第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社は設立時に「便利で安全なネットワーク社会を創造する」というビジョンを掲げております。セキュリティと利便性はトレードオフであり、便利で安全に使うことは非常に難しいですが、「便利でありながら安全を担保できるようなネットワーク社会の創造に貢献しよう」という決意を込めております。

 

(2)経営戦略等

事業戦略の第一は、多様なサービスラインナップ※を提供することです。セキュリティ事故対応からコンサルティング、脆弱性診断、24時間365日の監視運用まで、多様なサービスラインナップを提供できるサービスベンダーは数も少なく、しかも監査資格(当社はPCI DSSというセキュリティ監査資格を保有しています)を持った企業でのサービス提供はほとんどありません。監査資格を保有しつつ、多様なサービスラインナップを提供することが第一の戦略となります。

※多様なサービスラインナップとは、技術ソリューション(情報セキュリティ対策システム等)に加え、セキュリティに対する社員意識を向上させ、万一の時にはインターネットを切断する、という高度な経営判断ができるような「組織防衛体制」を顧客企業が構築できるためのサービスのことを指しております。

 

事業戦略の第二は、独立系※であることを生かしたサービス展開を図ることです。IT関連機器メーカ等の系列会社は系列の製品を使用する必要があり事業に制約を受けますが、当社は他社から制約を受けない独立系であることから、日々新しく出てくる米国企業などの新製品をどれも取り扱うことができます。今や、セキュリティサービスはメーカ系、総研系、SIer系などの大手資本が参入していますが、いずれも大企業をバックにした資本構成の中で、当社は稀有な存在であり、独立系を維持することが非常に重要な戦略であると考えています。

独立系である強みを前面に打ち出して、様々な顧客に対して、客観的なコンサルとその時点で最適と思われるサービスを提供していくことが第二の戦略となります。

※情報セキュリティサービスを提供する会社は、メーカ系、総研系、SIer系などの大手資本が参入した系列会社とそれ以外の会社に大きく分けられ、系列に属さない会社を独立系と呼んでおります。当社は、独立系のカテゴリーに属していると認識しております。

 

事業戦略の第三は、スキルを持った人員によるサービスを徹底することです。企業が情報セキュリティ対策デバイス(機器・装置)の効果をきちんと得ようと思うと、しかるべきスキルを持ったエンジニアを配置し、24時間365日で監視・運用することが必要になります。しかしながら通常の企業では、そのような人員はもとより、そもそもIT人員が不足している状況です。そのような状況でデバイスを導入しても、当初狙った効果を得ることはできないと考えられます。当社のスキルを持った人員がお客様に代わってデバイスを運用したり、サービスそのものをクラウド化して提供したりすることなどを徹底することが、当社の第三の戦略となります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社の目標とする経営指標としては、収益性の向上に重点をおき、売上高営業利益率の向上を掲げております。

 

(4)経営環境

テレワークの増加に伴うWeb会議システムのセキュリティ懸念や、テレワーク終了により社内に持ち込まれる端末のウイルス感染等による情報漏えい事故懸念、大規模製造業や通信事業者に対するサイバー攻撃など、深刻な被害につながる攻撃が増大する一方であります。このような背景から、情報セキュリティ市場は引き続き拡大傾向にあり、当社のサービス需要も継続して増加しました。今後も一人当たりの生産性向上を追求し、利益率の向上に努めております。更に全社員の1日の標準勤務時間を6.5時間とし、社員の満足度向上を進めてまいりました。現在は更に、テレワークも加わった勤務形態の変更に伴う労務管理の強化を進めております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

昨今では、度重なる情報漏えい事故により、顧客企業における危機意識は強くなってきたと言えます。しかし、そのような危機意識は未だ大企業の域に留まっており、今後は中小企業にもその意識が高まることが予想されます。そのような環境の中、当社では以下の点を課題ととらえ、より一層の企業価値向上を目指してまいります。

 

 ①サービス品質の向上

当社が提供するサービスにおいて障害等が発生した場合には、サービス利用顧客の事業への影響はもとより、当社のレピュテーションが低下し、受注活動を鈍化させるとともに、既存顧客の解約リスクも発生します。マネージドサービスにおけるサービス提供開始前の検証実施の強化徹底、脆弱性診断サービスにおける担当者以外の技術者による複数回によるチェックなど、障害等が発生しないための体制構築を今後も継続してまいります。

 

 ②新サービスの開発

情報セキュリティに対する脅威は日進月歩の状況です。今日の対策が将来の対策になり得ない、と言っても過言ではなく、関連して顧客のニーズも多様化してきております。顧客がセキュリティサービスを手軽に利用できるクラウドモデルでの提供や、新たな脅威に対するサービスの開発等に努め、情報セキュリティサービス市場における差別化を進めてまいります。また、情報セキュリティ強化に対応したサービスの提供も必要であり、既に取り組んでいるデジタルフォレンジックやPCI DSS準拠支援サービス等のコンサルティングサービスにもより一層、注力してまいります。加えて、情報漏えい事故に対する緊急対応サービスについても、態勢拡大を継続しております。

 

 ③ストック型サービスにおける契約解除防止

当社が展開する継続サービスにおける顧客の契約解除は、当社の安定的な業績基盤を失い、業績変動に対する影響を増加させるものであるため、その対処として、定期訪問による顧客満足度の調査や新サービスの案内、顧客キーマンとのコミュニケーション強化等、組織をあげての既存顧客フォロー体制を構築し、解約リスクの早期察知と防止を図ってまいります。

 

 ④人材の確保と育成

当社のサービスを安定的に継続提供し、更に進化させていくにあたり、人材の確保と育成は重要であります。当社は、積極的な採用活動を行うとともに、社内人材に対して、組織全体でフォローアップできる体制を整備することで、全体のレベルアップを図ってまいります。

 

 ⑤ガバナンスに関する課題

当社では、今後内部統制システムの整備を推し進めることにより、企業価値の向上を目指した経営の透明性、健全性及び遵法性の確保、コンプライアンス体制の整備及び迅速かつ公平な経営情報の開示を通じて、法令遵守及び社会的倫理規範尊重に対する役員及び従業員の意識を強化し、当社のコーポレート・ガバナンス体制をより一層整備してまいります。

 

    ⑥中期的な事業経営戦略

当社といたしましては、セキュリティ対策が経営における重要事項であるという認識が広がっている現状を鑑み、以下の3つの柱を掲げ、より多くの顧客のニーズに応えてまいる所存です。

1.既存事業の継続的拡大および利益率の向上

2.成長のための人的資本への積極的投資

3.新規事業への参入と収益化

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社は、「便利で安全なネットワーク社会を創造する」というビジョンのもと、ステークホルダーとのコミュニケーションによって、当社の果たすべき社会的責任を把握し、事業を通じて社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ(持続可能性)を巡る課題を解決することが、中長期的な企業価値向上につながると認識し、その対応に努めております。また、その実現に向けては、あらゆるステークホルダーとのエンゲージメントが重要であり、持続的な成長のためには、様々な経験・技能・属性などの視点や価値観が存在する必要があることを認識し、公正かつ透明性の高い経営の実現、社内における外国人、女性、中途採用者等の活躍促進を含む多様性の確保に努めております。

 

(2)サステナビリティ全般に関するガバナンスおよびリスク管理

 法令・定款及び当社関連規程の定めるところにより、経営戦略その他当社の重要な意思決定及び業務執行の監督を行い、株主をはじめとする様々なステークホルダーに対する責任の観点から、取締役会を持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に責任を負うものとして、毎月1回開催しております。また、事業経営の迅速で柔軟な対応を可能にするため、本部長以上の管理職、業務執行取締役及び常勤監査役で構成される経営会議を原則月2回実施しております。さらに監査役会を設置し、業務執行に関する監視、コンプライアンスや社内規程の遵守状況、業務活動の適正性、有効性について確認し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制が確立できているかについて監督しております。

 詳細については、コーポレートガバナンスの概要をご参照ください。

 

(3)人的資本に関する戦略

 成長戦略実現のため、従来以上に人的資本への積極的投資を行い、サービス品質と生産性を向上させ、一社でも多くのお客様の期待に応え、会社と従業員がともに成長していくことを目指して、さまざまな取り組みを実施しております。

 

 経営戦略と連動した人材戦略では、「Vision 2030」実現のための経営戦略「Action 2024」の方針に沿った人材戦略を立案、本社研修機能を東北セキュリティ診断センターに移転し、研修範囲の拡大・研修期間の長期化を開始いたしました。また、社員のキャリア形成のために、2019年より1日の勤務時間を1時間短縮、6.5時間の勤務とし、1時間を社員の未来のために使用する「みらい時間」として還元しております。資格取得についても奨励し、学習時間の確保や試験費用の補助、報奨金制度等を導入しております。その結果、当期における資格手当の年間支払総額は12,853千円であり、前年比115.7%となっております。

 

 さらに、従業員に対して自社の株式を給付するインセンティブプランである株式給付信託(J-ESOP)を導入いたしました。本制度の導入により、従業員は当社の企業価値向上と連動した資産形成が可能となり、キャリア形成のための安定した環境を得ることができます。また、経営ビジョンの実現に向けて、その成果に応じた報酬の一つとすることで、従業員のさらなるチャレンジと目標達成に向けたコミットメントを引き出すことが可能になると考えております。当社はセキュリティサービス事業者として、「人的資本の拡充」こそが価値創造の源泉であると捉え、人への投資を通じて持続的な企業価値の向上を目指しております。

 

 その他、持続的な成長のためには、様々な経験・技能・属性などの視点や価値観が存在する必要があることを認識し、社内における外国人、女性、中途採用者等の活躍促進を含む多様性の確保を推進し、2022年1月から2025年3月末までの3ヶ年に渡る行動計画を作成しております。

 

(4)指標及び目標

 当社では、(3)人的資本に関する戦略において記載したとおり、女性労働者比率について、業界平均である23.3%を目標としております。2025年3月末までの3ヶ年で、採用人数における女性比率を25%以上にすることで、この目標の達成を目指しております。2023年6月末日現在での女性採用比率は昨年の12.1%から5ポイント上昇した17.2%となっています。女性管理職比率は業界平均値の2倍となっており、女性活躍推進企業としてえるぼし2段階目の認定も受けております。

 加えて、子供の看護のための休暇制度および男性育児休業制度の社内認知度向上のために、管理職に対し、部下の不妊治療、育児・介護休暇取得に関する周知を行い、利用しやすい環境の整備に努めております。

 人材採用と育成に関しては、Action 2024において掲げる通り、5年で60名の新卒採用を目指しており、2024年4月には新卒7名を採用し、かつ、研修対象を全社の新卒・第二新卒の社員に拡大、初年度は15名の研修を実施しております。さらに、最先端の技術で未来ある若者への人材育成に貢献するため、東京都立産業技術高等専門学校との先端ICT人材育成に関する産学連携協定を締結いたしました。また、2023年には秋田におけるデジタル人材(情報セキュリティ分野)の育成に関する連携協定も締結、当社の東北セキュリティセンター(秋田)において2023年から2024年の2年間で、14名の人材を育成しております。

 

                                 2024年6月30日現在

指標

目標

実績

新卒採用

2030年まで60

2024年 7

女性労働者比率

23.3(業界平均)

19.9

採用比率における女性の割合

25

17.2

管理職に占める女性労働者の割合

23.3

18.8

全労働者における外国籍比率

9.8

 

 

3【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 低価格化の進展

情報セキュリティ市場の販売価格は、ここ数年間で低下しております。競合他社との兼ね合いや顧客要請によるものであり、技術者の生産性の向上やクラウドサービス化を推進して技術者に依存しないサービスの開発等、低価格でも利益の確保が可能な対応を進めております。しかし、それらの対応が奏功せず、採算の確保が出来なかった場合には、今後の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 技術革新への対応に関するリスク

情報を窃取するための攻撃は日々新しい技術により考え出され、セキュリティ業界ではそれらへの対策としての防御サービスを絶えず考え実行しております。昨今では、標的型メール攻撃と呼ばれる攻撃手法やランサムウエアなどが出現してきましたが、それらの防御の為の新しいサービスを都度考案したり、最新技術を当社のサービスに取り入れ、より良い品質提供に努めております。ただし、これらの最新技術への対応が遅れ、他社に大きく先行された場合には、当社の経営成績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(3) 当社が提供する製品のバグや欠陥の発生によるリスク

当社が提供するセキュリティ機器マネージドサービスやセキュアメールサービスにおいて利用しているプラットフォームは、海外製品を利用しております。予め十分な検証やテストを実施した後サービス提供を行っておりますが、サービス提供開始後に重大なバグや欠陥が発生する可能性も有り、そのバグや欠陥が原因で顧客のサービスに著しい損害を与えた場合、契約解除に伴う売上の減少等により当社の経営成績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(4) 人材の確保・育成に関するリスク

当社のサービスは技術者の役務提供サービスによって行われており、今後の企業成長には人材の確保・育成が不可欠の要素となっております。当社では、中途採用を中心に即戦力として活用できる技術経験者を採用し、OJTによる実践を通じて社員の育成に注力しておりますが、業界ではITエンジニアが不足しており、中でもセキュリティのノウハウを持ったエンジニアのニーズは高く、その確保は容易ではありません。もし十分な人材の確保・育成ができない場合には今後の中長期的な事業計画に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 人材の流出に関するリスク

当社技術者のノウハウは経営の重要資源であります。従って、技術者の流出はサービス継続のリスクであります。日々のコミュニケーション強化の一層の充実に加えて、業績連動型の一時金支給、個人目標の達成度合いを考慮した年俸改定等、競合他社との比較で遜色のない処遇を設計しておりますが、人材が流出した場合には事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 当社情報セキュリティに関するリスク

当社のサービスでは顧客の重要な情報を入手します。これらの顧客情報の漏洩は事業展開において大きなリスクであります。社内教育の実践、各種データのアクセス権限による制約、書面情報の施錠管理、オフィスの入退室管理等、対策を講じて実践しておりますが、顧客情報の漏洩が発生した場合、事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 為替相場の変動について

韓国支店の取引について、為替相場の変動が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該取引の増加量に応じて、各種金融機関から更なる情報収集および相談等を実施してまいります。

 

(8) セキュリティ事業に特化していることによる影響について

当社は、セキュリティ事業に特化したサービス提供をしております。今後、経済環境の悪化その他の要因により、セキュリティ事業の需要が低迷した場合には、当社の経営成績や財務状況に大きな影響を与える可能性があります。

 

(9) 天災、災害、テロ活動などの発生や停電による影響

地震や天災といった災害、国内におけるテロ活動などの予期せぬ事態により、当社の業績や事業活動が影響を受ける可能性があります。特に重要なデータについては、安全と考えられるデータセンターで保管しております。

ただし万一、全国的、地域的な停電や入居しているビルやデータセンターの事情によって電力供給が十分に得られなかった場合、当社の事業活動とサービスの提供が停止し、当社の経営成績や財務状況に大きな影響を与える可能性があります。

 

(10)四半期末月の業績偏重傾向について

当社の収益は、顧客のシステム投資等も含めた月ごとの予算配分等に影響を受けており、各四半期の末月である9月、12月、3月、6月に偏る傾向にあります。

当社では繁忙期の業務量を勘案して労働力を確保しているため、需要が低調な時期には、一定の固定費が見込まれる中で売上が低水準となり、一時的に損益が悪化する可能性があります。また、当社の決算月である6月に計上を予定していた売上が検収遅延等の理由により月ズレした場合等には、当社の経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(11)ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について

当社では、取締役、執行役員、監査役、従業員に対するインセンティブを目的として、新株予約権を用いたストック・オプション制度を採用しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。

なお、当事業年度末現在における新株予約権による潜在株式数は73,000株、発行済株式総数は4,571,574株となっており、希薄化率は1.59%になります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態の状況

(資産)

当事業年度における流動資産は3,034,035千円となり、前事業年度末に比べ547,104千円増加いたしました。その主な内容は、現金及び預金が564,590千円増加したことなどによるものであります。

固定資産は1,093,772千円となり、前事業年度末に比べ12,865千円増加いたしました。その主な内容は、有形固定資産のリース資産が71,407千円減少した一方で、投資有価証券が120,000千円増加したことなどによるものであります。

この結果、総資産は4,127,808千円となり、前事業年度末に比べ559,969千円増加いたしました。

(負債)

当事業年度における流動負債は1,683,907千円となり、前事業年度末に比べ143,451千円増加いたしました。その主な内容は、未払法人税等が92,801千円、未払消費税等が49,283千円それぞれ増加したことなどによるものであります。

固定負債は378,594千円となり、前事業年度末に比べ21,523千円減少いたしました。その主な内容は、長期借入金が43,289千円増加した一方で、長期リース債務が81,462千円減少したことなどによるものであります。

この結果、負債合計は2,061,691千円となり、前事業年度末に比べ121,928千円増加いたしました。

(純資産)

当事業年度における純資産合計は2,066,116千円となり、前事業年度末に比べ438,041千円増加いたしました。その主な内容は、当期純利益455,530千円を計上したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は50.1%(前事業年度末は45.6%)となりました。

 

②経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、コロナ禍からの経済活動の正常化が進む一方で、国際情勢や地政学リスクの高まりは長期化しており、為替レートの急速な変動や物価上昇など、依然として先行きの不透明な状況が続いております。

このような環境下においても、企業や官公庁では、デジタル化やクラウド基盤の活用、生成AIの登場などに伴い、DX(デジタルトランスフォーメーション)がさらに拡大しております。一方、サイバー犯罪は更に多様化・高度化しており、情報セキュリティ市場は引き続き拡大傾向を示しております。

当社においては、身代金要求型ウイルス(ランサムウェア)の増加など、主にサプライチェーンに向けたセキュリティ事故が増加していることを受け、その対策整備の支援事業を拡大しております。また、地方公共団体向けの情報セキュリティに関するサービスも提供を開始するなど、いかなる業種においても、多様化・高度化するサイバー犯罪から企業を守ることが当社の責務であると考え、事業を展開しております。

この結果、当事業年度における業績は、売上高6,457,471千円(前期比9.4%増)、営業利益689,206千円(前期比 29.6%増)、経常利益694,289千円(前期比31.4%増)、当期純利益455,530千円(前期比9.4%増)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前事業年度末に比べ564,590千円増加し、1,920,742千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において営業活動の結果得られた資金は895,052千円(前期は493,455千円の収入)となりました。その主な内容は、税引前当期純利益692,011千円や減価償却費215,951千円の計上などによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において投資活動の結果使用した資金は225,243千円(前期は86,016千円の支出)となりました。その主な内容は、投資有価証券の取得による支出120,000千円及び固定資産の取得による支出102,624千円があったことなどによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において財務活動の結果使用した資金は116,311千円(前期は308,199千円の支出)となりました。その主な内容は、ファイナンス・リース債務の返済による支出130,146千円があったことなどによるものであります。

 

④資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の資金需要は経常運転資金や設備投資を目的としたものであります。

当社は、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資等の中長期の資金需要が生じた場合には、金融機関からの長期借入金を基本としております。

 

⑤生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

当事業年度の受注実績を示すと、次のとおりであります。

サービス区分別の名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

セキュリティ監査・

コンサルティングサービス

1,787,260

121.82%

587,827

117.04%

脆弱性診断サービス

1,755,504

97.36%

298,825

96.51%

情報漏えいIT対策サービス

3,056,466

101.84%

1,922,326

103.61%

合計

6,599,231

105.23%

2,808,979

105.31%

 

c.販売実績

当事業年度の販売実績を示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

サービス区分別の名称

当事業年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

前年同期比(%)

セキュリティ監査・

コンサルティングサービス

1,701,693

125.11

脆弱性診断サービス

1,766,314

103.54

情報漏えいIT対策サービス

2,989,463

105.33

合計

6,457,471

109.37

 (注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は総販売実績の100分の10未満であるため記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき、作成されております。この財務諸表の作成に当たりまして、採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しているとおりであります。

 

②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の分析

(売上高)

当事業年度の売上高は6,457,471千円となり、前事業年度と比較して553,043千円の増加となりました。これは主に、セキュリティ監査・コンサルティングサービスが大きく伸びたことによるものであります。

(売上原価、売上総利益)

当事業年度の売上原価は4,387,719千円となり、前事業年度と比較して263,136千円の増加となりました。これは主に、売上の増加に伴う外注・仕入の増加等によるものであります。

この結果、売上総利益は2,069,751千円(前期比16.3%増)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

販売費及び一般管理費は1,380,544千円となり、前事業年度と比較して132,612千円の増加となりました。これは主に、事業拡大に伴う業務委託費用の増加等によるものであります。

この結果、営業利益は689,206千円(前期比29.6%増)となりました。

(営業外損益、経常利益)

営業外収益は11,492千円となり、前事業年度と比較して5,198千円の増加となりました。これは主に、為替レートの変動に伴い為替差益が増加したこと等によるものであります。

営業外費用は6,409千円となり、前事業年度と比較して3,469千円の減少となりました。これは主に、支払利息が減少したこと等によるものであります。

この結果、経常利益は694,289千円(前期比31.4%増)となりました。

(特別損益、当期純利益)

特別損失は2,278千円となりました。これは、固定資産除却損が発生したことによるものであります。また、法人税等236,480千円を計上しております。

この結果、当期純利益は455,530千円(前期比9.4%増)となりました。

 

b.財政状態の分析

当事業年度の財政状態の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

c.キャッシュ・フローの分析

当事業年度の財政状態の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

d.経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある事項

当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「第2 事業の状況  3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

③経営者の問題認識と今後の方針について

当社が今後の業容を拡大し、より良いサービスを継続的に展開していくためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております各種課題に対応していくことが重要であると認識しております。それらの課題に対応するために、経営者は、市場動向をはじめとした外部環境の構造やその変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を確認し、その間の課題を認識すると同時に最適な解決策を推進していく方針であります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(資本・業務提携契約)

相手先の名称

契約締結日

契約内容

グローバルセキュリティエキスパート株式会社及び兼松エレクトロニクス株式会社

2023年11月10日

大手企業・準大手企業向けの総合的セキュリティベンダーとしての地位を確固たるものにするための資本業務提携

株式会社ティ・エム・エフ・アース

2024年4月15日

様々な動画セキュリティサービスを検討、開発して動画セキュリティの事業化を推進するための資本業務提携

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。