当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社グループは、限りある資源「水」「石油」の明日のため、技術の革新と開発で未来に貢献することを企業理念としています。この企業理念のもと、より環境負荷の小さい浄水装置や取水装置、石油精製装置を開発・改良し、製造することを通じて、社会やお客様からの期待に応え、信頼を高めることを経営の基本方針としています。
この基本方針に基づき、「顧客満足の向上」、「働き甲斐のある社風」、「技術革新と開発力による社会貢献」、「コンプライアンス経営の徹底」を経営姿勢として掲げ、これらを実践することにより、ステークホルダーの皆様から評価される企業となることを目指します。
(2) 経営戦略等
当社グループは、2022年6月期から2024年6月期までの中期経営計画「FLIGHT PLAN:VISION 2024」に基づき、成長基盤の構築に取り組んでまいりました。この度、2024年8月9日付で2025年6月期から2027年6月期を計画期間とする新たな中期経営計画「FLIGHT PLAN: TRANSFORM 2027」を策定し、公表いたしました。
水関連事業においては、既存事業における所掌範囲の拡大、上水道以外の水事業領域への参入、海外マーケット掘り起こしの再加速、M&Aを活用した業容の拡大を通じて、総合水処理企業への転換を実現します。
エネルギー関連事業においては、市場及び製造拠点の最適化を重点項目として推進するとともに、取り扱い製品ラインナップの拡充、環境配慮型新化学プラントへの対応を実現してまいります。
既存事業の拡大に加え、成長戦略や新規分野の開拓を目的とした次世代に繋がる「戦略投資」を実施し、企業成長を加速させます。また、経営戦略を実行する人材増強等「人的資本の強化」を積極的に推進してまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中期経営計画「FLIGHT PLAN: TRANSFORM 2027」の最終年度である2027年6月期において、売上高16,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,600百万円を数値目標として掲げております。
初年度である2025年6月期は、数値目標を売上高11,200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,200百万円としており、その達成に向け、全力で取り組んでまいります。
(4) 経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
中期経営計画「FLIGHT PLAN: TRANSFORM 2027」に掲げた施策を遂行し、事業構造の改革を推進することで、持続可能な成長を実現してまいります。
① 既存事業の改革
a.水関連事業
エネルギー関連事業に依存した収益構造からの脱却を目指し、従前より水関連事業の規模拡大に取り組んでまいりました。また、M&Aを通して上水道・排水処理設備の設計、製作、据付等の事業領域にも進出したことにより、対応可能な施設設計、受託範囲が広がり、事業規模の拡大に寄与しております。
しかしながら、対応可能な施設設計、受託範囲が広がったとは言うものの、現在の顧客への提案範囲は、上水道のうち地下水の取水・水処理を主とした設計や工事の一部の範囲に過ぎず、その前工程や後工程、水処理プラント運営やメンテナンスなど多くのプロセスが存在します。当社グループの提案・受託可能な範囲を拡充させることで、事業領域の拡大を目指してまいります。また、下水道や排水処理といった上水道以外の水事業領域への参入についても検討を進めてまいります。
これらの取り組みを通じ、総合水処理企業への転換を図り、事業規模の拡大、収益力の強化に取り組んでまいります。
b.エネルギー関連事業
エネルギー関連事業では、外部環境に大きく左右される新設プラント向けの需要に頼るのではなく、計画的に行われることが多い既設プラントの設備更新需要を獲得することに注力し、成果が出ていると考えております。一方で、当社グループが競争優位性を持つプロセス以外の製品群や、国・地域に対する受注活動には課題が残っていると考えております。また、製造面では、製造ノウハウの蓄積と伝承、コスト管理と低減、地政学的リスク等の観点から製造拠点の最適化が検討課題であると考えております。
これらの課題に対処し、マーケット・ポートフォリオや製造拠点の最適化に取り組むとともに、取り扱い製品の拡充を推進することで、更なる事業の成長を目指してまいります。
② M&Aを活用した事業構造の変革
既存事業の強化、新たな事業領域へのチャレンジや新規事業の創出を実現させるためには、積極的かつ戦略的な投資が重要な課題と考えております。成長戦略や新規分野の開拓を目的とした次世代に繋がる3つの戦略投資(成長投資、事業投資、新規投資)を推進し、自社による改革に加え、積極的にM&A等を活用することで、スピード感をもって事業構造の変革に取り組んでまいります。
③ 人的資本の強化
事業構造の改革を推進し、持続可能な成長を実現させるためには、当社が抱える課題への対処、推進を担う人材層の増強や次世代の人材育成が重要な課題であると考えており、人事制度の変革、若手社員の積極的な登用、新卒・キャリア採用の推進などに取り組み、組織の新陳代謝を促します。
また、従業員の自己啓発やスキルアップ、資格取得を支援する制度の活用、製造技術などの社内ノウハウの伝承を推進し、持続可能な成長を実現できる組織力の向上に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
「サステナビリティに関する考え方と取組」
当社グループは、限りある資源「水」「石油」の明日のため、技術の革新と開発で未来に貢献することを経営理念とし、当社の事業領域におけるサステナビリティの基本方針の根幹として定めております。サステナビリティに対する具体的な取り組みとして、2015年9月の国連総会で193か国の合意・採択された持続可能な開発目標(以下「SDGs」という。)への参画が挙げられます。SDGsは、2030年までに達成する目標として、17のゴールと169のターゲットが設定されております。当社は、当社の事業領域である「水」と「エネルギー」の分野において、環境に配慮し、産業廃棄物の削減及び循環型社会の実現、エネルギー効率を高める近代化設備の実現に努めています。
(1)ガバナンス及びリスク管理
当社グループは、2025年6月期から2027年6月期までの3ヵ年を計画期間とする中期経営計画「FLIGHT PLAN:TRANSFORM 2027」を策定し、2024年8月9日に公表いたしました。当社は企業活動を通じた持続可能な成長を目指しており、その実行を通じてSDGs、サステナビリティへの対応を継続的に実現しております。中期経営計画は、取締役会において企業理念との整合性及び事業環境を元に決定されており、経営層が持続可能な企業活動を行う上での事業リスクの分析やモニタリングを実施しております。
(2)戦略について
人的資本への対応
当社は、経済産業省から様々な規模・業種の企業における「ダイバーシティ経営」への積極的な取り組みを行う企業として、2014年に表彰されており、採用において「国籍、性別、年齢不問」を掲げ、「経営方針を理解し活躍することができる人材」という視点で採用活動を行っています。多様性の確保のためには、従来の固定観念に縛られない多様な価値観を有する人材を集めることが必要であると考えており、性別や国籍に捉われない採用活動及び他業種等での経験を有する中途採用を積極的に行うとともに、働きやすい職場環境の整備や、これからの当社の担い手となる管理職層の育成に努めています。
人的資本への投資として、当社従業員の経営参画意識を高め、株主と一層の価値共有を進める事や福利厚生の向上を目的に、幹部社員のみならず一般正社員も対象に含め、発行済株式総数の約7%に相当する譲渡制限付株式の割当を2024年6月21日付で実行いたしました。
新たな中期経営計画においては、「人的資本の強化」を中期経営戦略の重点施策の一つとして掲げ、将来の世代交代に向け、人事制度の変革や若手社員の積極的な登用による未来の会社運営を担う人材層の積み上げを行っております。また、新卒・キャリア採用を積極推進し、従業員のスキルアップや資格取得を全面的に支援する教育支援・資格取得奨励制度の拡充や、社内ノウハウの伝承を組織的に行うことにより、持続可能な成長を実現する組織力を構築してまいります。
就労環境について、定量的な目標は設定しておりませんが、当社では様々なバックグラウンド・価値観を有する人々にとって働きやすい職場とすべく、一般的な育児介護休業制度よりも休日取得回数を増やした育休制度の導入、フレックス制度、テレワークの併用等、社員のライフステージに合わせた環境づくりを推進しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 海外事業のリスク
当社グループでは、2024年6月期において海外売上高が全体の69.3%を占めています。従って、相手国の経済動向、社会情勢及び政治状況の変化、許認可、通関、出入国管理、為替制度及び通信制度等の相手国の貿易、通商及び金融に係る政策等の変更、相手国もしくは近隣諸国における戦争、内乱、クーデター、テロ、暴動及び治安悪化、地震、風水害及び酷暑・酷寒等の天変地異・異常気象、新型コロナウイルスなどの感染症発生等のリスクが存在します。また、当社グループでは、代金の早期回収を図る等の方策を講じているものの、相手国における商慣行の違い等から代金回収が思うように進まないリスクがあります。
これらのリスクが顕在化し、当社グループの想定を超える事業環境の変化が発生した場合には、プロジェクトの遅延、中断及び中止並びに債務不履行等によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 為替レートの変動
当社グループは一部外貨建取引を行っており、取引に伴い為替の変動リスクが発生します。リスクを軽減するため為替予約等によるヘッジを行っていますが、完全にリスクを排除することは不可能であり、急激な為替相場の変動が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 製品の品質
当社グループが生産している製品については、厳重な品質管理体制のもと出荷しています。また、ISO 9001の認証を取得し継続的な品質維持にも努めています。更に、万一の賠償金支払等に備え、製造物賠償責任(PL)保険にも加入しています。しかしながら、何らかの原因によって製造物責任による高額な賠償金支払や品質不良が原因で高額な間接的損害額が発生した場合、品質に係る重大な問題が発生してプロセス・オーナーとの関係が悪化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 原材料の市況変動
当社グループの原材料の主要なものは板材・ワイヤー材などのステンレス鋼材であり、鋼材価格は市況により変動します。当社グループは鋼材価格が高騰した場合には、生産ラインの合理化等のコスト削減策及び販売価格への転嫁、海外調達などを推進していきますが、これらの施策が計画どおりに進まなかった場合及び原材料価格の高騰が継続し長期化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 資材調達
当社グループの一部の原材料、部品等については、その特殊性から調達先が限定されているものや調達先の切替が困難なものがあります。これらの原材料、部品等の品質上の問題、供給不足及び納入の遅延などが発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 天候・自然災害、感染症の発生等
当社グループの生産拠点において地震や風水害等の予期せぬ自然災害等、不測の事態や火災等の事故が発生した場合には、生産能力の著しい低下などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルスなどの感染症の発生により、当社グループの生産活動や営業活動に支障が生じた場合やサプライチェーンの停滞等が生じた場合、あるいは当社グループの受注動向に影響を及ぼした場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 海外子会社による事業展開
当社は、エネルギー関連事業におけるスクリーン・インターナルの製造・販売、水関連事業における取水用スクリーンの製造・販売及び水処理装置の販売を目的として、中国及びベトナムに子会社を設立しています。海外子会社は、現地の安価な人件費による製造原価の低減、現地企業の優位性を享受すること及び販路の拡大を目的として事業活動を行っていますが、当事業に不利な影響を及ぼす法令又は諸規制の制定及び改廃や予期しない不利な経済的又は政治的要因の発生、人件費の高騰や人材確保に障害が発生した場合など、当社グループの想定している範囲を超えた事態が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) プロジェクトに係るリスク
当社グループのエネルギー関連事業におけるスクリーン・インターナル製造等は長期かつ大規模なプロジェクトとなることもあるため、コスト管理をプロジェクトごとに、動態的に行い利益の最大化を目指しますが、資材価格の高騰などプロジェクト工程の間に不測の事態が生じる可能性があります。その場合、予定する利益率を達成できず、損失が発生する可能性があります。また、経済動向や原油価格などの市場環境変化等により、顧客がプラント建設の延期・中止・大幅な仕様変更を判断した場合、当社グループの利益計画及び生産計画に多大な影響を及ぼします。更に、当社の責任に起因するプロジェクトの遅延、瑕疵又は失敗が発生した場合は、当社グループに補修責任や損害賠償責任等をもたらす可能性があるほか、当社グループの将来の受注に悪影響を与える可能性があります。これらの結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 建設業法等
水処理装置等及び取水スクリーンの製造・販売を行っている水関連事業の国内販売において、工事を含めた1案件ごとの受注範囲の拡大に取り組んでいます。また、連結子会社である矢澤フェロマイト株式会社では、浄水場等で使用される水処理設備の設計から製作、工事の施工まで、一連の水処理プラント工事を請け負っています。
これら工事に際しては、建設業法に基づく都道府県知事による特定建設業の許可が必要になります。しかしながら、請負契約の締結やその履行に際して不正又は不誠実な行為や専任技術者が不在となった場合には許可を取り消される可能性があります。また、建設業法に違反した場合、営業の禁止処分が行われる可能性があります。当社では、現時点において、取消事由や処分事由に該当する事実は発生していないものと認識していますが、許可が取り消された場合もしくは営業禁止の行政処分が行われた場合又は処分に関連して取引先等からの指名停止があった場合、建設業法や関連法令の改正により許可の取り消し等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 法的規制等
当社グループが事業活動を行う国、地域において、事業の投資に関する許認可、輸出認可、輸出制限、関税賦課をはじめとする様々な政令による規制の適用を受けています。適用の範囲も、貿易通商、独占禁止、特許侵害、法人税及び付加価値税、為替取引並びに環境等に及んでいます。このような規制を何らかの事情により遵守できなかった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)情報管理
当社グループでは、事業経営に関わる様々な重要機密情報を有しています。その管理を徹底するため、情報管理規程を制定し、従業員に対する教育を徹底しています。しかしながら、外部からのハッキングなど不測の事態による情報漏洩により、当社グループの信用失墜による売上高の減少又は損害賠償による費用の発生等が起こることも考えられ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12)知的財産権
当社グループは新たな技術や独自のノウハウを蓄積し、知的財産権として権利取得するなど法的保護に努めながら研究開発活動を展開しています。しかしながら、特定地域での法的保護が得られない可能性や、当社グループの知的財産権が不正使用されたり模倣される可能性があります。一方で、当社グループが第三者の知的財産権を侵害していると司法判断され、当社グループの生産・販売の制約や高額の損害賠償金の支払が発生する可能性もあります。このような状況が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 人材の確保
当社グループの競争力は、設計、調達、製造等の各職種における優れた専門的知識や技能を持った従業員により支えられています。当社グループは、優秀な人材を確保するための採用活動に加え、退職者の再雇用を実施していますが、必ずしも十分に確保できる保証はありません。また、技術・技能伝承の強化等、人材の育成にも努めていますが、十分な効果が出るという保証はありません。人材の採用及び育成が想定通りに進まない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 固定資産の減損
当社グループは、工場、機械設備等多くの有形固定資産を保有しています。当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの見積りに基づく残存価額の回収可能性を定期的に評価していますが、当該資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少し、回収可能性が低下した場合、固定資産の減損を行う必要が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 研究開発について
当社グループでは、既存製品の改良や新規製品の研究開発等により、研究開発費やそれに関連する設備投資が先行して発生します。そのため、研究開発費や設備投資費用を投入したにもかかわらず、製品開発等が軌道に乗らなかった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのようなリスクを防止あるいは分散するため、研究開発段階でマーケティングに注力するとともに、成果・効果の検証を随時行いながら進める体制を整備しています。
(16) 親会社との関係について
株式会社ハマダグループは、当社の発行済株式(自己株式を除く。)の総数の52.5%(2024年6月30日現在)を直接所有しています。また、株式会社ハマダグループの完全親会社である株式会社ハマダ、株式会社ハマダの完全親会社である株式会社ハマダコムは、当社の発行済株式(自己株式を除く。)の総数の52.5%(2024年6月30日現在)を間接的に所有しています。
当社は、株式会社ハマダとの間で製造の外注取引、株式会社ハマダコムとの間で不動産の賃貸借取引を行っていますが、両社及び株式会社ハマダグループが親会社であることによる事業上の制約はなく、当社の経営方針、事業展開及び個々の取引については当社独自の意思決定によっており、一定の独立性が確保されていると認識しております。しかしながら、当社の経営方針についての考え方や利害関係が株式会社ハマダグループ、株式会社ハマダ又は株式会社ハマダコムとの間で常に一致するとの保証はなく、株式会社ハマダグループによる当社の議決権行使及び保有株式の処分の状況等により、当社の事業運営及び当社普通株式の需給バランスに影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
(1) 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善や個人消費・インバウンド需要の持ち直しがあった一方、資源高による物価の上昇、世界的な金融引き締めや中国経済の成長鈍化に伴い海外景気の停滞が懸念されるなど、先行き不透明な状況で推移しました。
このような状況の下、当社グループでは、2022年6月期から3ヵ年を計画期間とする中期経営計画「FLIGHT PLAN:VISION 2024」のもと、持続可能な成長を目指し、「既存事業の深化・拡充」「戦略的パートナーとの連携」「新規市場参入」の取り組みを推進してまいりました。
水関連事業では、国内の上水道や食品・農業に関連する分野の水処理を幅広く行っております。前連結会計年度より連結子会社となった矢澤フェロマイト株式会社は、上水道・排水処理設備の設計、製作、据付工事を事業としており、これにより対応可能な施設設計・受託範囲が広がったことで、受注機会が拡大しました。また、国内向けの営業活動だけでなく、海外顧客への営業活動も積極的に進め、当社グループがこれまでに提供してきた取水技術や水処理技術を基盤に、需要の創出・獲得に取り組んでまいりました。
エネルギー関連事業では、安定的に収益を確保できる体制の構築が課題と考えており、プラント設備に対するメンテナンスサービスの強化を行い、サービス提供面で顧客と対話を重ね、信頼関係を深化させ、設備更新ニーズを早期に把握することを目指し取り組んでまいりました。また、受注機会の拡大や新たな受注機会の創出を目指し、製造コスト低減による価格競争力の強化、プロセス・オーナーとの関係構築・深化、これまで認証を取得していない新たなプロセス・オーナーとの関係構築についても取り組んでまいりました。
これらの結果、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高9,505,480千円(前期比16.7%増)、営業利益1,682,452千円(前期比28.3%増)、経常利益1,828,804千円(前期比35.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,150,692千円(前期比32.7%増)となりました。
セグメント別の状況は、以下のとおりです。
① 水関連事業
取水分野では、各地で進められている取水設備の老朽化や耐震化に伴う改修工事等により、取水スクリーンの需要は底堅く、堅調に推移しました。水処理分野では、官公庁向けは、前連結会計年度に大口受注しました浄水場設備更新案件が予定どおり進捗しました。また、国内民間向けは、当社グループの取水・水処理技術を基盤とした需要の創出・獲得への取り組みの成果が少しずつ現れてきており、売上の増加に寄与しました。海外向けについては、日本から現地へ訪問しての営業活動の再開や、ベトナム子会社のNAGAOKA VIETNAM CO., LTD. を通じた営業活動の強化など、積極的に受注拡大に向けて取り組んでまいりました。
これらの結果、売上高2,939,964千円(前期比12.4%増)、セグメント利益367,424千円(前期比5.7%増)となりました。
② エネルギー関連事業
世界経済の先行きが不透明な中、顧客各社は新規プラント建設投資については慎重な姿勢であるものの、既存プラントの定期修繕、生産能力増強などの設備更新に係る投資については積極的な状況にあり、当社グループでは、納品実績や品質等の強みを最大限活かし、プロセス・オーナーや顧客との信頼関係の構築・深化に取り組みながら、既設プラントの更新需要に対して積極的に営業活動を進めた結果、多くの受注を獲得することができました。また、受注が積み上がる中、基幹工場である那賀設備(大連)有限公司において、生産計画の最適化を図りながら製造を進めることで、年間を通して高い稼働率を維持できたことや、外注加工費等の製造に係る費用についても低減が実現し、収益の向上に寄与しました。
これらの結果、売上高6,565,515千円(前期比18.7%増)、セグメント利益1,985,488千円(前期比30.0%増)となりました。なお、売上高6,565,515千円のうち、既設プラント向けの売上高は5,050,245千円であり、エネルギー関連事業の売上高の76.9%を占めております。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
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|
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
|
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エネルギー関連事業 |
3,728,620 |
111.4 |
|
水関連事業 |
1,837,982 |
108.0 |
|
合計 |
5,566,602 |
110.2 |
(注)金額は製造原価を基にしています。
② 受注実績
受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
|||
|
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
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エネルギー関連事業 |
7,374,222 |
121.9 |
3,139,399 |
137.7 |
|
水関連事業 |
2,296,237 |
55.6 |
1,825,890 |
73.5 |
|
合計 |
9,670,459 |
95.0 |
4,965,290 |
104.3 |
(注)水関連事業の受注高及び受注残高が減少しています。これは主に、前連結会計年度に大口案件の受注(受注額 約15億円、契約納期 2029年9月)したこと及び当連結会計年度において当該案件の工程が一部進捗し、収益を認識したことによるものです。
③ 販売実績
販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
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販売高(千円) |
前年同期比(%) |
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エネルギー関連事業 |
6,565,515 |
118.7 |
|
水関連事業 |
2,939,964 |
112.4 |
|
合計 |
9,505,480 |
116.7 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
||
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
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Honeywell UOP |
913,268 |
11.2 |
1,584,119 |
16.7 |
(3) 経営成績等の分析
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しており、特に重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
② 経営成績の分析
当連結会計年度における経営成績は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績の状況」に記載のとおり、水関連事業、エネルギー関連事業ともに増収増益を達成し、売上高は前連結会計年度に比べ16.7%増の9,505,480千円、営業利益は前連結会計年度に比べ28.3%増の1,682,452千円となりました。
また、前連結会計年度は為替差益を24,748千円計上しておりますが、当連結会計年度においても、引き続き円安基調で推移したことが影響し、為替差益を84,333千円計上しております。この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ35.2%増の1,828,804千円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べ32.7%増の1,150,692千円となりました。
③ 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は7,670,230千円となり、前連結会計年度末に比べ468,474千円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が424,974千円、売掛金が374,673千円、原材料及び貯蔵品が138,168千円増加した一方で、契約資産が485,310千円減少したことによるものです。
また、固定資産は2,583,129千円となり、前連結会計年度末に比べ897,967千円の増加となりました。これは主に投資有価証券が120,600千円、長期前払費用が714,855千円増加したことによるものです。
これらの結果、当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ1,366,442千円増加し、10,253,359千円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は3,095,845千円となり、前連結会計年度末に比べ129,644千円の増加となりました。これは主に、短期借入金が835,139千円減少した一方で、未払金が137,397千円、未払費用が245,640千円、未払法人税等が185,499千円、契約負債が261,262千円、その他が112,198千円増加したことによるものです。
また、固定負債は157,140千円となり、前連結会計年度末に比べ132,995千円の減少となりました。これは主に、長期借入金が109,924千円減少したことによるものです。
これらの結果、当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,351千円減少し、3,252,985千円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は7,000,374千円となり、前連結会計年度末に比べ1,369,794千円の増加となりました。これは主に、為替換算調整勘定245,854千円の増加、配当金の支払162,131千円及び親会社株主に帰属する当期純利益1,150,692千円の計上により利益剰余金が988,560千円増加したことによるものです。
④ キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は2,446,431千円となり、前連結会計年度末に比べ424,974千円の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は2,296,179千円(前連結会計年度は365,468千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,822,371千円、売上債権の減少327,514千円、未払費用の増加額239,617千円、契約負債の増加額218,037千円の増加要因に対し、法人税等の支払額491,841千円の減少要因によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は182,895千円(前連結会計年度は49,840千円の使用)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出99,137千円、有形固定資産の取得による支出46,488千円及び差入保証金の差入による支出35,120千円の減少要因によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は1,772,773千円(前連結会計年度は309,260千円の使用)となりました。これは主に、短期借入金の減少額871,493千円、自己株式の取得による支出689,074千円及び配当金の支払額162,002千円の減少要因によるものです。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
当社グループの資金需要は、主に運転資金、研究開発及び設備投資に対するものです。運転資金は、主に製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、研究開発費は、主に研究開発に携わる従業員の人件費です。設備投資は、主に製造に必要となる機械装置及び治具が中心です。
短期運転資金及び研究開発費につきましては、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、資金繰りの状況及び見通しを把握し、かつ、多数の金融機関との間で当座借越契約を締結することで、十分な流動性を確保しています。また、設備投資や長期運転資金につきましては、手許流動性資金を勘案の上、不足が生じる場合には、金融機関からの長期借入による調達を行う方針です。
なお、当連結会計年度末における借入金、社債及びリース債務を含む有利子負債の残高は319,961千円となっており、現金及び現金同等物の残高は2,446,431千円となっています。
(5) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中期経営計画「FLIGHT PLAN:VISION 2024」(2022年6月期~2024年6月期)の最終年度である当連結会計年度(2024年6月期)の達成状況は以下のとおりです。
売上高は9,505百万円(計画比95.1%)、営業利益は1,682百万円(計画比113.1%)、経常利益は1,828百万円(計画比122.9%)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,150百万円(計画比111.5%)となりました。
売上高は計画に対し、わずかに未達とはなりましたが、利益面については、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のすべてについて計画達成しております。当連結会計年度(2024年6月期)の経営成績及びセグメント別の経営成績の概要については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績の状況」をご覧ください。
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指標 |
2024年6月期 |
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中期経営計画 (最終年度) |
実績 |
計画比 |
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売上高 |
10,000百万円 |
9,505百万円 |
95.1% |
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営業利益 |
1,488百万円 |
1,682百万円 |
113.1% |
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経常利益 |
1,488百万円 |
1,828百万円 |
122.9% |
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親会社株主に帰属する 当期純利益 |
1,032百万円 |
1,150百万円 |
111.5% |
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動の主な内容は、これまで当社グループが培ってきた「スクリーン製造・加工技術」、「スクリーンを使った固体/液体分離技術」、「サンド・コントロール等の取水技術」、「水処理に関する技術」等のコア技術を用いて、既存製品の改良や地下水・海水の取水及び水処理分野で、オンリーワンの技術と新製品の開発を行うことです。
これらの研究開発活動は、各事業部の技術部門がそれぞれ担当しており、市場ニーズの収集・分析情報を持つ営業部門と連携しながら、新製品・新技術の開発及び既存製品の改良・改善・応用を行い、技術確立、製品化、事業化にスピード感をもって対応できる体制を取っています。
当連結会計年度のセグメントごとの研究開発活動は次のとおりであり、研究開発費は、水関連事業で
(1) 水関連事業
① ケミレスの改良・改善・開発
浄水場や民間工場の水処理に活用いただいているケミレスに関し、下記2点の改善・開発に取り組んでいます。
a.ケミレス洗浄排水処理技術の開発
ケミレスの洗浄排水は原水から除去した鉄・マンガンを高濃度に含有します。最適な処理方法を開発し、取水~水処理~排水処理までトータルで対応できるシステムを構築しています。
b.ケミレス馴養技術の改善
ケミレスは接触材の被膜形成(馴養)により安定した性能を発揮します。馴養技術の改善により被膜形成を早期に促進させ、馴養期間短縮と原水水質変動に強いシステムの確立へ向けて取り組んでいます。
② 可搬式浄水処理装置の開発
災害時等の危機事案が発生した際に断水地域へ可搬し応急給水を可能とする、ケミレス技術を活用した可搬式浄水処理装置の開発を行っています。可搬・即時運用として装置はパッケージ化を推進、また、提携会社の保安フィルター、自助電源搭載などオプションを組み込み、処理性能向上及び水質確保に取り組んでいます。
③ 粉末活性炭注入装置の開発
浄水場の原水臭気対策、水質改善に使用する粉末活性炭注入装置に関し、以下2点の開発に取り組んでいます。
a.吸引式粉末活性炭撹拌装置
原水に馴染みやすいよう水分量を高く調整した活性炭(ウェット炭)は即時注入が困難で、高額の輸送コストと長期保管/品質保全に問題を抱えています。当社グループが開発した装置は、水分量の低い活性炭(ドライ炭)を独自の技術開発により即時に原水と混合、いかんなく処理性能を発揮し、緊急時の即時注入により安全・安心な水道水の供給及び運営コストの低減に寄与します。
b.小規模浄水場向け密閉・完全自動化装置
各地の小規模浄水場では粉末活性炭(ウェット炭)を原水に手作業にて投入しており、粉塵問題及び人手不足等の問題を抱えています。この問題を解決すべく装置の密閉化及び完全自動化した装置の開発に取り組み、安全な作業環境、管理者負担の軽減及び運営コストの低減を達成します。
④ 取水スクリーン及び取水関連製品の改良・改善・開発
当社のコア技術であるスクリーンの製造・加工技術及び取水関連製品に関し、改良・改善・開発に取り組んでいます。
a.取水スクリーンの改良・開発
深井戸に用いるウェルスクリーン、リングベーススクリーンの製作方法見直しを行い、製品の品質向上及びコスト低減を行います。また、表流水取水に特化したスクリーンパネルの製品化に取り組んでいます。
b.取水関連製品の改良・改善
深井戸の関連製品である特殊絶縁継手は、地中の迷走電流等により引き起こされる井戸内の電食を防止します。また、井戸内の異種金属による電位差腐食も防止することができます。この特殊絶縁継手の製作方法の見直しを行い製品の品質向上に取り組んでいます。
(2) エネルギー関連事業
連結子会社である那賀設備(大連)有限公司において製作可能なスクリーン・インターナルの種類を増やすため、新たなインターナルプロセスの製作認証の取得に向けて取り組んでいます。また、認証取得済みのスクリーン・インターナルの製作方法について、改良・改善に取り組んでいます。