文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年6月30日)現在において、当社グループが判断したものであります。将来に関する事項は不確実性を内包しておりますので、将来生じる実際の結果と差異を生じる可能性があります。
(1)経営方針
当社グループは、研究開発型企業として、『医療及び産業機器の分野において、安全と信頼を基盤とする「Only One」技術や「Number One」製品を世界に発信し続けることにより、全てのお客様の「夢」を実現すると共に、広く社会に貢献していくこと』を企業理念としております。また特に、当社グループの医療機器分野事業は、主に、傷口が小さく痛みの少ない「低侵襲治療」の製品を開発・製造・販売しており、患者様の肉体的・精神的・経済的負担を軽減し、そして医療費抑制にも貢献できる、大変意義のある事業であると考えており、今後も、社会に貢献できる企業であり続けることで、社会からも市場からも評価される企業として、更なる成長を遂げたいと考えております。
(2)中長期的な会社の経営戦略
① 長期経営ビジョン
当社グループは、「世界中のプロフェッショナルと共に、「ASAHI TECHNOLOGY」でイノベーションを創出し、次世代の医療や産業のニーズを捉え、グローバルな課題をグローバルに解決する。」という経営ビジョンを定め、長期的な目標として連結売上高1,000億円を超えて更に成長していくことを目指しております。
② 中期経営計画
当社グループは、低侵襲治療を究極的に追究することで、医師や患者様のQOLの向上を目指しております。現中期経営計画「ASAHI Going Beyond 1000」では、連結売上高1,000億円を超えて、更に成長するための事業ポートフォリオの構築を進めており、以下の4つの基本方針を定めております。
①グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大
②グローバルニッチ市場における新規事業の創出
③グローバル展開に最適な研究開発・生産体制の構築
④持続的成長に向けた経営基盤の確立
2024年6月期において、中期経営計画のマイルストーンである連結売上高1,000億円を達成いたしておりますが、今後におきましても、中期経営計画に基づく成長戦略を着実に進めていくことにより、企業価値の拡大を目指してまいります。
なお、当社グループの重要な経営管理指標としては、売上高、営業利益、営業利益率としております。営業利益率については20%を目安とし、経営の主要パフォーマンスであるEBITDA(営業利益+のれん償却額+減価償却額)の率については30%を目安とすることを、中期経営計画の指標としております。
また、財務指標としては、ROE(自己資本利益率:Return On Equity)とROIC(投下資本利益率:Return on Invested Capital)を注目すべき指標として定めております。ROE及びROIC(「運転資本+固定資産」を投下資本として算定)については、共に10%を超えることを基本水準としており、改善を目指してまいります。
(a)グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大
当社グループは現在、世界118の国と地域へ製品を供給しております。当社グループの製品が使用される血
管内疾患の症例数は、引き続き新興国を中心にグローバル規模で拡大すると予測されております。こうした中、それぞれの地域において販売・マーケティングの機能をより一層充実させることにより、グローバル規模での収益基盤の強化を図る所存であります。
(日本)
日本市場では、病院などに対して自社ブランド製品の直接販売を行っており、循環器系・非循環器系ともに高いシェアを獲得しております。また、非循環器領域では、直接販売体制を活かした他社製品の販売や、消化器分野における自社ブランド製品の強化などを行っております。また、新規事業として、外科手術支援ロボットの「ANSUR(アンサー)」の販売を当年度より開始いたしました。引き続き、収益・事業領域の拡大に努めてまいります。
(米国)
米国市場では、自社ブランド製品について直接販売を行っております。
循環器領域の拡大に加えて、非循環器領域の末梢血管系と脳血管系を重点市場と位置付け、新製品の積極的な投入に加え、更なる販売促進のために、最終顧客である医師に密着して市場動向をより早く把握できるマーケティングや販売機能の体制を更に強化するなどし、シェア拡大に努めております。これらの戦略により、更なる収益拡大に努めてまいります。
(欧州)
欧州市場では、自社ブランド製品について、直接販売や、現場に密着した複数の代理店を通じて販売を行っており、主に循環器系製品において高いシェアを獲得しております。欧州市場の一部の地域におきましては、段階的に、直接販売化を進めており、2019年7月よりフランス、2021年1月よりドイツ、2021年7月よりイタリアにおいて直接販売化に移行しております。今後も、シェア拡大に伴う更なる収益拡大を図ってまいります。
(中国)
中国市場では、主に自社ブランド製品について、現地代理店を通じた販売を行っており、主に循環器系製品において高いシェアを獲得しております。循環器・非循環器領域ともに、症例数の増加が堅調であり、グローバル市場の中でも中国は、特に高い成長と発展が見込まれております。
入札制度などの事業を取り巻く環境変化が進むものの、今後におきましても、市場の状況を鑑みながら、新製品の投入、マーケティングや販売活動の充実、現地代理店に密着したバックアップ体制の強化などにより、更なる収益拡大に努めてまいります。
(その他地域)
アジア・中近東・オセアニア・南米地域などにおいて、潜在成長力のある新興国を中心に、主に現地に密着した代理店を通じて、自社ブランド製品の販売を行っており、循環器系製品において高いシェアを獲得しております。循環器・非循環器領域ともに、更なる収益拡大を目指してまいります。
(Number One製品戦略)
循環器領域の主力製品PCIガイドワイヤーにつきましては、引き続き総合的なラインナップの充実などにより、ナンバーワンのポジションを盤石化してまいります。
また、PCIガイドワイヤーに次ぐ第二の主力製品として、貫通カテーテルなどがございますが、このような更なる主力製品の確立に向け、カテーテル分野の製品群を一層強化・拡大してまいります。
さらには、循環器領域のみならず、末梢血管系・脳血管系・腹部血管系・消化器系などの非循環器領域への製品展開を強化する施策を継続して進めてまいります。非循環器領域については、循環器領域で培った技術を応用した横展開を行い新製品の拡充に努めると同時に、特に海外地域における販売体制を強化し、グローバル規模での市場シェアの獲得に努めてまいります。
(Only One製品戦略)
現在、治療が困難とされているCTOに対するPCI治療は、PCI治療の先進国である日本においても完全というわけではなく、海外市場を中心にバイパス手術で対応するケースが残っております。このような中、当社グループは、他社にはない高い製品優位性を持ち、CTO治療も可能なPCIガイドワイヤーや貫通カテーテルなどの低侵襲治療に必要な製品群を開発・販売し、CTO領域におけるPCI治療選択率の拡大に寄与してまいりました。今後も、研究開発型企業として、プラズマ・ガイドワイヤー(循環器系・末梢血管系)やストローク・スマート・ガイドワイヤー(脳血管系)など、先端技術を使った新しい機能を保持した製品を開発し、低侵襲治療の普及や発展に寄与してまいります。
(b)グローバルニッチ市場における新規事業の創出
研究開発型企業である当社グループは、4つのコアテクノロジー(伸線技術、ワイヤーフォーミング技術、樹脂コーティング技術、トルク技術)を主体とした、高度で独自性の高い素材加工技術を備えております。また、これらの技術に加え、原材料から製品までの一貫生産体制を構築することにより、当社独自の素材及び機能を有した製品の開発・製造が可能となっております。これは、医療機器分野以外に、産業機器分野を有する当社グループならではの強みであり、医療機器分野での競合先とのコスト面・技術面における差別化を図る大きな要因となっております。
今後もグローバル競争に勝ち、連結売上高1,000億円を超えて永続的に成長発展する企業であり続けるために、その礎となる施策に今から着手していくことが必要であると認識し、当社グループの高い技術力の強化により消化器分野・脳血管系分野・ロボティクス分野などの新領域への進出をはじめております。また、新テクノロジーとの融合が必要な場合には、より積極的に技術提携、M&A、少数株主投資などを駆使し、外部からの新技術導入を含め、有力パートナーとの戦略的提携についても推進しております。
グローバルニッチ市場における新規事業の創出により、事業ポートフォリオの強化に努め、グローバルで持続的に成長する企業を目指してまいります。
(C)グローバル展開に最適な研究開発・生産体制の構築
販売の拠点である連結子会社ASAHI INTECC USA, INC.において、最終顧客である医師からのニーズや評価をダイレクトに反映でき、試作レベルまでの対応を可能とした研究開発体制を構築しております。また、連結子会社ASAHI INTECC THAILAND CO., LTD.の研究開発拠点を更に拡充させ、製品仕様の検討を含めた既存製品の改良などをより積極的に進めてまいります。
国内においては、当社グループの研究開発拠点の中心であるグローバル本社・R&Dセンター(愛知県瀬戸市)において臨床現場に近い製品開発を行っております。また、基盤技術開発強化を目的とした大阪R&Dセンターや、次世代医療機器技術の研究開発を目的とした東京R&Dセンターなどの拡充に加え、本社敷地内に、新たな製品開発を中心とする研究開発拠点として「ANNEX棟」を増設いたしました。国内の研究開発体制をより充実させてまいります。
また、当社グループでは、現在、日本においては研究開発・試作に特化し、量産品については原則として海外の連結子会社に生産移管しており、素材から完成品までの一貫生産が海外工場(ASAHI INTECC THAILAND CO., LTD.(タイ工場)、ASAHI INTECC HANOI CO., LTD.(ハノイ工場)、及びTOYOFLEX CEBU CORPORATION(セブ工場))で実現できる体制が整っております。その中で、リスク管理や事業継続計画(BCP)の観点から、グループ全体での生産拠点の最適化を図っており、現地事情などにより、一部の工場が操業不能に陥った場合においても、別の工場にて代替生産の大部分を担えるよう、3工場で同じ製品が製造できる体制の構築を進めております。これらの目的に加えて、更なる増産体制を構築するために、現在、ハノイ工場の増設を行っております。
今後も、グローバル展開に最適な研究開発拠点や生産体制の構築・拡充により、当社グループの成長戦略を下支えしていきます。
(d)持続的成長に向けた経営基盤の確立
サステナビリティへの取り組みを推進する体制を構築し、各サステナビリティの重要課題につき基本方針をとりまとめ、戦略的に推進しております。
現在、この7つの重要課題を中心に、全社的な取り組みを進めております。サステナビリティに関わる当社の考え方や、取り組みにつきましては、統合報告書やウェブサイトにて随時開示してまいります。
重要課題1 イノベーションを通じた現場の課題解決
重要課題2 環境負荷低減への取り組み
重要課題3 サプライチェーンマネジメント
重要課題4 安全・安心な製品の供給
重要課題5 グローバル人財基盤の強化
重要課題6 リスクマネジメントの強化
重要課題7 コーポレート・ガバナンスの強化
〔注釈説明〕
注:CTO/(慢性完全閉塞)
長期間完全に閉塞した状態の病変のことをいいます。従来は、このような病変は外科手術(バイパス手術)の領域でしたが、当社グループがCTOにも使用可能なPCIガイドワイヤーの開発に成功したことから、現在では、国内においてはPCI治療(カテーテル治療)が主流となっております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(サステナビリティ全般)
当社グループのサステナビリティとは、ステークホルダーとの信頼関係を構築すること、価値 創造プロセス(事業の推進と基盤の強化の好循環)に取り組み、企業理念を実践すること、 それにより「ASAHIブランド」(コーポレートブランド)を確立することと考えております。
中期経営計画「ASAHI Going Beyond 1000」において、「持続的成長に向けた経営基盤の確立」を基本戦略のひとつとして掲げており、ESGを重要項目の一つと位置付け、成長戦略・経営基盤強化の両面からサステナビリティの重要課題に取り組んでおります。

当社グループではサステナビリティ関連の重要課題に関し、取締役会が適切に監督を行うための体制を構築しております。
特に経営上のリスク・機会に関わる重要事項については、環境担当役員及びESG担当役員から、社外取締役を含む全取締役に報告され、取締役会において議論の上、当社グループの経営戦略に反映されます。
(2)リスク管理
当社グループは、安全と信頼を基盤とした事業継続のため、当社グループの事業活動に関連するリスク要因を正しく認識し、その発生可能性を低下させるための対策及び発生した場合の損失を最小限に抑えるための対応について、全社的なリスク管理体制を整備したうえで、継続的に検討・実施しております。
当社の取締役会は、当社グループの業務執行に重大な影響を与えるリスクの予防と発生した損失の管理のため、危機管理規程、関係会社管理規程などの各種規程を整備し、当社グループ全体に対する横断的なリスク管理体制を整備しております。
また、当社グループにおける日常の業務遂行に関わる通常のリスク管理は、職務権限規程に基づき各部門が付与された権限の範囲内で適切に行っております。その上で、当社グループの各部門のリスク管理の状況については、管理本部の各部門が専門知識と各業務プロセスに精通した知見を基に検証と確認を行うこととしております。各部門は、問題を発見したときは取締役会に報告することとしております。
(気候変動への対応)
当社グループは、過去のタイでの洪水やフィリピンでの台風による被害の経験から、気候変動問題を含む環境問題への対応を重大な課題の一つとして認識しております。当社グループは、2022年8月に金融安定理事会により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」への賛同を表明しており、TCFDのフレームワークに沿った情報開示を進めております。
(1)ガバナンス
当社グループでは、医療機器・産業機器の開発・製造・販売を中心とした企業活動と地球環境との調和を目指し、環境保全に積極的に取り組み、また企業活動全般において、持続的な社会に貢献することを基本方針としております。また、気候変動への対応を含む環境への取り組みについて、中期経営計画における「持続的成長に向けた経営基盤の確立」の重要課題の一つに設定しております。
当社グループでは、気候変動をはじめとする環境課題に関し、取締役会が適切に監督を行うための体制を構築しています。特に経営上のリスク・機会に関わる重要事項については、環境担当役員及びESG担当役員から社外取締役を含む全取締役に報告され、取締役会において議論の上、当社グループの経営戦略に反映されます。
(2)戦略
地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできないと考えております。特に、命に関わる医療機器にとって、地球災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医療機器供給能力の低下は、事業リスクのみならず社会リスクになり得ると考えられます。
気温上昇に伴う将来の環境規制の厳格化及び自然災害リスクの増大によって、当社グループの事業活動においても影響が生じる可能性があります。このような環境認識に基づき、IEA(国際エネルギー機関)の示す1.5℃シナリオ(NZE2050)や2℃(及び2℃未満)シナリオ(SDS)、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の示す4℃シナリオ(RCP8.5)などに沿ってシナリオ分析を実施いたしました。
(気候変動に対する影響の分析)
1.5℃シナリオや2℃(及び2℃未満)シナリオでは省エネ規制の強化や炭素税及び排出枠取引の導入、主要原材料に対する環境規制や価格上昇などの移行リスクが想定されます。また、4℃シナリオでは、特に洪水や台風などの災害発生によるサプライチェーンの寸断や製造拠点の稼働停止などの物理的リスクが大きくなることが想定される一方で、平均気温の上昇に伴う血管相疾患の発症リスクの増大は、当社グループにとっては医療現場の効率性の向上に貢献できる製品の供給機会になる可能性があります。このような予測に基づき、取締役会において、各グループ会社が事業分野ごとにリスク・機会の分析を実施・共有しております。
(3)リスク管理
気候変動関連のリスクも含め、当社グループの経営に大きな影響を及ぼす案件については、取締役会にてリスクの評価、対応策や予防措置を議論・検討し、評価・特定された気候変動関連のリスクについても管理してまいります。
気候変動関連のリスクに関しては、経営戦略室において認識がなされ、重要リスクについて取締役会に報告しております。
引き続き、TCFD 提言に基づく気候関連リスクのフォローアップを実施するとともに、全社的なリスクマネジメントとの連携も含めた気候関連リスクの管理体制構築を進めてまいります。
(4)指標および目標
当社グループは、SBTiの1.5℃水準の削減目標に即し、2030年までに当社の事業活動から排出されるCO2排出量(Scope1+2)を2022年6月期比で30%削減する中期的なCO2排出量の削減目標を策定しております。
また、サプライチェーンで排出されるCO2排出量(Scope3)については、売上高原単位で2023年6月期の水準を維持することを目標としております。Scope3においてはカテゴリー1(購入した製品・サービス)における排出が大部分を占めておりますが、当社グループは医療機器の製造・販売を主たる事業としていることから、購買品の変更などは他業種と比較して困難であるため、大幅な削減は困難と考えております。一方で、CO2排出量の削減は当社グループにおいても取り組むべき重大な課題であるため、当社グループにおける削減のみならず取引先様とも協働して、サプライチェーン全体での削減に努めてまいります。
(Scope1+2)
当社グループの事業活動から排出されるCO2排出量は、生産量の増加に伴って、当社グループ全体として前年同期比で5.5%増加しておりますが、売上高の増加によって、売上高原単位での排出量は9.0%減少いたしました。
当社グループは売上高の規模に対して事業活動から排出されるCO2排出量は比較的少ないと考えておりますが、製造工程の効率化やこまめな節電をはじめとした省エネ活動に加えて、将来的な再生可能エネルギーへの転換なども含めた総合的な取り組みを検討し、実施してまいります。
CO2排出量(Scope1+2)
(Scope3)
当社グループでは、主要取引先様に対する環境配慮に関するアンケートの実施や、設計段階から環境への影響を考慮したうえで環境にやさしい材料の選択などを行うことで、サプライチェーン全体でのCO2排出量の削減に向けた取り組みを進めております。
2022年6月期においては、当社単体のみを対象にScope3排出量の算定を実施しましたが、2023年6月期においてはグループ全体でのScope3排出量の算定を実施いたしました。算定の結果からScope3においてはカテゴリー1(購入した製品・サービス)における排出が大部分を占めることが判明しておりますが、当社グループは医療機器の製造・販売を主たる事業としていることから、購買品の変更などは他業種と比較して困難であるため、大幅な削減は困難と考えております。一方で、CO2排出量の削減は当社グループにおいても取り組むべき重大な課題であるため、当社グループにおける削減のみならず取引先様とも協働して、サプライチェーン全体での削減に努めてまいります。
CO2排出量(Scope3)
(注)当社単体数値となります。
(人的資本)
(1)ガバナンス
当社グループは、企業行動憲章において「従業員のゆとりと豊かさを実現し、安全で働きやすい環境を確保すると共に、従業員の多様性、人格、個性を尊重する」ことを掲げており、社員一人ひとりの人権を尊重し、差別やハラスメントの防止に努めております。
(2)戦略
当社グループは、2013年にAI(朝日インテック)人財ビジョンを策定し、当社のDNAである「チャレンジ」「現場力」「自活力」「グローバルベスト」「創造的ものづくり集団」を基本方針とした価値観浸透と人財育成を推進しております。
近年、当社グループは、グローバル規模で市場拡大・成長を目指しており、国際的な事業展開において、AI人財ビジョンをベースにした「グローバル人財基盤の強化」が喫緊の課題となっております。本課題に対し、「人財マネジメント」と「働きやすい職場づくり」という視点で、グローバル企業として相応しい体制づくりを目指しております。
今後も更なる成長を追求するために、多様性を理解し、多面的な角度から幅広い視点で物事を図れるような人財を育成することで、グローバル企業として相応しい組織力を高めてまいります。
グローバル人財基盤強化の取り組みを強固なものにするため、当社内にグローバル人事機能を置き、国内外の当社グループ企業・各拠点への当社のDNAの浸透を軸とした組織開発や人事戦略(各種制度構築・採用・人財育成など)の実行支援や連携を強化しております。
当社グループは、通報相談窓口として、社内・社外にそれぞれASAHI グループ・コンプライアンスホットラインを設置しております。窓口では、従業員からの社内の法令違反・定款違反・企業行動憲章違反・社内規程違反・ハラスメントについての通報・相談を受け付けております。
当社グループでは、人財の多様化による企業価値の向上を目指し、国籍、人種、性別、年齢、障がいの有無などに関係なく、各々がその能力を十分に発揮し、活躍できる環境づくりに努めております。当社として、多様性推進のため、以下の指標を設定しております。当該指標における目標および実績は以下の通りです。
(単位:%)
詳細は、当社ホームページ『
(https://www.asahi-intecc.co.jp/esg/)に記載予定です。
本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年6月30日)現在において、当社グループが判断したものであります。
① 医療機器分野について
(法的規制について)
当社グループの事業は、厚生労働省、米国食品医薬品局、EU当局、並びに中国当局等による諸規制を受けており、当社グループに関連する主な法的規制は次のとおりであります。
(a) 医薬品医療機器等法及び厚生労働省令
当社グループは、各種の医療機器及びその関連製品の設計・製造・販売を行うに際し、日本国内では医薬品医療機器等法、医薬品医療機器等法施行令、医薬品医療機器等法施行規則及びQMS省令等により規制を受けております。医薬品医療機器等法では、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることが目的とされております。製造販売業者・製造業者は、安全で有用な医療機器を提供するために、品質、有効性及び安全性を確保した継続的な生産体制を維持するためのシステムとしてQMS(Quality Management System:品質マネジメントシステム)を確立し、設計・製造から市販後に至るまで管理する必要があります。
厚生労働省は、国際的な整合性や、科学技術の進歩、企業行動の多様化等、社会情勢の変化を踏まえ、医薬品・医療機器規制及び制度について常に見直しを図っており、承認・許可制度の見直し、市販後安全対策の充実等当該法規制の変更等により、規制が強化された場合には、当社グループが事業展開を行ううえで、影響を受ける可能性があります。
また、今後、医薬品医療機器等法に関連し、当社グループの承認、許可及び登録が認められない場合、取り消された場合、あるいは遅延した場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(b) MDR(Medical Devices Regulation / 医療機器規則)及びMDD(Medical Devices Directive / 医療機器指令)
欧州市場で医療機器を流通させるためには、MDR若しくはMDDに基づく要求事項を満たす必要があり、製造業者は定められた適合性の評価基準を満たさなければなりません。また、これらの法規制に適合していることを証明するCEマーキングが製品に表示されていなければ欧州市場において製品の流通が出来ず、法規制の必須要求事項を満たすための品質システム(EN ISO 13485)の認証維持が条件となります。よって、これらの規制内容や要求事項が変更若しくは強化された場合には、当社グループが事業展開を行ううえで、影響を受ける可能性があります。
また、当社グループは、MDDへの適合を満たしておりますが、新規制であるMDRへの適合に向けた対応を現在進めております。今後、MDRについて、当社グループの品質システムの適合性が認められない場合、認証、登録が認められない場合、あるいは遅延した場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(c) FD&C法(The Federal Food,Drug, and Cosmetic Act / 連邦食品・医薬品・化粧品法)
米国市場で医療機器を流通させるためには、FD&C法に基づき、品質、有効性及び安全性確保が必要になります。この法律は、食品、食品添加物、医薬品、医療機器、化粧品等の規制を目的としており、米国内での流通に際して、必須要求事項であるQSR(Quality System Regulation)に基づく体制の維持・確立が必要であります。当該法規制等が変更若しくは強化され施行された場合には、当社グループが事業展開を行ううえで、影響を受ける可能性があります。
また、今後、FD&C法に関連し、当社グループの登録、認可が認められない場合、取り消された場合、あるいは遅延した場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(d) 医療機器監督管理条例
中国市場で医療機器を流通させるためには、医療機器監督管理条例に基づき、品質、有効性及び安全性の確保が必要になります。医療機器監督管理条例の下に、医療機器の分類、登録、生産監督、経営許可、品質管理システムの審査、ラベリング等に関する規則が定められており、中国国内において医療機器の販売及び使用を行うにあたっては、NMPA(National Medical Products Administration /国家薬品監督管理局)の審査を経て、「医療機器登録証」を取得する必要があります。当該法規制等が変更若しくは強化され施行された場合には、当社グループが事業展開を行ううえで、影響を受ける可能性があります。
また、今後、医療機器監督管理条例に関連し、当社グループの登録、承認が認められない場合、取り消された場合、あるいは遅延した場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(医療制度改革について)
当社グループはグローバル規模にて販売を行っておりますが、日本を含め世界各国では医療制度改革が進められております。今後、予想を超える大規模な医療制度改革が行われた場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また国内では、高齢化の急速な進展等に伴う国民医療費抑制策及び内外価格差問題の解決として、医療制度改革が進められております。2003年4月に特定機能病院において診療報酬包括制が導入されたほか、2002年4月より隔年で保険償還価格の引下げが実施されております。医療制度改革の動向により販売価格が下落する等の影響があった場合は、当社グループの業績も影響を受ける可能性があります。
(品質管理体制について)
当社グループは、人命に関わる高度な技術を要する医療機器を取り扱うことから、社内において徹底した品質管理体制を確立しておりますが、特異な要因による不良品の発生や、臨床現場での不適切な取扱いの可能性は完全に否定出来ません。医療事故が発生した場合には、製造物責任により、係争事件等に発展する可能性があります。また医療機器規制 により、関連する製品の回収責任が生じる事も予測されます。このような場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(特定製品への依存について)
当社グループの主力製品であるPCIガイドワイヤーの、当連結会計年度における連結売上高は509億52百万円となっており、連結売上高全体の47.4%を占めています。従ってPCIガイドワイヤーの売上動向が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(中国向け売上高について)
当社グループの当連結会計年度における連結売上高のうち、メディカル事業の中国売上高は240億33百万円となっており、連結売上高全体の22.3%を占めています。中国市場は、中長期的に高い成長性を有する重要な市場と認識しておりますが、米中貿易摩擦の激化、中国政府・当局による国産優遇策や集中購買の推進など、不確実性が高まっております。
今後の政治情勢や政府・当局の政策・規制の動向などによっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(技術革新への対応について)
医療機器市場では、技術の変革は著しく速く、企業が成長を続けるためには、新技術・新製品の研究開発は必須であります。当社グループにおいても、研究開発型企業として研究開発活動に注力しておりますが、現行の検査及び治療方法を革新する新技術が開発され、当社グループの対応が遅れた場合、あるいは他社から極めて優良又は革新的な製品が販売された場合には、当社グループの提供する製品が陳腐化し、その結果、当社グループシェアが低下する可能性があります。そのような事態が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(特定取引先からの仕入について)
当社グループは、原材料の一部について、特定の仕入先に依存している場合があります。当社グループではこうした特定仕入先との関係を密接に保ちながら、安定的な調達に努めております。需要の急増による原材料不足や天災地変、品質問題、特定仕入先の政策変更や倒産・経営破綻・合併等により調達に重大な支障をきたした場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 産業機器分野について
(客先仕様である事について)
当社グループの産業機器分野の製品は、レジャー、建築、自動車、OA機器等広範囲にわたって使用されております。今後も新素材及び新製品の開発体制の充実を図り、新規分野の需要開拓に注力する所存ですが、大半が客先仕様に基づく部材レベルの製品であるため、客先の仕様変更等により当社グループの製品に替わる他社の製品が採用された場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(競合状況について)
当社グループの産業機器分野の新たな競合先として、近年、韓国・中国等のメーカーなどが存在しております。
当社グループは、新素材及び新製品の開発体制の充実を図り、新規分野の需要開拓に注力する所存ですが、これらの競合先メーカーが、当社グループと同品質で、なおかつ低価格の製品を供給できる体制に成長した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
③ 各事業共通事項について
(海外事業展開について)
当社グループは現在、世界118を超える国と地域へ製品を供給しており、当連結会計年度の連結売上高に占める海外売上の割合は83.8%となっておりますが、今後、当社グループがさらに飛躍するために、海外販売をより積極的に展開する方針であり、今後は需要拡大に備え、海外生産拠点の強化・拡充を引続き進めていく所存であります。当社グループが引続き成長を続けるためには、新たな市場における販売ルートの確立や設備投資を引続き慎重に進めていく所存ですが、海外環境の動向等により、海外事業が計画どおりに展開されない可能性があります。仮にこのような事態が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(海外生産への依存について)
当社グループは、日本国内施設は主に研究開発拠点と位置付ける一方、連結子会社のASAHI INTECC THAILAND CO.,LTD.、ASAHI INTECC HANOI CO.,LTD.及びTOYOFLEX CEBU CORPORATIONは重要な生産拠点として位置付け、現在、量産品については、原則として当該連結子会社に生産移管しております。
一番の主力の生産拠点であるASAHI INTECC THAILAND CO.,LTD.より、第二の生産拠点であるASAHI INTECC HANOI CO.,LTD.に継続的に生産移管を行い、また第三の生産拠点であるTOYOFLEX CEBU CORPORATIONにおいても医療機器分野の生産を可能にする体制構築を進めるなどし、リスク分散を図っておりますが、これら3つの連結子会社が洪水、地震等の天災や政治、経済、法律、文化、ビジネス慣習、労働力不足や労働賃金水準の上昇、その他様々な現地事情等により操業低迷や不能に陥った場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(原材料価格の高騰について)
当社グループが製造する製品の多くは、原材料の一部に、ステンレス及びプラチナを使用しております。売上高に対しての原材料比率は比較的低いものの、これら原材料の価格の高騰が予想を上回る状況で進行した場合、特にプラチナ価格の高騰については、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(知的財産権について)
当社グループは製品の開発・製造・販売に関し、知的財産権の確保に努めておりますが、他社から当該権利を侵害される可能性は完全に否定できず、当該権利期間経過後は、他社による同一製品の新規参入の可能性も予測されます。
また、製品に関連し得る他社の知的財産権の侵害防止に努めておりますが、万一、侵害の事実が発生した場合は、係争事件に発展することも含めて、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(自然災害や大規模災害等について)
当社グループはグローバル規模にて販売を行っております。当社グループが事業を展開している地域において、自然災害、戦争、テロ等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(疫病や感染症による影響について)
当社グループは、グローバル規模にて製品の販売を行っております。昨今の新型コロナウイルス感染症の発生より、全世界的にカテーテル治療の症例数は減少しておりましたが、現在、症例数は回復基調にあります。
また、当社グループの製造工場はタイ・ベトナム・フィリピンにありますが、これらの製造工場の稼働に関しては、新型コロナウイルス感染症による大きな問題は無く、製品供給について問題は生じておりません。
ただし今後において、疫病や感染症の拡大の影響によって、症例数の大幅な減少、生産工場の大幅な稼働の縮小、当社グループの従業員への感染が拡大するなどした場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(気候変動によるリスク)
年々激甚化する自然災害や生物種の喪失などを受けて、気候変動への取組みは大きな社会課題となっており、顧客を含むステークホルダーからのサステナビリティに関する要求は増加しています。また、欧米をはじめとして、気候変動対応や環境政策に関する法規制やそれらへの取組みの開示が強化されるなどもしております。
よって、これらのステークホルダーからの要請に応えられない場合には、顧客取引の停止や入札に参加できないなどの事業機会損失や、投資家からの投資が制限されるなどのリスクがあります。
また、需給バランスの変化や地政学的な影響等に伴うエネルギー価格の上昇や、脱炭素対応のための追加設備投資、炭素税導入、化学物質管理などの規制が強化されることにより、事業コストが増加する可能性があります。
④ 全社的な事項について
(為替リスクについて)
当社は、日本に本社を置き事業運営を行っているため、連結財務諸表作成等のために、海外子会社の現地通貨建て財務諸表を円換算しています。従って換算の為替レートに変動があると、円換算後の損益に影響を及ぼすこととなります。大きな変動が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度の連結売上高に占める海外売上の割合は83.8%であり、その大半は米ドル建てですが、ユーロや元などの外貨についても、取引量の増加に比例し、増加しつつあります。一方、当社グループの主要な生産拠点はタイ、ベトナム、フィリピンにあり、連結子会社のASAHI INTECC THAILAND CO.,LTD.(タイバーツ建決算)、ASAHI INTECC HANOI CO.,LTD.(米ドル建決算)及びTOYOFLEX CEBU CORPORATION(円建決算)との取引は、原則的に全て円建てで取引をしております。したがって、為替が円高米ドル安タイバーツ安に進んだ場合、海外売上高の円換算額が目減りするとともに、タイ及びベトナムの連結子会社の業績変動を通じて主に売上原価等の円換算額が減少します。また逆に、為替が円安米ドル高タイバーツ高に進んだ場合、海外売上高の円換算金額が増加するとともに、タイ及びベトナムの連結子会社の業績変動を通じて売上原価の円換算額が増加いたします。
米ドルとタイバーツが連動すれば、為替変動によるメリット・デメリットは概ね相殺されますが、円に対し米ドル安タイバーツ高に進んだ場合には収益が圧迫されるなど、当社グループの業績にマイナスの影響を与える可能性があります。
また、前述の通り米ドルの流入量が多く、タイ及びベトナムの連結子会社においては円の流入量が多いため、急激な為替相場の変動時には、これらの決算通貨への交換時に発生する為替差損益が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(保有株式に関するリスクについて)
当社は、原則として、取引先や業務提携先とのさらなる事業発展やシナジー効果等を目的として保有しております。したがって、将来、株式相場の悪化や投資先の業績不振等により、大幅な株価下落が発生した場合には、保有株式に減損が発生し、当社の業績と財務状況に影響を与える可能性があります。
(減損・評価損に係るリスクについて)
当社は、中長期の成長戦略に基づき、各事業における効率的な経営資源の活用、投資回収の最大化に努めています。しかしながら、当初見込まれた成長を実現できなかった場合、固定資産や投資などの資産の減損により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(企業買収に関するリスクについて)
当社グループは、企業価値を向上させるために必要な技術やその他の要素の外部からの獲得が、事業の成長を加速させる上で有効な手段となる場合や、市場における優位性の確立に資するといった効果が見込める場合には、必要に応じて、企業買収を実施しております。企業買収の実施にあたっては、市場動向や、当該企業の財務内容、契約内容、技術優位性や市場競争力、当社グループの事業ポートフォリオ並びに企業買収に伴うリスクなどについてデューデリジェンスを行い、事前にリスク回避するように努めております。しかしながら、事前の調査・検討にも関わらず、買収後の事業環境に急激な変化が生じた場合、不測の事態が発生した場合、買収した事業が計画通りに展開することができず投下した資金が回収できない場合、追加的費用が発生した場合や、のれんのやその他無形固定資産の減損が必要となった場合などにおいて、当社グループの事業展開、経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。
(情報セキュリティについて)
当社グループは、事業全般においてITシステムを活用しております。コンピューターウイルス対策などの外部攻撃に対する対応や、セキュリティ遵守に関する従業員教育などにより、リスクの低減に努めておりますが、ITシステムへの不正アクセスやサイバー攻撃、又は自然災害などの不測の事態により、ITシステムの長期間の停止、個人情報や機密情報の流出などが発生した場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(人材確保に関わるリスクについて)
グローバル規模にて、多様で優秀な人材の獲得競争は激化しております。当社グループが今後も高い成長性を持続するためには、多様で優秀な人材を確保し、育成し続けることが重要です。しかしながら、そのような人材の獲得が困難となり、高い専門性や豊富な経験を持つ多様な人材が計画とおりに採用、定着化できない場合、または成長に必要な機会、教育、リソースを提供できない場合、競争力低下につながり当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年6月30日)現在において判断したものであります。
当社グループは、中期経営計画「ASAHI Going Beyond 1000」において、連結売上高1,000億円を超えて、更に成長するための事業ポートフォリオの構築を進めており、以下の4つの基本方針を定めております。
①グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大
②グローバルニッチ市場における新規事業の創出
③グローバル展開に最適な研究開発・生産体制の構築
④持続的成長に向けた経営基盤の確立
これらの成長戦略を着実に進めていくことにより、更なる企業価値の向上を目指しており、2024年6月期におきましては、中期経営計画のマイルストーンである連結売上高1,000億円を達成し、過去最高の連結売上高及び利益となりました。
当社グループの当連結会計年度における売上高は、コロナ禍からの回復による症例数の増加に追従しながらも市場シェアの拡大を推し進めたことに加えて外貨高の影響もあり、海外売上高が大きく増加したことで、1,075億47百万円(前年同期比19.4%増)となりました。
売上総利益は、売上高の増加に伴い、690億53百万円(同17.4%増)となりました。
営業利益は、営業関係費用として海外市場を中心とした販促活動費用や売上増加に伴う連動費用が増加したことや、開発強化のための研究開発費が増加したこと、業績連動賞与の支給などもあり、販売費及び一般管理費が増加したものの、221億35百万円(同22.8%増)となりました。
経常利益は、為替差損が増加したことなどにより、219億68百万円(同24.6%増)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、災害保険金が減少したものの、158億8百万円(同20.6%増)となりました。
なお、当連結会計年度における外国為替レート実績は、下記となります。
1米ドル=149.39円(前年同期137.49円、比8.7%増)
1ユーロ=161.48円(前年同期143.92円、比12.2%増)
1中国元=20.64円(前年同期19.75円、比4.5%増)
1タイバーツ=4.17円(前年同期3.90円、比6.9%増)
セグメントごとの経営業績は、次のとおりであります。
(メディカル事業)
メディカル事業は、コロナ禍からの回復による症例数の増加に追従しながら、市場シェアの拡大を推し進めたことに加えて外貨高の影響もあり、海外売上高が大きく増加し、売上高は増加いたしました。
国内市場においては、PCIガイドワイヤーを中心に循環器領域が堅調に推移したことに加え、末梢血管系製品や消化器系製品などの非循環器領域や、OEM取引が増加したことなどから、売上高は増加いたしました。また、新たな取り組みとして、外科手術支援ロボット「ANSUR(アンサー)」2台の納入が実現いたしました。
海外市場においては、循環器領域、非循環器領域、OEM取引の全領域について売上高は増加いたしました。循環器領域は、PCIガイドワイヤーや貫通カテーテルを中心に、全地域において売上高が順調に推移いたしました。非循環器領域は、米国市場における末梢血管系製品の新製品「CROSSLEAD」などの効果や、米国や中国市場における腹部系製品の増加などがあり、全地域において売上高が増加いたしました。OEM取引は、循環器領域において、中国向け取引が減少したものの、外貨高の影響や、米国にて新規取引が増加したことなどから、売上高が微増いたしました。
以上の結果、売上高は956億54百万円(前年同期比21.8%増)となりました。
また、セグメント利益は、226億64百万円(同38.2%増)となりました。
(デバイス事業)
デバイス事業は、医療部材を中心に売上高は増加いたしました。
医療部材については、国内市場は内視鏡関係の部材が増加し、また海外市場は外貨高の影響や中国向け取引が増加したことなどから、売上高は増加いたしました。
産業部材につきましては、建築関係取引が国内市場を中心に減少したものの、外貨高の影響や海外市場のOA機器関連取引が増加するなどし、売上高は増加いたしました。
以上の結果、売上高は、118億92百万円(前年同期比3.0%増)となりました。
また、セグメント利益は、セグメント間売上高の減少や稼働率の動向などにより、47億33百万円(同22.5%減)となりました。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
当社グループの製品は、見込み生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産につきましては、総資産額が1,916億14百万円となり、前連結会計年度末に比べ189億69百万円増加しております。主な要因は、愛知県瀬戸市に新棟が完成したことなどに伴い建設仮勘定が42億65百万円減少した一方、建物及び構築物(純額)が99億61百万円増加したことや投資有価証券が90億8百万円増加したことによるものであります。
負債につきましては、負債合計額が396億52百万円となり、前連結会計年度末に比べ13億8百万円増加しております。主な要因は、未払金が19億94百万円増加したことによるものであります。
純資産につきましては、純資産合計額が1,519億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ176億60百万円増加しております。主な要因は、利益剰余金が118億74百万円、為替換算調整勘定が62億74百万円それぞれ増加したことによるものであります。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、356億58百万円(前年同期比2.2%増)となっております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、347億8百万円(前年同期比155億70百万円増)となりました。これは主に、法人税等の支払額が53億23百万円であったものの、税金等調整前当期純利益が217億89百万円、減価償却費が84億64百万円であったことに加え、棚卸資産が44億56百万円減少し、前受金が43億46百万円増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、212億22百万円(前年同期比60億86百万円増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が98億77百万円、投資有価証券の取得による支出が83億34百万円であったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、138億78百万円(前年同期比115億35百万円増)となりました。これは主に、短期借入金が65億円減少、長期借入金の返済による支出が32億2百万円、配当金の支払額が39億33百万円であったことによるものであります。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴い、実際の結果と異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、スケジューリングの結果に基づき回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ課税所得が減少した場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、継続的に損益の把握を実施している単位ごとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについては、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。回収可能価額の算定にあたっては、外部の情報源に基づく情報等を含む決算時点で入手可能な情報や資料に基づき合理的に判断しております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。
(のれん及びその他の無形固定資産の評価)
資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年6月30日)現在において判断したものであります。
(a) 今後の見通し
中期経営計画「ASAHI Going Beyond 1000」の基本方針に基づく成長戦略を着実に実行することで、高い成長性を維持・拡大してまいる所存です。その結果、2025年6月期において、中期経営計画の最終年度(2026年6月期)の連結売上高目標1,100億円を、一年前倒しにて達成することを目指してまいります。
(単位:百万円)
(ご参考)前期と同条件の為替レートの場合
(単位:百万円)
<売上高>
(メディカル事業)
取引先の動向などにより、アジア地域での取引が増加するなどいたしますが、国内地域での取引減少もあり、ほぼ横ばいに推移する予定です。
(デバイス事業)
<売上総利益>
売上総利益は、増収に比例して増加する予定です。売上総利益率については、稼働率の上昇などもあり上昇する予定です。
<販売費及び一般管理費>
販売費及び一般管理費は、将来の成長性を持続し、更に伸張させるための先行的な費用を引き続き積極的に投下することを予定しております。
研究開発費は、既存・新規領域共に増加し、売上高比率10.9%となる見込みです。
販売関連費用は、米国を中心とした販売・マーケティングなどの費用の増強を予定しており、増加する見込みです。
上記以外の費用としては、品質保証関連や、情報システム関連などの、経営基盤強化のため費用の増加などを見込んでおります。
<営業外損益・特別損益>
営業外損益及び特別損益におきましては、影響額の大きな取引などは、現在のところ見込んでおりません。
なお、本業績予想において、主な外国為替レートは、下記を見込んでおります。
(b) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループを取り巻く事業環境に関連して経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(c) 当社グループの資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(3)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。
また、資本の財源及び資金の流動性について、運転資金の確保は自己資金でまかない、事業成長するための設備投資・株式投資は手元資金のほか、金額規模が著しく大きい場合等を除き、原則、銀行借入にて対応することとしております。
該当事項はありません。
研究開発型企業である当社グループは、創業時より研究開発活動を経営の重要項目の1つとして位置付けております。
当社グループは、4つのコアテクノロジー(伸線技術、ワイヤーフォーミング技術、コーティング技術、トルク技術)を主体とした、高度で独自性の高い素材加工技術を備えることに加えて、原材料から製品までの一貫生産体制を構築することによって、当社独自の素材及び機能を有した製品の開発・製造が可能となっております。
これは、同業他社ではあまり見られない医療機器分野と産業機器分野の技術循環、日本の研究開発拠点と海外の生産拠点との技術連携など、当社グループならではの強みであります。また、これら当社独自の機能を活かし、近年では、医療現場での豊富な経験を持つ各分野におけるトップドクターとの共同研究開発体制を強化しており、医療現場に密着した製品開発を展開しております。これらの融合が、医療機器分野での競合先との差別化を図り、競争優位性のある製品を供給し続けている大きな要因にもなっております。
研究開発拠点の主体である国内においては、当社グループの研究開発拠点の中心である瀬戸工場の敷地内に新社屋を建設し、臨床現場に近い研究開発環境整備を実現いたしました。また、さらなる研究開発機能強化を目的に、近年におきましては、東京R&Dセンターの開設やグローバル本社・R&Dセンター内に研究開発用の新棟を構えるなどし、国内の研究開発体制をより充実させております。
また、米国の直接販売の拠点である連結子会社ASAHI INTECC USA, INC.において、最終顧客であるドクターからのニーズや評価をダイレクトに反映し、試作レベルまでの対応を可能とした研究開発体制を構築しています。連結子会社ASAHI INTECC THAILAND CO., LTD.の研究開発拠点をさらに拡充させ、製品仕様の検討を含めた既存製品の改良などをより積極的に進めてまいりました。
今後も、当社グループのOnly One技術の発展と、それに伴うお客様のNumber Oneの実現を目指し、研究開発活動を進めてまいります。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費用の総額は、
セグメント別の研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
(メディカル事業)
グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大に向け、治療用製品のさらなる強化と拡充に取り組んでまいりました。
特に、非循環器領域においては、末梢血管系・脳血管系領域の製品強化を進めております。
末梢血管系においては、末梢血管治療用ガイドワイヤー「CROSSLEAD Penetration」・「CROSSLEAD Tracker」を開発いたしました。「CROSSLEAD Penetration」は、従来製品以上に穿通性能を向上させており、穿通力が要求される場面においてガイドワイヤーの選択肢を広げております。「CROSSLEAD Tracker」はニッケルチタンとステンレスを接合した構造を有しており、膝下領域の高度に屈曲した血管への追従性と狭窄血管での操作性を高めることを実現しております。
脳血管系領域については、脳血管治療用ガイドワイヤー「CHIKAI X014」、バルーン付きガイディングカテーテル「Branchor X」を開発いたしました。「CHIKAI X014」は蛇行した脳血管の選択操作を容易にするために、冠動脈分野で培った技術を展開することにより、従来のガイドワイヤーよりトルク性能を向上させ操作性を高めております。「Branchor X」は、多様化する医師の手技に対応するために複数のタイプのシャフトを揃え、高度に屈曲した血管への治療用医療機器の誘導や安定したバックアップを実現しております。
また、新たに、循環器領域の教育用画像解析ソフトウェアとして「ESPELUX Edu」を開発しました。「ESPELUX Edu」は非医療機器であり、二次元で造影される冠動脈の血管方向の三次元での把握やガイドワイヤーを操作する上で効果的な透視方向を正しく理解するための教育ツールとして利用することを意図した製品であり、PCI治療の向上に貢献しております。
当連結会計年度における研究開発費は、
(デバイス事業)
当事業におきましては、当社のコアテクノロジーを進化させると共に、Only Oneとなる新製品開発や、さらなる技術開発と深耕に取組み、様々な分野で採用していただける高機能・高付加価値の技術・製品の開発を行ってまいります。
医療部材につきましては、金属系・樹脂系ともに強化を進めております。金属系におきましては、当社独自の高機能部材である中腔のケーブルチューブ「ACT ONE(アクトワン)」や、トルク伝達性、高速度回転駆動に優れたトルクコイル・ドライブケーブル、破断強度の高いハイテンションワイヤーロープ及びそれらのアッセンブリー技術などが高く評価されており、国内外大手の医療機器メーカーや産業機器メーカーに部材並びに追加工製品を量産納品しています。樹脂系におきましては、カテーテルを構成する内層樹脂ライナー、金属補強層、バルーン部材及び樹脂チューブ部材を高精度かつ薄膜で成形する独自技術を構築し対応しております。また、金属系医療部材や樹脂系医療部材のみならず、顧客ニーズに見合う機構設計や設計思想に見合う製品実現のための高精度な精密加工技術も事業内に保有し、技術の拡大と深耕に取り組んでおります。
また、自社ブランドの治療用製品の拡充に当事業の技術開発力が寄与しており、メディカル事業の末梢血管治療用ガイドワイヤー「CROSSLEAD Tracker」・「CROSSLEAD Penetration」や脳血管治療用ガイドワイヤー「CHIKAI X014」の金属部材、脳血管治療用バルーン付きガイディングカテーテル「Branchor X」シリーズの樹脂部材などを開発いたしました。
医療機器メーカー向け部材につきましては、内視鏡処置具及び本体、IVUS、OCT等、産業機器メーカー向け部材につきましては、靴紐、釣糸等、様々な用途に応じた設計・試作に柔軟に対応することにより、新規案件が増加しており、また各案件の量産化に向けた製品検証活動に注力いたしました。
また、朝日サージカルロボティクス株式会社が開発した外科手術支援ロボット「ANSUR」のツールユニット(手技鉗子)内の部材設計を行うと共に、ツールユニット自体のアッセンブリーも実現し、新領域開拓に貢献いたしました。
当連結会計年度における研究開発費は、