第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。また、当該将来に関する事項については、取締役会で合理的な根拠に基づく適切な検討を経たものであります。なお、当該将来に関する事項については、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループでは、当社グループのミッションとして「未来をつくろう / Discover Something New.」を掲げ、お客様の成功に向かい、事業・マーケティング上の課題の抽出、解決策の企画、実行案の提示等、ゴールに向かうための未来をつくるグループとして、事業運営しております。また、ビジョンとして「やればいいじゃん! / Just go for it!」を、グループとしてチャレンジをし続けるために目指すべき姿として掲げております。

その実行にあたり、社員には「Road of Growth」として、信念・考え方・行動指針を記し、その実現を目指して推進しております。

その上で、顧客、株主、従業員、社会などあらゆるステークホルダーから常に信頼される経営を行い、持続的な成長をし続けることによって、広く社会に貢献する事業やサービスを通して「未来をつくる」企業グループを目指します。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループでは、経営に委託された資本を最も効率よく活用すべく、適正資本構成を維持したうえでの収益力を図ることができるROE(自己資本当期純利益率)を、最も重要な経営指標として位置付けております。同時に、当社グループが成長段階であるとの認識に立ち、株主の収益成長期待に応えるべく、売上高成長率、営業利益率を意識した経営に取り組んでおります。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、2021年8月12日に公表いたしました中期経営計画「DX Action 2024」(以下、本中期経営計画)を中長期的な会社の経営戦略として事業を推進しております。なお、本中期経営計画については、その最終年度を2025年6月期へと当初計画より1年間延長することを、2024年2月13日に公表しております。

本中期経営計画では、長期的に目指す姿として、「我々の強みである「生活者のWhy(なぜ)の解明」を通して、マーケティング領域において戦略立案からマーケティング施策の実践までを支援し、「パートナー」としてお客様のビジネスを成功に導くグループであること」と設定しております。

その上で、当社グループが「マーケティングDXパートナー」になるため、指針として「我々は、デジタルの力を使い生活者に纏わるあらゆるデータの分析による“生活者理解”“Whyの解明”を通じ、顧客のマーケティングソリューションの実践、及びマーケティングプロセス変革までを支援し、戦略立案から実行までワンストップサービスで顧客ビジネスを成功に導いていきます。」と掲げました。

以上を踏まえて当社グループは、長期的に目指す姿、及び中期経営計画の達成に向け、保有する資産・インフラを有機的・効率的に活用する仕組みと体制構築を推進し、各種事業の強化、投資、M&Aを通じてグループ全体の成長の加速を目指すこととしており、パネルネットワークのグループ共有化、新ビジネスモデルの構築、顧客基盤の活用、データアナリスト組織の活用、DX化、AIのビジネス活用等を推進してまいります。

事業セグメント毎の施策としては、成長を継続しており、市場規模の拡大が見込める事業領域での積極的な事業展開を軸に、デジタルマーケティング事業においては、サービスと業務のDX化を推進するとともに、現在提供出来ていない領域へのサービス拡充等を適宜推進してまいります。データマーケティング事業においては、既存ビジネスモデルの高度化やクラウドBIツール提供のサービス標準化等、DXを軸にしたサービスの改善・強化を推進してまいります。インサイト事業においては、コンサル型リサーチサービスの提供、LTV(Life Time Value(ライフ タイム バリュー)の略、日本語訳は「顧客生涯価値」。一人、あるいは一社の顧客が、特定の企業と取り引きを始めてから終わりまでの期間内にどれだけの利益をもたらすのかを算出したもの。)メソッドの開発への投資や官公庁、学校法人等への販売チャネルの拡大を進めてまいります。また、新規事業、M&Aの実施も想定しており、新規事業開発としては、小規模の新規事業を複数起ち上げながら、一定規模への拡大が見込めそうなタイミングで追加投資をし、グループ全体の成長につなげていく予定としております。M&Aについては、事業セグメント毎に目的・対象となる企業を想定しながら、積極的に投資の検討を実施してまいります。また、グローバル戦略としては、既存拠点の統廃合等を実施することで効率化を進めるとともに、最大市場であるアメリカ合衆国での成長投資を実施するとともに、現時点での未展開エリアについてもアジア、欧州を中心に展開可能性を模索してまいります。

本中期経営計画の数値目標として、2025年6月期終了時点において、時価総額300億円、連結売上高300億円、連結営業利益30億円を設定いたしました。上記記載の施策・取り組みを推進していくことで、数値目標の達成を目指してまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、顧客、株主、従業員、社会などあらゆるステークホルダーとの良好な関係を維持するとともに、更なる成長に繋げるため、以下のとおりに重要な課題を認識し、優先的に取り組んでまいります。

 

(人材の確保、育成)

当社グループの手がけるデジタルマーケティング事業、データマーケティング事業、インサイト事業は、技術及び業界基準の急速な変化に左右される状況にあり、それに伴いユーザーニーズが変化、多様化することが予想され、適時適切に対応する必要があります。また、当社グループの事業については大きな参入障壁がないことから、類似する事業を提供している事業者の事業規模の拡大が進み、今後も激しい競争下におかれるものと考えております。

このため、当社グループが今後も更なる成長を遂げるためには、営業力、企画力、構想力、開発力、統計知識など様々な能力を有する優秀な人材を確保し、育成していくことが重要な課題であると考えております。

人材採用については、優秀な即戦力を確保するため、新卒採用、中途採用を積極的に行ってまいります。また、海外への進出にあたり、ビジネス開発や各エリアにおける事業開発・管理統括を担う人材の採用も進めております。

さらに人材育成については、スキルアップのための全社員に対するマーケティングに関する研修の実施や、各部門において必要な専門的な研修を引き続き実施していくとともに、人事評価制度や給与制度を当社グループの組織規模に合せて適宜見直しすることで、社員のモチベーションの向上を図ってまいります。

また、執行役員制度を導入し、責任と権限を委譲しながら次世代の経営層の育成を行っていくとともに、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を確保することを目的として、経営トップの後継者計画についても、取締役会を中心としながら、グループ全体として適切に計画を立案し、実行してまいります。

 

(コーポレートガバナンス、内部管理体制の強化について)

当社グループが継続的な成長を実現させるためには、海外の拠点、子会社を含むグループ全体におけるコーポレートガバナンス機能、内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。

当社のコーポレートガバナンスについては、内部監査による定期的なモニタリングの実施と監査等委員や監査法人との連携を図ることにより適切に実施しておりますが、各ステークホルダーに対して経営体制における適切性、健全性を確保しつつ、外部環境等の変化に適切に対応するため、意思決定の機動性確保や事業展開に応じた組織体制の整備を進めることにより、グループ全体として内部管理体制の強化に取り組んでまいります。

 

(グループシナジーの発揮及びマネジメント体制の強化について)

当社グループは2024年6月30日時点で連結子会社30社、関連会社3社からなる企業集団として拡大してまいりました。これまでは全体の成長を推進していくために、グループ各社の部分最適を優先しながら各種施策の実施・強化を推進している面もありましたが、今後当社グループが成長をさらに加速させていくためには、グループシナジーを発揮し、全体最適を目指すために、マネジメントの意識の変化や体制・連携を強化・推進していくことが重要な課題であると認識しております。そのため、マネジメント人材の育成・強化やグループを横断したコミュニケーションの活性化等を通じて、当社グループの成長の加速、中長期的な企業価値の向上に向けて取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

企業の継続的な成長と社会課題の解決による持続可能な社会の実現を同時に目指す「サステナビリティ経営」の重要性が高まる中、全社横断的にサステナビリティへの取り組みを推進・強化し、中長期的な企業価値向上に繋げていくことを目的として、2023年5月に「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。本委員会は、代表取締役社長を委員長とし、委員長が指名する役員・従業員によって構成されます。本委員会は、当社グループのサステナビリティに関する基本方針の策定、マテリアリティ(重要課題)の特定、目標の設定や達成に向けた施策の検討、進捗管理、達成状況の評価等を行っております。また、定期的に取締役会へ報告・提言を行っております。

当社グループでは、リスクマネジメント委員会において統括的な関係会社全体のリスク管理を行っております。当社および関係会社に関して洗い出されたリスクについて重要度を判定し、当該リスクへの対策を実施しております。また、経営判断に関するリスクについて、必要に応じ外部専門家等の意見を求めながら取締役会において十分に議論を尽くし、意思決定を行っております。

また、サステナビリティに係るリスク及び機会の識別、優先的に対応すべきリスク及び機会の絞り込みについては、リスクマネジメント委員会と連携しながら、サステナビリティ委員会にて検討し、当社グループに与える財務的影響、当社グループの活動が環境・社会に与える影響、発生可能性などを議論してまいります。

 


 

(2)戦略

当社グループの経営の基本方針、目標とする経営指標、中長期的な経営戦略は、前述「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」のとおりです。

その中で、当社グループのサステナビリティへの取り組みに関して、2023年7月18日の取締役会において決議し、同日に公表した基本方針は次のとおりです。

 

サステナビリティ基本方針

 

 当社グループは、企業理念「未来をつくろう Discover Something New.」、およびビジョン「やればいいじゃん! Just go for it!」を掲げ、当社グループの事業活動を通じて、持続可能な社会の実現に向けた課題の解決に貢献してまいります。

 また、私たちは国際連合が採択した持続可能な開発目標(SDGs)の趣旨に賛同しております。私たちの取り組みが17のゴール達成の一助となるよう、グループ全体でサステナビリティ活動を推進してまいります。

 

 

この基本方針のもと、ステークホルダー及び当社グループの持続的な成長のために対応すべき重要度の高い課題(マテリアリティ)を分析・評価し、環境、社会、ガバナンスおよび当社のビジネスの4つのカテゴリーごとに特定するとともに、カテゴリーごとの取り組みに関する基本的な考え方を設定いたしました。

カテゴリー

マテリアリティ

(重要課題)

取組に関する基本的考え方

環境

Environment

・気候変動への対応をはじめとした広範な地球環境の保全

当社グループは、事業活動を通じて生活者やお客さま企業の地球環境保全に向けたイノベーションを後押しするとともに、私たち自身が消費するエネルギーを抑制し、気候変動などの広範な環境問題の解決に貢献してまいります。

社会

Social

・人的資本の充実

・多様性、公平性、包摂性(DE&I)の向上

・産学官/幅広いパートナーとの連携による社会貢献活動の推進

当社グループの事業活動において、人材こそが付加価値創出のための最も重要な資本であると認識しております。このため、世界中から多様で高度な専門性を持つ人材を結集し、育成し、活躍の場を提供することが重要と考えております。

また、持続可能な社会の実現に貢献するため、パートナーとの連携による取り組みを推進してまいります。

ガバナンス

Governance

・コーポレートガバナンス機能、内部管理体制の拡充化

・リスクマネジメント、情報セキュリティ、プライバシー保護の更なる強化

・ステークホルダーへの適切な情報開示と対話の促進

当社グループの持続的成長には、海外の拠点、子会社を含むグループ全体におけるコーポレートガバナンス機能、内部管理体制の強化が不可欠であると認識しております。

また、当社グループの成長は、関連法令・規制を遵守した上での健全で公正な取引に立脚したものでなければならないと考えております。

ビジネス

Business

・経済的成長とサステナビリティ活動の両立

当社グループの祖業である生活者調査とそこから創出される様々な新しいビジネスは、持続可能な社会の実現に向けた課題解決のための取り組みと両立することができると考えております。

このため、持続可能な社会の実現に向けた課題解決に関わるサービス収益について、その内容の発展と成長を推進してまいります。

 

また、気候変動につきましては、「気候変動への対応をはじめとした広範な地球環境の保全」をマテリアリティにしております。当社グループにおける気候変動のリスクと機会は、以下のとおりであります。

区分

発生時期(※)

主な影響

影響度

移行
リスク

政策・法規制リスク

短~中期

・炭素税等、温室効果ガス排出を抑制する政策導入・規制強化への対応に伴うコストの増加

・再生可能エネルギーへの転換および調達によるエネルギーコストの増加

市場リスク

短~中期

生活者の消費行動の変化などに起因する当社既存サービスの需要低下 

評判リスク

短~中期

・気候変動への対策が不十分なことによる顧客、投資家、従業員などのステークホルダーからの信頼失墜と企業価値低下

物理的
リスク

急性リスク

長期

・自然災害の発生によるオフィスや従業員、パネルなどの被災、および売上機会の損失

慢性リスク

中~長期

・温暖化等による空調費用の増加

機会

資源の効率性

中~長期

・省エネや再生可能エネルギーにかかわる技術の普及に伴う価格低下により、当社オフィスやデータセンターにおけるコスト削減

製品/サービス

中~長期

・気候変動に起因する災害や感染症等により対面での接触が抑制されることによる、オンラインサービスの需要増加

・脱炭素社会の実現に向けた、政府や地方自治体、民間団体とのビジネス機会の増加

市場

中~長期

・気候変動に伴う生活者の意識や行動の変化により、新たな調査・分析ニーズの発生

・環境意識の高まりや脱炭素社会への移行により、新製品や新サービスにかかわるマーケティング需要が増加

評判

中~長期

・社会的な信頼性・イメージの向上により、人材の確保や企業価値の向上が期待できる

 

(※)短期:0~3年、中期:3~10年、長期:10~30年

 

(人的資本の充実に関する戦略・社内環境整備・取り組みについて)

当社グループの事業活動において、もっとも重要な経営資源は人材であると認識しております。顧客企業からの多様化する要求に応えていくためには、世界中から多様で高度な専門性を持つ人材を結集し、育成できる環境を整備し、活躍の場を提供することが重要と考えております(「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 人材の確保、育成」を併せてご参照ください)。

 

① 人材採用

当社グループには、多様な地域・ビジネス領域で事業を展開する会社が集合していることから、当社グループ全体としてのカルチャー「CMG Culture」を共有することに大きな意義があると考えております。そのため、ミッション(存在意義)である「未来をつくろう」をもとに、ビジョン(価値観)、「Road of Growth」(行動指針) に対しての共感度が、重要な採用基準となっております。また、カルチャーへの共感度とあわせて、全社で適性・性格診断の実施を行ってデータを蓄積し、採用のミスマッチが起きないようにデータを活用した採用を行うことにより、中長期的に活躍できる人材の確保に努めてまいります。

新卒採用に当たっては、消費者ニーズの多様化や顧客企業の調査手法の変化に柔軟に対応し続けられる人材、また未来に向けて自立・自走できるポテンシャルを持つ人材の採用に取り組んでまいります。新卒入社の早期離職を防ぐためにもインターンシップ等、選考の中で仕事体験ができるプログラムを実施しております。中途採用に当たっては、グループ全体の事業拡大に並走できる専門性の高い人材確保を強化してまいります。

 

② 人材育成

当社グループでは、全社員に冊子「CMG Culture Book」、「CMG Technical Book」を配布しております。「CMG Culture Book」は、グループとして大事にしたい価値観や考え方を、「CMG Technical Book」は、会議や企画、組織間コミュニケーション等、より具体的な業務シーンにおいて高水準のパフォーマンスを発揮するための心得をまとめたものです。

これらの冊子の内容を、当社グループの企業文化(Culture)として定着させて組織と人の成長にドライブをかけ、企業としての成果を最大化させることが組織・人材開発における最大のテーマです。時間はかかりますが、規則や仕組みに拠るだけでなく、価値観や考え方を基に自立自走し成果を挙げる組織と人材の実現を目指してまいります。

その取り組みとして、2023年にBASIC (Business Ability School In Cross Marketing Group)を立ち上げ、継続的に「CMG Culture Book」、「CMG Technical Book」の浸透・定着を図りながら、グループ全体で「人が育つ風土」の醸成や「人を育てる仕組み」づくりを推進しております。

BASIC導入初年度にあたる2023年6月期は、全管理職を対象とした研修を幅広く実施しております。続く2024年6月期におきましては、階層別研修をよりきめ細かく再整備し、順次展開しております。具体的には、新たにマネージャーに昇進した社員を対象とした「新任マネージャー研修」に、「CMG Culture Book」を理解するコンテンツを取り入れ、マネジメントおよびリーダーシップを強化する内容に変更しております。また、次世代経営人材の育成を目的とした「CMG Gateway Session」「CMG TOP GUN」研修を新たに導入し、現在19名の選抜メンバーが、経営陣と向き合い課題に取り組みながら知識や視座を高めております。

また、中途社員向け「Culture Bookセッション」や、全社員に向けたイントラでの「CMG Technical Book」説明動画配信なども、随時行っております。

 

③ 労務・安全衛生

当社グループでは、従業員が健康で生き生きと働くために、健康状態の確認とフォローアップを行うほか、様々な視点から新しい取り組みや組織設置、制度導入を行っております。

例えば、グループ全体でいつでも利用できる健康相談窓口を設置しており、本人や上司から相談があった場合や、勤務状況、健康診断結果に応じて、産業医に健康相談が出来る機会を月4回設けております。また、本人の希望等に応じて、女性医師による面談が実施できるような、女性への配慮を実現する取り組みを行っております。

また、障害者雇用で入社した従業員の定着支援としては、定期的に産業医による面談を実施し、必要に応じて、受け入れ部署のほかご家族、地域の就労支援センター、ジョブコーチなどと連携しながら、就労継続支援を行っております。

産育休取得の促進への取り組みとしては、グループ内のQ&Aポータルサイト上で、産育休に関する制度や手続きに関する情報や相談窓口へのアクセス方法を公開しております。また休職前と復職前、復職3ヶ月後に面談を行い、休復職における不安を解消し、安心して休職に入り、職場復帰ができるように支援を行っております。

とりわけ、男性が育児休業を取りやすい仕組み作りとして、対象となる従業員とその上司に対して、取得に際しての疑問や不安を解消するために、個別に情報提供とアンケートを実施するほか、育児休業の取得経験がある従業員による座談会、社内報での事例紹介などを実施しております。このような取り組みの結果、男性従業員の約7割が育児休業を取得しております。

なお、2024年10月には、不妊治療を受ける従業員や、癌、心疾患、脳血管疾患、指定難病など、重篤な身体疾患を罹患した従業員に向けた休業を制度化し、従業員が安心して治療と仕事の両立、あるいは治療に専念できる仕組みを導入いたします。

 

(3)指標及び目標

当社グループはサステナビリティに関する戦略の遂行にあたり、社会、ガバナンス、ビジネスのそれぞれについて下記のとおり指標を定めております。なお、目標については現状実績からの改善を目指しますが、具体的な目標数値や目標年度については現在検討中であります。

 

項目

指標

2023年6月期実績

2024年6月期実績

環境

Scope1

Scope2(t-CO2、主要拠点のみ)

250.8

137.3

Scope3合計(t-CO2

577.3

703.3

カテゴリ1:購入した製品・サービス(サーバーの消費電力)

47.4

37.3

カテゴリ6:出張

249.8

365.3

カテゴリ7:雇用者の通勤

280.1

300.7

社会

入社者における女性比率%)(注1)

54.7

49.3

BASICプロジェクトに基づく管理職研修

参加者数(延べ):239名

受講時間(延べ):598h

参加者数(延べ):37名

受講時間(延べ):354h

女性管理職比率%)(注1、3)

― 

(22.3)

       14.1

(24.5)

男性の育休取得率%)(注1)

61.5

68.2

全労働者における男女の賃金差異%

(注1)

63.7

63.5

ガバナンス

社外取締役比率%

60.0

60.0

投資家向け説明会 開催数回/年

8

6

ビジネス

サステナビリティ関連売上高百万円/年
(注2)

136

131

 

(注1)当社グループでは、当該指標については、当社においては関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、当該指標に関する実績は、連結グループにおける以下の対象会社のものを記載しております。

対象会社:㈱クロス・マーケティンググループ、㈱クロス・マーケティング、㈱メディリード、 ㈱クロス・コミュニケーション、㈱エクスクリエ、㈱オルタナエクス、㈱ウィズワーク、㈱メタサイト、㈱クロス・プロップワークス

(注2)国内外における持続可能な社会の実現に向けた課題解決に関わる調査売上高

例:脱炭素ソリューションにかかわる市場調査、ダイバーシティに関する従業員意識調査、等

(注3)当社におきまして、管理職とは、マネージャー職以上のライン管理職としております。女性管理職比率について、下段には当社グループ内における人材管理上の職位「プロフェッショナルマネージャー」相当の従業員数を含んだ比率を記載しております。

 

3 【事業等のリスク】

以下において、当社グループの手がけるデジタルマーケティング事業、データマーケティング事業、インサイト事業の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から、以下に記載しております。

 

a.財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の異常な変動

① システム開発について

当社グループは、システムに関わる投資を定期的に行っております。システム開発にかかわる他社の知的財産の侵害につきましては、事前調査の徹底、オープンソースの利用徹底など十分注意を払っており、業績に影響を与えるリスクはきわめて低いと考えておりますが、システム開発の遅延・トラブル等が発生した場合、開発コストが増大するなど、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

② のれんの減損について

当社グループが実施しているM&A等においては、将来にわたり安定的な収益力を確保できることを十分に検討し買収しておりますが、将来、計画通りに収益を確保出来ない場合には、のれんに係る減損損失が発生し、当社グループの財政状態及び業績等に影響を与える可能性があります。

③ 為替レートの変動リスクについて

当社グループの海外子会社の財務諸表は現地通貨にて作成されるため、連結財務諸表作成時に円換算されることになり、為替相場の変動による円換算時の為替レートの変動が当社グループの財政状態及び業績等に影響を与える可能性があります。また今後、外貨建ての取引が増加し、当初想定した為替レートと実勢レートに著しい乖離が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

④ 自然災害、感染症等の発生について

当社グループは、自然災害や突発的な事故または重篤な感染症等が流行した場合には、本社、各グループ会社等の拠点の事業活動に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。また、国内・海外において渡航制限、行動制限が発生した場合には、営業活動、案件実査の実施等が困難な状況になること等により、業績に影響を与える可能性があります。

 

b.特定の取引先・製品・技術等への依存

⑤ サービスの陳腐化について

当社グループの手がける各事業は、商業活動に関連する技術及び業界基準の急速な変化に左右される状況にあります。また、それに伴いユーザーニーズが変化、多様化することが予想されます。これらの状況変化に対し、当社グループが適時適切に対応できなくなった場合、当社グループの業界における競争力が低下し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

⑥ 競合について

当社グループの手がける各事業においては、当社グループと類似する事業を提供している事業者の事業拡大や参入が相次いでいる一方、データマーケティング事業、インサイト事業においては調査案件の大型化や価格競争に対応するため、M&Aを含めた事業者の統合が進行しています。かかる状況は、当社グループの事業につき、大きな参入障壁がないことが一因となっており、今後も激しい競争下におかれるものと予想されます。当社グループの目論見どおり業績が推移しない場合、かつ効率的に対応できない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

⑦ システム障害について

当社グループの事業はインターネットを利用しているため、自然災害、事故、不正アクセス等によって通信ネットワークの切断、サーバー等ネットワーク機器に作動不能等のシステム障害が発生する可能性があります。その場合、当社グループの営業は不可能となります。これらの障害が発生した場合には、当社グループに直接的損害が生じるほか、当社グループのサーバーの作動不能や欠陥等に起因する取引の停止等については、当社グループのシステム自体への信頼性の低下を招きかねず、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 登録モニターの活用について

データマーケティング事業、インサイト事業において、関連会社である㈱リサーチパネルの登録モニターを主に利用しており、現時点におきましては、当社は当該登録モニターを独占的に利用しております。㈱リサーチパネル及びその親会社である㈱CARTA HOLDINGS(旧:㈱VOYAGE GROUP)とは、事業及び資本提携を通じて信頼関係を築いておりますが、何らかの事情により、㈱リサーチパネルの登録モニターの利用が困難な状態に陥った場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

c.特有の法的規制・取引慣行・経営方針

⑨ 人材確保について

当社グループの人材採用にあたっては、各業務分野における専門能力、及び組織マネジメントの観点から、良好な対人関係を構築する能力を極めて重視しております。また、育成・評価制度の充実により、社員の能力向上とモチベーションの向上を重要施策として掲げております。経済環境好転に伴う人材獲得競争の激化や人材育成が順調に進まない等の理由により、当社グループの事業の成長が阻害される可能性があります。

⑩ 海外展開におけるリスクについて

当社グループは、積極的に海外市場における事業の拡大をはかっており、海外展開におきましては、各地域特性によるビジネスリスクに加え、知的財産権に関するリスク、為替リスクなど多岐にわたり存在します。これらのリスクを最小限にすべく充分な検証を行うとともに、組織体制を整え、対策を講じたうえで海外展開を進めておりますが、各国における政治的要因、経済的要因及び社会環境における予測し得ない事態が発生した場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

⑪ 個人情報の流出の可能性及び影響について

当社グループの手がけるデータマーケティング事業、インサイト事業においては、アンケート回答者の個人情報を取得することがあります。個人情報の適切な取得・管理・運用を行うため、㈱クロス・マーケティング、㈱リサーチパネル及び㈱メディリードは(財)日本情報処理開発協会が運営するプライバシーマーク制度の認定事業者となっております。

⑫ 配当政策について

当社グループは、株主に対する利益還元を経営上の重要な課題のひとつとして認識しております。配当による株主への利益還元を安定的に継続しながら、現在の旺盛な資金需要、今後の事業投資計画等に鑑み、「連結配当性向15%前後を目安に継続的な増配を実施」することとしております。

しかしながら、本リスク情報に記載のない事項を含め、事業環境の変化、キャッシュ・フローの状況等により、当社の業績が悪化した場合には、継続的に配当を行えない可能性があります。

 

d.重要な訴訟事件等の発生

⑬ 訴訟等に関するリスクについて

当社グループの手がけるデジタルマーケティング事業においては、顧客からシステム開発、ウェブサイトやモバイルサイトの制作を受託し、契約内容に従い定められた期日までにサービスを完了し納品する事業を行っております。

しかしながら、開発や制作の遅れによる納期の遅延や、納品後の瑕疵が生じた場合には、費用が増大する可能性や当社グループの責めに帰する場合には違約金等損害賠償が発生する可能性があり、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

e.役員・大株主・関係会社等に関する重要事項

⑭ 事業拡大における重要な関係会社の異動について

当社グループは、持続的な成長を目指すに当たり、主に海外への事業展開をM&Aや新規子会社設立等により推進しております。M&A等における資金調達については、自己資金または金融機関からの借入金等を利用しており、借入金の残高が増加する可能性があります。また、M&A等により重要な関係会社の異動があった場合、当社グループの財政状態及び業績等に影響を与える可能性があります。

 

f.その他

該当事項はありません。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウィルス感染症に関わる各種制限の緩和等により経済活動の正常化が進展するなど、持ち直しの動きが見られました。一方で、混迷が長期化するウクライナや中東情勢のほか、世界的な金融引き締め等に起因する景気下振れや物価上昇等の懸念が、国内外で多様な業種に広がる当社顧客企業の収益環境に影を落とすなど、依然として先行き不透明な状況が継続しました。

当社グループの事業領域であるデジタルマーケティング市場及びマーケティングリサーチ市場は、顧客企業によるDX(デジタルトランスフォーメーション)への旺盛な投資を背景に堅調となっており、今後も中期的な成長が予想されます。一方で、消費者の購買行動は多様化が加速しており、これに対応した消費者ニーズ調査手法の革新やプロモーション手段の進化が求められるなど、競争環境の激化が想定されます。

こうした経営環境の下、当社グループは持続的な成長を実現するため、中期経営計画「DX Action 2024」の指針である「マーケティングDXパートナー」の実践へ向けた様々な取り組みを通じて、ビジネスモデルの進化とサービス対応領域の拡大を推進しました。

この結果、当連結会計年度における売上高は26,185百万円(前年同期比4.3%増)営業利益は1,844百万円(同5.5%減)経常利益は1,912百万円(同1.7%増)親会社株主に帰属する当期純利益は1,193百万円(同18.5%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

(デジタルマーケティング事業)

デジタルマーケティング事業では、国内のグループ各社がデジタル領域に軸足を置き、販促支援メディアの運営、プロモーション・マーケティング支援、システムの受託開発及び保守・運用、人材供給等、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関わる総合的なマーケティングソリューションを提供しております。

同事業の外部顧客に対する売上高は10,663百万円(前年同期比18.0%増)となりました。メディア・プロモーション分野における受注単価の回復、および株式会社トキオ・ゲッツをはじめとする新規連結効果が増収の主要因となりました。

同事業のセグメント利益(営業利益)は652百万円(同38.1%増)となりました。これは主に、売上高増加による売上総利益の増加によるものです。

 

(データマーケティング事業)

データマーケティング事業では、国内外のグループ各社において、マーケティングリサーチにおけるオンライン・オフラインでのデータ収集を中心にサービスを提供しております。

同事業の外部顧客に対する売上高は8,814百万円(前年同期比9.6%減)となりました。株式会社クロス・マーケティングを中心とする国内事業会社は、不透明な経済情勢の中でもお客様企業のリサーチ需要は底堅く、主力のオンライン調査が堅調で増収となりました。一方、海外事業を行うKadenceグループではコロナ禍後に発生していた需要が一巡し大幅な減収となったことが、同事業の減収の主要因となりました。

同事業のセグメント利益(営業利益)は2,222百万円(同12.7%減)となりました。これは主に、売上高の減少に伴う売上総利益の減少によるものです。

 

(インサイト事業)

インサイト事業では、国内外のグループ各社において、各種マーケティングデータの複合的な分析、消費者インサイトの発掘、レポート作成などを通じ、お客様企業のマーケティング戦略における意思決定への支援を行っております。

同事業の外部顧客に対する売上高は6,707百万円(前年同期比6.4%増)となりました。これは、1)株式会社クロス・マーケティングを中心とする国内事業会社では、オフライン調査を中心に需要が底堅かったこと、2)Kadenceグループの海外拠点では、インドネシアにおける収益拡大が継続したことに加え、上期までは厳しかった英国が下期に回復基調で推移したこと、等によるものです。

同事業のセグメント利益(営業利益)は966百万円(同6.1%増)となりました。売上高の増加により売上総利益が増加したことが、増益の主因となりました。

 

当連結会計年度末の財政状態は、資産については、流動資産が12,758百万円(前連結会計年度末比1,465百万円増)となりました。主な項目としては、現金及び預金7,377百万円、売掛金3,564百万円となっております。固定資産は3,872百万円(同856百万円増)となりました。主な項目としては、ソフトウェア548百万円、のれん1,233百万円、投資有価証券372百万円となっております。その結果、総資産は16,630百万円(同2,321百万円増)となりました。

負債については、流動負債が5,868百万円(前連結会計年度末比721百万円増)となりました。主な項目としては、買掛金1,234百万円、1年内返済予定の長期借入金1,154百万円、短期借入金473百万円となっております。固定負債は3,679百万円(同607百万円増)となりました。主な項目としては、長期借入金3,352百万円となっております。その結果、負債は9,548百万円(同1,328百万円増)となりました。

純資産は7,082百万円(前連結会計年度末比993百万円増)となりました。主な項目としては利益剰余金が6,273百万円となっております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,377百万円(前連結会計年度末比899百万円増)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果増加した資金は、1,571百万円となりました。主な要因は、法人税等の支払額904百万円、売上債権の増加額711百万円などの減少要因があった一方で、税金等調整前当期純利益1,933百万円の計上、減価償却費368百万円の計上、のれん償却額225百万円の計上などによる増加要因があったことによります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果減少した資金は、1,244百万円となりました。主な要因は、有形・無形固定資産の取得による支出245百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出905百万円などの減少要因があったことによります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果増加した資金は、451百万円となりました。主な要因は、長期借入金の返済による支出1,008百万円、配当金の支払額240百万円などの減少要因があった一方で、長期借入れによる収入1,700百万円の増加要因があったことによります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

当社グループでは、販売実績のほとんどが生産実績であることから、記載を省略しております。

 

b. 受注実績

当社グループでは、概ね受注から納品までの期間が短く、受注管理を行う必要性が乏しいため記載を省略しております。

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

金額(千円)

前年同期比(%)

デジタルマーケティング事業

10,662,810

18.0

データマーケティング事業

8,814,378

△9.6

インサイト事業

6,707,340

6.4

合計

26,184,528

4.3

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループでは、経営に委託された資本を最も効率よく活用すべく、適正資本構成を維持したうえでの収益力を図ることができるROEを、最も重要な経営指標として位置付けております。同時に、当社グループが成長段階であるとの認識に立ち、株主の収益成長期待に応えるため、売上高成長率、営業利益率を重視した事業経営に取り組んでおります。

 〔売上高成長率について〕

当連結会計年度の売上高成長率は、4.3%(前連結会計年度は0.8%)となりました。売上高成長率が前期比で上昇した主因は、デジタルマーケティング事業において、受注単価の上昇による増収効果やトキオ・ゲッツ等の新規連結による規模拡大効果等により、同事業の売上高が前期比18.0%増加したことで、とりわけ前期比9.6%減収となるなど伸び悩んだデータマーケティング事業のマイナス要因を補ったためです。

なお、データマーケティング事業の伸び悩みの主因となった海外事業については、当連結会計年度の第4四半期には前年同四半期比で増収に転換するなど回復基調であります。

こうした中、引き続き当社グループは、成長ドライバーとして位置付けるデジタルマーケティング事業ではM&Aを含む成長投資を適切に継続し、またデータマーケティング事業の回復トレンドを継続させていくなど、連結売上高全体として10%以上の売上高成長率を中期的に確保するための取り組みを実行してまいります。

 〔営業利益率について〕

当連結会計年度の売上高営業利益率は7.0%(前連結会計年度は7.8%)となりました。営業利益率が前年同期比で低下した主な要因は、比較的セグメント利益率の低いデジタルマーケティング事業の売上高構成比が上昇(前期比4.7%ポイント上昇)したことや、データマーケティング事業のセグメント利益率が減収に伴う粗利率減少により低下したこと等によります。

今後は、デジタルマーケティング事業のセグメント利益率改善や、データマーケティング事業の粗利益回復等をはじめとする利益率向上施策に取り組み、連結売上高営業利益率改善を目指します。

〔ROEについて〕

当連結会計年度のROEは、18.2%(前連結会計年度は17.1%)となりました。ROEが前期比で1.1%ポイント上昇した要因は、1)売上高当期純利益率が上昇したことで、2)総資産回転率の小幅低下をカバーし、併せて3)財務レバレッジを概ね前期並みの水準を堅持したためです。以下、要素項目ごとに説明いたします。

1)売上高当期純利益率(親会社株主に帰属する当期純利益÷売上高)は4.6%となり、前期の4.0%から0.5%ポイント上昇しました。これは主に、上述のとおり売上高営業利益率が前期比で小幅低下したものの、国内地方拠点新設に伴う補助金収入等の増加や、子会社統合に伴う税効果によるものです。

2)総資産回転率(売上高÷期首期末単純平均総資産)は1.69回となり、前年同期の1.83回に対し小幅ながら低下しました。要因として、上述のとおり主にデータマーケティング事業の売上高減少により連結売上高の成長率が4.3%にとどまり、期末にかけて新規連結効果等により増加した総資産の伸び(前期末比16.2%増)に対して低位となったためであります。

3)財務レバレッジ(期末総資産÷期末自己資本)は2.35倍となり前連結会計年度末の2.38倍と概ね同水準となりました。これは、利益創出等に伴う純資産の増加と、事業規模拡大等に伴う総資産の増加がバランス良く進んだことによります。

 

当連結会計年度末の財政状態は、資産については、流動資産が12,758百万円(前連結会計年度末比1,465百万円増)となりました。主な項目としては、現金及び預金7,377百万円、売掛金3,564百万円となっております。固定資産は3,872百万円(同856百万円増)となりました。主な項目としては、ソフトウェア548百万円、のれん1,233百万円、投資有価証券372百万円となっております。増加の主な要因は、新たに株式を取得した連結子会社ののれんの発生によるものであります。その結果、総資産は16,630百万円(同2,321百万円増)となりました。

負債については、流動負債が5,868百万円(前連結会計年度末比721百万円増)となりました。主な項目としては、買掛金1,234百万円、1年内返済予定の長期借入金1,154百万円、短期借入金473百万円となっております。固定負債は3,679百万円(同607百万円増)となりました。主な項目としては、長期借入金3,352百万円となっております。増加の主な要因は、新規借り入れによる長期借入金の増加によるものであります。その結果、負債は9,548百万円(同1,328百万円増)となりました。

純資産は7,082百万円(前連結会計年度末比993百万円増)となりました。主な項目としては利益剰余金が6,273百万円となっております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュフローの状況)

当連結会計年度においては、持続的な成長の実現のため、中期経営計画「DX Action 2024」の指針である「マーケティングDXパートナー」の実現へ向けた様々な取り組みを通じて、グループのビジネスモデルの進化と各事業における対応領域の拡大を推進しており、税金等調整前当期純利益を1,933百万円計上いたしましたことから、営業活動によるキャッシュ・フローは1,571百万円の資金の増加となりました。

また、下記「(資本の財源)」に記載のとおり、長期借入金について1,700百万円の借入をした一方で、1,008百万円の資金を返済しており、財務活動によるキャッシュ・フローは451百万円の資金の増加となりました。

その結果、現金及び現金同等物の期末残高が899百万円増加しております。

2024年度については、現段階の計画において大規模な資本的支出の予定は無く、今後の資金需要については、手元資金で賄うことを基本とし、必要に応じて金融機関からの借入等による資金調達を実施いたします。

その他については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

(資本の財源)

当連結会計年度においては、デジタルマーケティング事業の拡大を目的として、また、グループとして事業基盤を維持し、継続的な成長のための投資を実行していくことを目的として、長期借入金1,700百万円を調達いたしました。

(資金の流動性)

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は7,377百万円(前年同期比899百万円増)であり、有利子負債は主に金融機関からの借入金であります。なお、流動比率は217.4%であります。グループ全体として、一定の流動性は確保しており、現時点において懸念される点は無いと認識しております。

 

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、連結会計年度末における資産及び負債、連結会計年度における収益及び費用に影響を及ぼすような仮定や見積りを必要とします。これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、仮定あるいは条件の変化により、実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a. 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。

将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。

 

b. 固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損の検討にあたり、管理会計上の区分を基礎として資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

固定資産の回収可能価額は、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しており、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりでありますが、今後当社の連結業績に影響を与えるリスクとして特に注視すべき不透明な要因として、混迷が長期化するウクライナや中東情勢のほか、原材料価格の高騰や急激な為替レートの変動などが挙げられます。これらの要因が当社の顧客の企業活動に影響をもたらし、顧客企業の新商品・サービス開発投資、マーケティングDX投資、販売促進活動等が想定以上に急激に変更(加速または縮減)された場合、当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があるものと認識しております。

 

⑤ 経営者の問題認識と今後の方針について

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

経営上の重要な契約等は、以下のとおりであります。

契約会社名

相手先

契約の名称

契約内容

契約期間

㈱クロス・マーケティング

(連結子会社)

(注)1

㈱CARTA

HOLDINGS

(旧:㈱VOYAGE GROUP)
㈱リサーチパネル
(三者契約)

事業提携契約書

㈱CARTA HOLDINGS(旧:㈱VOYAGE GROUP)は自社会員を㈱リサーチパネルの運営するアンケートモニターサイトへ誘導を行い、㈱リサーチパネルは登録モニターの受付及びアンケートモニターサイトの運営を行う。当社はその登録モニターに対してアンケートを実施し、その対価として㈱リサーチパネルに対し当社の調査売上高に応じたモニター募集委託手数料を支払う契約

2006年12月1日から
2007年12月31日まで
(以降1年ごと自動更新)

㈱クロス・マーケティング

(連結子会社)

(注)2

㈱クレディセゾン
㈱リサーチパネル
(三者契約)

リサーチ事業
提携基本契約書

㈱クレディセゾンは自社カード会員を㈱リサーチパネルの運営するアンケートモニターサイトへ誘導を行い、㈱リサーチパネルは登録モニターの受付及びアンケートモニターサイトの運営を行う。当社はその登録モニターに対してアンケートを実施し、その対価として㈱リサーチパネルに対し当社の調査売上高に応じたモニター募集委託手数料を支払う契約

2008年5月23日から
2011年5月22日まで
(以降2年ごと自動更新)

 

(注)1.2021年9月6日付け契約上の地位の移転に関する覚書により、2021年10月1日より㈱CARTA HOLDINGS(旧:㈱VOYAGE GROUP)及び㈱リサーチパネルとの契約の契約当事者が㈱クロス・マーケティングから㈱メタサイトに移転しております。

  2.2022年7月1日付け契約上の地位の移転に関する覚書により、2021年10月1日より㈱クレディセゾン及び㈱リサーチパネルとの契約の契約当事者が㈱クロス・マーケティングから㈱メタサイトに移転しております。

 

(子会社株式の取得)

当社は、新たに株式会社クリエイティブリソースインスティチュートの全株式を取得しました。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。