサービスで培ったシステム・ノウハウを生かし、顧客が費用対効果の高いオウンドメディアを構築できることが競合優位性となっています。コンテンツマーケティングサービスにおいては、BtoB向けストック型ビジネスである「はてなブログMedia」を成長事業として位置づけております。企業がインターネットを活用して動画、画像、テキストを提供し、潜在顧客の認知や興味関心を獲得する重要性がますます増加する見通しであります。デジタルマーケティング戦略や人材採用戦略において、ひとつの企業で複数のはてなブログMedia媒体を運用しているケースもあり、ここ最近では働き方改革に関する情報発信や社員インタビューといった人材採用分野での活用を目的としたオウンドメディアのニーズが増大しているのが特徴となっております。オウンドメディアの活用がなされるマーケット傾向にあることから、潜在顧客に対しても、鋭意アプローチしてまいります。コンテンツ制作支援とともに、ネイティブ広告等の広告展開を実施することで、より収益獲得機会の拡大に努めてまいります。
③ テクノロジーソリューションサービス
コンテンツプラットフォームサービスで蓄積したサービス開発力やITインフラ構築力等を生かして、企業のオウンドメディアをスクラッチで開発・構築する受託サービスや、顧客企業の情報システム担当向けに、情報システムにおけるサーバーを監視・管理するツールをSaaSで提供するサーバー監視サービス「Mackerel(マカレル)」を展開しています。受託サービスは、ユーザーによる投稿や閲覧行動を顧客企業のビジネスに生かすサービスを構想し、実装に落とし込む企画力や拡張性のある設計を迅速に実装できる開発力を有していること、また、サービスの規模が拡大しても表示速度等のパフォーマンスを落とすことなく、ローコスト運営を維持することが可能なITインフラの設計・構築・運営力が競合優位性となっております。「Mackerel(マカレル)」は、サーバーやアプリケーションサービスの稼働状況を、異なるクラウドサービスやデータセンターサービスであっても一元的に監視できるほか、使いやすいUIと効率的なAPIにより簡単に導入・運用できることが競合優位性となっております。また、Web企業、ゲーム制作企業やアドテク企業での導入が顕著であり、エンタープライズ領域における利用も試行されるなど、市場は拡大しております。テクノロジーソリューションサービスにおいては、受託サービスとして受託開発・運営サービスの継続的な事業展開のみならず、BtoB向けストック型ビジネス「Mackerel(マカレル)」を成長事業と位置づけております。サーバーの監視ツールは、顧客が企業内で内製化していることが多いため、より品質の高い追加機能を継続開発のうえで、潜在顧客に対しても、鋭意アプローチしてまいります。
(4)会社の経営環境並びに優先的に対処すべき課題
① 中長期的な成長を意識したサービスの展開
「はてなブログ」「はてなブックマーク」をはじめとしたコンテンツプラットフォームサービスは、他のSNSなどインターネットで投稿・閲覧するサービスが普及し一般化していく風潮とともに、ユーザーがコンテンツを発信、拡散するサービスとして投稿数が今後も拡大する見通しであります。競争優位性の確保のため、機能開発とマーケティング活動を継続してまいります。
コンテンツマーケティングサービスにおいては、BtoB向けストック型ビジネスである「はてなブログMedia」を基幹事業として位置づけております。企業がインターネットを活用して動画、画像、テキストを提供し、潜在顧客の認知や興味関心を獲得する重要性がますます増加する見通しです。デジタルマーケティング戦略や人材採用戦略において、オウンドメディアの活用がなされるマーケット傾向にあることから、潜在顧客に対しても、鋭意アプローチしてまいります。
テクノロジーソリューションサービスにおいては、出版業顧客に提供するマンガビューワ「GigaViewer(ギガビューワ)」のシェアを拡大すべく、鋭意推進してまいります。また、BtoB向けストック型ビジネスである「Mackerel(マカレル)」を改めて成長する事業と位置づけております。従来のサーバー監視に留まらず、アプリケーションソフトウェアの監視・管理の領域に進出することで、より広い顧客のニーズに応えることができると想定しております。
② 新規事業の創出と成長拡大
当社は、コンテンツプラットフォームサービスにおいて培ったサービス企画・運営の能力を活用し、隣接する事業領域において様々な事業化を図ることで成長してまいりました。引き続き、その強みを活かして新規事業を創出し、また他社への営業・マーケティング活動を積極的に行い、新規取引先の拡大に努めることで、成長の拡大と事業基盤の強化を図ってまいります。
③ UGCサービス「はてな」の魅力の拡充
当社のUGCサービスは、スマートフォンの端末の普及・拡大によるインターネットアクセス手段の多様化や音声やAI(人工知能)などを活用した入力手段の多様化、他のSNSの台頭など、技術環境やサービス環境の進化に大きく影響を受けます。当社は、UGCサービスの新規機能開発やマーケティング活動の推進、新しいサービスの導入を適宜行っていくことでサービスの魅力を増大させて、投稿数や閲覧数を増加させていきたいと考えております。
④ コスト管理の徹底と財務基盤の強化
資源価格の高騰や、円安による物価上昇が、企業活動に広範な影響を与えております。当該事象がより長期化した場合に備え、販売費及び一般管理費などのコスト管理を徹底してまいります。財務面では、リスク・ファイナンスの一環として、複数の金融機関との間で、手元流動性の更なる補完に向けた交渉を必要に応じ継続してまいります。また、外貨建債務の為替相場変動による評価損益を一定程度にとどめるため、為替のヘッジ取引をはじめとした措置を機動的に講じてまいります。
⑤ 組織体制の強化
当社は、積極的に企業価値を拡大していくためには、優れたサービスを構築することができる専門的技術、知識を有した優秀な人材の採用を行うとともに、最大限に能力を発揮することができる組織体制の強化が重要な課題であると認識しております。このため、各事業フェーズに合わせ、即戦力となる人材確保を目的とした中途採用と、将来を担う社員の育成と組織の活性化を目的とした新卒採用を積極的に行ってまいります。
また、業界を牽引する人材の育成を重点課題と位置づけ、職種別研修の実施や、専門資格の取得支援、広い成長機会の創出・支援を行ってまいります。
さらに、年齢や国籍等に制限なく、高いスキルや潜在的な能力、情熱を持つ人材を積極的に登用し、適材適所を見極めながら事業状況に合わせた臨機応変な組織改編をスピーディーに行うことで、強固な組織体制を構築してまいります。
また、従業員が新規サービスのアイデアを自発的に具現化する施策を行うなど、従業員のモチベーションを喚起し、イノベーションを創り出す組織文化を追求してまいります。
⑥ コーポレート・ガバナンス体制の強化
当社は、株主、顧客、従業員、取引先、社会等のステークホルダーに対する社会的責任を果たすとともに、企業価値の最大化を図るためには、各ステークホルダーの立場を踏まえたうえで、透明性が高く、公正かつ迅速で、果断な意思決定を行うための仕組みとしてのコーポレート・ガバナンス体制の構築と改善、強化が重要であると認識しております。業容拡大に伴う業務の増大に対応して、内部統制の仕組みを改善し、全社への教育や啓蒙を行うことで、より強固なコーポレート・ガバナンス体制を構築してまいります。
⑦ 知名度の向上
当社は、UGCサービスにおいて20年以上の提供実績を持ち、個人に対しては一定の認知度を有していると考えております。一方で、法人顧客に対しては認知度が十分ではないと考えております。セミナー開催や技術カンファレンスにおける登壇などを通じて、積極的な広報活動や宣伝活動を実施し、認知度の向上に取り組みます。
⑧ 技術革新や市場変化への対応
UGCサービスは、インターネット関連市場として、今後も技術革新や新たなサービスモデルにより、既存サービスの陳腐化、代替サービス、類似サービスの登場により競争の激化が起こると考えております。これらの変化に対応するために、市場動向を把握し、顧客企業にとって最適なサービス、ソリューションを提供し続けられるよう努めております。今後も市場のニーズを先取りした商品・サービスを開発し、市場の変化に対応してまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
「
(2)戦略
当社の人材育成方針及び社内環境整備等に関する方針は、以下のとおりです。
当社では、当社が掲げるミッションを実現し、事業成長を加速するためには、社員1人ひとりが成果を最大化し、持続的な成長を続けていくことが重要であると考え、多様性の確保の観点も含め、当社及び社員にとって生産性が最大化される人材戦略の策定及び環境整備に取り組んでおります。
◎多様性
多様性に関する指標のうち、女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女賃金格差については、「
また、従業員の多様な価値観や個性に対応するダイバーシティ施策の一環として、就業規則等の社内規程における「配偶者」の定義を同性や事実婚のパートナーを含むものに変更しております。これにより結婚(法律上の婚姻)を対象とする福利厚生制度の適用範囲も拡大しております。
さらに、多様な価値観や個性に対応し、従業員が持つ力を発揮しながら事業成長と働きやすさを高次元でバランスさせた働きがいのある環境づくりを目指しています。積極的な採用活動による従業員増加を見据え、多様な価値観や個性への企業姿勢を明文化するため、LGBT(※)にも対応した社内規程となっております。これにより、「配偶者」の定義を同性や事実婚のパートナーも含むものに拡大し、パートナーとの関係を「結婚に相当する」として、慶弔見舞、育児介護休暇、赴任などの福利厚生制度を適用しています。同時に、LGBTに関する理解を深める社内研修を実施し、就業規則での「性自認・性的指向に関わる差別」の禁止を明文化したり、あらゆる人が固有に持つ文化、国籍、信条、人種、民族、言語、宗教、性別、年齢や考え方の多様性を尊重し、ダイバーシティを推進するため、関係機関の動向を確認しながら、制度の変更や柔軟な対応に取り組んでおります。
(※)レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどの性的少数者の総称のひとつ。
◎社内環境整備方針
〇ほたて(TGIF(Thank God It's Fridayの略))
人数が少なかった創業時から、会社やサービスの方針を全社員で話し合う文化がありました。そこで生まれたのが、お酒を片手に行うはてな流の業務報告会「TGIF」です。Googleの全社ミーティング「TGIF」を参考にしており、社員間で気軽な報告会を行っています。「Hot」な「Task」を「手がけた」従業員を表彰するから、その頭文字を取って「ほたて」と呼んでいます。ほたての良さは、社員のアピール力の向上にとどまらず、普段、日の目を見ない社内向けの業務改善を広く社内に伝えられることにあります。「オフィス移転で賃料を交渉した」「メールサーバの改善で、レスポンスのスピードが上がった」といった細かな業務改善は、全社員が知ることはなかなかありません。京都と東京の2拠点にオフィスを構えており、この物理的な距離を縮め、同じオフィスにいても見えにくかった各部門の取り組みや会社の現状を、全社員が均等に知ることができます。
〇多様な働き方
当社では「フレキシブルワークスタイル制度」の開始からこれまでの間で、多くの従業員が在宅勤務中心の働き方を選択しています。社員を対象としたアンケートやサーベイの結果、1on1ミーティングなどによるヒアリング、生産性指数、そして在宅勤務の実施率(選択率)などから、従業員にとって「在宅勤務と出社勤務を選択可能」であることは満足度が高く、今後も継続を望まれている状態であると判断しています。
また、在宅勤務中心となっても、安定的なサービス提供を実現できており、個人やグループの生産性についても「保たれている」または「向上している」状態であることを確認しています。
これらの結果を踏まえ、当社では、ミッションにも掲げる「事業成長と働きやすさを高次元でバランスさせ、働きがいのある会社を目指す」ため、2年間の暫定的な制度であった「フレキシブルワークスタイル制度」を継続し、2022年5月1日より恒久的な制度とすることに決定しました。「所属オフィスから2時間以内」としていた居住地の制限を「全国」に拡大するとともに、フルフレックスを導入しております。これにより従業員は、オフィスや自宅といった場所や時間に捉われない働き方を選択できるようになります。
なお、国土交通省「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクトの「優良企業」に認定されている当社では、引き続き、オフィス出社の際の自転車通勤を推奨し、オフィス内に駐輪スペースを確保しています。
◎人材育成方針
〇採用
当社は、人材の多様性を、変化の激しい市場環境に対応し、スピードをもって事業展開できる組織の力へと変えるため、性別、国籍、様々な職歴をもつキャリア採用者など、多様な人材の採用、起用を、積極的かつ継続的に行いつつ、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備やマネジメント層の教育などの取り組みを進めてまいりました。また、コロナ禍においても、学生向けにインターンシップをオンライン開催するなど、積極的な採用活動を継続しております。人材育成や組織の活性化を目的とした施策により、社員一人ひとりがパフォーマンスを最大化して働ける環境とカルチャーを生み出しております。具体的な施策として、テレワークの恒久化、フルフレックスの適用、フリーアドレス、フリースペースによる業務の実施制度などを通じて、社員一人ひとりが柔軟な働き方を選択できる業務環境を整えております。
〇評価
当社では、優秀な人材については、性別、国籍、障害の有無等の属性に依ることなく、積極的に登用する方針の下、すべての社員に平等な評価及び登用の機会を設けております。管理職として登用するうえで、国籍や採用時期によって特段の差が生じているとは認識しておりません。
以上のような状況のもと、現時点では、管理職登用等の目標設定や開示は行っておりません。
〇育成
当社は、人材育成においては、主に新卒社員の早期戦力化を目的として、各種研修制度や、エンジニア向けの技術勉強会などを実施しております。社内のカルチャーを醸成する制度としては、業務報告会「TGIF」や半期に一度の社員納会などのイベントを通じ、社員が所属部門を超えた交流ができるような仕組みを構築、積極的に社員同士交流できるような環境を整備しております。また、当該業務の遂行に直接必要な技能、又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用支出について、会社負担としております。業務上有用な資格試験の受験補助、各種有料セミナーの受講補助、業務利用書籍等の購入補助など、従業員のキャリア形成に対して積極的な投資をしております。
◎健康経営、セーフティネット
〇病気の予防
当社では、毎年、インフルエンザの流行予防のため、予防接種を希望する従業員及びその家族に対して、会社負担による予防接種を行っております。社内におけるインフルエンザの蔓延を未然に防ぎ、欠勤に伴う業務停滞を防止することを目的とし、従業員の健康状態に配慮しております。
〇万が一に備えるための保険
当社では、福利厚生制度の一環として、目的別に複数の保険へ加入し、従業員に万が一の事態が生じた場合のセーフティネットを手厚くしております。従業員の健康面をサポートする福利厚生の1つとして有効であると考えております。
① 団体長期障害所得補償保険
病気やケガで長期間働けなくなった従業員に対し、有給制度や健康保険だけでは補えない所得の喪失を最長で定年年齢まで補償する企業向けの保険に加入しております。収入ダウンを長期にわたりカバーすることで、安心して療養できる環境を整え、早期の就労復帰を支援しております。
② 業務災害総合保険
自身が抱える病的疾患に関わらず、全従業員が加入可能であり、従業員が死亡した場合、その原因によって保険料がご遺族に支払われ、後遺障害が起きた場合は、その等級に応じた補償金が支払われ、病気で入院した際に入院1日あたり5,000円の給付金等が支払われ、かつ、がん通院医療費用、がん先進医療費用、疾病先進医療費用も充実し、「ガン・病気になっても通院治療を行い、日常を送る(就業も継続する)」という現代の治療トレンドにも沿った保険に加入しております。
また、付随サービスとして、ティーペックのサービス(24時間対応の電話健康相談、メンタルケアカウンセリング、介護相談、セカンドオピニオンアレンジサービス、がん治療と仕事の両立支援サービス等)を利用することができます。
〇ストレスチェック
労働安全衛生法が改正され、2015年12月より、常時使用する労働者数が50人以上の事業場ではストレスチェックを年に一回実施することが義務化され、法令に則して毎年実施しております。
◎気候変動
2020年10月26日の所信表明演説において、我が国は、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。また、2021年4月の地球温暖化対策推進本部及び米国主催の気候サミットにおいて、「2050年目標と整合的で、野心的な目標として、2030年度に、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向けて、挑戦を続けていく」ことを表明しました。
当社は、インターネット関連事業を主な事業として行っており、気候変動問題が当社事業に重要な影響を及ぼすことは想定されないため、TCFDに基づく開示等は、現時点では行っておりません。しかしながら、あらゆるグローバル課題の中でも、特に気候変動をはじめとする環境問題に関する認識は、この数年間だけでも劇的に変化しております。ビジネス面及び事業者としての取り組み双方で、喫緊の対応が迫られていると認識しており、今後対応を具体的対応を検討のうえ推進してまいります。
◎知的資産
当社は、持続的な事業成長や価値の提供を目的として、知的資産への投資は必要不可欠であるものと認識しております。特に、商標権や著作権については、企業価値に大きく影響を及ぼすことから、当社の強みとして認識し、全社的に把握管理し、知財・無形資産の活動戦略を構築しております。
例えば、一部の知財については、著作権を当社が保有し、商標登録することで、知的財産の強化を行っております。これにより、当社は利用顧客に対して、著作権に係るライセンスを付与し、月額利用料を収受(SaaS型サービス)するサービスを展開することで、競争力のある事業が創出されております。複数の利用顧客に対して横展開可能な知財となっており、持続的な価値の提供につながるビジネスモデルを構築しております。
独自に開発した技術等のうち事業上の重要性等があるものについては、適宜特許出願を行ってまいります。事業の性格上、特許等に該当しない知的財産については、当社の社名やサービス名を、国内外において商標登録することにより、知的財産の強化を行っております。
(3)リスク管理
当社ではサステナビリティ関連のリスクを、その他経営上のリスクと一体的に監視及び管理しております。詳細は、「
(4)指標及び目標
当社では、「(2)戦略」に記載した、人材育成及び社内環境整備に関する方針に係る指標について、本報告書提出日現在において、当該指標についての具体的な目標を設定しておりません。今後、関連する指標のデータ収集及び分析を進め、開示項目を検討してまいります。
当社の事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、経営者がリスクとなる可能性があると認識している主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を与えると認識している事項を記載しております。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、別段の記載がない限り、本報告書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
マテリアリティ項目別の影響の大きさ、発現の蓋然性・時期、評価、前年比較は、項目の末尾にまとめて記載しております。
・リスク管理体制について
当社は、取締役会が決定した「内部統制体制の整備に関する基本方針」に基づき、コンプライアンス・リスク委員会を設置しています。同委員会は、リスクを認識・評価した上で、リスクの回避・軽減・移転・保有を判断し、認識・評価された結果については、取締役会で報告を行い、リスクに対する回避・軽減・移転・保有などの対策状況を確認した上で、更なる対策の策定、見直しなどを実施するとともに、万一発生した場合には影響の極小化に努めております。
当社では、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
・事業環境に由来するリスクについて
(1)自然災害等に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
近年、東日本大震災や能登半島地震などの大規模な地震や、台風をはじめとする自然災害が日本各地で大きな被害をもたらしています。また、新型コロナウイルス感染症のような世界的な感染症は、命の不安、経済の低迷といった社会不安を引き起こしています。当社は、事業継続のため必要とされる安全対策マニュアルを作成しています。また、昨今の気候変動などに伴う災害の大規模化により想定外の被害がもたらされることも考えられます。
提供する各種サービスは、通信ネットワーク及びコンピュータシステムにより提供されております。サービスの継続稼働のため、セキュリティ対策、設備投資、自然災害等を想定したデータセンターでのシステム運用を行っておりますが、地震・津波等の自然災害及び火災・事故・停電・電力不足等の予期せぬ事象の発生によりサーバーがダウンした場合等には、当社の社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害の賠償金の支払等により、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
これら災害等に備え、災害発生時の初期対応や迅速な業務の復旧を可能にするための対応体制や、環境等の整備を継続するとともに、従業員の安全についても災害発生時マニュアルの整備・運用と、迅速な安否状況の把握ができる安否確認システムの構築等の対策を講じております。また当社が利用するデータセンターについては、免震または耐震構造、自家発電による無停電電源装置を装備するとともに、強固なセキュリティを確保しております。
(2)個人情報保護に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
UGCサービスにて、登録ユーザーとなる際に、ユーザーのメールアドレスを、一部の有料オプション等を利用いただく際に氏名、性別、郵便番号を取得しております。また、受託サービス等においても、ユーザーのメールアドレス等を取得するなど、ユーザーの個人情報を取り扱っております。よって、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務を課されております。また、2022年4月に改正同法が施行され、国際的にもGDPRやCCPAが施行されるなど、今後、ますます個人情報管理の徹底が必要となっております。しかしながら、当社が保有する個人情報等につき、漏洩、改ざん、不正使用等が生じる可能性が完全に排除されているとはいえません。従いまして、これらの事態が起こった場合、当社の社会的信用やブランドイメージの低下、適切な対応を行うための相当なコストの負担、発生した損害の賠償金の支払等により、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
取得した個人情報の保護に最大限の注意を払い、個人情報の外部漏洩の防止はもちろん、不適切な利用、改ざん等の防止のため、個人情報の管理を事業運営上の重要事項と捉え、保護管理体制の確立に努めております。また、個人情報保護法の改正動向や国際的な潮流を見極め、適切な運用ができるよう社内体制の整備と教育を行ってまいります。なお、当社は一般社団法人日本プライバシー認証機構のTRUSTeマーク(注)を取得しております。
(注)TRUSTeマーク:日本プライバシー認証機構によって、個人情報をTRUSTeが策定した基準に適合して取扱っていると認証された際に発行される認証マークのこと。
(3)その他の法的規制等に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社事業を規制する主な法規制として、(ア)「電気通信事業法」、(イ)「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下、「プロバイダ責任制限法」という)、(ウ)「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(以下、「不正アクセス禁止法」という)があります。当社は、事業運営上関係する各法令へ対応するための体制を整備し、法令遵守に努めており、現状において法令に違反する事象は認識されておりません。
しかしながら、法令違反等の事象の発生、あるいは当社の事業を規制する現行法令の改正および新法令が制定される可能性があります。そのような場合には、当社の社会的信用の失墜や、当該規制への対応に際して、サービス内容の変更や新たなコストが発生すること等により、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(ア)電気通信事業法により、通信の秘密の保護等の義務が課されております。当社がこの関連法令に抵触した場合、業務停止命令や登録取消し等の行政処分を受けることも想定され、このような場合には当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(イ)プロバイダ責任制限法により、当社は「特定電気通信役務提供者」に該当し、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信による情報の流通において、他人の権利の侵害があった場合に、権利を侵害された者に対して、権利を侵害した情報を発信した者に関する情報の開示義務を課されております。また、権利を侵害した情報を、当社が媒介したことを理由として、民法の不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性もあり、これらの点に関し訴訟等の紛争が発生した場合には当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(ウ)不正アクセス禁止法により、当社は不正アクセス禁止法における「アクセス管理者」として、努力義務ながら不正アクセス行為からの一定の防御措置を講ずる義務が課されております。罰則はありませんが、この義務を遵守できない場合には当社の社会的信用やブランドイメージの低下等により、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
コンプライアンス経営の確立に努め、総務部担当者による法令適合性の審査や、契約書のリーガルチェック、社内への啓発活動等を行っており、法令違反の発生を防止する社内管理体制を構築し、法律、条例、関連諸規則等の遵守体制を強化しております。
(4)知的財産権に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、知的財産権を重視し、必要な商標権等の知的財産権を取得することにより、競争力を維持していくとともに、事業活動に際して、第三者の知的財産権を侵害しないよう最大限の注意を払っております。しかしながら、当社の認識していない知的財産権が既に成立している可能性や、当社の事業分野で第三者による知的財産権が成立する可能性があること等から、当社による第三者の知的財産権の侵害が生じる可能性は否定できず、仮に当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者より、損害賠償請求、使用差止め請求、ロイヤルティの支払い要求などが発生する可能性があり、その場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
第三者の特許権、商標権等の知的財産権に関して、顧問弁理士を通じて調査する等、その権利を侵害しないよう留意するとともに、当社が保有する技術について特許として知的財産権を獲得するよりも、ノウハウとして蓄積した方が事業戦略上優位であると判断されるものを除き、その費用対効果も考慮に入れた上で特許権等の知的財産権を取得し、権利保護に努めております。また、当社の事業活動において第三者の著作物を利用する場合には、OSSライセンスの遵守、著作物利用に関する契約の締結、著作権者の利用許諾の取得等、第三者の著作権を侵害しないよう、サービス開発及びコンテンツ制作を行っております。
(5)訴訟に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、はてなブログなど、ユーザーが情報をウェブ上に公開することができるプラットフォームを提供しております。ユーザーは情報を即時にウェブ上に公開できるため、当社が当該情報を利用規約違反として削除等の措置を講じる対応に先んじて、ユーザーにより違法なコンテンツが公開される可能性や、ユーザーの情報発信によって名誉毀損を受けたとして、第三者から当社が訴訟などを受ける可能性があります。そのような場合には、当社の社会的信用やブランドイメージの低下など、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
ユーザーによる第三者の名誉毀損の点については、プロバイダ責任制限法等を参照しつつ利用規約やガイドラインに基づき対応することとしています。当社は、利用規約を設け、ユーザーに対して、サービス利用上の禁止事項を定めるとともに、発信に関する全責任はユーザー自身にあること及び、法令を含む利用規約に違反する内容については当社が情報を削除する権利を持つことを明示するとともに、違反する情報を発見した場合には削除等の措置を講じ、適法かつ健全なプラットフォームの維持に努めております。
・事業内容に由来するリスクについて
(6)インターネットマーケティング関連市場に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
近年、インターネットマーケティング関連市場は拡大傾向にありますが、企業の広告宣伝活動が景気動向の影響を受けやすいこと、ユーザーの利用するデバイス環境に変化が生じる可能性があること、季節要因による変動があること、広告販売に活用している広告代理店やメディアレップの営業戦略や営業力などの影響を受けること、今後も他の媒体や制作会社との競合が継続していくと考えられることから、今後、これらの状況に変化が生じた場合、インターネットマーケティング関連事業の収益低下のリスクが顕在化する可能性があります。
[リスクへの対応策]
景気変動の影響を受けながらも安定的な収益をあげるべく、費用構造の改善に取り組んでおります。インターネットマーケティング関連市場においては、技術、顧客ニーズ及び競争が急速に変化することから、頻繁に新しい商品及びサービスの導入、新たな競争相手等が出現しており、当社においてもこれらの変化等に迅速に対応すべく、適切なコストを投じた上で、市場調査によるマーケット動向の把握等に努め、更なるサービス開発等の強化をしてまいります。
(7)インターネットマーケティングにおける価値基準に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社が行っているインターネットマーケティング関連事業は、新たな広告手法の登場等、変化し続けている状況にあり、その出稿においても、業種等の偏り及び変遷があります。このような状況の中、インターネットマーケティングの目的及び求める効果等の価値基準についても、変化し続けているといえます。今後、マーケティング手法の変化並びにマーケティング投資を行う広告主等の変遷等により、その価値基準が当社の想定と異なるものとなった場合、インターネットマーケティング関連事業の収益低下のリスクが顕在化する可能性があります。
[リスクへの対応策]
マーケティング投資を行う広告主等のニーズに対して新たな価値を創造・提供し、総合的に応えるために、これまでもはてなブログ等の当社UGCサービスを活用した他社のオウンドメディア構築のサービスの開発や、ネイティブ広告、タイアップ広告など広告手法を開発してまいりましたが、当社のUGCサービスそのものが持つ価値を活用したインターネットマーケティング手法を引き続き開発し、広告商品を取り揃え、販売するよう、新たな収益機会の獲得に取り組んでおります。
(8)コンテンツの信頼性に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社が受注したクライアントのオウンドメディアに掲載するコンテンツは、各編集者において所定のルールに従い、掲載前のコンテンツのチェックを入念に実施するなどして編集業務を行うよう努めることで、クライアントが運営するメディアとして信頼性を担保するよう取り組んでおります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や、時期を正確に予測することはできませんが、何らかの理由によりクライアントのオウンドメディアに正確性、公平性に欠けたコンテンツが掲載され、クライアントの信用を毀損することが発生した場合、当社の業績及び社会的信用に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
各編集者において、所定のルールに従い、掲載前のコンテンツのチェックを入念に実施するなどして編集業務を行うよう努めております。外部ライターとの間の契約においては、法令遵守のみならず、インターネット広告ビジネスに関わる企業で構成される業界団体である日本インタラクティブ広告協会の定めるガイドラインの遵守を義務づけ、ステルス・マーケティングなどクライアントの信用を落とすような行為を禁じております。また、コンテンツ領域独自の審査基準を設け、場合によっては、二次的に外部専門家への確認を実施する等の方策をとることにより、コンテンツマーケティングサービス事業者として更なる信頼性強化に取り組んでおります。
(9)受託開発に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
一括請負契約による受託サービスにおいては、受注時には利益が計画されるプロジェクトであっても、予期し得ない理由により、当初見積以上に作業工数が発生することによる、コストオーバーランの発生や、契約不適合責任に基づく無償修補作業、納期遅延や品質不良等に起因する損害賠償請求を受ける可能性があります。また、これにより訴訟を含めた係争に発展する可能性もあります。赤字プロジェクトが発生した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社が提供しているサービスが、顧客の業務遂行上重要な役割を担っていることから、契約面からのリスク回避に努めるとともに、企画段階でのリスク洗い出しと対策の徹底、提供中サービスのリスクモニタリング、並びに定期メンテナンスや改善対策等の予防保全対策を強化しております。また、サービス品質を更に向上させ、赤字プロジェクトの発生を未然に防止するため、見積段階からのリスク要因のレビュー等による見積精度の向上とリスク管理の徹底を図るとともに、プロジェクトマネジメントスキルの向上と品質管理体制の拡充、強化に努めております。
(10)競合や陳腐化に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
競合他社においては、当社に比べ大きな資本力、技術力、販売力等の経営資源、幅広い顧客基盤、高い知名度等を有している企業が存在いたします。競合他社の営業方針や価格設定によっては、競合他社との競争がさらに激化する可能性があります。また、技術革新において、予期しない急激な変化があり、その対応が遅れた場合には、当社のサービスの陳腐化や競争力の低下を引き起こし、サービス全般の収益低下のリスクが顕在化する可能性があります。
[リスクへの対応策]
インターネット業界は、技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が激しく、新しいサービスが逐次産み出されている中、当社も技術革新および顧客ニーズの変化に対応するべく、積極的に最新の情報の蓄積、分析および当社への導入に取り組んでおります。
当社のUGCサービスは、興味・関心を共にするユーザーが集まるコミュニティの繋がりにより、他のSNSとの差別化が図られております。そのUGCサービスを自社で企画構想から開発すること及びサービスを大規模に運用することを一貫して実行できることが、当社の強みであると認識し対応しております。また、当社は、技術革新に適時・的確に対応できるよう、従業員の能力開発及び新技術習得を推進し、新しい技術の組織的発掘並びに競合他社と差別化できるサービスの構築等に努めております。
(11)インターネット広告の審査に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社が運営するコンテンツに掲載された広告等に関し、ユーザーもしくはその他の関係者、行政機関等から、クレームや勧告を受けたり、損害賠償を請求され、これらの対応に不備が生じた場合、インターネット広告事業の収益低下のリスクが顕在化する可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社が運営する「はてなブログ」や「はてなブックマーク」等においては、インターネット広告内容に関して、独自の掲載基準を設定し、自主的な規制を行い、事前に不適切な広告を排除するよう努めております。また、広告主との間で規約により、広告内容に関する責任の所在が広告主にあることを確認するとともに、削除の権利を当社で有し、規約に違反した情報を発見した場合には当社の判断により広告配信を停止することとしております。
(12)サービス開発・運営におけるシステムダウンに係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社が提供するサービスの多くは、通信ネットワーク、サーバーインフラ及びアプリケーションシステムにより提供されております。サービスの運営及び改善のための開発を行う中で、予期せぬバグの発生やオペレーションのミスによりシステムが動作せずダウンした場合等には、当社の社会的信用やブランドイメージの低下、UGCサービスを利用するユーザーの離反、広告売上の消滅、発生した損害に対する補填の支払等により、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
これらシステムダウンに備え、システム運用及び開発の手順書の明示化及び継続的なメンテナンスを行うと同時に、効率的に運用をするためのツール類を自社開発するほか、有用なサービスの導入を行うなどの対応を講じております。また、システムダウン時の迅速な業務の復旧を可能にするための対応体制や、環境等の整備に継続して取り組んでおります。
(13)UGCサービス運営に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社が提供する一部のサービスでは、ユーザーがブログ記事やコメント等を投稿することが可能となっており、健全性を欠くコメントが投稿される可能性や、他のユーザーを誹謗中傷するコメントが投稿される可能性があります。不適切な投稿に対して当社が十分な対応ができない場合には、当社がサービス運営者としての信頼を失い、当社サービス全般の収益低下のリスクが顕在化する可能性があります。
[リスクへの対応策]
サイト運営に関して利用規約をサイト上に明示し、サービスの適切な利用を促すように努めるとともに人的・機械的の両面で恒常的に監視し、利用規約に違反する不適切な投稿を非公開にしたり、ユーザー登録を停止することなどによって健全なサイト運営を維持しております。
(14)情報管理に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社では、当社が提供するサービスの利用者を識別できる情報や顧客が保有する個人情報を知り得る場合があります。システム上のトラブル防止策を最大限実施しておりますが、災害等によってソフトウエア機器が被災しシステムの作動不能や内部データの消失、想定外のサイバー攻撃や不正アクセス、コンピュータウイルスの感染等により、社内情報の漏洩、改ざん等が発生した場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
個人情報を取り扱う際の個人情報保護規程を制定するとともに、社内教育を徹底する等、個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。また、情報の適切な保存・管理に向けた「文書管理規程」など各種規程を整備しております。また、情報管理に関する啓発活動を実施する等、不適切な情報管理および機密情報流出の未然防止に向けた取り組みを行っております。
(15)風評に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
マスコミ報道やインターネット上の書き込み等において、当社に対する否定的な風評が発生し流布した場合、それが事実に基づくものであるか否かにかかわらず、当社の社会的信用に影響を与える場合があり、悪質な風評が流布した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社のサービスに対し、否定的な風評が拡大し、ブランドイメージの毀損が発生した場合には、各事業本部が連携し適切に対応できる体制となっております。当社では日頃から、これら風評の早期発見及び影響の極小化に努めております。
(16)特定の取引先への依存に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、売上高上位企業の投資動向に左右される場合があります。また、当社が運営するコンテンツプラットフォームサービスでは、サイト内検索エンジンや広告枠運用、解析ツールなど多くのツールにおいて、特定取引先の製品を利用しております。UGCサービスの集客の過半数についても特定の検索エンジンに頼っております。何らかの理由により特定既存顧客との関係に変化が生じた場合、売上の減少が顕在化かつ長期化する可能性があります。
[リスクへの対応策]
検索エンジンからの集客を強化すべく検索エンジン対策を行う他に、コンテンツマーケティングサービス及びテクノロジーソリューションサービスにおいて、取引先数の拡大により、特定の取引先への依存度を低下させていく方針であり、特定顧客基盤に依存しない収益体制を構築すべく努めてまいります。
(17)自社利用目的のソフトウエアの減損に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、自社で開発したシステムを活用して他社向けに主にテクノロジーソリューションサービスとして提供しております。それらの開発に係わるコストについて、資産性のあるものについては自社利用目的のソフトウエアとして無形固定資産に計上し、費用化すべきものについては各事業年度において費用化しております。自社利用目的のソフトウエアの開発においては、プロジェクト推進体制を整備し、慎重な計画の立案・遂行に努めております。しかしながら、当該開発が市場のニーズに合わないことにより利用価値が低下する場合や、重大なバグ(不良箇所)等の発生によりソフトウエアとして機能しなくなる場合には、これらを減損処理する可能性があります。その場合、一時に多額の費用が発生するため、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社では、他社との競争を勝ち抜くために、当社が持てるサービス開発技術を駆使し、市場競争力を強化・維持するためソフトウエアへの投資を進めており、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた開発費用をソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)として資産計上しております。これらの資産については、減損会計を適用し、減損の兆候がある場合には当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかを検証しており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行います。
(18)受託制作のソフトウエア開発の収益認識とコストの見積り
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、受注制作のソフトウエア開発プロジェクトに関する売上の計上基準について、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 2021年3月26日)を適用しております。収益については、当社のソフトウエア開発は、案件ごとに管理されており、主に、ソフトウエア開発原価総額の見積りに対する実際の原価発生額の割合で測定される進捗率(原価発生額÷ソフトウエア開発原価総額)に基づいて認識しております。
また、当該ソフトウエア開発原価総額が、信頼性をもって見積ることができない場合には、原価発生額のうち、回収される可能性が高い範囲でのみ収益を認識し、原価は発生した期間に費用として認識します。ソフトウエア開発については、基本的な仕様や作業内容が顧客の指図に基づいて行われることがあるため、開発内容の個別性が強く、ソフトウエア開発原価総額の見積り、収益総額の見積り、契約に係るリスクやその他の要因について重要な仮定を設定する必要がありますが、係る見積りは変動する可能性があります。
[リスクへの対応策]
受託制作のソフトウエア開発は、開発工程が可視化されにくいという特性を理解し、契約上の仕様や作業内容について、過去の同種のソフトウエア開発の経験やリスク要因等を加味のうえで、開発人員の人件費や外注費等を積算し、ソフトウエア開発原価総額の見積りに努めて参ります。
内部統制制度の整備・運用におきましても、開発着手段階で、収益総額及びソフトウエア開発原価総額を見積った実行予算を策定、承認する体制を構築しております。また、開発着手後の各決算期末において、開発の現況を踏まえて、それらの見直しを実施のうえで、承認する統制フローを整備し、運用しております。開発担当部門から独立した部門である経理部がソフトウエア開発案件の進捗度の検証を実施のうえ、受託制作のソフトウエア開発に係る適切な会計処理に努めております。さらに、経理部による「収益認識に関する会計基準」等の社内周知や、専門的知識の拡充を目的とした教育を行い、適切に対応できる体制を整えております。
(19)保有有価証券における価格下落のリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、資産運用上の効率性に着目し、余剰資金の一部を市場で流通している債券(社債)や投資信託への投資で運用しております。余剰資金の運用にあたっては、安全性の高いものを選択しておりますが、急激な市場金利や為替の変動、発行主体の急激な業績悪化等により、保有する有価証券の市場価格が著しく下落した場合、損失が発生し、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
余剰資金の運用にあたっては、リスクとリターンを充分に考慮し、経済環境、市場動向や発行体の業績動向等を注視し、安全性の高いものを選択して投資しております。
(20)為替相場の変動に係るリスク
当社が利用するデータセンターについては、主に米ドル建決済であるため、未払債務については為替変動リスクにさらされております。世界経済の動向により円安が進行し、かかるコストの増加分を販売価格に転嫁できない場合、当社において利益率の低下を招く可能性があります。リスクが顕在化した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
市場動向につきましては、定期的なモニタリング並びにタイムリーな情報収集を行いつつ、必要に応じリスク低減策を講じるべく備えております。具体的には、為替相場の変動によるリスクをヘッジする目的で、外貨建仕入れに関する確定債務残高と予定債務残高を適宜管理し、適切な先物為替予約等を行っております。
(21)人材の確保及び育成に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
事業の拡大と合わせ、計画通りに人材の確保及び育成が出来ない場合や、事業の中核をなす社員に不測の事態が生じた場合、業務が滞り、経営活動の円滑な遂行が困難となり、将来事業計画の未達成となる可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社のサービスを安定的に継続し、かつ、進化させていくにあたり、今後も継続的に有能な人材の確保および育成が不可欠であり、新卒および中途採用を計画的に行うとともに、社内人材に対する教育研修制度を充実させ、また働きがいのある企業風土や職場環境を整備することにより、全体のレベルアップを図っております。
(22)小規模組織に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、取締役(社外取締役を含む)6名、監査役(社外監査役を含む)3名、従業員約200名と小規模な組織であり、業務プロセスを特定の個人に依存している場合があり、内部管理体制もこの規模に応じたものとなっております。特定の役員、従業員の社外流出等が発生する可能性があり、その結果、コーポレート・ガバナンスが有効に機能せず、諸施策が適時適切に進行しない可能性があります。
[リスクへの対応策]
企業価値の持続的な増大を図るにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、内部統制の整備・構築により業務プロセスの見直しを推進するとともに、業務の定型化、形式化、代替人員の確保などの業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、更に健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要と認識しており、今後の事業規模の拡大に応じて内部管理体制の一層の充実を図っていく方針であります。
(23)新株予約権の行使による株式価値の希薄化に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
役員及び従業員に対し、当社の業績向上への意欲や士気を一層高めることを目的として、新株予約権付与によるストック・オプション制度を採用した実績があります。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討することがあります。また今後、新株予約権発行のほか、新株、新株予約権付社債等を発行する可能性があり、これらの発行及び行使により当社の1株当たりの株式価値に希薄化が生じる可能性があります。また、これらの行使による需給の変化が当社株式の株価形成に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
今後においても、ストック・オプション制度を活用していくことを検討することがあります。その場合には、当社の1株当たりの株式価値に希薄化が生じますが、役員及び従業員が、業績向上意欲や士気を高め、株価変動に関する利害を株主の皆様と共有し、結果として、企業価値向上へ貢献するものと考えております。
(24)配当政策に係るリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は設立以来、配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を重要な経営課題であると認識しており、事業基盤の整備状況、業績や財政状態などを総合的に勘案のうえ、配当をしていきたいと考えております。
[リスクへの対応策]
当社はこれまで成長につながる内部留保を優先し、配当を行わずに、当面内部留保の充実を進める方針であります。将来的には、各期の業績、財務体質を勘案しつつ、利益還元を検討していく方針でありますが、現時点においては、配当の可能性及びその時期については未定であります。
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マテリアリティ項目 |
影響の大きさ |
発現の蓋然性・時期 |
評価 |
前年比較 |
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■事業環境に由来するリスクについて |
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|
1.自然災害等に係るリスク |
大 |
高 |
極めて重要 |
→ |
|
2.個人情報保護に係るリスク |
大 |
高 |
極めて重要 |
→ |
|
3.その他の法的規制等に係るリスク |
大 |
高 |
極めて重要 |
→ |
|
4.知的財産権に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
5.訴訟に係るリスク |
中 |
中 |
注視 |
→ |
|
■事業内容に由来するリスクについて |
||||
|
6.インターネットマーケティング関連市場に係るリスク |
大 |
高 |
極めて重要 |
→ |
|
7.インターネットマーケティングにおける価値基準に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
8.コンテンツの信頼性に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
9.受託開発に係るリスク |
大 |
高 |
極めて重要 |
→ |
|
10.競合や陳腐化に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
11.インターネット広告の審査に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
12.サービス開発・運営におけるシステムダウンに係るリスク |
大 |
中 |
極めて重要 |
→ |
|
13.UGCサービス運営に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
14.情報管理に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
15.風評に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
16.特定の取引先への依存に係るリスク |
大 |
高 |
極めて重要 |
→ |
|
17.自社利用目的のソフトウエアの減損に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
18.受託制作のソフトウエア開発の収益認識とコストの見積り |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
19.保有有価証券における価格下落のリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
20.為替相場の変動に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
21.人材の確保及び育成に係るリスク |
大 |
高 |
極めて重要 |
→ |
|
22.小規模組織に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
23.新株予約権の行使による株式価値の希薄化に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
|
24.配当政策に係るリスク |
中 |
中 |
重要 |
→ |
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要、及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
また、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
① 我が国経済と当社を取り巻く事業環境の概況
当事業年度における我が国経済は、内閣府の2024年7月の月例経済報告によると、「景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している」とされております。先行きについては、「雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある」とされております。
UGCサービス事業(注1)を展開するインターネット関連業界におきましては、『消費動向調査(令和6(2024)年3月実施分)』(内閣府経済社会総合研究所)によりますと、スマートフォン世帯普及率は93.8%(前年比1.2ポイント増)と普及が進んでおり、スマートフォン市場は微増していくものと予測されます。また、2024年6月に総務省情報通信政策研究所が公表した『令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』によりますと、休日のインターネット利用の平均利用時間はテレビ視聴の平均利用時間を全年代で超過しており、「休日のインターネット利用の平均利用時間が、初めて200分を超過」、「スマートフォンの利用率は全年代で97.5%と高い水準にあり、ほぼ100%となっている」とされており、インターネットの情報通信メディアとしての存在がテレビと肩を並べ、今後もスマートフォンなどの機器の保有・利用により、インターネットを取り巻くマーケットサイズは拡大していくものと予測しております。更に、『2023年 日本の広告費』((株)電通)によりますと、「2023年の日本の総広告費は、通年で前年比103.0%の7兆3,167億円で、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴うリアルイベントの開催数増加や国内外の観光・旅行の活性化等も相まって、1947年に推定を開始して以降、過去最高を更新した。インターネット広告費(インターネット広告媒体費、物販系ECプラットフォーム広告費、インターネット広告制作費の合算)は、進展する社会のデジタル化を背景に堅調に伸長し、総広告費に占める構成比は45.5%に達した」とされております。インターネット広告媒体費は2024年も堅調に推移し、全体で前年比108.4%の2兆9,124億円まで増加すると予測されております。
このような事業環境のもと、当社におきましては、自社で開発したユーザー参加型サービス群を「コンテンツプラットフォームサービス」と位置づけ、その運営を通して培われた技術力やユーザーコミュニティを活かし、法人顧客向けに「コンテンツマーケティングサービス」、「テクノロジーソリューションサービス」をサービス領域として提供しております。市場環境の変化や、それに伴う経済的予測等を鑑み、人的資本や知的財産、資金等の経営資源を各サービスへ効率的に配分することで、経営の機動力の向上を図ってまいります。
② 業績の概況
(ⅰ)サービス別の販売動向
<コンテンツプラットフォームサービス>
コンテンツプラットフォームサービスでは、ユーザーがコンテンツを発信、拡散するUGCサービスとして、「はてなブログ」「はてなブックマーク」などのサービスを展開しております。主力サービスとなっている「はてなブログ」の登録ユーザー数は順調に増加しました。一方、「はてなブログ」の個人向け有料プラン「はてなブログPro」などについては、各種SNSの普及による競争激化も相まって、「はてなブログPro」の契約件数が減少したことなどの影響で、課金売上は低調に推移しました。今後は、CtoC課金サービスの強化を目的として、ブログ記事の有料販売に対応するなど、ユーザーの収益獲得を支援するとともに、ブログのサービス向上につながる取組みとして、2023年12月に公開した「AIタイトルアシスト」に続けて、AIを活用した新機能をリリースすることで、景気動向やトレンドに左右されやすい広告収入をカバーしつつ、売上成長を図ってまいります。
コンテンツプラットフォームサービス上に掲載するアドネットワーク広告については、広告枠を提供したい数多くの広告媒体の運営事業者との間で、広告を出稿したい数多くの広告主を集めた広告配信ネットワーク(アドネットワーク(注2))が形成されるなど、関係者は増加傾向にあり、各事業者の関与の仕方は、複雑なものとなっております。このような事業環境の中で、広告単価の下落などを要因として、売上は伸び悩みました。
以上の結果、コンテンツプラットフォームサービスの売上高は、363,954千円(前年同期比13.6%減)となりました。
<コンテンツマーケティングサービス>
コンテンツマーケティングサービスでは、BtoB向けストック型ビジネスとして、CMS(注3)である「はてなブログMedia」を活用したオウンドメディア(企業が顧客などに向けて伝えたい情報を発信するための自社メディア)の構築・運用支援サービスや、「はてなブログ」などのUGCサービスを活用したネイティブ広告、バナー広告、タイアップ広告などを展開しております。
デジタルマーケティングを目的としたオウンドメディアの開設が活発化している昨今の市場環境において、フルサービスを提供する「レギュラープラン」はもとより、廉価版としての位置づけである「ライトプラン」、自社で求める人材の獲得や、働き方改革に関する情報発信や社員インタビューなど、採用マーケティングの一環として素早く安価にオウンドメディアを立ち上げられる「採用オウンドメディアプラン」を新たな軸としてサービス訴求してまいりました。また、販売戦略として、ニーズが旺盛な人材採用関連市場への販売チャネルを強化すべく、人材関連企業による代理販売を通じて新たな顧客にアプローチして新規導入のメディア数の増加を図りました。一方で、一部の個別案件において、広告・マーケティング予算が縮減されたことによる広告出稿の手控えにより、継続的な受注に至らなかったことなどから、厳しい販売環境となりました。その結果、「はてなブログMedia」の運用数合計は142件(前期末比変動なし)となりました。今後は、2024年7月にサービス開始した、生成AIを活用して制作する記事のアイデアや構成案を提案する「AIコンテンツアシスト」機能を更に改善するなど、「はてなブログMedia」の改良を進めて導入件数増を図り、また従来よりも直接的に顧客の事業に貢献できるメディア運用メニューのサービスを拡充していくなどの効果的なアップセル施策によってメディア当たり売上単価の向上を図ることで、売上成長を目指してまいります。
以上の結果、コンテンツマーケティングサービスの売上高は、636,093千円(前年同期比8.8%減)となりました。
<テクノロジーソリューションサービス>
テクノロジーソリューションサービスでは、受託サービスとして顧客独自のネットワークサービスに関する企画・開発・運用の受託と、ビッグデータサービスとしてBtoB向けストック型ビジネスであるサーバー監視サービス「Mackerel(マカレル)」を展開しております。
今後の成長の柱と位置づけるアプリマンガサービスに向けたマンガビューワ「GigaViewer for Apps」について、2024年3月28日に「少年ジャンプ+」(サービス提供者:(株)集英社)に搭載を開始しました。「少年ジャンプ+」iOS版/Android版は、ダウンロード数が2,700万を超える巨大なサービスであり、本事業年度の第4四半期途中から本格的に業績貢献が始まり、この効果は2025年7月期以降についても引き続き継続すると見込んでおります。Webマンガサービスに向けたマンガビューワ「GigaViewer for Web」については、「コミックアース・スター」(サービス提供者:(株)アース・スターエンターテイメント)・「コミックバンチkai」(サービス提供者:(株)新潮社)・「OURFEEL」(サービス提供者:(株)シュークリーム)の3サービスに搭載されました。「GigaViewer」はアプリ版・Web版合計16社、搭載累計25サービスと増加し、売上は堅調に推移いたしました。出版業界の調査研究機関である公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所の発表によると、出版市場における2023年の電子コミック市場は前年比7.8%増の4,830億円と規模が拡大しております 。このような市場環境において 、「GigaViewer for Web」・「GigaViewerfor Apps」の利便性や広告運用を含めたソリューションは、顧客から評価されており、既にデファクトスタンダードを獲得したWeb版の導入メディアに対して、アプリ版の導入を推進してまいります。一般にアプリ版はWeb版よりもコンテンツの閲覧数や販売額が大きいことから、開発・運用料のみならず、レベニューシェア(広告・課金収益など)の収益の大幅な拡大に資するものと捉え、注力してまいります。
受託サービスについては、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合の受託開発案件については、完全に履行義務を充足した一時点で収益を認識しました。ごく短い場合を除いた受託開発案件については 、履行義務の充足につれて一定期間にわたり収益 を認識しました。任天堂(株)のNintendo SwitchTMソフト『スプラトゥーン3』のプライベートマッチ機能を利用した大会支援サービス「タイカイサポート」や(株)集英社の「少年ジャンプ+」のアプリサービス開発など、複数の受託開発案件で成果物の納品及び検収が完了しました。保守運用サービスについては、運用案件数の積上げにより、売上成長に繋がりました。
「Mackerel(マカレル)」については、AWS(アマゾンウェブサービス)のパートナー制度「AWS パートナーコン
ピテンシープログラム」において、「AWS DevOps コンピテンシー」認定を、当社が国内企業で初めて取得しております。さらに、「AWS Partner Network(APN)Award2019」において、「Mackerel(マカレル)」を通じたAWSへのビジネス貢献が評価され、「APN Technology Partner of the Year 2019 - Japan」を受賞いたしました。更に、2024年2月には、顧客のワークロードのAWSへの移行を加速させる戦略及び実行に貢献するとAWSが判断したサービスをパートナーとして認定する「AWS ISVワークロード移行プログラム」パートナー認定を日本企業で初めて取得いたしました。これにより、AWSの中で、サーバー監視サービスとしての認知度が向上し、更なる導入実績の積上げを図ることができました。同じく2月には、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証を取得し、情報セキュリティ管理の実践において国際的に認められた基準に適合していることを示すにいたりました。今後は、AWSなどの大手クラウドプラットフォーマーのサービスを活用している顧客が、「Mackerel(マカレル)」を簡単に利用、運用しやすくなる「インテグレーション機能」をさらに充実させることで、利用開始の心理的ハードルの引き下げに注力していくとともに、販路拡大のためのパートナー拡充にも継続的に取り組んでまいります。2022年11月においては、AWSのパートナー制度「AWS Graviton Ready」においても同様に、当社が国内企業で初めて認定を取得するなど、大型顧客の獲得やパートナーセールスを主軸とした販売戦略、「次世代Mackerel(マカレル)アーキテクチャー(注4)」の開発により、更なる売上成長を図ってまいります。
以上の結果、テクノロジーソリューションサービスの売上高は、2,309,374千円(前年同期比13.7%増)となりました。
(ⅱ)利益の概況
当事業年度を将来の成長基盤の更なる強化に向けた『先行投資期間』と位置づけ、費用投下いたしました。
営業費用(売上原価と販売費及び一般管理費の合計)については3,241,253千円(前年同期は2,976,888千円)となりました。営業費用は増加しておりますが、概ね期初計画の範囲内であります。
主な増減要因としては、広告宣伝手法の見直しに伴う広告宣伝費の減少や、フレキシブルワークスタイル制度の恒 久化に伴う諸管理費用の減少があった一方、テクノロジーソリューションサービスにおける広告運用売上の増加に伴 って発生する広告運用原価や、主要3サービスの拡張と新たなサービスの創出のため、人材投資を積極的に行った結 果、給与手当等の労務費が増加しました。人的資本への経営資源の配分は、当社が将来にわたり、競争優位性を確保 するために、収益基盤の確立に向けた重要投資として位置づけております。また、外貨建決済が必要なデータセンタ ー利用料について、サービスの伸長に伴う外貨建の利用料そのものの伸長要因と、2024年6月まで為替相場について 円安傾向が続いていたことから、外貨建の利用料を円換算した場合の円ベースでの押上要因が相まって、費用増加と なりました。為替相場は、為替介入の実施や、日本銀行が2024年7月の金融政策決定会合において政策金利の引き上 げを発表したことを受け、ますます不確定要素が強くなっております。これら外的要因に備え、外貨建予定取引につ いては、一定のタイミングでの為替予約や通貨オプションなどのデリバティブ取引を活用し、急激な為替変動に対す るヘッジ行為を適切に行ってまいります。
営業外損益や特別損益については、受取利息及び配当金4,473千円の計上、為替差益19,569千円の計上、当座貸越 契約の実行に伴う支払利息791千円の計上、譲渡制限付株式報酬の付与対象者の退職に伴い、譲渡制限付株式割当契 約に基づき割り当てた当社普通株式の全てを、当社が無償取得したことによる株式報酬費用消滅損1,799千円などが ありました。
以上の結果、当事業年度の売上高は3,309,422千円(前年同期比5.1%増)、営業利益は68,169千円(同60.7% 減)、経常利益は91,222千円(同49.9%減)、当期純利益は62,372千円(同37.4%減)となりました。
なお、当社はUGCサービス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
(注)1.User Generated Contentの略。インターネット上で利用者自身がテキストや画像、映像などのコンテンツ を発信することができる場を提供するサービス。
2.アドネットワークとは、多数の広告媒体のWebサイトを束ねた広告配信ネットワークを形成し、それらの WEBサイト上で一括して広告を配信する手法であり、メディア運営者は、サイトページ上に広告枠のみをア ドネットワーク事業者に提供し、掲載される広告が、システムにより自動配信される仕組み。
3.Content Management Systemの略。HTMLやCSSのようなWEBサイトの制作に必要な専門知識を必要とせず、テ キストや画像などの情報を入力するだけで、サイト構築を自動的に行うことができるシステム。
4.サーバーのソフトウェアの状況等を監視するためのオープンソースによる標準化規格「OpenTelemetry(注 5)」に対応するためのプロジェクト。従来は独自規格であったため、容易に導入できなかった企業に対 しても「OpenTelemetry」に対応することで導入が進みやすくなるといった効果が期待される。
5.ソフトウェアのテレメトリーデータ(トレース、メトリック、ログ)を収集し、監視と分析のために遠隔 地に送信するためのツールの標準化規格で、2021年にVer1.0が公開された。
(ⅲ)当社を取り巻く経営環境や想定されるリスクなど
『2023年 日本の広告費』(㈱電通)によりますと、インターネット広告費について、「前年に続く社会のデジタ ル化を背景に、前年比107.8%で過去最高を更新した。総広告費におけるインターネット広告費(インターネット広 告媒体費、物販系ECプラットフォーム広告費、インターネット広告制作費の合算)は3兆3,330億円で、構成比は 45.5%となり、前年度から更に2.0%増加した。」とされております。インストリーム広告を中心とした動画広告需要 は、前年に続き高まっており、デジタルプロモーションの拡大も市場の成長に寄与しております。
一方で、原材料価格の高騰、物流・供給の規制及び遅延等、今後の事業環境、雇用情勢などの先行きに対する不透 明感から、広告出稿の取止めや予算縮小が当社の業績に与える可能性は、依然としてあります。当社を含め、広告媒 体社の業績は、景気によって広告支出を増減させる広告主の動向により、景気変動の影響を受けやすい傾向にありま す。これに伴い、広告支出額の比較的大きい産業部門の事業環境の変化が、今後の当社の業績に意図に反する影響を 及ぼす可能性があります。
また、当社が保有するサービス開発力を、「はてなブログ」や「はてなブックマーク」などにおける機能開発や機 能改善へ投下することにより、訪問者数の拡大を狙い、その結果として、有料オプション「はてなブログPro」の課 金収入の伸長の実現や、ユーザー企業独自のネットサービスに関する企画、開発、運用を受託するサービス領域など で効果的に展開し、新たな収益機会の獲得を見込んでおります。そのために、売上の立ち上がりを見通しつつ、新た な収益基盤の確立に向けた戦略的投資を継続してまいります。
経済的不透明感や危機感が継続することが予想される経営環境の中で、当社の資金の財源及び流動性については次のとおりであります。また、事業継続に対して万全の備えをする方針であります。
当社における事業活動のための資金の財源として、主に手元の資金と営業活動により獲得したキャッシュ・フロー でありますが、資金の手元流動性については、現金及び預金1,504,887千円と月平均売上高に対し5.5ヶ月分であり、 現下、当社における資金流動性は十分確保されていると考えております。
また、当社は事業運営上、必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本的な財務方針としており、金融機関からの借入により調達することを目的として、取引銀行5行との間で、総額1,700,000千円の当座貸越契約を締結しております。バックアップラインを確保し、資金の手元流動性の補完が実現しております。今後は、運転資金や設備投資の需要動向や、それに伴うキャッシュ・ポジションを精査しつつ、適切なタイミングで資金調達を実行してまいります。
なお、当座貸越契約の未実行残高は、1,700,000千円となっております。
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(2)キャッシュ・フローの状況
当事業年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前事業年度に比べ、53,293千円増加し、
1,443,903千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は147,015千円(前年は2,584千円の収入)となりました。
これは主に、増加要因として、税引前当期純利益92,513千円の計上があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は106,157千円(前年は158,280千円の支出)となりました。
これは主に、減少要因として、定期預金の預入による支出59,496千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、獲得した資金は1,548千円(前年は97,141千円の支出)となりました。
これは、増加要因として、新株予約権の行使による株式の発行による収入1,548千円があったことによるもの であります。
(3)生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
当社は生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
(b)受注実績
当事業年度の受注実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
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サービスの名称 |
当事業年度 (自 2023年8月1日 至 2024年7月31日) |
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受注高 (千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前年同期比 (%) |
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テクノロジーソリューションサービス |
701,975 |
106.4 |
393,875 |
112.6 |
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合計 |
701,975 |
106.4 |
393,875 |
112.6 |
(注)1. 金額は、販売価格によっております。
2. コンテンツプラットフォームサービス、コンテンツマーケティングサービスは受注によらないため、記載はしておりません。
3.当社は単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。
(4)販売実績
当事業年度の販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
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サービスの名称 |
前事業年度 (自 2022年8月1日 至 2023年7月31日) |
当事業年度 (自 2023年8月1日 至 2024年7月31日) |
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販売高(千円) |
||
|
コンテンツプラットフォームサービス |
421,103 |
363,954 |
|
コンテンツマーケティングサービス |
697,716 |
636,093 |
|
テクノロジーソリューションサービス |
2,031,470 |
2,309,374 |
|
合計 |
3,150,290 |
3,309,422 |
(注)1.当社は単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前事業年度 (自 2022年8月1日 至 2023年7月31日) |
当事業年度 (自 2023年8月1日 至 2024年7月31日) |
||
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
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株式会社集英社 |
297,819 |
9.5 |
426,722 |
12.9 |
|
株式会社KADOKAWA |
251,910 |
8.0 |
347,510 |
10.5 |
|
ストライプジャパン株式会社 |
295,630 |
9.4 |
276,521 |
8.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わねばなりません。経営者は、債権、棚卸資産、投資、繰延税金資産等に関する見積り及び判断について、継続して評価を行っており、過去の実績や状況に応じて合理的と思われる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っております。また、その結果は資産・負債の簿価及び収益・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、
「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであり
ます。
(2)当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、当社が重視している経営指標は、売上高、営業利益及び経常利益であります。
主要3サービスのシナジー効果を最大限に活用しつつ、売上高、営業利益及び経常利益を継続的に成長させることにより、企業価値の向上、株主価値の向上を目指してまいりました。当社は、経営方針に則った業績目標について、2023年9月13日に業績予想値を公表いたしました。当社が定める経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況については次のとおりです。
なお、経営成績の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(単位:百万円)
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区分 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
|
業績予想値(A) |
3,452 |
48 |
48 |
33 |
|
実績(B) |
3,309 |
68 |
91 |
62 |
|
増減(B-A) |
△142 |
20 |
43 |
29 |
|
増減率(%) |
△4.1 |
41.9 |
89.9 |
88.2 |
当社の資本の財源及び資金の流動性については次のとおりであります。当社における事業活動のための資金の財源として、主に手元の資金と営業活動によるキャッシュ・フローによっております。資金の手元流動性については現金及び預金1,504,887千円と月平均売上高に対し5.5ヶ月分であり、当社における資金の流動性は十分確保されていると考えております。なお、当事業年度末時点において、有利子負債残高はありません。
運転資金需要のうち主なものは、人件費やデータセンター利用料等の営業費用、法人税等の税金費用であります。また、投資を目的とした資金需要の主なものは、ITインフラ設備や事務所設備等の設備投資であります。
当社は、事業運営上、必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。そのため、より一層の事業拡大を継続することに備え、金融機関からの借入により調達することを目的として、取引銀行5行との間で、総額1,700,000千円の当座貸越契約を締結しております。借入に関しては、経常的な運転資金需要の場合には、短期借入を基本方針とし、多額の設備投資需要の場合には、長期借入を基本方針としております。また、金利コストの最小化を図れるような調達方法を検討し、対応してまいります。
また、当社は、フリーキャッシュ・フローを営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動により支出されたキャッシュ・フローの合計と定義しております。当社の経営者は、この指標を戦略的投資または負債返済に充当可能な資金の純額、あるいは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、投資家に有用な指標であると考えており、以下の表のとおり、フリーキャッシュ・フローを算出しています。
(単位:千円)
|
区分 |
前事業年度 (自 2022年8月1日 至 2023年7月31日) |
当事業年度 (自 2023年8月1日 至 2024年7月31日) |
増減 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
2,584 |
147,015 |
144,431 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△158,280 |
△106,157 |
52,123 |
|
フリーキャッシュ・フロー |
△155,695 |
40,858 |
196,553 |
なお、経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(3) 財政状態の分析
(資産)
流動資産は2,278,977千円となり、前事業年度末に比べ、4,099千円減少いたしました。
これは主に、減少要因として、契約資産が60,283千円減少したことによるものであります。
固定資産は630,201千円となり、前事業年度末に比べ、32,088千円増加いたしました。
これは主に、増加要因として、ソフトウェアが105,837千円増加したことによるものであります。
(負債)
流動負債は310,228千円となり、前事業年度末に比べ、43,034千円減少いたしました。
これは主に、減少要因として、未払費用が31,769千円減少したことによるものであります。
固定負債は39,475千円となり、前事業年度末と比べ、149千円増加いたしました。
これは、増加要因として、資産除去債務が149千円増加したことによるものであります。
(純資産)
純資産は2,559,474千円となり、前事業年度末に比べ、70,873千円増加いたしました。
これは主に、増加要因として、当期純利益を62,372千円計上したことによるものであります。
(4) 経営成績等の状況に関する分析
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(売上高)
当事業年度の売上高は、3,309,422千円(前年同期は3,150,290千円)となりました。
これは主に、テクノロジーソリューションサービスにおける受託開発売上や保守運用売上が堅調に推移したことによります。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は、596,258千円(前年同期は536,031千円)となりました。
これは主に、テクノロジーソリューションサービスが堅調に推移したことに伴い受託開発に係る労務費が増加したこと、広告レベニューシェアに伴う収益配分原価が増加したことによるものであります。
この結果、当事業年度の売上総利益は、2,713,163千円(前年同期は2,614,258千円)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、2,644,994千円(前年同期は2,440,856千円)となりました。
これは主に、社員数の増加に伴う給料及び手当、及び各サービスの伸長に伴うデータセンター利用料の増加によるものであります。
この結果、当事業年度の営業利益は、68,169千円(前年同期は173,402千円)となりました。
(営業外損益、経常利益)
当事業年度の営業外収益は、25,646千円(前年同期は12,669千円)となりました。
これは主に、為替差益19,569千円の計上があったことによるものであります。
当事業年度の営業外費用は、2,592千円(前年同期は4,028千円)となりました。
これは主に、支払利息791千円の計上があったことによるものであります。
この結果、当事業年度の経常利益は、91,222千円(前年同期は182,042千円)となりました。
(特別損益、当期純利益)
当事業年度の特別利益は、1,290千円(前年同期は564千円)となりました。
これは、投資有価証券売却益1,001千円の計上があったことによるものであります。
当事業年度の特別損失は、0千円(前年同期は16,371千円)となりました。
この結果、当事業年度の当期純利益は、62,372千円(前年同期は99,638千円)となりました。
(投下資本利益率、株主資本利益率)
税引後営業利益(NOPAT:営業利益×(1-実効税率))は、47,295千円となり、投下資本(自己資本+有利子負債:期中平均)2,496,641千円に対する利益率(ROIC)は、1.8%となりました。また、株主資本利益率(ROE)は、2.5%となりました。株主資本コストと負債コストの加重平均(WACC)は、3.7%と認識しており、ROE、ROICの維持・向上によって株主資本に対する利益率(ROE)の維持・向上に努めてまいります。
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2023年7月期 |
2024年7月期 |
|
税引後営業利益(NOPAT)(千円) |
120,306 |
47,295 |
|
投下資本利益率(ROIC)(%) |
4.8 |
1.8 |
|
加重平均資本コスト(WACC)(%) |
4.0 |
3.7 |
(5) キャッシュ・フローの状況の分析
当事業年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前事業年度に比べ、53,293千円増加し、
1,443,903千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は147,015千円(前年は2,584千円の収入)となりました。
これは主に、増加要因として、税引前当期純利益92,513千円の計上があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は106,157千円(前年は158,280千円の支出)となりました。
これは主に、減少要因として、定期預金の預入による支出59,496千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、獲得した資金は1,548千円(前年は97,141千円の支出)となりました。
これは主に、増加要因として、新株予約権の行使による株式の発行による収入1,548千円があったことによるものであります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
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2023年7月期 |
2024年7月期 |
|
自己資本比率(%) |
86.4 |
88.0 |
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時価ベースの自己資本比率(%) |
91.7 |
78.1 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%) |
- |
- |
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インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
4.3 |
185.6 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
2.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
3.有利子負債がないため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率は記載しておりません。
(企業価値・キャッシュ創出力)
キャッシュ創出力を示す減価償却前の営業利益(EBITDA:償却前営業利益=営業利益+減価償却費)は、182,667千円となっております。今後も、運転資金の確保のための有利子負債の水準を一定程度に維持しつつ、人材投資やインフラ投資を行う方針を継続するとともに、主要3サービスにおける収益の柱を成長させることで、キャッシュ創出力を高め、企業価値を向上させてまいります。
2024年7月末の企業価値(EV:時価総額+ネット有利子負債)は、2,272,059千円、企業価値とキャッシュ創出力の倍率を示すEV/EBITDA倍率は、12.4倍となっております。
(6) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(7) 戦略の現状と見通し
当社は『「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする』をミッションに掲げ、「技術で支えられているサービスを提供する会社」として技術を磨き、インターネット領域において様々なサービス提供を行っております。
当社は今後も拡大されることが予想されるIT市場において、競争優位性を確保するために、顧客企業に対して高付加価値を提供するサービスの創造に鋭意努めてまいります。また、より強固なポジションを獲得するために、開発体制及び営業体制の強化を重要な戦略と認識し、事業の拡大に取り組んでまいります。
(8) 経営者の問題意識と今後の方針について
当社が今後業容を拡大し、より高品質なサービスを継続提供していくためには、経営者は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を認識したうえで、当社の経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。
(9) その他会社の現況に関する重要な事項
当社は、企業の社会性を認識し、社会貢献活動を重要な責務として捉え、以下のCSR活動を実施しております。
「預金を通じて、困っている人や団体を支援する」という活動のもと、SDGsに貢献できる預金として「応援定期預金」を作成することで、定期預金の預入残高に一定割合を乗じた金額を、取引先金融機関が、応援先(こどもの医療支援、こどもの自立支援、障がい者スポーツ支援、環境保護の4つのテーマから選定)に寄付しております。寄付を通じて、重い病気や障がい等で長期入院するこどもたちを支援するなど、「支え合う気持ち」を繋いでまいります。
発行額の0.15%を、新型コロナウイルス感染症による影響を受けたこどもたちへの支援を行う団体への緊急支援及び経済的に困難な状況下のこどもたちを支える団体の基盤づくり(組織のデジタライゼーションや事業のオンライン化を含む)への寄付にそれぞれ充当する新発債券の購入により、間接的に中長期的な支援をしました。
脱炭素社会の実現のため、取引金融機関が販売するESG志向の投資信託を購入し、信託報酬の一部を植樹プロジェクトに間接的に寄付することで、苗木を植えることができました。苗木は森林組合により保育管理され、いずれ大きな森へと成長すると思われ、サステナブルな社会の実現を支援してまいります。
(注)CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略。持続可能な社会形成を目的として、企業が経済活動に加えて、社会や環境などの要素に向けても責任ある活動をすべきであるという概念。
該当事項はありません。
当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は、
主な内容は、サービス開発のための調査及び導入検討であります。