第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは「科学技術の発展に寄与し、社会の繁栄に貢献する」という企業理念のもと、次のとおり行動指針並びに基幹方針を定めております。

 

①行動指針

・無限の可能性に、先見力と想像力で対応

②基幹方針

・「人=社員」がフルヤの最重要経営資源と考え、社員を大切にする経営を目指す

・コンプライアンスを重視し、高いモラルとビジョンを持った社員を育成する

・PGMに経営資源を集中する

・受注から出荷までの工程において高い品質意識をもって取り組み、顧客満足の最大化を図る

・顧客、株主に信頼される経営を目指す

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは経営の基本方針に基づき、事業環境の変化に対応し持続的な成長を実現するとともに、顧客・株主に信頼を得るために、次の事柄に取り組んでまいります。

・高付加価値製品の開発

・原価低減への取り組み

・貴金属回収技術の向上

・貴金属回収能力の増強

・環境保護並びに安全対策の強化

・コンプライアンスの徹底

 

(3)経営環境

半導体、電子機器の高機能化及び多機能化などデジタル産業のさらなる進展に向けた新たな貴金属素材及び貴金属製品の需要や、省エネルギー及び再生可能エネルギーなどグリーン社会の実現に向けた貴金属化合物及び触媒、ならびに回収・精製の新たな需要が予想されており、これらの需要を背景に、当社グループが有する加工技術及び回収・精製技術ならびに貴金属調達力へ寄せられる期待が高まっております。また、天災、地政学リスク等を背景に、サプライチェーンの強靭化による安定供給が求められております。

 

(4)事業上及び財務上の対処すべき課題

当社の継続的課題といたしましては、高付加価値製品の開発並びに原価低減の推進、貴金属の安定確保、環境・安全対策ガバナンス体制の構築等がございます。

まず、高付加価値製品の開発並びに原価低減については、需要を的確に捉え、営業・開発・製造の各部門が一体となり他社製品との差別化・高付加価値化を図るとともに、製造工程を標準化し自動化並びに作業の効率化を進め、品質の安定と原価低減を目指してまいります。

次に、貴金属の安定確保については、貴金属回収技術の向上・新たな技術確立を図り貴金属回収能力増強のための積極的な設備投資を行います。加えて、田中貴金属工業株式会社や鉱山会社との緊密な取引関係の維持・強化を基本方針とし貴金属の安定確保に努めてまいります。

また、当社は継続的な成長・発展と企業価値の増大を図るため、環境・安全対策に真摯に取り組むとともに、ガバナンス体制を強化し、コーポレート・ガバナンスの充実及び内部統制システムの円滑な運用を重要な経営課題と認識し鋭意取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方や取り組みは、次の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは持続可能な環境・社会の実現と当社グループの持続的成長のための環境・社会課題への取り組みについて「サステナビリティ委員会規程」を設け、取締役会の監督の下、審議する体制を整備しております。具体的には当社の社長を委員長として取締役、執行役員、部門長、サステナビリティ担当者により構成されるサステナビリティ委員会が部門を横断して活動に取り組んでいます。重要案件については執行側の最高意思決定機関である経営会議で協議を行い、適宜取締役会で報告し、取締役会はそれを監督しております。

 なお、コーポレートガバナンスの体制概要については本報告書の第一部「第4.提出会社の状況 4.コーポレートガバナンスの状況等」に記載しております。

組織体

役割

責任者

取締役会

取締役会は重要な業務執行に関する事項について審議、決裁を行う機関であり、当社グループのサステナビリティに関する課題についても適切な対応が行われているか監視・評価を行います。

代表取締役社長(議長)

サステナビリティ委員会

サステナビリティ委員会はサステナビリティ推進に係る方針・戦略・体制に関する事項や、サステナビリティ推進に係る取り組み状況などを調査・審議します。

代表取締役社長(委員長)

経営会議

経営会議は経営及び各業務運営管理に関する重要執行方針について協議します。

代表取締役社長が指名した者

リスク管理委員会

リスク管理委員会はリスクの発生防止と適切な対応により損失を最小限とすることを目的とします。

管理本部長

 

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(2)戦略

 当社グループは2023年1月に「サステナビリティの考え方」の基本方針を制定し貴金属製品を通じて「科学技術の発展に寄与し、社会の繁栄に貢献する」ことを企業理念に掲げ、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題に取り組んでいます。希少な貴金属のリサイクルや貴金属の使用量を削減する新技術開発をはじめ、環境改善につながる触媒の開発・製造を通じて地球環境の改善に取り組んでおり、グリーン社会への転換に関する新規事業分野の開拓と技術開発を重要課題の一つとしております。原材料調達に関しては「責任ある鉱物調達方針」を定めており、紛争やテロに関わる資金提供、人権損害、マネー・ロンダリング等に関係する原材料を調達しないよう取り組んでおります。

詳細はhttps://www.furuyametals.co.jp/sustainability/idea.htmlをご参照ください。

2025年6月期において経済価値をベースとし、同時に社会・環境価値を実現する重要課題の特定に取り組みます。重要課題の特定プロセスにおいてはステークホルダーの皆様と積極的な対話を促進してまいりたいと考えております。

 

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(3)リスク管理

 当社グループの経営全般に関するリスクについては、取締役管理本部長をリスク管理責任者とし、委員長を務め、フルヤ金属の取締役、部門長などで構成されるリスク管理委員会を設置しモニタリングを行っています。当社グループにおける「業務」「財務」「法令等の遵守」「労務」「災害」「環境」などに関するリスクを物理的、経済的もしくは信用上損失又は不利益を生じさせるリスクと考え、発生度合、影響度に基づき定量化しリスクを抽出し重要リスクへの対応を行っております。今後も実効性の高いリスクマネジメント体制の確立に努めてまいります。

 

発生度

影響度

5点

短期的(6か月以内)に発生確率が高い

全社的に甚大な影響がある

3点

1年以内の発生確率が高い

局所的に大きな影響がある

1点

発生の可能性がある

影響は限定的である

0点

ほぼ発生しない

ほぼ影響はない

 

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(4)指標及び目標

 再生可能エネルギー100%の電力調達を通じて工場におけるCO2排出量のゼロエミッションを維持継続し経済産業省評価制度におけるSクラス認定の持続的獲得を目指します。

 

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(5)人的資本

・戦略

 当社グループが目指す人財像は「先見力と創造力」に優れ、課題の発掘・解決に挑み続ける人財の育成を目指し、多様性と機会の均等を基本方針とし、一人一人の個性を生かし互いを尊重しながら成長を目指す環境の醸成に務めます。採用・環境・育成の三位一体の人財基盤づくりを進めてまいります。

①採用

・新卒、中途における女性採用の拡大

・リファーラル採用の推進

②環境

・育児・介護休業の取得推進

・社員エンゲージメントの可視化

・人事データベースに基づくタレントマネジメント推進

③育成

・自ら選び、自ら学ぶ教育ツールの充実

・質の高い現場経験に基づく自律的成長

・女性活躍推進(女性管理職の育成と抜擢)

・指標及び目標

①女性管理職比率:2028年6月末までに10%以上を目指します

②女性社員の積極的活用による人材基盤整備:管理職及び管理職候補を2028年6月末までに20%以上を目指します

③男性社員育児休業取得比率:50%以上取得を目指します

 

3【事業等のリスク】

以下において、当社グループの事業上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。

当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の予防又は回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、本株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項目以外の記載事項を併せて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

また、以下の記載は本株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありませんのでご留意下さい。

なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)業績の変動要因について

当社グループの業績は、携帯電話、液晶ディスプレイ、電子部品及び電子デバイス関連等の電子機器メーカーや半導体、光学ガラス及び触媒関連業界における設備投資動向及び生産活動の影響を受ける傾向があります。したがって、今後これらの業界動向が悪化した場合には、当社グループの業績及び財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2)貴金属の価格について

当社グループ製品の原材料は高価な貴金属が大半を占めており、また市場需要に機動的に対応し安定的に供給を果たすために必要な貴金属を保有していることから、種々貴金属価格の変動は当社グループの業績に影響を与えます。特に、プラチナグループメタル(PGM)のうち当社グループで取扱いの多いイリジウム・ルテニウムの取引価格は、主要な貴金属取扱業者の公表する価格を指標として決定されており、これらを主原料とする製品需要動向や投機的要因のほか、供給国及び需要国の政治経済動向、為替相場等、世界のさまざまな要因により、その価格は変動しております。また、プラチナやパラジウム等は国際商品市場で活発に取引されており、同じ要因によりその価格は変動しております。その価格の変動は直接売上高に影響するとともに利益にも少なからず影響を与えます。

これらのリスクに対応するため、当社グループは、海外鉱山会社と緊密な関係維持、原材料調達ルートの複線化、リサイクル原料の使用比率の向上に取り組む等、原材料価格の変動による影響の低減に努めておりますが、全量に対する原材料価格変動リスクの回避は困難であるため、製造及び在庫期間における貴金属価格の動向によっては、価格変動が当社グループの業績に及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3)貴金属の調達について

当社グループ製品は、産出地や生産量が限定されるイリジウム・ルテニウム等といった稀少な金属を原材料としております。当社グループでは、原材料の調達リスクに備え一定の原材料在庫を保有しております。しかし、これら稀少金属の産出国における政治・経済情勢等の変化・法律の改正又は世界的な需給逼迫等により産出量・流通量が減少した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

(4)為替変動の影響について

当社グループは、原材料及び製品の一部の輸出入取引を外貨建で行っており、また、海外連結子会社の財務諸表は外貨建で作成されております。従いまして、当社グループは外国為替相場の変動に係るリスクを有しております。

外国為替相場の変動は、当社グループの輸出入取引に係る収益費用及び外貨建債権債務の円換算額に影響を与え、海外連結子会社の財務諸表の円貨への換算において当社グループの財政状態、経営成績に影響を与えます。

当社グループは、外国為替相場の変動による輸出入取引に係る影響を軽減するため、為替予約及び債権流動化を行っておりますが、為替変動の状況によっては、軽減の効果が十分に得られない可能性があります。

(5)「主要株主」及び「その他の関係会社」の異動等によるリスク

田中貴金属工業株式会社は、当社の当事業年度末日現在の総議決権の17.32%を占めており、当社グループの「主要株主」及び「その他の関係会社」であり、同社の親会社であるTANAKAホールディングス株式会社も「その他の関係会社」に該当しております。また、「5.経営上の重要な契約等(2)その他経営上の重要な契約」において記載のとおり、田中貴金属工業株式会社と資本業務提携契約を締結しております。

主要株主である田中貴金属工業株式会社の当社経営方針への考え方・議決権行使等が当社の事業運営及びコーポレート・ガバナンスに影響を与える可能性があり、同社またはTANAKAホールディングス株式会社が、当社の経営方針についての考え方や株式の継続保有方針について変更した場合には、当社の株価や財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

(6)大株主との関係について

田中貴金属工業株式会社との関係について

当連結会計年度末日現在、田中貴金属工業株式会社は当社発行済株式総数(自己株式数を除く。)の17.30%を所有する大株主であります。

取引関係について

当社は、2011年2月7日開催の取締役会におきまして、田中貴金属工業株式会社との間でイリジウム地金の安定供給等を目的として資本業務提携契約を締結いたしましたが、

それに基づき、当社の主要原材料であるイリジウム等について、田中貴金属工業株式会社と仕入取引を行っております。同社からの仕入高及び総仕入高に占める比率と期末買掛金残高は次表のとおりであります。

 

2024年6月期

仕入高(百万円)

217

総仕入高に占める比率(%)

0.6

期末買掛金残高(百万円)

また、田中貴金属工業株式会社への売上高及び総売上高に占める比率と期末売掛金残高は、次表のとおりであります。

 

2024年6月期

売上高(百万円)

1,350

総売上高に占める比率(%)

2.8

期末売掛金残高(百万円)

16

以上のとおり、原材料の仕入及び製品の販売等において、当社は田中貴金属工業株式会社の持つ安定調達力や多様な販売ルートを活用しております。これは、同社の優れた調達力や販売力を活用することにより、拡大する工業用貴金属製品の需要に応えることができると考えるためであります。当社といたしましては、今後とも同社との良好な関係の維持、取引の継続に努めていく所存ではありますが、同社との関係に変化が生じた場合には、原材料の仕入及び製品の販売量の変化等を通じて当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

人的関係について

田中貴金属工業株式会社との資本業務提携契約に基づき、取締役候補として同社の常勤顧問阿部照悦氏が推薦され、指名・報酬諮問委員会の答申、取締役会での選任議案承認、株主総会での承認を経て、社外取締役に就任しております。

独立性の確保について

田中貴金属工業株式会社との資本業務提携契約に基づき、取締役候補として同社の常勤顧問阿部照悦氏が推薦され、指名・報酬委員会の答申、取締役会での選任議案承認、株主総会での承認を経て、社外取締役に就任しておりますが、当社の経営上の決定事項について、同社やTANAKAホールディングス株式会社の事前承認事項や事前協議事項はありません。このように、当社は自らの意思決定により独立した事業展開を行っており、同社やTANAKAホールディングス株式会社によって当社における事業活動や経営判断が阻害されるような状況は生じておりません。しかしながら、前述のとおり同社とは重要な取引関係があることから、同社やTANAKAホールディングス株式会社との関係に変化が生じた場合には、当社の株価や財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(7)人材の確保及び育成について

当社グループが引き続き事業を拡大するにあたっては、貴金属加工にかかわる技術に精通した人材が不可欠であり、このような人材の確保と育成を重要な経営課題として捉えております。

当社グループとしては、中途採用や新規採用を通じて、優秀な人材を採用していく方針であります。今後とも採用活動の強化や教育・研修制度の充実に努めていく方針でありますが、当社が必要とする優秀な人材の育成・確保が当社グループの事業展開に対応して進まない場合、あるいは、何らかの理由により人材が大量に社外流出した場合には、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8)同業他社との競争の激化による業績への影響

当社グループの販売する製品のなかには、ルテニウムターゲット、各種ターゲット、熱電対及び理化学用器具等、競合が激しく、価格競争も厳しい品目がありますが、当社グループは、「競合を制して、極端な価格競争に勝つこと」を目標とはしておらず、顧客ニーズを第一に提案型営業を目指して参りました。今後もこの方針に則り経営諸活動に注力いたしますが、結果として競合や価格競争に晒され、売上及び収益の低下により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(9)製品の開発等について

当社グループは顧客や外部機関等からの情報を分析することにより、製品のライフサイクルや市場動向の変化を見極めると共に、新製品及び新素材の開発、新市場及び新用途の開拓に取り組んでおります。しかしながら、市場動向について、当社グループが予想する以上の変化があった場合、又は当社グループにおいてこれら開発等の活動が見込みどおりに進捗しない場合、当社グループの製品は競争力を喪失し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(10)製品の品質について

当社グループの製品は、顧客より個別製品毎の仕様に基づく厳しい品質が要求されております。当社グループでは、ISO9001に基づく製造プロセス管理及び品質管理システムを導入する等、品質の維持・向上を進めております。しかしながら、当社グループが顧客に納入した製品について、顧客の要求規格及び仕様等を充足しなかった場合又は不適合等が生じた場合には重大な品質クレームを引き起こす可能性があります。その際に、当社グループの製品に何らかの瑕疵が存在した場合には代替品の納入に留まらず、代金弁済や損害賠償、さらには取引(納入)停止等が生ずる可能性があります。これらの事象が生じた場合には、製品納入先との取引が停止するほか、当社グループの製品に対する信頼性が損なわれ、他の製品納入先との取引にも影響を及ぼす可能性があります。このような場合、特にそれが大口の製品納入先である場合には、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

(11)生産拠点の集中について

当社グループは、1990年に工場を茨城県下館市(現筑西市)のつくば工場に移転・集約して以来、一貫してこの地で生産活動を行ってまいりましたが、生産拠点の集中が生産活動の効率化に寄与してきたものと考えております。一方では、2007年12月に精製・回収の主力ラインとして土浦工場を、2010年10月に北海道千歳市に石英保護管内製化のための千歳工場を立ち上げたほか、2011年4月には土浦工場(第二期)を立ち上げ、イリジウム製品の回収精製ラインを増設いたしましたが、生産拠点の分散化は一部にとどまっております。今後、自然災害等の外的要因により生産活動の停止が余儀なくされた場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

(12)事故による操業への影響

プラズマ熔解炉、高周波溶解炉など主要設備では高温、高圧での操業を行なっており、貴金属の精製設備においては大量の薬品類を使用しております。これらを原因とする事故の防止対策には万全を期しておりますが、万一重大な事故が発生した場合には、当社の生産活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(13)環境リスクについて

当社グループは、環境リスクに対して予防の大切さを認識し、つくば工場及び土浦工場においては、環境マネジメントシステムISO14001の運用を通じて、リスクの低減を図っておりますが、自然災害、工場における設備の劣化、又は原材料、薬品の人的な取扱いのミス等により、薬品の漏洩等、環境へ悪影響を与える事象が発生する危険性があります。この事象が大規模なものとなり新たな費用負担等が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(14)知的財産に係るリスクについて

当社グループは、他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し、自社が保有する技術等については特許権等の取得による保護を図るほか、他社の知的財産権に対する侵害のないよう、研究開発部門を中心に、顧問弁護士や弁理士などの外部専門家の協力を得ながらリスク管理に取り組んでおります。しかしながら、当社グループが現在販売している製品、或いは今後販売する製品が第三者の知的財産権に抵触する可能性を的確・適切に判断できない可能性があり、また、当社グループが認識していない特許権等が成立することにより、当該第三者より損害賠償等の訴えを起こされる可能性があります。そのような場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

(15)借入金依存度について

当社グループは、原材料である貴金属の調達、設備投資等に必要とする資金を主として金融機関からの借入により調達し、当連結会計年度末の借入金残高は21,292百万円となりました。なお借入金依存度は18.9%となりました。また、当社グループの売上高に対する支払利息の比率は当連結会計年度において1.9%となっております。今後、営業キャッシュ・フローの拡大から生み出される余剰資金や増資による資金調達により、財務体質の強化に努めて参りますが、原材料である貴金属の仕入増加による借入金増加や、市場金利の上昇等があれば支払金利の負担増が生じ、当社の業績は影響を受ける可能性があります。

また、借入金のうちには財務制限条項が付された借入があることから、将来において業績の悪化等により財務制限条項に抵触した場合等も含めて、新たな資金調達に障害が生じれば、事業の展開に影響を及ぼす可能性があります。

(16)繰延税金資産に関するリスクについて

当社グループは、現行の会計基準に基づき、会社分類の妥当性、将来の課税所得の十分性、将来減算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリング等を検討した上で繰延税金資産を計上しております。

この中で、特に原材料の精製回収費用に関連する繰延税金資産の計上については、将来の精製回収の実行計画に基づきスケジューリングしておりますが、当該実行計画は将来の製品の受注や原材料である貴金属の国際商品市場価格に影響を受ける可能性があります。

また、当社グループの業績や経営環境の著しい変化等により、繰延税金資産の全部または一部に回収可能性がないと判断した場合や税率の変更を含む税制改正、会計基準等の改正等により、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績、財務状況等に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

(2)経営成績

当連結会計年度における連結経営成績は以下のとおりであります。

 

当連結会計年度における世界経済につきましては、米国では良好な雇用環境改善による旺盛な個人消費に支えられ景気は堅調に推移しましたが、欧州ではインフレ抑制のための金融引き締めにより景気回復が遅れ、中国では不動産市況の低迷などが個人消費に影を落とすなど景気低迷が続いている状況にあります。我が国におきましては、所得環境の改善やインバウンドによる需要が期待されましたが、円安などによる物価高騰を受け個人消費に伸びを欠くなど景気回復は緩やかなものとなっております。

 当社グループが関連する情報通信市場、半導体市場、エレクトロニクス市場については、前連結会計年度後半から顧客の在庫調整が続き、当連結会計年度の下期にはいって漸く受注の回復基調が鮮明となりました。なお、当社が取り扱う主要貴金属価格につきましては、依然高い水準にあるものの緩やかに下落が続いており、当連結会計年度における売上、利益に影響しております。
 このような状況のもと、当連結会計年度において、売上高47,527百万円(前期比1.2%減)、売上総利益14,670百万円(前期比4.6%減)、営業利益9,813百万円(前期比14.6%減)、経常利益10,690百万円(前期比13.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益7,410百万円(前期比21.2%減)となりました。

 

 

(売上高)

当連結会計年度の売上高は前期比1.2%減の47,527百万円となりました。

(売上総利益)

当連結会計年度の売上原価は、前期比0.4%増の32,857百万円となり、売上総利益は前期比4.6%減の14,670百万円となりました。また、売上高総利益率は1.1ポイント下落し30.9%となりました。

(販売費及び一般管理費)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は前期比24.7%増の4,856百万円となりました。これは主に研究開発費が587百万円増加したことによるものです。

(営業利益)

当連結会計年度の営業利益は前期比14.6%減の9,813百万円となり、売上高営業利益率は前期比3.2ポイント下落し20.6%となりました。

(営業外収益・費用)

当連結会計年度の営業外収益は前期比32.0%増の1,846百万円となりました。これは主にデリバティブ評価益が743百万円増加したことによるものです。また、営業外費用は前期比93.6%増の969百万円となりました。これは主に支払利息が495百万円増加したことによるものです。

(経常利益)

当連結会計年度の経常利益は前期比13.7%減の10,690百万円となり、売上高経常利益率は前期比3.2ポイント下落し22.5%となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計が3,289百万円となった結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比21.2%減の7,410百万円となり、売上高当期純利益率は前期比4.0ポイント下落し15.6%となりました。

 

セグメントごとの経営成績は以下のとおりであります。

(電子)

 海外の医療用シンチレーター(放射線に当たると、蛍光を発生する物質)に使用される単結晶育成装置向けイリジウムルツボの受注は堅調に推移しましたが、スマートフォンに搭載されるSAWデバイス用途のリチウムタンタレート単結晶育成装置向けイリジウムルツボについては、受注回復傾向がみられるものの顧客の在庫調整の影響を受け、売上高6,337百万円(前期比18.7%減)、売上総利益2,312百万円(前期比15.7%減)となりました。

(薄膜)

 データセンターに使用されるHD(ハードディスク)向けスパッタリングターゲットは、当連結会計年度の第4四半期より受注の回復基調が鮮明になりつつあるものの、長らく続いた顧客の在庫調整による受注減少の影響をカバーするにいたらず、売上高9,300百万円(前期比12.1%減)、売上総利益3,480百万円(前期比21.3%減)となりました。

(サーマル)

 半導体装置メーカー及び海外半導体メーカーから受注が堅調に推移するとともに、高付加価値製品へのシフトを進めてきたことから、売上高5,528百万円(前期比8.2%減)、売上総利益2,121百万円(前期比18.6%増)となりました。

(ファインケミカル・リサイクル)

 電極向け貴金属化合物の受注が復調するとともに、顧客の在庫調整が続いていた有機EL向け化合物、化学プラント向け化合物についても受注の回復が見え始め、売上高20,231百万円(前期比5.6%増)、売上総利益6,341百万円(前期比1.2%増)となりました。

(サプライチェーン支援)

 当社製品の受注に関係しない主要な貴金属原材料の需要は底堅く、販売が増加したことにより、売上高5,688百万円(前期比28.8%増)、売上総利益354百万円(前期比268.8%増)となりました。

 

海外売上情報は以下のとおりであります。

当連結会計年度における海外売上高は23,754百万円(総売上高に占める割合は50.0%)となりました。地域別には、アジア向け輸出売上高9,980百万円(海外売上高に占める割合は42.0%)、北米向け輸出売上高8,124百万円(海外売上高に占める割合は34.2%)、欧州向け輸出売上高5,650百万円(海外売上高に占める割合は23.8%)となりました。

 

 

(3)生産、受注及び販売の実績

①生産実績及び受注実績

当社グループの生産・販売品目はリサイクル製品も多く、受注生産実態を正確に把握することが困難なため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 

②販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2023年7月1日

  至 2024年6月30日)

 対前期増減率(%)

電子(百万円)

6,337

△18.7

薄膜(百万円)

9,300

△12.1

サーマル(百万円)

5,528

△8.2

ファインケミカル・リサイクル(百万円)

20,231

5.6

サプライチェーン支援(百万円)

5,688

28.8

その他(百万円)

440

214.5

合計(百万円)

47,527

△1.2

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

 前連結会計年度

(自 2022年7月1日

  至 2023年6月30日)

 当連結会計年度

(自 2023年7月1日

  至 2024年6月30日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

デノラ・ペルメレック株式会社

10,486

21.8

11,271

23.7

 

(4)財政状態

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産は91,428百万円となり、前連結会計年度末比24,259百万円増加しました。これは主に、原材料及び貯蔵品12,441百万円が増加したことによるものです。

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産は21,293百万円となり、前連結会計年度末比927百万円増加しました。これは主に、ソフトウエア仮勘定が837百万円増加したことによるものです。

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債は44,948百万円となり、前連結会計年度末比9,166百万円増加しました。これは主に、支払手形及び買掛金が6,865百万円増加したことによるものです。

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債は7,260百万円となり、前連結会計年度末比122百万円減少しました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は60,512百万円となり、前連結会計年度末比16,142百万円増加しました。これは主に、株式の発行により資本金が5,217百万円、資本剰余金が5,242百万円、利益剰余金が5,630百万円増加したことによるものです。

 

(5)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は12,298百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により獲得した資金は3,213百万円となりました。
 これは主に、棚卸資産の増加が14,153百万円ありましたが、税金等調整前当期純利益が10,690百万円、仕入債務の増加が6,864百万円あったことによるものです。

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動に使用した資金は2,192百万円となりました。
 これは主に、有形固定資産の取得による支出が1,266百万円、無形固定資産の取得による支出が865百万円あったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により獲得した資金は8,140百万円となりました。
 これは主に、株式の発行による収入が10,384百万円ありましたが、配当金の支払額が1,774百万円あったことによるものです。

 

(6)資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要は、運転資金及び設備投資資金であり、主として営業活動、金融機関からの借入及び資本調達により必要とする資金を調達しております。また当連結会計年度末の現金及び預金は12,300百万円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は203.4%となっており、十分な流動性を確保できているものと認識しております。また、中長期的な資金需要に対応するため、300億円の銀行融資枠(コミットメントライン)を有しております。

 

(7)経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況

経営方針・経営戦略、経営上の目標は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。当社は「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略」に従い、人材の育成や設備投資を行い、その達成に向け順調に推移していると考えており、引き続き諸施策に取り組んで参ります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)営業に関する重要な契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約名

契約内容

契約期間

株式会社

フルヤ金属

三菱商事RtM

ジャパン株式会社

日本

貴金属地金

売買契約書

貴金属地金売買に関する契約

自2001年2月1日

至2001年12月31日

以降1年毎に更新

 

(2)その他経営上の重要な契約

 

契約会社名

相手方の名称

国名

契約名

契約内容

契約日

株式会社

フルヤ金属

田中貴金属工業

株式会社

日本

資本業務提携契約

(注)1、2

2011年2月7日

 

(覚書)

2023年7月24日

1.以下のガバナンスに影響を及ぼし得る合意や、株主保有株式の処分等に関する合意を含む契約は締結しておりません。

(1)企業・株主間のガバナンスに関する合意

 (a)役員候補指名権の合意

 (b)議決権行使内容を拘束する合意

 (c)事前承諾事項等に関する合意

(2)企業・株主間の株式保有株式の処分・買い増し等に関する合意

 (a)保有株式の譲渡等の禁止・制限の合意

 (b)保有株式の買い増し禁止に関する合意

 (c)株式の保有比率の維持の合意

 (d)契約解消時の保有株式の売渡請求の合意

 

2.資本業務提携契約の具体的契約内容は以下のとおりです。

(1)イリジウム地金の調達等の協業を実施する。

(2)取締役候補の推薦(当社の指名・報酬諮問委員会における答申を尊重)することができる。

(3)資本業務提携契約に関する内容で、当社が必要と認める場合において、田中貴金属工業株式会社が推薦する1名を取締役会へオブザーバー出席を求めることができる。

(4)当社が株式等の発行、処分又は付与を行う場合、田中貴金属工業株式会社へ通知する。

(5)当社が合併、会社分割、株式交換等の組織再編を行う場合、事前に田中貴金属工業株式会社へ通知する。

(6)当社が資本業務提携契約の遂行に必要と認めた場合や、連結決算を行う際に必要と認められる資料の情報を提供する。但し金融商品取引法に基づく開示に係る情報に該当するときは開示後に情報を提供する。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループは、高度情報化社会の発展や省エネ・循環型の社会の確立に不可欠な素材である工業用貴金属の専業メーカーとして、多様化するユーザーのニーズに応えるとともに、社会と環境に貢献する次世代製品の開発に取り組んでおります。

なお、研究開発費の金額は当社グループで管理しており、セグメント別に研究開発費の金額を表示することが困難なため、セグメント別の研究開発費の金額については記載を省略しております。

当社グループの研究開発活動は、社内外の開発情報を有機的に結合させ、収益に繋がる開発を迅速かつ効果的に進めるため、研究統括部を設置し、基礎研究開発のほか、省エネや環境のための次世代新素材の開発、触媒原料等の開発、新しい用途の開発、及び高品質・高強度の合金の開発、高度な回収精製技術の開発等に注力しており、貴重な素材をより効率的、かつ高品質に回収・再生できるリサイクルプロセスの開発にも力を注いでおります。

 

当連結会計年度における研究開発費の総額は1,723百万円であり、研究開発の主な内容は以下のとおりであります。

(1) 各種高機能合金製品の開発

顧客ニーズや新たな用途や機能に適する各種高機能合金製品の開発につとめ、量産化技術の開発も併行して積極的に取り組んで参りました。今後、量産化への展開が期待されます。

(2)貴金属化合物や触媒の開発への取り組み

注目度の高い環境・エネルギー分野において、新たな用途や機能に適する触媒の重要性がさらに高まりつつある中で、有機EL向け材料としての貴金属化合物や、貴金属または貴金属化合物をベースとした環境浄化のための触媒材料ないし触媒の開発に引続き取り組んで参りました。

(3)スクラップからの貴金属回収技術の開発への取り組み

廃触媒などのスクラップや使用済電極からの白金族金属回収については、当社グループに蓄積された技術、及び新たに導入した熔解設備を核に、新たな技術開発に取り組んでおります。

(4)大学・研究機関との共同研究

環境やエネルギーに係わる技術開発や研究分野において、大学や研究機関との共同研究に積極的に参画しておりますが、その成果を当社グループの製品に生かすことを通じて次世代の環境やエネルギーへの貢献をすべく取り組んでおります。