第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

〔基本理念〕

ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する

 

〔長期方針〕

① 21世紀に勝ち残る企業基盤を確立する

・品質第一に徹し、魅力ある商品・技術の実現

② 良い社風を築き、地域に信頼される企業を目指す

③ 明るく働きがいのある職場を築く

 

〔サステナビリティ方針〕

ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する

(基本理念がSDGsのアジェンダと重なり、グローバル・グループ内に浸透していることからサステナビリティ方針と位置付けております。)

 

(2)目標とする経営指標

当社は、事業領域の拡大による売上高の伸張と、事業基盤の強化・付加価値の向上による売上高営業利益率、及び株主資本利益率(ROE)、モビリティの脱炭素化への貢献のためCO排出量の削減率を重要な経営指標としております。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

当社グループの主要顧客である自動車産業は、100年に一度の大変革が進行中であり、気候危機・食糧難・水不足などの社会課題の国際的な取り組み、AI・デジタル技術の変化など、当社を取り巻く環境は大きく変動しております。

当社としては、持続的成長と企業価値向上の為に2030年ビジョンと中期経営計画2025を策定し、取組みを進めてまいります。

 

1.FINE SINTER VISION 2030

 


 

2.経営目標

2025年度の経営目標として、売上高は新型コロナウイルス感染拡大前の400億円レベルでも、8%の営業利益、10%のROEを達成し、さらに将来の成長につなげることを目指します。具体的には、モノづくり革新などで競争力を強化し、成長投資を行うことで将来の成長に向けた事業構造の変革を進めるとともに、持続的成長に向けESG経営を推進します。


 

3.基本戦略

<競争力の強化>

①デジタル技術と匠の技の融合によるモノづくりの革新

AI・IoT技術による24時間無人稼働化、全工程自動搬送などによる品質向上、製品1個1個へのQRコード付与による製品単位での品質保証、匠の技の段替ノウハウの設備機構への落とし込み、現場オペレーター作業の標準化、段替短縮のDX化に取り組みます。「未来Factory」と名付けたコンセプトを春日井工場から順次グローバルに展開していく計画です。

 

②ロスの撲滅とムダの排除による生産性工場

モノづくりの革新と併行して、地道なロス低減とTPSの考え方に沿ったムダの排除による生産性向上で、現場力を高めてまいります。

 

③グローバル最適生産・供給体制

各拠点の特性を活かし、製品別に「最適生産拠点」を設定、「一括生産でグローバル供給する製品」と「地産地消で生産する製品」を切り分けることで、グループ最小投資・最適コスト化による原価の低減を進め、受注の拡大、売上・利益率の向上を狙います。併せて、グローバル最適調達を推進し、最安値原材料の集中購買や高額消耗品の仕様統一等で調達コスト低減をはかります。

なお、タイ子会社をアジアの中核工場と位置づけ、競争力の強化に取り組んでおり、その一環で、タイ子会社第2拠点を追加し拡張いたします。

 

 

<事業構造変革>

①CASE対応と価値の創造

・ハイブリッドインバーター部品の高付加価値化

当社は、ハイブリッド車・燃料電池車の電気コントロール部に使われる「リアクトルコア」単体の材料・形状を一新した次世代型を2021年11月より生産開始しており、2022年度中には年間312万台規模まで生産を拡大いたします。また、高付加価値の「リアクトルAssy」の開発においては、製品化と並行して実証機による実績作りを進めながら、将来を見据えた「アモルファス」などの新材料開発も進めております。

 

・『モーター』への取り組み

粉末冶金ならではの3D形状設計の自由度を最大限に活かし、小型省スペースで、海外展開し易い直流DCモーターを開発しております。2021年度では、当社従来品比20%の小型化に成功しました。医療機器用油圧ポンプモーターから手掛け、将来的に、電動自転車、発電機、小型EVなどへ拡大していきます。

 

・材料開発

高精度で低コストを実現する「高強度材」、電動化製品に欠かせない「機能材」、配合の自由度を活かした「トライポロジー、複合材」、環境に考慮し、紛争鉱物を使わない「ニッケルコバルトレス材」、製造工法を変えCO2削減に貢献する「省エネ材」、これら5つの切り口で「材料開発」を加速してまいります。

2021年度では最も開発に力を入れてきたコバルトレス材の量産を開始し、2022年度では高強度・高精度材料及びニアネット工法による新製品を生産開始いたします。

 

②鉄道・油圧事業の強化

・鉄道事業

シェアの高い新幹線向けに加えて在来線用や海外鉄道向けにビジネスを拡大するとともに、産業用の小型集電子などの新規製品の開発を進めます。合わせて、体質強化と工場の工程改革を進めてまいります。

 

・油圧事業

手術台や画像診断など医療機器分野の拡大や、ブランド力を活かした高級デンタルチェアのアジアでの拡販、切粉等の圧縮機など環境にやさしい製品や、小型で廉価なクランプユニットなどの開発などを進め、2025年以降の大幅な成長に向けた取り組みを進めます。

 

③将来に向けた新規事業分野の開拓

・『粉末に加工する技術』と『熱処理技術』を活かした『昆虫食』事業

食糧問題や水資源問題への貢献、高栄養食、サプリメントとして期待されている「食用コオロギ」を用いた粉末食品化事業です。現在、協業企業2社と企業間連携を強化し、事業拡大に取り組んでおります。当社は、コオロギ食品製造ではなく、コオロギ生体を粉末にし、販売する工程を担っています。焙煎による独特の風味と殺菌効果を高めたオリジナル粉末の商標登録が完了し、焙煎コオロギ粉を製作する工法も特許出願中です。また、独自工法により、海外のコオロギ粉に対して超微粉かつ丸みを帯びた製粉化を実現し、食材以外の業界への展開も期待できると考えています。今後は、製粉量増産を図ると共に、企業間連携を更に強め、ペットフードやサプリメント業界への展開を進めてまいります。

 

・当社の強みである『MIM工法』と当社オリジナルの『チタンMMC』材料を用いた商品開発事業

当社オリジナル工法と材料を活用できる強みに加え、新工法として特許申請中の「樹脂型」による製法により、従来の金属金型に比べ低コストで短納期かつ、少量多品種製品に対応する事ができます。製品化としては「アイスキューブ」、「高級ホビー製品」、「医療用チタン製品」などの試作を進めており、客先提案も進めております。

 

・当社特許技術の『焼結ベント』を活かした『抗ウィルスフィルター』事業

当社の強みである「焼結ベント工法」を用いた、「スパイラル穴効果」による殺菌能力はインフルエンザウイルスで実証され、3D気流シミュレーションによる気流制御も可能な形状の検討も行い、高級理美容向けドライヤーなど、付加価値の高い製品への提案も進めております。

 

<ESG経営>

当社の企業理念、「ものつくりを通じて、すみよい社会と人びとの幸せに貢献する」の実現はESG経営につながります。

 

①環境

・2050年のカーボンニュートラルに向けて、省エネの焼結炉や水素活用など革新技術の開発や日常改善の加速と、再生可能エネルギーの導入を進めます。なお、CO排出量を2013年比で2025年には40%削減、2030年までに50%削減を目指しており、2021年までの実績は38.8%です。

・より実効性のあるサステナビリティ経営を企図し、2021年12月にサステナビリティ・リンク・ローンでの資金調達を行いました。これは、サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(以下、SPT)の達成で金利優遇などのメリットを得られる金融商品であり、当社はCO排出量の削減率をSPTに設定しております。

・廃棄物の削減やコバルトを使わない材料開発による環境負荷物質の低減を行います。なお、廃棄物を2010年度比で2025年度までに45%削減、2030年度までに50%削減を目標としており、2021年度までの実績は 51.6%です。

②社会

 

(社会との共生・共創)

以下の取り組みにより社会とつながることは、刺激や新たな発想などのきっかけとなり、長期的な企業価値向上につながるものと考えております。

・人権や環境等の社会問題への影響を考慮した鉱物調達活動のグローバル推進

・環境保護活動、主体的なボランティア活動や地域社会との交流

 

(エンゲージメントの向上)

従業員のエンゲージメントが企業の社会的・経済的価値の源泉との考えに基づき、ウェルネス経営として、従業員自らが豊かな人生をデザインして自己実現を志向している状態を目指し、身体的健康、精神的健康の安定と活力みなぎる活性職場づくりの推進、女性や障がい者の活躍の支援などのダイバーシティ推進に取り組んでおります。

なお、女性管理職比率の実績は前年度の2.9%から2.8%とほぼ横ばいとなり、障がい者雇用率の実績は前年度3.59%から3.60%と高いレベルを維持しました。また、男性育児休暇取得率の実績は前年度の4.0%から26.3%に増加しました。

 

③ガバナンス

資本コストを上回るROE目標を設定し、収益力の向上を図り、得られた収益を、資本コストを基準とした判断に基づく将来への成長投資や、最適資本政策に基づき株主還元を行うことにより、企業価値の最大化を目指してまいります。あわせてリスク管理体制の強化としてまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 自動車業界への販売依存度

当社グル-プの製品は主としてエンジン部品、ショックアブソーバー部品等の自動車用部品のため、自動車産業の構造変化及び市場縮小等が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループの連結売上高に占めるトヨタ自動車及び同社現地子会社の割合は32.3%であります。

当社グループとしては、自動車産業の変革に対応するために、当社の強みである粉末冶金の特性や関連技術を活かし、電動化関連製品の開発を強化する一方、非自動車分野の鉄道車両用部品及び油圧機器製品の開発と拡販の強化を行っております。更に、新規分野の開拓も進めております。

 

(2) 海外進出に内在するリスク

当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれています。各地域における政治、経済状況の変化等による予期せぬ事象が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループとしては、現地の動向は海外拠点スタッフの情報網を積極的に活用する事で適時適切に入手し対応するように努めております。

 

(3) 業界内外の競争に伴うリスク

当社グループが身を置く業界の競争は非常に厳しく、競合他社は国内外の多岐に渡ります。顧客のニーズを満たした製品の開発・製造・販売に努めておりますが、競合他社との競争に打ち勝てない場合は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、デジタル設計から実証加工、電動化製品の開発から量産までをそれぞれを担う専任組織と、開発・生産技術・金型部門を統合した「テクニカルセンター」を設けており、開発力の強化と開発から量産化までの加速を進めております。

 

(4) 原材料の仕入に係る仕入価格の変動及び人権に関わるリスク

当社グループでは、粉末冶金製品の原材料として鉄粉等の金属粉を使用していますが、これらの原料価格が高騰し、製品価格に反映することが困難な場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、供給元の不慮の事故や資源国の政治・経済状況、労務管理面での人権侵害などにより、原材料・部品の不足や当社グループの企業イメージ毀損などが生じる可能性があります。その場合は生産の遅れによる原価上昇、株価低迷や投資家の投資撤退などの可能性があります。

当社グループとしては、製品歩留りの向上による原材料使用量の低減や、市況の変動が大きく資源国での人権侵害リスクの高いコバルトの添加不要材料の開発・提案、人権や環境等の社会問題の影響を考慮した鉱物調達活動などを推進し、リスク低減を図っております。

 

(5) 為替変動によるリスク

当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算されています。従いまして、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

なお、為替変動による通期連結営業利益への影響は、1円/$あたり約10百万円です。

当社グループとしては、ものづくり改革や自動化等の合理化推進等により、円高進行時でも利益確保できる体質構築に努めております。

 

 

(6) 新型コロナウイルス感染拡大に関するリスク

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う製品需要の低迷、生産の停滞などが継続する場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

当社グループとしては、感染拡大防止のため、衛生管理の徹底やテレワーク等の事業運営を実施するとともに、有事の際、稼働日数調整や開発費以外の固定費削減及び機動的な短期資金調達などの対応で、リスクの最小化に努めてまいります。

 

(7) 気候変動

気候変動がもたらすリスクは、製品の開発設計から調達・生産・物流・販売まで、企業活動全般に渡って存在しており、異常気象による災害リスクがもたらす生産影響、規制強化によるコスト増等は企業活動を停滞させる恐れがあります。

当社グループとしては、気候変動対応への取り組みとして、2050年カーボンニュートラルに向けた長期ビジョンを策定し、2025年までにCOを40%、2030年度までに50%削減する目標の達成に向けて、省エネ技術の開発など当社グループ一丸となって推進しております。また、電動車両搭載製品や鉄道車両用製品への売上構成比を高めてまいります。

 

(8) 退職給付債務

当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率などの数理計算上の前提条件や年金資産の長期期待収益率に基づいて算出されております。従いまして、割引率の低下や年金資産の減少など実際の結果が前提条件と異なる場合は、将来の期間に認識される費用及び計上される債務に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、年金資産の運用にあたり、分散投資や運用状況の定期的モニター等により、リスクの低減に努めております。

 

(9) 法令適合

当社グループは事業の遂行にあたり各国の法的規制の適用を受けております。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による罰則・訴訟・社会的制裁を受ける可能性があります。訴訟及び規制当局による措置その他の法的手段は、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

当社グループでは法令に適合することを確保するための体制として、内部統制委員会を設置しております。コンプライアンスの状況を把握するとともに、コンプライアンスの取り組みを横断的に統括する事務局を設置し、職場に適した活動や継続的な啓蒙活動ができるよう取り組んでおります。

 

(10) 情報セキュリティ

当社グループは、技術情報などの情報資産のデータ処理を行っていますが、不測の事態によって外部からのコンピュータウィルスの感染やハッキングの被害、サーバ及びネットワーク機器の障害やシステム障害の発生による業務停止や情報の外部漏洩等の事態が発生する可能性があり、それに伴い当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは対策として、情報セキュリティポリシーを策定し、「機密性」、「完全性」、「可用性」の確立に向けて発生するリスクを未然に防止する活動を進めております。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(経営成績等の状況の概要)

(1) 業績

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大からの回復が一部見られるものの、経済活動が正常化したとは言い難い状況で推移しました。

当社グループ製品の主要市場である自動車産業においては、世界的な半導体不足、東南アジアからの部品供給難に伴う生産停滞に見舞われました。

このような状況の中、当連結会計年度の業績は、売上高は389億57百万円(前年度比12.5%増)となり、営業利益は3億51百万円(前年度比131.2%増)、経常利益は6億36百万円(前年度比783.4%増)、親会社株主に帰属する当期純損失5億20百万円(前年度は親会社株主に帰属する当期純損失2億84百万円)となりました。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、「粉末冶金製品事業」を「自動車焼結事業」及び「鉄道焼結事業」の2区分へ変更しております。

 

①自動車焼結事業

当第3四半期以降の国内、米国を中心とした、半導体不足及び東南アジアからの部品供給停滞に伴う得意先での生産調整による売上減、原材料価格の高騰、米国子会社での要員不足による生産ロス等はあったものの、総じて前年度からの新型コロナウィルス感染拡大による売上減少から大幅に回復し、トヨタハイブリッド車用インバーター部品の売上増(既存品の増産及び新型ハイブリッド車用新規品の生産開始)、原価改善及び休業日設定を含む柔軟な稼働対応などの取組みで増収増益となりました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は352億93百万円と前年度と比べ38億30百万円(12.2%)の増収となり、セグメント利益につきましては、14億91百万円と前年度と比べ33百万円2.3%)の増益となりました。

 

②鉄道焼結事業

新幹線用ブレーキライニング及び新幹線用すり板の搭載車両増加が売上に寄与しておりますが、前連結会計年度第2四半期以降の新型コロナウイルス感染拡大に伴う減便の影響により、売上減少となりました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は15億15百万円と前年度と比べ2億51百万円(14.2%)の減収となり、セグメント利益につきましては、93百万円と前年度と比べ41百万円30.9%)の減益となりました。

 

③油圧機器製品事業

得意先での資材調達不安を背景とした先行調達や、前年度購入抑制の反動などにより、海外向けのデンタルチェア用製品や手術台用製品を中心に売上が増加し、また、画像診断機器用製品では新型コロナウイルス感染拡大に伴う特需継続による売上増がありました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は21億39百万円と前年度と比べ7億36百万円(52.5%)の増収となり、セグメント利益につきましては、6億8百万円と前年度と比べ2億81百万円(86.2%)の増益となりました。また、新型コロナウイルス感染拡大前の2020年3月期との比較では、売上高は1億83百万円(9.4%)の増収、セグメント利益は52百万円(9.4%)の増益となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

   (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、41億90百万円となり、前連結会計年度に比べ9億40百万円増加(28.9%増)となりました。これは主に、自動車焼結事業及び油圧機器製品事業を中心とした、新型コロナウイルス感染拡大による落ち込みからの収益回復に伴う営業利益の増加によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、33億46百万円となり、前連結会計年度に比べ7億29百万円減少(17.9%減)となりました。これは主に、有形固定資産取得による支出の減少によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果減少した資金は、13億63百万円となり、前連結会計年度に比べ36億34百万円減少となりました。これは主に、新型コロナウイルス感染拡大のリスクへの備えとして資金調達を行った前連結会計年度に対して、当連結会計年度は一部返済を行ったことにより、短期借入金の純増減額が28億23百万円減少したこと、長期借入れによる収入が8億27百万円減少したことによるものであります。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

自動車焼結事業

35,419,438

12.7

鉄道焼結事業

1,448,311

△17.2

油圧機器製品事業

2,133,783

49.3

合計

39,001,533

12.7

 

(注) 金額は販売価格によっております。

 

(2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

自動車焼結事業

35,387,618

9.0

3,301,895

2.9

鉄道焼結事業

1,487,627

△11.1

134,000

△17.3

油圧機器製品事業

2,168,831

51.6

184,000

18.7

合計

39,044,077

10.7

3,619,895

2.7

 

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

自動車焼結事業

35,293,251

12.2

鉄道焼結事業

1,515,627

△14.2

油圧機器製品事業

2,139,831

52.5

その他

8,562

3.4

合計

38,957,272

12.5

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

7,924,982

22.9

7,993,604

20.5

 

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

(1) 財政状態の分析

   (資産)

資産は501億92百万円となり、前連結会計年度末に比べ、5億円増加いたしました。原料価格の高騰などに伴う原材料及び貯蔵品の増加(前連結会計年度末比6億50百万円増)、売上回復に伴う受取手形及び売掛金の増加(前連結会計年度末比2億95百万円増)、株価回復に伴う評価額の上昇による投資有価証券の増加(前連結会計年度末比2億36百万円増)によるものであります。

 

(負債)

負債は301億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ、9百万円増加いたしました。これは、新型コロナウイルス感染拡大に起因する生産減からの回復に伴う仕入増加及び原料価格高騰による電子記録債務の増加(前連結会計年度末比6億14百万円増)の一方、新型コロナウイルスのリスクへの備えとして調達した資金の一部返済による短期借入金の減少(前連結会計年度末比2億77百万円減)及び長期借入金の減少(前連結会計年度末比4億46百万円減)によるものであります。

 

(純資産)

純資産は200億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ、4億91百万円増加いたしました。これは、主に円安進行に伴う為替換算調整勘定の増加による、その他の包括利益累計額の増加(前連結会計年度末比7億69百万円増)によるものであります

 

(2) 経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当社グループは、「中期経営計画2025」の達成に向け、グループ一丸となり「競争力の強化」「事業構造変革」「ESG経営」に取り組んでおります。当連結会計年度におきましては、電動化対応の開発推進、デジタル技術と匠の技の融合によるモノづくり革新「未来Factory」の実証ライン構築、食糧課題対応としての昆虫食を含めた新規事業開拓、カーボンニュートラルへの取組みを含めたESG経営などに積極的にリソーセスを投入し、将来の収益力確保、企業価値向上への取り組みを推進しました。

このような状況の中、当連結会計年度の目標として掲げておりました、連結での売上高370憶円、営業利益率4.1%、ROE4.0%に対して、実績は売上高389憶円、営業利益率は0.9%、ROEは△3.0%でした。自動車焼結事業において、半導体不足等に起因する得意先での生産調整がありましたが、油圧機器製品事業における資材調達不安を背景とした得意先での先行調達や、円安進行による為替換算差額等により、売上高は目標達成となりました。一方、原材料価格の高騰、米国子会社での要員不足に伴う生産上のロス等により、営業利益率及びROEは目標未達となりました。

2022年度以降につきましては、需要変動への柔軟な対応や、生産課題の解消に取り組むとともに、中期経営計画に沿って、「未来Factory」の立上げ準備などの競争力強化、電動化対応及び非自動車事業における新規開発など事業構造の変革に向けて、積極的に研究開発や設備投資を推進してまいります。

重要な経営指標の一つであるCO排出量削減については、2013年比で2025年までに40%削減、2030年までに50%削減を目標としており、2021年の実績は、生産設備の寄せ止めや生産量の減少などにより、38.8%の削減となりました。

当社グループの資金状況については、新型コロナウイルス感染拡大に伴う落ち込みからの回復による売上増加等で営業キャッシュ・フローは41億90百万円となり、そこから「未来Factory」や新規事業等での設備投資活動で33億46百万円の支出、新型コロナウイルス感染拡大に伴うリスクへの備えで確保した運転資金返済等の財務活動によるキャッシュ・フローで13億63百万円減少したことにより、前連結会計年度より現金及び現金同等物の期末残高は2億70百万円減少し、56億30百万円となりました。

今後の資金需要としましては、国内における「未来Factory」及び新規分野への開発投資、タイ子会社の第2拠点新設に伴う設備投資がありますが、必要資金は自己資金及び借入金でまかなう予定です。

 

 

(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5経理の状況1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、(重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

なお、新型コロナウィルスが当連結会計年度に与える影響は限定的であったことから、翌連結会計年度以降への影響についても限定的であるという仮定を置いた上で合理的な見積りを実施しております。

 

① 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、その回収可能性を考慮して、評価性引当額を計上しております。評価性引当額を計上する際には、将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するので、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

② 固定資産の減損損失

当社グループは固定資産の減損会計の適用に際し、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、利益に影響を与える可能性があります。

 

4 【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

 当社グループは粉末冶金工法を活用した自動車部品、鉄道車両用部品、産業機械用部品等の開発・製造販売、ならびに粉末冶金部品を組み込んだ油圧機器製品の開発・製造販売を行っております。
 当連結会計年度における当社グループの研究開発活動の金額は441百万円であります。
 
 セグメントごとの研究開発活動状況は以下のとおりであります。
 
① 自動車焼結事業

 前連結会計年度より進めてきた材料開発において、高強度、ニアネットシェイプ2部品で量産を開始致しました。特に力を注いできたコバルトレス材も、2021年12月より量産を開始しております。また、電動化製品においては、新世代インバーター製品も2021年11月より量産を開始し、従来のインバーター製品と合わせて、2022年度中には年間312万台規模の生産に拡大してまいります。今後、電気自動車普及に伴う急速充電機拡大にも応用できる次世代インバーター製品開発に加え、次世代モーター開発、燃料電池車構成部品の開発も引き続き進めてまいります。

 

② 鉄道焼結事業

 ブレーキライニング及びパンタグラフすり板を軸に高機能・新用途製品の開発・拡販に取り組んでおります。当連結会計年度は、銅系焼結集電材を改良し、摺動接触部材に応用した新製品を量産化しました。引き続き、高性能化を目指した開発に取り組んでおります。また事業拡大に向け、次世代新幹線用製品の高性能化、在来線への拡販、さらに産業用新規集電部品開発も積極的に進めております。

 

③ 油圧機器製品事業
 歯科、画像診断、手術台向けの医療機器、食品機械、設備業界からの多様なニーズに対応した製品開発を行っております。当連結会計年度は、医療機器向けに静粛性を高めたタンク一体型ユニットをベースに直流電源化とショックレス性能を向上させた油圧システム(シリンダアセンブリ製品)を開発しました。また、客先ニーズに合わせた特注シリンダを製品化しております。小型・低騒音化技術と高精度制御技術を応用し、AGV(無人搬送車)向けの推力1tonクラスの小型油圧システム(シリンダアセンブリ製品)を開発し、機能評価を進めております。

 SDGsの循環型社会構築に向け、既存ユニットを使用した環境関連の小型産廃機器開発は昨年度の着手から要素開発を進めております。年々高まるアセンブリのニーズに応える製品開発に注力しております。

 

④ 新規事業分野
 上記セグメントの研究開発以外に、当社の強みである粉末冶金技術を最大限に活かせる新規分野開拓への挑戦を進めております。前連結会計年度より継続して、3つの事業化を検討しております。一つは、食料問題への貢献を見据え、粉末加工技術と熱処理技術を活かした「昆虫食事業」です。特許出願中のオリジナル工法で粉末化した昆虫パウダーの製品化を実現し、同パウダーを用いた食品などの販売を開始しました。また、ifia2022国際食品素材添加物展への出展も行いました。当社のオリジナル技術と材料が活かせる「チタン商品開発事業」と「抗ウイルス製品事業」につきましては、2022年度中には試作品開発を完了し、お客様への提案を行う計画です。今後、これらの新規事業を、自動車焼結事業、鉄道焼結事業、油圧機器製品事業に次ぐ、第4の柱に成長させる様、開発を加速してまいります。