当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来「喜んで働く」ことを経営理念として、「カスタマー・ファースト」を貫き、人々の生活に必要不可欠な業界の製造システムを開発・販売してきました。培われた技術の応用展開と新たに開発した技術との融合によって新しい分野にチャレンジし、会社の発展とともに環境と社会に貢献することを目指しております。
(2) 会社の対処すべき課題
当社グループは、創業の原点である「喜んで働く」の企業理念のもと、以下のSHIBUYA未来ビジョン宣言を定めております。
・Mission(使命): ダントツ製品でお客様の繁栄をサポート
・Vision(志) : 生活に不可欠な業界の製造を支えるリーディングカンパニー
・Value(価値観): グローバル市場で持続的に成長
当社グループは、承継すべきものに新しい時代の変化を取り入れる「不易流行」の理念を全社で共有し、2027年6月期を最終年度とする中期経営計画の達成に向けて、以下の重点施策に取り組みます。
① 社会のニーズに応える製品・サービスを開発・提供し、環境や社会・経済に貢献するサステナビリティ経営を推進します。
② 世界のトップを走るダントツ製品づくりをさらに強化し、お客様との信頼関係に基づく利益創出によるWin-Winを目指します。
③ 製品・サービス・海外拠点については、時代の要請を先取りしたグローバル戦略を推進します。
④ 3カイ(改善・改革・開発)の強力推進および予実管理の徹底に取り組み、収益力の向上に努めます。
⑤ 持続的な企業成長を目的として、新製品開発・新市場開拓・新事業創出を推進するため、多様性を尊重する広い視野での人財育成に取り組み、DX化(デジタル技術の導入による業務およびビジネスモデルの変革)を強力に推進し、お客様へより高い品質とサービスの提供と社員のWell-beingの実現を目指します。
⑥ 新事業分野への参入やM&Aに戦略的に取り組むとともに、営業、技術、生産、管理の各部門において、グループ一丸(One Shibuya)でグローバルに展開します。
(3) 中長期的な会社の経営戦略および目標とする経営指標
当社グループは、2025年6月期から2027年6月期を対象期間とする3ヵ年の中期経営計画を策定いたしました。最終年度である2027年6月期に、売上高1,500億円、営業利益160億円およびROE10%以上の達成を目標としております。長期的には、新製品・新市場・新事業の成長エンジンによって、2030年6月期に売上高2,000億円の達成に向けて取り組んでおります。
① 新製品開発
顧客ニーズの発掘、技術陣の改善意志、産学官連携などをベースにイノベーションを創出し、チャレンジ精神と独創的な先端技術を具現化した「ダントツ製品」を開発します。
② 新市場開拓
新興国をはじめ他市場における健康意識の向上と透析患者の増大を背景に、海外市場を拡大し、世界の人々の健康を支え、増進する社会に貢献します。
③ 新事業創出
お客様のニーズにお応えすることの積み重ねが新事業の創出に繋がり、必要に応じてM&Aを活用し、事業領域を拡大します。
④ 環境への貢献
エネルギー・水・資源などの消費削減に寄与する製品・サービスの開発・提供を通じて、持続可能な社会に貢献するとともに、企業価値の向上を図ります。
(4) 経営環境
各セグメントにおける経営環境は以下のとおりであります。
(a) パッケージングプラント事業
パッケージングプラント事業は、顧客が清涼飲料業界を中心に酒類、食品、医薬品、トイレタリーなど多岐に亘っており、また生活必需品を生産するユーザーが多いことから、景気の影響を受けにくいという特長があります。その中でも、飲料を無菌環境下でPETボトルに常温で充填する無菌充填システムに関しては、技術的な優位性が多くのユーザーに支持されており、国内シェアは80~90%に上ると推定しております。当社グループの飲料用無菌充填システムは、PETボトルの薄肉化によるプラスチック消費量の削減、ボトル洗浄水の使用量低減、また取扱いが高難度な再生PET樹脂100%ボトルへの技術的な対応による高速充填などを実現しており、プラスチックごみによる海洋汚染問題への意識が高まる中、PETボトルのリサイクルをはじめ、持続可能な社会の実現に向けてユーザーが推進しているSDGs活動にも様々なかたちで貢献しております。
国内の飲料市場は、健康志向の高まりから茶系飲料や乳飲料などの低酸性飲料に人気が集中しており、消費者のニーズや嗜好の多様化も見られ、消費マインドの底堅さを背景に設備需要は堅調に推移してきました。しかしながら、少子化により国内の人口減少が進んでいることから、市場は長期的には縮小すると見込まれます。また、プラスチックごみによる海洋汚染問題をはじめとして、環境に配慮した容器や環境保全への取り組みがより一層求められることが見込まれます。このような状況のなか、当社グループが開発した環境に配慮し薬剤や無菌水の使用量を大幅に削減した電子線ボトル滅菌方式による無菌充填システムの市場ニーズは高まるものと見ており、今後の拡販戦略により更なる需要喚起は可能と見込んでおります。
また、海外においては、アジア等の新興国では消費者の嗜好の変化や所得水準の向上により衛生環境への意識が高まっていること、北米市場では健康志向の高まりにより低酸性飲料の需要が増加していることから、飲料用無菌充填システムの需要増加が見込まれ、海外での販売拡大が期待できる環境下にあります。
なお、近年注力しております再生医療システム事業では、主に大学やスタートアップ企業との共同研究開発ならびに講座等への協力を通じた産学官連携により高度な先端医療技術の研究をサポートするとともに、再生医療の実用化に向けた量産体制を担うための製品開発を進めております。再生医療システム事業は、将来の中核を担う事業に発展すると見込んでおります。
(b) メカトロシステム事業
メカトロシステム事業では、医療機器、半導体製造装置、切断加工機およびプレス機の製造販売を行っており、当事業の第1の柱である医療機器は、そのほとんどがOEM契約により製造している人工透析装置であります。国内における透析患者数は近年増加率が縮小傾向にあり、長期的には、国内人口の減少に伴い需要が減少していくことが予測されます。一方、海外では、ここ数年中国、インドを中心に世界の透析患者数が増加しており、当社の人工透析装置の海外向け売上高の割合は70%を超えております。このような状況のなか、当社はこれまで未開拓であった米国市場向けに製品開発を進めるとともに、市場評価を行い供給体制を確立しております。
当事業の第2の柱である半導体製造装置は、約50%をアジア諸国へ輸出しており、顧客のニーズにきめ細かく対応した特殊仕様機を高品質かつリーズナブルな価格で提供できる点で高い評価を得ております。今後、世界の半導体市場は、自動運転やロボット用に加えAI用として、高速画像処理と高い演算機能を兼ね備えたGPU(Graphics Processing Unit)分野の拡大や、高速通信規格である5Gサービスの普及やデータセンターの増加・拡充に伴う通信用部品製造に関係する装置の需要拡大、また、EV化や省エネ・省電力化に欠かせないパワー半導体の関係装置の需要拡大が予測されます。半導体・電子部品業界は非常に市場の動きが早く、短周期での技術革新にも対応できるよう、顧客ニーズに合致した新製品を高品質かつ短納期で開発・供給できる体制づくりに注力しております。
(c) 農業用設備事業
農業用設備事業では、主として農協向けに柑橘類用、落葉果樹類用および蔬菜類用の選果・選別プラントを製造販売しております。日本国内における農業を取り巻く環境は、各国際協定により、多くの農産物が関税撤廃の対象となっており、今後、国内産地の競争力の低下が懸念される状況にあります。更には、農業従事者の高齢化や担い手不足を背景とした大規模化など、農業の構造改革が今後もより一層加速することが見込まれます。これに対し国は、収益強化に計画的に取り組む産地を対象に、その実現に必要な農業機械の導入、集出荷施設等の整備支援政策をとっており、この政策のもと、集出荷施設の再編や施設の大型化に伴う設備更新需要は高まるものと見込まれます。
このような状況のなか、当社グループは選果・選別システムの国内トップメーカーとして、農業生産力を高めるための先端技術である「スマート農業」を推進し農業の持続的発展に貢献すべく努めております。
今後においては、高品質で付加価値の高い国際競争力のある農産物の生産の実現に向けて、当社グループの最新AIを搭載した画像処理システム、選果データをDX化し生産者への営農指導に活用される「KAISEKIシステム」、ならびに生産効率を向上させる搬送・ロボット技術により、自動化と省人化が図られた高品質な選果・選別プラントの市場ニーズが高まり、需要は増加すると見込んでおります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
気候変動への対応をはじめとするサステナビリティに関する課題については、担当取締役を委員長とするサステナビリティ委員会にて審議および検討しております。サステナビリティ委員会は、当社グループの内部統制システムのうち、内部統制関連の委員会として設置しており、サステナビリティ委員会で審議および検討された議案については、取締役会への報告を年1回以上の頻度で実施します。当社は、持続可能な社会の実現のために「シブヤグループにおけるサステナビリティに関する基本方針」を取締役会で決議いたしました。今後は同委員会において気候変動への対応をはじめとする具体的な取り組み、活動方針の検討も進めてまいります。
<シブヤグループにおけるサステナビリティに関する基本方針>
当社グループは、社会のニーズに合わせた製品・サービスを開発・提供し、企業価値の向上を図るとともに持続可能な社会に貢献します。
(a) カスタマーファーストの追求
お客さまが事業活動を通じて目指す様々なサステナビリティ(環境、社会、経済)への取り組みに対して、お客さまと協働し、持続可能な社会に貢献できる製品、サービスを提供します。
(b) 環境に配慮した製品・サービスの開発と提供
エネルギー、水、資源などの消費削減に寄与する製品・サービスの開発、提供を通じて、地球環境の維持、保全に努めます。
(c) 地球環境保全に配慮した事業活動
すべての事業活動において、省エネルギー、省資源、環境汚染防止、廃棄物の削減に取り組み、環境にやさしい社会の実現を推進します。
(d) 人財育成と労働環境整備
従業員が共に成長し、個々の能力を最大限に発揮できるよう、公正な処遇や教育研修の充実を図ると共に、その多様性を尊重し、安全かつ健康に当社グループの創業の原点である喜んで働ける労働環境の構築に取り組みます。
(e) サプライヤーとのパートナーシップ
サステナビリティを尊重し、当社グループの理念を共有するサプライヤーと公正かつ公平な取引を行い、良好なパートナーシップと持続可能なサプライチェーンの構築を通じて、共存、共栄を目指します。
(f) 地域社会活動への参画と貢献
地域の学術、文化、スポーツ、経済活動などへの参画と支援を通して、地域との友好な関係を築き、地域社会の持続的な発展に貢献します。
(2) リスク管理
当社グループにおける様々なリスクについて、目的および機能別に各種リスク管理委員会を設置しております。また、大規模な自然災害をはじめとする事業活動遂行上脅威となる予想困難な事態に対応するため、取締役社長を本部長とする危機管理緊急対策本部を設置しており、当社グループに危機が発生したと判断した時は、機動的に執行体制を整備できるよう体制を整えております。
(3) 気候変動への取組(TCFD提言への対応)
①戦略
気候変動によるリスクおよび機会の特定にあたり、2050年のカーボンニュートラルと整合する2030年目標が日本において設定されていることから、2030年時点を想定したシナリオ分析を行いました。分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)が公表するシナリオを用いて、産業革命期頃の世界平均気温と比較して2100年頃までに気温が4℃上昇するとする4℃シナリオと、カーボンニュートラルへの取り組みにより気温上昇が2℃以下に抑制される1.5℃シナリオの2つのシナリオで定量的・定性的な分析を行いました。
4℃シナリオにおいては、台風や豪雨、豪雪などの異常気象の激甚化によって当社の生産拠点や物流への直接的な影響を想定しております。そのうち、国土交通省が公表する治水経済調査マニュアルを参考に、洪水被害と高潮被害については発災時の被害予測を定量的に評価・把握しています。また、主に国外にて拡大する干ばつ被害による影響から、水の供給需要と節水需要が拡大することを予測しており、自社製品の環境性能向上が世界的な気候変動への適応および緩和に資するものと認識し、社会貢献の可能性を確認しています。対して1.5℃シナリオにおいては、カーボンプライシング制度の導入が当社にも直接的な影響を及ぼすものと想定しています。また、定量的な分析では比較的軽微な影響として試算したものの、製品の原材料である鉄・銅・アルミニウムをはじめとした資材価格が高騰する可能性も認識しています。一方で、製品に対する脱炭素化需要が拡大することを想定しており、特に販売製品の省資源・省エネルギー性能の向上や資材調達段階を含むライフサイクル全体での環境負荷の低減、再生材の利活用を見据えた技術的対応の推進が、新たな機会獲得および事業拡大に資するものと認識しています。
当社グループでは、「シブヤグループにおけるサステナビリティに関する基本方針」を定め、環境経営の推進に取り組んでいます。具体的には、お客様における省資源・省エネルギー化や脱炭素化需要に応えるために、以下のような製造システムの開発やサプライチェーン全体での環境負荷低減を目的としたグリーン調達基準書の策定など、脱炭素化への貢献を目指した取り組みを行っております。また、目的および機能別に各種リスク管理委員会を設置することでリスク管理体制の強化に取り組んでおり、レジリエンス性の増強に努めています。
<省資源・省エネルギー化や脱炭素化へ対応した製造システムの事例>
・プラスチック使用量の削減(包材の変更や包材ロスの削減)
・水使用量の削減(新製品の開発や洗浄・殺菌方法の変更)
・電気使用量の削減(新製品の開発や小型化、高速化)
・フードロスの削減(食品の焙煎・表面殺菌や損傷低減)
・CO2の削減(新製品の開発)
②リスク管理
気候関連リスクについては、サステナビリティ委員会にて識別・評価を行う体制となっており、審議された内容は取締役会に報告を行うこととしています。今後は、個別の気候関連リスクについて、サステナビリティ委員会で識別・評価を行う中で、気候変動に関するリスク管理体制を整えてまいります。
③指標及び目標
2050年のカーボンニュートラル達成を掲げる国際的な目標および、国内における2030年を対象年とした2013年度比での温室効果ガス排出量の削減目標46%に準拠するため、事業活動から排出される温室効果ガス量の継続的なモニタリングを実施してまいります。当社グループでは、温室効果ガス排出量を指標とし、2030年を対象年とする2020年度(2021年6月期)比30%削減を目標に設定しています。なお、過去年度における温室効果ガス排出量実績は次のように計上しています。
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GHG 排出量 |
内 訳 |
2021年6月期 |
2022年6月期 |
2023年6月期 |
2024年6月期 |
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Scope1 |
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Scope2 |
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合計排出量 |
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(注)1.Scope3の算定は検討中であります。
2.2022年6月期は、連結子会社との合併により、Scope1が422t-CO2、Scope2が870t-CO2増加しています。
3.2023年6月期は、新工場(能美ハイテクプラント)の操業開始などにより、Scope2が169t-CO2増加しています。
(4) 人的資本、多様性に関する開示
①戦略
(人財育成方針)
当社は、創業100周年を迎える2031年へ向けて、あるべき姿を「夢は大きく足元は盤石に」を基調とし、生活に必要不可欠な業界をサポートするリーディングカンパニーを目指す長期ビジョンをもって企業価値の向上を図るとともに、お客様の繁栄を祈り、人々の豊かな社会に貢献する循環型経営を推進しております。こうした循環型経営を実現するために、一人ひとりが年齢、性別、国籍など多様性を尊重し、当社の理念である「喜んで働く」を実践できる人財を育成してまいります。
(社内環境整備に関する方針)
高齢者は経験を活かし定年後70歳まで心身共に健康に働ける環境を、若い世代は失敗を恐れず挑戦できる機会を増やしキャリアアップの可能性を広げられる環境を、さらに性別や国籍を問わず多様性を尊重し各人の適性を活かせる環境を整えてまいります。
②指標及び目標
近年、グローバル人財の育成プログラムを開始、シニア人財の活用を狙った65歳定年制を導入、有給休暇取得率の向上を図り、働き方改革を推進してまいりました。人財育成と社内環境整備を拡充すべく、当社グループにとって最適となる指標と目標の検討を進めてまいります。
当社グループの経営成績、財政状態およびキャッシュ・フローの状況等の業績に影響を与える可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年6月30日)現在において当社グループが判断したものでありますが、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
(1)経済情勢、市場環境等
当社グループはパッケージングプラント事業、メカトロシステム事業、農業用設備事業の3つの事業で構成されており、すべての事業において顧客の設備投資動向の影響を受けます。また、顧客の中には製薬業界や医療機器業界など法的な規制を受ける業界もあります。3つの事業における業績の変動要因はそれぞれ独立しておりますが、経済情勢や市場環境の急激な変化、各業界における法的規制の変更など、予期せぬ外部環境の変化が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。各事業における固有のリスクは以下のとおりであります。
①パッケージングプラント事業
当社グループの主力であるパッケージングプラント事業のうち清涼飲料業界向けは、連結売上高の20~30%程度を占めております。清涼飲料業界における充填設備の投資は、消費者の嗜好の変化や天候、あるいは容器の変化などにより、その設備投資動向が左右されることがあります。
当社グループでは、清涼飲料業界の動向に注視するとともに、技術開発力を更に強化し、革新的技術開発を行い、環境の変化にも能動的に対応します。
②メカトロシステム事業
当事業の第1の柱である医療機器は、その大部分をOEM供給しており、OEM供給先の業績や経営方針の転換などの影響を受けることがあります。
当社グループでは、OEM供給先と共同開発を行うとともに、定期的な技術および販売連絡会議を開催するなど、取引関係の維持・強化に努めております。
③農業用設備事業
当社グループの農業用設備事業は、主に農協向けに農業用選果・選別プラントを製造・販売しております。農協は、設備を導入するにあたり国および地方公共団体の補助金を活用する場合が多く、農協の設備計画は、国等の農業政策の転換等の影響を受けることがあります。
当社グループでは、市場動向に注視するとともに、グローバルな販売の拡大を推進します。
(2)製造物責任(PL)
当社グループでは、製品の品質・性能に万全を期して各種製品を製造しており、PLリスクの検討を事前に実施し、製品出荷時や設備引渡し時に当社として品質基準を満たしていることを検査することでPL問題の未然防止を図っております。また、製造物責任賠償については、関連する必要な保険に加入し、万一の事故に備えております。但し、上記の対応で十分にカバーできないPL事故が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、製品・技術情報関連のリスク管理委員会であるPL委員会を設置しており、万一の事故が発生した場合は同委員会が中心となり迅速に対応します。
(3)知的財産権
当社グループは、開発した製品および技術を特許権等の知的財産権により保護するとともに、当社製品が第三者の知的財産権を侵害しないよう努めております。しかしながら、第三者による当社グループ製品への特許侵害や、当社グループ製品が第三者の知的財産権を侵害した旨の主張による訴訟等が発生した場合、機会損失・訴訟費用・損害賠償等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、知的財産権を管理する専門部署を設けており、第三者の知的財産権の調査を徹底し、第三者による当社グループ製品への特許侵害の調査も適宜行っております。
(4)自然災害、感染症
大規模な自然災害や新型感染症の拡大が発生した場合、生産活動や営業活動の縮小または停止を余儀なくされ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、災害等が発生した場合は取締役社長を本部長とする危機管理緊急対策本部が中心となり迅速に対応します。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産については、主として現金及び預金が42億49百万円、売上債権および契約資産が93億71
百万円、退職給付に係る資産が22億32百万円増加したことから、前連結会計年度末に比べ194億76百万円増加し
1,619億3百万円となりました。
負債については、主として支払手形及び買掛金が48億25百万円、長期借入金が9億7百万円、退職給付に係る負
債が7億73百万円減少したものの、契約負債が116億69百万円、未払法人税等が28億45百万円増加したことから、前連結会計年度末に比べ86億27百万円増加し608億73百万円となりました。
純資産については、主として親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が78億44百万円増加し、
また退職給付に係る調整累計額が22億42百万円増加したことから、前連結会計年度末に比べ108億49百万円増加し1,010億29百万円となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による各種規制が緩和され、インバウンド需要の回復などにより国内景気は緩やかな回復が見られるものの、原材料価格・エネルギーコストの高止まりや海外経済の成長鈍化に加えて、本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震の影響など、景気の先行きは不透明な状況で推移しました。
このような状況のなか、当社グループの連結売上高は1,154億34百万円(前期比18.0%増)となり、損益面については、全てのセグメントで増益となったことから、営業利益は133億82百万円(前期比66.5%増)、経常利益は135億59百万円(前期比65.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は97億81百万円(前期比65.0%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(パッケージングプラント事業)
パッケージングプラント事業の売上高は、薬品・化粧品用プラントは注射薬バイアル充填ラインや柔軟剤などのトイレタリー製品用充填ラインが減少したものの、食品用プラントは国内向け調味料用充填ラインならびに国内および海外向け飲料用無菌充填ラインが増加したことから、前連結会計年度に比べ増加しました。
その結果、売上高は660億7百万円(前期比15.0%増)となり、損益面については、①プラントに占める他社製品の割合が減少し原価率が低下したこと、②客先の新製品に対応する改造工事が増加したこと、また③社内プロジェクトによる一段のコスト削減効果が発現した結果、営業利益は108億30百万円(前期比51.1%増)となりました。
(メカトロシステム事業)
メカトロシステム事業の売上高は、切断加工機は金属加工業界における国内需要の低迷により減少したものの、半導体製造装置は前期に大きく落ち込んだ中国向けがやや回復したことから微増となり、医療機器は欧州、北米、インドなど海外向けが好調で大きく増加したことから、前連結会計年度に比べ増加しました。
その結果、売上高は369億93百万円(前期比21.1%増)、営業利益は32億53百万円(前期比69.4%増)となりました。
(農業用設備事業)
農業用設備事業の売上高は、蔬菜類向け選果選別プラントが増加したことから、前連結会計年度に比べ増加しました。
その結果、売上高は124億32百万円(前期比25.8%増)、営業利益は15億5百万円(前期比61.2%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、104億32百万円の資金増加(前期は48億54百万円の資金増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が137億85百万円となり、売上債権及び契約資産の増加額90億72百万円、棚卸資産の増加額12億30百万円、仕入債務の減少額40億71百万円、前渡金の増加額13億90百万円および法人税等の支払額14億48百万円による資金減少があったものの、契約負債の増加額115億9百万円および非資金項目である減価償却費29億35百万円による資金増加があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、34億47百万円の資金減少(前期は53億28百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出32億83百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、30億44百万円の資金減少(前期は12億15百万円の資金増加)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出10億99百万円および配当金の支払額19億35百万円によるものであります。
これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末より42億34百万円増加し468億94百万円(前期比9.9%増)となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
パッケージングプラント事業 |
66,007 |
+15.0 |
|
メカトロシステム事業 |
36,898 |
+21.6 |
|
農業用設備事業 |
12,432 |
+25.8 |
|
合計 |
115,339 |
+18.1 |
(注)金額は販売価額によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
パッケージングプラント事業 |
82,769 |
+4.1 |
79,656 |
+26.7 |
|
メカトロシステム事業 |
39,838 |
+33.6 |
12,473 |
+29.5 |
|
農業用設備事業 |
10,504 |
△17.6 |
9,698 |
△16.6 |
|
合計 |
133,113 |
+9.1 |
101,829 |
+21.0 |
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
パッケージングプラント事業 |
66,007 |
+15.0 |
|
メカトロシステム事業 |
36,993 |
+21.1 |
|
農業用設備事業 |
12,432 |
+25.8 |
|
合計 |
115,434 |
+18.0 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
ニプロ株式会社 |
15,029 |
15.4 |
20,905 |
18.1 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年6月30日)現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、売上高および収益の長期・持続的な増大を目標としており、具体的な数値としては、連結売上高2,000億円の達成を目標としております。この目標達成のために「シブヤ成長戦略」を推進しております。
当連結会計年度の経営成績等については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
当社グループは、売上債権および棚卸資産の圧縮等資金の効率を高め、財務基盤の健全化に努めており、事業活動のための適切な資金確保を行うことを財務方針の基本としております。運転資金および設備資金(買収資金を含む)については、内部資金のほか、主に銀行等の金融機関からの借入により調達しております。
当社グループは、その健全な財政状態、安定した収益力および取引金融機関からの信用により、当社グループの成長を維持するために将来必要となる運転資金、設備資金、研究開発資金およびM&A資金を創出・調達することが可能と考えております。
なお、今後予定している重要な設備の新設およびその資金調達方法については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成において、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられるさまざまな要因を考慮したうえで見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは、顧客ニーズの発掘、技術陣の改善意志、産学官連携などをベースにイノベーションを創出し、チャレンジ精神と独創的な先端技術を具現化した製品開発を進めております。世界のトップを走るダントツ製品づくりを推進するとともに、ユーザーが使用するエネルギーや水資源の削減に貢献する製品の開発や、AI、IoTなどを活用した自動化・省人化製品の開発についても積極的に取り組んでおります。
現在、研究開発は、当社情報・知的財産本部を主管部門とした当社グループ全体の開発委員会を設け、市場情報、技術情報を一元管理し効率的かつ戦略的に研究開発活動を推進しております。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
(1) パッケージングプラント事業
コンピュータ制御による自動高速パッケージングシステム、製品の高品質化に応える無菌充填技術、包装形態の多様化に対応するロボット包装ライン、細胞培養の自動化システムなどを中心に、当社およびシブヤパッケージングシステム㈱が研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費は
当連結会計年度において、省スペースや省人化を実現する次世代型の無菌充填システム「トリプルブロックシステム」を開発しました。この新型システムは、アサヒ飲料㈱、㈱フジシールと共同で開発したPETボトル商品の製造ラインであり、従来別々の装置であった充填工程とラベル貼り工程を連結し、ボトルを搬送するコンベヤを減らしたことで搬送に必要な電力を約40%、システムの占有面積を約20%削減できる見込みです。また、次工程に移動する際の軽量に起因した変形・破損が改善されるので、ボトルの更なる軽量化が期待できます。
(2) メカトロシステム事業
半導体製造システム、切断加工システム、医療機器関連および超音波応用機器などを中心に、当社および㈱カイジョーが研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費は
(3) 農業用設備事業
農業用選果・選別システムを中心に、シブヤ精機㈱が研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費は