第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、「さくらさく」という言葉から連想される、子どもが成長して花開いていく喜びや嬉しさを、子ども自身はもちろん、保護者と、保育者と教育者と、地域の人々など、あらゆるステークホルダーが笑顔の中で分かち合っていけるように、これからの時代を生きる、日本の伸びしろである共働き家族・子育て家族が安心して過ごせる、嬉しいイノベーションを届けていくことを経営理念及び方針として掲げております。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略等

当連結会計年度における子ども・子育て支援事業周辺においては、厚生労働省が公表した人口動態統計によると、2023年の出生数は8年連続で減少しており、2022年を4万3,482人下回る72万7,277人となり、1899年に統計を取り始めて以降、最も少なくなりました。また、女性の活躍推進などにより、共働き世帯数や女性の就職率が高い水準で推移している中で、女性の正規雇用率が出産を機に低下する「Ⅼ字カーブ」の是正も求められており、産後ケアなど共働き家族・子育て家族向けのサービスの拡充は引き続き重要なテーマの一つとなっています。

このような外部環境を鑑み、当社グループは、共働き家族・子育て家族のための総合ソリューションカンパニーとして、新スローガン「日本の伸びしろを、花ひらかせる」を掲げ、企業ロゴを一新しました。

中核事業の保育サービス事業では引き続き保育方針「愛情をたっぷりと注ぎ あわてず個性を伸ばす」を軸に、幼児教育プログラム「CLiP」(Children Learn in Play)により、子どもたちの明るい未来のための成長をサポートするとともに、「さくらさくパーク」の本格始動などICT化を推進した子育て支援サービスの充実を図ることで保育サービスの付加価値向上を推進してまいります。さらに、研修事業においてオンライン研修のサブスクリプションサービスの展開により、保育業界全体の質の向上にも貢献してまいります。

そして、当社グループの強みである不動産開発力による子育て支援住宅等の企画・開発のさらなる推進や進学塾運営の販路拡大、子育て支援カフェの運営などで共働き家族・子育て家族とその周辺の皆様へのサポートを強化・推進してまいります。

以上の基本的な方針を踏まえ、当社グループでは中長期的に以下の経営戦略に取り組んでまいります。

 

① 優秀な人材の確保・育成

保育所の開設計画の維持と高品質な保育サービスの維持を同時に実現し、サービス水準の継続的な向上を図るためには、優秀な人材を確保し、また、継続的に育成していくことが不可欠であります。

そのため、社内の研修制度の充実、研修の質の向上、従業員の健康維持及び増進のための労働環境の構築、適切な人事制度、適材適所の人材配置等に継続的に取り組んでいくことにより、従業員が働きやすい環境、モチベーションが維持できる環境や組織文化の醸成に努めてまいります。

② 組織力の強化

保育サービスの継続的な質の向上には保育所現場における運営の強化だけでなく、それを支える本部における運営サポート業務やその他の本部機能の質の向上が不可欠であり、また、コンプライアンス遵守の組織風土の醸成や保育理念・経営理念の共有、情報共有や情報管理の徹底を推進していくことが必要となります。

これらを実現していくために、コンプライアンス委員会、ハラスメント啓発委員会の継続的かつ積極的な運営、ブランドブックの作成・更新・周知、情報共有・情報管理の精緻化や組織運営の効率化のためのシステム投資等を推進してまいります。

③ 新規事業への進出

企業として持続的な成長を図るためには、既存の事業の収益を伸長させるのはもちろんのこと、子ども・子育て関連の新領域の事業や既存事業で獲得した経営資源を活用した関連領域や近接領域など、新たな事業創出は不可欠であると考えております。

保育対象年齢の子どもに限らず、就学後の児童、子育て中の保護者の支援を目的に、2021年4月には保育所のICT化の推進と保育所がもつさまざまな情報資産を活用した事業を創設する新会社を設立し、同年6月には主に中学受験を支援する進学塾の子会社化も行いました。2021年9月にはベーカリーカフェ運営の株式会社日と々ととの合弁にて、子育て支援カフェの運営を行う新会社を設立し、2023年1月に第1号店をオープンし、翌2024年4月に第2号店をオープンしました。

また、子育て家庭の包括的な支援を図るべく保育所運営のノウハウを利活用し、子育て支援住宅として企画・開発した新築集合住宅が2023年3月に東京都が推進する「東京こどもすくすく住宅認定制度」に認定されました。

今後も外部環境分析や社内の経営資源の分析等を基礎とした新領域の事業化・収益化の可能性を検討する仕組みを整備し、新規事業を継続的に創出できる組織体制の構築に取り組んでまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、高い成長性を維持し、継続的に企業価値の最大化を図っていくことを経営上の目標としており、企業価値の向上を図るための経営指標としては営業利益率を特に重視しております。

当社グループは、現時点では安定的な収益基盤を築くことを最優先課題と認識しておりますが、子ども・子育て支援事業は投資が先行する傾向が強く、数年かけて収益性が向上していく特性があることから、営業利益率の向上が当該課題の進捗を図る適切な指標となるためです。

 

(4) 経営環境

子ども・子育て支援事業を取り巻く状況としましては、2023年の出生数が過去最少の72万7,277人となり、さらに、ひとりの女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は1.20となり、2022年の確定値と比較すると0.06ポイント低下し、8年連続で前の年を下回りました。一方で2023年4月設置された子ども政策の司令塔である「子ども家庭庁」は、「こども未来戦略方針」や「こども大綱」などを順次閣議決定し、妊娠期からの切れ目のない子どもに関する政策について、より具体的な対策の推進を示しています。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 継続的な人材の確保

当社グループの子ども・子育て支援事業は、事業拡大にあたって保育士・栄養士・看護師資格を有する優秀な人材の確保が不可欠であるため、優秀な人材の確保に努めてまいります。当社グループでは、年間を通じて全国各地で新卒の採用を含めた積極的な採用活動を行うとともに、従業員社宅制度や研修制度の充実、雇用条件の向上など、働きやすい環境づくりに注力してまいります。

② ドミナント戦略の強化

当社グループは、全国的な待機児童が減少する一方で、依然として底堅いニーズを保つ都心部をターゲットとして、過去の運営実績や経験により培ったノウハウにより、収益性の高い認可保育所に特化した施設開設に注力してまいりました。当面は首都圏都心部における児童の確保に優位性があると見込まれるため、当該エリアにおける認可保育所の開設に注力していく方針であります。

③ 新規事業への進出

当社グループの主要事業及び収益源は子ども・子育て支援事業であるため、国や地方自治体の政策の変更により当社グループの業績は大きく影響を受ける可能性があります。当該状況を踏まえ、当社グループの経営の安定化を図るためにも、当社グループが保有するノウハウを活用し、政策の影響を受けない新規事業領域への進出を継続的に検討してまいります。

④ コンプライアンスの遵守

当社グループの運営する子ども・子育て支援事業は許認可事業が中心であるため、児童福祉法や施設利用者の個人情報保護に関する法令等の関連法令を遵守することは、事業を継続するために特に重要であると認識しております。当社グループでは、適宜改正される関連法令を適時に把握し、社内に周知できるように社内規程等をはじめとしたルール及び体制を整備し、社内研修等によりコンプライアンス遵守の組織文化の醸成を図ってまいります。また、当社では、個人情報保護・情報セキュリティ確保についての社内体制の整備等を進め、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)からプライバシーマークの認定を受けております。

⑤ 設備投資資金の調達

当社グループでは、当連結会計年度において1園を開園いたしました。子ども子育て支援事業に関する継続的な開設を計画していることから、開設に係る設備資金を安定的に確保することが重要な課題であると認識しております。一方で、有利子負債比率の上昇は経営の健全性を阻害する可能性があるため、財務の健全性を図るべく、金融機関からの借入、社債発行、株式発行等による複数の資金調達手段を組み合わせ、最適な財務政策を検討してまいります。

⑥ 不動産の確保

当社グループが認可保育所を開設するにあたっては、不動産所有者から保育所建設予定の土地や建物を賃借し、自治体より許認可を得ることとなります。ならびにその他周辺事業(子ども子育て支援)の拡張を含め、自治体、利用者、当社グループのそれぞれのニーズを満たす最適な物件の情報を適時に取得するためには、不動産関連事業者等との関係構築が不可欠となります。当社グループ経営陣は不動産業界での豊富な経験とネットワークを有しておりますが、引き続きこれらのネットワークの拡充に努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、人口減少や働き手減少が進む現代において、当社グループが掲げる「共働き家族や子育て家族こそが、“日本の伸びしろ”」というビジョンのもと、事業活動を通じて、サステナビリティを巡る課題に対応するための各種取組みを実施しております。常に子どもたちの目線で考え、安心・安全で過ごしやすく、子どもの成長に配慮した「おうちのような」保育所の運営を基幹事業としつつ、ハード面においては不動産開発、ソフト面においてはICTによる情報活用等、保育所運営によって培った様々な資産の活用により子育て環境を「進化」させることで、加速する女性の社会進出を後押しします。さらに、基幹事業とのシナジー効果を活かした子育て支援を「創出」し、継続的に、共働き家族・子育て家族をサポートし、安心して活躍できる社会をつくっていきます。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、当社グループの営む事業の公共性の高さに鑑み、株主、取引先、従業員等をはじめとした当社を取り巻く様々なステークホルダーと良好な関係を築き、地域社会に貢献する企業となるべく、経営の健全性並びに透明性の確保に努めることを前提として、企業価値を最大化することを基本的な方針としております。また、こうした考えに基づいてコンプライアンス経営を徹底し、最適な経営管理体制を構築することを通じてコーポレート・ガバナンスの継続的な強化に努めてまいります。なお、詳細については「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。

 

(2)戦略

 当社グループは、事業に取組むうえで、私たちが常に中心に置くのは「人」であると考えており、多用な人材を確保し育成していくことが中長期的な企業価値向上に繋がるものと考えております。

 

女性活躍推進・人材育成方針

①当社グループでは女性の社会進出並びに活躍が持続的な社会の成長への重要な課題と捉え、安心できる質の

高い保育サービスを提供するべく、東京大学大学院との保育・教育の実践に関する協力研究や各分野の専門家の協力を得て、乳幼児教育への取組みプログラムを構築し、従業員への研修制度の充実と共に継続的な学習の機会を提供しています。

②女性管理職を積極的に登用し、より多くの活躍の場を継続的に創出してまいります。

③男性社員の育児休業取得を促進し、共働き家族・子育て家族の生活の質の向上へ貢献してまいります。

 

社内環境整備方針

①有給休暇の取得促進や夏季休暇等を設けるなど、従業員が心身ともに健康な生活を営めるよう環境整備へ積極的

に取組んでおります。

②保育所特化型の相談室「はたらくみらい相談室」を設置し、従業員からの保育所ならではの悩みへメンタルケア

の専門家が対応しサポートしています。

③各種福利厚生制度の拡充など、従来の福利厚生から更なる職場環境の充実へ取り組んでいます。

 

 当社では今後も従業員が心身ともに健康な生活を送り社会で活躍できるように、更なる社内環境の充実へ努めてまいります。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、リスクに対する課題及び対応方針について、原則週に1回の経営層会議並びにマネジメント層会議で、経営層への定期的な報告とモニタリングをするとともに、事業のリスク等について、その対策に向けた方針を検討しております。

 

(4)指標および目標

 当社グループは、上記「(2)戦略」に記載した、女性管理職の積極採用並びに、男性社員の育児休業取得促進の方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次の通りであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2029年末まで50以上を維持

78

男性労働者の育児休業取得率(正規雇用労働者)

2025年末までに50以上

100

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)人材確保及び育成に関するリスク

当社グループでは、保育所の新規開設にあたり保育士・栄養士・看護師資格を有する優秀な人材の確保が不可欠となります。そのため、当社グループでは年間を通じて全国各地で新卒の採用を含めた積極的な採用活動を行い、研修制度の充実を図るなど、人材の確保及び育成に努めておりますが、今後、人材の確保と育成が保育施設の新設の速度に追い付かない場合、また確保が必要となる人材の人件費が増加し、当該増加に対して補助金等の十分な手当てがなされない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)国及び地方自治体の政策に関するリスク

国及び自治体は待機児童解消に向け、様々な支援策を実施しておりますが、今後、国や自治体の方針につき改訂等が実施され、補助金の削減や株式会社による保育所の開設が認められなくなるなど、重要な政策の変更が行われた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)少子化の進行や待機児童の減少に関するリスク

当社グループの主要事業である子ども・子育て支援事業の業績は児童数の動向に左右されるため、少子化の急速な進行や待機児童の減少など、市場が著しく縮小した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)法的規制等に関するリスク

当社グループの子ども・子育て支援事業は、事業を展開するにあたり、児童福祉法、食品衛生法、個人情報保護法等の国内の関係諸法令を遵守する必要があります。当社グループはコンプライアンス体制を整備しておりますが、適用される法令等に違反した場合、当社グループの業績、事業運営及び社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、将来当社グループに適用される法令の制定・改廃、司法・行政解釈等の変更がある場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

① 児童福祉法

児童の健やかな育成のための児童福祉施設の種類、国・地方公共団体の施策、費用負担等が定められております。

(監督官庁)

厚生労働省・都道府県及び市区町村

② 食品衛生法

飲食に起因する衛生上の危害の発生防止及び公衆衛生の向上、増進を図る見地から食品の規格・添加物・衛生管理・営業許可等が定められております。

(監督官庁)

厚生労働省及び都道府県・政令指定都市・特別区の保健所

③ 個人情報保護法

児童及び保護者の氏名、住所、職業等の個人情報の取り扱い方法が定められております。

(監督官庁)

厚生労働省及び内閣府・都道府県及び市区町村

④ 子ども・子育て支援法

認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(施設型給付)の創設、子ども・子育て支援の充実のための措置等が定められております。

(監督官庁)

厚生労働省、都道府県及び市区町村

 

(5)保育所における事故発生に関するリスク

当社グループでは、保育所の運営において厳正な食材管理及び衛生管理を行うとともに、児童の安全にも十分に配慮することにより、食の安全性の問題の発生防止、その他の事故の発生の事前防止に努めておりますが、何らかの原因によりこれらの問題や事故が発生した場合には、所轄する自治体等からの事業停止命令や訴訟の提起及び風評被害等による多数の利用者の減少等を通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6)個人情報の管理に関するリスク

当社グループでは、児童及びその保護者の氏名や住所など多くの個人情報を保持しているため、厳重に管理のうえ、慎重に取り扱う体制を整えておりますが、万が一漏洩するようなことがあった場合には、利用者を含め広く社会的な信用を失うこととなります。その結果、多くの児童の退園、施設の新規開設等に影響が出ることにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)自然災害・感染症等に関するリスク

当社グループは首都圏を中心に保育所等の運営を行っておりますが、地震や火災等の発生により施設の利用者や従業員、施設の建物等が被害を受けた場合には施設の運営が困難となり、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、安全な保育及び育成を提供するため、定期的な消毒の実施等により感染症についても厳重に対応しておりますが、新型コロナウイルスや新型インフルエンザ、ノロウィルスなどの感染症が流行した場合、従事する保育士やスタッフが多数欠勤することで施設の運営が困難となる可能性があります。その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルス等の感染拡大の長期化により、国・地域の経済活動に著しく制約が生じた場合には、保育所等の新規開設に係る工事の遅れによって自治体からの許認可が遅れる等の事態の発生により開園計画に影響する可能性があります。その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)認可取消し等に関するリスク

当社グループの子ども・子育て支援事業において運営している保育施設につきましては、児童福祉法に基づき許認可等を受けております。保育所の種類は認可保育所、小規模認可保育所、東京都認証保育所等いくつかの種類に分類されますが、いずれの形態の保育所も保育所ごとに許認可権限を持つ行政機関へ保育所設置の申請を行い、審査を経たうえで許認可が付与されます。

本書提出日現在において、当社グループの子ども・子育て支援事業において運営している保育所に許認可等取消事由は発生しておりませんが、何らかの要因により行政機関からの許認可が取り消された場合、または補助金の削減や株式会社による保育所開設が認められなくなる等となった場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

法令等

目的及び内容

監督官庁

主な取消事由

児童福祉法

児童の健やかな育成のための児童福祉施設の種類、国・地方公共団体の施策、費用負担等が定められている。

厚生労働省、

都道府県及び市区町村

・関係法令の規定水準に達しない場合や給付費の請求に関し不正があったとき

・改善命令や事業の停止命令に従わず、違反したとき

 

(9)共同創業者への依存に関するリスク

当社の代表取締役社長西尾義隆及び取締役副社長中山隆志は当社グループの共同創業者であります。両名はそれぞれ保育業界に精通しているとともに、それぞれが不動産業界の経験を通じた施設開発のノウハウを有しているほか、経営方針、経営戦略の立案において重要な役割を果たしております。また、西尾義隆及び同氏の資産管理会社である株式会社だいぎ及び株式会社プラスユーは、当連結会計年度末現在当社発行済株式総数の24.9%を保有しており、中山隆志及び同氏の資産管理会社である株式会社TKSは、当連結会計年度末現在当社発行済株式総数の24.9%を保有しております。

当社グループでは、役員及び幹部社員の参加する会議体等において情報の共有・権限の委譲を進めており、両名に過度に依存することがないような経営体制を構築しておりますが、現状では、何らかの理由により両名のうちいずれか、あるいは双方が当社グループの業務執行を継続することが困難となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。西尾義隆、株式会社だいぎ及び株式会社プラスユー、中山隆志及び株式会社TKSは、議決権行使にあたって株主共同の利益を追求すると共に、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。また、今後も中長期的に一定の当社株式を保有する方針と認識しておりますが、何らかの事情により、市場で当該株式の売却が行われた場合や売却の可能性が生じた場合には、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)認可保育所の開設に関するリスク

当社グループが認可保育所を開設するにあたっては、不動産所有者から保育所建設予定の土地や建物を賃借し、自治体より許認可を得る必要があります。そのため、当社グループでは不動産関連事業者等との関係構築等を行い、当社グループの基準を満たす最適な保育所開設用不動産に関する情報の収集に努めております。

しかしながら、不動産関連事業者等との関係に何らかの障害等が生じるなど、自治体、利用者、当社グループのそれぞれのニーズを満たす最適な物件の情報を適時に取得できず、保育所開設用不動産が確保できない場合、新規開設数が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、認可保育所の開設にあたっては、開設予定地の近隣住民等に対する説明会の開催など、地域との関係性を良好に保つための対策を講じておりますが、近隣住民等からの反対運動が起こった場合には、開園遅延ないし開園を断念等により新規開設数が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)業績の季節的変動について

当社グループにおける保育所等の新規開設は、4月が中心となっており、新規開設施設については、第1四半期~第3四半期(8月~4月)に開設準備費用等が先行的に発生する一方で、第3四半期(2月~4月)に補助金収入が多額に計上される傾向にあります。

 

(12)新規に保育所を開設した場合の経営成績への影響に関するリスク

① 新規開設関連収支の処理

新たに保育所等の施設を開設した場合、新規開設のための支出の一部(内装工事費等)に対して自治体から補助金が交付される場合が多く、当社グループは当該補助金を営業外収益の「補助金収入」に計上しております。また、新規開設のための支出のうち、費用処理したものについては営業外費用の「開業準備費」に計上しております。一般的に、「補助金収入」が「開業準備費」を上回ることが多いため、保育所の新規開設数が増加すると、営業外収支が改善される傾向があります。

一方で、新規の保育所は、開設当初は3歳~5歳児等が定員に満たず、児童年齢の持ち上がりとともに満定員に近付いていく傾向にあるため、開設初年度から数年は収益性が低く、保育所の新規開設数が増加すると、営業損益の悪化原因となります。

当社グループは積極的な新規開設を行っていく方針であるため、経営成績における新規開設の影響は当面大きくなることが想定されますが、運営施設数に対する新規施設数の割合が減少するに伴い、影響は徐々に緩和されるものと考えております。

 

② 固定資産関係補助金の会計処理

固定資産の取得の際に自治体から補助金を受領した場合には、税務上、固定資産の取得価額から補助金の額を控除する処理(圧縮記帳)が認められております。財務会計上は、圧縮記帳の方法は「直接減額方式」と「剰余金処分方式」の2通りが認められております。

「直接減額方式」は補助金の額を控除した残額を固定資産に計上し、毎期の減価償却費も控除後の額をもとに計上する方法で、「剰余金処分方式」は補助金を収益計上し、固定資産は補助金控除前の金額で計上する方法です。

いずれの方法を用いても、税務上の効果は直接減額方式と全く同様となりますが、新たに保育所等を開設した場合、「剰余金処分方式」を採用した場合と「直接減額方式」を採用した場合では、以下のような差異が生じます。

「剰余金処分方式」:新たに保育所等を開設した事業年度に「補助金収入」(当社グループにおいては営業外収益)が計上されるものの、当該補助金に関連する固定資産の減価償却費(売上原価)は償却終了まで多額となる。

「直接減額方式」:新たに保育所等を開設した事業年度に「補助金収入」による損益への影響はなく、固定資産が減額されるため、その後の固定資産の減価償却費(売上原価)は償却終了まで少額となる。

 

当社グループはこのうち「剰余金処分方式」を採用しているため、新たに保育所等を開設した場合には、開設後数年間は減価償却費の計上を通じて、営業損益の悪化要因となる傾向があります。

 

(13)販売用不動産の評価について

経済情勢の悪化や不動産市況悪化等により販売用不動産としての価値が大きく減少した場合には、棚卸資産の簿価切下げに伴う損失が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)新規事業について

当社グループでは、今後も持続的な成長を実現するために、新規事業への取り組みを進めていく方針ですが、新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の時間を要することが予想されます。このため、当社グループ全体の利益率を低下させる可能性があります。また、将来の経営環境の変化等により、新規事業が当社グループの想定どおりに進行せず、新規事業への投資に対し十分な回収を行うことができなかった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(15)固定資産の減損に関するリスク

当社グループの子ども・子育て支援事業において、各保育所の業績が今後著しく悪化し、その回復の見込みがなく投資回収が困難となり固定資産の減損処理が必要となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)資金調達に関するリスク

当社グループの子ども・子育て支援事業におきましては、保育所の新規開設に関する設備資金等を金融機関からの借入等により調達しており、総資産に対する有利子負債合計の割合は、前連結会計年度39.8%、当連結会計年度34.7%と高い比率で推移しております。今後、新規開設に伴い借入が増加する可能性があり、金利の急激な変動や金融情勢の変化により計画どおり資金調達ができない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、一部の金融機関との契約には財務制限条項が付されており、財務制限条項に抵触し、一括返済が必要となった場合には、当社グループの財政状態、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク

当社グループは、役職員の業績向上に対する意欲や士気を高めるとともに優秀な人材を確保することを目的とし

て、ストック・オプション(新株予約権)を発行しております。当連結会計年度末現在、新株予約権による潜在株式数は229,800株であり、発行済株式総数4,520,800株の5.1%に相当します。今後これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化することになり、将来における株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)繰越欠損金の解消による影響等について

当連結会計年度末現在において、税務上の繰越欠損金が存在しております。当社グループの業績が順調に推移し、繰越欠損金が解消した場合や税法改正により繰越欠損金による課税所得の控除が認められなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国の経済は、社会活動に正常化の兆しが見え始め、インバウンド需要をはじめとする消費の回復など、景気の回復に動きがみえはじめました。その一方で、長期化するウクライナ情勢、エネルギー価格の高騰やさらなる円安傾向による消費者物価の継続的な上昇、さらに中東情勢の動向や中国の不動産不況による景気減速などもあり、国内景気は依然、先行き不透明な状況にあります。また、厚生労働省の人口動態統計速報値(2024年6月分)によると、2024年1~6月の出生数は前年同期比2万978人少ない35万74人と上半期の出生数としては過去最少、3年連続で40万人を下回る結果となっています。

 当社グループを取り巻く事業環境においては、2023年4月1日に「こども家庭庁」が発足し、若い世代の子育て支援を目的とした「こども未来戦略方針」が2023年6月13日に閣議決定され、児童手当の拡充や妊娠期からの切れ目のない支援の拡充等が盛り込まれました。また、2023年12月22日には、政府全体のこども施策を推進していく「こども大綱」が閣議決定され、さらに、2024年5月31日には、こども大綱に基づいて具体的な取り組みを一元的に示した初のアクションプラン「こどもまんなか実行計画2024」が、こども政策推進会議において決定されました。この実行計画には少子化対策のための児童手当の拡充などを盛り込んだ総額3兆6,000億円で実施する「加速化プラン」のほか、幅広い施策が盛り込まれています。

 このような環境下、共働き家族・子育て家族を応援する事業を展開する当社グループは、男女共同参画社会の実現に向けて取り組んでいく企業意思を改めて明確化するために、共働き家族・子育て家族のための総合ソリューションカンパニーとして、新スローガン「日本の伸びしろを、花ひらかせる」を掲げ、企業ロゴを一新しました。株式会社さくらさくみらいが運営する保育サービスを中核に、子育て支援カフェ「みらいのテーブル」の運営や保育サービスのICT化を推進した子育て支援サービスの充実、子育て支援住宅の企画・開発、進学塾の運営、保育業界に向けたeラーニングによる豊富な研修コンテンツの提供など、共働き家族・子育て家庭とその周辺の皆さまへのサポートを強化し、安心と安全を提供すべく事業活動を推進しております。

 なお、当連結会計年度においては、株式会社さくらさくみらいで1施設の東京都認可保育所を新規開設いたしました。また、株式会社VAMOSで1校舎の進学塾を新規開校し、株式会社みんなのみらいで1店舗の子育て支援カフェ「みらいのテーブル」を新規開店しました。

 

(2024年4月開園)

さくらさくみらい パークタワー勝どき(中央区)

(2024年4月開校)

VAMOS月島校(中央区)

(2024年4月開店)

みらいのテーブル月島(中央区)

 

この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高17,212百万円(前年同期比24.3%増)、営業利益775百万円(同146.7%増)、経常利益871百万円(同60.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益607百万円(同86.5%増)となりました。

なお、当社グループは子ども・子育て支援事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

財政状態については以下の通りであります。

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は、4,019百万円となり、前連結会計年度末と比べて3百万円減少しました(前連結会計年度末比0.1%減)。これは主に、仕掛販売用不動産が450百万円減少したものの、現金及び預金が739百万円増加したことによるものです。固定資産は、9,619百万円となり、前連結会計年度末と比べて846百万円減少しました(前連結会計年度末比8.0%減)。これは主に、保有目的の変更により一部の有形固定資産を仕掛販売用不動産に振り替えたため、土地が161百万円及び建設仮勘定が215百万円減少したことによるものです。この結果、資産合計は13,638百万円となり、前連結会計年度末と比べて849百万円減少しました(前連結会計年度末比5.9%減)。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は、3,202百万円となり、前連結会計年度末と比べて122百万円減少しました(前連結会計年度末比3.7%減)。これは主に、短期借入金が387百万円減少したものの、その他流動負債が188百万円増加したことによるものです。固定負債は、5,147百万円となり、前連結会計年度末と比べて1,072百万円減少しました(前連結会計年度末比17.2%減)。これは主に、長期借入金が875百万円減少したことによるものです。この結果、負債合計は8,349百万円となり、前連結会計年度末と比べて1,195百万円減少しました(前連結会計年度末比12.5%減)。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は5,288百万円となり、前連結会計年度末と比べて346百万円増加しました(前連結会計年度末比7.0%増)。これは主に、自己株式の取得199百万円をしたことによる減少の一方で、親会社株主に帰属する当期純利益607百万円の計上等に伴い、利益剰余金が545百万円増加したことによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて748百万円増加し、1,492百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは3,113百万円の収入となりました(前連結会計年度は87百万円の収入)。これは主に税金等調整前当期純利益の計上474百万円、減価償却費の計上585百万円による資金増加及び仕掛販売用不動産の減少1,287百万円による資金増加があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは1,059百万円の支出となりました(前連結会計年度は1,512百万円の支出)。これは主に有形固定資産の取得による支出967百万円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは1,305百万円の支出となりました(前連結会計年度は817百万円の収入)。これは主に長期借入金の返済による支出2,039百万円があった一方で、長期借入れによる収入1,131百万円があったことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当社グループは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。

 

b. 受注実績

当社グループは受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

c. 売上実績

当連結会計年度の売上実績を示すと、次のとおりであります。

なお、当社グループは子ども・子育て支援事業の単一セグメントであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年8月1日

  至 2024年7月31日)

前年同期比(%)

子ども・子育て支援事業(百万円)

17,212

24.3

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の売上実績及び当該売上実績の総売上実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2022年8月1日

至 2023年7月31日)

当連結会計年度

(自 2023年8月1日

至 2024年7月31日)

売上高(百万円)

割合(%)

売上高(百万円)

割合(%)

いちごオーナーズ株式会社

2,201

12.8

練馬区 ※

1,702

12.3

1,784

10.4

※ 子ども・子育て支援事業における同区からの委託費収入、補助金収入等を売上計上しているものです。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 財政状態

財政状態の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

b. 経営成績

(売上高)

当連結会計年度における売上高は17,212百万円となり、前連結会計年度に比べ3,368百万円増加しました(前年同期比24.3%増)。これは主に、保育補助金の増額及び地域交流活動を積極的に取り組んだことによる保育サービスの増収等があったことに加え、販売用不動産を売却したことによるものです。

 

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度における売上原価は14,900百万円となり、前連結会計年度に比べ2,687百万円増加しました(前年同期比22.0%増)。これは主に、保育サービス水準維持を目的とした人員増員を計画通り行ったことと、物価高騰の影響等による施設運営に係る経費の増加及び、販売用不動産の売却に伴う売上原価を計上したことによるものです。売上原価の主な内訳は、給料及び手当5,415百万円、地代家賃2,391百万円であります。この結果、売上総利益は2,312百万円となり、売上総利益率は13.4%(前年同期比1.6ポイント増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は1,536百万円となり、前連結会計年度に比べ219百万円増加しました(前年同期比16.6%増)。これは主に、連結子会社の新規施設開設や本社移転による地代家賃等の増加によるものであります。販売費及び一般管理費の主な内訳は役員報酬138百万円、給料及び手当379百万円及び地代家賃185百万円であります。この結果、営業利益は775百万円となり、営業利益率は4.5%(前年同期比2.2ポイント増)となりました。

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

当連結会計年度における営業外収益は206百万円となり、前連結会計年度に比べ394百万円減少しました(前年同期比65.7%減)。これは、新規開園数が前期は3園あったものの、当期は1園に減少し補助金収入が減少したためであります。営業外収益の主な内訳は、新規開設1園のための施設整備等にかかる補助金収入184百万円であります。

営業外費用は110百万円となり、前連結会計年度に比べ261百万円減少しました(前年同期比70.3%減)。これは、新規開園数の減少に伴う開業準備費の減少によるものであります。営業外費用の主な内訳は、支払利息50百万円及び開業準備費46百万円であります。この結果、経常利益は871百万円となり、経常利益率は5.1%(前年同期比1.2ポイント増)となりました。

 

(特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度における特別利益は、発生がありません(前年同期は45百万円)。前期は受取保険金45百万円の計上がありました。

特別損失は396百万円となり、前連結会計年度に比べ200百万円増加しました(前年同期は196百万円)。これは主に、減損損失375百万円(前年同期は121百万円)を計上したためであります。この結果、税金等調整前当期純利益は474百万円となり、また法人税等合計を△131百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は607百万円となりました(前年同期比86.5%増)。

 

c. 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループは、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、人材の確保、国及び地方自治体の政策、法規制等の様々なリスクの顕在化により業績に影響を受ける可能性があるものと認識しております。

したがって、内外の経営環境及び事業環境に影響を及ぼす要因に留意しつつ、適時に情報を収集・分析する体制を整備し、リスクに対応可能な内部管理体制を構築するとともに必要な経営上の施策を実行することにより業績に影響を与えるリスク要因の分散及び低減を図ってまいります。

 

d. 経営者の問題意識と今後の方針について

新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、社会活動の正常化が進む中で、合計特殊出生率は年連続で低下し1.20となり、数年前の予測を遥かに上回るスピードで少子化が進行しています。子ども・子育て支援業界は保育サービス利用者の多様なニーズへ応えられる、より質の高い水準のサービスの提供が求められる時代へ本格的に転換するものと考えられます。

 少子化問題の解消ならびに子どもと家庭の福祉・保健その他の支援・整備など、我が国の経済の発展のためには、これらの課題解決を進めるなかで、女性の活躍、児童の健全な成長などを図ることは重要なテーマであると認識しております。

 当社グループが民間事業者の立場からこれらの課題の解決に取り組むためには、未だ保育サービスへの社会的要請が残る地域へ良質な認可保育所を開設していくことや、保育所で働く保育士の育成や待遇の改善を通じて、優秀な人材の確保を図ることが必要であり、さらに高度なコンプライアンス意識を社内文化として醸成していくことが不可欠であると認識しております。

 当社グループとして、社会的な課題の解消を図りつつ、当社グループで働く人材が社会の多様なニーズに応えている満足感や充実感を得ながら働くことができる環境を構築し、同時に企業として健全な発展と成長を図ることを基本的な方針として事業拡大に取り組んでまいります。

 

e. 経営上の客観的指標の達成状況について

当社は営業利益率を重要な経営指標として位置付けております。

当社グループは、「安全と安心を提供し、自然で和やかな笑いに満ちたあたたかい子育て環境を作り出す」という経営理念及び方針を掲げ、持続的な成長を目指していく方針であります。当連結会計年度においては、このような方針のもと、現在の主要事業である子ども・子育て支援事業において新規施設の開設や既存施設の稼働率、入園児童の定着率の向上等をはかり、前連結会計年度から営業利益率を向上させることを目標として事業の推進をしてまいりました。

当連結会計年度における営業利益率は4.5%(前年同期比2.2ポイント増)となりましたが、この指標について、前連結会計年度より改善されるように引き続き、取り組んでまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析、検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの分析につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性についての分析

今後の資金需要のうち主なものは、保育施設の運営に係る運転資金、新規に開設する保育所、子育て支援カフェ、子育て支援住宅、保育所のICT化支援等に係る設備投資資金であります。

当社グループにおける運転資金及び設備投資資金等につきましては、自己資金、金融機関からの借入金や社債発行、新株発行による調達資金により充当することとしております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。

詳細につきましては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。