第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

〔基本理念〕

ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する

 

〔長期方針〕

① 21世紀に勝ち残る企業基盤を確立する

・品質第一に徹し、魅力ある商品・技術の実現

② 良い社風を築き、地域に信頼される企業を目指す

③ 明るく働きがいのある職場を築く

 

(2)目標とする経営指標

当社は、事業領域の拡大による売上高の伸張と、事業基盤の強化・付加価値の向上による売上高営業利益率、及び株主資本利益率(ROE)、モビリティの脱炭素化への貢献のためCO排出量の削減率を重要な経営指標としております。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

当社グループの主要顧客である自動車産業は、100年一度の大変革が進行中であり、気候危機・食糧難・水不足などの社会課題の国際的な取り組み、AI・デジタル技術の変化など、当社を取り巻く環境は大きく変動しております。

当社としては、持続的成長と企業価値向上の為に2030年ビジョンと中期経営計画2025を策定し、取組みを進めてまいります。

 

1.FINE SINTER VISION 2030

 


 

2.経営目標

2025年度の経営目標として、売上高は鉄道・油圧事業の回復に時間がかかるとの想定のもと、新型コロナウイルス感染拡大前の400億円レベルでも、8%の営業利益、10%のROEを達成し、さらに将来の成長につなげることを目指します。具体的には、モノづくり革新などで競争力を強化し、成長投資を行うことで将来の成長に向けた事業構造の変革を進めるとともに、持続的成長に向けESG経営を推進します。


 

3.基本戦略

<競争力の強化>

①デジタル技術と匠の技の融合によるモノづくりの革新

AI・IoT技術による24時間無人稼働化、全工程自動搬送などによる品質向上、製品1個1個へのQRコード付与による製品単位での品質保証、匠の技の段替ノウハウの設備機構への落とし込み、現場オペレーター作業の標準化、段替短縮のDX化に取り組みます。「未来Factory」と名付けたコンセプトを春日井工場から順次グローバルに展開していく計画です。

 

②ロスの撲滅とムダの排除による生産性工場

モノづくりの革新と併行して、地道なロス低減とTPSの考え方に沿ったムダの排除による生産性向上で、現場力を高めてまいります。

 

③グローバル最適生産・供給体制

各拠点の特性を活かし、製品別に「最適生産拠点」を設定、「一括生産でグローバル供給する製品」と「地産地消で生産する製品」を切り分けることで、グループ最小投資・最適コスト化による原価の低減を進め、受注の拡大、売上・利益率の向上を狙います。併せて、グローバル最適調達を推進し、最安値原材料の集中購買や高額消耗品の仕様統一で調達コスト低減をはかります。

 

<事業構造変革>

①CASE対応と価値の創造

・ハイブリッドインバーター部品の高付加価値化

当社は、ハイブリッド車、燃料電池車の電気コントロール部に使われる『リアクトルコア』単体を2018年から生産を開始し、現在車両180万台分まで生産拡大しています。今後、高付加価値化として、『リアクトルAssy』開発に取り組み、2030年に向け新材料を用いた『次世代コア』開発を進めていきます。

 

・『モーター』への取り組み

粉末冶金ならではの、3D形状設計の自由度を最大限に活かし、小型省スペースで、海外展開し易い直流DCモーターを開発しています。手始めに医療機器用油圧ポンプモーターから手掛け、将来的に、電動自転車、発電機、小型EVなどへ拡大していきます。

 

・材料開発

高精度で低コストを実現する『高強度材』、電動化製品に欠かせない『機能材』、配合の自由度を活かした『トライポロジー、複合材』、環境に考慮し、紛争鉱物を使わない『ニッケルコバルトレス材』、製造工法を変えCO2削減に貢献する『省エネ材』、これら5つの切り口で『材料開発』を加速してまいります。

 

②鉄道・油圧事業の強化

・鉄道事業

シェアの高い新幹線向けに加えて在来線用や海外鉄道向けにビジネスを拡大するとともに、産業用の小型集電子などの新規製品の開発を進めます。合わせて、体質強化と工場の工程改革を進めてまいります。

 

・油圧事業

手術台や画像診断など医療機器分野の拡大や、ブランド力を活かした高級デンタルチェアのアジアでの拡販、切粉等の圧縮機など環境にやさしい製品や、小型で廉価なクランプユニットなどの開発などを進め、2025年以降の大幅な成長に向けた取り組みを進めます。

 

③将来に向けた新規事業分野の開拓

・『粉末に加工する技術』と『熱処理技術』を活かした『昆虫食』事業

・当社の強みである『MIM工法』と当社オリジナルの『チタンMMC』材料を用いた商品開発事業

・当社特許技術の『焼結ベント』を活かした『抗ウィルスフィルター』事業

 

<ESG経営>

当社の企業理念、「ものつくりを通じて、すみよい社会と人びとの幸せに貢献する」の実現はESG経営につながります。

 

①環境

・2050年のカーボンニュートラルに向けて、省エネの焼結炉や水素活用など革新技術の開発や日常改善の加速と、再生可能エネルギーの導入を進めます。なお、2013年比で2019年までにCO排出量を35%削減しており、2025年には40%削減を目指します。

・廃棄物の削減やコバルトを使わない材料開発による環境負荷物質の低減を行います。なお、2010年比で2025年までに45%削減、2030年までに50%削減を目標としております。

 

②社会

(社会との共生・共創)

以下の取り組みにより社会とつながることは、刺激や新たな発想などのきっかけとなり、長期的な企業価値向上につながるものと考えております。

・人権や環境等の社会問題への影響を考慮した鉱物調達活動のグローバル推進

・環境保護活動、主体的なボランティア活動や地域社会との交流

 

(エンゲージメントの向上)

従業員のエンゲージメントが企業の社会的・経済的価値の源泉との考えに基づき、以下の取り組みを推進します。

・ウェルネス経営として、従業員自らが豊かな人生をデザインして自己実現を志向している状態を目指し、身体的健康、精神的健康の安定と活力みなぎる活性職場づくりの推進

・女性や障がい者の活躍の支援などのダイバーシティ推進

 

③ガバナンス

資本コストを上回るROE目標を設定し、収益力の向上を図り、得られた収益を、資本コストを基準とした判断に基づく将来への成長投資や、最適資本政策に基づき株主還元を行うことにより、企業価値の最大化を目指してまいります。あわせてリスク管理体制の強化としてまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 自動車業界への販売依存度

当社グル-プの製品は主としてエンジン部品、ショックアブソーバー部品等の自動車用部品のため、自動車産業の構造変化及び市場縮小等が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループの連結売上高に占めるトヨタ自動車及び同社現地子会社の割合は35.8%であります。

当社グループとしては、自動車産業の変革に対応するために、当社の強みである粉末冶金の特性や関連技術を活かし、電動化関連製品の開発を強化する一方、非自動車分野の鉄道車両用部品及び油圧機器製品の開発と拡販の強化を行っております。更に、新規分野の開拓も進めております。

 

(2) 海外進出に内在するリスク

当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれています。各地域における政治、経済状況の変化等による予期せぬ事象が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループとしては、現地の動向は海外拠点スタッフの情報網を積極的に活用する事で適時適切に入手し対応するように努めております。

 

(3) 業界内外の競争に伴うリスク

当社グループが身を置く業界の競争は非常に厳しく、競合他社は国内外の多岐に渡ります。顧客のニーズを満たした製品の開発・製造・販売に努めておりますが、競合他社との競争に打ち勝てない場合は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、デジタル設計から実証加工、電動化製品の開発から量産までをそれぞれを担う専任組織と、開発・生産技術・金型部門を統合した「テクニカルセンター」を設けており、開発力の強化と開発から量産化までの加速を進めております。

 

(4) 原材料の仕入に係る仕入価格の変動及び人権に関わるリスク

当社グループでは、粉末冶金製品の原材料として鉄粉等の金属粉を使用していますが、これらの原料価格が高騰し、製品価格に反映することが困難な場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、供給元の不慮の事故や資源国の政治・経済状況、労務管理面での人権侵害などにより、原材料・部品の不足や当社グループの企業イメージ毀損などが生じる可能性があります。その場合は生産の遅れによる原価上昇、株価低迷や投資家の投資撤退などの可能性があります。

当社グループとしては、製品歩留りの向上による原材料使用量の低減や、市況の変動が大きく資源国での人権侵害リスクの高いコバルトの添加不要材料の開発・提案、定期的な仕入先調査などでリスク低減を図っております。

 

(5) 為替変動によるリスク

当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算されています。従いまして、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

なお、為替変動による通期連結営業利益への影響は、1円/$あたり約10百万円です。

当社グループとしては、ものづくり改革や自動化等の合理化推進等により、円高進行時でも利益確保できる体質構築に努めております。

 

 

(6) 新型コロナウイルス感染拡大に関するリスク

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う製品需要の低迷、生産の停滞などが生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

当社グループとしては、感染拡大防止のため、衛生管理の徹底やテレワーク等の事業運営を実施するとともに、有事の際、稼働日数調整や開発費以外の固定費削減及び機動的な短期資金調達などの対応で、リスクの最小化に努めてまいります。

 

(7) 気候変動

気候変動がもたらすリスクは、製品の開発設計から調達・生産・物流・販売まで、企業活動全般に渡って存在しており、異常気象による災害リスクがもたらす生産影響、規制強化によるコスト増等は企業活動を停滞させる恐れがあります。

当社グループとしては、気候変動対応への取り組みとしてCO低減の長期ビジョンを策定し、2025年までにCOを40%削減する目標の達成に向けて省エネ技術の開発など当社グループ一丸となって推進しております。また、電動車両搭載製品の売上構成比を高めてまいります。

 

(8) 退職給付債務

当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率などの数理計算上の前提条件や年金資産の長期期待収益率に基づいて算出されております。従いまして、割引率の低下や年金資産の減少など実際の結果が前提条件と異なる場合は、将来の期間に認識される費用及び計上される債務に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、年金資産の運用にあたり、分散投資や運用状況の定期的モニター等により、リスクの低減に努めております。

 

(9) 法令適合

当社グループは事業の遂行にあたり各国の法的規制の適用を受けております。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による罰則・訴訟・社会的制裁を受ける可能性があります。訴訟及び規制当局による措置その他の法的手段は、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

当社グループでは法令に適合することを確保するための体制として、内部統制委員会を設置しております。コンプライアンスの状況を把握するとともに、コンプライアンスの取り組みを横断的に統括する事務局を設置し、職場に適した活動や継続的な啓蒙活動ができるよう取り組んでおります。

 

(10) 情報セキュリティ

当社グループは、技術情報などの情報資産のデータ処理を行っていますが、不測の事態によって外部からのコンピュータウィルスの感染やハッキングの被害、サーバ及びネットワーク機器の障害やシステム障害の発生による業務停止や情報の外部漏洩等の事態が発生する可能性があり、それに伴い当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは対策として、情報セキュリティポリシーを策定し、「機密性」、「完全性」、「可用性」の確立に向けて発生するリスクを未然に防止する活動を進めております。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(経営成績等の状況の概要)

(1) 業績

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動・社会活動の停滞により、厳しい状況で推移しました。

当社グループ製品の主要市場である日本・米国・中国・東南アジアの自動車産業における生産台数は、総じて第1四半期は前年を大きく下回るペースとなったものの、第2四半期以降は急激に持ち直しの動きが見られました。

このような状況の中、当社グループにおきましては、主に年初は稼働調整を行う一方、省人や固定費圧縮等による収益構造改善等を推し進め、売上回復局面での利益確保に努めました。

これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高は346億6百万円(前年度比14.2%減)となり、営業利益は1億22百万円(前年度比90.6%減)、経常利益は72百万円(前年度比92.7%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は2億84百万円(前年度と比べ8億36百万円減)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

<粉末冶金製品事業>

自動車用部品につきましては、第1四半期連結会計期間は新型コロナウイルス感染拡大の影響等で前年同四半期に比べ48.3%の減収となったのに対し、第2四半期以降回復基調となり、第3、第4四半期は前年同期比増収となりました。当社グループとしては、前述の収益構造改善に取り組みました。

鉄道車両用部品につきましては、新幹線用ブレーキライニング及び新幹線用すり板の搭載車両増加がありましたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う減便の影響により、第2四半期以降売上高は減少し、第4四半期連結会計期間では前年同四半期に比べ29.0%の減収となりました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は331億95百万円と前年度と比べ51億62百万円(13.5%)の減収となり、セグメント利益につきましては、15億63百万円と前年度と比べ12億35百万円44.2%)の減益となりました。

 

<油圧機器製品事業>

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、画像診断機器用製品は売上増となりました。デンタルチェア用製品はアジア向けを中心に厳しい状況が続き、年度終盤では輸出増加で売上回復、国内理美容チェア用製品も回復傾向となりましたが、第4四半期連結会計期間でも前年同四半期に比べ6.3%減収となりました。

この結果、当連結会計年度における売上高は14億3百万円と、前年度と比べ5億53百万円(28.3%)の減収となり、セグメント利益につきましては、3億26百万円と前年度と比べ2億29百万円(41.3%)の減益となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

  (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、32億50百万円となり、前連結会計年度に比べ16億30百万円減少(前年同期比33.4%減)となりました。これは主に、新型コロナウイルス感染拡大の影響による営業利益の減少によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、40億76百万円となり、前連結会計年度に比べ3億54百万円増加(前年同期比9.5%増)となりました。これは主に、新規品生産や改善のための有形固定資産取得による支出の増加によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、22億71百万円となり、前連結会計年度に比べ27億48百万円増加となりました。これは主に、短期借入金の増加16億57百万円、長期借入れによる収入12億78百万円、長期借入金の返済による支出3億15百万円等があったことによるものであります。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

粉末冶金製品事業

33,130,653

△14.3

油圧機器製品事業

1,429,188

△27.0

合計

34,559,842

△14.9

 

(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2 金額は販売価格によっております。

 

(2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

粉末冶金製品事業

34,107,025

△8.4

3,369,527

37.1

油圧機器製品事業

1,430,159

△26.8

155,000

21.1

合計

35,537,184

△9.3

3,524,527

36.3

 

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

粉末冶金製品事業

33,195,094

△13.5

油圧機器製品事業

1,403,159

△28.3

その他

8,281

△3.6

合計

34,606,535

△14.2

 

(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

9,000,509

22.3

7,924,982

22.9

 

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

(1) 財政状態の分析

資産は496億91百万円となり、前連結会計年度末に比べ、28億74百万円増加いたしました。これは、新型コロナウイルス感染拡大リスクへの備えなどによる現金及び預金の増加(前連結会計年度末比16億26百万円増)、売上回復に伴う受取手形及び売掛金の増加(前連結会計年度末比5億12百万円増)、株価回復に伴う評価額の上昇による投資有価証券の増加(前連結会計年度末比6億28百万円増)によるものであります。

負債は301億55百万円となり、前連結会計年度末に比べ、17億69百万円増加いたしました。これは、設備投資の低減による営業外電子記録債務の減少(前連結会計年度末比4億23百万円減)の一方、新型コロナウイルスのリスクへの備えとして短期借入金の増加(前連結会計年度末比22億72百万円増)、国内新規品用設備等の資金として長期借入金の増加(前連結会計年度末比3億16百万円増)によるものであります。

純資産は195億36百万円となり、前連結会計年度末に比べ、11億5百万円増加いたしました。これは、主に円安進行に伴う為替換算調整勘定の増加による、その他の包括利益累計額の増加(前連結会計年度末比12億40百万円増)によるものであります。

 

(2) 経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当社グループは、「中期経営計画2020」の達成に向け、グループ一丸となり「ものつくり改革」「新製品開発」「海外事業の展開」「非自動車分野の強化」に取り組んでまいりました。総じてこれらの取り組みは、一定の成果をあげたものの、今後の課題を残す結果となりました。2020年度の目標として掲げておりました、連結での売上高465億円、営業利益率10%に対して、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年度の実績は、売上高403億円、営業利益率3.2%と及ばず、ROEは3.4%でした。「ものつくり改革」で、製品の集約や焼結炉の寄せ止めなどが進みましたが、生産工程の抜本的見直しには至りませんでした。「新製品開発」では、トヨタ自動車と材料開発を行ったハイブリッド車用のインバーター部品を受注するなどの成果を生みました。「海外事業の展開」では、米国第2工場立上げなどの成果があった一方で、リソーセスの逼迫を招き収益面での貢献に遅れが生じました。また、米中貿易摩擦の影響等による中国・タイの市場減速で売上高の拡大が停滞しました。「非自動車分野の強化」では、鉄道部品・油圧機器事業については売上成長の遅れはあったものの、シェアの維持及び拡大となりました。

重要な経営指標の一つであるCO排出量削減については、生産設備の寄せ止めなどの取り組みにより、2013年に対して2019年までに35%削減、新型コロナウイルス感染拡大の影響による生産減少もあって、2020年は42.6%の削減となりました。

2021年度以降は、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)経営環境及び対処すべき課題 に記載した「中期経営計画2025」を確実に進め、持続的成長と企業価値向上に努めてまいります。

当社グループの資金状況については、新型コロナウイルス感染拡大の影響による売上の減少がありましたが、稼働調整や固定費圧縮で営業キャッシュ・フローは32億50百万円となり、そこから新規品等にかかる設備投資活動で40億76百万円の支出、通常より厚めの運転資金確保のための短期借入及び設備投資に関わる長期借入など財務活動によるキャッシュ・フローで22億71百万円増加したことにより、前連結会計年度より現金及び現金同等物の期末残高は16億14百万円増加し、59億円となりました。

今後の資金需要としましては、国内における「未来Factory」及び新規分野への開発投資、海外での新規品立上げ等に伴う設備投資がありますが、必要資金は自己資金及び借入金でまかなう予定です。

 

 

(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5経理の状況1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、(重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

なお、新型コロナウィルスが当連結会計年度に与える影響は限定的であったことから、翌連結会計年度以降への影響についても限定的であるという仮定を置いた上で合理的な見積りを実施しております。

 

① 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、その回収可能性を考慮して、評価性引当額を計上しております。評価性引当額を計上する際には、将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するので、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

② 固定資産の減損損失

当社グループは固定資産の減損会計の適用に際し、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、利益に影響を与える可能性があります。

 

4 【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

 当社グループは粉末冶金工法を活用した自動車部品、鉄道車両用部品、産業機械用部品等の開発・製造販売、ならびに粉末冶金部品を組み込んだ油圧機器製品の開発・製造販売を行っております。
 当連結会計年度における当社グループの研究開発活動の金額は183百万円であります。
 
 セグメントごとの研究開発活動状況は以下のとおりであります。
 
① 粉末冶金製品事業
 自動車部品に関しましては、加速するCASE、環境対応に向け、5つの切り口で材料開発を進めております。競争力確保を狙い、高精度ながら低コストを実現する高強度材開発、電動化製品に欠かせない機能材開発、ブレーキに代表される配合の自由度を活かしたトライポロジー材開発、環境対応や省エネルギーに欠かせないニッケル・コバルトレス材料、省エネ材料開発を加速し、社会に貢献でするモノづくり企業を目指しております。また、今後の自動車の電動化拡大に向けて、インバーター部品については、年間180万台規模の生産まで拡大し、次世代製品も手掛けております。電動化対応においては、小型直流モーター開発及び高強度複合材開発を足掛かりに、次世代モーター開発、燃料電池車構成部品の開発にも取り組んでおります。

 鉄道車両用に関しましては、ブレーキライニング及びパンタグラフすり板を軸に高機能・新用途製品の開発・拡販に取り組んでおります。当連結会計年度は、カーボン系集電材の特長である高耐熱・高電導性を活かし新たな用途に展開した新製品を量産化しました。銅系焼結集電材を改良し摺動接触部材に応用した新製品につきましても、実車試験が終わり次年度から量産を開始します。また事業拡大に向け、次世代新幹線用の高性能化、在来線さらには産業機械用への拡販も積極的に進めております。

 

② 油圧機器製品事業
 油圧機器製品は、歯科、画像診断、手術台向けの医療機器、食品機械、設備業界からの多様なニーズに対応した製品開発を行っております。当連結会計年度は、医療機器向けに、静粛性を高めた小型モーターポンプをベースにタンク一体型の油圧ユニット、ショックレス性能を高め客先ニーズの高速化に対応した油圧システムを開発し、製品化しました。また、設備業界向けには、小型・低騒音化技術と高精度制御技術に加えて蓄圧装置を応用した省エネタイプの油圧ユニットを開発し、機能評価を進めております。

 SDGsの循環型社会の構築に向けた環境関連の新たな取り組みとして、既存ユニットを使用した小型産廃機器の開発も開始しました。

 

③ 新規事業分野
 上記セグメントごとの研究開発以外に、新規事業として、当社の強みである粉末冶金技術を、最大限に活かせる新規分野開拓への挑戦を進めております。未来創成事業と位置付け、3つの事業化を検討しております。一つ目は、将来の食糧問題を見据え、粉末に加工する技術と熱処理技術を活かした『昆虫食事業』に取組んでおります。二つ目は、当社のオリジナル技術と材料が活かせる『チタン商品開発事業』です。生活用品から医療機器製品、高級ホビー製品開発を加工レスで実現致します。三つ目は、当社特許技術を活かした『抗ウィルス製品事業』です。既に、銅材フィルターでは、菌の増殖を抑える効果が確認されており、空気循環系設備や、医療設備、理美容設備などからも注目されております。今後、これらの新規事業を、自動車、鉄道、油圧機器事業に続く、第4の柱に成長させる様、開発を加速してまいります。