文中における将来に関する事項については、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。また、計画、目標等に関してはリスクや不確実性を内包しており、その実現を保証するものではありません。
(1)経営方針
① 経営の基本方針
当社は、「高齢者生活サービスを中心として、お客様お一人おひとりの価値観を大切にし、お客様にあった魅力的な生活を提案します。」を企業理念とし、「豊かで実りある高齢社会」づくりに貢献することを使命として、企業行動基準及び社員行動指針を定めております。
企業行動基準は、「お客様への約束」、「社会への約束」及び「従業員への約束」からなり、「お客様に魅力的な介護サービスを提供すること」、「積極的に情報開示し、法令を遵守する、社会に信頼される企業であること」、「従業員にチャレンジする機会とやりがいのある職場環境を提供すること」を目指していくことを約束いたします。
また、社員行動指針は、当社の社員が目指すべき姿勢・考え方を示しております。
上記、企業理念、企業行動基準及び社員行動指針に基づき事業を展開することにより社会に貢献するとともに、事業計画を着実に推進することで経営基盤の強化と財務体質の改善に努めてまいります。
② 目標とする経営指標
当社は介護を必要とするより多くの方々に有料老人ホームをご利用いただくという観点から入居率及び稼働率を重視しております。また、入居者様に安心して生活いただけるように安定した経営と堅実な成長を続けることを重視し、売上高成長率及び売上高経常利益率を重要な経営指標と位置付け、これらの向上を重視して経営に取り組んでまいります。
③ 中長期的な会社の経営戦略
我が国における高齢者人口は今後も増加していくことが考えられ、これに伴い、高齢者単独世帯も増加し、介護サービスの提供を考慮した高齢者住宅の需要拡大が見込まれます。このような状況のなか、当社は業績拡大にあたり、介護ニーズの伸長が見込まれる首都圏及び近畿圏の都市部において、アッパーミドル~富裕層をターゲットとした高価格帯ブランド「チャームプレミア」シリーズを中心に積極的な新規開設を行い、規模の拡大を行うことが必要不可欠であると考えております。当社は、今後も引き続き介護付有料老人ホームを中心とした施設介護事業のさらなる展開を進めていくとともに、介護事業に留まらない安定的な収益基盤を確立するうえで、富裕な高齢者マーケットを主要な対象とする不動産事業の拡大を図ってまいります。
なお、中長期目標として、売上高500億円、運営数100ホームを掲げており、運営居室数の増加に伴い、積極的な事業投資と安定した業績成長を両立し、増収増益を継続できる企業を目指してまいります。
(2)経営環境
介護業界におきましては、異業種からの新規参入による競争の激化や景気の回復に伴う雇用情勢の活況によって、当業界を取り巻く環境は厳しさを増しております。なお、2018年度の介護報酬改定は、2015年度の介護報酬引下げに伴う介護事業者の厳しい経営状況及び介護職員の処遇改善の必要性等を踏まえ、小幅ながらも6年ぶりのプラス改定となりました。当社の主たる事業である「介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)」においても、基本単位の引き上げ及び各種加算の創設等が決定しております。
そのような状況のなか、当社は、「高齢者生活サービスを中心として、お客様お一人おひとりの価値観を大切にし、お客様にあった魅力的な生活を提案する」という経営理念を掲げ、開設エリアのお客様のニーズに応じた価格設定及びお客様にとって魅力的な介護サービスのご提供を通じて競争優位性の確保に向けた取り組みを進めてまいりました。
介護職における雇用情勢につきましては、2019年6月の有効求人倍率は4.21倍(全国平均・常用(パート含む))と全職種平均の1.37倍を大きく上回り、介護職員の確保が課題として顕在化しております。そのような環境のなか、当社ではより良い人材の確保及び定着に向け、処遇改善を行うとともに、従業員それぞれのライフスタイルに応じた働き方の選択肢を増やしました。また、ホーム運営における人員配置の適正化や業務効率化を進めております。今後とも当社は、お客様へより質の高いサービスがご提供できるよう、従業員が働きやすい職場環境づくりに邁進してまいります。
(3)対処すべき課題
当社が対処すべき主要な課題は以下の項目であると認識しております。
① 住宅型有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅の事業基盤確立
住宅型有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅につきましては、特定施設の総量規制(※)の動向に左右されることなく事業を拡大するための基盤作りが必要であると考え、住宅型有料老人ホームを4ホーム、サービス付き高齢者向け住宅を1ホーム、計5ホームを運営しております。当社ではこのビジネスモデルの事業としての基盤確立を図るため、今後も開設するホームの地域特性を考慮したうえで、住宅型有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅の開設を進めてまいります。
② 労働力の確保
今後の介護サービス需要の拡大に伴い懸念される労働力不足の問題は、当社におきましても重要な経営課題と認識しており、従業員の定着率の向上のため、長期的な労働力確保を視野に入れた新卒採用の強化や従業員の処遇改善の充実、キャリアパス制度の適切な運営、実践に即した教育研修の実施などの取り組みを進めてまいります。
③ コンプライアンス・内部統制の充実
介護保険制度下の事業者として社会的責任を果たすべく、引き続き法令遵守を徹底することに加え、企業経営の透明性と開示情報の正確性を確保させるため、内部統制システムの整備に関する方針を定め、内部統制の構築を推進してまいります。
④ 財務体質の改善
当社は積極的な事業拡大に際して、設備投資資金を主として金融機関からの借入により調達してまいりましたので、有利子負債比率が高い水準にあります。このため、今後の企業間競争に耐えうるべく財務体質の改善が急務であると認識しており、有利子負債の圧縮と自己資本比率の向上に努めることで、より健全性の高い経営に努めてまいります。
※ 特定施設の総量規制とは、自治体(主に都道府県)が民間による居住系サービスの新規開設を拒否できるという規制であります。
当社の経営成績、財政状態および株価等に影響を及ぼす可能性のある主な事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
① 介護保険制度について
当社の事業の中心となる介護付有料老人ホーム事業は、介護保険法に定める居宅サービスのうち「特定施設入居者生活介護」において、都道府県知事等より「指定居宅サービス事業者」の指定を受け、介護報酬の給付を受けております。「指定居宅サービス事業者」の指定を受けるには、「指定居宅サービス等の事業の人員、設置及び運営に関する基準」(介護保険法に基づく厚生労働省令)を満たしている必要があり、その基準に達しないことで、監督官庁より行政処分を受けた場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社が運営する住宅型有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅の場合においても、介護サービスの提供にあたり、介護保険法に定める居宅サービスのなかで必要に応じて「訪問介護」「訪問看護」「通所介護」「居宅支援事業」のそれぞれの指定が必要であり、各指定基準において監督官庁より行政処分を受けた場合には、当社の業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社のホームは現在それらの基準をすべて満たしておりますが、今後万が一、上記基準が満たせなくなった場合には、定められた介護報酬よりも減額される可能性があり、また、そうした期間が長期間にわたる場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
2000年4月1日に施行された介護保険法は、3年毎に各都道府県・各市町村において保険事業計画の見直し、さらには介護保険法附則第2条において、施行後5年目を目途として制度全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき必要な見直し等の措置が講ぜられるべきものとされております。2006年4月1日に施行された改正介護保険法では施設開設における総量規制が取り入れられ、介護報酬については、2009年、2012年、2014年(消費税増税分を補てんする意味合いからの臨時改定)、2015年及び2017年(介護職員の処遇改善のための臨時改定)に改定が行われました。
2015年4月の改定では介護報酬改定率は全体で2.27%の引下げと9年ぶりのマイナス改定となりました。内訳としては、介護職員の賃上げにつながる処遇改善及び手厚い介護に取り組む事業者には加算を拡充する一方、増大する介護費用を抑制するために事業者向け介護報酬単価は平均4.48%の引下げとなりました。
また、2017年4月の臨時改定では、介護職員の処遇改善を実施するため1.14%の引上げとなりました。なお、この引上げ額はすべて処遇改善のために反映させることとなっております。
2018年4月の介護報酬改定は、2015年4月の介護報酬引下げに伴う介護事業者の厳しい経営状況及び介護職員の処遇改善等の必要性を踏まえ、小幅ながらも6年ぶりのプラス改定となりました。
今後も、介護報酬の引下げ等の介護事業者に不利な改正がなされた場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合について
今後のさらなる高齢化に伴い介護サービスニーズの高まりが推測され、異業種からの新規参入や同業他社の事業拡大のスピードが加速されるものと考えられます。よって、当社が事業展開している地域において品質向上のためのコスト増加や価格競争のさらなる激化等が生じる場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、2006年4月1日の介護保険法改正より続いている特定施設の総量規制が緩和された場合、当社においては新規開設による拡大スピードの加速化といった利点がある反面、競合が激化し新規ホームの入居ペースの鈍化のみならず、既存ホームにおいても入居率の低下につながることも懸念されます。このため、制度改正に伴い、新規参入業者が増加した場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 特定事業への依存に関するリスク
当社の事業領域は介護業界のなかでも、介護付有料老人ホームを中心とした施設介護事業に集中しております。施設介護事業を含む介護業界は高齢化に伴う市場ニーズの増大により、今後もさらなる需要拡大が見込まれておりますが、今後の業界動向は介護保険法改正等の様々な外部の影響を受けることとなります。このため、在宅介護を中心とする介護保険制度への転換を意図した介護保険法や老人福祉法の改正等によって、施設介護事業を中心とした事業戦略からの転換を強いられた場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 従業員の確保について
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた介護付有料老人ホームには、人員に関する基準(資格要件、配置基準)が定められております。また、介護業界の成長に伴い、介護サービスの需要の増大や競争激化による労働力不足が懸念されている状況であります。当社では、事業規模の拡大に伴い、人材の確保・育成に向けて、新卒採用及び中途採用を積極化するとともに、定着率向上のためのキャリアパス制度の再構築をはじめ、処遇改善、人事制度の見直し、教育研修制度の充実などの取り組みを行っております。しかしながら、このような施策の効果が充分に得られず、従業員の確保や配置が進まない場合、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 新規ホームの開設について
当社は事業拡大にあたり、今後も計画的な新規ホームの開設を進めていく所存ですが、「①介護保険制度について」で記載のとおり、2006年4月1日の介護保険法改正に伴って施設開設に対する総量規制が行われていることから、特定施設の新規開設に当たっては、各都道府県・各市町村の事業計画にしたがった公募に対して、介護事業者が応募し選定を受ける必要があります。当社は各都道府県・各市町村の動向やニーズを適宜把握する等の対応をしておりますが、計画通りに選定を受けることができなかった場合、当社の事業計画遂行に影響を及ぼす可能性があります。さらに、選定を受け、新規ホームが開設できたとしてもご入居者様の入居が円滑に進まなかった場合、あるいは従業員の募集が円滑に進まずサービスが提供できない状態が長期間続いた場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 有料老人ホームにおける土地・建物に関する契約について
当社が運営する有料老人ホームは、土地の定期借地契約及び建物の賃貸借契約において20年以上の契約期間を定めております。なお、原則としてその期間は解約ができないことから、当社にとっては安定かつ継続的に土地・建物を賃借し運営できる反面、入居率の低下等に伴い利用料金の見直しが必要になった場合、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす場合があります。
⑦ 差入保証金について
当社は介護付有料老人ホームの新規開設における賃借時に保証金を差し入れております。差入保証金の残高は2019年6月30日現在3,406,578千円となっており、総資産に占める比率は18.1%であります。
当社は、新規開設の際の与信管理を徹底していますが、賃借先のその後の財政状態の悪化等によって、差入保証金の全部又は一部が回収できなくなった場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 有利子負債について
当社は今まで新規ホームの開設に伴う設備投資資金を主として金融機関からの借入により調達してまいりましたので、総資産に対する有利子負債残高の割合が次表のとおり高い水準で推移しております。
今後の新規ホームの開設は、土地所有者に建物を建築していただき、一括賃借する方法などにより有利子負債増加の抑制を図っているものの、これまでの影響から当分の間は有利子負債依存度が相対的に高い水準で推移していくことが予想されます。
このような状況の中、金融情勢の変化などにより計画どおりに資金調達ができず計画的なホーム開設が困難となる場合や市場金利の上昇により資金調達コストが増大した場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
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前事業年度末 |
当事業年度末 |
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(2018年6月30日) |
(2019年6月30日) |
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有利子負債残高(千円) |
7,259,939 |
6,945,040 |
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総資産残高(千円) |
17,213,822 |
18,805,136 |
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有利子負債依存率(%) |
42.2 |
36.9 |
(注)1.有利子負債残高は、借入金及びリース債務の合計であります。
2.有利子負債依存率は、有利子負債残高を総資産残高で除した数値を記載しております。なお、下表に記載の借入契約につきましては、財務制限条項が付されております。これに抵触した場合には当該借入金の返済もしくは新たな担保権の設定を求められ、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
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金融機関名 |
契約締結日 |
前事業年度末 借入残高 |
当事業年度末 借入残高 |
借入種別 |
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株式会社 三菱UFJ銀行 |
2009年3月13日 |
90,000千円 |
30,000千円 |
金銭消費貸借契約 |
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2015年7月13日 |
842,400千円 |
795,600千円 |
金銭消費貸借契約 |
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株式会社 りそな銀行 |
2013年9月26日 |
548,368千円 |
501,712千円 |
金銭消費貸借契約 |
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2015年10月28日 |
572,400千円 |
540,600千円 |
金銭消費貸借契約 |
⑨ リース会計基準変更の可能性について
当社では現在、一部の土地及び建物をオペレーティング・リースにより調達しており、財務諸表上はオフバランスとなっておりますが、リース会計基準等の変更によりオペレーティング・リース対象資産・負債をオンバランス処理することとなった場合には、購入額相当分が計上されることとなるため、当社の自己資本比率が現状より低下する可能性があります(なお、2019年6月30日現在における土地及び建物に係るリース契約残高の総額は95,135,647千円であります)。
⑩ 固定資産の減損リスクについて
当社は、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」を適用しております。今後資産の利用状況及び資産から得られるキャッシュ・フローの状況等が悪化し、減損処理が必要となった場合、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 自然災害について
当社は、2019年6月末現在、首都圏(東京都)及び近畿圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県)において事業を展開しておりますが、これらの地域において予測不能な地震、風水害等の自然災害が発生し、ホームに影響が生じ業務を停止せざるを得ない状況や、建物や設備が損傷しその修復に多大な費用が必要となった場合、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 高齢者向けの事業であることについて
当社の事業は高齢者を対象としているため、ご入居者様がホームで生活をしていく上で移動中の転倒事故等の危険性があると考えております。また、ホーム内では食事や入浴等の介護サービスの提供を行っていることから、ご入居者様の集団感染あるいは食中毒が発生する可能性もあります。
当社は過去の運営実績をもとにした事故防止対策や、うがい・手洗い・アルコール消毒剤等での手指消毒の徹底による感染症の集団発生の予防をはじめとした安全管理や健康管理、あるいはご入居者様への食事の外注先である給食業者への衛生管理の徹底に万全を期するよう取り組んでおりますが、万が一ホーム内での事故や感染症の流行、食中毒等が発生した場合には、当社の信用が低下するとともに訴訟等で損害賠償請求を受ける恐れがあり、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、ご入居者様が事故や病気等の理由により入院治療が必要となるなど、何らかの理由により一時的に退去者数が増加した場合にも稼働率が低下し、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑬ 情報管理について
当社の事業を運営するにあたり、ご入居者様あるいはそのご家族様の重要な個人情報を取り扱っております。システム上の情報管理については漏洩防止のため、ファイアーウォールによる外部ネットワークからのアクセス遮断、ウィルス対策ソフトによるマルウェアなどからの保護を実施するほか、原則ノートパソコンなどの電子機器の持ち出しを禁止しております。また、ノートパソコンには、起動時のパスワード管理を実施しており、第三者が容易に起動させることができない設定となっております。以上の対策を厳重に講じておりますが、万が一システム等からの情報が流出し、当社の信用が低下した場合、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 風評等の影響について
当社の事業は、ご入居者様やそのご家族様のみならず地域住民や介護にかかわる方々からの信頼のもとに成り立つものと認識しており、従業員には経営理念を浸透させ、安定的かつ質の高いサービスを提供するよう指導、教育を行っております。しかしながら従業員の不祥事等何らかの理由で、社内、社外を問わず当社に対して不利益な情報や風評が流れた場合、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用情勢の改善とともに景気の動向も底堅い水準で推移しております。一方、相次ぐ自然災害の影響や米中貿易摩擦の激化等による世界経済の減速懸念の高まりを受け、先行きに関する不透明感が増しております。
介護業界におきましては、異業種からの新規参入による競争の激化や景気の回復に伴う雇用情勢の活況によって、当業界を取り巻く環境は厳しさを増しております。2018年度の介護報酬改定は、小幅ながらも6年ぶりのプラス改定となりました。当社の主たる事業である「介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)」においても、基本単位の引き上げ及び各種加算の創設等が決定しております。
そのような状況のなか、当社は、「高齢者生活サービスを中心として、お客様お一人おひとりの価値観を大切にし、お客様にあった魅力的な生活を提案する」という経営理念を掲げ、開設エリアのお客様のニーズに応じた価格設定及びお客様にとって魅力的な介護サービスのご提供を通じて競争優位性の確保に向けた取り組みを進めてまいりました。
介護職における雇用情勢につきましては、2019年6月の有効求人倍率は4.21倍(全国平均・常用(パート含む))と全職種平均の1.37倍を大きく上回り、介護職員の確保が課題として顕在化しております。そのような環境のなか、当社ではより良い人材の確保及び定着に向け、処遇改善を行うとともに、従業員それぞれのライフスタイルに応じた働き方の選択肢を増やしました。また、ホーム運営における人員配置の適正化や業務効率化を進めております。今後とも当社は、お客様へより質の高いサービスがご提供できるよう、従業員が働きやすい職場環境づくりに邁進してまいります。
当事業年度における運営状況につきましては、新規開設7ホーム、事業譲渡2ホームを踏まえ、運営ホーム数の合計は51ホーム、居室数は運営中のホームが「特定施設入居者生活介護」の指定を受けたことに伴う減室もあり、3,592室となりました。ホームの入居状況につきましては、開設2年目を経過した既存ホームにおいて97.0%(前年同期97.2%)と高い入居率を維持しております。また、当事業年度に開設したホームの入居につきましても、順調に進んでおります。
なお、当社は、2018年10月1日付で、大阪府下で運営する有料老人ホーム2ホーム(居室数合計99室)を事業譲渡しており、それに伴い事業譲渡益260百万円を特別利益として計上しております。
また、当事業年度において、京都市上京区及び兵庫県宝塚市での新規ホーム建設に伴う国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」等に係る交付金額の確定に伴い、同補助金152百万円を特別利益の「補助金収入」として、また、同補助金収入のうち150百万円を特別損失の「固定資産圧縮損」として計上しております。
以上の結果、当事業年度における売上高は16,560百万円(前年同期比22.0%増)、営業利益は1,423百万円(同35.0%増)、経常利益は1,385百万円(同39.2%増)、当期純利益は1,009百万円(同63.9%増)となりました。
当事業年度における新規開設の状況は以下のとおりです。
近畿圏においてドミナント戦略を維持し、強固な運営基盤を構築するとともに、介護施設の大幅な不足が懸念される首都圏に重点を置いて、高級住宅地を中心に、アッパーミドル~富裕層をターゲットとした高価格帯ブランド「チャームプレミア」シリーズの積極的な開設を進めております。
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ホーム名 |
所在 |
居室数 |
開設年月日 |
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チャームスイート高槻藤の里 |
大阪府高槻市 |
83室 |
2018年9月 |
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チャームスイート洗足池 |
東京都大田区 |
38室 |
2018年10月 |
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チャームスイート向日町 |
京都府向日市 |
79室 |
2018年11月 |
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チャーム新大阪淡路 |
大阪市東淀川区 |
135室 |
2018年12月 |
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チャームプレミア代々木初台 |
東京都渋谷区 |
36室 |
2019年2月 |
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チャームプレミア永福 |
東京都杉並区 |
48室 |
2019年3月 |
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チャームプレミア御影 |
神戸市東灘区 |
62室 |
2019年3月 |
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合計7ホーム(首都圏3ホーム、近畿圏4ホーム) |
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481室 |
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当社は、「介護事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の状況の記載を省略しております。
②キャッシュ・フロー
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ125百万円減少し、2,249百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の営業活動の結果、得られた資金は2,085百万円(前年同期は2,293百万円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益1,647百万円、減価償却費412百万円及び前受収益の増加額589百万円により資金を得た一方で、法人税等の支払額451百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の投資活動の結果、支出した資金は1,617百万円(前年同期は2,334百万円の支出)となりました。これは主に、事業譲渡による収入261百万円により資金を得た一方で、有形固定資産の取得による支出613百万円、差入保証金の差入による支出567百万円及び金銭の信託の取得による支出509百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の財務活動の結果、支出した資金は594百万円(前年同期は1,459百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入686百万円により資金を得た一方で、長期借入金の返済による支出891百万円、短期借入金の純減少額141百万円、自己株式の取得による支出82百万円及び配当金の支払額70百万円があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当事業年度の販売実績は次のとおりであります。
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当事業年度 (自 2018年7月1日 至 2019年6月30日) |
前年同期比(%) |
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介護事業(千円) |
16,560,092 |
122.0 |
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前事業年度 (自 2017年7月1日 至 2018年6月30日) |
当事業年度 (自 2018年7月1日 至 2019年6月30日) |
||
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
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大阪府国民健康保険団体連合会 |
1,492,387 |
11.0 |
1,518,125 |
9.2 |
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項については、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表を作成するにあたって、当事業年度における資産・負債及び当事業年度の収益・費用の報告数値並びに開示に影響を与える見積りを行っております。当該見積りに際しては、過去の実績や状況に応じて、合理的と思われる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性により、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。なお、当社の財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産)
当事業年度末の資産合計は18,805百万円となり、前事業年度末に比べ1,591百万円増加いたしました。
流動資産は4,328百万円となり、前事業年度末に比べ131百万円増加いたしました。この主な要因は、売掛金が219百万円及び前払費用が46百万円増加した一方で、現金及び預金が133百万円減少したことによるものであります。
固定資産は14,477百万円となり、前事業年度末に比べ1,459百万円増加いたしました。この主な要因は、差入保証金が509百万円、金銭の信託が509百万円、有形固定資産が198百万円、建設協力金(投資その他の資産のその他)が190百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債合計は14,220百万円となり、前事業年度末に比べ732百万円増加いたしました。
流動負債は4,986百万円となり、前事業年度末に比べ522百万円増加いたしました。この主な要因は、前受収益が276百万円、未払法人税等が268百万円、未払金が188百万円増加した一方で、前受補助金が155百万円、短期借入金が141百万円減少したことによるものであります。
固定負債は9,234百万円となり、前事業年度末に比べ209百万円増加いたしました。この主な要因は、長期前受収益が312百万円増加した一方で、長期借入金が205百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は4,584百万円となり、前事業年度末に比べ859百万円増加いたしました。この主な要因は、当期純利益を1,009百万円計上した一方で、剰余金の配当70百万円を実施したことにより、利益剰余金が939百万円増加したこと、自己株式82百万円を取得したことによるものであります。
。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当事業年度の期首から適用しており、財政状態については遡及処理後の前事業年度末の数値で比較を行っております。
2)経営成績
(売上高)
当事業年度における売上高は16,560百万円(前年同期比22.0%増)となり、前事業年度と比べて2,987百万円の増加となりました。これは主に、開設2年目を経過した既存ホームにおいて97.0%(前年同期97.2%)と高い入居率を維持するとともに、前事業年度及び当事業年度に開設したホームにつきましても入居が着実に進んだことによるものであります。
(売上総利益)
売上原価につきましては、13,651百万円(同20.9%増)となり、前事業年度と比べて2,356百万円の増加となりました。これは主に、前事業年度に開設した8ホーム及び当事業年度に開設した7ホームの運営経費(労務費、地代家賃、給食費等)が増加したほか、計画に基づいた修繕費等が増加したことによるものであります。
この結果、売上総利益は前事業年度に比べ630百万円増加し、2,908百万円(同27.7%増)となりました。
(営業利益)
販売費及び一般管理費につきましては、1,485百万円(同21.4%増)となり、前事業年度と比べて261百万円の増加となりました。これは主に、本社部門の強化による人件費、企業規模の拡大に伴う租税公課等が増加したことによるものであります。
この結果、営業利益は前事業年度に比べ368百万円増加し、1,423百万円(同35.0%増)となりました。
(経常利益)
営業外費用につきましては、支払利息52百万円等を計上しております。
この結果、経常利益は前事業年度に比べ390百万円増加し、1,385百万円(同39.2%増)となりました。
(当期純利益)
当社は、2018年10月1日付で、大阪府下で運営する有料老人ホーム2ホーム(居室数合計99室)を事業譲渡しており、それに伴い事業譲渡益260百万円を特別利益として計上しております。
また、当事業年度において、京都市上京区及び兵庫県宝塚市での新規ホーム建設に伴う国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」等に係る交付金額の確定に伴い、同補助金152百万円を特別利益の「補助金収入」として、また、同補助金収入のうち150百万円を特別損失の「固定資産圧縮損」として計上しております。
その結果、税引前当期純利益は1,647百万円(同66.2%増)となる一方で、法人税等は637百万円(同69.9%増)となりました。
この結果、当期純利益は前事業年度から393百万円増加し、1,009百万円(同63.9%増)となりました。
また、1株当たり当期純利益は71円92銭となり、前事業年度より25円83銭の増加となりました。
3)キャッシュ・フローの分析
当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」をご参照ください。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の中心事業である介護事業は、介護付有料老人ホームの運営がその大部分を占めております。介護付有料老人ホームは、介護保険法に基づき各都道府県より指定を受け、介護報酬の給付を受けておりますため、介護報酬の基準単価等の給付水準が変更されるような介護報酬の改正がなされた場合には、当社の事業の状況に関わらず、当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
また、今後の介護サービス需要の拡大に伴い懸念される労働力不足の問題は、当社におきましても重要な経営課題と認識しております。当社としましては、人材の確保・育成に向けて、長期的な労働力確保を視野に入れた新卒採用の強化や従業員の処遇改善の充実、キャリアパス制度の適切な運営、実践に即した教育研修の実施などの取り組みを進めてまいりますが、このような施策の効果が十分に得られず、人員の確保に多額のコストが掛かる場合には、当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
c.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は運営資金及び設備資金につき、主として自己資金及び金融機関からの借入により資金調達しており、運転資金については短期借入金で、設備資金については長期借入金で調達することを基本としております。
なお、当事業年度末時点における長期借入金(1年内返済予定を含む)の残高は6,099百万円、短期借入金の残高は573百万円、現金及び預金は2,249百万円となっております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について
当社は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針 ②目標とする経営指標」に記載のとおり、有料老人ホームの安定した運営の観点から入居率及び稼働率を、また、安定した経営と堅実な成長の持続という観点から売上高成長率及び売上高経常利益率を重要な経営指標と位置付け、これらの向上を重視して経営に取り組んでおります。
当事業年度における、開設2年目を経過した既存ホームにおける入居率は97.0%と前年同期比0.2ポイント低下、稼働率については前年同期比0.6ポイント改善しております。入居率については、前年同期実績は僅かに下回ったものの、引き続き業界トップレベルの高い数字を維持しております。
また、売上高成長率は22.0%と目標とする20%を上回り、売上高経常利益率も8.4%と前年同期の7.3%から大きく改善しております。
当社は、引き続き当該指標の向上に取り組み、業界No.1を目指してまいります。
(事業譲渡契約)
当社は、2018年6月15日開催の取締役会において、当社が運営する介護付有料老人ホーム「チャーム守口おおくぼ」及び「チャーム河内長野」の事業譲渡について決議し、同年7月2日付で事業譲渡契約書を締結しております。なお、事業譲渡日は2018年10月1日であります。
詳細は「第5[経理の状況] 1[財務諸表等][注記事項](企業結合等関係)に記載のとおりであります。
該当事項はありません。