文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営方針
当社は、本社を福岡市に構えながら、学術研究機関や企業の先端技術分野の研究開発に高い専門性と提案力を武器に伴走し、そこで得た先進技術の実績と知見を、DXの拡張余地が大きい全国の大学・自治体や地域の中核企業を中心に社会に展開する流れを推進することで、社会全体のDX推進に貢献しております。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当社が主戦場とするIT分野では、技術進展や少子高齢化が進む中、今後IT人材の不足がますます深刻化し、2030年には45万人程度までIT人材の不足規模が拡大するとの推計結果が出ております。(出所:経済産業省委託事業「IT人材需給に関する調査」)
更に、DXのトレンドが進展する中、生産性の向上や業務の効率化を目的にクラウドファースト戦略を実行する企業が増えるほか、働き方改革の一環として「テレワークの導入」「デジタルビジネスの強化」などの業務課題を解決するためにパブリッククラウド(注)サービスを活用する企業も増加しております。2022年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は前年比29.8%増の2兆1,594億円となると見込まれており、また、2021年~2026年の年間平均成長率は20.8%で推移して、2026年の市場規模は2021年比2.6倍の4兆2,795億円になると予測されております。(出所:IDCJapan株式会社「国内パブリッククラウドサービス市場 産業分野別予測、2021年~2026年」)
加えて、2021年度のAIビジネス国内市場は1兆1,608億円となっており、実証実験から本格導入に移行する企業が増加したことで市場が大きく伸長しました。AIビジネスの国内市場は年平均8.5%の成長が予測され、2027年度に1兆9,787億円になると予測されております。(出所:株式会社富士キメラ総研「2022 人工知能ビジネス総調査」)
このような環境の下、当社は、クラウドやAI・IoTといった複数の技術を組み合わせて、クライアントの様々なDX課題に最初から最後まで寄り添うサポート力を備えた独自の企業として市場にポジションを確立していくため、対応技術分野及びコンサルティング領域の拡大を推し進めてまいります。具体的には、以下の事項に注力してまいります。
①学術・研究機関へのクラウドソリューション提供拡大
日本初のAWSパブリックセクターパートナーとして様々な学術・研究機関へのクラウドソリューションの提供を行っております。
旧帝国大学で初めてクラウド導入をした九州大学をはじめ、多くの学術・研究機関様へクラウドソリューションを提供しており、AWSのパブリックセクターチームとの連携をしながら、国内の公共分野のクラウドインテグレーション、AI、IoT、量子コンピュータなど新たな技術領域の社会実装を支援しております。
文部科学省の令和5年度学術情報基盤実態調査の結果によると我が国の大学におけるクラウド利用は全大学で95.4%となっているとされており、クラウドは大半の大学で利用されている状況です。しかしながら、その利用方法は、電子メール、ホームページ等の管理運営基盤(95.6%)、eラーニング、遠隔講義等の教育・学習基盤(84.3%)が大半で、研究データ管理、高性能計算機等の研究基盤は19.5%に留まっています。当社は、これまでの実績を基にクラウド化の進捗が低い研究基盤のクラウド化、クラウド上での先端技術研究の実装を積極的に支援していきます。
②先進技術の社会実装支援拡大
生成AI技術の急速な社会普及もあり、今後、DXはシステムの刷新からデータ活用に主戦場が移るものと想定されます。そのため、データ活用の前提となるクラウドインフラの豊富な開発実績、様々な産業へのAI・IoTなどの先進技術を活用したソリューション提供実績を背景に、クライアントのDX課題をワンストップ(一気通貫)で伴走支援する当社のサービス特徴への需要の高まりが見込まれることから、先進技術の社会実装支援を牽引するデータ人材の育成と拡充を推進するとともに、当該サービスの拡大による事業全体の高付加価値化を目指していきます。
③セールス・マーケティング人材の拡充
これまでの当社は、エンジニア主体で事業成長をしてまいりました。今後の更なる成長に向けて、セールス・マーケティング等に携わる人材の拡充を行い、当社の技術力が生み出す社会への提供価値を最大化するための機能強化を推進してまいります。また、当該拡充を通じて主戦場である日本国内の売上拡大のみならず、海外市場の開拓にも注力してまいります。
④M&A等の戦略的提携
今後の持続的な事業成長に取り組むとともに、非連続な成長、拡大を目指し、M&Aや戦略的提携による競争力の強化や新たな技術の獲得、事業ポートフォリオの多様化等に取り組み、企業基盤の強化に努めることが重要であると考えております。既存リレーションの活用および仲介業者等との連携によるソーシングの実現体制の整備進め、新たなエリアへの進出や事業機会創出に向けた戦略的提携を推進してまいります。
(3)目標とする経営指標
当社は、更なる事業の拡大及び収益性の向上を特に表す指標として、営業利益成長率を重視しております。また、営業利益成長率を高める上で、①継続的にDX支援を推進することで向上する「顧客平均単価」、②社会全体のDXを推進することで向上する「新規取引顧客数」の2つの経営指標も重視し、中期的な事業拡大と収益性向上により企業価値の向上と株主価値の向上を図ってまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1.新技術への対応
当社が属するIT業界では、技術革新が絶え間なく行われております。このような事業環境の下で当社が継続的に事業を拡大していくためには、新技術に適時に対応していく必要があると認識しており、新技術及び新サービスの開発に継続的に取り組んでまいります。
2.優秀人材の確保と育成
IT人材が不足している中、常に学び続ける姿勢を有する人材の確保が事業の発展、成長に欠かせない重要課題であります。当社では、通常の採用活動に加え社員紹介制度のリファラル採用の強化や、新卒・中途入社者向けのOJT教育や勉強会などを積極的に行っております。また、クライアントのDXを推進するクラウド技術・AI等の先進技術の受託開発型サービスと、自社運営のプロダクトサービスを提供していることは、エンジニアの技術領域の拡大に寄与しており、優秀なエンジニアの採用及び育成において優位性のあることだと認識しております。
人材の確保と同時に、社員の能力開発・向上のための研修参加や資格取得費用の会社負担、認定資格取得時の報奨金制度を整備し、社員の能力を最大限に引き出す仕組みづくりを進めております。さらに、人事評価制度の継続的改善運用を行い、社員の長期的な成長支援や魅力ある報酬体系の維持・向上に努めております。
また、当社は、リモートワーク、コアタイムなしのフルフレックス、時短勤務制度の導入など働き方の多様性に対応した施策を積極的に推進しています。一方で、一定割合の出社も推奨しており、同じ場所でともに働くことによる効率の向上や、仕事の垣根を越えた人材の交流、社員同士のコミュニケーション活性化を図っております。全社員がそれぞれのワークライフバランスを実現し、働きやすい環境を整えることによって、次世代を担う優秀な人材の育成、定着に繋げてまいります。
3.サービスの高付加価値化、利益率の向上
当社は、成長戦略を着実に実行していくことで売上高の安定的高成長を実現するとともに、営業利益率の向上を図ることが課題であると認識しております。採用力強化により、技術者人材を増員すると同時に、対応技術分野やコンサルティング領域の拡大等により、付加価値の高いサービスを提供し受注単価の向上に努めることで、売上高の向上を図ってまいります。また、開発プロセスの継続的な改善、社内における技術の共有や教育訓練等を実施し、より強固な開発体制の構築に努め、IT技術で社会課題を解決していきたいと考えております。
4.競争優位性の確保
今後も成長を持続していくためには他社との差別化が急務であり、サービスの優位性を高めるための機能強化・追加が必要不可欠であると認識しております。当社は、特定分野・技術に固執せずに、新しい技術分野にも取り組みながら、幅広い技術分野を網羅し、最適なものを組み合わせてサービスを提供することを重視しております。IoT、AI、クラウドに加えて、量子コンピュータ等の先端技術、Web、モバイル、ビッグデータ解析、優れた顧客体験を実現するUI/UXのノウハウ等の様々な技術・知見に、アジャイル開発等の開発手法を用いることにより、顧客ニーズに柔軟に対応できることが当社の事業展開上の強みとなっていると認識しております。今後も当社の付加価値を上げる取り組みを実施してまいります。
5.コーポレート・ガバナンス体制及び内部管理体制の強化
当社は、今後もより一層の事業拡大及び成長を見込んでおります。そのため、事業拡大・成長に応じた内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。経営の公正性・透明性を確保すべく、コーポレート・ガバナンスを強化し、適切な内部統制システムの構築を図ってまいります。
6.健全な財務基盤の構築
財務基盤の健全性を維持しながら、優秀な人材の採用及び育成、事業開発及び研究開発活動など、今後の事業拡大に向けた投資資金需要に対応すべく、事業資金を安定的に確保することが必要不可欠であると考えております。今後の資金調達手段としては、主に金融機関からの借入、エクイティファイナンスを検討しております。
(注)パブリッククラウド
広く一般のユーザーや企業向けにクラウドコンピューティング環境をインターネット経由で提供するサービスのことをいいます。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次の通りです。なお、特に記載のない限り、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。
人口問題や気候変動、災害リスクの高まりなど、社会を取り巻く環境の変化に加えて、ITの進化・普及によって企業活動から個人の消費・生活スタイルに至るまで社会トレンドがめまぐるしく変化する中で、企業が対応しなければならない社会課題やニーズは複雑化・多様化しています。
このような環境の下、当社は、ITの進化・普及による社会の変化の局面を更なる成長の機会と捉え、サステナブルな社会の実現に向けて、テクノロジーカンパニーとして様々な技術を活用し、DXの推進を通じて社会課題の解決・地球環境の保護に貢献することでクライアントとともに成長する、長期的な視点でのサステナビリティ経営を推進していきます。
取締役会は、サステナビリティを巡る課題について議論し、監督を行う責任と権限を有しております。広範なサステナビリティに関する課題に積極的かつ適切に対応するため、重要課題であるマテリアリティの特定、サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、管理するための統制について審議し、方針等の決定を行ってまいります。
更に、サステナビリティ経営の推進に向けて、本社機能の最適化による経営基盤の整備について、人権・労働、コンプライアンス、リスクマネジメントの領域ごとに、衛生委員会及びリスク・コンプライアンス委員会にて協議・推進を行い、取締役会がこれらの活動を監督し、監査役会は、独立した立場から意見を行うこととしております。また、必要に応じて外部有識者の知見を得ながら、今後の外部環境の変化に対応し、全社的なサステナビリティ経営を推進してまいります。
当社は、Mission(存在意義)を「人に多様な道を 世の中に爪跡を」と掲げ、テクノロジーカンパニーとして様々な技術の活用を通じて、クライアントのDXを推進することで社会課題の解決に貢献し、事業を拡大してきました。当社が属するIT業界では、技術革新が絶え間なく行われております。このような事業環境の下で当社が継続的に事業を拡大していくためには、新技術に適時対応していく必要があると認識しており、新技術及び新サービスの開発に継続的に取り組んでおります。
今後、より一層のDX推進を行うために、株主・クライアント・従業員をはじめとするすべてのステークホルダーとともに、DX推進による社会課題の解決や持続可能な社会の構築に一層貢献することが重要と考えております。
当社は、上記事項の達成に向け、事業活動の中心は「人」であると考え、求める人材像を以下のように定め、一人一人の成長と組織の成長が連動し相乗効果を発揮することを目指しております。
「自立」:自立した姿勢で、常に前向きに物事に取り組み、最後までやり遂げる人材
「個性」:自らの強みや可能性を信じ、本質を追求し周りに影響を与える人材
「協働」:相互に繋がり、お互い助け合うことができる人材
① 人材育成
当社の競争力の源泉は、変化の激しいIT業界において、技術トレンドや社会ニーズをキャッチアップし続けることで「新技術に取り組む土壌」を形成し、その新技術と既存の技術を複合的に連携させる「技術結合力」、それを様々な業界などに展開する「展開力」で構成されております。

これらの優位性を維持・向上し続けるため、創業当初より、社員への新技術探求を奨励する仕組みを設け、新しい分野へ積極的に取り組むことを会社として後押しすることで、新技術に常に目を向け、チャレンジする文化を醸成してまいりました。これらを通じて会得した新技術を、より多くの業界・業種のクライアントのDX推進に繋げる「展開力」強化のために、技術に精通したセールス・マーケティング人材の育成も並行して推進してまいります。
② 個性の尊重
当社は、「個性をかき集めて、驚きの角度から世の中をアップデートしつづける」をVision(あるべき姿)として掲げております。これに基づき、年齢や性別、国籍等を問わず、多様な人材が様々な視点や価値観から議論を重ねることで、クライアントや社会が抱える多様な課題に対する最適なソリューションを提供しつづける企業でありたいと考えております。
そのため、事業活動において「人」が最も重要な要素であると認識し、社員の自己実現を促進するためのワークショップ等を行っており、社員一人ひとりが個性を尊重し、組織として最大限の価値発揮ができる風土を醸成しております。これらの取り組みの結果、社員それぞれの得意分野に関する自発的な勉強会が開催されるなど、個々の能力開発に繋がる機会が創出されております。また、採用においても特定のスキルや属性だけではなく、熱意や好奇心といった個性にも注目し選考を行うことにより、上記企業カルチャーの実現を目指しております。
③ 働きやすい環境づくり
働き方に対する多様なニーズに対応すべく、サステナビリティ経営の根幹となる人材の確保・定着に向けて、当社ではリモートワークやフルフレックス制度の導入、育休取得の推進など、個人のワークライフバランスの実現を推進しております。加えて、社員の心理的安全性を担保するため、内部通報制度の制定、ハラスメントに関する研修の定期的な実施や、社員からの相談に迅速かつ適切に対応するための相談窓口を社内・社外に設置しております。
なお、働きやすさの指標として、当社で働く社員が自身の友人や知人を紹介したい会社であるかを、リファラル採用比率(当期のリファラル採用数を採用総数で除したもの)により評価しております。
④ 情報管理体制への配慮
当社は、クラウドやAIを活用しサービスを提供しています。これらのサービスは特性上、サイバー攻撃やプライバシー侵害に関する脅威への対策が重要であると認識しております。
サステナビリティ経営を推進するため、当社は、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証及びプライバシーマーク認証を取得し、各種情報の管理体制を整備するとともに、情報管理に関する社内規則等の整備や情報セキュリティ研修を定期的に実施しております。
昨今における外部からの不正アクセス、システム運用における人的過失、従業員の故意等による機密情報や個人情報の漏洩、消失、改竄又は不正利用等の、組織を取り巻くセキュリティリスクの拡大に対応すべく、外部専門家の助言により知見を深めるなど、常に情報管理体制のアップデートを行ってまいります。
当社は、サステナビリティに関するリスクを含めた全社的な視点でのリスクマネジメントについて、取締役会の直轄組織としてリスク・コンプライアンス委員会を設置し、リスクマネジメントに向けた具体的なアクションプランの検討や、リスク発生時に迅速に対応を行う体制を整備しています。優先的に対応すべきリスクの特定に関しては、当社に与える財務的影響、当社の事業活動が社会・環境に与える影響及び発生可能性を踏まえて行われ、当委員会を通じたリスク対応状況の内容は取締役会へ報告されます。
当社におけるリスク管理の詳細については、「
前述の戦略に基づく人材育成の方針及び環境の整備に沿った当社の取り組みに関する指標と実績は以下の通りです。なお、本報告書提出日現在において、当該指標についての目標は設定しておりません。
※ 女性の育休取得率の「―」については、女性の対象者がいないため算出できないことを示しております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。
当社は、これらリスク要因を認識した上で、その発生自体の回避、あるいは発生した場合の対応に努める方針でありますが、これらはすべてのリスクを網羅したものではなく、予見しがたいリスク要因も存在するため、投資判断については、本項以外の記載内容もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
1.事業環境に関するリスク
2.事業運営に関するリスク
3.その他
(注1)IaaS
Infrastructure as a Serviceの略で、仮想サーバやストレージなどの「インフラ」をインターネット経由で提供します。
(注2)PaaS
Platform as a Serviceの略で、アプリケーションの開発・実行環境などの「プラットフォーム」をインターネット経由で提供します。
当社の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
① 財政状態の状況
(資産)
流動資産は1,217,418千円となり、前事業年度末に比べ95,602千円増加しました。これは主に、現金及び預金が71,586千円減少した一方で、売掛金が55,922千円、長期開発案件の進捗により契約資産が58,524千円、仕掛品が27,222千円増加したことによるものであります。
固定資産は220,502千円となり、前事業年度末に比べ109,935千円増加しました。これは主に、本社オフィスの拡張及びサテライトオフィスの開設等により建物(純額)が55,429千円増加したことによるものであります。
(負債)
流動負債は442,185千円となり、前事業年度末に比べ63,765千円増加しました。これは主に買掛金が49,730千円増加したことによるものであります。
固定負債は28,642千円となり、前事業年度末に比べ26,286千円減少しました。これは主に長期借入金が40,016千円減少したことによるものであります。
(純資産)
純資産は967,092千円となり、前事業年度末に比べ168,058千円増加しました。これは主に繰越利益剰余金が154,986千円増加したことによるものであります。
② 経営成績の状況
当事業年度(自2023年7月1日至2024年6月30日)における我が国の経済は、急激な円安進行および東欧や中東における紛争の影響による資源価格の高騰に加え、欧米先進諸国を中心としたインフレの継続と金融引き締め等により、景気動向は緩やかに持ち直しつつも先行き不透明な状況で推移してきました。
このような経済環境の中、当社を取り巻く国内IT市場においては、従前からの生産性向上や競争力強化を目的としたDXの需要に加え、生成AIの活用可能性に対する企業の需要及び社会的関心が高まっており、テクノロジーの活用による新たな価値創造に向けたデジタル化の流れがより力強いものとなっております。
当社の事業においては、旺盛なDX需要を受け、クラウドインテグレーションサービスにおけるクラウドインフラ構築の取引が拡大していること等を背景に、当事業年度において、過去最高の売上高及び利益を実現しております。また、ChatGPTを活用した当社プロダクトの機能向上、クライアントが持つデータを基にしたオリジナルの生成AIアプリケーションの開発事例など、今後拡大が見込まれる生成AI技術の事業活用を迅速に開始しております。
これらの結果、当事業年度の業績は、売上高は1,798,412千円(前期比17.4%増)、売上総利益は666,343千円(前期比26.5%増)、営業利益は207,117千円(前期比28.9%増)、経常利益は211,483千円(前期比42.6%増)、当期純利益は154,986千円(前期比52.2%増)となりました。
なお、当社はDX事業の単一セグメントのため、セグメントごとの記載はしておりませんが、サービス別の業績の概要は以下の通りであります。
① クラウドインテグレーション
AWSによるサーバインフラの構築・運用から、AWSのマネージドサービスを活かしたシステム開発を行う事業です。クラウドインテグレーションは、クラウドネイティブインテグレーション、リセール、MSPの3つのサービスで構成されており、クラウドインテグレーション全体の売上高は1,304,993千円(前期比12.6%増)となりました。
各サービスの概況は以下の通りです。
①-1 クラウドネイティブインテグレーション
当社が長年培ってきたソフトウェア開発力に、AWSのマネージドサービスを活かした開発環境を掛け合わせることで、信頼性と開発効率を両立したシステム開発を提供しております。
既存案件の追加開発による拡大に加え、クラウド需要の加速に伴い新規契約も堅調に増加した結果、売上高は828,128千円(前期比34.5%増)となりました。
①-2 リセール
AWSの専門的な知識と、様々な開発経験及び知見に基づく提案力を掛け合わせ、クライアントニーズに細かく対応したクラウド環境を提供しております。
当事業年度においては、急速な円安進行に伴い、エンドユーザーが負担するAWS利用料が連動して増加したため、主に大口顧客におけるAWSのボリュームを抑制する調整が入った結果、売上高は335,843千円(前期比18.3%減)となりました。
①-3 MSP
クラウド技術と当社が独自に開発した死活監視ツールや運用監視ツールを組み合わせることで、安定したインフラ運用を効率的に実現するサービスを提供しております。
MSPは、納品するシステム規模が拡大したことに伴う単価向上の趨勢を踏まえた結果、売上高は141,021千円(前期比6.8%増)となりました。
② データインテグレーション
AIやIoTなどの先進技術を駆使してデータの収集や解析を高度に行い、さらにクラウド技術も組み合わせることで、様々なクライアントの業務効率化や業務付加価値の向上をトータルでサポートしております。
IoTシステム開発やAI/ビッグデータ解析への需要の高まりを背景に、取引数が順調に拡大した結果、売上高は373,951千円(前期比35.2%増)となりました。
③ その他(自社プロダクト等)
クライアントの要望に合わせて開発したシステムから、汎用性の高いものをサービス化して提供しております。現在は、360度評価特化型人事評価サービスツールである「360(さんろくまる)」、主に学校や保育園向けの連絡網サービスである「sigfy」を展開しております。
案件大型化による顧客単価の伸長及び顧客数の増加などの結果、売上高は119,466千円(前期比23.1%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度から71,586千円減少し、776,362千円となりました。当事業年度末における各キャッシュ・フローの状況と、その主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は56,675千円(前年同期は115,499千円の獲得)となりました。
これは、クラウドネイティブインテグレーションサービスの売上規模拡大に伴う売上債権及び契約資産の増加額114,447千円、法人税等の支払額76,750千円等による減少があった一方で、売上規模拡大による税引前当期純利益211,483千円、仕入債務の増加額49,730千円等による増加があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は104,672千円(前年同期は10,776千円の支出)となりました。
これは、本社オフィスの拡張及びサテライトオフィスの開設等に伴う有形固定資産の取得による支出63,947千円、AI教習所株式会社への出資に伴う投資有価証券の取得による支出21,000千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は23,590千円(前年同期は352,010千円の獲得)となりました。
これは、長期借入金の返済による支出36,663千円等があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社の事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b. 受注実績
当社の事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c. 販売実績
当事業年度における販売実績をサービス区分別に示すと、次の通りであります。なお、当社は、DX事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は以下の通りであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、採用した会計方針及びその運用方法並びに見積りの評価については、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当事業年度においては、DX市場が拡大している中、お客様のDX化をともに考えるコンサルティング、システムの設計、開発、運用までの一貫したソリューションを行うことにより、売上高を順調に伸ばすことができました。特に、クラウド需要により大手企業との大・中規模契約の継続等により売上が増加し、売上高は1,798,412千円(前期比17.4%増)となりました。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度における売上原価は、エンジニアの採用加速に伴う人件費の増加、及び、クラウド使用拡大に伴うAWSクラウド利用料の増加により、1,132,068千円(前期比12.6%増)となりました。以上の結果、売上総利益は666,343千円(前期比26.5%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度における販売費及び一般管理費は、事業拡大に伴う体制強化にかかる費用等の増加により、459,226千円(前期比25.5%増)となりました。以上の結果、営業利益は207,117千円(前期比28.9%増)となりました。
(営業外収益・営業外費用、経常利益)
当事業年度の営業外収益は、補助金収入等により、4,992千円(前期比322.4%増)となりました。営業外費用については、支払利息等により、626千円(前期比95.4%減)となりました。以上の結果、経常利益は211,483千円(前期比42.6%増)となりました。
(特別利益・特別損失、当期純利益)
当事業年度は特別利益、特別損失は発生しておりません。また、当事業年度の法人税等合計は56,496千円(前期比21.6%増)となりました。以上の結果、当期純利益は154,986千円(前期比52.2%増)となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。当社の資金需要は、事業規模拡大に向けた、主に人件費や採用費などの投資資金であります。財政状態等を勘案しながら必要に応じて金融機関からの借入による資金調達を行いますが、翌年度における借入計画はありません。
なお、当事業年度末における有利子負債(借入金)残高は43,349千円であり、現金及び現金同等物の残高は776,362千円であります。
当事業年度の研究開発費の総額は、