文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度においては、個人消費に足踏みがみられるものの、雇用・所得も改善され国内経済は緩やかに回復しおります。一方で、金融資本市場の変動影響や米国経済の景気懸念の高まりなどもあり国内外における経済的な見通しは不透明な状況が続いております。
その中で、当社グループの事業である派遣や請負、とりわけ国内の技術系領域においては顧客企業のニーズが強い状況にあります。市場環境の変化に応じた事業戦略と適正な財務戦略によって、当社グループの持続的な成長が可能と展望しております。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループの事業の存在意義として、また事業遂行における判断基準や価値基準となるものとしてパーパスを設定しております。事業子会社ではこのパーパスの示す方向のもと、各々の事業特性に沿う経営理念やビジョンをもって経営を行っております。
( パーパスのビジュアルイメージ )
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、財務的な目標の達成状況を判断するため、各事業区分あるいは事業会社毎の成長性と収益性を評価する指標を重視しております。具体的には売上収益とその増加率、営業利益とその増加率を社内の目標や評価に設定し、連結決算においてもこれらの項目を重視した継続的な開示と説明で状況を示しております。また、稼働する社員数の増加と稼働率は客観的な非財務の指標として重要であり、同じく開示を行っております。
また、中期経営計画として2025年6月期までを計画期間とする中期経営計画「BY25」を2021年8月に設定しておりますが、2024年6月期時点において中期経営計画「BY25」のコミットメントを達成予定となっております。新たに目標をアップデートすべく新中期経営方針として、3つの指標を掲げております。
「収益指標」:売上高・営業利益(年率)10%以上成長、営業利益率10%以上の達成
「成長指標」:国内エンジニア数(年率)10%以上、社員の育成投資、M&A
「還元指標」: 配当性向50%以上、累進配当、自己株式取得
(3)経営戦略等
当社グループは、主に国内の技術者派遣の売上収益の伸長と収益性の向上が展望できる領域に対して、当社グループの強みである中途及び新卒の継続的な採用や未経験者からの育成プログラムやスキルアップに寄与する研修等のフォローアップにより、技術者の定着率を上げ、LTV(ライフタイムバリュー)を重視する新たな事業経営方針と成長手段を構築しております
また、事業セグメントを多様化し増やす方針ではなく、現事業セグメントにおける稼働社員数の増加と収益性の向上による自立成長と同セグメント内で成長に寄与するシナジーや補完が見込まれるM&Aや事業子会社の経営統合等を積極的に行う成長戦略としております。
(4)経営環境並びに会社の対処すべき課題
当社グループの主力事業である国内の機電・IT領域と建設領域の技術者派遣市場は、従前より人材不足の状況にあり、世界情勢の不安定はあるものの顧客企業の活動回復と共に人材ニーズは回復しており、硬直的な雇用制度や成長技術分野への人材流動性の低さなど構造的社会課題は引き続き続くものと考えております。
特に、国内の労働人口の低下に加え学生の理系離れ等により、長期的には採用マーケットの環境は競合による厳しさを増す傾向にあります。
このような状況において当社グループの対処すべき課題として以下の項目を認知し、持続的な取組みで対処を行ってまいります。
① 社員の採用
当社グループの持続的な業容拡大のためには、稼働社員数の増加が重要な要素であり、特に技術者の採用は重要な課題と考えております。
雇用を取り巻く社会環境が変化している中で技術者の採用マーケットは非常にタイトであり、採用力が同業他社との優劣を決めるものとなります。当社グループは新卒中途を問わず積極的に採用を行っており、技術の領域や事業会社の特徴に適した多様なチャネルで採用を推進しております。若者の就労観の変化など採用マーケットの状況を敏感に捉えながら、自社サイトでの集客、様々な求人媒体、紹介会社、リファラル採用等の活用、WEB面談や採用拠点の統廃合等のインフラの機動的な対応により、採用コストの適正な運営と採用戦略のアップデートを常時行っております。また、採用に関するデータを蓄積・解析し、確保した募集母集団においてスキルやキャリア志向を的確に把握したうえで、統計やAIを活用しながら更なる採用の効率化と採用数の増強に取り組んでおります。
② 社員の育成
当社グループの持続的な業容拡大のためには、社員一人ひとりが顧客企業から信頼される技術や知識、協働などの能力の発揮や向上が重要な要素であり、そのようなスキルを支える仕組みは重要な課題であると考えております。
顧客企業では引き続き経験や知識のある技術者の要望が高まっております。これに対し当社グループでは、エンジニアを育成するためのトレーニングセンターの設置や、資格取得のための研修、支援制度を通じて、新卒等の未経験から技術者として就業できる社員を育成しております。また、社員のスキル、就業先での評価や社員の意欲を的確に把握できるよう専任部署等による人的なフォロー体制とタレントマネジメント等のシステムを柔軟に活用した対応を行っております。これによりキャリアの転機や働き方の希望を把握したうえで、社員のリスキリングを推進し、またスキルアップの支援に取り組んでおります。
③ 社員の定着
当社グループの持続的な業容拡大のためには、社員の定着が重要な要素であり、安心安全を基本に社員がやりがいをもって就業できることが重要な課題であると考えております。
当社グループは派遣法などに係るコンプライアンスの遵守と共に、長時間労働や健康・安全に関する適正な運用や社内教育に注力し、必要に応じて顧客企業に対し積極的に連携を行うことで、社員が安心して能力を発揮できるよう取り組んでおります。
当社グループで長期にわたり働いて頂くためには、社員の満足度が最重要と考えております。そのためには「人」を起点に、社員一人ひとりのライフイベントに配慮したきめ細やかなフォローを通じて、適正なマッチングの実現、リスキリング、キャリアサポートなどたくさんの扉を創り続ける必要があります。当社グループはその件数及びスピードを重視しDXの更なる活用と全社でのノウハウ共有による向上に取り組んでおります。これらにより、当社グループでのワークエンゲージメントを高め定着率の向上に努めております。
④ M&A
当社グループの持続的な業容拡大のためには、自立成長だけではなくM&Aによる成長は重要な課題であると考えております。
国内の技術者派遣に関連するM&A、特にITソフトウェアの技術者を要する企業への投資額は高い傾向にあります。このため、的確な投資基準の設定と運営方針が重要と考えております。
当社のM&Aは既存の事業ポートフォリオの領域内を原則と考えており、当社グループの経営管理手法、営業・採用とのシナジー、技術者のスキルアップやキャリアアップの可能性の拡大等を都度検証しております。また資本コストを上回る収益性となるか慎重にシナリオを検討したうえで、事業、財務、法務、人事等の項目を業務執行取締役及び執行役員を構成員とする投資検討会において十分審議のうえ、取締役会での最終決定を行うことにしております。また、過去のM&Aに関しては全て定期的にパフォーマンスを検証しており、新たなM&Aの検討やPMI(いわゆるM&A後の統合行為)において比較や参考としております。これらにより当社グループに適したM&Aを行い着実に成果に結びつくよう取り組んでおります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
優先的に対処すべき課題は、パーパスである「幸せな仕事を通じてひとりひとりの可能性をひらく社会に」を実現するために、社員満足度を上げ、定着率を上げることで、LTV(ライフタイムバリュー)を向上していくことです。
そのために、マッチングがメインのエージェント型のサービスにとどまらず、働く人のキャリア形成をサポートする伴走型のサービスを、ひとりひとりの個性に合わせて提供していくことに当社グループは注力しています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
サステナビリティ活動推進にあたっての当社グループの基本的な認識は、将来にわたって人間社会、自然環境と調和した行動を通じて事業活動を長く継続することにあると考えています。 このような認識に基づき、当社グループの最も大切な考え方である「パーパス」を基軸に据え、以下の「サステナビリティ基本方針」を定めています。
サステナビリティ基本方針
当社グループは、パーパス「幸せな仕事を通じてひとりひとりの可能性をひらく社会に」に基づき、就業者(求職者)や取引先はもちろん、すべてのステークホルダーと連携・協働し、事業を通じて社会課題の解決を推進することで、持続可能な社会の実現と当社グループの成長を目指します。
(1)ガバナンス
当社グループでは、継続的な業容の拡大と社会課題を解決することで持続的な発展を推進するための体制として、サステナビリティ委員会を中心とした体制を構築しています。
サステナビリティ委員会は業務執行機関の一つとしており、代表取締役会長兼CEOを委員長とし、代表取締役社長兼COO、取締役CFO、執行役員(含む主要事業会社代表取締役社長)及び委員長が指名する当社グループ役職員で構成されています。また、サステナビリティ委員会の内容に関しては取締役会に報告されます。
サステナビリティ委員会では、価値創造プロセスやマテリアリティの検討、更新を管理しつつ、中長期のサステナビリティに関わるリスク管理の検討と対策を協議します。リスク管理には人的資本、人権や気候変動に関する事項を含みます。また、月次で実施する各事業会社のコンプライアンス会議(報告)におけるリスク管理のうちサステナビリティに関わる項目の発生や対応管理については、各社の月次の管理だけでなく、サステナビリティ委員会において毎回の定例議題として、全社ベースでの統括がされるような運営体制としております。
これによりサステナビリティ委員会での方針、確認事項が各事業会社の事業戦略やコンプライアンス会議のテーマの方針などに反映され、サステナビリティ推進のガバナンス体制を敷いております。
サステナビリティ推進 ガバナンス体制
サステナビリティ委員会の定例議題
・マテリアリティ(人的資本を含む)に関する事項
・気候変動に関する事項
・リスクマネジメント(リスクと機会)
(2)戦略
当社グループではサステナビリティに関する戦略をマテリアリティの特定からリスク管理、指標と目標へ繋がるよう策定し推進しております。
① マテリアリティ
当社グループは、パーパスおよび事業戦略に沿った企業の中長期的な価値創造において、大きな影響を及ぼす重要課題であるマテリアリティを特定しました。また、特定した10個のマテリアリティに取り組みテーマを紐づけて、機会創出とリスクマネジメントの双方に取り組むことを重視し、下記構造化を行いました。
マテリアリティは二部構成となっており、「安全や安心を守る事業基盤」「透明性の高い組織基盤」に係るマテリアリティをビジネスの土台とし、「キャリア形成とウェルビーイングの支援」「労働市場の持続的発展への貢献」に係るマテリアリティに取り組むことで、価値創出を目指します。
② パーパス実現に向けた価値創造モデル
当社グループは、パーパスの実現を目指すことが中長期的に価値を創造し、かつ社会の持続的発展に貢献できると考え、価値創造モデルを策定しました。
策定にあたっては、ベンチマーク企業の分析や経営幹部ヒアリングを基にサステナビリティの担当部門でドラフトを作成し、ドラフトをもとに幹部ワークショップを実施し検討を進め、取締役会での意見を踏まえて最終化しました。
IFRSの統合フレームワークをベースに、「外部環境変化」「インプット」「事業活動」「アウトプット」「アウトカム」の流れに沿ってまとめたものが当社グループの価値創造モデルであり、アウトプットとアウトカムとその良い影響を通してパーパスが実現されると考えています。
③ 人的資本に係る事項
マテリアリティの中で「研修と教育を通じた人材開発」「やりがいにつながる仕事の提供」「ワークライフバランスの推進」「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」という人的資本の項目を特定しています。
人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
・人材開発の考え方
当社グループは、働く人一人ひとりの「幸せな仕事」に向けてたくさんの扉を作り続けることが役割であり、人材育成や多様な研修機会もその扉の一つであると考えています。 なかでも当社グループの強みと特徴は、専門性に特化した研修制度により、新卒等の未経験から技術者として就業できる技術社員を育成することにあります。
年齢や職業経験の有無にかかわらず、教育研修で得たスキルを活かし顧客貢献度を高めることでさらに高いレベルの仕事や処遇が得られることは、長期的な働きがいの向上も実現します。
各事業会社ではそれぞれの専門性を活かし、技術者として必要な研修プログラムや資格取得制度を設け、未経験の方でも将来的に活躍、成長できるよう、環境を整備しています。 一人ひとりのキャリアの転機や働き方の希望を把握し、意欲ある技術・技能社員には新たな業務への異動や研修の機会を用意することで、自身が目指す未来の姿に向かってキャリア展開できるよう継続的に仕事へのチャレンジを支援しています。
また、内勤社員においてもグループ全体で「人事ポリシー」を策定し、その人事ポリシーに沿った人事制度の構築と適切な運用を進め、技術社員同様に、内勤社員も活躍、成長できるよう環境整備を進めています。
・多様な人材の活躍推進
当社グループは、人材サービス業の事業の源泉である「働く個人」一人ひとりが、多様で、お互いを尊重、理解し合う就業環境での活躍を通じて個々の働きがいと顧客企業へのサービスの向上に繋がり、事業の価値に結び付くと考えています。 そのための「社会、人権、環境等に関する企業倫理」において、性別や国籍等で雇用条件が変わることなく、年齢や障がいの有無にかかわらず、すべての人がディーセント・ワークやワークライフバランスを満たすことができるよう、就業環境を整備し、多様な人材の採用、育成、登用によりダイバーシティ&インクルージョンを推進する方針を掲げています。
④ 気候変動に係る事項
当社グループは、持続的な発展が可能な社会の実現のため、また常に自然環境や生物多様性への影響に配慮し、あらゆる事業活動において地球環境の保全に貢献するために、当社及び当社グループ会社の全ての役職員が業務を遂行する上で遵守すべき環境ポリシーを定め、これを遵守します。
またTCFD提言の4つの構成要素「ガバナンス」 「戦略」 「リスク管理」 「指標と目標」の情報開示フレームワークに基づいた対応を進めております
(3)リスク管理
当社グループは、特定した価値の創出につながる5つのマテリアリティに対して、取り組みにより得られる「機会」と取り組まない「リスク」があることを認識し、サステナビリティ事務局において管理を行っています。
また、特定した「ビジネスの土台になる5つのマテリアリティ」に対して、リスクカタログを用いて事業会社の社長及び持株会社の部門長にて網羅的また横断的に抽出し、発生頻度、1事象あたりの影響度、影響期間、リスクコントロールの状況を年次で整理し、評価しております。その内容は、ガバナンスに記載のサステナビリティ委員会にて定例議題として設定されております。
(4)指標及び目標
サステナビリティにかかる指標、目標に関して、当社グループではマテリアリティに連動して設定や見直しを行っており、以下に開示しております。
https://www.openupgroup.co.jp/sustainability/materiality/
① 人的資本に関する事項
当社グループは、パーパスの実現度を様々な要素で捕捉し、その広がりを指標化した5つの<オープンアップ・パーパス・インデックス(OPI)>において目標を設定しています。<OPI>の進捗と業容の拡大をともに実現することが持続的な企業価値の向上へつながると考えています。
5つのOPIは、人的資本に係る指標及び目標の一部に該当すると考えおり、その他の人的資本の指標に関してガバナンスに記載の体制の運営を通じて、常時検討と決定を進めております。
② 気候変動に関する事項
当社グループのCO2排出量(Scope1, 2)を、2030年までにNet Zeroとするカーボンニュートラルを目指す目標を設定しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループでは、これらのリスクの存在を認識した上で、当該リスクの発生に伴う影響を極力回避し、また発生した場合に的確な対応を行うための努力を継続してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)経済安全保障等の国際社会状況
当社グループは事業構造にグローバルなサプライチェーンや資源あるいは部品調達等がないため、直接的な影響を受ける要素は少ないものの、顧客企業の国際情勢への対応により人材ニーズの変化が生じることを通じての影響に留意する必要があると考えております。たとえば顧客企業の開発や生産拠点の稼働の変化のみならず移転等の動きが大きくなる場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)気候変動
当社グループは直接的に自然資本の利用や排出が極めて軽微である特性があり、気候変動による事業へのリスクで顕在化しているものはないと考えております。しかしながら、地球温暖化対策を強化する国策として炭素税の導入がなされた場合や、顧客企業が人材サービスの取引先選定基準においてもカーボンニュートラルへの取組みを要請する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお当社グループでは、購買品や販促品の環境性能を選定基準に適用し、社用車の削減、資材の再利用などCO2等の低減に取り組んでおります。また気候変動に関するリスク評価を年度毎に行い、重要なリスクを認知した場合、取締役会と経営会議に報告と対応の検討を行います。
(3)自然災害
当社グループの事業拠点は国内外で広く展開をしており、地震、津波、台風などの自然災害により一部地域等での事業活動が停止する、あるいは顧客企業の設備等に被害が及び就業が出来ないという事態が発生する可能性があります。一定の影響が生じても他拠点でバックアップできる電子化を含めた体制整備を随時アップデートしておりますが、大規模の災害が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)法的規制
派遣や職業紹介の事業は、国内において労働基準法はもとより労働者派遣法や職業安定法の規制下にあるため、当社グループではこれらの法令に違反するような行為や事象が発生しないよう、業務フローにおける確認・牽制を行い、コンプライアンス会議を通じた定期的なモニタリングと未然予防に取り組んでおります。しかしながら、督官庁の指導方針の強化や当社グループの取り組みが派遣先にて十分に反映されない場合には、許可取消や事業停止の処分などを受ける恐れがあります。
また、将来の関係法令の改正や監督官庁の指導方針の強化等により顧客企業が派遣や請負の活用を見直す事態となり需要が低下する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、海外の事業においても国別の法令や規制の影響下にあり、同様の可能性があります。
(5)顧客情報管理
当社グループの社員は、就業先の顧客企業において機密性の高い情報に触れる機会があるため、全社員に対して入社時及び定期的に機密情報の取り扱いに関する指導・教育を行っております。しかしながら顧客企業の機密情報の流出や不正使用等の事態が生じた場合、損害賠償請求や社会的信用失墜等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)個人情報管理
当社グループは多くの個人情報を取り扱っており、その適正な管理を行うため、個人情報保護に関する規程や関連する諸規定を定め、プライバシーマークの取得や社員教育等を行っております。また、個人情報を扱うIT機器のアクセス制御や漏洩対策を行っております。しかしながら個人情報の流出や不正使用等の事態が生じた場合、損害賠償請求や社会的信用失墜等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7)労働災害
当社グループの社員は派遣や請負を通じて顧客企業の様々な現場で就業を行っております。このため配属時等に顧客企業との協力のもとで安全衛生教育や研修を行う等、労働災害の未然防止に努めております。
しかしながら当社グループの社員が不測の事態に遭遇した場合、損害賠償請求や社会的信用失墜等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)業務請負(受託等)
当社グループでは派遣以外に請負契約に基づく役務提供を行っておりますが、請負においては派遣と異なり当方が業務執行指示を行い、管理監督責任を負うこととなります。このため、請負により発生しうるリスクについて事前検討し準備の上で役務提供を行っておりますが、品質低下、納期遅れ、成果物の瑕疵等により顧客企業との取引停止や損害賠償請求等の事態が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9)企業買収、業務あるいは資本提携等
当社グループでは経営戦略としてM&A(提携等を含む)に積極的に取組む方針としております。投資に際しては対象企業の事業内容や契約関係、財務内容等について詳細に検討を行い、投資効果を慎重に見極めております。しかしながら当初期待した成果をあげられない場合には、のれんの減損が生じるなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当社は2023年11月に当社の連結子会社であるビーネックスパートナーズの株式譲渡を決定したことから、連結財務諸表の作成上、同社の事業を非継続事業に分類しております。このため、売上収益、売上総利益、営業利益及び税引前当期利益については、非継続事業を除いた継続事業の金額を記載しております。また、前期からの増減比率の記載にあたっても、前期実績を同様に組み替えております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 連結財務諸表注記 33. 非継続事業」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における売上収益は173,225百万円(前期比14.9%増)となりました。この増収は主に、機電・IT領域及び建設領域で在籍人数が伸長し、稼働率も概ね高い水準で推移したこと、為替影響等で海外領域の売上収益が増加したことに加え、2024年4月1日付で子会社化した2社の業績が寄与したことによります。利益面では、売上総利益および定常的な販売管理費の売上収益に対する比率は維持されたものの、新株予約権の行使条件達成による一時費用の発生や雇用調整助成金の剥落等の減益要因が発生しました。一方でビーネックスパートナーズの株式譲渡に伴う子会社株式売却益も計上されました。その結果、事業利益は14,297百万円(前期比25.0%増)、営業利益は14,293百万円(前期比17.5%増)、当期利益は11,811百万円(前期比23.8%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は11,768百万円(前期比23.4%増)となりました。
※事業利益は、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を減算したもので、「その他の収益」や「その他の費用」に計上される特別項目(雇用調整助成金や減損損失等)による影響を除いたものを示している当社独自の利益指標です。
セグメント別の業績の概要は、次のとおりです。なお、セグメント別の売上収益は外部顧客への売上収益を適用しております。
当連結会計年度の期首より、マネジメントによる管理を一層強化するため、セグメント利益を従来の営業利益から、営業利益に持分法による投資損益を調整した金額に致しました。
[機電・IT領域](機械・電機及びIT領域の開発・設計・運用保守分野に対する派遣・請負・委託事業)
当連結会計年度においては、前期からの継続的な採用投資により在籍人数が順調に伸長し、稼働率は前期を若干下回ったものの概ね91~94%で安定的に推移しました。更に、旺盛な需要を背景にして、積極的に単価の改善を推し進めました。また、2024年4月1日付で子会社化したオープンアップテクノロジーの業績も寄与しました。利益面では、稼働率の微減や従業員処遇の引上げを吸収して、売上総利益率は概ね維持されましたが、特殊要因として、ネプラス株式会社のプロダクト事業売却による事業譲渡益を計上した一方で、新株予約権の行使条件達成による一時費用の発生、前連結会計年度の雇用調整助成金の剥落、のれんの減損損失の計上といったマイナス要因が発生しました。
この結果、当セグメントの当連結会計年度における売上収益は91,064百万円(前期比13.3%増)、セグメント利益は8,930百万円(前期比3.7%増)となりました。
[建設領域](建設業界への施工管理技術者やCADオペレーターの派遣事業)
当連結会計年度においては、退職率がやや悪化したものの、前期からの継続的な採用強化の結果、在籍人数が増加し、建設業界の人材需要を踏まえた契約単価の改善も進展しました。また、2024年4月1日付で子会社化した株式会社オープンアップコンストラクションの業績も寄与しました。利益面では、稼働率が前期を若干下回ったものの、単価改善や、採用費を含めた販売管理費の抑制が増益に寄与した一方で、前連結会計年度の雇用調整助成金が剥落したため、全体の利益率は若干低下しました。
この結果、当セグメントの当連結会計年度における売上収益は44,994百万円(前期比12.1%増)、セグメント利益は6,878百万円(前期比9.7%増)となりました。
[製造領域](顧客企業の製造工程等における派遣・請負・受託事業)
当社は、当社の連結子会社であるビーネックスパートナーズの全株式を2024年4月1日付で譲渡し、製造派遣事業から撤退しました。
この結果、当セグメントにはビーネックスパートナーズの第3四半期連結累計期間までの売上収益およびセグメント利益に加えて株式譲渡による子会社株式売却益が計上されており、当セグメントの当連結会計年度における売上収益は7,993百万円(前期比27.3%減)、セグメント利益は2,063百万円(前期比270.6%増)となりました。
[海外領域](日本国外における技術・製造分野に対する派遣・請負や、有料職業紹介などの人材サービス事業)
当連結会計年度においては、英国ではインフレが鎮静化しつつあるものの経済がリセッション含みで推移する中、着実に新規顧客開拓を進めるなどの受注活動の結果、ポンドベースでも増収となりました。利益面では、利益率の高い紹介事業の一時的な活況が終息したことと、インフレにより経費や人件費が上昇したことにより、利益率が低下しました。
この結果、当セグメントの当連結会計年度における売上収益は35,514百万円(前期比22.6%増)、セグメント利益は570百万円(前期比3.8%増)となりました。
[その他]
報告セグメントに含まれない領域として、株式会社SAMURAIがオンラインプログラミング学習サービスを、当社グループの特例子会社である株式会社オープンアップウィズ(旧会社名 株式会社ビーネックスウィズ)が障がい者雇用によるグループ内各種サービスを行っております。
当連結会計年度においては、オンラインプログラミング学習サービスは収益性重視の方針が奏功し売上利益共に堅調に推移し、グループ内各種サービスにおいてはコロナ影響の緩和とサービス提供範囲の拡大から大幅な増収が見られました。
この結果、当セグメントの当連結会計年度における売上収益は内部取引を含めて2,635百万円(前期比37.3%増)、セグメント利益は254百万円(前期比568.8%増)となりました。
② 財政状態の状況
資産・負債・資本
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて15,074百万円増加(14.9%増)し、116,566百万円となりました。主たる変動項目は、オープンアップコンストラクション及びオープンアップテクノロジーの取得によるのれんの増加5,821百万円、現金及び現金同等物の増加5,428百万円、営業債権及びその他の債権の増加2,350百万円、関連会社株式の取得等による持分法で会計処理されている投資の増加604百万円及び非流動資産のその他の金融資産の増加593百万円等によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて6,743百万円増加(18.5%増)し、43,218百万円となりました。主たる変動項目は、未払人件費の増加3,282百万円、流動負債のその他の流動負債の増加1,905百万円、未払法人所得税の増加945百万円及び流動負債のその他の金融負債の増加440百万円等によるものであります。
(資本)
当連結会計年度末の資本は、前連結会計年度末に比べて8,331百万円増加(12.8%増)し、73,347百万円となりました。主たる変動項目は、親会社の所有者に帰属する当期利益11,768百万円、剰余金の配当4,601百万円等による利益剰余金の増加6,963百万円及びその他の資本の構成要素の増加939百万円等によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ5,428百万円増加し、21,506百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は、以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、19,177百万円の収入(前期は15,598百万円の収入)となりました。主な要因は、税引前当期利益の計上による収入14,555百万円、未払人件費の増加額3,377百万円、非継続事業からの税引前利益2,205百万円、非資金項目である減価償却費及び償却費2,150百万円等の損益の調整額、未払消費税等の増加額1,650百万円及びリース債権の減少額1,365百万円等が、子会社株式売却益1,880百万円、事業譲渡益478百万円等の調整項目及び法人所得税の支払額3,334百万円等による支出を上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、5,029百万円の支出(前期は611百万円の収入)となりました。支出の主な要因は、オープンアップコンストラクション及びオープンアップテクノロジーの取得による連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出6,418百万円、本社移転等に伴う有形固定資産の取得による支出581百万円、関連会社の取得による支出498百万円等が、ビーネックスパートナーズの全株式を売却したことによる連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入1,840百万円、ネプラス株式会社の事業譲渡による収入750百万円等による収入を上回ったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、8,889百万円の支出(前期は12,667百万円の支出)となりました。支出の主な原因は、配当金の支払額4,596百万円、リース負債の返済による支出4,520百万円、長期借入金の返済による支出201百万円等が短期借入金の増加額509百万円等を上回ったことによるものであります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
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2021年6月期 |
2022年6月期 |
2023年6月期 |
2024年6月期 |
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親会社所有者帰属持分比率(%) |
61.4 |
65.6 |
64.0 |
62.8 |
|
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%) |
109.3 |
137.3 |
178.8 |
156.4 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
2.1 |
0.1 |
0.1 |
0.1 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
59.4 |
94.2 |
132.2 |
114.2 |
(注)1.親会社所有者帰属持分比率:親会社所有者帰属持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3.株式時価総額は、期末終値株価×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
4.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
5.有利子負債は連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
6.IFRSへの移行日を2020年7月1日とし、2021年6月期よりIFRSを適用しているため、2020年6月期以前については記載しておりません。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績
当社グループ事業の主体となっている派遣及び請負業務は、生産実績及び受注実績の重要性が乏しいため、記載を省略しております。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、2023年11月に当社の連結子会社であるビーネックスパートナーズの全株式を譲渡することを意思決定したことから、当連結会計年度より製造領域を非継続事業に分類し、2024年4月1日付で連結の範囲から除外しております。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
前期比増減(%) |
|
|
販売高(百万円) |
構成比(%) |
||
|
機電・IT領域 |
91,064 |
52.6 |
13.3 |
|
建設領域 |
44,994 |
26.0 |
12.1 |
|
製造領域 |
7,993 |
4.6 |
△27.3 |
|
海外領域 |
35,514 |
20.5 |
22.6 |
|
報告セグメント計 |
179,566 |
103.7 |
11.9 |
|
その他 |
1,653 |
1.0 |
29.8 |
|
合計(非継続事業調整前) |
181,219 |
104.6 |
12.1 |
|
非継続事業への振替額 |
△7,993 |
△4.6 |
△27.3 |
|
合計 |
173,225 |
100.0 |
14.9 |
(注)1.主な相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合は100分の10未満のため記載を省略しております。
2.セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績等
「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
当社の事業には、景気変動等による人材ビジネス市場規模への影響や競合他社の状況、法的規制等、経営成績に重要な影響を与えうる様々なリスク要因があります。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ5,428百万円増加し、21,506百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資本の財源及び資金の流動性について
当社の運転資金等は原則として営業債権の回収によって賄われておりますが、状況に応じて直接金融並びに間接金融を利用していく方針であります。
資金の流動性につきましては、当社及び一部の連結子会社は、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入することにより、各社の余剰資金を当社へ集約し、一元管理を行うことで、余剰資金の効率化を図っております。
また、手許流動性確保のために、当座貸越枠及びコミットメントライン契約等の調達手段を備えております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、財務的な目標の達成状況を判断するため、各事業区分あるいは事業会社毎の成長性と収益性を評価する指標を重視しております。具体的には売上収益とその増加率、営業利益とその増加率を社内の目標や評価に設定し、連結決算においてもこれらの項目を重視した継続的な開示と説明で状況を示しております。
また、稼働する社員数の増加と稼働率は客観的な非財務の指標として重要であり、同じく開示を行っております。
また、中期経営計画として2025年6月期までを計画期間とする中期経営計画「BY25」を2021年8月に設定しておりますが、2024年6月期時点において中期経営計画「BY25」のコミットメントを達成予定となっております。新たに目標をアップデートすべく新中期経営方針として、3つの指標を掲げております。
「収益指標」:売上高・営業利益(年率)10%以上成長、営業利益率10%以上の達成
「成長指標」:国内エンジニア数(年率)10%以上、社員の育成投資、M&A
「還元指標」: 配当性向50%以上、累進配当、自己株式取得
e.経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは、継続した企業成長と更なる業容の拡大のため、コーポレート・ガバナンスに対する継続的な取り組みを行いつつ、技術者派遣を中心とした事業の伸長、社員の採用数及び定着率の向上、社員のスキルアップへの取組み強化等が必要であると考えております。
これらに対する問題認識や今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
該当事項はありません。
特記すべき事項はありません。