第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社は、「独自の技術とノウハウを開発し、地域社会にとって価値のある新しいインターネットサービスを提供す

る」という企業理念を掲げ、IPアドレスによるインターネットユーザーの位置情報に関連する技術をベースに、各種

のサービスを開発・運営することで、顧客の事業発展に寄与し、それによって当社自身も収益の拡大をして、地域社

会に直接・間接の貢献をすることを使命としております。

 IP Geolocation事業においては、当社サービスを顧客が利用するシーンを、ジオターゲティング、BtoBマーケティング、コンプライアンス(DRM)、不正検知の4つに分類し、それぞれでの顧客数と利用頻度の増加を目指していくことを基本方針としております。営業活動を行う営業部では、その下部組織であるグループ毎に予算と行動計画を月次で定め、その達成のためにPDCAサイクルを回して問題点の早期発見と修正を迅速に行うことを課しております。サービスの開発と運用を行う技術開発部では、各サービスを利用価値の向上・利用範囲の拡大とデータの更新・蓄積に力点を置き、これに加えて新規サービスの開発のために絶えずアンテナを張って、営業部門や利用者からの様々な要望や研究開発のヒントとなる情報の収集にも力を入れることとしております。

 IPアドレス移転事業においては移転の仲介を実現させるために、売り手候補、買い手候補を常に開拓することが求

められます。売り手候補についてはIPアドレスを多数保有する比較的社歴の古い大手企業や学校法人、さらにはそれ

ら企業・団体を紹介していただける外部協力者、買い手候補についても紹介者となる各種団体との連携が不可欠とな

ります。このため、多くの法人・団体との常日頃からのコミュニケーションの維持を継続することを具体的な活動方

針として掲げております。

 

(2) 経営環境

 「IPアドレスから顧客のウェブサイトにアクセスした人がどの地域からアクセスをしたのかがわかる」という技術

を活用したサービスを展開しているのは国内では当社のみであります。当社の各種サービスは顧客の事業活動におい

て「あったら便利」なツールではありますが、当社がIPアドレスに各種情報を付加しているのに対し、自社が所有し

ている法人企業データベースにIPアドレス情報を付加することにより当社と類似する結果を提示できるサービスが存

在し、競争状態が存在している状況であります。現状では潜在顧客数は非常に多く、競合先も含めて、潜在顧客に対

してまだ十分に接触しきれておりませんが、将来的に競合の状況が激しくなる可能性があり、いち早く一定の市場規

模を抑え、当社の優位性を確保したいと考えております。また、顧客のニーズを汲み取ってインターネット関連の新

しいサービスを開発、リリースしていくためには、数多くの顧客との関係構築がより一層重要となってまいります。

そのためにも既存顧客との関係強化と新規顧客の獲得は当社の当面の最重要課題となっているものと考えます。

今後も引き続き、売上高増と技術力や企業価値の向上に努めて参ります。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は、以下の6点を主な対処すべき課題として取り組んでおります。

① 「SURFPOINT™」の継続的な拡充

 当社事業の土台となるデータベースである「SURFPOINTTM」の精度をより高いレベルで維持管理していくために、すでに取り込んである情報について専門調査員(ネットトレーサー)による詳細な調査とデータ反映を今後も日々継続してまいります。併せて外部の有料・無料の各種有益な情報を今後も継続して取り入れ、顧客のニーズを先取りした細かなターゲティング対応やIPv6アドレスなどの拡充を行ってまいります。

 

② 「どこどこJP」売上の拡大

 「どこどこJP」は、「SURFPOINT™」に蓄積された位置情報、企業情報、利用回線、気象情報ほか様々なデータを利用して顧客のマーケティング活動、広告活動、不正アクセス防止等の各種用途にご利用いただいております。顧客には比較的長期にわたって継続してご利用いただける当社の主要なサービスであり、当社の安定した収益源となっております。継続的なサービスアップデートによる新規顧客獲得、既存顧客向けのフォローアップを強化し、どこどこJPの利活用を促し、解約低減とさらなるビジネスチャンスの創出を狙ってまいります。

 

③  新領域に関しての研究調査

 通信環境として、5G回線や無料Wifi・Wifiスポットの普及により、スマートフォンなどの移動体による位置情報の重要性が高まっています。当社も、モバイルデータの重要性に着目して、データの充実や精度を向上させる技術研究開発に取り組んでまいります。

 

④ 営業体制の更なる強化

 「どこどこJP」「SURFPOINT™」といった弊社の主力サービスの拡販を中心に、強固な営業体制の構築は重要と認識しております。チャレンジ領域・拡大領域それぞれの対策を明確にし、顧客課題の解決とIP Geolocationの更なる利活用を推進すべく、顧客の特性やニーズの把握と顧客の課題解決のための提案力を強化するためにも営業人員個々のスキルの向上を継続的に行い、営業力の強化に努めてまいります。

 

⑤ 人材の育成・教育

 当社は、事業を拡大していくうえで、必要な人材を十分に確保していくことが重要であると考え、高い専門性を有

する人材の獲得及び育成に注力してまいります。そのため、幅広い人材採用活動を行うほか、教育研修制度の充実、

人事評価制度の拡充、業務の合理化・効率化、外部ノウハウの活用等、積極的に取り組んでまいります。

 

⑥ 内部管理体制の強化とコーポレート・ガバナンスの充実

 当社は、持続的な成長と企業価値の向上のため、内部管理体制の充実が不可欠であると認識しており、役職員のコ

ンプライアンス意識の向上、当社ならびに各事業の取引形態に即した内部管理体制を構築する等、コーポレート・ガ

バナンス体制の強化に取り組んでまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高及びIP Geolocation事業の売上高な

らびに同事業の売上高成長率を掲げております。これら指標の詳細につきましては、「4 経営者による財政状態、

経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分

析・検討内容 ⑤経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照くださ

い。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社は企業理念に「独自の技術とノウハウを開発し、地域社会にとって価値のある新しいインターネットサービスを提供する」ことを掲げており、インターネットを通じて「地域社会の活性化」を行うことを使命とし、インターネットユーザーの位置を特定するという技術開発を行っております。本報告書提出日現在、日本国内において本技術を事業化しているのは当社だけでありますが、この独自技術は数多くの企業に採用されており、また、国内の各自治体をはじめとした官公庁でも活用が進んでおります。当社は技術やサービスの提供を通じて、各企業の事業及び官公庁の取組みの変革を支援し、持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。

 当社がこのような事業活動を推進して行く上で、成長ステージに応じた多様な人材の確保・育成を含む人的資本に対する積極的な投資が必要不可欠であり、重要な経営課題として認識しております。さらに、当社は上場企業としてのガバナンスを重視し、コーポレート・ガバナンスの強化と経営全般の効率を図りながら、従業員が適法かつ適正に業務遂行するための行動規範の徹底や、財務報告の信頼性と透明性を高める仕組みを構築してまいります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、全てのステークホルダーに配慮した経営を行い、中長期的な持続可能性の確保と企業価値の向上を図るため、コーポレート・ガバナンス体制の構築に努めております。

 株主総会、監査役会、取締役会に加え、代表取締役社長の意思決定を補助するための幹部会議やリスクコンプライアンス委員会を設置し、サステナビリティに関する事項を含む重要事項の審議・検討を通じてガバナンスの向上に努めております。

 

(2)戦略

 当社における、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下の通りです。

① 人材育成方針

 当社の継続的な事業拡大を図るためには、安定した収益の確保と質の高いサービスを提供し続けることが重要であり、特に優秀なデータサイエンティストやエンジニアの確保・スキル向上及び営業力強化が優先的に対処すべき課題であると認識しております。この課題に対し、フルリモートワーク勤務による全国からの優秀な人材の採用や従業員紹介制度の促進、社内制度の充実等を図り、性別や国籍、年齢等に制限を設けず、多様な人材の確保と能力や成長余地の高い人材を平等かつ重点的に採用・育成して行く方針であります。また、2024年7月1日付で従来のグループ制を廃止し、更なる意思決定の迅速化と業務の効率化・迅速化、適性に応じた人材の柔軟な活用を図ってまいります。

 

② 社内環境整備方針

 従業員の定着を促進するため、制度化された公正・公平な人事評価を行い処遇に反映させるとともに、全従業員を対象に給与のベースアップや賞与の見直しなど必要な改善を行っております。また、2020年3月以降は全従業員を対象に原則フルリモートワーク勤務、1日、半日単位、1時間単位で休暇取得できる制度や地域活動における特別休暇等、介護や育児といったライフステージの変化にも柔軟に対応できる社内制度や組織体制を構築し、柔軟で多様な働き方の実現に努めております。

 

(3)リスク管理

 当社は、全社的なリスクマネジメントについて役職員に徹底することを目的とし、リスクコンプライアンス委員会を設置しております。当委員会ではサステナビリティに係るリスクを含めた、事業活動に関わる全てのリスクの識別、優先的に対処すべきリスクについて把握し、その対応を行っております。

 詳細は、「4コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」に記載の通りです。

 

(4)指標及び目標

 当社では、上記「(2)戦略」において記載した人材の育成方針及び社内環境整備方針の通り、サステナビリティ戦略において人的資本を重要視しております。指標として、全役員及び全社員に占める女性割合の増加を目指し、それぞれ中期的な目標達成に向けて人的投資を進めてまいります。全役員に占める女性の割合の目標指標として、2030年6月期までに30.0%以上、また全管理職に占める女性社員の割合は、本報告書提出日現在の割合は20.0%であり、30.0%以上の達成を中期的な目標としております。

指標

中期的な目標

全役員に占める女性の割合

2030年6月期までに30.0以上

全管理職に占める女性社員の割合

30.0以上

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャ

ッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりでありま

す。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

① 事業環境について

(a)競合について

 当社の主要なサービスの1つであります「どこどこJP」には、IPアドレスから利用者の属性や使用している地域を

特定することで各種サービスを開発・運営している企業は国内では当社しか存在していませんが、当社が提供してい

るサービスのうち、顧客のウェブサイトにアクセスしてきた法人の企業名が判明するものについては異なる手法で

「どこどこJP」と同様の結果が得られるサービスを提供する競合先が存在しております。今後も全く異なる手法で

「どこどこJP」と同様の内容を表示する他社サービスが生まれることにより、当社の競争力が低下して当社の業績に

影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社の主要なサービスの1つである「どこどこad」の主な用途のひとつでありますインターネット広告の市

場は競合の多い業界であります。インターネットマーケティング業界及びアドテクノロジー業界においては、SE(検

索エンジンマーケティング)サービスやアフィリエイトサービスを提供する企業が大手のインターネット関連企業を

はじめ多数存在し、広告サービスも多様化しております。また、情報メディアの領域では、様々なビジネスモデルの

ウェブサイトが数多く存在し、常に新しいウェブサイトが開発される等、厳しい競争環境が続いております。

 そのほか、「てくてくスタンプ」について、当社はウェブサイト上で手軽に利用可能なサービスとして展開しておりますが、異なる手法で同様の結果が得られるアプリを提供する企業が複数存在しております。

 このような環境のもと、当社は引き続きインターネット広告事業の拡大及び競争力の維持・強化に努めてまいりま

すが、インターネット広告業界における優れた競合事業者の登場、競合事業者によるサービス改善や付加価値の高い

ビジネスモデルの出現等により、当社の競争力が低下する可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性がありま

す。

 さらに、IPアドレス移転事業は仲介事業であるため同事業の参入障壁は高くないことから、今後は競合先が出現す

る可能性があり、その場合には当社の競争力が低下し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(b)インターネット広告・ウェブマーケティング市場の動向について

 近年、インターネット広告市場・ウェブマーケティング市場はインターネットの普及と急激な技術革新により、急

速に拡大してまいりました。しかし、急激に景気が悪化した場合、企業収益の大幅な悪化に伴う広告需要やウェブマ

ーケティング利用の減退が起こる可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(c)インターネット関連分野の技術革新について

 インターネット関連分野における技術革新は速く、現在利用している技術や業界標準が急激に変化することが予想

されます。また、技術革新に伴い顧客ニーズが変化する一方、多様なニーズに即したビジネスモデル及びサービスの

開発・進化が活発に進んでいます。当社では、そうした事態に対応するため、常に業界動向を注視し、迅速かつ適切

な対応をしていく方針でありますが、そのために多額の支出が発生することや、適切な対応がなされなかった場合に

当社の競争力が低下することも考えられ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(d)法的規制等について

 当社の事業は特定の法令による規制は受けておりませんが、「独占禁止法」、「不正競争防止法」、「景品表示

法」、「特許法」、「商標法」、「著作権法」等の事業会社を対象とする諸法令の遵守が義務付けられます。また、

インターネット関連分野においては「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する

法律」の適用を受けております。現状においては、これらの法律による規制の影響は軽微であると認識しておりま

すが、今後インターネットの普及に伴い、新しい法律や自主ルールが整備される可能性があります。

 また、当社は当社の業務の一部を業務委託契約の締結に基づいて事業者又は個人に委託することがありますが、当該行為においては「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)が適用される場合があります。当社は、法令を遵守して事業運営を行っておりますが、運用の不備等により法令義務違反が発生した場合には、当社の社会的信用の失墜等で、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 事業について

(a)IPアドレスをめぐる法的規制について

 当社の事業はIPアドレスを用いたサービスがその根幹をなしておりますが、現状、国内においてIPアドレスは個人情報とは位置付けられておりません。しかしながら今後個人情報保護の対象となる領域の拡大によりIPアドレスに関して新しい法律の制定や既存の法律の改正が行われる可能性はあります。

 当社では、IPアドレスが個人情報としての取扱いを受けることになった場合には、IPアドレスを当社データベース及び各サービスで利用する際に、個人の特定ができない情報に変換することで個人情報保護対応を行って従来どおりのサービス運営が続けられるようにする考えであります。しかしながらIPアドレスに関し、当該の対応方法では個人情報保護が不十分であるとみなされる場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、2022年4月1日に個人情報保護法が改正され、IPアドレスデータやこれに各種情報を紐づけたデータが個人関連情報に該当することとなったことに伴い、当社は個人関連情報提供者になったこと及び当社は当社の顧客に対し提供するIPアドレス情報を顧客保有のデータと結び付けて個人を特定する目的で使用するか否かを顧客に対し確認する義務が生じております。

 昨今、インターネット上のプライバシー保護の観点から、大手プラットフォーム各社がCookie(ウェブサイト閲覧情報等を一時的に保存しておくためのウェブブラウザ上の記憶領域及びそこに保存される情報)等の使用制限を行う動向があり、一方ユーザーにおいてはデータ提供に対する意識が高まり機能に制限をかけるなど、環境が変化しております。当社は、当社サービスを利用する顧客の利便性向上のため、当社事業の根幹をなすデータベースの拡充の一環としてCookie等の情報を一部外部から購入しております。Cookie等の使用により得られる情報が制限されたとしても、その部分は当社が提供する情報サービスの一部であり、当社サービスの根幹をなすものではありませんので、顧客にとって当社サービスが必要なくなるというものではありません。しかしながら、顧客にとって、当社サービスが提供する情報のうちの一部であるCookie等の情報への依存度が今後高まった場合には、Cookie等の使用制限が厳しく適用されることで、顧客の当社サービスの利用頻度が減少し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(b)インターネット広告配信サービスでの顧客の利用状況について

 当社のインターネット広告配信サービスを顧客が利用する際には、当社で、当該広告が景品表示法に抵触する内容

になっていないか個別に事前に全件について確認をしております。しかし、その確認が不十分で、結果として顧客が景品表示法違反となり得る広告を配信した場合、当社は直接的に法令違反の責任を負うものとはなりませんが、顧客の行為を放置したとみなされることにより社会的に責任を問われる可能性は完全には払拭することはできません。そのような事態が発生した場合には、当社の社会的信頼性の著しい低下を招く可能性もあり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(c)取引先の審査体制について

 当社は、反社会的勢力ならびに法令及び公序良俗に反する不良事業者とは一切関係を持たない方針であり、取引先の選定にあたっては記事検索を行って反社会的勢力との関連性の有無を調べ、事前に審査する体制を構築しておりま

す。したがって、選定基準に抵触する取引候補先との関係が生じる可能性は低く、現状問題は生じておりません。し

かし、万一、当社の取組みにも関わらず、そのような問題が発生した場合には、当社の社会的信頼性の著しい低下を

招き、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(d)システムトラブルについて

 当社は、IPアドレスを活用した顧客のウェブサイトの閲覧者に対して的確なマーケティング手法を打ち出したり、

広告を配信するためのアプリケーションの提供をインターネット環境において行っております。そのため、当社はサ

ービスの安定供給を図るためのセキュリティ対策と、コンピュータウィルスやハッカーの侵入を回避するために必要

と思われる対策を講じております。しかしながら、地震等の自然災害、停電等予期せぬ重大な事象の発生、新たなコ

ンピュータウィルスへの感染により、当社の設備又はネットワークに障害が生じる可能性があります。そうした事態

が発生した場合には、一定期間サービスの停止を余儀なくされる可能性があり、また、サービスの停止に伴う信用の

低下が営業活動に支障を及ぼすことも考えられ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(e)新規事業の収益性について

 当社は、顧客ニーズに即したサービスの提供を行うためには、新規に事業を立ち上げることも今後検討してまいり

ます。新たに手掛けた事業を早期に一定の事業規模にまで成長させ、市場における地位を確立するため、事業を推進

する手段として必要が認められる場合には、ソフトウエア開発への投資や第三者が運営する事業及び企業の買収、資

本業務提携の取組み等を行う可能性があります。当社は、事業の拡大に積極的に取り組んでまいりますが、ソフトウ

エア開発への投資や買収に伴う資金負担、広告宣伝費等の支出が発生し、収益性が向上しない可能性や、事業を推進

する過程において予測とは異なる事態が生じ、投資回収が困難になる可能性があります。このように事業展開が計画

どおりに進まない場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(f)受託案件の検収時期の変動あるいは収支の悪化について

 当社のサービスのうち、web制作・各種受託開発事業について、顧客の検収に基づき売上を計上しております。そのため、当社は受託案件ごとの進捗を管理し、計画どおりに売上及び利益の計上ができるように努めておりますが、受託案件の進捗如何では、検収時期が変更されることもあります。この場合、顧客の検収時期によっては、売上計上が事業年度を前後することで当社の売上計上時期が変動し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、受託案件は、想定される工数を基に見積りを作成し受注しております。そのため、当社は顧客との認識のずれや想定工数が大幅に乖離することがないように工数の算定をしておりますが、この算定業務の大半が顧客とのヒアリング等で把握したデータの内容に依存することから、完全に事前に工数や成果を見込むことは困難であります。そのため、見積り作成時に想定されなかった不測の事態等により工数が増加し、受託案件の収支が悪化する場合があり、特にそれが大規模な受託案件の場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(g)解約について

 当社サービスを継続利用することで生じる月額課金額につきましては、顧客満足度を高めることで解約率を低く維持するための施策を行っておりますが、顧客企業の利用状況や経営環境の変化等の理由により、毎年一定の解約が発生しております。当社の予算及び経営計画には、実績を基に一定の解約を見込んでおりますが、競合他社に対する競争力の低下や、トラブル等の何らかの要因により当社の想定を超える解約が発生した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 経営体制について

(a)個人情報等の管理について

 当社は、事業の運営や人材の採用にあたり、顧客の企業情報や特定個人の情報(氏名、メールアドレス、住所等)

を取得しているため、個人情報保護法が定める個人情報取扱事業者としての義務が課されております。当社は、2009年5月に個人情報の取扱いを適切に行う企業であることを証明する「プライバシーマーク」を取得し、2010年5月に情報セキュリティマネジメントの国際規格である「ISO/IEC 27001」の認証を取得しており、個人情報及び顧客の企業情報等の管理について、法令を遵守し、アクセス権限を設定し、情報の取扱いには細心の注意を払い、外部ツールの利用の有無、利用目的の明確化、責任者による利用承認、制作したウェブサイトから入力された取扱情報および格納場所の明確化、取扱情報の公開・非公開の確認および、責任者による妥当性の承認等最大限の取組みを行っております。 しかし、万一、外部からの不正アクセスにより情報の外部流出が発生した場合には、当社に対して損害賠償請求がなされ、又は訴追等により、社会的信用を失う可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、2022年4月1日に個人情報保護法が改正され、IPアドレスデータやこれに各種情報を紐づけたデータが個人関連情報に該当することとなったことに伴い、当社は個人関連情報提供者に該当することとなりました。これにより、当社の顧客に対し提供するIPアドレス情報を顧客保有のデータと結び付けて個人を特定する目的で使用するか否かについて、顧客に対し確認する義務が生じております。

 

(b)人材の確保について

 当社では、今後も事業を拡大していく上で、必要な人材を十分に確保していくことが重要な課題であると考え、積

極的に人材の採用・育成を行っております。しかし、こうした活動が計画どおりに進まず、また、幹部人材及び予想

を上回る数の人材の社外流出があった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(c)特定人物への依存について

 当社の代表取締役社長で創業者でもある山本敬介は、当社設立以来代表取締役社長を務め、豊かな知識、経験をも

とに、経営に係るものとして当社の経営方針や経営戦略・事業戦略の決定をはじめ、当社にとって重要な役割を果た

しております。当社の事業規模が拡大するとともに、権限委譲を進めておりますが、現在においても同氏の影響力は

大きなものとなっております。そのため、同氏が当社の事業へ関与できない状況が発生した場合、当社の事業及び業

績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(d)小規模組織であることについて

 当社は、本報告書提出日現在、取締役4名、監査役3名、臨時雇用者を含む従業員62名と小規模な組織であり、現在の人員構成における最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後の業容拡大及び事業内容の多様化に対応するため、人員の増強、内部管理体制及び執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進まなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ その他

(a)知的財産権について

 当社は、事業展開する上で、技術・ノウハウ・知的財産権等は重要な位置を占めるため、特許権の取得による保護

を図るとともに、これらの保全管理については細心の注意を払っております。

 また、第三者の知的財産権を侵害することがないように常に細心の注意を払って事業活動を行っておりますが、現

在のインターネット関連分野における技術の進歩の早期化、グローバル化により、当社の事業領域における知的財産

権の現状を完全に把握することは困難であります。現在までのところ、当社の認識する限り、第三者の知的財産権を

侵害したこと及び侵害を理由とした損害賠償等の訴訟が発生している事実はありませんが、今後当社の調査・確認漏

れ、不測の事態が生じることにより、第三者の知的財産権に抵触する等の理由から、損害賠償請求や使用差止請求等

を受ける可能性があります。これらの事態が発生した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(b)訴訟の可能性について

 当社は、本書提出日現在、損害賠償を請求されている事実や訴訟を提起されている事実はありません。また、当社

は、法令違反となるような行為を防止するための内部管理体制を構築するとともに、取引先、従業員その他第三者と

の関係において、訴訟リスクを低減する等務めております。しかしながら、システムの障害や重大な人為的ミス等の

予期せぬトラブルが発生した場合、また、取引先との関係に何らかの問題が生じた場合、これらに起因する損害賠償

を請求される、あるいは訴訟を提起される可能性があります。損害賠償の金額、訴訟の内容及びその結果によって

は、当社の業績及び財政状態や社会的信用に影響を及ぼす恐れがあります。

 

(c)配当政策について

 当社は、株主の皆様に対する利益還元を重要な経営課題として認識しており、成長投資余力の確保と株主還元の両立を意識した経営を実践し、各事業年度の業績推移、財務状況等の経営成績を勘案しながら株主還元を検討することを基本方針としております。

 この方針に基づき、当事業年度末の期末配当については、当社普通株式1株につき普通配当10.00円とすることを決定しておりますが、今後の事業環境の急激な変化などにより事業が計画通りに進展しない場合には、安定的な配当を行うことができなくなる可能性があります。当社ではこれらのリスクを軽減するため、事業環境の動向に対する情報収集を積極的に行うとともに、それらに対応した事業計画の立案・実行を行ってまいります。

 

(d)繰延税金資産の回収可能性の評価における影響について

 当社は、将来の課税所得の見積りに基づいて、繰延税金資産の回収可能性を評価しているため、その見積額が減少

し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む税制の変更等があっ

た場合、その判断を行った期間に繰延税金資産を減額し、税金費用を計上することになります。その結果として、当

社の業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(e)資産評価リスクについて

 IP Geolocation事業では、自社開発したソフトウエアを活用したサービスを提供しており、今後も自社で事業に供

するソフトウエアを開発してまいります。当該ソフトウエアは無形固定資産として計上しておりますが、採算性の悪

化や将来にわたって収益が投下した資金以上に見込めないことが判明したときには減損処理を適用することで、業績

に影響を及ぼす可能性があります。

 

(f)自然災害について

 当社の事業活動に必要なサービス基盤については、自然災害等が発生した場合に備え、パブリッククラウド*を利

用しております。サービスの稼働状況は常時モニタリングされており、自然災害や障害への対応が迅速にとれる体制

が整っておりますが、不可避な状況の発生により、サービス基盤が稼働できない状況になった場合、当社の事業及び

業績に影響を及ぼす可能性があります。

 (*)パブリッククラウドとは、自社で専用のクラウド環境を構築せず、外部の業者が提供するクラウド環境を利

    用するものであります。

 

(g)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、役員及び従業員に対して、ストック・オプションとして新株予約権を付与しております。また、今後にお

いてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、これらの新株予約権が権利行使された場合、

当社の株式が新たに発行され、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。本報告書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は34,000株であり、発行済株式総数1,556,000株の2.2%に相当しております。

 

(h)大株主について

 当社の大株主である小川武重氏は、当社の創業間もないころから出資いただいているエンジェル投資家であり、自身又はその親族の資産管理会社である株式会社キャピタルバンク及び株式会社MASAならびに株式会社NORIKOの所有株式数を含めると本報告書提出日現在で発行済株式総数1,556,000株の36.2%(564,000株)を所有しております。同氏の投資目的は純投資ではありますが、同氏は、実質的には安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、その議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。当社といたしましても、同氏は安定株主であると認識しておりますが、何らかの事情により同氏又はその親族の資産会社保有の当社株式の多くが減少した場合には、当社株式の市場価値及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりで

あります。

 

① 財政状態の状況

(資産)

 流動資産は前事業年度末と比較して52,395千円増加し、708,029千円となりました。これは主に、前払費用が7,489千円減少した一方、現金及び預金が56,894千円増加したことによるものであります。

 固定資産は前事業年度末と比較して27,033千円減少し、20,700千円となりました。これは主に、投資有価証券が18,450千円、長期前払費用が4,370千円、ソフトウエアが3,657千円減少したことによるものであります。

 この結果、総資産は、前事業年度末と比較して25,361千円増加し、728,729千円となりました。

 

(負債)

 流動負債は前事業年度末と比較して5,231千円減少し、136,068千円となりました。これは主に、未払金が6,010千円、前受金が2,217千円増加した一方、未払法人税等が9,030千円、その他に含まれる未払消費税等が2,011千円減少したことによるものであります。

 この結果、負債合計は、前事業年度末と比較して5,231千円減少し、138,408千円となりました。

 

(純資産)

 純資産合計は前事業年度末と比較して30,593千円増加し、590,321千円となりました。これは主に、当期純利益の計上等により利益剰余金が29,668千円増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

 当事業年度における我が国経済は、昨年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行後、国内外の人流が活発化し、国内景気は回復傾向の動きに向かいつつあります。一方で、ウクライナ紛争の長期化、中東情勢の緊迫化、中国経済の悪化懸念、世界的な原材料価格の高騰や円安といった経済活動に影響を与える要因が払拭できず、景気の先行きは不透明な状況が続いています。

 このような状況の中、当社は「独自の技術とノウハウを開発し、地域社会にとって価値のある新しいインターネットサービスを提供する」という企業理念のもと、インターネットを通じて「地域社会の活性化」を行うことを使命とし、日々、事業活動を行っています。

 当事業年度は、当社が保有する「SURFPOINT™」データベース及び「SURFPOINT™」をweb上で利用できる「どこどこJP」の機能強化・価値向上を中心に取り組んでまいりました。「SURFPOINT™」への企業情報の追加、「どこどこJP」には、各種レポート機能やコンテンツ管理マネージャ(CMS)のトップシェアであるWordPressにIP Geolocationが活用できるプラグインの提供等を行っております。また、IR動画メディア「IRTV」、最新テクノロジーやデジタル社会に関連するニュースを扱うテクノロジーメディアサイト「GIZMODO」での動画公開、各種SNSを活用したプロモーション施策、各種セミナー開催など、会社やサービスの認知向上に努めました。「どこどこJP」を中心としたサブスクリプションサービスにつきましては、サービスアップデートの継続実施、積極的な営業活動と解約防止に注力した結果、前事業年度を上回る売上高を確保することができました。一方で「web制作・各種受託開発」、「てくてくスタンプ」につきましては、自治体案件の受注が想定に届かず、前事業年度の売上を下回る結果となりました。この結果を受け、今後はサブスクリプションサービスに営業リソースを注力し、「web制作・各種受託開発」、「てくてくスタンプ」につきましては、既存の取引と受注確度の高い案件に営業リソースを配分し、効率的な営業活動を推進いたします。今後も引き続き、売上高増と技術力や企業価値の向上に努めてまいります。

 なお、投資有価証券のうち、実質価額が著しく低下したものについて減損処理を行い、投資有価証券評価損18,450千円を計上しております。

 この結果、当事業年度の売上高は716,937千円(前事業年度比6.6%減)、営業利益は76,261千円(同34.3%減)、経常利益は77,443千円(同34.0%減)、当期純利益は37,817千円(同0.5%減)となりました。

 セグメント別の状況は次のとおりであります。

 

(IP Geolocation事業)

 「SURFPOINT™」、「らくらくログ解析」は、既存の取引先の安定的な利用に加え、第4四半期より新規の金融案件を複数件獲得することができました。「どこどこJP」は、2023年8月に無料プランをリリース、同年10月にWordPressプラグイン「DocoDocoStoreLocator」など数々の機能追加を実施し、新規既存顧客への営業活動を強化した結果、案件獲得数は増加いたしました。また一方で既存顧客に対し「どこどこJP」利用に関する相談会を定期的に実施するなど利用顧客のフォローアップを強化し、「どこどこJP」の利活用を促進させた結果、解約数が前事業年度を下回りました。これにより「SURFPOINT™」、「らくらくログ解析」、「どこどこJP」において、前事業年度の売上高を上回る結果となりました。「どこどこad」は、第2四半期に発生したシステム障害は解消しておりますが、大型案件の受注に至らず、前事業年度以上の売上高を確保することができませんでした。「web制作・各種受託開発」では、民間企業の大型webサイトリニューアル案件を受注できた一方で、自治体案件の獲得が進まず売上高は前事業年度並みの売上高となりました。「てくてくスタンプ」は、当初計画していた受注数には至りませんでしたが、2023年8月にリリースした無料プランにおいては民間企業のトライアル利用が増え、今後適用範囲の拡大に向けサポートを強化してまいります。

 第3四半期に立ち上げた自治体向けDXメニューや既存・新規顧客向けにポストCookie対策としての解析支援サービス、セールスマーケティング支援メニューにつきましては、来年度以降に売上の貢献が見込まれる案件も獲得しつつあり、継続して積極的な営業活動を推進いたします。

 これらの結果、当事業年度における同事業の売上高は699,379千円(前事業年度比1.4%減)、セグメント利益は60,115千円(同2.4%減)となりました。

 

(IPアドレス移転事業)

 当事業年度においては、前年度のような大口案件は見込んでおらず、ケーブルテレビ局やIT企業など中小規模、複数案件の仲介を行い見込み通りの結果となっております。今後につきましても大口の案件の受注は見込んでおりませんが、引き続き市場ニーズに応じ、適切な対応を行い、更なる取引先確保に向け、積極的に営業活動を推進致します。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末と比較して56,894千円増加し、614,304千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、66,128千円の収入(前年同期は42,103千円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益59,519千円に対し、増加要因として、減価償却費の計上6,241千円、投資有価証券評価損の計上18,450千円、前払費用の減少11,438千円、未払金の増加6,078千円、前受金の増加11,301千円があり、減少要因として、売上債権の増加12,322千円、未払消費税等の減少2,011千円、法人税等の支払額30,160千円があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、2,599千円の支出(前年同期は71,514千円の支出)となりました。これは主に、減少要因として無形固定資産の取得による支出2,599千円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、6,634千円の支出(前年同期は7,827千円の支出)となりました。これは、増加要因として、新株予約権の行使による収入1,045千円、減少要因として、配当金の支払額7,679千円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社の事業は、サービスの提供にあたり、製品の生産を行っていないため、記載しておりません。

 

b.受注実績

 当社の提供する主要サービスは、顧客の申込み又は契約締結から売上計上までの期間が短期間であるため記載

しておりません。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年7月1日

    至 2024年6月30日)

金額(千円)

構成比(%)

前年比(%)

IP Geolocation事業

699,379

97.6

△1.4

IPアドレス移転事業

17,557

2.4

△69.9

合計

716,937

100.0

△6.6

(注)1.セグメント間の取引は発生しておりません。

   2.当社では相手先別の販売実績において総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先は存在しな

     いため、主要な相手先の販売実績の記載は省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成に当たっては、当事業年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要とされております。当社は過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づいて、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において判断したものであります。

 

a.売上高

当事業年度の売上高は、前事業年度に比べ50,542千円減少し、716,937千円となりました。セグメント別の内訳としては、IP Geolocation事業が699,379千円(前年同期比1.4%減)、IPアドレス移転事業が17,557千円(前年同期比69.9%減)となっております。

「IP Geolocation事業」は、「SURFPOINT™」、「らくらくログ解析」は、既存の取引先の安定的な利用に加え、第4四半期より新規の金融案件を複数件獲得することができました。「どこどこJP」は、2023年8月に無料プランをリリース、同年10月にWordPressプラグイン「DocoDocoStoreLocator」など数々の機能追加を実施し、新規既存顧客への営業活動を強化した結果、案件獲得数は増加いたしました。また一方で既存顧客に対し「どこどこJP」利用に関する相談会を定期的な実施するなど利用顧客のフォローアップを強化し、「どこどこJP」の利活用を促進させた結果、解約数が前事業年度を下回りました。これにより「SURFPOINT™」、「らくらくログ解析」、「どこどこJP」において、前事業年度の売上高を上回る結果となりました。

「どこどこad」は、第2四半期に発生したシステム障害は解消しておりますが、大型案件の受注に至らず、前事業年度以上の売上高を確保することができませんでした。「web制作・各種受託開発」では、民間企業の大型webサイトリニューアル案件を受注できた一方で、自治体案件の獲得が進まず売上高は前事業年度並みの売上高となりました。「てくてくスタンプ」は、当初計画していた受注数には至りませんでしたが、2023年8月にリリースした無料プランにおいては民間企業のトライアル利用が増え、今後適用範囲の拡大に向けサポートを強化してまいります。第3四半期に立ち上げた自治体向けDXメニューや既存・新規顧客向けにポストCookie対策としての解析支援サービス、セールスマーケティング支援メニューにつきましては、来年度以降に売上の貢献が見込まれる案件も獲得しつつあり、継続して積極的な営業活動を推進いたします。

「IPアドレス移転事業」は、ケーブルテレビ局やIT企業など複数案件の仲介を行い、見込み通りの結果となっております。今後につきましては大口の案件の受注は見込んでおりませんが、引き続き営業機会の獲得に向け営業活動を推進いたします。

 

b.売上原価、売上総利益

当事業年度の売上原価は、自治体案件の受注に伴う外注費の増加等により、前事業年度に比べ4,380千円増加し、276,439千円となりました。

この結果、当事業年度の売上総利益は、前事業年度に比べ54,923千円減少し、440,498千円となりました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

当事業年度の販売費及び一般管理費は、当社ホームページの積極活用等で退職者補充を行い、主に採用広告費の抑制により10,344千円、役員報酬の減少7,651千円により、前事業年度と比べて15,055千円減少し、364,236千円となりました。

この結果、当事業年度の営業利益は、前事業年度に比べ39,868千円減少し、76,261千円となりました。

 

d.営業外収益、営業外費用、経常利益

当事業年度の営業外収益は1,182千円となり、これは主に講演料謝礼の計上によるものであります。

この結果、当事業年度の経常利益は、前事業年度に比べ39,860千円減少し、77,443千円となりました。

 

e.特別利益

当事業年度の特別利益は525千円となり、これは新株予約権戻入の計上によるものであります。

 

f.特別損失

当事業年度の特別損失は18,450千円となり、これは投資有価証券評価損の計上によるものであります。

 

g.当期純利益

以上の結果、当事業年度の法人税等合計は21,130千円となり、また、法人税等調整額は570千円となり、当期純利益は、前事業年度に比べ173千円減少し、37,817千円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。

 

④資本の財源及び資金の流動性

当社は、資金の源泉と流動性を安定的に確保することを基本方針としております。現状、新規拠点の設置やソフトウエア開発は、内部留保の資金によって賄っており、資金の源泉は営業活動によるキャッシュ・フロー及び過年度の財務活動によるキャッシュ・フローによるものであります。

 

⑤経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、目標とする経営指標として売上高と、安定的に推移する当社の主力事業でありますIP Geolocation事業の売上高及び同事業の売上高成長率を掲げています。当事業年度の売上高は716,937千円となり、前事業年度末と比較し50,542千円減少しました。このうち、IP Geolocation事業の売上高は699,379千円であり、同事業の売上高成長率は△1.4%となりました。売上高成長率の減少は主にWeb制作・各種受託開発において、Webサイトリニューアルを受注したものの官公庁における案件落札数が計画を下回ったことによりますが、「SURFPOINT™」の売上高が好調だったこと、及びサブスクリプションサービスにおいてサービスアップデートの継続実施、積極的な営業活動と解約防止に注力した結果、「SURFPOINT™」「どこどこJP」の新規獲得及び売上高は過去最高となり、Web制作・受託売上の不調を取り戻すことができました。

今後もサブスク型サービス「SURFPOINT™」「どこどこJP」を中心に更なるストック収入の強化に向けた基盤強化を図ります。

 

⑥経営成績に重要な影響を与える要因について

当社の経営成績は、取引先のニーズ、当社データベースへの情報の集積状況、人材の確保、競合先等、様々な要因による影響を受ける可能性があります。このため、当社事業を取り巻く環境に注視し、営業努力及び開発・運用の体制強化、内部統制システムの強化等によりこれらのリスク要因に対応していきます。

 

⑦経営者の問題意識と今後の方針について

今後の我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の収束の兆しが見えてきているものの、ロシアによるウクライナへの侵攻の影響による世界的な穀物及びエネルギー価格の上昇や、欧米各国のインフレと急激な円安の影響等により、先行き不透明な状況が続くものと予想されます。

当社を取り巻く環境は、より効果的なマーケティングの手法を求めたり、自社サイトへの不正なアクセスをいかに検知し、それらに対応するかを考えたり、コンテンツ等の配信を正しく安全に行うためのツールを欲したりといった法人各社の様々なニーズがますます高まる一方で、それらに対応できる多様なサービスが生まれており、競争は激しさを増してきております。こうした中で、当社としましては、IPアドレス移転事業については大口商談が成約すれば収益への貢献度が高いものの、競争が激化していることもあり、収益の多寡と予算の精度において見通しが十分にたてづらく、第26期につきましては2百万円程度で推移するものとしています。

IP Geolocation事業については、サブスク型サービス「SURFPOINT™」「どこどこJP」を中心に更なるストック収入の強化に向けた基盤強化を図ります。

顧客のニーズを汲み取りながら適切なサービスを販売する直接販売の利点を活かし、顧客との信頼関係を構築することで、長期取引につながるものと考え、顧客の属性やニーズに適した営業体制や営業手法の確立に加え、営業人員個々の営業スキルの向上にも努めてまいります。

開発に係る業務では、当社事業の土台となるデータベースである「SURFPOINT™」の精度をより高いレベルで維持管理していくために、すでに取り込んである情報について専門調査員(ネットトレーサー)による詳細な調査とデータ反映を今後も日々継続してまいります。

さらに、新しいインターネットの通信方法に関する規格であるIPv6に対する対応のため外部の研究会等に積極的に参画し、データベースのIPv6アドレスデータベースの充実及び対応サービスの拡充を図ってまいります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社は、顧客のニーズに基づいたインターネット関連アプリケーションの開発を行っており、また、将来起こりうる多様な変化に対応できるよう、最新の技術や動向を把握し、当社独自の特許技術を含め、データベース及びアプリケーションの改善を続けております。

 当社における研究開発活動は、技術開発部の業務の一環として行っており、その主体を担っております。

 当事業年度の研究開発費の総額は959千円であり、全てIP Geolocation事業におけるものであります。