当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、信頼性評価と微細加工の技術を進化させ、表面処理・実装・パワー半導体の分野における技術開発と能力向上を推進し、未来品質の創造に貢献するという経営基本方針を掲げております。環境性能と安全性能の評価技術を確立し、安心・快適な未来社会の実現に貢献いたします。
(2)経営環境
(信頼性評価事業)
自動車業界における「CASE(注)」を背景に、「クルマ」の概念が大きく変わろうとしています。近年では環境問題への対応として掲げられたカーボンニュートラルの目標達成に向け、自動車の電動化(EV、PHV、HV等)に向けた開発が進められており、次世代車の普及は世界的に年々増加するものと見ております。
これらを背景に自動車の信頼性評価試験の市場では、特に電動化・自動運転に向けた車載機器の信頼性評価の需要が大きく伸びております。製品固有の試験需要や電動化、自動運転技術に伴う高度な試験への対応、また試験設備への投資ハードルやソフト開発へのリソースシフトを目的に、外注市場規模も大きくなっております。また、電動自動車に多く実装されるパワー半導体需要は今後も増加すると考えられ、加えてより高性能な半導体の開発も盛んに進められております。
(微細加工事業)
当事業では、車載部品、ヘルスケア、通信その他の分野で拡大を続けて参りました。今後注力するヘルスケア分野では、バイオセンサ市場の成長が見込まれます。市場成長に加えて開発サイクルが長く、参入障壁も高いことから、長期に亘る安定受注が期待できる市場であると考えております。
また、当社が加工するビルドアップ基板やフレキシブルプリント基板などの電子部品は、通信その他分野ではスマートフォンを代表とする通信系デバイスに使用され、車載部品分野では、ミリ波レーダやカメラを使った自動ブレーキ・車線維持支援などの先進運転支援システムなどの自動運転に関わるもの、ハイブリッド・ガソリンから電気に完全シフトした電気自動車の各種制御基板や、ヘルスケア分野では超音波プローブ・CTスキャナーなどの医療機器に至るまで、幅広い分野に使用されていることから、どの分野においても微細加工の需要が増加すると見ております。また、技術的な進歩は目まぐるしく、短小軽薄・高多層・高精細化が進み、次世代半導体に採用されるガラス基板に対する微細加工や5G、6Gで必要となる低誘電材など、当社が得意とする難加工材への加工のニーズがより一層高まると考えております。
(その他事業)
その他事業に属するバイオ事業では、バイオ医薬品関連の産業化は、経産省主導の国家戦略として推進されております。また、遺伝子検査の事業においては、2019年の動物愛護管理法の改正により、ペット販売における遺伝性疾患の発生状況の対面での説明が義務化されたことから致死性遺伝性疾患に対する関心の高まりを受けて、遺伝子検査の需要の拡大が見込まれると考えております。
(注)CASE
自動車業界において次世代技術やサービスを意味する「Connected(つながる)」、「Autonomous(自動運転)」、「Shared(共有)」、「Electric(電動化)」の4つの英語の頭文字をつなげた造語。
(3)経営戦略等
当社では、今後も発展を続ける自動車業界において、そのパラダイムシフトの方向性を的確に把握、認識し、その変化に素早く対応できるように、日ごろから体制構築を図っております。
信頼性評価事業において、当社の強みは、「独立系検査会社」であることと、試験ラインナップが多いことで実現する、幅広い顧客のニーズにワンストップで応えられる「Total Quality Solution」が可能であることと認識しており、ケイパビリティの優位性があるものと考えております。
昨今の検査データ改ざんに見られる企業の不正を無くすことが当社の存在意義であり、メーカーが自らの検査データを改ざんする可能性があるような状況においては、当社のような中立な第三者が担う信頼性評価試験の重要性が高まると考えております。当社は、これまで培った技術力を発揮することにより業界内での存在感を増していきたいと考えております。
当社は、品質検査や分析、測定などを行う試験所等に対する要求事項を定めた試験所認定と呼ばれるISO/IEC17025の認定を取得しており、当社の技術力は国際的に認められており、今後も同認定を維持して参ります。高度な分析には高性能の装置や設備が不可欠になることから、以前より設備投資を行って参りました。顧客の要望に応えるために必要な設備を揃えることで、技術やノウハウを蓄積しております。
「(2)経営環境」でも述べたとおり、CASEを背景に2030年頃からEV(電気自動車)市場が急拡大すると言われており、当社は日本でCASEを推進している企業と取引しております。
市場が急拡大する前段階にある試作品段階では、量産時の製品の安全性を確保するため、何度も信頼性評価試験が繰り返されます。当社はこれらの需要を着実に獲得し、その後の量産品段階での需要獲得に繋げることを目指して参ります。
自家用車の電動化が進むその先には、モビリティの小型化や建設機械及び航空分野の電動化も進むものと予測されます。そのような環境においても、これまでどおり当社の高度な技術力に基づいた信頼性評価試験を行うことで、顧客とともに成長できるパートナーとしての確固たる地位の獲得を目指して参ります。
更に、裾野の広い自動車業界に属する主要顧客との関係性を強化、確立することで、幅広く関連企業のニーズ開拓に繋げていきたいと考えております。
微細加工事業における市場環境は、半導体不足によりスマートフォン向けの電子基板、モジュール基板などの製品の生産が減少する中でも、自動運転に関連した製品や医療機器などは安定した生産が続くと考えております。それらの市場をターゲットに高付加価値、特殊用途、小ロット多品種でも製品ライフサイクルの長い製品に関する試作の受注拡大を進めており、これらの量産受注の獲得を目指して参ります。
当社は同事業において20年以上の歴史を持っており、大ロットの量産から、小ロット多品種の試作、材料評価まで幅広い対応力を持つ強みと24時間受付、稼働することで幅広いニーズをキャッチする体制を整えております。また、フェムト秒グリーンレーザ加工(注)など特殊な材料の加工や特殊な工法が可能なことも強みのひとつであり、これら当社の強みを活かして医療分野などで大ロット製品の量産受注を目指すなど、ターゲット市場の開拓を進める考えです。
その他事業において、バイオ事業では、国家戦略として進められるバイオ医薬品関連の産業化の機運を契機に人員体制を強化し、バイオ医療関連製品の受託検査の受注伸長を図ります。
販売戦略としては、営業本部を中心としたマーケティングリサーチによる効果的な販売戦略の立案、当事業年度に新たに熊本営業所を開設した九州地区の半導体や電子部品メーカーへの販路拡大や同業他社空白地帯(北海道、東北、中四国)への積極的な営業を展開し、潜在顧客の開拓に取組みます。
技術戦略としては、顧客の多種多様なニーズに対応できる技術陣が当社の強みであり、特異技術を駆使した特殊解析のニーズへの対応力を保つことで、競争優位性を確保し、更に高度なニーズにも応えられるよう、人材育成と技術の伝承に注力し、期待以上の提案ができる集団を目指して参ります。
当社が重要と考える自動車市場は、時代と共に変化しながらも益々成長する可能性を秘めていると考えており、同市場において当社は、顧客のニーズのひとつひとつに実直に応えることで着実な成長を目指します。
当社はこれからも、環境性能と安全性能の評価技術を確立し、安心・快適な未来社会の実現に貢献することを経営基本方針とし、「未来品質の創造」をスローガンに全てのステークホルダーのため、社業に邁進して参ります。
(注)フェムト秒グリーンレーザ加工
パルス幅(時間幅)が数ピコ秒(1兆分の1秒)よりも短いレーザ加工で、熱拡散する時間を与えずに分子結合を切断、除去することで、熱影響の少ない高品位な加工を可能にする工法。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、継続的な事業拡大及び成長の観点から、売上高及び売上高営業利益率を重要な経営指標としており、業界動向及び当社業績の推移等を勘案し、適切な目標設定を行い、企業価値向上に努めて参ります。
売上高を指標とすることは、当社の主要市場の成長や同業他社の売上高との比較、分析に有用であると考え重要な指標と位置付けております。当社が市場での競争優位性を確保しつつ売上高を向上させるために、主要市場の動向を注視し、ニーズに応える技術力の向上に取組んで参ります。併せて、事業の収益性、販売活動の効率性を図る観点から、売上高営業利益率を重要な指標と位置付けております。当社が市場での競争優位性を確保するために、高い付加価値の提供と効率的かつ効果的な販売活動に取組んで参ります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
信頼性評価と微細加工の技術を進化させ、表面処理・実装・パワー半導体の分野における技術開発と能力向上を推進し、未来品質の創造に貢献するという経営基本方針を掲げる当社が、持続的な企業価値の向上を図るうえで、対処すべき課題として認識している事項は以下のとおりであります。
① 自動車業界以外の柱となる業界の開拓
当社の主要事業である信頼性評価事業においては、特に自動車業界に属する特定顧客への売上割合が高い状況です。今後は、同事業におけるパワーサイクル試験や断面研磨、分析・解析の分野において特定顧客への依存度を低減するための水平方向の拡販活動や、微細加工事業においてヘルスケア分野への進出による事業規模拡大を図ること等により特定顧客への売上割合の低減を図って参ります。
② 設備の増強
顧客が取組む新規開発には、様々な試験、分析が繰り返し行われます。近年はより高度な試験、検査のニーズが高まっております。また、半導体需要の増加に伴う試験、検査需要の増加に対応すべく、効率化の重要性が更に増すと考えております。これに対応するため、設備の増強による生産性向上、最新設備への切り替えを適宜行うことにより、より高度な顧客ニーズへの対応を図って参ります。
③ 技術力の向上
顧客の新規開発フェーズでは、様々な困難に直面する場面が多くあり、その困難を共に解決する技術力を高める必要があると考えております。これまでの経験により蓄積された見識による技術力に加え、新たな試験や検査への取組みでより知見を深め、更なる技術力の向上を続けて参ります。
④ 新規事業の醸成
当社は、2023年12月14日付でPatentix株式会社(本社:滋賀県草津市、代表取締役社長:衣斐 豊祐)と資本業務提携に関する合意書を締結し、これを足掛かりに更なる事業領域の拡大を図るべく、半導体製造分野への進出を図って参ります。
⑤ 優秀な技術者の採用及び育成
当社では、優秀な技術者の採用と育成が事業成長に必要不可欠であると認識しております。昨今の技術者の採用市場における獲得競争は更に激化しており、人材確保には厳しい状況が続くものと予想されますが、引き続き積極的な採用活動を進めて参ります。併せて、採用後も高いモチベーションを維持しながら安心して働くことができる労働環境づくりに取組んで参ります。
⑥ 営業体制の強化
当社の継続的な事業成長には、既存顧客のニーズを的確に把握するための信頼関係強化に加え、当社の技術力を必要とする新しい市場の開拓、拡大が必要であると認識しております。そのため、既存顧客の高度なニーズへの迅速な対応が可能な体制の強化、営業本部を中心としたマーケティングリサーチによる効果的な販売戦略立案、新規に営業所を開設した九州地区や同業他社空白地域への積極的な拡販活動、当社の技術力を広くアピールするためのホームページ上やメディアへの露出増進、展示会への積極的な出展等の活動を行い、新規顧客の開拓に取組んで参ります。
⑦ 情報セキュリティの強化
当社では、技術や営業に関する情報、取引先の重要情報など多くの情報を取扱っており、情報セキュリティの強化が重要であると認識しております。
情報セキュリティに関する規程等を策定し、情報セキュリティ委員会を通じて、情報資産の機密性、完全性、可用性の視点から情報セキュリティの維持、向上の取組みを行うなど、これら情報資産の流出や外部からの攻撃の対応策を徹底し、情報資産の毀損による損害の防止や取引先からの信頼に応えるべく、情報セキュリティの強化を継続的に図り、万全な防御体制の構築を進めて参ります。
⑧ 内部管理体制の強化
当社は、より一層の事業拡大を進めるうえで、また上場企業としての責務を果たすため、内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。上場以降進めている、バックオフィス業務の効率化を図るための業務改革や、事業運営上のリスクの把握と管理をより適切に行う強固な内部管理体制を維持し、引き続きコンプライアンスを重視した経営管理体制を敷くことで経営の公平性や透明性を確保いたします。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社では、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制の強化策として、代表取締役社長を委員長とする「リスク・コンプライアンス委員会」を設置しております。同委員会は四半期に1度開催され、発生及び想定されるリスクの評価や対応等に関する審議を実施しております。同委員会にて、サステナビリティの対応方針や実行計画の策定、これに基づくサステナビリティ推進活動の進捗の把握・評価・検証などを行い、取締役会の監督のもとサステナビリティ推進に取組んでおります。
(2)戦略
当社の持続的成長には、顧客の多種多様なニーズに対応できる高い意欲と技術力を備えた技術者及び事業を支えるコーポレート職まで、様々なバックグラウンドと知見を持つ人材が、当社の価値創造の最大の源泉であると考えております。よって当社では人材戦略として以下の取組みを実施しております。
① 教育・研修制度の整備
当社の各種業務を遂行するためには、その難易度に応じたスキルや知識が必要となります。このため社内でのOJTのみに頼らず社外講習等を受講する等で最新の知識を習得し、これを業務に活用する動きを続けております。一方で次代を担う人材育成を目的として、2024年6月期より階層別研修を新設して新たなリーダーの育成と共にコンプライアンス教育にも注力しております。
② 採用活動
新卒採用においては、採用支援業者との協力に加え、従業員の出身大学等への働きかけにも注力して前途有望な人材の採用を推進しております。一方、中途採用においては、人材紹介会社との連携強化を行うと共に、一部の部署では派遣人材を育成後に正社員として登用する事例が増加する等、社内の人材ニーズに採用の間口を拡大して対応しております。
③ 働きやすい環境づくり
当社では働き手の待遇改善を積極的に行い、定着率の向上につなげております。2023年6月期に取組み済みの年間休日の増加に加え、給与改定、残業時間削減等の待遇改善を実施しました。働き方改善策として時短勤務等の柔軟な働き方に加え、育児、介護休暇の取得推奨にも注力しております。また、ハラスメント防止対策としての内部通報制度に加え、様々な従業員の悩みへの対応を目的として人事相談窓口を設置して取組むことにより、離職率は低下の傾向にあります。
(3) リスク管理
当社では、サステナビリティに関するリスクを含むリスク全般について、リスク管理の全社的推進と必要な情報共有を図ることを目的とし、原則四半期に1回開催しているリスク・コンプライアンス委員会において、発生したリスク及び予想されるリスクの評価や対応等に関する審議をしております。同委員会において、サステナビリティに関するリスク及び機会を識別、評価し、発生可能性と影響度合により優先順位付けを行って、回避、軽減するか受容するか等の対策の決定を行うとともに、対策の進捗を管理しております。また、災害等により危機的状況下に置かれた場合でも、重要な業務が継続できるよう、同委員会内に部門を横断したBCP検討チームを設置し、必要な対策の策定と改善に向けた検討を継続的に行っております。なお、同委員会の審議結果については取締役会に報告しております。
(4) 指標及び目標
当社では、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
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指標 |
目標 |
実績(当事業年度) |
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(注)1.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。
2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
有価証券報告書に記載した事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)市場環境に関するリスク
① 自動車業界の構造変化に伴う業績変動リスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社の主要事業である信頼性評価事業は、自動車業界が主要な顧客であり、当社の業績は同業界の研究開発の動向及び生産動向に強く影響を受けております。今後、同業界の業界構造変化による研究開発の動向及び生産動向の大幅な変動、並びに他業種企業が同業界に新規参入することにより既存の同業界企業との間でシェア争いが発生した結果、いわゆるゲームチェンジが起こることにより同業界の構造が大きく変化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
この影響を最小限に留めるべく、積み上げてきた実績・技術を背景に、引き続き顧客基盤の拡充を図るとともに、新たな分野への進出による事業拡大を進め、同業界への依存度低減を図って参ります。
② 技術革新に関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社の事業分野においては、自動車業界をはじめとして新しい技術が急速に発展しております。
当社においても当社事業分野における技術革新に対応するために、研究開発に対して多くの経営資源を投入しております。加えて、学会の講演や各研修への参加、社内の定期的な勉強会等を通じて、技術革新の動向を把握するとともに、それに対応したサービスの提供ができるよう努めております。
しかしながら、当社の研究開発の成果が顧客要求水準を満たさず、顧客の求めるサービスとして適用されなかった場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
③ 重要な設備投資に関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社の事業分野においては、試験設備等が重要な差別化要因となっており、当社では他社との差別化を図るため積極的な設備投資を行っております。しかし、市場環境の変化等により試験設備が陳腐化し投資額の回収が見込めなくなった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
④ 競合他社、新規参入に関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社は、独立系検査会社であり第三者機関としての責務を果たすため、日々技術力の向上に努め、顧客の高水準のニーズに対応することで、競合他社と比較して優位性を確保できていると考えております。
また、既存顧客との関係強化や新規顧客への取引拡大により、各事業における競争優位性を維持・向上させる事業活動を行っております。
しかしながら今後、新規参入企業の増加や当社の技術力を上回る国内外の企業が出現する可能性があります。これらにより、市場競争が激化し、当社が市場における競争力を維持できない場合や、顧客が競合他社のサービスに移行した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 内製化に関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社は、顧客との連絡を密に取り顧客の開発動向に係る方針転換について情報収集に努め、受注減少のリスクを低減するとともに顧客のニーズに対応する提案を行い、受注拡大に努めております。
しかしながら、当社の主要事業である信頼性評価事業や微細加工事業について、顧客が自ら設備投資を行い、あるいは顧客グループ内企業でそれらの事業を行う等の内製化が推進された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑥ エネルギー価格の変動に関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社の信頼性評価事業における各種検査装置や微細加工事業におけるレーザ加工機といった当社設備の稼働コストは、電力等のエネルギー価格高騰による影響を受けております。これらに対して、電力等のエネルギー消費量を抑えるなどの原価低減施策や販売価格の見直しなどによって対応できるよう努めておりますが、電力等のエネルギー価格の高騰に対応した十分な原価低減施策や販売価格の改定を行えない場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(2)事業に関するリスク
① 品質に関するリスク (顕在化の可能性:大/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社では、高品質で顧客満足度の高いサービスが提供できるよう、従業員への教育による技術レベルの向上に努めておりますが、顧客が求める品質水準に至らない場合や、満足度の低下により受注の減少が生じた場合、提供したサービスに予期せぬ欠陥等が発生し、その欠陥に起因して顧客が被った損害の責任を負うこととなった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② 特定顧客への依存リスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社の主要事業である信頼性評価事業においては、自動車業界の顧客(特にトヨタ自動車グループのサプライチェーンに関連する企業群)向けの売上割合が高い状況です。株式会社デンソーとは長期間に亘って取引関係を構築しており、同社向け売上高は2024年6月期において631,778千円となり、当社売上高の17.4%を占めております。
当社は、自動車の電動化・電装化等により新たに見込まれる需要の取り込みや、自動車業界以外への業界シェア拡大に努めておりますが、同社グループの業績等が変動した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
③ 継続的な受注獲得に関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社の事業が成長していくためには、継続的な受注獲得及び顧客による継続的なサービスの利用が重要であると考えております。これらを促進するために、提供サービスの拡大及び品質の向上に加えて、潜在的顧客及び受注獲得のための最適な営業活動の遂行に注力しております。
しかしながら、需要に応じたサービスが提供できない場合や、営業活動による効果が十分に得られない場合には、新規受注獲得や既存顧客からの受注が減少する可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 人材確保及び育成に関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社の事業は、高い意欲と技術力を備えた人材に支えられています。従って、優秀な人材の確保・育成・定着率の向上が経営上重要となります。しかしながら、労働市場においては、少子高齢化による労働人口の減少により、中長期的には人材の確保が難しくなる傾向にあります。
当社といたしましては引き続き優秀な人材の確保に努め、人材育成に注力して参ります。また、安全で働きやすい職場環境づくりに向け、適切な労働時間管理、長時間残業の撲滅、ハラスメント予防に関する社員教育の徹底などにも取組んでおりますが、雇用情勢や経済環境によっては、計画どおりの人材確保・育成ができず当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 内部管理体制に関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社では、企業価値を継続的、安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が不可欠であると認識し、業務の適正性及び財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムの充実・強化に努めております。
しかしながら、事業の拡大ペースに応じた内部管理体制の整備に遅れが生じた場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 特定時期への売上の集中リスク (顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社の主要事業である信頼性評価事業においては、顧客の決算期である3月に納期が集中することから、売上高及び利益は第3四半期(1月-3月)に増加し、第4四半期(4月-6月)には減少する傾向にあります。また、第3四半期に予定していた試験や検査の完了及び検収が遅延した場合には、売上高及び利益の計上が第4四半期にずれることにより、当社の四半期の業績に変動が生じる可能性があります。
当社は特定の事業分野への依存を避けるべく、常に新たな技術分野への事業展開を図っておりますが、信頼性評価事業においては自動車業界における電動化の進展等により需要の拡大が見込まれることから、当面の間は当社の主要事業であり続けることが想定されるため、上記の変動のリスクは継続することが予想されます。
⑦ 顧客の与信リスク (顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社の主な顧客は大手企業で顧客数は多数に及びます。当社は、与信管理規程を制定し、取引開始時に信用状況の調査及び与信限度額を設定し、顧客ごとに期日及び与信残高を管理するとともに、年1回与信限度額を見直し、財務状況の悪化等による回収懸念の早期把握及び軽減を図っております。
しかしながら、顧客の業績悪化により回収遅延や回収困難となった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑧ 減損会計適用に関するリスク (顕在化の可能性:小/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社は、各事業所における信頼性評価試験・分析装置をはじめとした有形固定資産を所有しております。これらの資産については、減損会計を適用し、減損の兆候がある場合には当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかを検証しており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っております。
しかし、将来の環境変化等により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 繰延税金資産の回収可能性に関するリスク (顕在化の可能性:小/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社は、将来減算一時差異に係る繰延税金資産を計上しており、その回収可能性を評価しておりますが、繰延税金資産の計算は、将来の一定期間における事業計画に基づく課税所得に関する見積りを含めた様々な予測・仮定に基づいており、実際の結果が予測・仮定とは異なる可能性があります。事業計画の達成度合い等により、当該見積りを見直し、繰延税金資産の全部又は一部の回収ができないと判断した場合には、繰延税金資産の減額と税金費用の計上が必要となり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)法的規制に関するリスク
① コンプライアンスに関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社では、事業活動が法令及び内規を遵守して遂行されるよう、コンプライアンス規程を整備し、法令遵守の啓蒙活動や内部監査などを通じた検証を行っております。しかしながら、当社の役員及び従業員、外部委託先等の第三者が法令等に違反した場合や、社会的に不適切とみなされる行為に及んだ場合には、法令等による処分や処罰、社会的制裁、訴訟の提起を受ける可能性があり、当社の社会的信頼が損なわれるだけでなく、従業員の身体的、精神的不安や金銭的損害を被ることにより、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 知的財産権に関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社では、特許権の取得により知的財産権の保護に努めておりますが、保護が不十分であった場合あるいは違法に侵害された場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、他社の有する知的財産権についても権利を侵害しないよう注意を払っておりますが、万が一、他社の有する知的財産権を侵害したと認定され、損害賠償等の責任を負担する場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(4)その他のリスク
① 災害の発生等によるリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
地震等の自然災害や火災・事故等により、当社の従業員や試験設備等が被害を受ける可能性があります。これに伴う売上高の減少や試験設備等の修復又は代替のための費用が想定以上に発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② 情報漏洩によるリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社では、顧客の機密情報を取扱っており、情報セキュリティに関する規程等の策定、機密データへのアクセス管理のほか、セキュリティエリアへの電子鍵による入退室管理や監視カメラでの出入り口の監視を行うなど情報管理の徹底を図っておりますが、万が一、情報漏洩等が発生した場合は、社会的信用失墜等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
③ 地政学的リスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の悪化により引き起こされる物価の高騰や為替相場の変動等により景気動向が減速することで、顧客の業績悪化や投資行動が急激に変化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
④ 主要株主に関するリスク (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社株式の40.01%を当事業年度末日現在所有する主要株主である志方廣一氏は当社の創業者であり、当社取締役であるため、今後も当社の安定株主と認識しております。引き続き当社の企業価値向上に努めて参りますが、将来的に何らかの事情により、主要株主が保有する株式数が減少した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における総資産は4,140,730千円となり、前事業年度末に比べ962,959千円増加いたしました。
流動資産は2,894,005千円となり、前事業年度末に比べ819,453千円増加いたしました。これは主に新株発行等に伴う「現金及び預金」639,265千円増加、「売掛金」94,118千円増加、「電子記録債権」56,251千円増加、及び「仕掛品」48,902千円増加によるものであります。固定資産は1,246,725千円となり、前事業年度末に比べ143,506千円増加いたしました。これは主に分析・試験設備等の取得に伴う「工具、器具及び備品」68,589千円、「機械及び装置」33,396千円増加、及びPatentix株式会社との資本業務提携の出資等に伴う「投資有価証券」40,008千円増加によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債は984,751千円となり、前事業年度末に比べ187,349千円増加いたしました。
流動負債は689,111千円となり、前事業年度末に比べ201,188千円増加いたしました。これは主に「未払法人税等」108,896千円増加、「未払費用」30,143千円増加、分析・試験設備の取得等に伴う「未払金」22,067千円増加、及び「預り金」10,174千円増加によるものであります。固定負債は295,640千円となり、前事業年度末に比べ13,838千円減少いたしました。これは主に「1年内返済予定の長期借入金」への振替に伴う「長期借入金」30,000千円減少、流動負債の「リース債務」への振替に伴う「リース債務」14,611千円減少、及び「退職給付引当金」25,068千円増加によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は3,155,978千円となり、前事業年度末に比べ775,610千円増加いたしました。
これは主に株式上場に伴う公募増資により「資本金」292,100千円、「資本剰余金」292,100千円増加、「当期純利益」270,042千円の計上及び剰余金の配当77,700千円によるものであります。
② 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症により引き起こされたパンデミックの脅威から脱し、当社を取り巻く様々な環境はパンデミック前の状況にまで回復しております。急激な為替変動や物価上昇圧力の高まりなどの景気下押し要因がある中で、政府による雇用対策や所得環境改善の経済刺激策が実施され、また観光業やサービス業を中心とした活況も見られ、相対的に景気回復は進んでいるものと思われます。一方、国際情勢では、米中貿易摩擦や未だ収束しない地政学リスクは解消せず、不確実性は依然として高く、先行きが見通しにくい状況が続いております。
当社の主要顧客が属する自動車業界は、環境問題への対応として掲げられたカーボンニュートラルの目標達成に向けた自動車の電動化(EV、PHV、HV等)が進められております。電動自動車には多くのパワー半導体が実装されるため、電動化が進むにつれ、パワー半導体需要は急増するものと考えられます。また、半導体メーカーはより高効率なパワー半導体を開発するため、シリコンカーバイド(SiC)をはじめとした新しい素材による半導体を開発する潮流となっております。
このような状況で、当社の主力事業である信頼性評価事業では、分析・解析分野と断面研磨分野において受注が好調に推移し、全社の業績を牽引しました。
この結果、当事業年度の経営成績は、売上高3,623,929千円(前年同期比10.7%増となりました。営業利益は主に労務費の計上により売上原価2,521,034千円(同4.7%増)を計上、給料手当、研究開発費を中心とした販売費及び一般管理費を721,571千円(同28.2%増)計上した結果、381,323千円(同25.3%増)となりました。また、経常利益は、営業外収益は主に保険金収入の計上により1,555千円(同41.0%減)を計上、営業外費用は主に上場関連費用の計上により16,199千円(同38.9%増)を計上した結果、366,679千円(同24.1%増)となり、法人税控除後の当期純利益は270,042千円(同28.5%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(信頼性評価事業)
信頼性評価事業では、主に分析・解析、環境試験、断面研磨、パワーエレクトロニクス評価の分野に分かれます。
分析・解析分野では、従来の検査機器より高度な分析・解析が可能な機器の稼働が高位で推移しました。環境試験分野においては、恒温恒湿試験を始めとする多くの試験種で堅調な業績推移となりました。断面研磨分野では、研磨技術の向上による付加価値の創造や、作業完了までの工程の効率化を図ることで顧客ニーズへの対応力を強化し、多くの受注を効率よく処理することを可能としたことで、好調な業績推移となりました。パワーエレクトロニクス評価分野では、半導体開発の端境期により一時的に受注が伸び悩みましたが、それをカバーする受注を獲得することで前事業年度を上回る業績となりました。
この結果、当事業年度の経営成績は、売上高3,195,273千円(前年同期比11.2%増)、営業利益984,639千円(同24.1%増)となりました。
(微細加工事業)
微細加工事業では、試作品加工における顧客ニーズへの対応力を強化したことや、信頼性評価事業部門とのコラボレーション案件の受注が伸びたことで、前事業年度を上回る業績となりました。
この結果、当事業年度の経営成績は、売上高277,266千円(前年同期比13.3%増)、営業利益98,759千円(同221.1%増)となりました。
(その他事業)
その他事業では、表面処理加工事業において、主要顧客からの安定的な受注により堅調な業績推移となり、ゼロ・イノベーション事業においては、コンサルティングサービスや装置等に使用する消耗部材の販売等が堅調に推移し業績を押し上げました。一方で、バイオ事業ではコロナ禍で好調であったペット購買需要が顕著に減衰したことによる遺伝子検査の受注低迷や、競合他社の参入により価格競争局面に入ったことが影響し、業績を押し下げました。
この結果、当事業年度の経営成績は、売上高151,389千円(前年同期比2.5%減)、営業利益11,975千円(同67.5%減)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により637,627千円増加、投資活動により429,881千円減少、財務活動により431,516千円増加の結果、前事業年度末に比べ639,262千円増加し1,738,234千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は637,627千円(前年同期は270,752千円の増加)となりました。これは主に「税引前当期純利益」373,620千円、「減価償却費」318,087千円の資金の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は429,881千円(前年同期は197,381千円の減少)となりました。これは主に「定期預金の払戻による収入」164,525千円の資金の増加と、「有形固定資産の取得による支出」374,142千円、「定期預金の預入による支出」164,528千円、「投資有価証券の取得による支出」50,447千円の資金の減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は431,516千円(前年同期は222,164千円の減少)となりました。これは主に「株式の発行による収入」574,640千円の資金の増加と、「配当金の支払額」77,700千円、「長期借入金の返済による支出」30,000千円、「リース債務の返済による支出」27,745千円の資金の減少によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
イ.生産実績
当社が提供する主要なサービスの性格上、当該記載が馴染まないことから、記載を省略しております。
ロ.受注実績
当社が提供する主要なサービスは、受注から売上計上までの期間が短期間であり、受注実績と販売実績に大きな乖離が生じないため、記載を省略しております。
ハ.販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
|
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
信頼性評価事業 |
3,195,273 |
111.2 |
|
微細加工事業 |
277,266 |
113.3 |
|
その他 |
151,389 |
97.5 |
|
合計 |
3,623,929 |
110.7 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
当事業年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社デンソー |
684,559 |
20.9 |
631,778 |
17.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、売上高及び売上高営業利益率を重要な経営指標と位置づけ、各種経営課題に取組んでおります。
当社の信頼性評価事業のビジネスモデルの特徴として、固定比率の高いコスト構造となっており、売上高増が営業利益増に直結する傾向にあります。
なお、当期の売上高は信頼性評価事業の受注が堅調に推移したことにより3,623,929千円となり、売上高の伸長により売上高営業利益率は10.5%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の資金需要の主なものは、設備投資資金として、主要事業である信頼性評価事業に係る信頼性評価試験及び分析・故障解析に関する新しい分野を開拓するための試験設備の購入であり、運転資金として、事業を拡大するための消耗部材の購入、サービスや技術向上を目的とする人員を確保するための人件費や外注費であります。
資本の財源及び資金の流動性について、設備投資資金及び運転資金は主として自己資金で充当し、必要に応じて借入等による資金調達を実施することを基本方針としています。
当事業年度において、設備投資資金、株式上場関連費用及び運転資金は自己資金を充当し、現金及び現金同等物の残高は1,738,234千円となっております。
当社は、引き続き強固な財務基盤を構築するため、有利子負債の削減に努め、健全な財務状態、安定的なフリーキャッシュ・フローの創出を図り、成長を維持するために将来必要な設備投資資金及び運転資金を調達する予定であります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
イ.繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産については、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
ロ.固定資産の減損処理
固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討を行っておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社は、事業の柱となる信頼性評価事業、微細加工事業を支えるべく、研究開発活動を推進しており、当事業年度における研究開発費は
なお、研究開発活動は事業セグメントを横断する内容となっているため、全社として研究開発活動の概要を開示しております。
<受託研究及びコンサルティング>
・エレクトロマイグレーション現象やはんだ実装に関連した領域に加え、腐食に関連した受託研究案件を、当社の得意とする電気化学系の技術・知見を活かし、研究開発部の人的リソースを使って対応いたしました。本件は当部門が技術的な窓口となり、当社事業部門と連携することで、事業部門の売上高にも貢献いたしました。
・当社内の優秀なメンバーの知見を活かし、車載用電子機器を中心とした様々な種類のECU(エンジンコントロールユニット)やMCU(マイクロコントローラ)に対するノイズ対策についてのコンサルティング及び有償セミナーを実施いたしました。
<信頼性・分析関連>
・電子部品の実装後の信頼性試験で発生するクラックは電子製品の寿命や信頼性に大きく影響を及ぼします。このクラックの発生メカニズムを解明することは電子機器の寿命予測において重要な知見をもたらします。現在、当社はこのクラックの発生メカニズムを解明するために、さまざまな部品の接合状態(チップ抵抗、チップコンデンサ、SOP(Small Outline Package)、BGA(Ball Grid Array)、半導体とリードフレームの界面など)を観察し、観察結果に人工知能技術を取り入れた新しい不具合解析手法を提供するアプリケーションの開発に注力しております。研究成果については2024年4月に開催された第16回電子回路世界大会(ECWC-16)にて発表いたしました。
・二次電池チームにおいては、当社が特許を保有している水系電解液を応用として電気二重層キャパシタを試作しました。試作することで電極構造による性能変化を捉えることができ、電池の品質性能に関わる要件の一端を知見として蓄積することができました。試作品による成果は日本エネルギー学会誌(2024年2月号)に投稿し掲載されました。
・電池の寿命予測に関する研究として、固体電池のインピーダンス測定の精度改善に取組んでいます。当社は実電池のインピーダンス測定はまだまだ正確性に欠け、正しく測定する需要はあると認識しています。インピーダンスを正しく測定することで、電池の寿命を予測し、将来的に電池交換における指標となることを期待しています。当該技術についての現時点での研究成果は2023年9月の電池討論会などで発表いたしました。
<製造技術関連>
・研磨業務の業務効率改善と技術の伝承を目的とした、研磨支援装置の開発を開始いたしました。アーム型ロボットに対し、実研磨(精度±100μm)での対応が可能となりました。現状では人が研磨状態を確認しながら作業をロボットに対応させるレベルですが、将来的に自動で研磨作業が対応できるレベルに向けて改良・調整中であります。