第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

回次

第8期

第9期

第10期

第11期

第12期

決算年月

2020年6月

2021年6月

2022年6月

2023年6月

2024年6月

売上高

(千円)

6,895,240

10,258,082

14,380,373

19,219,994

25,430,756

経常損失(△)

(千円)

2,938,129

2,719,141

3,085,882

7,982,411

8,638,178

親会社株主に帰属する
当期純損失(△)

(千円)

2,972,985

2,756,177

11,609,024

12,338,435

10,150,671

包括利益

(千円)

2,972,985

2,758,262

11,598,196

12,197,227

10,213,896

純資産額

(千円)

13,854,571

46,871,624

36,428,622

27,059,061

16,952,345

総資産額

(千円)

17,898,314

55,286,315

47,413,069

42,786,885

39,953,073

1株当たり純資産額

(円)

278.29

849.99

636.68

444.66

286.47

1株当たり当期純損失(△)

(円)

66.18

54.88

208.22

215.64

174.43

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

75.1

84.2

76.1

60.1

42.0

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

1,380,383

192,533

1,069,658

4,753,626

6,767,571

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

1,306,560

3,180,839

4,483,968

1,935,418

1,088,016

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

11,970,462

35,380,307

451,989

543,864

3,705,277

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

15,136,430

47,143,365

42,046,956

35,905,852

31,750,897

従業員数
〔外、平均臨時雇用者数〕

(名)

481

117

656

139

916

158

1,299

190

1,722

202

 

(注) 1.第8期より潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

2.自己資本利益率については親会社株主に帰属する当期純損失が計上されているため、記載しておりません。

3.第8期、第9期、第10期、第11期及び第12期の株価収益率については1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

4.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を〔 〕内に外数で記載しております。

5.2019年8月26日開催の取締役会決議により、2019年9月25日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行いましたが、第8期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり当期純損失を算定しております。

6.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第10期の期首から適用しており、第10期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

(2) 提出会社の経営指標等

 

回次

第8期

第9期

第10期

第11期

第12期

決算年月

2020年6月

2021年6月

2022年6月

2023年6月

2024年6月

売上高

(千円)

6,928,022

10,300,835

13,517,521

18,209,878

24,257,095

経常損失(△)

(千円)

2,852,149

2,540,749

1,666,202

7,251,610

8,156,615

当期純損失(△)

(千円)

2,886,697

2,884,333

11,527,826

12,324,481

10,427,500

資本金

(千円)

6,215,195

24,151,096

24,724,300

25,640,623

26,348,152

発行済株式総数

(株)

48,320,822

54,778,125

56,695,564

57,875,116

58,600,020

普通株式

(株)

48,320,822

54,778,125

56,695,564

57,875,116

58,600,020

A種優先株式

(株)

B1種優先株式

(株)

B2種優先株式

(株)

C1種優先株式

(株)

C2種優先株式

(株)

D種優先株式

(株)

E種優先株式

(株)

純資産額

(千円)

14,027,110

46,916,007

36,506,510

26,085,198

16,944,961

総資産額

(千円)

18,078,095

53,896,327

46,480,433

41,428,118

37,206,251

1株当たり純資産額

(円)

281.86

850.80

639.04

446.99

286.35

1株当たり配当額

(1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純損失

(△)

(円)

64.26

57.43

206.76

215.40

179.19

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

75.3

86.5

77.9

62.4

45.1

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

従業員数
〔外、平均臨時雇用者数〕

(名)

481

117

572

131

721

151

1,208

180

1,687

202

株主総利回り

(%)

209.0

67.1

66.6

49.6

(比較指標 : TOPIX配当込み)

(%)

(―)

(126.9)

(124.7)

(157.8)

(198.2)

最高株価

(円)

5,560

12,750

10,160

4,250

4,020

最低株価

(円)

2,480

4,700

2,755

2,450

2,190

 

(注) 1.第8期、第9期、第10期、11期及び第12期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

2.自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

3.第8期、第9期、第10期、11期及び第12期の株価収益率については、1株当たり当期純損失が計上されているため記載しておりません。

4.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

5.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を〔 〕内に外数で記載しております。

6.当社は、2019年8月26日開催の取締役会において、A種優先株式、B1種優先株式、B2種優先株式、C1種優先株式、C2種優先株式、D種優先株式及びE種優先株式のすべてにつき、定款に定める取得条項に基づき取得することを決議し、2019年9月23日付で自己株式として取得し、対価として普通株式を交付しております。また、当社が取得したA種優先株式、B1種優先株式、B2種優先株式、C1種優先株式、C2種優先株式、D種優先株式及びE種優先株式は、2019年9月23日付で会社法第178条に基づきすべて消却しております。

7.2019年8月26日開催の取締役会決議により、2019年9月25日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行いましたが、第8期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

8.当社株式は2019年12月17日に東京証券取引所マザーズに株式を上場しましたので、株主総利回り及び比較指標の最近5年間の推移は第9期以降を記載しております。

9. 最高株価及び最低株価は、東京証券取引所マザーズにおける株価であり、2022年4月4日以降は同取引所グロース市場における株価を記載しております。なお、2019年12月17日をもって同取引所に上場しましたので、それ以前の株価は記載しておりません。

10.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第10期の期首から適用しており、第10期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

 

 

2 【沿革】

 

年月

概要

2012年7月

東京都港区にCFO株式会社(現・フリー株式会社)を資本金100万円で設立

2013年3月

「クラウド会計ソフトfreee(現・freee会計)」をリリース

2013年7月

商号をCFO株式会社からフリー株式会社に変更

2014年2月

「クラウド会計ソフトfreee iOS版(現・freee会計iOS版)」をリリース

2014年4月

「クラウド会計ソフトfreee Android版(現・freee会計Android版)」をリリース

2014年10月

「クラウド給与計算ソフトfreee(現・freee人事労務)」をリリース

2015年5月

e-gov API(注)を利用した日本初の労働保険申告機能をリリース

2015年6月

「会社設立freee(現・freee会社設立)」をリリース

2015年9月

「マイナンバー管理freee(現・freeeマイナンバー管理)」をリリース

2015年12月

金融機関向けプロダクトをリリース

2016年6月

AI研究に特化したスモールビジネスAIラボを創設

2016年10月

「開業freee(現・freee開業)」をリリース

2016年10月

株式会社みずほ銀行とAPI連携(メガバンクとのAPI連携は国内初)

2016年10月

「申告freee(現・freee申告)」をリリース

2017年3月

「クラウド会計ソフトfreee(現・freee会計)」において、上場会社(金融商品取引法監査)にも対応したエンタープライズプランをリリース

2017年7月

事業用クレジットカード「freeeカード」を開発

2017年8月

「クラウド給与計算ソフトfreee」をリブランドし、「人事労務freee(現・freee人事労務)」をリリース

2018年10月

子会社フリーファイナンスラボ株式会社を設立

2019年1月

アプリケーションプラットフォーム「freeeアプリストア」をリリース

2019年12月

東京証券取引所マザーズ(現・グロース市場)に上場

2020年4月

「プロジェクト管理freee(現・freee工数管理)」をリリース

2020年12月

「freeeスマート受発注(現・freee受発注)」をリリース

2021年4月

NINJA SIGN(現・freeeサイン)を提供する株式会社サイトビジット(現・フリーサイン株式会社)を子会社化

2021年7月

Likha-iT Inc.を完全子会社化

2021年11月

「freee勤怠管理Plus」をリリース

2021年12月

「freee経費精算」をリリース

2022年1月

「freeeカード Unlimited」をリリース

2022年6月

Mikatus株式会社を完全子会社化

2022年9月

Mikatus株式会社を吸収合併、「freee登記」をリリース

2022年10月

「freee許認可」をリリース

2022年11月

「freee販売」をリリース

2022年12月

「freee請求書」をリリース

2023年1月

sweeep株式会社を完全子会社化

2023年6月

Why株式会社を完全子会社化

2023年7月

Why株式会社を吸収合併

2023年10月

「freee人事労務 健康管理」をリリース

2023年12月

エン・ジャパン株式会社のフリーランス管理ツール「pasture」事業(現・freee業務委託管理)を会社分割により事業承継

2024年1月

sweeep株式会社を吸収合併

2024年6月

フリーサイン株式会社を完全子会社化

 

(注)API: Application Programming Interfaceの略称。ソフトウェアの一部を公開することで、他のソフトウェアと機能の共有を可能にするインターフェースを指す

 

3 【事業の内容】

(1) ミッション

当社グループは「スモールビジネスを、世界の主役に。」(注1)をミッションに掲げ、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム。」の実現を目指してサービスの開発及び提供をしております。

大胆に、スピード感をもってアイデアを具現化することができるスモールビジネスは、様々なイノベーションを生むと同時に、大企業を刺激して世の中全体に新たなムーブメントを起こすことができる存在だと考えております。

一方、日本全体の労働生産性は主要先進7ヶ国中最下位(注2)であり、なかでも中小企業の従業員一人当たり付加価値額は大企業の半分未満(注3)と、スモールビジネスの生産性は低い状況にあります。

当社グループは、AIを始めとする先進的なテクノロジーを用いてスモールビジネスにクラウドERPサービス(注4、5)を提供し、スモールビジネスの生産性向上と経営改善を支援してまいりました。

当社グループは、データとテクノロジーの活用が、スモールビジネスが更なる成長を遂げる鍵であると捉え、スモールビジネスこそがデータとテクノロジーの最先端を活用できる世界を追求することで、より良い社会を実現してまいります。

(注) 1.本書における「スモールビジネス」とは、個人事業主と従業員が1,000名以下の法人を指す

2.公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2023」

3.中小企業庁「中小企業白書(2023年版)」

4.クラウドサービス:ソフトウェアやハードウェアを所有することなく、ユーザーがインターネットを経由してITシステムにアクセスを行えるサービス

5.ERP:Enterprise Resources Planningの略称。日本語では、企業経営において点在するあらゆる情報を一箇所に集め、一元管理を行うシステムを指して一般的に「ERP」「ERPパッケージ」と呼ばれる

 

(2) サービス概要

当社グループでは、スモールビジネスのバックオフィスの生産性向上に寄与するSaaS(注1)サービスを開発・提供してまいりました。具体的には、2013年に「freee会計」を、2014年に「freee人事労務」をリリースしました。その後も、2015年に「freee会社設立」を、2016年に「freee開業」及び「freee申告」を、2020年に「freee工数管理」及び「freee受発注」を、2021年に「freee勤怠管理Plus」及び「freee経費精算」を、2022年に「freeeカード Unlimited」及び「freee販売」をリリースし、サービスの拡充に努めてまいりました。

更なるサービスの拡充に向けて、M&Aにも積極的に取り組んでおります。2021年には株式会社サイトビジット(注2)を子会社化し、電子契約サービス「NINJA SIGN(現・freeeサイン)」の提供を開始しました。また、2022年にはMikatus株式会社を完全子会社化及び吸収合併し、税理士事務所向け及びその顧問先に電子申告ソフト「A-SaaS(エーサース)」の提供を開始しました。2023年にはsweeep株式会社を子会社化(注3)し、請求書の受取・仕訳・振込・保管を自動化するサービス「sweeep(現・freee支出管理 受取請求書)」の提供を開始したほか、Why株式会社を完全子会社化及び吸収合併し、企業の情報システム部門向けの作業自動化ツール「Bundle」の提供を開始しました。さらに同年、フリーランス管理ツールの「pasture」事業をエン・ジャパン株式会社より承継し、「freee業務委託管理」の提供を開始しました。

なお、当社グループは、当社と連結子会社5社の合計6社(注4)で構成されておりますが、プラットフォーム事業を主な事業としており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント別の記載を省略しております。

(注) 1.SaaS: Software as a Serviceの略称。ユーザー側のコンピューターにソフトウェアをインストールするの ではなく、ネットワーク経由でソフトウェアを利用する形態のサービス

2.2022年8月に株式会社サイトビジットの社名をフリーサイン株式会社に変更。2024年6月にフリーサイン株式会社を完全子会社化

3.2024年1月にsweeep株式会社を吸収合併

4.当事業年度末時点

 

(3) 統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトを提供する「freee」が選ばれる理由

当社グループが提供するサービスは、資本、人材に限りのあるスモールビジネスにおける利用を前提に設計・提供しており、独自性の高い統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトとして、下記の特長がユーザー企業(注)に支持されています。

(注)当社グループのサービスを利用する個人事業主と法人の双方を指す

 

① カンタン、自動化

一般的な会計ソフトは、すべての取引を複式簿記形式の仕訳として手動で入力する必要があり、多くの手間を要するという課題があります。「freee会計」においては、例えばクレジットカードや銀行の口座との同期(データ連携を指し、以下、「同期」という。)を行うことで、金融機関のトランザクションデータを自動的にサービス上に取り込み、AIにより自動で仕訳を行うことができます。これにより、ユーザー企業は手作業や手入力にかけてきた時間と工数を削減し、生産性を向上させることが可能です。

また、「freee会計」は、簿記の知識がない人でも直感的に使用可能なユーザー・インターフェイスを提供しており、専門人材の確保が容易でないスモールビジネスが自社で財務会計(会計帳簿の作成)や管理会計までを実施することも可能にしております。一方で、高い専門性を有する会計事務所向けに複式簿記対応のインターフェースも提供するなど、幅広いニーズに対応しております。

さらに当社グループでは、会計ソフト業界において早期よりモバイル対応の開発を行ってまいりました。「freee会計」のモバイルアプリは、直感的に操作しやすいユーザー・インターフェイスを有し、簡単かつ効率的に業務を行うことができます。その結果、このモバイルアプリは、8万件超のユーザー評価をいただくなど、多くのユーザーに利用頂いていることに加えて、5段階評価で平均4.5の高評価(注1)を獲得しております。また、2022年に主要3社を対象として実施されたモバイルアプリの市場調査においても、シェア1位を獲得しております。(注2)

また、スモールビジネスにおいて、会計業務に次ぐ大きな負担となっていると当社グループが考えているのが、給与計算及び給与計算に関連する人事労務業務です。例えば、社会保険や源泉所得税などの専門的知識が求められる上に、勤怠情報や従業員の扶養状況などの詳細を把握することが求められ、さらに、申告や様々な届け出が必要となります。

「freee人事労務」では、従業員が必要な情報を登録し、勤怠をつけるだけで、会社の給与計算やそれに付随する申告書類の作成などを自動化することができるため、専門的知識がなくても利用可能です。

(注)1.Apple社が運営するApp Storeにて「freee会計」のiPhoneアプリが5段階評価で平均4.5のスコアを獲得。ユーザー評価数は8万件超(いずれも2024年8月末時点)

2.リードプラス株式会社「検索キーワードから紐解く業界分析:クラウド会計ソフト編」(2022年8月公開、2023年6月更新)。調査対象は、当社、株式会社マネーフォワード及び弥生株式会社

 

② バックオフィスオートメーション

一般的な単機能型会計ソフトが担う領域は経理業務全体の一部である記帳処理に留まり、上流工程である業務は別のソフトウェアやソリューションを使用する必要があります。例えば、販売業務に関連する請求書発行や入金消込、仕入業務に関連する購買申請や支払業務は、それぞれ会計ソフトとは異なるソフトウェアや、紙と印鑑などを使用したオペレーションが用いられていたため、各業務が分断され、非効率な業務構造となっています。加えて、同一の取引に係る情報について、会計ソフトへの転記作業を要し、さらに手入力ミスを防止するための確認作業を要するという課題があります。

「freee会計」は、スモールビジネス向け統合型会計ソフトであり、請求書機能やワークフロー機能(注)を同一のソフトウェア上で提供しているユニークな設計を特長としており、経理業務の枠を超えたバックオフィス全体の効率化にも寄与します。例えば、「freee会計」上にて作成した請求書の情報は、売掛金として自動で帳簿に登録され、かつ債権管理台帳にも登録されます。その債権情報と、銀行のオンライン口座の入金情報との連携により、自動的に債権の消込が行われます。一方、仕入取引又は経費支払の場合も、受領した請求書をスキャンして取り込むと、買掛金や未払金として自動で会計帳簿及び債務管理台帳に登録されます。加えて、登録された債務は「freee会計」の中から一括で振込指示を行うことができ、債務の消込も自動的に行われます。

このように、統合型会計ソフトである「freee会計」のソフトウェア上で上流工程にあたる業務を行うことで自動的に会計帳簿が作成されるため、経理業務自体も大幅に効率化されます。

同様に、人事労務の領域においても、従来は、従業員基礎情報、勤怠管理、給与計算、保険・行政手続、マイナンバー等の人事関連の定型業務に係る情報のマスタ(データベース)が別個のソフトウェアに散逸し、マスタ間の転記及び整合性担保に手間とコストが生じているケースが見られました。

「freee人事労務」も統合型人事労務ソフトとしての性質を持ち、従業員基礎情報の構築から給与計算及び行政手続等に至るまでのデータを一元管理することで、人事労務に係る定型業務を単一のソフトウェア上で完結し、人事労務担当者の負荷を軽減するとともに、従来の転記に伴うミスを避けることが可能となります。これにより、人事労務に係る定型業務の大幅な効率化につながります。

(注)経費精算、支払依頼、各種稟議など、各種業務フローに係る申請・承認を行う機能

 

③ 経営者の意思決定をナビゲート

一般的な会計ソフトは、税務を中心とした制度会計のための財務諸表作成とそのための記帳を主な目的として利用されています。経理業務は、会計ソフトだけでなく、様々なソフトウェアや紙と印鑑によるオペレーションの組み合わせにより行われていることが多く、販売や仕入れなどの取引発生から会計処理の完了までのリードタイムは長期化しています。また、様々なソフトウェアやアナログ手法の組み合わせによって経理業務が行われていることで、取引の発生から財務諸表までのデータは断絶されています。

そのため、会計ソフトを、経営指標のモニタリングや、元取引及び証憑に遡って深掘りする目的に利用することは難しいのが現実です。

当社グループの「freee会計」は統合型会計ソフトであるため、上流工程と会計帳簿を一体で扱うユニークな設計を有しており、リアルタイムに経営状況が記録され可視化されます。また、財務情報のみならず、財務諸表や各種レポートから、上流工程業務の証憑、取引先、部門等の情報を一元化して可視化し分析することができます。

例えば「予算・実績管理」機能を用いることで、予算と実績の差異について、財務諸表から個々の取引情報まで遡って分析することができます。さらに、蓄積された財務データを基に将来の資金繰りを示し、今後の経営の意思決定をサポートします。

人事労務ソフトの領域においても、従来は、従業員情報及び勤怠情報等のデータが別個のソフトウェアに散逸し、意思決定に有用なデータをリアルタイムで把握することが困難な状況が珍しくありませんでした。

当社グループの「freee人事労務」は、統合型人事労務ソフトであり、人事労務に係る情報を単一のソフトウェアに集約することで、適時に情報を把握することが可能となり、さらに「freee会計」の各種機能と連携することでより経営の意思決定への活用が可能となります。

 

④ 組織全体での利用による効率化と内部統制整備

一般的な会計ソフトは、経理業務に携わる従業員のみがライセンスを有して使うことが想定されています。

「freee会計」は、上述のワークフロー機能の提供を通じて、経理業務の枠組みを超えた企業のあらゆる事業活動において全従業員が活用することが可能な設計となっております。特に中堅規模以上の企業において、全従業員が利用することで「カンタン、自動化」「オペレーション効率化」の更なる追求につながる他、ワークフロー機能が有する承認プロセスの証跡を活用することで内部統制の整備にも貢献します。

また、「freee人事労務」と併せて利用することで、人事データ及び組織構造をリアルタイムにワークフローや経営分析に反映し、一層の業務効率化と高度な経営の可視化の両立を図ることが可能となります。

 

⑤ パブリックAPI(注1)による拡張性

従来のスモールビジネスでは、その企業特有の業務プロセスを自動化するために、独自のシステムを開発するしかありませんでした。しかし、独自のシステム開発は多額な開発コストとメンテナンスコストがかかり、IT投資の体力が限られるスモールビジネスにとって、大きな負担になっていました。また、そもそも独自のシステム開発自体が難しい規模の企業においては、市販のソフトウェアにアナログのプロセスを加えて補う運用がなされてきました。

このように自社開発された独自システムや、市販のソフトウェアと別のソフトウェア間でのデータ連携も容易ではなく、システム間のデータ連携はファイルの取り込み等の手作業によってなされ、工数が増大する上、転記ミス等の原因にもなっていました。

当社グループは、2013年に日本国内の会計ソフト業界では初めてパブリックAPIを公開して以来、クラウドとAPIを活用したオープン・エコシステム(注2)の構築を進めております。パブリックAPIの公開により、「誰でも、自由に」当社グループのサービスとデータ連携を行うためのアプリケーション開発を行うことができます。

そのため、スモールビジネス向けの業務ソフトウェアを提供する企業が、当社グループのサービスとの連携機能を自発的に開発することが容易になります。このような他社製品との連携機能が多く提供されることにより、スモールビジネスが社内業務のための独自のシステムやソフトウェアを開発する負担を大幅に削減することができます。

また、もし独自要件を追加したい場合でも、パブリックAPIを活用すれば、ユーザー企業が自社の業務プロセスに合わせて、カスタマイズ開発を従来より簡単に行うことができます。

2019年1月には「freeeアプリストア」をリリースしました。freeeのユーザー企業は、必要な業務カテゴリーごとにfreeeと連携可能なソフトウェアを検索することができ、数回のクリックで簡単にfreeeと連携させることができます。業務ソフトウェアを提供する企業にとっては、当社グループの顧客基盤にアクセスできる「freeeアプリストア」への掲載は、魅力的な販促手段となりえます。

(注) 1.組織内部のみでの利用を想定したAPIをプライベートAPIと呼び、他方で、組織外の主体にも利用を認めるものをオープンAPIと呼ぶ。オープンAPIの中でも、特定の提携企業のみでなく、幅広い外部企業が利用可能なものをパブリックAPIと呼ぶ

2.複数の企業同士が非排他的に提携することで、複数の企業が提供するサービスが共存共栄できる生態系のような環境を指す


以上の「選ばれる理由」を背景に、有料課金ユーザー企業数(注1)及びARPU(注2)の双方が伸長した結果、当社グループのARR(注3)は堅調に成長し、2024年6月期末には26,087百万円(うち法人19,536百万円、個人事業主6,551百万円)に到達するなど、事業は順調に拡大しております。

(注)1.当社グループのサービスを利用する個人事業主と法人の双方を指す

2.ARPU: Average Revenue Per Userの略称。1有料課金ユーザー企業当たりの平均単価。各期末時点における合計ARRを有料課金ユーザー企業数で除して算出

3.ARR:Annual Recurring Revenueの略称。各期末月のMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍して算出MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。対象月の月末時点における継続課金ユーザー企業に係る月額料金の合計額(一時収益は含まない)

 

 

(4) サービスラインナップ

①「freee会計」

個人事業主及び法人向けに提供している統合型クラウド会計ソフトです。

銀行口座やクレジットカード等との連携、請求書発行から入金管理、各種稟議や支払依頼など日々行われる経理の上流工程業務との統合により、手入力によるミスを防ぎ、経理作業にかかる時間を大幅に削減することが可能となります。同時に、上流工程業務まで含めた日々のデータを活かして、リアルタイムでの経営指標のモニタリングや詳細かつ打ち手に繋がる経営分析を可能としております。

さらに、従業員に個別アカウントを付与し、ワークフロー機能を利用することで、更なる業務の効率化と内部統制の整備にも寄与します。なお、ワークフロー機能は、承認プロセスの証跡を有していることから、上場企業に求められる内部統制報告制度に対応しており、上場準備企業及び上場企業における利用も非常に効果的です。

また、個人事業主向けプランにおいては、所得税の確定申告までを完結することが可能です。

加えて、freee会計で提供してきた経費精算機能及びワークフロー機能が利用可能な「freee経費精算」をリリースしています。さらに、インボイス制度に対応したプロダクトとして「freee会計」から特定の機能を切り出した「freee経理」と「freee請求書」をリリースしました。

②「freee人事労務」

法人向けの統合型クラウド人事労務ソフトです。

人事労務業務においては、給与計算、勤怠管理、保険・行政手続、マイナンバー管理等と多岐にわたり、かつ従来は業務ごとに使用するツールが異なるなど、複雑に分断されているという課題がありました。

従業員一人一人が、「freee人事労務」の従業員用アカウントを用いて、個人情報や勤怠情報を入力することにより、給与計算や年末調整の自動化に加えて、労務の諸手続の自動化や従業員マスタとなるデータベースの構築を可能とします。

また「freee会計」と「freee人事労務」を連携することで、給与情報を「freee会計」に自動で転記できるほか、「freee会計」にて申請した経費精算について「freee人事労務」にて計算した給与と一緒に支払うことが可能です。さらに、従業員マスタにおける役職や組織構造を反映したワークフローを、「freee会計」において自動で運用することが可能です。

加えて、幅広いニーズに適した勤怠管理プロダクトである「freee勤怠管理Plus」をリリースし、店舗数や拠点数が多いユーザーや、組織階層が複雑なMid領域(注) のユーザーにおけるニーズに対応します。また、「freee人事労務」のマスタと連携し健康診断等の管理が行えるサービス「freee健康管理」をリリースしました。

(注) 従業員が20名以上1,000名以下の法人を指す。

③「freee販売」

個人事業主及び法人向けに提供している統合型クラウド販売管理ソフトです。

販売管理業務においては、従来商談の発生から売上の入金等のプロセスが紙やエクセルで管理されることが多く、業務ごとに紙や表計算ソフト等の異なるツールを使用するなど、案件を獲得するまでの一連の工数の把握が難しいという課題がありました。

「freee販売」では請負型ビジネスにおける商談の開始からサービスの受注・発注後の納品の管理まで、一連の販売管理業務の全てを案件単位で管理することを可能とします。

また「freee会計」との連携により「freee会計」と共通の取引先マスタを利用することが可能になり、「freee人事労務」との連携により「freee人事労務」と共通の従業員マスタを「freee販売」で利用することができるため、「freee販売」において新たにマスタの初期設定作業を行うことなく利用を開始することができます。

④「freee申告」

「freee申告」は、会計事務所や小規模法人に提供している、「freee会計」とシームレスに連携したクラウド型税務申告ソフトです。

従来の税務申告ソフトは、会計ソフトとは分断されていたことから、会計ソフトから出力したデータを税務申告ソフトに入力する必要があるなど、多大な労力や時間がかかるという課題がありました。

「freee申告」の利用により、これまでプロセスごとに分断されていた会計と申告の業務がシームレスに連携し、「freee会計」に入力された財務情報をもとに税務申告書を自動的に作成することができ、更に、作成した申告書を電子申告することができます。

また、会計事務所は、顧問先とともに「freee会計」を利用し、更に「freee申告」を利用することで、会計事務所における記帳業務、顧問先の決算、申告書類作成等の多岐にわたる業務について、ワンストップでクラウド上で効率的に管理することが可能となります。

⑤「freeeサイン」 

「freeeサイン」は、個人事業主及び法人向けに提供している電子契約サービスです。

スモールビジネスにおいては、法務専任者を自社に抱えていないことが多く、担当者が他の業務と兼務しながら契約業務を行うことが一般的であり、本来注力すべき業務に時間を割けないなどの課題がありました。

「freeeサイン」は、法務の知識が浅い方や、業務に時間を割けない方でも、迷わず簡単に利用できるユーザー・インターフェイスを提供しており、契約書のひな形やテンプレートをご利用いただくことで簡単にドラフトを作成いただけます。契約書の新規作成から、社内承認プロセス、電子契約の締結、契約書管理まで、契約業務をカバーしているため、契約業務をワンストップでクラウド上で管理することが可能になります。

金融サービス

スモールビジネスの資金繰り改善を企図した金融サービスとして、「freeeカード」や「freeeカード Unlimited」等を提供しております。

「freeeカード」は、従来クレジットカードを作成することが容易でなかった個人事業主や中小企業に特化した事業用クレジットカードです。経費精算や仕入れなどの現金取引のキャッシュレス化によりバックオフィス業務の効率化を、またクレジットカード明細を自動で「freee会計」と同期することにより経営状況の可視化を実現します。

さらに法人顧客の資金ニーズに対応すべく、自社の与信モデルを活用した「freeeカード Unlimited」を提供しております。「freeeカード Unlimited」を利用することで、資金効率改善及びクレジットカード明細を自動で「freee会計」と同期することによる経営状況の可視化を実現します。

これらの金融サービスは、資金繰りの実態を把握できる場所である会計ソフト上で、資金繰り改善のアクションまでを可能にするものであり、従来の会計ソフトからは一線を画した価値を提供するものです。

以上に述べたプラットフォーム事業を事業系統図によって示すと、次のとおりです。


 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金
(千円)

主要な事業
の内容

議決権の所有
(又は被所有)
割合(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

フリーファイナンスラボ株式会社

東京都品川区

100,000

金融サービス

100.0

役員の兼任

資金の貸付

従業員の出向

フリーサイン株式会社(注1)

東京都品川区

113,197

電子契約サービス

100.0

役員の兼任

資金の貸付

従業員の出向

その他3社

 

(注)1. フリーサイン株式会社は債務超過会社であり、債務超過額は1,032,160千円であります。

      2. 有価証券届出書または有価証券報告書を提出している会社はありません。

 

5 【従業員の状況】

 (1) 連結会社の状況

2024年6月30日現在

従業員数(名)

1,722

202

 

(注) 1.従業員数は就業人員数であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

2.当社グループは、プラットフォーム事業を主なセグメントとしており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント別の従業員数の記載を省略しております。

3.従業員数が当期中において423名増加しておりますが、これは主に事業の拡大に伴う人員の増加によるものであります。

 

 (2) 提出会社の状況

 

 

 

2024年6月30日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

1,687

202

32.7

1.7

6,787

 

(注) 1.従業員数は就業人員数であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社は、プラットフォーム事業を主なセグメントとしており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント別の従業員数の記載を省略しております。

4.従業員数が当期中において479名増加しておりますが、これは主に事業の拡大に伴う人員の増加及び連結子 会社からの転籍によるものであります。

 

(3) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。

 

 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

   提出会社

当事業年度

管理職に占める
女性労働者の
割合(%)(注1)

男性労働者の
育児休業取得率(%)

(平均取得日数)
(注2)(注3)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注1)

全労働者

正規雇用労働者

(注4)

パート・
有期労働者

16.0

82.1

(80.1日)

68.5

77.6

100.5

 

 

 (注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したもの

      であります。

      2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の

      規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」

     (平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

      3.平均取得日数は、子が1歳以降の日数を除いて算出したものであります。
      4.当社グループでは年齢や入社年次等に関わらず、同一の等級や評価で男女間での賃金差異はありません。
       そのため、今回示した男女間賃金差異の要因は、より高い等級の女性割合が低いことであると考えておりま

      す。

       5.連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休
      業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による
           公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。