当社グループの経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「おかねに対する意識と行動を変える。」をミッションとして、投資や資産形成を通して、消費者から支援者へと、人々の社会との関わり方を変えていくことの背中を押せるようなプロダクトの開発に取り組んでおります。当該ミッションを達成すべく事業を展開していくことを、経営の基本方針としております。
当社グループを取り巻く経営環境について、経営者の認識は次のとおりです。
① 社会的動向について
a. 「個人投資新時代へ」
個人投資に関する社会的動向として、当社は、2014年1月のNISA(少額投資非課税制度)開始を皮切りとした時期を、「個人投資復興期」と捉えております。
・2014年1月にNISAが開始
・2015年にアベノミクス相場のなかで日経平均株価は2万円台に復活
・口座開設から取引までスマートフォン上で完結できる「スマホ証券」、AI(人工知能)を活用して、投資診断や投資アドバイス、運用などを行う「ロボアドバイザー(ロボアド)」等の登場
そして、2024年以降を「個人投資新時代」と捉え、「おかね」について学び、投資を行う層が拡大する時代に突入すると考えております。
その背景として、2022年11月に政府が決定した「資産所得倍増プラン」では、NISAの抜本的拡充・恒久化や、金融経済教育の充実が掲げられています。NISAについては、「令和5年度税制改正」により2024年1月から新NISAが始まりました。2014年に始まったNISAが10年を経て、投資可能期間の恒久化、非課税期間の無期限化、年間投資枠及び生涯投資上限の増額、売却枠の再利用等、より利便性の高い制度となりました。
b. 資産運用意向及び証券口座数の推移
特に2020年のコロナ禍以降に個人の資産運用意向は高まっており、メットライフ生命保険株式会社の調査によれば、2023年の調査において特に20代・30代・40代では約70%が「今後の資産運用意向がある(「したい」「ややしたい」)」と回答しています。(出所:メットライフ生命保険株式会社、「全国47都道府県大調査2023」。下記グラフは同資料より当社作成。)

また、日本証券業協会が2023年11月に公表した四半期統計「会員の主要勘定及び顧客口座数等」によれば、同協会の会員である証券会社における、2023年9月末時点の顧客口座数(個人)は33,991,498口座となっています。また、直近の新規の口座開設数の推移は次のとおりであり、2020年のコロナ禍以降に大きく増加していることが分かります。(出所:日本証券業協会、「会員の主要勘定及び顧客口座数等」。下記グラフは同資料より当社作成。)
当社としては、2024年以降、新NISA開始の追い風により、口座開設数が拡大することを見込んでおります。

② 市場規模について
当社は、投資家デビュー支援市場の中でもライト層をターゲットとしており、2024年1月から始まった新NISAや政府の資産所得倍増プランも追い風となり新たに投資を始める人の割合は増加していくと考えており、次の図に示す当社の現在のマーケットシェアを加味しても、成長余地は大きいと考えております。

※1 現在の証券口座数34,493,842口座(全国証券会社主要勘定及び顧客口座数等)を基に、投資をしている人の割合25%(株式会社野村総合研究所「生活者1万人アンケート(金融編)」2022年版)を除し、投資をしていない人の割合75%を乗じた数に、直近2年間の投資家デビュー時の口座開設平均単価26,408円を乗じて算出。
※2 政府方針(資産所得倍増プラン)により、今後5年間で増える新NISA口座約1,700万口座に、直近2年間の投資家デビュー時の口座開設平均単価26,408円を乗じて算出。
※3 株式会社トレジャープロモートの調べ(2023年春)によれば、20代・30代で含み益を抱えている割合は74%と高い。https://presswalker.jp/press/11443
※4 SOMの市場規模4,500億円に対して、当社グループの2024年6月期売上高19.5億円が占める割合として算出。
当社は、こうした市場規模の状況と、上記「① 社会的動向について」の動向も合わせ、投資家デビュー支援市場は今後さらに拡大していくものと考えております。
(3) 経営戦略
a. 当社のターゲットについて
次の図のように、既に投資を始めている中・上級者ではなく、投資未経験の潜在層が当社のサービス提供対象のボリュームゾーンとなっており、今後のサービス提供においてもターゲットとしております。

株式会社野村総合研究所の「生活者1万人アンケート(金融編)」2022年版によれば、約7割の国民が投資をしていません(注1)。そして、投資をしない理由としては、金融庁が2021年6月30日に公表した「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」によれば、知識がないことや損することへの不安が上位に上げられています(注2)。
当社はこうした投資未経験の潜在層に対してリーチし、体験型投資学習アプリで知識を身につけ、ゲーム感覚のデモトレードやシミュレーションを通して成功だけでなく失敗も経験しながら、「投資家デビュー」とその先の継続的な資産運用を支援していきたいと考えております。

(注) 1.投資(リターン(利益)を得ることを目的に株式・債券・投資信託などの金融商品を保有・売買すること)の経験がある人が25%、ない人が75%となっている。
2.質問「これまでリスク性金融商品を購入しなかった理由は何ですか。当てはまるもの全てお選びください。」に対して、「余裕資金が無いから」56.7%に次いで、「資産運用に関する知識がないから」40.4%、「購入・保有することに不安を感じるから」26.3%が上位に上がっている。
b. 当社のポジショニングについて
当社は、金融教育において、従来の座学型に対して「体験型」投資学習アプリというユニークなポジショニングを構築し、「投資に興味・関心はあるが、実際には投資経験がないユーザー」を広く捉えられていると考えております。

c. 当社が開拓していく市場の全体像
当社は日本の個人の資産形成や金融教育をさらに加速させるため、従来から提供してきたtoC(Consumer)の体験型投資学習アプリにとどまらず、次の図のように、toB(Business)、toA(Academy)(注3)への金融教育デジタルソリューションの提供を展開してまいります。

(注) 3.「第1 企業の概況 2 沿革」に記載のように、これまでに下記の企業・協会と共同開発、OEM提供を行っております。
・2023年3月
一般社団法人全国銀行協会と共同で「まねらん」アプリをリリース
野村ホールディングス株式会社と共同で「つみたて投資学習アプリ Powered by トウシカ」アプリをリリース
・2023年10月
三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社が同社専用の従業員向けの投資学習アプリとして「株たす」を採用
d. 成長戦略
(概要)
短期施策としては、「株たす」「トウシカ」等において新NISA開始の追い風を捉える形で既存事業の拡充を図ることに加えて、「OEM」「ファイナンシャルプランニングサービス(FP事業)」の拡大を進めて新たな収益の柱にしたいと考えております。
その一方で、次の図のように、中長期的な成長に向けた種まきも実施してまいります。

(短期施策の詳細)
・既存事業の拡充
投資初心者に向けたインフルエンサーを活用した「コンテンツ発信」や「機能拡充」を実施するとともに、マクロ環境の追い風の中で、投資未経験の潜在層に対してサービス提供を図ってまいります。

・「OEM」「ファイナンシャルプランニングサービス(FP事業)」の拡大
「OEM」「ファイナンシャルプランニングサービス(FP事業)」は法人向け(FPは一部個人向けもあり)に提供しており、OEMの保守費用及びFPの年間顧問料を基にしたストック型の収益を得ております。両事業の売上高合計は2024年6月期において前年同期比117%と成長しており、当社の新たな収益の柱として、事業成長と収益安定化に寄与しております。

(成長戦略とタイムライン)
2024年6月期までをユーザー基盤と事業基盤の構築フェーズと位置付け、今後は収益の拡大及び事業ポートフォリオの多角化を念頭に更なる成長を目指してまいります。また、当初よりも新規事業・M&A・領域拡大による成長を前倒しし、よりスピーディに事業推進を行ってまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、当社アプリを介して証券会社の口座開設がなされた場合の成功報酬を主な収益としていることから、投資デビュー支援数(口座開設数)と報酬単価を重視しております。
また、上記の先行指標としてアプリダウンロード数を重視しております。

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 当社グループのサービスに対する認知度向上
当社グループが継続的な成長を遂げるには、投資学習の社会的意義や当社グループのサービスについて、広く世間一般の人々の認知度を向上させることが重要であると考えております。
当社は、継続的な事業拡大はもちろんのこと、認知度向上のためのWeb広告、マス広告、イベント出展等による広告宣伝活動を通して、認知度向上を図っていくことが重要であると認識しております。
② プロダクトの強化
当社グループが継続的な成長を遂げるには、当社プロダクトであるアプリの品質向上を図り、ユーザーにより良い投資学習体験を提供していくことが重要であると考えております。当社は、継続的にアプリの機能やUI/UXの強化・改善を行ってまいります。
③ 人材確保と組織体制の整備
当社グループの事業の継続的な成長の実現に向けて、サービスを企画・設計するプランナー人材、事業の拡大やアライアンスを手がける事業開発人材等を中心に、優秀な人材を採用し、強固な組織体制を整備することが重要だと認識しております。今後も積極的な採用活動と教育を推進していく一方で、従業員が中長期にわたって活躍しやすい環境の整備、企業カルチャーの醸成及び人事制度の構築等を進め、組織力の強化に取り組んでまいります。
④ システムの安定稼働
当社グループのサービスは、その大部分がインターネットを利用したサービスであり、システムの安定的な稼働が不可欠です。そのため、不正アクセス対策、コンピュータウィルス対策、データの管理等の徹底を図っております。今後見込まれる利用者数及び取引量の増加や取り扱いデータ容量の拡大に伴うシステム投資、適切な人員体制の拡充を計画的に行うとともに、データのバックアップ体制強化等についても努めてまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社グループは成長段階にあり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。当社はこれまでも体制整備を進めてまいりましたが、今後も事業規模の拡大に伴って、管理系の各部署における優秀な人材の採用・確保、定期的な内部監査の実施によるコンプライアンス体制の強化、監査役監査の実施によるコーポレート・ガバナンスの充実などを行っていく方針です。
⑥ 財務上の課題
当社グループは、金融機関からの借入金を有するものの十分な手元流動性が確保されております。また、2024年6月末時点において、3つの金融機関と総額6億5千万円の当座貸越契約に基づく借入による資金調達も可能であることから、優先的に対処すべき財務上の課題はないと考えておりますが、今後の事業拡大に備えて、更なる内部留保の確保と営業キャッシュ・フローの改善等により財務体質の強化を図ってまいります。
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティに関する考え方
当社グループは、「おかねに対する意識と行動を変える。」をミッションとして掲げております。そのミッションに基づき、投資や資産形成を通して、消費者から支援者へと人々の社会との関わり方を変えていくことの背中を押せるようなプロダクトの開発に取り組んでおります。金融教育の発展に貢献することが、社会及び経済の長期的かつ健全な成長を促進し、その事業活動において環境への配慮や還元を実施してまいります。このように培われた社会及び環境が金融教育の土台となり、さらなる事業成長へつながる好循環を創出することを目指しております。
(2) サステナビリティへの取組
① ガバナンス
当社グループは、当社取締役会の活動を通し、サステナビリティ経営を実現するための当社戦略の実施及びサステナビリティ関連のリスク・機会の監視・管理を行ってまいります。
② リスク管理
当社グループでは、市場、情報セキュリティ、環境、労務、製品の品質・安全等様々な事業運営上のリスクについて、「リスク・コンプライアンス管理規程」を制定し、当社の取締役CFO開原信一を議長とする社内横断的なリスク・コンプライアンス委員会を設置してリスク管理を行うこととしております。同委員会の活動を通して、サステナビリティに関連するリスク・機会を含め、リスクの把握、対応策の検討、対応策の実行及びそのモニタリングに努めております。
③ 戦略
a.人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針
当社グループが持続的な成長を遂げるためには、人材の多様性を確保すべきであると考えております。しかしながら、適材適所の人材を中途採用での獲得を中心に行っている当社の現状では、多様性に関する数値目標を設定するのではなく、多様な人材が当社にエントリーしやすく、かつ活躍できるような環境を整えることが重要であると認識しております。
当社グループの価値創造の源泉は、人的資本であると考えております。人的資本に資する人材の育成のために、能力評価とそのフィードバック及びキャリアアップ支援を実施しております。これらの人材育成に関する投資を通して、持続的な成長と企業価値向上の実現に繋げてまいります。
b.社内環境整備に関する方針
組織として持続可能な成長を遂げるためには、役職員の柔軟な働き方を実現することが必要であると考えております。そのためにリモートワーク制度、育児介護のための休暇制度及びボランティア活動等の課外活動支援を実施しております。継続的な能力開発及びその能力を活かせる環境を整備していくことにより、社会的責任は果たしつつ持続的な企業価値の向上を図ってまいります。
④ 指標及び目標
サステナビリティ関連のリスク・機会を長期的に評価、管理、監視することに関して、具体的な指標及び目標は設定しておりません。
人材育成及び社内環境整備に関して、具体的な指標及び目標は設定しておりません。
今後、上記指標及び目標の設定について、検討する予定です。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。
リスクマネジメントの体制としては、当社グループは「リスク・コンプライアンス管理規程」を定め、取締役CFO開原信一を議長とするリスク・コンプライアンス委員会を設置し、全社的なリスクマネジメント体制を整備しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅することを保証するものではありません。
(1) 事業環境に関するリスク
① 市場動向について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループが事業を展開する市場は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しますように、今後も着実に成長していくと考えております。しかしながら、経済環境の悪化や景気低迷等により市場が縮小し、中長期に渡って停滞した場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社は、上記動向を日々注視しながら、適宜当社グループの経営戦略に織り込んでいくとともに、当該動向に柔軟に対応できる体制構築に努めてまいります。
② 競合他社の動向について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社は、日本国内において体験型投資学習アプリを提供しておりますが、当連結会計年度末現在において競合は多くないものと認識しております。しかしながら、今後、例えば広告主が当社アプリより効率的に投資初心者の口座開設を促すことが可能となるメディアが出現した場合、資本力やブランド力を持つ大手企業や全く新しいビジネスモデル又は技術によるサービスを提供する事業者等が参入した場合、それら競合他社との過度な価格競争が発生した場合等には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社は、ユーザー目線に立ってサービスをより充実させていくと共に、スピーディーかつ質の高いサービスを提供するための開発リソースの確保を継続的に行い、競争優位性の向上に努めてまいります。また、競合他社の動向を日々注視しながら、適宜当社グループの経営戦略に織り込んでいくとともに、当該動向に柔軟に対応できる体制構築に努めてまいります。
③ 法的規制について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループが事業を展開する上で適用を受ける法的規制としては、主に、個人情報の保護に関する法律、不当景品類及び不当表示防止法があります。当社グループは、これらの法的規制を遵守した運営を行ってきておりますが、今後新たな法令の制定や、既存法令の強化等が行われ、当社グループが運営する事業が規制の対象になる等制約を受ける場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
また、体験型投資学習アプリに関連する法的規制としては、金融商品取引法があります。当社は、当社アプリのユーザーである投資家の投資学習支援を行う立場にあり、当該法的規制に関して直接の責任を有するものではありませんが、当該法的規制の改正等により、体験型投資学習アプリの運営や投資学習コンテンツの見直し等が必要になった場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社は、特に次の取り組みを行っております。
1.コラム等の投資学習コンテンツの内容については、社内のNGワードリストに基づくチェックを行っております。社内で判断がつかない場合は、適宜顧問弁護士によるリーガルチェックも実施しております。また、広告主のサービスを紹介するPR記事コンテンツ(タイアップ広告、記事広告)について、PR表記の義務を負うのは表示主体である広告主ではあるものの、当社としても、ユーザーの誤認を防ぎ、広告と理解した上で口座開設などのアクションをしてもらうため、自主的に目に付きやすい箇所(ファーストビュー、基本的にはヘッダー内)にPR表記を行うことで、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す「ステルスマーケティング(ステマ)」とならないようにしております。
2.当社が作成する広告動画やインフルエンサーを活用するPR動画、SNS発信等、当社アプリユーザー獲得のための広告については、公開前に、当社が定めた禁止表現事項がないか、著作権侵害にあたるような内容がないか、インフルエンサー活用の場合はPR表記があるかなどをチェックしております。
その他、各法規制の改正等の動向を注視するとともに、法規制の遵守のために今後も社内教育や体制の構築等を行ってまいります。
④ アフィリエイト・サービス・プロバイダー(ASP)とのパートナーシップの継続について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社アプリにおける広告掲載はASP経由の取引を基本とし、基本的にASPから受領する成功報酬で売上が構成されており、その中でも特定のASP数社との取引が大きな割合を占めております。具体的には、第11期(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)においては、ASP経由の売上高のうち上位3社で約91%を占めております。そのため、ASP又は広告主である証券会社・FX会社の方針変更や関係性変化により、当社アプリの運営に何らかの支障をきたした場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。なお、特定のASP数社に取引が偏る要因は、主に、広告主が利用するASPを指定するケースがあることや、金融機関の広告に知見を有するASPの数が限定されることであるため、当社としては代替となるASPを開拓することは困難ではないと考えております。
このようなリスクに対して、当社は、今後も既存のASP各社と良好な関係を構築していくとともに、必要に応じて代替となるASPを開拓するなど、適時の対応を行ってまいります。
⑤ 広告主のプロモーション縮小・停止について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社アプリでは複数の広告主(証券会社・FX会社)の広告を掲載しておりますが、特定の広告主がプロモーションを縮小・停止した場合、当社アプリへの当該広告主の広告掲載が停止され、結果として当該広告主の口座を開設したいユーザーが当社アプリを経由して口座開設を行うことがなくなります。また、当社アプリでは、広告主をランキング形式で掲載し、特に上位3位の広告主を取り上げて送客を行っていることから、特定の広告主に売上が集中し、売上比率の偏重が生じやすいという傾向があります。上記状況から、売上上位の広告主がプロモーションを縮小・停止した場合、相対的に他の広告主への送客が増加することとなりますが、プロモーションを縮小・停止した広告主からの売上喪失の影響が大きくまた長期化する場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
第10期(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)には、特定の証券会社が組織再編による証券業からの撤退により、プロモーションを縮小し、当社アプリへの広告掲載が停止され、当社の売上高に影響を与えました。なお、当該影響について、その後は他の証券会社の広告売上比率が増加し、影響は緩和されております。
現状当社で扱っている広告の予算規模の大きな広告主は、事業規模が一定程度大きいことから、上記のような事業撤退等による急なプロモーション縮小・停止リスクの再現性は低いと考えておりますが、これらの広告主がプロモーションを縮小・停止するケースは、主に次のようなケースと考えられます。
1.プロモーションが縮小される
2.当社媒体の効果が先方基準に満たないため、広告費用回収が見込めるまでに報酬単価を低減する交渉がなされる
このようなリスクに対して、上記1については、ASPを通して情報収集を行い、そういったリスクがないかモニタリングしております。同時に、そうなった場合別の広告主に切り替えができるよう、広告案件の提案は継続的に行ってまいります。上記2については、当社とASPとの月次定例会議の際に、当社の広告効果は現広告主基準に到達しているのか、到達していないとすれば当社としてどのような施策を今後実行し、その基準にできるだけ沿えるかといった会話を重ね、広告主にも都度共有を実施しております。なお、第11期(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)においては、当社の主力アプリ「FXなび」における広告主であるGMOフィナンシャルホールディングス株式会社のグループ企業のシェアが売上高全体の過半を占めております(第11期の当社グループの連結売上高に占める「FXなび」にかかる売上高の割合は、下記(2)①「特定のアプリへの依存について」をご参照ください)。
⑥ プラットフォームの動向について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社アプリはスマートフォン向けアプリであり、各プラットフォーム事業者(Apple Inc.及びGoogle LLC)の動向に影響を受けます。
近年では、プライバシーに対する懸念の高まりから、2021年4月にApple Inc.がリリースしたiOS14.5(注1)より、iOS向けアプリがユーザーのiOS端末毎に固有の広告識別子であるIDFA(Identifier for Advertisers)を取得するのに、ユーザーの許諾が必要になりました。iOS14.5以降がインストールされた端末の数が増加し、IDFA取得のユーザー許諾率が低下することで、iOS向けアプリでのターゲティング広告(注2)にIDFAを活用することが困難になりました。また、iOS向けアプリのインストール数の把握は、Apple Inc.が指定するSKAN(StoreKit Ad Networkの略称。SKAdNetworkとも略称される)という方法によってしか計測できなくなりましたが、SKANはプライバシーの観点からリアルタイムの数値を計測できない仕様となっています。
当社のiOS向けアプリにおいても、それまで行っていたIDFAを利用したユーザーターゲティングやコンバージョン(注3)の計測が困難になりました。ユーザーの判別がしにくくなり、当社アプリの既存ユーザーへの広告除外が困難になったことで、獲得効率も悪化しました。また、SKANの仕様によりリアルタイムのインストール数を追うことができなくなり、即時での調整などを要する広告における配信先媒体運用の難易度が増しました。結果として、当社のiOS向けアプリのインストール数の獲得にかかる広告運用費が増加したことから、第9期(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)は前期から減収減益となりました。
当該規制への対応策としては、SKANを利用して媒体最適化を行う方法を模索いたしました。iOS14.5以降へのアップデートが行われていない端末においては従来の計測方法も併用しながら、過去の媒体での配信実績やAndroid(注4)ではまだ規制が行われていないため正常な数値がとれていると判断した上でAndroid向けアプリにおける数値からSKANでの配信の効果を推察し、広告運用における最適化期間を長くとり、費用対効果を算出するよう運用を行いました。加えて、広告クリエイティブをさらに最適化すべく強化を行ったことにより、第10期以降、獲得効率は以前の水準まで改善しております。これにより、第10期(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)は第9期から増収増益となりました。
今後も、欧米を中心としたプライバシー規制の強化等を受けて、各プラットフォーム事業者やインターネット検索サービス提供事業者の方針変更により、当社アプリの運営に何らかの支障をきたした場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社は、上記動向を日々注視し、各取引先やメディア等で情報収集を継続的に行いながら、適宜当社グループの経営戦略に織り込んでいくとともに、代替手段等の対策を適時に実行してまいります。実際に、上述のApple Inc.による規制については、リリースされる数か月前より情報をキャッチしており、対策方法の検討を行いました。規制が発生する媒体によって対応方法は異なると考えられるものの、基本的には上述のiOS向けアプリでの対応方法が活用できると考えておりますので、当該対応を踏まえながら対応を行うことで、さらに影響を軽微なものにしていけるものと考えております。加えて、プラットフォームの動向に影響を受けないファイナンシャルプランニングサービスによる売上高を伸長させ、収益源の分散化を図ってまいります。
(注) 1.Apple Inc.製のモバイルデバイス(スマートフォン「iPhone」等)に搭載されているOS(オペレーティング・システム)である「iOS」のバージョン14.5を指します。
2.ユーザーの属性やWebサイト・コンテンツの閲覧履歴といったデータを分析し、対象を指定して表示するインターネット広告を指します。広告主にとっては、自社の商品やサービスに興味がありそうなユーザーにターゲットを絞って広告を配信することで、広告効果の向上が見込めます。
3.「見込み顧客」が「顧客」にコンバージョン(転換)することに由来し、広告用語においては、広告を見たユーザーが広告主が目的とする特定の行動(Webサイトでの商品購入等)を起こすことを指します。
4.Google LLCが開発提供する、スマートフォン等のモバイルデバイス向けOSを指します。
⑦ 大規模な自然災害・感染症等について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
大地震、台風等の自然災害や火災等の事故、また新型コロナウイルス等の感染症の流行が、想定を上回る規模で発生し、事業・サービスの停止、設備の損壊や電力供給の制限等、不測の事態が発生した場合には、当社グループによる事業・サービスの提供に支障が生じる可能性があり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループは事業継続計画(BCP)を策定し、非常事態においても、事業への被害を最小限にとどめ、迅速かつ効率的に復旧できるよう、有事の対応事項及び平時の事前準備事項等について定めております。
(2) 事業展開又は事業体制に関するリスク
① 特定のアプリへの依存について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
第11期(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)において、当社グループの連結売上高に占める「FXなび」にかかる売上高の割合は69.7%と依存度が高くなっております。従って、当該アプリについて、上記(1)⑤「広告主のプロモーション縮小・停止について」に記載したような広告主のプロモーション縮小・停止が発生した場合、また当社ではコントロールできない要因として、為替のボラティリティ(価格変動の度合い)の状況によりユーザーの口座開設意向が低下した場合(一般に、ボラティリティが大きいほど、為替差益の獲得を期待して、口座開設・取引が活発化します)や有力な競合の出現により当社の優位性が低下した場合には、当該アプリにかかる売上高が減少し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、今後も当該アプリにかかる取引及びユーザー数の安定的な拡大に努めると同時に、他アプリ・サービスにおける取引の拡大を図ってまいります。
② 特定人物への依存について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社代表取締役の小川亮は、2014年以来代表を務めております。同人は、当社グループの経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を果たしております。何らかの理由により同人が当社グループの業務を継続することが困難となった場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社は、取締役会及びその他の会議体における情報共有や経営組織の強化を図り、同人に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。
③ 優秀な人材の確保及び育成について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループの継続的な成長のためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が重要であると認識しております。当社グループでは、将来に向けた積極的な採用活動、人事評価制度の整備や研修の実施等の施策を通じ、新入社員及び中途入社社員の育成、定着に取り組んでおります。しかしながら、雇用情勢の動向等により優秀な人材の獲得が困難な場合、人材育成が計画どおりに進行しない場合、人材の社外流出が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループでは、リファラル(社員紹介)、人材紹介など複数のチャネルを組み合わせた採用アプローチを採るとともに、雇用情勢の動向等も踏まえつつ、事業計画に基づく人員計画に従って採用活動を進めてまいります。また、育成・定着については、各部署でのスキル向上のための研修実施、部署間でのシナジーを強めるための意見交換等ができる場を設けております。
④ 内部管理体制の構築について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループの継続的な成長のためには、コーポレート・ガバナンスが適切に機能することが必要不可欠であると認識しております。しかしながら、事業の急拡大や、内部管理体制の不備等により、コーポレート・ガバナンスが有効に機能しなかった場合には、適切な業務運営を行うことができず、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループは、管理部が中心となり、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、法令・定款・社内規程の遵守を徹底してまいります。
⑤ システム障害について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループのサービスはインターネットを利用して提供されているため、自然災害、事故、不正アクセスなどによって通信ネットワークの切断、サーバーやネットワーク機器の動作不能などのシステム障害が発生した場合には、サービス提供が停止する可能性があります。このようなシステム障害が発生した場合には、当社グループに直接的損害が生じるほか、当社グループのサービスへの信頼性の低下を招きかねず、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループでは、システムの冗長化、不正アクセス等を防止するためのセキュリティ対策を講じております。
⑥ 情報の管理について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社の連結子会社である株式会社FPコンサルティングが行う法人・組合向けのファイナンシャルプランニングサービスでは、法人・組合との顧問契約に基づき、資産運用に関して個人情報や保有資産に関する情報を取り扱っております。これらの情報が不正アクセスなど何らかの理由で外部に漏洩、悪用されたりした場合には、原因究明のための対応や損害賠償の請求等により当社グループに直接的損害が生じるほか、当社グループのサービスへの信頼性の低下を招きかねず、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループは、個人情報の保護に関する法律を遵守し、利用者のプライバシー及び個人情報の保護に最大限の注意を払うともに、情報管理体制の構築及び社員教育の徹底を行ってまいります。
⑦ 知的財産権について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、当社グループが行う事業に関する知的財産権の獲得に努めることに加え、第三者の知的財産権を侵害しないよう、十分な注意を払うことを基本方針としており、当社グループの事業分野において、現在、申請すべき知的財産権及び侵害が危惧されるような知的財産権の認識はありません。しかしながら、既に当社の認識していない知的財産権が成立している可能性、又は今後新たに第三者により著作権等が成立する可能性があります。このような場合においては、当社が第三者の知的財産権を侵害したことによる損害賠償や差止の請求、又は当社に対するロイヤリティの支払い要求等を受けることにより、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。また、当社の知的財産権が第三者からの侵害を把握しきれない、若しくは適切な対応がなされない場合、又は知的財産権の保護のために多額の費用が発生する場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社では、弁護士及び弁理士等の外部専門家と連携することで、第三者の知的財産権の侵害を防ぐ体制の構築や、当社グループが保有する知的財産権の適切な管理を行ってまいります。
⑧ 訴訟について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当連結会計年度末現在において、当社グループに重大な影響を及ぼす訴訟等は提起されておりませんが、当社グループの役職員による法令違反や、当社グループのサービスの利用者、取引先、役職員、その他第三者との間での予期せぬトラブルの発生により、訴訟に発展する可能性があります。そして、提起された訴訟の内容及び結果によっては、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループでは、「リスク・コンプライアンス管理規程」を制定し、役職員に対して当該規程を遵守させること、法令遵守や社会倫理に関する研修を行うことで法令違反の発生リスク低減に努めております。また、「内部通報規程」を制定し、当社グループ内における不祥事の企業内不祥事の早期発見と未然防止に努めております。
⑨ 取引先に対する信用リスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
上記(1)④「アフィリエイト・サービス・プロバイダー(ASP)とのパートナーシップの継続について」に記載のとおり、当社アプリにおける広告掲載はASP経由の取引を基本としており、その中でも特定のASP数社との取引が大きな割合を占めております。そのため、ASPの信用状態に重大な変動が生じた場合には、当社の資金繰り面に支障が生じるとともに、回収不能な不良債権が発生する可能性があり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
また、当社のビジネスモデルは当社アプリを介して証券会社・FX会社で口座開設がなされた場合、ASPを介して成功報酬を得るため、証券会社・FX会社の経営戦略・経営方針により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社は、販売先毎に財務状況等を勘案した与信限度額を設定するなど、適切な与信管理・債権管理を行っております。また、必要に応じて代替となるASP・証券会社・FX会社を開拓するなど、適時の対応を行ってまいります。
(3) その他のリスク
① 配当政策について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、株主への還元を第一として、配当原資確保のための収益力を強化し、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としております。当社は、内部留保の充実等を図り、事業拡大のための投資に充当するため、創業以来配当を実施しておりませんでしたが、上場後は、当社グループの経営環境、投資計画等を総合的に勘案するとともに、内部留保及び財務体質の水準を考慮して、配当を実施したいと考えております。また、配当金のほかに、株主への利益還元の一環として、株主優待制度を設けたいと考えております。
しかしながら、配当政策は業績に連動しているため、今後業績が悪化した場合、配当金額を減少する若しくは配当を実施しない可能性があります。
② 大株主について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当連結会計年度末現在において、当社代表取締役小川亮(同人の資産管理会社であるDon’t Look Back in Anger株式会社含む)が所有する当社の株式数は1,140,000株であり、発行済株式総数3,190,000株の35.74%となっております。
同人は、安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。当社といたしましても、同人は安定株主であると認識しておりますが、将来的に何らかの事情により、大株主である同人の持分比率が低下した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
発生可能性:高、発生する可能性のある時期:1年以内、影響度:小
当社は、役職員及び社外協力者に対するインセンティブを目的として、ストック・オプションとして新株予約権を付与しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、これらの新株予約権が権利行使された場合には、当社の株式が新たに発行され、既存株主が保有する株式価値の希薄化や需給関係に影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末現在において、新株予約権による潜在株式数は319,000株であり、発行済株式総数(自己株式を除く。)3,190,000株の10.00%となっております。当社では、当該比率を踏まえながら、今後の新株予約権の付与を行ってまいります。
④ ベンチャーキャピタル等の当社株式所有割合について
発生可能性:高、発生する可能性のある時期:1年以内、影響度:中
当連結会計年度末現在において、ベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業有限責任組合(以下、「VC等」という。)が所有する当社の株式数は300,000株であり、発行済株式総数(自己株式を除く。)3,190,000株の9.40%となっております。
一般に、VC等が未上場会社の株式を取得する場合には、上場後に所有株式を売却しキャピタルゲインを得ることがその目的のひとつであり、VC等が所有する当社株式の一部又は全部を市場にて売却した場合には、当社株式の需給バランスが短期的に損なわれ、株価の形成に影響を与える可能性があります。
⑤ 調達資金の使途について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:数年以内、影響度:小
当社の公募による自己株式の処分によって得られる資金の使途は、既存事業の拡大及び新規事業の開発を目的とした採用費及び人件費、システム開発費及び広告宣伝費へ充当する予定であります。
しかしながら、当社グループを取り巻く外部環境や経営環境の変化に伴い、当該資金が想定どおりの使途に充当されない可能性もあります。また、計画どおりに資金を使用したとしても、期待どおりの効果をあげられない可能性があります。そのような場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社を取り巻く外部環境や経営環境の変化については適時その動向を注視するとともに、調達資金の使途が変更になった場合には、適時適切に開示を行います。
⑥ 投資の減損について
発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社はこれまで、事業シナジー創出等を目的とした資本業務提携や、企業価値向上のため事業領域の拡大や新規事業の開発を目的としたM&Aを行ってまいりました。今後においても、当社グループの経営上重要な施策として、こうした取組を推進していく方針であります。
当連結会計年度末時点の連結貸借対照表において、のれんを26,456千円、投資有価証券を50,000千円計上しておりますが、資本業務提携又はM&A実施後の事業環境の変化等により、当初想定した事業計画どおり進まなかった場合、のれんの減損損失や株式の評価損が発生し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
当社はこのようなリスクに対して、資本業務提携又はM&Aの実施に際しては、対象企業の財務・法務・事業等について詳細な事前検討を行い、リスクの把握や正常収益力を分析した上で決定してまいります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は1,850,191千円となり、前連結会計年度末に比べ784,716千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が753,013千円、有形固定資産が37,947千円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は377,968千円となり、前連結会計年度末に比べ47,674千円減少いたしました。これは主に、未払法人税等が27,651千円、未払消費税等が18,562千円減少したことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は1,472,223千円となり、前連結会計年度末に比べ832,390千円増加いたしました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上156,190千円、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う自己株式の処分に伴い、資本剰余金が676,200千円増加したことによるものです。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、日経平均株価が34年ぶりの高値を更新するなど、経済環境については回復基調で推移しました。しかし、原油価格の急騰や円安進行の影響で物価が上昇し、特に食品やエネルギーの価格高騰が消費者に重くのしかかることとなりました。その結果、企業に対する賃金上昇の圧力が増大し、多くの企業がさらなる待遇改善や働き方改革の実施に取り組む状況が続いております。一方、ウクライナ情勢の悪化や米中間の貿易摩擦が続くことで国際経済の不透明感が増し、エネルギー価格のさらなる上昇や供給不安が続いております。これらの国内外の事情を受けて、経済の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
このような事業環境の中、当社グループは、主力事業である体験型投資学習アプリのFX取引体験型学習アプリ「FXなび」、株取引体験型学習アプリ「株たす」、株&積立投資シミュレーションアプリ「トウシカ」の機能改善開発とコンテンツ配信を通じて、新たに投資を始めたい方々の支援をしてまいりました。2024年1月に開始された新NISA制度の導入及び為替市場の変動による投資機会の拡大に対応し、アプリの新機能リリースを行い、キャンペーン実施によるマーケティングを強化したことにより、アプリのインストール数及び口座開設数は堅調に推移しました。金融機関向けにOEMのサービスとして提供している「まねらん」(一般社団法人全国銀行協会向け)、「つみたて投資学習アプリPowered by トウシカ」(野村ホールディングス株式会社向け)の各アプリにも新たな機能を追加いたしました。また、連結子会社によるファイナンシャルプランニングサービスの事業についても、順調に顧問先の獲得が進み、2024年3月には従業員の資産形成をサポートする職域向け金融教育支援アプリ「maneC(マネシー)」をリリースし、売上の増加に繋がりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高に関しては、1,957,473千円(前年同期比14.4%増)、営業利益は231,029千円(前年同期比40.2%増)、経常利益は231,039千円(前年同期比36.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は156,190千円(前年同期比28.5%増)となりました。
なお、当社グループの報告セグメントは、「投資学習支援事業」のみであり、その他の事業セグメントは、開示の重要性が乏しいため、セグメント別の記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は1,490,070千円(前年同期比753,013千円増加)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は168,752千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上230,734千円、未払金の増加額24,791千円及び法人税等の支払額99,874千円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は74,331千円となりました。これは、有形固定資産の取得による支出42,540千円、無形固定資産の取得による支出11,850千円、敷金及び保証金の増加19,940千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は658,592千円となりました。これは主に、自己株式の処分による収入676,200千円によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループは、投資学習支援に関するサービス等を提供しており、提供するサービスには生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
b. 受注実績
当社グループは、投資学習支援に関するサービス等を提供しており、受注生産を行っていないため、受注実績に関する記載はしておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。なお、当社グループの報告セグメントは、「投資学習支援事業」のみであり、その他の事業セグメントは、開示の重要性が乏しいため、セグメント別の記載を省略しております。
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、次のとおりであります。下表の主な取引先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する分析・検討内容
a. 経営成績の状況の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は投資学習支援事業における口座開設数の増加に伴い伸びており、1,957,473千円となっております。売上高の分析・検討内容につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」に記載のとおりです。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度における売上原価は1,335,213千円となりました。これは、主に広告施策の強化に伴う広告出稿及び広告制作コストの発生によります。この結果、売上総利益は622,260千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は391,230千円になりました。これは、主に事業拡大に伴う人件費の増加、及び当社株式上場に伴う上場関連費用等の計上によります。この結果、営業利益は231,029千円となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、主に雑収入により3,209千円となりました。営業外費用は、主に為替差損の影響、借入金にかかる支払利息により3,198千円となりました。この結果、経常利益は231,039千円となりました。
(特別損失、親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における特別損失は、事務所移転に伴う固定資産除却損により305千円となりました。また、法人税等は74,543千円となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は156,190千円となりました。
b. 財政状態の分析
財政状態の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりです。
c. キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
➁ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要として主なものは、人材採用を含む人件費及びアプリインストール数の獲得にかかる広告運用費等です。財政状態等や資金使途を勘案しながら、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等は、資金需要の額や用途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。
現預金保有高については、事業運営上必要な運転資金として、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,490,070千円と、十分な流動性を確保しております。
また、一時的な資金の不足については、金融機関との間で合計650,000千円の当座貸越枠を設定しており、必要資金を適時に確保する体制を整えております。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの事業に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
④ 経営者の問題意識と今後の方針に関して
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
⑤ 重要な会計方針及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる可能性があります。当社グループの連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。