文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
KeePerブランドの確立と普及を目指し、さらに積極的な営業展開を進めていきます。
2025年6月期 見通し
新年度(2024年7月1日から2025年6月30日)の見通しは、売上高245億円(前事業年度比19.1%増加)、営業利益70億円(前事業年度比15.1%増加)、経常利益69億5千万円(前事業年度比14.8%増加)、当期純利益は48億円(前事業年度比14.7%増加)の増収増益を見込んでおります。
事業分野別の見通しは次のとおりです。
<キーパーLABO運営事業>
今期において新店30店舗を計画していることに加え、KeePerの需要拡大と共に全国各地に広がっているキーパープロショップやカーディラーへのサポート強化を図ります。
(今後の新規出店予定)
現在予定されている新規出店は下記のとおりです。
上記の通り、候補地の確保がほぼ出来上がっており、出店時期を遅らせないよう着実に店舗開発を進めていきます。
(今後の既存店改装予定)
また、お客様の利便性を図るため、「LABOアプリ」を2024年中に上市出来るよう準備を進めています。加えて、「予約システム」の利便性向上と新機能追加、そして効率的な運営を行うため、「新POSシステム」の稼働も控えております。
店舗拡大には組織体制の強化が重要です。うまく機能するようになれば、さらなる店舗拡大が可能となります。店舗スタッフとの密なコミュニケーションを通じてお客様ニーズを発掘し、人材育成に力を入れることで、技術・知識を軸としたサービスの向上を図っていきます。
最後に一番重要な店舗スタッフのマインドの部分である「お客様喜んでいますか?」のLABOの大切なカルチャーをしっかり継承し、「顧客満足」と「従業員満足」の同時実現を継続していきます。
<キーパー製品等関連事業>
KeePerコーティングのニーズ拡大に合わせて、導入店舗の増加および新規開拓を積極的に進めて行きます。
キーパープロショップを中心とした「アフターマーケット」においては、フレッシュキーパーをさらに拡大させる営業活動が大きな軸となります。
「新車マーケット」では、純正採用されているスバル、トヨタ、ホンダ、三菱の新車販売店に向けて、KeePerコーティングの拡大が営業活動の主要な軸となります。また、KeePerの純正採用を新車自動車メーカーに拡大する営業活動も進めています。
「車以外のコーティング」では、大手ビジネスホテルにおいて、「お風呂キーパー」が全室採用されております。今後も家庭用品周りのラインナップ製品のさらなる充実を進めて行きます。モバイル向けのコーティングは「KeePerコーティング for docomo select」だけでなく、他の通信事業者や家電量販店への拡大も進めていきます。
「海外」においては、初のキーパーラボを2024年8月1日に「KeePer LABOシンガポール店」としてオープンさせました。シンガポールの自動車業界からも注目を浴び、KeePerを導入したい企業・店舗が出始めております。また、東南アジア各国からもKeePer導入の具体的な商談が増えており、シンガポールでの事業発展に伴い、東南アジアを中心にKeePer LABOの店舗と市場の拡大を目指していきます。
当社は、サステナビリティへの取り組みを、環境や社会課題の解決、および事業の持続的な発展を両立させる重要な活動であると位置づけ、サステナビリティ活動を通じて社会と共に成長することを目指します。当社取締役会は、このような取り組みに関する経営の基本方針として、2023年6月に「サステナビリティ基本方針」を策定しました。
(1)ガバナンス
サステナビリティ推進体制として、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。当社として特に重要なサステナビリティ項目であると委員会で決定した「環境・気候変動」「情報セキュリティ」「人的資本・多様性」の3つを、独立したワーキンググループとして委員会の傘下に設けています。
委員会は各ワーキンググループ、サブグループのリーダーによって構成されています。各ワーキンググループにはそれぞれの課題に関連する部門から、多様なメンバーが参加し、取締役や部長がリーダー、サブリーダーを務めます。事業現場におけるリスクと機会を把握しやすい体制としています。
サステナビリティ課題に対する取り組みや、目標とすべき指標等についても議論を行い、サステナビリティ委員会を監督する取締役会に報告、提案を行います。そして重要な方針については取締役会で検討、議論、決議を実施します。
当社にとって重要なサステナビリティ課題として、①環境・気候変動、②情報セキュリティ、③人的資本・多様性を特定しました。理由としては、①地球環境への貢献と持続可能な未来を確立するため、当社として出来ることを実行に移すため、②顧客情報を保護することで顧客の信頼と事業継続性の確立につながり、情報セキュリティの強化が不可欠なためです。③人財である従業員の成長と働きやすさを支援し、多様性を尊重することで、持続可能なビジネス運営を推進し、社会と環境への貢献を目指すためです。
2024年6月期は、サステナビリティ基本方針を作成した初年度として、私たちにとって重要なスタートの年となりました。しかし、何をどう進めるべきか試行錯誤しながらの一年であり、また、全員が当事者意識を持つことの重要性を再認識する機会になりました。その結果、期待していたほどの前進を実感することが難しい場面もありましたが、来年度こそは確固たる成果を上げ、サステナビリティの取り組みをさらに進化させていく所存です。今後は、全社員が一丸となって取り組み、持続可能な未来に向けた具体的な成果を確実に実現してまいります。

(2)重要なサステナビリティ課題
①環境・気候変動
1)戦略
2050年カーボンニュートラルに向け、温室効果ガス排出量の削減計画を策定しました。今後は気候変動に関するシナリオ分析を行い、この分析を通じ事業に影響をおよぼす重要なリスクと機会を特定し、経営に反映していきます。
また、温室効果ガス削減だけの取組みだけでなく、環境負荷を低減した素材の使用拡大等の取り組みをさらに加速させており、環境規制が厳格な欧州・ドイツを拠点とする、当社のケミカルサプライヤーSONAX社と一体となり、環境配慮の動きを先回りした意見交換、開発を行っております。
具体的な気候変動に寄与する商品開発の例として、船舶の船底に海洋生物の付着を抑制し、船舶の燃費改善に役立つコーティングや、EV充電中に水を使わない洗車の開発を鋭意行っております。
2) 指標及び目標
2050年カーボンニュートラル、温室効果ガス排出量「2030年度までに 2013年度比50%削減(スコープ1・2)」、「2050年度までに実質ゼロ(スコープ1・2・3)」という日本政府の長期目標を達成するため、再生可能エネルギーへの切り替えも含めた、削減策の検討にも注力していきます。
2023年5月から正式に温室効果ガス排出量を測定し始め、2024年6月期が通年として初めての実績となるため、2025年6月期より前年比較が可能となります。
3)ガバナンス
取締役会は、気候変動を含む環境に関する監督機関としての役割を担っており、取締役会の諮問機関としてサステナビリティ委員会が開催されます。委員会にて諮問された事項は、取締役会にて最終決議されます。取締役会では、気候変動などに関する目標への進捗をモニタリングし、目標に関する進捗の監督責任を負います。
②情報セキュリティ
1)戦略と目標
当社が一番注力しているサステナビリティ課題です。情報セキュリティリスクへの対策や、事業活動で用いる情報資産の適切な取り扱いを重要な経営課題と捉えております。サプライチェーンをもターゲットとするサイバー攻撃の脅威・リスクから、情報資産を守り、お客様の安全・安心を確保するため、「情報セキュリティ」の基盤強化と継続的な改善に努めます。
現在、ITインフラ調査を含めた環境整備を行っており、指標を用いた目標及び実績は現在設定しておりません。まずは引き続き環境整備を優先し、早期に成果を評価し、適切な指標を設定できるように取り組んでいきます。
③人的資本・多様性
1)戦略
『日本に新しい洗車文化を』の企業理念のもと、CS(お客様満足:Customer Satisfaction)とES(従業員満足:Employee Satisfaction)の同時実現を事業の源としております。そのため、成長の原動力は人財であることを明確にし、すべての従業員が安心して働ける環境、人材教育を整えてまいります。
まず、個々の違いを尊重し、受け入れ、それを活かすことで、新たなアイディアや価値を生み出し、組織全体が多様なバックグランドを持つ従業員と共に活気に満ちた環境で働けるように促進していきます。また、従業員が現在の業務に必要なスキルを習得するだけでなく、将来の成長に備えるために、継続的な研修プログラムを提供してまいります。
2)指標及び目標
女性活躍の推進
企業の成長のためには多様な視点を持つ多様な従業員の活躍が不可欠であると認識したうえで、特に女性活躍推進にターゲットを置き、2025年度(2026年6月期)までに女性取締役比率20%、女性管理職比率20%の目標を掲げております。
コーティング業務は性別に関係なく活躍できる分野であり、毎年開催する技術コンテストでは女性が3年連続でチャンピオンになっています。女性が活躍できる環境を広く認知させることで、女性従業員比率の改善を目指します。
役員に占める女性の割合
女性管理職比率(課長以上の割合)
※将来の管理職候補(店長、係長)女性比率
女性従業員比率
育児休暇復職率・男性育児休暇取得率
2023年6月に出産・育児などによる離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児を両立できる社内風土醸成のため、特に男性従業員の育児休暇取得率を2025年度に30%に引き上げる目標を設定しました。その結果、初年度となる2024年6月期に前倒し達成しました。
多様な人材が活躍できる職場環境、人材教育
当社は、多様な社員が能力を最大限に発揮し活躍できる企業を目指し、女性だけでなく、さまざまな年齢、国籍、性別、価値観を持つ人財が活かされる組織作りを目指しています。従業員がより効果的に学び成長するために、社内外向けの研修に参画することで、メンタリングやコーチングの機会を提供し、実践的に技術を習得しております。さらに今後の海外展開を照準に合わせ、英会話を含めたコーティング以外の研修を強化してまいります。
体制整備の段階であり、指標を用いた目標及び実績は現在設定しておりません。まずは環境や制度の整備を優先し、成果を評価し、適切な指標を設定できるように取り組んでいきます。
(3)リスク管理
当社は、事業の継続性、企業価値の向上、持続的発展を妨げるリスクに対処するために、毎月の幹部会で事業ごとのリスクを特定・分析し、対応策を検討しています。
また、代表取締役社長が委員長を務める「リスク管理委員会」において、全取締役、執行役員が外部要因リスクも含めて協議し、取締役会監督のもとで、適切なリスク管理を行います。中長期的に重要なリスクは、「サステナビリティ委員会」でも協議し、取締役会に報告され、業務執行に反映されます。
事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営戦略リスク
① 政治・経済状況の変動にかかわるリスク
当社の製品・サービスは主に日本で消費、利用されており、予期せぬ景気変動、政治・政策の動向は、当社の製品・サービス需要に悪影響を及ぼす可能性があります。当社製品・サービスは日用品としての役割が浸透しつつありますが、嗜好品として需要に影響を与える可能性があります。
② 技術環境・産業構造の変化にかかわるリスク
当社のキーパー製品等関連事業における販売先の多くは、ガソリンスタンド向けとなっております。そのため、同業界の再編成、事業戦略の転換並びに動向等によっては、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 競合にかかわるリスク
当社は製品の「開発」「卸販売」事業、サービスを展開する「直営店運営」事業、また「技術・ノウハウの研修」事業、それぞれが相関性を持ったすべてを網羅しているところに強みを持ったビジネスモデルです。現在のところ、このようなビジネスモデルを持った競合は存在しません。しかし、その一部の部門において当社の製品・サービスを上回る付加価値を生み出す競合先が出現する可能性があります。市場で競争力を高めるため、研究開発の増強、販売・マーケティング・サービスの一層の強化をしていく必要があると考えております。
(2) 事業運営リスク
① 人材の採用・保持にかかわるリスク
当社のビジネスモデルは、キーパーLABO運営事業で人材を確保し、実際の店舗運営の中で施工技術と接客術、マネジメント力を習得します。そこで得られた技術とノウハウを、キーパーLABO店舗の責任者への配置又は、キーパー製品等関連事業に配置した社員が研修活動をしていく形を、人材教育のステップとしております。そのため、キーパーLABO運営事業の新規出店のスピードが上がってきた場合、技術及びノウハウを習熟した社員に育成するためには、時間を必要とするため、当社の成長スピードの足かせになる可能性があります。
② 特定取引先への依存にかかわるリスク
当社の主要な取引先であるSONAX社は、ドイツに本社を置くホフマン企業グループの中核をなす同国内で約50%のシェアを持つドイツ最大の自動車ケミカルメーカーであります。当社とは2001年からボディガラスコーティング製品において共同開発を行っております。
当社は設立後、間もなく独自でケミカル製品の開発を行っておりましたが、すべての製品を自主開発するには膨大な開発費が必要であったため、SONAX社と共同で開発を行ってきた経緯があります。
当社の主力商品の一つであるキーパーコーティングのうち、ボディガラスコーティングの材料であるKeePerブランドのケミカル製品(DKC、レジン2)をSONAX社と共同開発し、その製造をSONAX社に製造委託しております。
当社のボディガラスコーティングのほとんどに、SONAX社が製造するケミカル製品が使用されており、当該製品の仕入高は2024年6月期の当社全体の年間仕入高の41.5%であります。
現在、SONAX社との取引関係は良好かつ安定的に推移しておりますが、同社の事業政策や事業再編等により取引関係の継続が困難となった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 研究開発にかかわるリスク
顧客の要求・期待を上回るような製品を開発し続けられなければ、キーパーの製品は陳腐化し、市場シェアが縮小すると同時に、新製品の事業及び市場の拡大が妨げられます。また(2)②の通り、SONAX社の研究者と、当社の製品開発部隊と日々綿密な共同開発を行っておりますが、同社の開発リソースの配分変更が起こった場合、一時的に開発スピードに影響を及ぼす可能性があります。
④ 原材料・部品調達にかかわるリスク
SONAX社はドイツを拠点にしており、欧州を取り巻く地政学的なリスクが発現した際にSONAX社の開発、製造に影響を及ぼし、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 事実と異なる風説が流布するリスク
当社のホームページは、当社のサービス・店舗を利用しようとするお客様にとって重要な判断材料となります。実際に来店動機の最上位にインターネットでの情報が上げられており、インターネットなくして効果的な集客は考えられない状況です。他方、インターネット等を通じて当社の製品・店舗・役職員に対する事実と異なる悪評・誹謗・中傷等の風説が流布される可能性もあり、この場合、当社への信頼及び企業イメージが低下し、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、本リスクの顕在化する可能性、程度及び時期を具体的に予測することは困難であります。
⑥ 店舗の賃貸物件への依存にかかわるリスク
当社の直営店は原則として土地を購入せず、土地の有効活用を考える地主等から賃借しています。契約に際しては相手先の信用状態を判断したうえで出店を行いますが、賃借期間が長期にわたる場合が多く、当該長期の契約期間中に倒産その他賃貸人の信用状態の予期せぬ悪化等の事由により、契約解除せざるを得ない事態になった場合には、直営店の営業継続が困難になることが想定され、当社の業績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
⑦ 固定資産の減損にかかわるリスク
当社は、「固定資産の減損会計に関する基準」及び「固定資産の減損会計に関する手続」を定め、それを厳格に適用することとしております。そのため、当社の店舗において営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フロー等を算定し、減損の測定等を実施しております。今後、同店舗から得られる損益またはキャッシュ・フローの状況等によっては、減損処理に伴い、当社の業績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
⑧ 知的財産権にかかわる訴訟リスク
当社は、特許権をはじめとする知的財産権の重要性を認識しております。しかし、出願する特許権・商標権等の知的財産権の登録査定を得られない場合、または当社の認識していない知的財産権が成立し、第三者からの侵害を主張され裁判などの紛争に至った場合には、当社の業績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
⑨ 個人情報管理及びシステム管理にかかわるリスク
当社では、さまざまな情報システムを使用して業務を遂行しており、適切なシステム管理体制の構築やセキュリティ対策を行っていますが、停電、災害、不正アクセス等の要因により、情報システムの障害や個人情報の漏えい、改ざん等の事態が起こる可能性があります。
また、当社が保有・管理する情報は、販売業、サービス業として多数のお客様の個人情報をはじめとする重要なものが多く存在します。これらの情報の保護・管理につきましては、「個人情報保護規程」「情報セキュリティ管理規程」を定め、従業員への教育、セキュリティ対策などの社内管理体制を整備し、情報保護の徹底を図っています。しかし、万一不測の事態が発生し、重要な情報が外部に流出・漏えいした場合は、損害賠償によるコストの発生、社会的信用の低下による営業活動への悪影響など、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 為替にかかわるリスク
当社は、海外から製品の輸入が、2024年6月期全体の仕入高の51.8%となっております。急激な為替の変動に対処できない場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) ガバナンスリスク
① 代表取締役会長である谷 好通氏の依存にかかわるリスク
当社は創業以来、谷 好通氏のスピード感ある経営判断、製品開発能力と強いリーダーシップにより業容を拡大してまいりました。持続的な成長を実現するため、2019年2月12日に賀来 聡介氏を代表取締役社長兼COOに任命し、鈴置 力親氏を専務取締役として、谷 好通氏を支える経営体制を構築しました。この流れを継続する形で高い成長率を維持しながら、事業承継を通じて、完全な依存脱却が出来るように、新たな経営陣を追加配置してまいります。そして、個による強力な指導体制から、集団による集団指導体制を実現していきます。今後とも人材育成、人材獲得を積極的に進めてまいります。
② 内部統制にかかわるリスク
当社は、企業価値の持続的な増大を図るため、内部管理体制の充実に努めております。しかしながら、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業展開や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 偶発的リスク
自然災害・人的災害にかかわるリスク
当社が店舗を展開する、または、事業関連施設を所有する地域において、地震、洪水、台風その他の大規模な自然災害が発生し、店舗等が被災した場合には、営業継続が困難になることが想定され、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度(2023年7月1日から2024年6月30日)における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和や外国人観光客の増加によるインバウンド需要の回復などにより、緩やかな回復基調を示しました。しかし、エネルギー価格の上昇や円安に伴う物価上昇、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の悪化など、依然として先行きは不透明な状況が続いています。
このような環境の中、当社ではKeePerコーティングの品質を従来以上に維持・向上させることが、業績の向上のみならず、将来の発展を目指したKeePerブランドの確立において最も重要であると考えています。
2024年6月期 実績
当事業年度(2023年7月1日から2024年6月30日)におきましては、売上高 205億74百万円(前年同期比20.7%増加)、営業利益61億1百万円(同11.4%増加)、経常利益60億75百万円(同11.0%増加)と最高益を更新する事が出来ました。
事業分野別の状況は次のとおりです。
<キーパーLABO運営事業>
キーパーLABO運営事業の売上は111億81百万円(前年同期比15.8%増加)、営業利益は22億72百万円(同14.0%減少)となりました。
増収減益になった理由は、旺盛な需要に応えるための積極的な店舗拡大と人員強化による先行的な人件費増加が影響しています。今期は15店舗(FC1店舗込み)の出店を実施し、2025年6月期には30店舗以上、さらに来期以降も店舗拡大を計画しています。これは将来の大きな成長を見据えた先行投資です。
また、首都圏にあるキーパーラボ店舗のキャパシティが需要に追い付かず、「予約が取れない」など、お客様に大きなご迷惑をおかけしていました。そのため、昨年度から東京都・埼玉県・千葉県にある既存店舗の近隣に戦略的な出店を行いました。
東京都 埼玉県
この新規出店により、既存店舗は適切にお客様の需要に応えることができるようになりましたが、既存店舗は一時的に前年比を割る現象が起きています。ただし、これまで同様、一定期間が経つと既存店舗においても正常な成長に戻る見通しです。
(TREXキーパー発売開始)
これまでのKeePer最高峰コーティングであるEXキーパーよりも上位に位置する新しいコーティング「TREXキーパー」を2024年1月に販売開始し、6月末までに69台の施工となりました。TREX施工店舗数を増やすのに若干時間がかかっていましたが、「TREXキーパー専用ブース設置」と「TREXマイスターの技術者」の準備が整い始め、2024年6月末において22店舗で施工出来るようになっております。
また、TREXキーパーの導入により、従来の最高価格商品であったEXキーパーがむしろ買いやすい商品と感じられ、お客様にとってより魅力的な商品として受け入れられることで、松竹梅効果によるEXキーパーの施工も伸びることが期待できます。
(各キーパーコーティングの施工台数状況)
EXキーパーは新車登録台数減少の影響から前年比9.9%増加(12,602台)にとどまりましたが、ダイヤモンドキーパーシリーズは中古車や既販車の施工が増加し、51,638台(同15.9%増)となりました。同じく既販車施工の多いフレッシュキーパーとクリスタルキーパーの施工数合計も84,204台 (同12.7%増)となりました。また、各キーパーコーティングのメンテナンスは前年比18.4%増となるなど、今乗っている車をキレイに快適に保つための既販車向けの需要が上がっています。その結果、総来店台数は670,350台(前年同期比9.8%増)、平均単価は16,884円(同5.7%増)となりました。
普通・小型車乗用車 新車登録台数
(キーパーラボ新店開発)
新店開発においては、14店舗の新規出店となりました。当初計画では15店舗を予定していましたが、2024年6月にオープン予定であった神戸岡場店が許認可手続きの遅れにより、8月にずれ込んでおります。
また、キーパーラボFC店については、「青葉台店」が「熊本長嶺店」に県を跨いで移転しています。FC店舗数は合計13店舗で、前年比に変化はありません。2024年6月期末時点でのキーパーラボ店舗数は133店舗となりました。
(既存店の改装)
<キーパー製品等関連事業>
キーパー製品等関連事業の売上高は93億93百万円(前年同期比27.2%増加)、セグメント利益は38億28百万円(同35.1%増)と大幅な増収増益になりました。
キーパープロショップを中心とした「アフターマーケット」では、前年同期比13.7%増加しました。好調の要因は、ガソリンスタンドが中心のキーパープロショップで「フレッシュキーパー」の施工台数が、前年の30万台から約67万台に123%増加したためです。
新車ディーラーを中心とした「新車マーケット」では、前年同期比78.4%増加と大きく飛躍し、製品等関連事業売上の構成比が前期18.1%から25.3%まで伸長しました。
「車以外のサービス」も前年同期比51.4%増加と飛躍しており、構成比が4.6%まで拡大してきました。
「海外」事業では、2024年2月19日に東南アジアの中心基地となるシンガポールにおいて、KeePer技研がマジョリティ出資する合弁会社『SG KeePer』を設立しました。
(キャッシュ・フローの状況)
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は前事業年度末に比べ15億63百万円増加し51億37百万円(前事業年度末比43.8%増加)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は52億79百万円(前事業年度比16億15百万円増加)となりました。収入の主な内訳は税引前当期純利益60億65百万円、減価償却費4億46百万円であり、支出の主な内訳は法人税等の支払額16億34百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は24億95百万円(前事業年度比9億8百万円増加)となりました。支出の主な内訳は有形固定資産の取得による支出20億76百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は12億22百万円(前事業年度比4百万円減少)となりました。支出の主な内訳は長期借入金の返済による支出48百万円、配当金の支払額11億73百万円であります。
該当事項はありません。
当事業年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、仕入価格によっております。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては「第5経理の状況 1財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載のとおりであります。
(2)財政状態の分析
(流動資産)
当事業年度末における流動資産の残高は85億89百万円(前事業年度末比28.7%増加)となり、19億13百万円増加しました。これは主に現金及び預金が15億63百万円増加したこと等によるものです。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産の残高は106億95百万円(前事業年度末比27.3%増加)となり、22億90百万円増加しました。これは主に建物が14億70百万円増加したこと等によるものです。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債の残高は33億55百万円(前事業年度末比19.2%増加)となり、5億41百万円増加しました。これは主に、買掛金が2億73百万円増加、未払法人税等が73百万円増加したこと等によるものです。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債の残高は14億62百万円(前事業年度末比31.2%増加)となり、3億47百万円増加しました。これは主に、建設協力金に基因する長期リース債務2億72百万円の計上、退職給付引当金が67百万円増加したこと等によるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は144億66百万円(前事業年度末比29.7%増加)となり、33億15百万円増加しました。これは主に利益剰余金が当期純利益により44億21百万円増加した一方で、配当により11億73百万円減少したこと等によるものです。
(3)経営成績の分析
(売上高)
当事業年度の売上高は205億74百万円(前事業年度比20.7%増加)となりました。
(売上総利益)
当事業年度の売上総利益は168億16百万円(前事業年度比20.8%増加)となりました。
(営業利益)
当事業年度の営業利益は61億1百万円(前事業年度比11.4%増加)となりました。
(経常利益)
当事業年度の経常利益は営業外収益11百万円と営業外費用37百万円を計上した結果、60億75百万円(前事業年度比11.0%増加)となりました。
(税引前当期純利益)
当事業年度の税引前当期純利益は60億65百万円(前事業年度比11.1%増加)となりました。
(当期純利益)
当事業年度の当期純利益は法人税等16億44百万円を計上したことにより、44億21百万円(前事業年度比11.7%増加)となりました。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
(5)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
キャッシュ・フローの分析は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、運転資金及び設備資金につきましては、自己資金または金融機関からの借入により資金調達することとしております。
なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は51億37百万円、1年内返済予定の長期借入金の残高は48百万円、長期借入金の残高は64百万円となっております。
(6)経営者の問題意識と今後の方針について
① KeePerの品質維持とブランディングについて
「サービス商品」であるKeePer商品は、工場やセントラルキッチンなどで画一的に造られる「製品」ではなく、キーパーLABO及びキーパープロショップなどの店頭で、一つ一つ造り上げられる「サービス商品」なので、その品質維持に難しいものがあります。
しかし、それをKeePerは、材料ケミカルの高い性能と、それを店頭での施工技術力の維持のために、全国20か所のトレーニングセンターを設置し約80名のインストラクターが活動しております。それにも増して、全国のキーパープロショップの皆さんの高品質に対する意識の高さが、施工されたキーパーコーティングの、サービス商品としての高品質の向上と維持を実現しています。その品質の高さは定評があり、キーパーコーティングを施工されたお客様はリピート率約85%という高い率で支持され、その積み重ねと、認知度アップでの新規顧客の獲得と相まってKeePerのガラス系コーティングは市場を拡大しています。
また、この高い品質が競合商品との決定的に差別化された競争力になっており、これをいかに維持していくかが今後の事業の拡大に大きな影響を与えます。その為に、「技術研修」、「キーパー技術コンテスト」や「上達会」が、キーパープロショップや施工店さんたちへの当社の主な活動となっており、キーパーLABO運営事業においては、より一層高い品質を維持することが専門店としての生命線として維持向上に努めています。
キーパーLABOは2024年6月30日時点で133店舗(直営120店舗)、キーパープロショップが6,598店舗と非常に多くの店舗であり、それぞれの店舗の責任において施工がされていて、そのすべての商品品質を均一に高く維持することは極めて困難でありますが、逆に、これを実現することが競合商品との差別化、決定的な競争力であり、KeePerのブランディングそのものです。もちろん、KeePerのブランディングは、全国へのテレビCMやYouTube、Webサイトで広く一般に認知を広げるなどマーケティングを通じても作り上げられております。これは2024年度以降も継続して行きたいと思っています。
② 新車マーケットでのKeePerコーティングの拡大について
カーメーカーやカーディーラーなどの新車マーケットである自動車業界においてもKeePerの拡大をすべく積極的に営業活動がされております。方策としては、KeePer初の”新車用”コーティングとして発売した、「EXキーパー」を中心に導入を推し進めております。その活動は、各メーカーへの純正採用として、まず初めて2020年10月より『SUBARU WダイヤモンドKeePer』が発売され、着実に販売シェアが広がってきております。2021年9月1日からは、トヨタグループの自動車部品専門の卸売会社である、トヨタモビリティパーツ株式会社より、KeePerボディーコートが発売されました。2023年3月31日からは、株式会社ホンダアクセスより、「EXキーパー」「ECOダイヤモンドキーパー」が純正品として発売開始されました。新車から既販車まで一貫してKeePerのサービスを提供し、日本国中の車をより美しくし、お客様に喜びを提供していきます。
③ キーパープロショップ登録店舗数の増加と1店舗当たりの施工台数の増加について
KeePer製品等関連事業の主力であるキーパープロショップは主にガソリンスタンドです。ガソリンスタンドは石油製品(燃料)が徐々に販売減少していく中でそのインフラを活かし、燃料以外で収益を上げる必要があり、どこの石油元売りもこぞってカーコーティングの施工販売に力を入れております。ガソリンスタンド自体の店舗数は減少の一途ではありますが、いまだに29,000店舗以上あり、その中でキーパープロショップは2024年6月30日時点で、約23%の6,598店舗であります。期首6,414店から期末6,598店と微増ですが、主要製品の一つであるダイヤモンドキーパーケミカルとレジン2、ECOレジンの売上が、前年同期比約25%増の伸びとなっており、1店舗当たりのコーティング実績が向上している事がわかります。
キーパープロショップは、入会金ゼロ、会費無料であり、獲得のための営業活動も全くしておりませんが、実際に売上実績が上がる功績で自然に増えてきたものなので、ガソリン業界だけではなく、カーディーラーやカーショップなどへも拡大していくと予想しております。
④ キーパーLABO既存店の売上向上と新規出店のペースアップについて
キーパーLABO運営事業については、「愛車をキレイに、長く乗ろう」というマインドが高い状態が続き、新しい次元に入った実績が続きながら、KeePerコーティングがYouTubeなどのSNS上での高い評価を見て、高額商品の需要が高くなって、KeePerコーティングの人気は上昇し続けております。
キーパーLABOの前年実績のある既存店舗は、SNSの中で良い評判が広がっていること、TVコマーシャルなどでKeePerブランドが消費者の中に浸透してきていることによってKeePer全体の信頼が上がってきて、購買商品がより価格の高い上位商品である「EXキーパー」「ECOダイヤモンドキーパー」の施工が新車を中心に増加し、キーパーLABOの販売単価を押し上げて来ています。
株式の上場と東証一部への指定替によって一番大きく変わったのが、キーパーLABO新店用の物件の出る数です。これが劇的に増加したのは、KeePerの認知度が上がったと同時に株式上場によって、社会的信用が上がったことが大きな要因と言えます。
⑤ キーパーLABOとキーパープロショップの共存共栄について
初回施工はキーパーLABOで施工したお客様も、2回目以降の施工は近くて便利なキーパープロショップで施工される方がおよそ50%もいて、キーパーLABOが、周辺のキーパープロショップの活性化に役立っています。逆に、全国のキーパープロショップにKeePerの看板が上げられ、店頭ではパンフレットなどでの営業が行われることで、KeePerブランドの認知度がアップし、キーパーLABOの集客や運営に大きなプラスの力になっています。つまり、キーパーLABOとキーパープロショップの存在は相乗効果を持っており、このシナジー効果を持っていることもKeePerの大きな強みとなっております。
⑥ 新規出店に伴う人員の採用と、資金計画について
キーパーLABOの新規出店に伴う人員は、大学卒、高校卒とも、来春の新卒採用が前年を上回るペースで順調に推移しているため、中途採用も含めて十分な採用人数を得られるものと考えております。
元々、キーパーLABOの社員の定着率は非常に高いものでした。企業理念にあるように、お客様の満足(CS)を高い技術で実現すると同時に、お客様の「ありがとう」の言葉で、従業員のやりがいと満足(ES)を生み出していくことが、定着率の高さに結びついており、採用数の増加と相まって社員数全体の増強が実現しております。更に定着率の高さが、勤務経歴の長さを生み、勤務の長さが技術の熟練を生み出して商品の品質の維持向上にも貢献しています。
新店の構築のためのコストは上昇しており、更地からの建設物件で約8,300万円/1件、既設の建物がある居抜き物件では約6,200万円/1件の費用が掛かります。しかし新規開店から採算ベースに乗るようになってきており、営業キャッシュ・フローでのプラス要因と、現在の現預金をもとに考えると、今後毎年30店舗余りの開店資金は安定的に調達をすることができると考えております。
当社の研究開発活動は、当社技術開発及びドイツSONAX社が、協力・連携して行っております。当事業年度における研究開発費の総額は