当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日時点において入手可能な情報に基づき、当社が合理的であると判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、中長期的な外部環境の変化と当社グループのケイパビリティを踏まえ、「技術」「人」「顧客」の観点から、当社グループの存在意義「パーパス」を定めています。この「パーパス」の実現を通じて、持続的に成長し、中長期的な企業価値を向上させることを経営の基本方針としています。
「テクノプロ・グループ・パーパス」
『技術』と『人』のチカラで
お客さまと価値を共創し、
持続可能な社会の実現に貢献する。
「タグライン」
(2)目標とする経営指標
当社グループは、売上収益、営業利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益の中長期的な成長を重視しています。また、当社グループの売上収益と営業利益の大半を占めるR&Dアウトソーシング事業・施工管理アウトソーシング事業においては、売上収益の構成要素である、総在籍技術者数、稼働率、及び技術者一人当たり売上を重要なKPIとして管理しています。加えて、先行投資を伴う領域(M&A、技術者の採用・育成等)については、価値創造の観点から、資本コストを意識したROIC(投下資本利益率)指標を重視しています。
(3)外部環境
DX推進のための取組みはさまざまな産業で継続的に行われており、デジタル系技術者を中心とした需要に変化はないと想定しています。一方、中長期的には、構造的な技術者不足問題は解消されず、雇用法制に起因する国内企業における技術者外部依存は継続する見込みです。特に、ローコード/ノーコード開発や生成AI等、常に進化を続けるデジタル技術を自社に取り込むための、IT技術者ニーズはさらに高まると考えています。
総じて、日本を取り巻く中長期的トレンドとして、次のようなことが予想されます。
a.技術変化:デジタル技術・環境技術の開発加速と普及、開発の自動化
b.労働環境・市場の変化:構造的な技術者不足の継続や少子高齢化の進展、雇用の流動化と働き方の多様化
c.グローバル化:開発の海外移転や海外におけるデジタル技術の進展、グローバルな企業間競争の激化
このトレンドは、当社グループを取り巻く中長期的な需要と供給に、下記の影響を及ぼすと考えられます。
<需要面>
デジタル化ニーズの高まりを背景として、顧客の情報システム部門に加え、事業部門や現場でのデジタル化が浸透するとともに、全産業とIT産業の垣根が低下し、自前主義からの脱却(オープンイノベーションの浸透)が進みます。加えて、人材・役務の提供だけでなく、成果物、さらには課題の発見・解決策を求める顧客ニーズが高まります。
<供給面>
構造的な技術者不足を背景に、求職者優位の技術者採用市場が継続し、優秀な技術者獲得競争が激化していきます。加えて、フリーランス、副業といった多様な雇用形態が徐々に浸透し、シニア・女性・外国籍といった技術者供給源の重要性が増します。また、クラウドやリモートワーク・ツールの浸透により、ニアショアやオフショアでのサービス提供の可能性が高まり、特に、海外の技術者をいかに有効活用できるかが、供給制約への対処の一つとなっていきます。
(4)会社の経営戦略
上述の中長期的な外部環境を踏まえると、当社グループの経営戦略の焦点は、いかに魅力的な仕事を採り・創り、有能な技術者を惹きつけるか、になります。
そのためには、コア事業である国内技術者派遣業務で培った、大手顧客基盤とのリレーション、IT系技術者の規模、技術者育成システム、多様な技術・産業領域をカバーする技術者群、豊富なオーダーを背景とする採用力といった、従来のケイパビリティとコアコンピタンスだけでは不十分であり、「デジタル技術に対応した人材育成やリスキリング力」「国内の供給制約や雇用形態を超える技術者獲得力」「技術知見の組織的な蓄積と活用力」「顧客課題の発見や解決策提案と実行力」を新たに強化していく必要があります。
当社グループは、これらケイパビリティの進化に立脚して、コア事業である技術者派遣業務を常に進化させていく必要があり、コア事業の「質」をより重視した成長を図るとともに、「多角化」ではなく『進化』を軸とした事業変革を推進し、中長期的な需要と供給の変化を先んじてとらえた事業拡大とビジネスモデルの変容を目指します。
上記の観点から、以下を主な内容とした、2022年6月期から始まる5ヶ年の中期経営計画『Evolution 2026』を策定し、遂行しています。
(ア)コア事業の基本運営方針
デジタル化や技術者に対する旺盛な需要を背景に、コア事業の短期的成長はまだ十分見込まれます。しかし、中長期的には、技術革新の加速、開発の自動化や海外移転、技術者採用難と賃金上昇等が顕在化した場合には、現行の従来型派遣モデルのまま、売上成長のドライバーとして技術者数の増加、すなわち「規模」のみを追い求める事業リスクは大きくなると考えます。また、同業他社との差別化要因や競争優位の源泉として、これまでの技術者の採用力や顧客への配属力から、人材開発/育成機能の重要性が一段と増しています。採用面においては、国内需給ギャップを解消するため、育成前提の技術者や高スキルの外国籍技術者の採用を強化します。さらに、現在主体とする正社員雇用形態に加え、雇用の流動化や働き方の多様化をとらえた人的資本の活用を志向します。育成面においては、技術者育成機能の強化(教育体制、研修コンテンツ開発、キャリアプラン助言等)やOJT育成環境の拡大(チーム派遣、請負・受託、アライアンス等)を推進します。営業面においても、IT領域における新規顧客セグメント(流通や金融等の非製造業、公共等)を開拓するとともに、顧客接点を活かした、現場技術者による新規オーダー・顧客課題の捕捉を促進します。
(イ)コア事業の進化の方向性
コア事業のバリューチェーン(採用・育成・配属)及び顧客基盤・技術者基盤をレバレッジすることで、「多角化」ではなく『進化』の方向性として、ソリューション事業、技術者育成事業、及びDX推進事業のこれまで以上の成長を図ります。
<ソリューション事業>
従来型技術からデジタルへといった技術領域の拡張、単なる人材だけではなく成果・構想へといったデリバリーの拡張を推進し、デジタル要素技術の役務提供サービス、従来技術にデジタル要素技術を融合した開発サービス、デジタル系グローバル製品に係る技術開発サービス等を提供いたします。ソリューション事業においては、注力するデジタル要素技術・ソリューションを具体的に定めるとともに、グローバル展開を志向することで、国外の技術者・開発ノウハウの活用を推進します。
<技術者育成事業>
当社グループの技術者育成資源を集約化したうえで、コア事業の営業チャネルと技術者育成ノウハウを活かし、技術者育成カリキュラムやコンテンツの企業向け外販を推進します。さらには、上流工程としての技術者育成コンサルティングや技術者育成IT基盤を提供することによって、当事業を当社グループの収益源の柱の一つへと育てます。
<DX推進事業>
技術者の採用から配属・退職に至るライフサイクルデータを一気通貫で蓄積・分析できることは、当社の競争優位性の一つです。これまで開発を進めてきた「タレントマネジメントシステム」を一段と進化させ、現場にて実効性のある分析・施策の仮説検証に基づくAIエンジンを開発し、当社グループのデジタルトランスフォーメーションを実現します。加えて、プロフィットセンター化を視野に、データ知見を活用したビジネスモデルを中長期的に構築していきます。
現行の事業セグメントとの関係では、「ソリューション事業」と「DX推進事業」は、R&Dアウトソーシング事業、施工管理アウトソーシング事業、及び海外事業に包含され、「技術者育成事業」は、国内その他事業に包含されます。それぞれの主な短中期的な取組みは、以下のとおりとなります。
① R&Dアウトソーシング事業・施工管理アウトソーシング事業
当社においては、技術者一人当たり売上の向上や間接業務効率化等のオペレーション改善を通じて、収益性を高める余地はまだ十分にあると考えています。したがって、多様な採用チャネルの活用と技術者リテンションの取組み強化による技術者数の増加を図るとともに、シフトアップ・チャージアップの推進により、成長と収益性向上を実現いたします。そのためには、注力する要素技術やソリューションを明確化したうえで、技術者育成制度や先端的技術力を有するベンチャーとのアライアンス、有望ITベンダーとのパートナリングといった、外部エコシステムを活用したデジタル技術の習得や役務提供を超えるソリューションの提供が不可欠となります。さらには、情報システム投資によるコアプロセスのIT武装化により、技術者の採用・育成・配属・退職等に係る膨大なデータを蓄積・分析することで、より効果的なビジネスプロセスを実現いたします。
② 国内その他事業
人材紹介、技術者向け教育研修はそれぞれ、主力事業であるR&Dアウトソーシング事業・施工管理アウトソーシング事業のコアプロセス(採用・育成)の一翼を担う業務であり、セグメント間のシナジー創出を強化し、当社グループによるデジタル技術者の獲得、技術者の高付加価値化・ソリューション化に寄与することが基本方針となります。加えて、人材紹介では、独自の技術者・外国籍データベースやオフショアオペレーションを活かした差別化を志向いたします。また、技術者向け教育研修では、R&Dアウトソーシング事業の技術者育成で得られた知見・ノウハウを活かし、デジタル技術領域の育成メニューやe-Learningを充実させ、企業顧客への外販を強化いたします。
③ 海外事業
当社グループの海外拠点は、ローカルベースでのビジネス(現地の技術者を現地の顧客に配属)を主力展開してきました。今後は、国内のソリューション提供に資するデジタル技術・技術者資源の獲得を目的とした拡大を進めます。デジタル技術での開発力とコスト競争力といった観点から海外拠点を拡充し、オフショアリングモデルと新技術領域でのCenter of Excellence(COE)拠点の構築を推進することで、海外技術者基盤を活かしたソリューションの提供、コストアービトラージを享受する開発体制の強化及び技術・ノウハウの高度化、並びに技術者の国内移転を加速します。
これらの戦略を遂行するにあたり、具体的な中期事業戦略との整合性を重視したM&Aは重要な手段であると位置付けており、積極的に活用していく方針です。当社グループでは、中期経営計画の5ヶ年累計で400億円のM&A投資枠を設定し、以下のターゲット領域に示すように、国内ソリューションや海外オフショアの中核拠点、補完的なデジタル要素技術や特定のソリューション・顧客セグメントの獲得を推進します。また、M&Aを実行するに際し、買収後3年以内のROIC(投下資本利益率)10%達成、継続的・反復的な買収、1件当たりの買収額は時価総額の5%を上限とする、といった厳格な財務規律を定めています。
<M&A・アライアンスのターゲット領域>
現行の中期経営計画は、2021年8月10日に公表した「テクノプロ・グループ 中期経営計画(FY22.6-FY26.6)『Evolution 2026』」に詳細を記載しています。
2024年6月期の実績及び2025年6月期の予想数値は、以下のとおりです。
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2021年6月期 (実績) |
2024年6月期 (実績) |
2025年6月期 (予想) |
2026年6月期 (計画) |
5ヶ年平均 伸び率 |
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売上収益 |
1,613億円 |
2,192億円 |
2,370億円 |
2,500億円 |
9.2% |
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営業利益 |
194億円 |
219億円 |
270億円 |
320億円 |
10.5% |
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親会社の所有者に帰属 する当期利益 |
132億円 |
146億円 |
185億円 |
220億円 |
10.7% |
(注)1.5ヶ年平均伸び率は、2021年6月期(実績)を起点として算出しています。
2.M&Aの売上収益への貢献は、2026年6月期に合計300億円を見込んでいます。
(5)対処すべき課題
上記を背景に、対処すべき課題として、以下の内容に取り組んでまいります。これらは各事業セグメントに共通するものとなりますが、特に、②及び④についてはR&Dアウトソーシング事業及び施工管理アウトソーシング事業、⑤についてはR&Dアウトソーシング事業、施工管理アウトソーシング事業及び国内その他事業に、主として関連するものになります。
① 外部環境変化への対応
当社グループの主要顧客である大手日系企業は、将来にわたる国際競争力を維持するため、積極的な研究開発投資を継続的に行っており、当社グループの持続的な成長の要因となっています。一方で、国内における技術者の供給逼迫や賃金上昇圧力は継続しており、当社グループにとっては、技術者採用費用増加、技術者育成費用増加、技術者賃金上昇、技術者退職リスクの増加、といったリスク要因が顕在化してきています。当社グループでは、引き続き、需要の高いデジタル技術領域を中心とした技術者育成への投資継続等、量から質への転換を図る一方で、最適な採用と育成ミックスの実現、採用効率・育成効率の向上を推進することで、短期・中長期での売上・利益双方の成長を目指してまいります。
② 契約単価の改善
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2020年 6月期 |
2021年 6月期 |
2022年 6月期 |
2023年 6月期 |
2024年 6月期 |
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技術者一人当たり売上(千円/月) |
630 |
634 |
658 |
669 |
678 |
(注)2021年6月期までは㈱テクノプロ及び㈱テクノプロ・コンストラクションのみ、2022年6月期以降は国内子会社全てを対象とした売上高合算/Σ[月末稼働技術者数]により算定
当社グループの技術者一人当たり売上は、既存技術者の契約単価上昇が、下げ要因である稼働日数や残業時間の減少、新卒を含めた未経験技術者の採用を上回り、継続的に上昇しています。また、中期経営計画『Evolution 2026』で打ち出しているソリューション事業の拡大や技術者育成が寄与し、2024年6月期には678千円/月まで技術者一人当たり売上を上昇させることができました。中長期的な技術者需給状況や同業他社の水準を勘案すると、当社グループの技術者一人当たり売上は、今後も改善の余地があると判断しています。ソリューション事業の拡大や技術者に対する教育研修の充実等を通じて技術者の付加価値を高めていくことに加えて、戦略的シフトアップ(技術者を同一案件に長期間固定させず、技術者のスキル向上に応じた適正価格水準の案件への配属を進めること)を進め、引き続き契約単価の上昇に取り組んでいます。
③ 高付加価値技術者の確保と育成
人材の確保は当社グループの成長の礎であり、高付加価値技術者をいかに多く獲得し、あるいは在籍技術者のスキルをいかに高めていくかは、重要な経営課題の一つです。技術者採用市場は近年逼迫しており、知人紹介や人材紹介会社等の多様な採用チャネルを活用するとともに、外国籍技術者の採用も推進し、ソリューション事業拡大に向けた質を重視した採用強化に努めています。また、中長期的に需要が見込まれるデジタル技術を主体としたターゲット要素技術領域(AI/データサイエンス、クラウド、サイバーセキュリティ等)における技術者育成を、当社グループの教育研修基盤と戦略的アライアンスを活用しつつ進めることで、技術者の高付加価値化を図り、技術者人事制度の充実等を通じて、技術者のリテンションを推進してまいります。
④ IT技術の活用とプラットフォーム化
技術者派遣業務においては、採用母集団の形成、スクリーニングと採用、配属(マッチング)、リテンション、研修、育成・要員計画といったコアプロセスが存在し、IT技術の進展により、各プロセスにおける技術者情報を可視化し、一気通貫で活用する仕組みを推進しています。技術者情報の収集・蓄積・分析をデータサイエンスやAIも活用しつつ充実させることで、採用効率の向上、効果的な人材育成、AIマッチングによる適正な技術者配属(契約単価向上)等、コアプロセスを強化するための効果的な打ち手を導入いたします。また、中長期的には、これらの仕組みやデータ分析で得られる知見の技術者育成事業への活用や、さらなる事業化(DX推進事業)を図ります。
⑤ 業務プロセスの向上
当社グループの本社及び事業所の事務業務は、プロセス・ルール・帳票の標準化を進めることにより、まだ生産性を向上できる余地があります。営業・人事・会計といった当社基幹システムの抜本的な見直しを進め、ワンシステム化・IT共通基盤の強化を目指しています。情報システムへの投資による基幹システムのバージョンアップとともに、内部統制を具備した事務の標準化・効率化を推進し、事務機能の強化を図ることで、事業の拡大・進化に伴うオペレーティングレバレッジの向上を実現いたします。
⑥ コア事業進化のための投資推進
ソリューション事業、技術者育成事業、及びDX推進事業を加速するうえでは、人材獲得・育成、IT投資、M&A投資等の先行投資が必須となります。コア事業である国内技術者派遣業務で培った資産・ケイパビリティを活かし、これら先行投資によりコア事業を進化させることが、当社グループの中長期的な成長と価値創造の鍵になります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、当社グループの存在意義(パーパス)及び価値観(バリュー)に立脚し、「技術者と技術力及びビジネスモデルを通じた、役職員、顧客、社会といった全てのステークホルダーとの共通価値の創造、堅固な経営基盤の整備・運用によって、持続的な事業の成長と企業価値の向上を実現し、その結果、内外の経済・産業・社会の持続的な発展・繁栄及び環境の保全に貢献」することを、サステナビリティ基本方針としています。さらに、優先的に取り組むべき経営上の重要課題(マテリアリティ)を特定し、サステナビリティ委員会を中心として、それら課題への取組みを進めています。また、人権方針をはじめとする各種規程を整備して、企業活動の規律と方向性の明確化を図るとともに、統合報告書等を通じて、全てのステークホルダーと緊密なコミュニケーションを行うことで、サステナビリティ経営を推進しています。
① ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティ経営を推進するための体制として、サステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は、代表取締役社長兼CEOを委員長とし、常勤取締役及び委員長が指名する当社グループ役職員で構成され、サステナビリティ基本方針の実現に向けた事項の整備・運用等に関する審議及び意思決定を行っています。サステナビリティ委員会は、原則として半期に1回の開催で、決定した内容に関しては、各担当部門で取り組む他、重要事案については部会を設置し、部門横断的な推進を図っています。また、取締役会は、サステナビリティ委員会における審議・決定事項について定期的に報告を受け、当社グループのサステナビリティ経営を監督するとともに、重要性が高い事項の審議及び意思決定を行っています。
② 戦略
当社グループは、サステナビリティ基本方針に基づき、価値創造を支え、高めるために優先的に取り組むべき経営上の重要課題(マテリアリティ)を4領域において特定し、その取組みを通じて持続的な成長を目指しています。
③ リスク管理
サステナビリティに関するリスクは、当社グループの全社的リスク管理(ERM)体制において、包括的に管理しています。ERM計画の策定及び進捗管理を通じ、戦略、市場、競合、オペレーション、コンプライアンス等、当社グループを取り巻く全てのリスクとともに包括的に評価したうえで、対応方針を策定し、取組みのモニタリングを行っています。当社グループにおけるリスク管理の詳細については、
④ 指標及び目標
当社グループでは、重要課題(マテリアリティ)を4領域に分類し、重要課題ごとに定量指標(KPI)及び目標を設定し、モニタリングしています。これらの指標と目標は、サステナビリティ委員会において、審議及び意思決定を行い、その結果は、サステナビリティ委員会の委員長である代表取締役社長兼CEOを通じて取締役会に報告されます。なお、重要課題(マテリアリティ)、定量指標(KPI)及び目標については、外部環境・内部環境変化や当社グループ戦略の方向性を踏まえ、随時見直しを行っています。
特に重要な指標は、以下のとおりです。
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重要課題 (マテリアリティ) |
指標 |
実績 (2024年6月期) |
目標 |
|
人材に関すること |
技術者育成事業 法人受講者数 |
8,101人(注)1 |
2026年6月期までに 13,000人(注)1 |
|
技術者育成事業 個人受講者数 |
5,004人(注)1 |
2026年6月期までに 8,500人(注)1 |
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|
採用者に占める女性比率 |
25.8% |
2026年6月期までに 30%以上 |
|
|
管理職に占める女性比率 |
8.4% |
2026年6月末までに 10% |
|
|
管理職に占める外国籍比率 |
3.5% |
- |
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|
60歳以上雇用者数 |
1,449人 |
人数の継続的な 増加 |
|
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技術に関すること |
ソリューション事業売上 |
453億円 |
2026年6月期に 570億円 |
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社会的責任に関すること |
汚職に関する重大な処分件数 |
0件 |
処分件数0件の継続 |
|
腐敗等に関連した罰金の件数 |
0件 |
罰金件数0件の継続 |
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サステナビリティ研修受講率 |
100% |
受講率100% |
|
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労災による死亡者数 |
0人 |
死亡者数0人の継続 |
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ガバナンスに関すること |
女性取締役人数 |
3人(注)2 |
女性取締役2人以上を維持(注)2 |
※算定対象は、特に記載のない限り、国内グループ会社
(注)1.当社グループ外の集計値
2.当社単体の集計値
(2)気候変動
気候変動は、グローバル社会が直面する重要な社会課題の一つです。当社グループでは、「テクノプロ・グループ 環境方針」において、気候変動への対応を環境重点分野の一つに定め、これまでもCO2排出量や環境関連技術者数の中期目標等を重要課題(マテリアリティ)のKPIとして設定し、事業活動の経済的側面と同時に、社会的側面・環境的側面の重要性を認識したうえで、企業の社会的責任を果たす経営に取り組んでまいりました。
また、当社は、2022年6月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、同時にTCFDコンソーシアムに加入しました。株主・投資家の皆さまをはじめとする幅広いステークホルダーとより一層良好なコミュニケーションが取れるよう、TCFDのフレームワークに基づいた情報開示を進めてまいります。
① ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティ委員会において、サステナビリティ課題の一つとして気候変動対応に関する審議・検討、実行計画の策定、取組みの進捗のモニタリングを行っています。気候変動に関するガバナンスは、
② 戦略
当社グループでは、気候変動関連の重要なリスク・機会に対する当社グループのレジリエンスや財務的影響額を評価することを目的として、シナリオ分析を実施しています。将来の気候変動については、2つのシナリオ(4℃シナリオ、1.5℃/2℃シナリオ)を使用し、対象は国内技術者派遣業務として、2030年時点での影響を分析・考察しています。
シナリオ分析結果のまとめ(リスクと機会)
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大分類 |
中 分 類 |
想定される事象 |
リスク |
機会 |
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移 行 リスク |
政 策 規 制 |
炭素税の導入、政府の再エネ政策・省エネ政策の強化 |
・炭素税の導入に伴うCO2排出コストの発生による支出増加、また、賃貸オフィスのZEB化が進展することによるテナント料金の変更等による支出増加が発生すると想定しています。(ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル) |
・太陽光パネル・クリーン水素・地熱発電・バイオマスなどの新たな再エネ技術の進展、再エネ製品やエネルギーマネジメントシステム機器などの省エネ機器の開発促進に伴い、技術者派遣やプロジェクトの需要増加が想定されます。
・環境技術の市場動向分析に基づく技術者育成を実施して、供給力・ソリューション力を確保し、これら顧客需要を捕捉することにより、収益増が期待できます。 |
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技
術 |
低炭素や脱炭素に関連する次世代技術の進展、関連技術の開発に向けた企業の技術投資 |
・低炭素技術や次世代技術の方向性を当社グループが正しく予測・認識できず、技術者のスキルアップやスキル獲得が遅れることで、技術者の保有スキルが時代に追いつかず、当該技術領域における技術者派遣やプロジェクトの要請が減少するリスクがあると想定しています。 |
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評
判 |
顧客や投資家(投資市場)の企業に対する評価基準の変化や評判の変化 |
・当社グループの気候変動への取組みが不十分であると判断された場合には、次のようなリスクを想定しています。
1.当社顧客のサプライチェーン全体での脱炭素化の機運が高まる中、技術者派遣やプロジェクトの要請件数が減少する可能性
2.資本市場におけるESGやサステナビリティへの関心の高まりから、投資対象外と判断され、安定かつ長期の株主が獲得できず、株価の不安定化につながる可能性 |
・気候変動・持続的資源の利用・汚染防止・環境保全などの取組みや、当社グループの気候変動に対するレジリエンスの高さに関する情報を適時・適切にコミュニケーションすることで、次のような機会を想定しています。
1.顧客からの評価が高まることにより、優先購買先に指定され、収益増につながる可能性
2.資本市場からの評価が高まることで、投資先銘柄に選定され、安定・長期株主の獲得につながる可能性 |
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物理的 リスク |
急
性 |
異常気象の激甚化 |
・洪水や高潮などの自然災害増加による当社グループ施設や入居施設の被災により、人的・物理的損害や営業停止等の損害が生じる可能性があると想定しています。 |
・自然災害等による建物やインフラへの被害が発生した場合、その復興・復旧のための建築・土木事業の増加に伴い、施工管理技術者の派遣要請が増加する可能性があると想定しています。 |
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惰
性 |
平均気温の上昇やこれに伴う労働・就業条件の変化・悪化 |
・冷房機器使用の増加によるコストアップや、施工管理業務を中心とした屋外業務の制限などに起因した売上収益の減少を想定しています。 |
・外気温の上昇による空調機器等需要が増加した場合、空調機器等の開発を促進するため、新たな技術者派遣やプロジェクトの機会増加による収益増を想定しています。 |
<営業利益に与えるインパクト>
事業への財務的影響については、気候変動シナリオ等に基づき試算が可能な項目に関して、2030年時点に想定される営業利益に与えるインパクトとして項目別に試算しています。
1.5℃/2℃シナリオでは、低炭素化社会に向かうために炭素税の負担が増加すると予測される一方、洪水被害等物理的リスクについては、4℃シナリオとの比較では影響が小さいと予測されます。
4℃シナリオでは、低炭素社会への移行に向けた政策は強化されず、炭素税負担は1.5℃/2℃よりも小さくなるものの、物理的リスクは、1.5℃/2℃シナリオよりも影響額が大きくなるという試算結果となっています。
当社グループは、製造業・情報産業・製薬業界・研究機関・官公庁等に対する設計開発・研究開発・データ解析や、建設産業に対する建築・土木・設備等の施工管理といった国内技術者派遣業務を主体としているため、TCFDが定義するハイリスクセクターのような生産設備等を保有する必要がありません。このことから、いずれのシナリオにおいても、気候変動に関するリスクは僅少であると考えています。
③ リスク管理
気候変動におけるリスク管理は、全社的リスク管理(ERM)の仕組みとプロセスに組み込まれています。ERM委員会の定めるERM計画において、気候変動関連のリスク項目を特定し、進捗管理を実施しています。気候変動リスクは、予見困難であるものの、事業面全体に影響しうるリスクであると位置付けています。気候変動におけるリスク管理の詳細については、
④ 指標と目標
当社グループでは、2020年6月期を基準年としたうえで、日本政府の削減目標に相当する水準として、以下のとおり、温室効果ガス(GHG)削減目標を定めています。
Scope1,2 2030年6月期:32.2%削減(2020年6月期比)
Scope1,2,3 2050年6月期:GHG排出量実質ゼロ
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項目 |
対象範囲 |
基準年 |
基準年実績 |
目標年 |
目標内容 |
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Scope1,2 |
国内 |
2020年6月期 |
2,118 tCO2 |
2030年6月期 |
1,436 tCO2 |
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2050年6月期 |
実質ゼロ |
||||
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Scope3 |
国内 |
2023年6月期 |
46,854 tCO2 |
2050年6月期 |
実質ゼロ |
<GHG排出量に関するデータ>
直近の当社グループの事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)排出量データは、以下のとおりです。
(単位:tCO2)
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Scope1 |
Scope2 |
Scope1+2 |
Scope3 |
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2024年6月期 |
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2022年6月期 |
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2020年6月期 (基準年) |
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※対象とする温室効果ガスは、算定・報告・公表制度における温室効果ガスと同じエネルギー起源CO2、非エネルギー起源CO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6、NF3
※算定対象は、当社グループ国内9社
(3)人的資本
当社グループの人的資本は、顧客に役務・ソリューションを提供する技術社員(技術者)と営業・採用・育成及びバックオフィス業務に携わる管理社員に大別され、ともに価値創造に向けた成長戦略及びサステナビリティ基本方針を実現するうえで最重要な経営資源です。
① ガバナンス
技術社員に関する施策は、グループの各事業会社、管理社員に関する施策は、人事部を中心に推進されています。技術社員と管理社員双方の人的資本に関して、
② 戦略
<技術社員>
当社グループでは、無形資産である人材こそが価値の源泉であり、人的資本を核としたビジネスモデルにより、経済価値と社会価値の双方を創出しています。育成面では、人材育成への積極投資により、技術者の技術力を磨き、有能な技術者を創出することで、技術者の市場価値向上を実現し、技術者の働きがいと満足度向上を追求いたします。技術者の市場価値向上という観点から、技術スキルを可視化・ギャップ分析し、リスキリングを進めて効果測定するタレントマネジメントの仕組みは、当社グループのコアコンピタンスの一つです。配属面では、魅力的な仕事を創出することで、技術者の活躍機会の最大化を図っています。技術者にとっての最適な配属とチャージの向上、ソリューション型人材の積極的育成・配属による事業拡大を通じて、技術者の処遇向上を進めるとともに、産業間・技術領域間の技術者流動性を高めることで、国内の技術系人材不足の解消とイノベーション促進といった社会課題の解決に貢献いたします。採用面では、技術者供給の確保という観点から、外国籍等を含む多様な人材の活用、フリーランス等の柔軟な雇用形態の積極適用を進め、人材多様性と機会平等の実現を推進しています。
<管理社員>
中期経営計画『Evolution 2026』において、ソリューション事業等へのコア事業の進化を掲げる中で、技術社員だけでなく、管理社員においても、グループレベルでの経営戦略と連動した人材戦略を実現する各種人事制度の整備と運用を推進しています。経営戦略を実現するうえで必要となる人材ポートフォリオを実現するために、グループ最適な人材配置と育成を推進しています。
<技術社員・管理社員共通>
国内の人材獲得難・給与上昇も背景として、知見や経験のダイバーシティとインクルージョンのための取組みとして、外国籍人材の活用、女性活躍の推進に努めています。外国籍人材については、国内での労働力確保だけでなく、オフショア活用を背景とした当社グループ海外子会社と当社グループ国内子会社間の人材交流に取り組んでいます。また、女性活躍をさらに推進するため、女性社員を対象としたコミュニティづくり、意識改革に努めています。
従業員エンゲージメントを高めるための取組みとして、デジタル接点・リアル接点を通じて、パーパス・価値観・行動指針の浸透を進めており、従業員満足度(ES)アンケートを実施して、各種施策へのフィードバック、従業員満足度の向上を図っています。社内公募制度や副業制度を導入するとともに、在籍する全ての人が心身ともに健康であることは事業運営の基盤であることから、当社グループは、「テクノプロ・グループ健康経営宣言」を定め、各種健康経営への取組みを進めています。その結果、経済産業省が実施している健康経営優良法人認定制度において、2019年度より5年連続で健康経営優良法人(大規模法人部門)に認定されました。
③ リスク管理
人的資本におけるリスク管理は、全社的リスク管理(ERM)の仕組みとプロセスに組み込まれています。ERM委員会の定めるERM計画において、技術社員・管理社員双方の人的資本関連のリスク項目を特定し、進捗管理を実施しています。人的資本におけるリスク管理の詳細については、
④ 指標及び目標
当社グループの事業戦略は、人的資本への取組みを通じて遂行され、また、継続的な人的資本への投資は財務パフォーマンスに直結し、持続的な企業価値の向上に寄与すると考えています。したがって、事業戦略上のバリュードライバーとの連動の観点から、以下の人的資本KPIを重視しています。
具体的には、以下の指標について目標を設定し、モニタリングを実施しています。
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取組み |
指標 |
実績 (2024年6月期) |
目標 |
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多様な人材の活用 |
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柔軟な雇用形態の積極活用 |
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働きがいと従業員 満足度の追求 |
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(技術)
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(管理) 87.3% |
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最適な配属 |
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ソリューション人材の 戦略的育成 |
ソリューション事業 稼働技術者数 |
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人材育成への積極投資 |
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30万8千人 |
延べ |
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延べ (注)1 |
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健康増進・働きやすさ ・安全衛生への取組み |
育休取得率 |
(男性) 41.8% |
(女性) 94.7% |
(男性) 50%(注)1 |
(女性) - |
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生産性 (売上高人件費率) |
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※算定対象は、特に記載のない限り、国内グループ会社
(注)1.2026年6月期における目標数値
2.当社グループの集計値
成長戦略には必ず不確実性・リスクが伴うものであり、これらをいかにコントロールし対処するかは、戦略実行上の鍵となります。当社グループでは、全社的リスク管理(Enterprise Risk Management、ERM)体制として、戦略や事業目的の達成に影響を及ぼす可能性のある事象をリスクと認識し、組織全体として適切に管理する仕組み・プロセスを構築しています。当社グループの受容できるリスク量への考え方(リスク選好)を明確化したうえで、網羅的にリスクを識別し、影響度、予見可能性、発生確率等の観点からリスクの定性・定量的な評価を行い、回避、低減、移転、受容等の観点から対策を検討しています。また、当社グループの役職員に対して、リスク管理に関する教育・研修を継続的に実施しています。
当社グループの全社的リスク管理体制としては、ERM委員会においてリスクを包括的に評価のうえ、ERMに係る基本方針及び体制整備・運用に係るERM計画を策定し、各リスク主管部門と事業部門によるその実行状況をモニタリングしています。また、当社取締役会は、ERM委員会からの報告及び取締役会での審議を通じて、全社的リスク管理を監督しています。
以下、各リスクカテゴリーに応じて重要性が高いと考えるリスクを記載いたしますが、予見可能性や発生確率が低い事項も含まれます。当社株式に関する投資判断は、これらの記載事項を十分検討したうえで行われる必要があると考えています。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日時点において入手可能な情報に基づき、当社が合理的であると判断したものです。また、当社グループに発生しうるリスク及び投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、これらに限られるものではありません。
-政治/経済-
(1)顧客の属する業界の景気動向
当社グループは、2024年6月30日時点で国内に26,054人の技術者を擁しており、そのうち92.4%(24,061人)が無期雇用となっています。顧客の属する業界の景気が悪化した場合には、就業時間の短縮化、契約条件の悪化、さらには派遣契約期間中での中途解約等が生じる可能性があります。多くの無期雇用技術者を擁しているが故に、景気下降局面では無期雇用の待機技術者の人件費負担が大きくなり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、技術者の付加価値を高めるための教育研修を強化しており、稼働率の安定的な維持を図っています。また、多様な産業や顧客と取引することで、特定の産業や顧客の業況に大きく影響を受けない、リスクを分散した事業運営を行っています。なお、当社グループにおける顧客上位10社の売上高占有率は、11.6%(当連結会計年度)です。
(2)世界的な経済情勢の長期的趨勢
当社グループへの需要は、顧客の研究開発やITシステム開発への投資に強く連動しています。当社グループの主要顧客である大手日系企業は、将来にわたる国際競争力を維持するため、積極的な研究開発投資を継続的に行っており、当社グループの持続的な成長の要因となっています。
しかしながら、近年の世界的な保護主義への回帰や、自由主義経済への制約が将来にわたって継続し、あるいは世界規模での新たな感染症が定期的に蔓延することで、多くの日系企業が研究開発投資に消極的な姿勢に転換した場合には、技術人材への需要が減少し、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、財務健全性を担保し、管理業務の効率性向上を進めるとともに、日本及び進出国の景気・需要動向のモニタリングを強化し、先行KPI管理を実施することで、景気変動への対応力を確立しています。
-技術動向-
(3)技術革新への対応
現代において技術変化のスピードは加速度的に増しており、当社グループは、技術革新に適時適切に対応していく必要があります。このような技術革新に関しては、次のようなリスクがあり、これらに対応できない場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
・当社グループが技術変化の方向性を正しく予測・認識できない場合や、たとえできたとしても当社グループの技術者の有する技術スキルの向上・転換が間に合わず、技術が陳腐化するリスク
・新たな技術により研究開発やITシステム開発の工数が大幅に縮減し、技術人材への需要が減少することによって、当社グループに余剰人員が発生するリスク
・新たな技術に対応できる技術者の確保又は育成に、多額の費用が発生するリスク
当社グループでは、技術者の有する能力やスキルの高度化、新たな技術の習得等を支援するためにさまざまな教育研修の機会を整備するとともに、教育研修の投資効率の向上に努めています。また、当社グループでは、持続的な成長のために、Center of Intelligence(COI)という組織において将来の技術動向等を分析し、注力すべき要素技術・ソリューションを具体的に定め、当該領域で活躍する技術者の確保・育成及びCenter of Excellence(COE)拠点の開発を進めています。
-労働環境-
(4)技術者の確保
国内における技術者需給は逼迫するトレンドが継続し、中長期的には、当社グループの技術者人材確保が難航するおそれがあります。特に、デジタル技術領域における技術者の獲得は、需要の増大によって厳しい状況が続いており、需要に見合う供給を十分に確保できない場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
採用力は、当社グループの強みの一つであり、優秀な技術者の獲得は成長の推進力です。当社グループでは、採用チャネルを人材紹介事業者の活用や知人紹介等に多角化するとともに、外国籍技術者の獲得も推進し、ソリューション事業拡大に向けた質を重視した採用強化に努めています。
年間の国内技術者採用数については、2021年6月期は、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する事業環境の不透明性に対応して採用を抑制したため、前年度に比べ大幅な減少となりましたが、2022年6月期以降は、新卒・中途ともに採用活動の再開により採用数も回復し、総在籍技術者数は2024年6月末時点で過去最高となりました。
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2018年 6月期 |
2019年 6月期 |
2020年 6月期 |
2021年 6月期 |
2022年 6月期 |
2023年 6月期 |
2024年 6月期 |
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技術者採用数(人) |
4,151 |
4,512 |
4,398 |
1,405 |
3,830 |
4,314 |
4,575 |
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総在籍技術者数(人) |
16,797 |
19,293 |
21,264 |
20,330 |
22,048 |
24,125 |
26,054 |
(注)技術者採用数(M&Aによる獲得を含む。)及び総在籍技術者数はともに国内に限り、総在籍技術者数は年度末時点
また、国内における技術者確保という観点では、退職人数が増えることで在籍技術者数が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。毎年従業員満足度調査を実施し、その結果をもとに処遇改善施策を実施する等、退職率の低減に努めています。
(5)国内の人口推移
当社グループの事業の大半は国内で行われていますが、国内の総人口や技術者数は継続的に減少すると見込まれており、当社グループが事業を展開する市場の縮小や、新卒・中途採用の競争激化が一層進んだ場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
一方で、国内での技術人材需要は継続的な高止まりが予想され、グローバル人材の採用や技術開発の効率化によって顧客の技術開発ニーズに応えることができれば、当社グループの新たな成長機会となる可能性があります。
(6)雇用慣行や働き方の変化
日本において技術開発サービスの需要が強い背景の一つとして、日本的雇用慣行では迅速な直接雇用人員の調整が困難であり、研究開発やITシステム開発のプロジェクトにおいて、適時適切な人材を確保することが難しいことがあります。しかし近年、日本では雇用慣行が徐々に変化しつつあり、HRテックやリモートワーク等の普及、フリーランスといったギグエコノミーの浸透によって、将来的に雇用の流動化や働き方の多様化が一層進展し、顧客が開発プロジェクトごとに必要な人材を直接確保することが一般化した場合には、人材のアウトソース需要が減少し、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
これら雇用慣行や働き方の変化は、当社グループにとってリスクである一方、人材の新たな供給源といった機会ともなりうるものです。従来の事業モデルに縛られることなく、フリーランスの活用、オフショアリング開発の拡大や、より一層柔軟な人事制度の導入なども含め、事業モデルを進化させることで成長を図ります。
(7)新事業領域拡大に向けた人材確保
当社グループのコア事業の進化を加速させるためには、国内技術者派遣業務の枠を超えた経営・事業人材の確保が不可欠です。当社グループは、技術者の採用には競争力があるものの、経営・事業人材の採用には、逼迫した労働市場において業種を問わない事業者との厳しい獲得競争にさらされています。人材紹介会社やM&Aを通じて人材獲得を図るものの、計画どおりに採用が進展しない場合には、コア事業の進化が鈍化し、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、国内人材採用に加えて、人材育成の一層の強化、高度外国人材の活用を進めることで、コア事業の進化を担う人材拡充を図っています。
-戦略/市場・競合・オペレーション-
(8)グローバル化の進展
近年、当社グループの主要顧客である大手日系企業は、研究開発やITシステム開発のグローバル化を進めており、この動きは今後ますます加速するものと考えられます。また、新興国の技術力向上により、欧米においては重要な開発プロジェクトであっても、コスト・技術の両面からオフショアリング開発が選択される傾向にあります。当社グループがグローバルでのソリューション提供体制を構築できない場合には、こういった日本における技術開発サービス需要の変化に対応できず、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、M&Aを成長戦略の一つの柱と位置付けています。日本企業に対するオフショアリング開発(特にデジタル領域)は、欧米に比べるとまだ浸透しておらず、M&Aによって欧米市場で培ったサービスデリバリー力・技術力・人材を取り込むことは、国内において先行者になりうる機会を創出するととらえています。
(9)顧客の需要動向の変化
近年、デジタル化やソフトウェア化の進展により、顧客が必要とする技術領域の幅は拡がっており、また、顧客需要は単なる役務提供を越えて、成果物、さらには課題発見・解決を求める傾向が強くなっています。これらの需要の変化に適切に対応できない場合には、成長機会を逸し、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当社グループのサービスが役務提供にとどまらず、ソリューション提供型に進化していく必要性を十分認識し、国内技術者派遣業務とのバランスを勘案しつつ、ケイパビリティ獲得のための投資や組織・オペレーションの革新を進めています。
(10)中期経営計画の達成
当社グループは、2022年6月期を初年度とする5ヶ年の中期経営計画『Evolution 2026』を策定し、中期事業戦略を遂行しています。しかし、外部環境変化の読み違いやそのスピードに追いつけず、また、想定どおりに当社グループのケイパビリティを『進化』させられず、結果としてコア事業の成長や進化を実現できない場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事業戦略ごとの細かな方針とタイムラインをまとめた5ヶ年のロードマップを作成し、また、各方針に紐づく詳細なKPIを定めて、中期事業戦略の推進・進捗管理体制を強化しています。もし、戦略遂行に遅れが生じたり、修正が必要となったりした場合には、先んじて経営資源の投下や組織体制の強化を図ることで、戦略実現と計画数値の達成の蓋然性を高めるよう努めています。
-M&A/提携・カントリーリスク・会計財務-
(11)企業買収(M&A)
当社グループは、成長戦略の一環として、国内・海外におけるM&Aを推進しています。M&Aに際しては、対象となる企業について詳細なデューデリジェンスを実施し、リスク回避に努めていますが、買収後に偶発債務等の発生が判明した場合、対象会社の当初想定した収益計画を達成できない場合、対象会社の事業運営に支障をきたすような事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、M&Aの基本原則として、中期事業戦略との整合性、買収プロセスの透明性、強固な財務規律、買収後の統合作業(PMI)やガバナンス方針を明確化しており、特に財務規律として、資本コストを上回るROIC(投下資本利益率)を価値創造のための重要な経営指標の一つとして位置付けています。
(12)減損会計の適用
当社グループは、2024年6月30日現在、連結財政状態計算書に合計488億85百万円ののれんと無形資産を計上しています。これらは総資産の32.0%を占めており、主要なのれんの内訳は、機械、電気・電子領域(146億51百万円)、Robosoftグループ(102億50百万円)、組込制御、ITインフラ領域(79億69百万円)になります。当社グループでは、国内及び海外において積極的にM&Aを推進している結果、のれんと無形資産は増加傾向にありますが、当社グループの収益性に認識可能な低下がみられる場合には、のれんや無形資産の減損が生じているか否かについての判断が必要となります。のれんや無形資産に関する減損損失が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、のれんは非償却性資産です。
また、M&Aや出資にあたり、ダウンサイドリスクの回避を意識しながら、当初の投資額や取得比率を抑えて減損の潜在額を小さくすることや、売主である創業者にインセンティブを与え、当該事業の経営リスクを軽減することを目的として、非支配株主にプット・オプションを付与している場合があります。当該事業が当初想定した収益計画から大きく乖離した場合には、オプションの公正価値に変化が生じているか否かの判断が必要になり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、M&Aを実行するに際し、投資検討におけるデューデリジェンスの過程から、事業部門やPMI担当者によるチームを組成し、投資後の計画を先行的に策定し、投資後においては各種施策を早期に開始することで、当該事業の経営改善やグループ間連携の強化による想定シナジーの早期実現に努めています。
-法律規制・情報システム-
(13)関連法制の動向
当社グループは、労働者派遣法、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)、その他の関連法令の規定に従い、労働者派遣業務を行っており、法令に抵触した場合には、労働者派遣事業の許可の取消、事業停止の処分等を受けるおそれがあります。労働者派遣法その他の関連法令に抵触する行為が当社グループで発生した場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、組織・規程・役職員教育を含めて、厳格な法令遵守体制を構築・運用しています。
また、労働者派遣法をはじめとする関係諸法令は、経済環境・社会環境の変化に伴い、継続的な見直しが行われており、当社グループの業態に著しく不利な改訂が将来的に実施された場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。近年では労働者派遣法以外にも、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の時季指定、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、高年齢者雇用確保措置等の改訂が実施されており、当社グループでは当該改訂に対応するための諸施策を採っていますが、今後のさらなる改訂によっては、対応のために多額の費用が発生する可能性があります。一方で、規制の厳格化によって中小派遣事業者が淘汰され、当社グループへの需要がさらに増え、市場シェア拡大につながる可能性があります。
当社グループでは、従業員にとって魅力的な働き方や処遇等を実現する各種制度を関係法令に先駆けて整備し、海外ソリューション事業や技術者育成事業の拡大により、法改正への耐性を強化してまいります。
なお、当社グループが許認可を受けている労働者派遣事業及び有料職業紹介事業に関して、事業廃止又は許可取消、事業停止となる事由は労働者派遣法第14条及び職業安定法第32条に定められています。本書提出日時点において、当社が認識している限り、当社グループにはこれら事業廃止又は許可取消、事業停止の事由に該当する事実及びその兆候はありません。
(14)個人情報保護
当社グループは、技術者を含む従業員や、採用応募者の個人情報を大量に保有しており、個人情報の外部流出が発生した場合には、当社グループへの社会的信用の失墜等により、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、個人情報の適正な管理は極めて重要であると認識しており、役職員への継続的な教育研修等を通じて、個人情報の適正な取扱いを浸透させています。また、当社CSR推進部長を個人情報保護責任者と定め、個人情報保護規程の整備・運用及び情報システム面も含めた個人情報に関するセキュリティ対策を講じています。
(15)情報セキュリティ
当社グループの技術者は、業務上、顧客の研究開発等の機密情報を知りうる可能性があります。当社グループの技術者によって、顧客の機密情報の外部流出が発生した場合には、当社グループへの損害賠償請求等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの情報システムにおけるデータ損失や漏洩により、当社グループの業務運営に支障が生じる可能性があります。
当社グループでは、情報セキュリティに関する各種規程を整備・運用し、役職員への教育研修等を通じて、情報及び情報機器の適正な取扱いを浸透させています。また、当社グループでは、ネットワークセキュリティ等を強化することで、当社グループ情報システムのデータ損失や漏洩への対策を進めています。
-労務管理-
(16)労務管理
当社グループは、海外を含め約28,000人の従業員を雇用しており、また毎年多数の従業員を採用しています。このため、労働安全衛生や雇用関係等に関して従業員との間で紛争が発生した場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当社グループの理念体系における「価値観」として、
『私たちは、
- 一人ひとりの学びや成長を促す環境やプログラムを整備しています
- 専門性を極めるだけでなく、スキルのチェンジや新たな獲得の機会も提供します
- 技術進歩・環境変化に対応し活躍を続けられるよう、全力でサポートします』
を掲げ、採用時における人材品質の確保、コンプライアンスを重視した労務管理を含む技術者管理の充実、教育研修体制の強化、従業員満足度の向上等の取組みを実践しています。
-ハザード・ESG・気候変動-
(17)感染症への対応
人・物・金・情報のグローバル化の進展に伴い、感染症のリスクは確実に増加しています。2020年に世界的に拡大した新型コロナウイルスによって、そのリスクは顕在化いたしました。感染症においては、人と人との物理的接触が制約を受けるという特有の要素があり、当社グループの事業運営上は、技術者を含む従業員の在宅勤務の要請、技術者の地域間移動の制限、対面での営業活動や採用活動の制約といった供給面においてまず影響が現れます。さらには、国や産業により深度や期間は異なるものの、顧客企業の業績悪化につながり、結果としての技術者需要の減少や研究開発プロジェクトの縮小や遅延といった形で、当社サービスの需要面にも影響を与えます。総じて、感染症リスクは、政治・経済、技術動向、労働環境等の他のリスクにも波及する可能性があるものです。新型コロナウイルスに限らず、さまざまな感染症リスクが顕在化し、増大した場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、在宅勤務を支える情報システムや人事制度等を構築・運用し、またリモートでの顧客開拓を推進する等、感染症拡大下であっても、従業員の健康・安全を最優先した事業運営体制を整備しています。また、新型コロナウイルスによる感染症リスクに対する認知の劇的な高まりは、デジタル技術の社会・企業活動への浸透を促進することが確実であり、当社グループとしては、デジタル技術に対応した技術者・ソリューションを拡充し、事業拡大を図る機会ととらえています。
(18)自然災害・事故
当社グループは、全国に200ヶ所以上の事業拠点を有しており、当社グループの技術者は国内2,500社以上の顧客先にて勤務しています。そのため、地震や洪水等の自然災害や予期せぬ事故等により、当社グループあるいは顧客の設備が損壊する等の被害が発生した場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、自然災害や事故について事業継続計画及び企業危機対策規程を定め、一方、情報システム障害に関しては、データリカバリーセンターを活用する等の対策を講じています。
(19)気候変動
当社グループは、事業運営において敷地や生産設備等を保有する必要がないことから、気候変動による直接的影響は僅少である点をシナリオ分析により確認しています。しかし、炭素税導入や政府の再エネ政策、あるいは低炭素技術や次世代環境技術の進展は、顧客に必要となる技術に影響を与えます。当社の技術者やソリューションがこれら顧客需要の変化に対応できない場合、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの気候変動に対する取組みが不充分で、顧客や投資家の理解が得られない場合、顧客との円滑な取引関係の構築や長期安定株主の獲得に問題が生じる可能性があります。
当社グループでは、「テクノプロ・グループ 環境方針」において気候変動への対応を環境重点分野の一つに定めています。業界動向・技術動向等の調査分析を担当する専門部署による調査・分析機能を活用し、低炭素・脱炭素等の環境技術に関する技術者育成とソリューション提供体制を強化し、顧客の需要変化に対応いたします。また、2022年6月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに加入いたしました。今後は、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーとのより一層良好なコミュニケーションが取れるよう、TCFDのフレームワーク(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に基づいた情報開示を進めるとともに、長期的な視点でリスクを分析し、気候変動に対する対策を進めてまいります。詳しい情報は、当社ホームページでご確認ください。(https://www.technoproholdings.com/sustainability/environment/tcfd.html)
-レピュテーション-
(20)コンプライアンス・業界イメージ
当社グループの主要な事業である技術者派遣業務は、多くの人材を雇用する社会的責任の大きな事業であり、当社グループ役職員により、コンプライアンスを軽視した社会的倫理に反する行為等が行われた場合、社会的信用や企業イメージを棄損する行為が行われた場合には、社会や顧客が被る損害への賠償やレピュテーションの悪化等を通じて、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、技術者派遣市場は事業者数が多く細分化されており、当社グループのみならず、類似の事業を営む他社においてコンプライアンスを軽視した社会的倫理に反する行為等が行われた場合にも、業界全体に対するイメージの悪化を通じて、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当社総務・CSR管掌執行役員を委員長とし、当社各部門長等で構成されるコンプライアンス委員会において、重視すべきコンプライアンスリスクの特定とその重点管理を行っています。実務面では、グループ横断のコンプライアンス専任部門の設置、トラブル発生時のエスカレーションルールの徹底、内部監査の実施と是正活動、内部通報制度の周知等を通して、重大なコンプライアンス違反の発生を防ぐことに努めています。
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2023年7月1日~2024年6月30日)における世界経済は、ウクライナ情勢に端を発した資源価格の上昇、米国や欧州でのインフレ対応利上げによる景気抑制政策に起因した景気後退懸念、また、中東や極東アジア地域での地政学リスクの高まり等もあり、不透明な状況が継続しました。国内経済においても、円安の継続等による物価高や原材料調達への制約があり、依然として不透明な状況が続いています。
このような環境下においても、当社グループが注力する技術者派遣・請負業務に対する顧客需要は底堅く、特に、輸送用機器や情報産業におけるIT技術者へのオーダーは引き続き堅調となりました。
当社グループでは、当連結会計年度において、主に以下の取組みを実施しました。
(技術者の確保)
顧客からの旺盛な技術者需要は継続している一方、当社グループの稼働率は95%前後の状態が続き、新たなオーダーに対応できる技術者が不足しています。そのため、高い採用基準を維持しつつ、育成前提の未経験者採用を増やすなど、技術者の確保に努めています。また、コロナ禍において凍結していたグローバル外国籍採用も再開し、対象とする国を広げてグローバルでの人材獲得に取り組んでいます。
引き続き、有能な技術者の確保を進め、持続的な成長を実現してまいります。
(契約単価の上昇)
国内技術者の採用は、概ねコロナ禍前の水準に回復しましたが、技術者の契約単価にはまだ上昇余地があると考えており、単価の改善を積極的に推進しています。教育研修を通じたアップスキルやリスキリングなど、顧客から求められる技術の習得やレベルの向上に継続的に取り組み、それらの技術やレベルの向上に合わせた適正単価による契約獲得に努めています。一人ひとりの単価上昇は、全体の売上収益への貢献とともに、技術者の処遇改善にもつながり、リテンション効果を期待できます。
引き続き、有能な技術者の確保に加えて、契約単価の上昇を進めてまいります。
(ソリューション事業の強化)
2022年6月期を初年度とする5年計画の中期経営計画『Evolution 2026』では、ソリューション事業の強化を掲げており、同事業の売上収益や同事業に携わる技術者数も増加しています。2024年6月期以降の後半3年は、高成長の実現期と位置づけ、国内外の技術動向予測や当社の内部ケイパビリティ評価に基づき注力ソリューションを絞り込んだうえで、マーケティング・営業から採用・育成・デリバリーまでの首尾一貫したオペレーションを組織的に行っています。また、2023年7月1日付でコンサルティング組織「TechnoPro Consulting & Advisory」を立ち上げ、戦略・構想策定、業務分析といった上流工程から、保守・管理といった下流工程までを、一貫して支援可能な体制を強化しています。
引き続き、採用や育成を通して上流工程に対応できる人材を増やすとともに、競争優位性の高い、柱となるソリューションの確立・拡大を目指してまいります。
これら事業上の取組みの結果、当連結会計年度末の国内在籍技術者数は26,054人(前連結会計年度末比1,929人増加)、当連結会計年度の平均稼働率は95.0%(前連結会計年度比0.2pt減少)となりました。従前より進めてきた技術者一人当たり売上単価の向上については、前連結会計年度と比較して稼働日数が減少したものの、シフトアップやチャージアップ、加えてソリューション事業の拡大等による単価上昇もあり、当連結会計年度の月次平均売上単価は678千円(同9千円増加)となりました。
費用面においては、前連結会計年度に比べて販売費及び一般管理費が増加しました。主に、人材獲得のための採用費、育成のための教育訓練費、海外子会社における先行投資やインフレの影響によるものです。
以上の結果、当連結会計年度の当社グループの業績につきまして、売上収益は2,192億18百万円(前連結会計年度比9.7%増加)、事業利益は243億95百万円(同14.1%増加)、営業利益は219億18百万円(同0.4%増加)、税引前当期利益は221億39百万円(同1.4%増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益は146億84百万円(同4.4%減少)となりました。
※ 事業利益は、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を減算したもので、「その他の収益」や「その他の費用」に計上される特別項目(雇用調整助成金や減損損失など)による影響を除いたものを示している当社独自の利益指標です。
当連結会計年度における主要事業分野の業績は、以下のとおりです。
(R&Dアウトソーシング事業)
R&Dアウトソーシング事業の中でも好調を維持しているIT分野を拡大するため、高付加価値技術者を主体とした中途採用の強化に加え、ハード系技術者、化学・バイオ系技術者に対するデジタル技術の教育を行い、スキル転換や複数スキルの習得により、デジタル領域の旺盛な需要に対応する取組みを実施しています。また、先端技術を有するアライアンス企業との協業や社内外での研修を積極的に進め、提供サービスの高品質化や多様化によって、より高い単価での配属に努めています。これらの取組みにより、当連結会計年度末の在籍技術者数は22,848人(前連結会計年度末比1,685人増加)、稼働技術者数は21,497人(同1,612人増加)となりました。
その結果、同事業の売上収益は1,686億94百万円(前連結会計年度比10.4%増加)となりました。
(施工管理アウトソーシング事業)
施工管理アウトソーシング事業のメインである施工管理サービスに加え、ドローンを使用した3次元計測、空撮、点検等の実施や、一級建築士事務所の設置等、設計分野・施工管理分野で培われた技術力をもとに、さまざまなサービスを展開しています。また、慢性的な施工管理技術者不足に対応すべく、自社の技術センターを活用し、建設業界未経験者や経験の浅い若手技術者を積極的に採用・育成しています。これらの取組みにより、当連結会計年度末の在籍技術者数は3,206人(前連結会計年度末比244人増加)、稼働技術者数は3,060人(同225人増加)となりました。
その結果、同事業の売上収益は232億93百万円(前連結会計年度比7.6%増加)となりました。
(国内その他事業)
国内その他事業は、人材紹介及び技術系教育研修サービスで構成されています。人材紹介では、採用を通じた当社グループへの人材供給は伸張している一方、外部顧客が求めるハイスキル人材の獲得に苦戦し、また、景気の不透明感によって採用を一時抑制する動きも見られます。また、技術系教育研修では、当社グループ内でのシナジーを活かした研修プログラムの開発や効率化を行う一方、人的資本投資への需要を取り込むべく先行して費用を投じながら、企業向け技術者育成コンサルティング、e-Learningシステムの整備や外販の拡大に取り組んでいます。
その結果、同事業の売上収益は48億39百万円(前連結会計年度比13.1%減少)となりました。
(海外事業)
海外事業は、インドや中国において、主に欧米や日本の顧客に対するオフショア・デリバリーサービスを、東南アジアや英国において、技術者派遣及び人材紹介サービスをそれぞれ展開しています。国によって多少の違いはあるものの、世界的な景気後退懸念や地政学リスクを背景とした投資抑制の影響を徐々に受けつつあります。一方、国内ソリューション事業のケイパビリティ獲得にも寄与する、高利益率のオフショア・デリバリー案件や新規顧客を開拓すべく、セールス&マーケティングを中心とした先行投資を継続しています。
その結果、同事業の売上収益は256億82百万円(前連結会計年度比9.2%増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ98億68百万円増加し、452億41百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金は311億77百万円の収入(前期は214億24百万円の収入)となりました。これは主に、税引前当期利益(221億39百万円)、減価償却費及び償却費(32億71百万円)、減損損失(27億69百万円)等による資金の増加に対し、法人所得税支払額(70億93百万円)等により資金が減少したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金は7億85百万円の支出(前期は44億49百万円の支出)となりました。これは主に、投資の売却及び償還による収入(28億1百万円)、定期預金の払戻による収入(22億86百万円)等による資金の増加に対し、投資の取得による支出(31億23百万円)、定期預金の預入による支出(24億30百万円)等により資金が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金は209億29百万円の支出(前期は192億31百万円の支出)となりました。これは主に、配当金支払額(82億22百万円)、リース負債の返済による支出(69億99百万円)、自己株式の取得による支出(39億23百万円)等により資金が減少したことによるものです。なお、非支配持分からの子会社持分取得による支出(7億83百万円)は、Orion Managed Services Limitedの残株式の取得対価支払額になり、本取得により同社の所有割合は100%となっています。
③ 生産、受注及び販売の実績
イ.生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しています。
ロ.受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しています。
ハ.販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、以下のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
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金額 (百万円) |
前年同期比 (%) |
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R&Dアウトソーシング事業 |
168,694 |
110.4 |
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施工管理アウトソーシング事業 |
23,293 |
107.6 |
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国内その他事業 |
4,839 |
86.9 |
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海外事業 |
25,682 |
109.2 |
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全社/消去 |
△3,289 |
88.2 |
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合計 |
219,218 |
109.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、以下のとおりです。
なお、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
① 重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 注記4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。
② 経営成績の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
③ 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は1,526億51百万円(前連結会計年度末比86億33百万円増加)となりました。主な内訳は、のれん464億94百万円、現金及び現金同等物452億41百万円、売掛金及びその他の債権289億63百万円等です。
各項目の状況は、以下のとおりです。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は875億75百万円(前連結会計年度末比109億18百万円増加)となりました。主な内訳は、現金及び現金同等物452億41百万円(同98億68百万円増加)、売掛金及びその他の債権289億63百万円(同15億58百万円増加)等です。
(非流動資産)
当連結会計年度末における非流動資産の残高は650億75百万円(前連結会計年度末比22億85百万円減少)となりました。主な内訳は、のれん464億94百万円(同1億22百万円増加)、使用権資産44億54百万円(同4億62百万円減少)等です。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は581億14百万円(前連結会計年度末比111億69百万円増加)となりました。主な内訳は、買掛金及びその他の債務181億17百万円(同20億73百万円増加)、従業員給付に係る負債94億5百万円(同7億19百万円増加)等です。
(非流動負債)
当連結会計年度末における非流動負債の残高は126億38百万円(前連結会計年度末比76億71百万円減少)となりました。主な内訳は、社債及び借入金77億35百万円(同59億81百万円減少)、リース負債35億50百万円(同5億65百万円減少)等です。
(親会社の所有者に帰属する持分)
当連結会計年度末における親会社の所有者に帰属する持分の残高は807億41百万円(前連結会計年度末比52億12百万円増加)となりました。主な内訳は、利益剰余金659億13百万円(同66億50百万円増加)、資本金69億29百万円(同増減なし)等です。なお、自己株式の消却等により、資本剰余金は前連結会計年度末比48億76百万円減少しました。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(3)資本の財源及び資金の流動性
① 資金需要
当社グループは技術者派遣業務を主体として事業運営しているため、主要な運転資金需要は、人件費(給与手当、賞与、法定福利費等)の支払となります。また、技術者派遣業務は、役務提供の対価が毎月入金されることが基本であるため、運転資金の大半は顧客からの入金で充足されます。なお、当連結会計年度における売上債権回転期間は1.6ヶ月、未払人件費等回転期間は1.3ヶ月です。
その他、情報システム投資や営業拠点投資、自己株式取得、M&A投資が主要な資金需要となります。
② 財務政策
当社グループは、(ア)将来的成長へ向けた積極投資、(イ)適正な財務健全性・レバレッジの確保、(ウ)株主還元の規律、の最適なバランスを踏まえた財務政策を基本方針としており、指標としては基本的1株当たり当期利益の長期継続的改善を重視し、資本コストが相対的に低い借入を主体とした負債性資本による調達を基本としています。
また、当社グループでは、当連結会計年度末時点において、短期的資金需要及びM&A資金需要を賄うため、当社において総額160億円のコミットメントライン契約及び当座貸越契約を締結しています。
特記すべき事項はありません。
特記すべき事項はありません。