第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループの経営理念は、「私たちはいつもお客様≒患者様の近くにいて、『ふれ合い』を大切にします」としております。

具体的な経営基本方針として次の2項目を掲げております。

1.極めて感じの良い応対(挨拶)

2.整理・整頓

「極めて感じの良い応対(挨拶)」については、「相談できる、かかりつけ薬局」を目指す当社グループにとって最も重要であると考えております。集合教育としての接遇研修、タブレット端末を用いたオンライン研修、毎日の仕事の中で先輩社員が付きっきりで教育するブラザー&シスター制度、さらに、覆面調査での店舗評価等具体的に実践する仕組みをつくり推進しております。 

「整理・整頓」につきましては、私たちは「小売業は整理・整頓業」であると考えております。「整理」とは必要なものと不要なものを分けて、不要なものを捨てる(なくす)ことであり、「整頓」とは、必要なものを置き場所を決めてそのとおりに置くことです。このことは、店舗のクリーンという意味で、また、買いやすい売場づくりという意味で、さらには、不要なもの=死に筋のカットを中心とした商品管理の観点で非常に重要なことだと考えております。 また、調剤薬局においても、調剤ミスによる服用過誤リスクを低減する観点から、不要なものがなく整理・整頓された作業環境の徹底は非常に重要な責務であると考えております。

当社グループでは、常にこの経営基本方針を念頭に置きつつ日々の業務を積極的に推進していくよう徹底を図っております。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループでは、2023年5月期を初年度とする中期経営計画を2024年7月に修正し、2025年5月期において、売上高4,576億円、経常利益率4.9%、店舗数832店舗、調剤薬局併設率53.2%を目標として掲げております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

①出店戦略 

当社グループは、関東・東海地方を主要な出店エリアとして店舗展開を続けてまいります。

ドラッグストア事業部門では、当社グループの強みである郊外・住宅立地の小商圏フォーマットを中心とする他、駅前・商店街立地および都心等における買物不便地域の開発、ショッピングセンター内や駅ビル内およびスーパーマーケットとの協業等多様な出店形態の推進により、毎期40~50店舗を出店する計画をしております。

調剤薬局におきましても、健康サポート機能を有する地域のかかりつけ薬局としての役割を担うため、ドラッグストアへの併設を中心とした出店を継続し、地域医療との連携を推進してまいります。

 

②商品・店舗運営戦略

ますます激化する競争に勝ち残っていくために、顧客第一主義の実践を図ってまいります。

具体的には

イ.「極めて感じの良い応対」の更なるレベルアップ

ロ.「整理整頓」のできばえ評価の実施と個別フォロー

ハ.お客様のご意見、ご要望に対する真摯な対応

ニ.いつでも安心してご購入いただけるEDLP(エブリデイ・ロープライス)の推進

ホ.積極的な改装、棚割のリニューアル及び新規商品群の導入による品揃えの拡充

ヘ.かかりつけ薬局として、処方箋の一元管理と相談に対応できる体制の構築

ト.インターネット、特注サービス及び宅配サービスなど店舗機能を補完するサービスの拡充

を推進してまいります。

 

(4)経営環境

①市場環境

わが国経済において、経済活動の緩やかな回復が期待される一方、原材料価格・エネルギー価格の高騰や、物価上昇の継続及び実質賃金の伸び悩みによる消費マインドの低下等、依然として先行きは不透明な状況が続くと予想されます。

 

②顧客動向

わが国は、世界でも類を見ない急速な高齢化により医療費は増加の一途をたどっており、現在の医療体系を変革する必要性に迫られております。また、自然災害や新興感染症の流行等、生活インフラの必要性が再認識される傾向にあり、当社グループが運営するドラッグストア、調剤薬局およびスーパーマーケットが持つ機能に対する期待が高まってきていると考えております。

当社グループは、地域での総合ヘルスケアサポートに根ざした強固なドミナント形成によるエリア内でのシェアアップを引き続き推進し、これまで構築してきた小商圏における高来店頻度のビジネスモデルを土台に、世の中の変化に適応する施策を進めてまいります。

 

③競合他社の状況消

ドラッグストア業界におきましては、業界の垣根を越えたより一層の競争激化や出店競合、大型М&Aによる規模の拡大・再編の動きなどにより厳しい環境が続いております。

 

④その他

キャッシュレス化の推進に関しては、自社電子マネー機能付きポイントカード「おさいふHippo」の利用を促進し、お客様の利便性向上とともに金銭管理負担及び手数料コストの低減を図ってまいります。また、Eコマースの隆盛に対して、ドラッグストアの専門性としてのヘルスケア&ビューティケア商品の展開強化と、小商圏における利便性向上のため、生鮮も含めた食品の品揃えを拡充、そしてお客様とのふれ合いを大切にする経営理念に則した接遇強化を推進してまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

かかりつけ機能の強化

調剤併設型ドラッグストアの出店を継続しつつ、薬剤師の対人業務強化、近隣医療機関との連携等、かかりつけ機能の強化に取り組み、地域のお客様・患者様に選んでいただける店舗・薬局を目指してまいります。また、新型コロナウイルス感染拡大を契機としたライフスタイルの変化に加えて、2023年1月より運用が開始された電子処方箋により、オンライン診療・オンライン服薬指導等の非対面による医療サービスへのニーズは今後さらに高まる可能性があります。当社グループにおいても、医療の質と安全性を担保したうえでオンライン服薬指導及び電子処方箋へ対応できるよう応需体制を整備してまいります。

 

②消費行動変化への対応

物価上昇及び実質賃金の伸び悩みに伴う節約志向の高まりに対応し、EDLP施策の継続推進とプライベートブランドを含めた品揃え・商品提案に取り組むとともに、ワンストップ・ショートタイムショッピングのニーズに対応すべく、生鮮食品を始めとした食品の品揃えを充実させるなど小商圏における利便性向上に引き続き取り組んでまいります。

 

③ローコストオペレーションの徹底

EDLP施策を継続推進しつつ、店舗作業の見直しによる作業効率改善や、人員の適正配置及び人時コントロール等に取り組み、人件費をはじめとした経費抑制、ローコストオペレーションの徹底に取り組んでまいります。この他、エネルギー価格の高騰に対応し、可能な範囲での節電施策徹底や、太陽光発電設備導入店舗を拡大する等、店舗運営コストの低減に努めてまいります。

 

サステナビリティ経営の推進

サステナビリティ推進委員会における検討に基づき、既に開示している気候変動リスク及び機会の特定、Scope1、2におけるCO2排出量の算定に加え、売場面積あたりCO2排出量の削減目標を本年7月に策定し、TCFD提言に基づく各種情報開示を充実いたしました。また、女性活躍推進に向けて、店長・薬局長を含む役職者への女性登用についても、既に開示した登用実績を踏まえ、目標達成に向けて取り組みを進めております。

引き続き、お客様・患者様をはじめ多様なステークホルダーの皆様と協働しつつ、誠実かつ公正な事業活動を通して、環境・社会の両側面において取組みを進め、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現の両立を目指して参ります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

<サステナビリティ基本方針>

当社グループは、社是である「謙虚」の精神のもと、サステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置付け、誠実かつ公正な事業活動を通して「持続的な企業価値の向上」と「持続可能な社会の実現」の両立を目指しております。

1.地域の皆様の健康と生活を支えるライフラインとして、信頼・期待され、それに応えられる存在であり続けます。

2.地球環境を守るため、環境負荷の低減と循環型社会の形成に努めます。

3.社会から信頼される企業グループとして、誠実かつ公正な組織づくりに努め、人権尊重、ガバナンス・コンプライアンスの強化を推進します。

<重要課題(マテリアリティ)>

重要課題(マテリアリティ)

当社グループが目指す方向性

主な取り組み事例

地球環境に配慮した事業活動

・温室効果ガス排出量削減

・資源・エネルギーの効率改善

・3R視点での廃棄物削減

・ISO14001の全店認証取得継続
 …廃棄物削減、資源の効率的使用等

・空調、照明等のエネルギー効率改善

・配送効率改善による炭素排出量削減

・発注精度向上等によるフードロス削減

・物流センター、店舗屋上での太陽光パネル設置

お客様・患者様の健康

地域医療への貢献

・安心で安全な商品、サービスの提供

・地域住民の健康と生活を支えるライフライン、医療インフラとして地域医療へ貢献

・持続性の高い、地域に根差した出店を継続

・調剤併設による専門性強化とワンストップで必需品が揃う利便性の向上

・在宅医療、介護領域における地域医療への貢献

・健康相談会等、各種イベント開催

・閉店の少ない厳格な出店基準に基づく出店

・災害時協力協定、BCP策定

従業員を大切にする働きがいのある会社の実現

・働きやすく、働きがいのある職場環境

・ダイバーシティ&インクルージョンの推進

・人財の育成と活躍推進

・女性が働きやすい作業環境の整備

・ワークライフバランス視点を踏まえた定期的な個別面談の実施

・次世代育成支援の取り組み

・健康維持と健康増進の促進、検診率向上

・特例子会社における雇用創出

誠実かつ公正な事業活動の推進

・実効性のあるガバナンス体制の強化

・適切なリスクマネジメントの遂行

・公正取引及びお取引先様とのパートナーシップの推進

・社是、経営理念、行動規範に則った企業活動による企業モラルの維持向上

・監査等委員会、指名・報酬委員会設置

・コンプライアンス委員会設置・内部通報制度

・リスクマネジメント、情報セキュリティの強化

・社内研修と従業員教育

・適切な情報開示と積極的な対話

 

①ガバナンス

当社グループは、グループ全体のサステナビリティへの取り組みを推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しております。サステナビリティ推進委員会では、サステナビリティに関わる基本方針や優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定、各種取り組みの実行計画策定及び進捗確認を行っており、経営企画部が同委員会の事務局を担いグループ内関係各部署と連携しながら取り組んでおります。また、同委員会における審議・検討内容は定期的に取締役会に報告し、取締役会においては当該報告内容に関する管理・監督を行っております。

②リスク管理

当社グループは、サステナビリティ推進委員会においてグループ全体のサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別・評価し、その内容は必要に応じて適宜取締役会へ報告しております。また、コンプライアンス委員会においては、法令及び社会のルールや倫理を守りながら、上場企業グループとしての社会的責任を果たすという当社グループの「行動規範」をもとに、グループ各社の法令順守、その他コンプライアンス体制の整備・運用状況を定期的に討議・確認し、課題及びリスクの早期発見、早期改善を図っております。

 

<TCFD提言に基づく情報開示>

当社グループは、気候変動対策を重要な経営課題と認識しており、当社グループにおける4つの重要課題(マテリアリティ)の1つとして『地球環境に配慮した事業活動』を掲げております。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同をもとに「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目について積極的な情報開示に努めており、現時点での状況は以下の通りです。

①ガバナンス

当社グループでは、多岐にわたる気候関連リスク及び機会に適切に対応し、グループ全体のサステナビリティを推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しております。

サステナビリティ推進委員会では、気候変動対策を含むサステナビリティに関わる基本方針や各種取り組みの実行計画策定及び進捗確認を行っており、経営企画部が同委員会の事務局を担い関係各部と連携した上で取り組んでおります。また、同委員会における審議・検討内容は定期的に取締役会に報告し、取締役会においては当該報告内容に関する管理・監督を行っております。

②戦略

当社グループにおける気候変動リスク及び機会を下記の通り特定いたしました。

特定にあたっては、低炭素社会への「移行」に関するリスク及び機会、気候変動による「物理」的変化に関するリスク及び機会に選別し整理しております。

分類

リスク

機会

移行

政策規制

炭素税の導入

炭素税導入による支出増加

店舗での省エネ機器、太陽光パネルの設置による購入電力の削減

商品の原材料調達・生産コストの増加

フロン規制の強化

店舗のノンフロン設備等の導入によるコスト増

 

プラスチック規制の強化

代替原材料の調達コスト増加

 

市場

電気価格の高騰

電気価格高騰による支出増加

代替エネルギー導入による支出減

評判

消費者行動・好みの変化

環境配慮への遅れによるブランドイメージ低下・売上減少

環境配慮商品・サービスの開発によるブランドイメージ向上・売上増加

物理

急性

異常気象の激甚化

店舗休業、客数低下による売り上げ減少

防災・備蓄関連商品の売上増加

店舗被災による修繕支出増加

サプライチェーンの途絶による商品供給停止

慢性

平均気温の上昇

気温上昇に伴う空調関連の支出増加

代替商品の開発による売上増加

原材料の生産悪化による調達コスト増加

 

③リスク管理

当社グループでは、サステナビリティ推進委員会において上述した気候関連リスクを管理しております。また、当社中核子会社のクリエイトエス・ディーでは2001年に全店・事業所で認証取得を受けたISO14001(環境マネジメントシステム)を継続し、環境面に配慮した事業活動及びリスク管理に取り組んでおります。

 

④指標及び目標

当社グループでは、2030年度におけるCO2排出量削減目標を下記の通り設定しております。目標達成に向けて、店舗屋上への太陽光発電設備導入店舗の拡大や、省エネ機器・設備の導入等、取り組みを推進してまいります。詳細は当社HPをご参照ください。(https://www.createsdhd.co.jp/company/sustainability/tcfd/tabid/143/Default.aspx

(Scope1,2)CO2排出量の削減目票

達成年度

指標と目標

2030年度

売場面積当たり排出量を50%削減(2014年度比)

 

(Scope1,2)CO2排出量実績

 

2014年度

2023年度

CO2排出量[t-CO2]

46,129.19

76,393.65

総売場面積[坪]

91,678

165,323

CO2排出量/坪[t-CO2]

0.503

0.462

 

 

<人的資本に関する情報開示>

①人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社グループは、持続的な成長と企業価値向上の実現のため、ジェンダー、国籍、職歴、年齢などに拘らず、多様な視点や価値観を尊重することが重要と考え、経験・技能・経歴が異なる人材の採用を継続的に行い、それぞれの人材が長く活躍できる、働きやすく働きがいのある「ずっと働きたい会社」を目指し、職場環境の整備や能力開発のための研修・ジョブローテーションなどに取り組んでおります。

また当社グループは、「謙虚」の社是に基づき、常に相手(ステークホルダーの皆様)を主語に考え、行動し、社会に貢献し信頼されることにより、持続的に成長していくことができると考えております。ステークホルダーの一角を占める従業員に対しても、その人材=人的資本に対する投資が、離職防止による採用コスト低減など、中長期的にはローコスト経営に貢献するものと考え、環境整備に積極的に努めており、また店舗営業時間や販促施策の決定にあたっても、女性をはじめとする従業員の働きやすさの観点を重要な要素として検討のうえ実施しております。

当社グループの事業所が国内のみのため外国籍の従業員数は少ないものの、地域に貢献する総合ヘルスケアサポート企業を目指し「生活・健康・医療・介護」という女性顧客の多い領域で事業を行っていることから、当社グループは女性の中核人材への登用に積極的に取り組んでいるだけでなく、国籍や新卒者、中途採用者の区別なく中核人材への登用を進めております。

②人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

女性の中核人材への登用に関しましては、主要な子会社である株式会社クリエイトエス・ディーにおいては社員の47.7%を占める女性の多くが薬剤師・栄養士・登録販売者などの専門資格を有し、店舗・薬局の医薬品や化粧品の服薬指導、接客相談、商品管理等の基幹業務を担っていることから、出産・育児に関する制度的支援の充実などにより、同社の管理職に占める女性割合は19.3%となっております。個々の能力や実績を重視する登用方針の中、今後も制度面を含めた一層の環境整備に加え、社内外の研修や勉強会に管理職候補女性を積極的に参加させるなどの施策に取り組み、更なる女性の活躍や管理職への登用を進め、以下のような目標を設定しております。また当社グループでは、管理職として登用する上で国籍や採用時期によって特段の差が生じているとは認識していないため、中途採用者および外国籍の方の管理職登用の目標設定は行っておりません。

女性活躍推進に関する指標(株式会社クリエイトエス・ディー)

指標

目標達成年度

目標値

実績(当連結会計年度)

新任店長・薬局長への女性登用比率

2030年度

50以上

37.9

役職者に占める女性比率(店長・薬局長含む)

2030年度

30以上

19.3

 

 

 

3 【事業等のリスク】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。なお、将来に関する事項につきましては、不確実性を有しており、将来生じる結果と異なる可能性がありますので、記載しております事項に対する判断は、以下記載事項及び本項目以外の記載内容も合わせて慎重に行われる必要があります。

本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

 

(1)主要なリスク

①出店政策について

当社グループは2024年5月31日現在、ドラッグストア752店舗(うち調剤薬局併設380店舗)、調剤専門薬局38店舗、スーパーマーケット6店舗の合計796店舗を運営しております。最近の当社グループの業容拡大には以下のとおり、店舗数の拡大が大きく寄与しております。

出店にあたっては、ドミナントを形成しながら出店地域の拡大を図っております。ドラッグストア業界では、同業他社のみならず他の小売業との出店競合により、その環境は厳しさが増しております。また、出店是非の判断においては、投資回収期間や採算性を重視しておりますが、出店交渉遅延により、計画どおりの出店ができない場合には当社グループの業績見通しに影響を及ぼす可能性があります。

 

②薬剤師、医薬品登録販売者の確保について

「薬機法」の規定により、店舗で販売する医薬品の分類に基づき、薬剤師又は医薬品登録販売者の配置が義務付けられているほか、「薬剤師法」により薬剤師でない者が調剤業務を行ってはならないとされております。

業界全体におきまして、薬剤師の採用、確保及び医薬品登録販売者の育成が重要な課題とされておりますが、当社グループにおきましても今後の店舗数の拡大に際しましては薬剤師及び医薬品登録販売者の確保が重要であり、その確保の状況が出店計画に影響を及ぼす可能性があります。

 

③法的規制について

当社グループの主要な事業活動の継続には、「薬機法」による許可及びその他諸法令にもとづく所轄官公庁の許可・免許・登録等が必要です。将来、「薬機法」が改正された場合や、何らかの理由により許可・免許・登録等の取消し等があった場合には、当社グループの主要な事業活動に支障をきたすとともに、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④医薬品販売の規制緩和

これまで2009年6月より施行された改正旧薬事法では医薬品登録販売者制度が導入、2014年6月に施行された改正旧薬事法では一般用医薬品のインターネット販売が事実上解禁、2021年8月においては一般用医薬品の販売時間規制である2分の1ルールが撤廃されました。

このような販売自由化、規制緩和が今後ますます進展し、異業種との競争が激化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤調剤業務について

当社グループではドラッグストア併設店舗の出店強化を引き続き推進する方針であり、処方箋応需枚数は今後も増加していく計画となっております。

このような状況に対する環境整備として、当社調剤研修センターにおける薬剤師の調剤に対する知識及び技能の向上について引き続き取り組むとともに、全店において調剤業務監査システムを導入し、過誤を防止すべく万全の管理体制のもと、調剤業務を行っております。加えて、全店「薬剤師賠償責任保険」に加入し、万が一に備えております。

しかしながら、調剤薬の欠陥・調剤ミス等が発生し、将来訴訟や行政処分を受けた場合には、社会的信用を損なう事で当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥薬価基準及び調剤報酬の改定について

調剤業務による売上は、薬剤収入と調剤技術に係る収入との合計額で構成されております。これらは健康保険法に定められた公定価格である薬価基準及び調剤報酬の点数をもとに算出されております。薬価基準等の改定は今後も定期的に実施されていくため、改定の内容によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦個人情報の取扱いについて

当社グループは多岐にわたる個人情報を、顧客の信頼のもとに取り扱っております。「個人情報保護法」の趣旨に沿い、コンピュータシステムのセキュリティ強化と、顧客データの管理体制の確立に努めております。  

その機密保持には現在考えられる高度なシステムセキュリティ対策を取り、関連諸規程による従業員教育を継続的に実施するとともに、「個人情報漏えい保険」に加入し、万が一に備えております。 

しかしながら、外部要因による不可抗力のシステムトラブルや、人為的操作等により情報流失が発生した場合には、社会的な制裁を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧食品の安全性について

当社グループの店舗において、日配食品、生鮮食品等の食品を販売しております。安心・安全な食品を提供するため、鮮度管理、温度管理等に関するマニュアルの整備と適正な運用に努めております。しかし、食中毒や社会全般にわたる一般的な衛生問題等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨自然災害等について

当社グループの店舗及び施設を含む地域において、地震・台風等の自然災害が発生し、店舗等に物理的な損害が生じた場合、被害状況によっては販売活動・流通・仕入活動が困難となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩介護事業について

当社グループの介護事業は、公的介護保険法内のサービスが中心で「介護保険法」をはじめとする各種関連法令によって規制を受けております。今後、これら法令の見直しが当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、介護サービス中のトラブルなどによる訴訟を受けることがあった場合、社会的信用を損なうことで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪買収(M&A)等の投資について

当社グループは、既存ビジネスとのシナジーが生まれることを期待し、M&A(企業の合併・買収)を含む様々な新規事業を検討し、積極的な業容拡大を進めてまいります。事前の十分な投資分析・精査等の実施にかかわらず、当社グループが想定しなかった結果が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫減損会計について

当社グループにおいて、今後固定資産の減損会計に基づき減損損失を計上することになった場合に、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬地政学リスクについて

ウクライナ情勢等による地政学的リスクやそれに伴うエネルギー・原材料価格の高騰等が懸念され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2023年6月1日~2024年5月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の分類移行に伴う経済活動の正常化が進み、国内景気は緩やかな回復傾向となっております。一方、資源価格の高騰による継続的な物価上昇や、実質賃金の伸び悩みによる消費マインド低下など、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

ドラッグストア業界におきましては、人流回復、外出機会の増加に伴う化粧品需要の回復や、風邪及びインフルエンザの流行による医薬品需要の増加が見られた一方、マスクや抗原検査キットをはじめとした新型コロナウイルス感染対策商材の反動減や、継続的な物価上昇に伴う消費者の節約志向の高まり、診療報酬及び薬価改定による処方箋単価の低下、さらには業種・業態の垣根を超えた競合各社の出店や価格競争の激化、大手同士の業界再編など、当社グループを取り巻く環境は厳しさを増しております。

このような状況の中、当社グループは中期経営計画の達成に向けて、調剤併設型ドラッグストアを中心とした既存エリアのドミナント深耕を継続しつつ、「生活・予防・医療・介護」の各領域において地域に貢献する総合ヘルスケアサポートを推進しております。

<ドラッグストア事業>

ドラッグストア事業につきましては、資源価格の高騰による食品を中心とした継続的な物価上昇等により、消費者の節約志向および選別消費への意識が一段と高まりを見せる中、当社グループは、地域のお客様・患者様の健康と生活を支えるライフラインとして、いつ来てもお求めやすい価格で提供するEDLP(エブリデイ・ロープライス)施策を継続推進してまいりました。また、ワンストップ・ショートタイムショッピングの実現を目指し、調剤薬局の併設や、生鮮食品を始めとした食品の品揃え強化を推進し、小商圏における利便性及び専門性の向上に引き続き取り組んでまいりました。

当連結会計年度におきましては、マスクや抗原検査キット等の新型コロナウイルス感染対策商材の需要減の一方、総合感冒薬や化粧品関連の需要回復や、食品を中心とした価格訴求の強化が奏功したこと等により、既存店売上・客数は大きく伸長しました。調剤部門においては、診療報酬及び薬価改定による単価低下の影響があったものの、調剤併設店舗数の増加や、風邪、インフルエンザの流行による急性期処方の増加、コロナ5類移行による受診控えからの回復等により、処方箋応需枚数は堅調に推移しました。上記内容により売上・客数は好調に推移した一方、荒利率については前年を下回る結果となりましたが、増収効果による荒利額確保と、人件費をはじめとした販管費コントロールに取り組んだ結果、増収増益となりました。

ドラッグストアの新規出店につきましては、43店舗の出店を行いました。一方でスクラップ&ビルドにより1店舗、契約期間満了により5店舗、経営効率化の観点から2店舗の計8店舗閉鎖を行いました。調剤薬局につきましては、ドラッグストアへの併設調剤薬局を47店舗、医療モール併設の調剤専門薬局を1店舗開局しました。

<介護事業>

介護事業につきましては、高齢化が進む中、介護スタッフのもと安心・安全に生活したいという高齢者の方のために、美味しい食事が特徴の介護付有料老人ホームを2施設、またいつまでもご自宅で暮らしたいという方のために、リハビリを専門とする半日型のデイサービスセンター37施設を運営しております。有料老人ホーム、デイサービスとも、当社グループの特徴である接遇に力を入れ、ご利用者様の満足度向上及び稼働率の向上を図ってまいりました。

以上により、当連結会計年度末の当社グループの店舗数はドラッグストア752店舗、食品スーパー2店舗、ドラッグストア複合の生鮮食品専門店4店舗、調剤薬局は調剤専門薬局38店舗、ドラッグストアへの併設調剤薬局380店舗の合計418店舗、介護事業では介護付有料老人ホーム2施設、半日型デイサービスセンター37施設となりました。

これらの結果、当連結会計年度における業績は、売上高422,330百万円前年同期比10.9%増)、営業利益は20,227百万円前年同期比7.0%増)、経常利益は20,882百万円前年同期比7.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は13,691百万円前年同期比5.9%増)となりました。

 

資産合計は216,481百万円となり、前連結会計年度末に比べて21,540百万円増加いたしました。主な要因は、売掛金が2,118百万円、商品が3,518百万円、新店及び出店準備物件の増加等に伴い固定資産が13,983百万円増加したことなどによるものです。

負債合計は86,238百万円となり、前連結会計年度末に比べて7,706百万円増加いたしました。主な要因は、買掛金が5,872百万円、未払法人税等が57百万円、長期資産除去債務が346百万円増加したことなどによるものです。

純資産は130,243百万円となり、前連結会計年度末に比べて13,833百万円増加いたしました。主な要因は、配当金支払により3,413百万円減少、新株予約権の行使により資本剰余金が2,011百万円増加、自己株式が1,249百万円減少、親会社株主に帰属する当期純利益13,691百万円を計上したことなどによるものです。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は37,812百万円となり、前連結会計年度末に比べて686百万円増加いたしました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は21,034百万円前年同期比2,049百万円の収入増)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益19,352百万円、減価償却費4,995百万円、減損損失1,284百万円、法人税等の還付837百万円であり、支出の主な内訳は売上債権の増加2,118百万円、棚卸資産の増加3,578百万円及び法人税等の支払額が7,074百万円等の結果であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は20,207百万円前年同期比284百万円の支出減)となりました。これは主に出店に伴う有形固定資産の取得による支出15,772百万円、貸付けによる支出792百万円、出店仮勘定による支出3,960百万円等の結果であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は140百万円前年同期比2,893百万円の支出減)となりました。これは配当金の支払額3,413百万円、自己株式処分による収入3,250百万円等の結果であります。

 

(資本の財源及び資金の流動性)

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主に営業活動により得られた資金を新規出店に係る設備投資に充当しております。

 

③生産、受注及び販売の状況

a.売上実績

当連結会計年度の売上実績を商品部門別に示すと、次のとおりであります。

 

当連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日

商品部門の名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ドラッグストア事業

 

 

医薬品

111,686

106.8

 

OTC

61,169

100.1

 

調剤薬局

50,517

116.2

化粧品

47,768

107.3

食料品

176,791

116.5

日用雑貨品

62,070

108.9

その他

19,598

108.9

小 計

417,915

111.1

スーパーマーケット事業

2,078

74.9

介護事業

 

 

有料老人ホーム

701

101.7

デイサービス

1,467

105.9

小 計

2,169

104.5

顧客との契約から生じる収益

422,163

110.8

その他の収益(注)1

167

147.6

合 計

422,330

110.9

 

(注)1.その他の収益には、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)に基づく賃貸収入が含まれております。

 

b.地区別売上実績

当連結会計年度における売上実績を地区ごとに示すと、次のとおりであります。

 

前連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日

当連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

神奈川県

235,809

61.9

258,601

61.2

東京都

55,224

14.5

59,593

14.1

静岡県

41,903

11.0

45,988

10.9

千葉県

28,586

7.5

36,540

8.7

その他

19,439

5.1

21,605

5.1

合 計

380,963

100.0

422,330

100.0

 

 

 

c.仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

当連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日

商品部門の名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ドラッグストア事業

 

 

医薬品

66,467

108.1

 

OTC

35,376

98.9

 

調剤薬局

31,090

120.8

化粧品

30,699

107.5

食料品

153,637

117.1

日用雑貨品

45,807

110.7

その他

15,472

108.9

小 計

312,083

112.8

スーパーマーケット事業

1,560

75.0

介護事業

 

 

有料老人ホーム

デイサービス

小 計

顧客との契約から生じる収益に対する仕入

313,644

112.5

その他の収益に対応する仕入

合 計

313,644

112.5

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高

売上高は、マスク等の感染予防対策商品の反動減があった一方、新規出店による店舗数の増加や、生活必需品を中心としたEDLP施策が奏功したことに加え、調剤薬局売上は堅調に推移し、422,330百万円前年同期比10.9%増)となりました。

b.売上総利益

売上総利益は、EDLP施策が奏功したことによる増収効果や、調剤売上構成比の伸長による押上げ等により、110,187百万円前年同期比7.0%増)となりました。

c.販売費及び一般管理費

販売費及び一般管理費は、人件費をはじめとした販管費コントロールに取り組んだ結果、89,959百万円前年同期比7.0%増)となりました。

d.営業利益

上記の結果、営業利益は、20,227百万円前年同期比7.0%増)となりました。

e.経常利益

経常利益は、営業外収益により20,882百万円前年同期比7.5%増)となりました。

f.親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失の計上があったものの、13,691百万円前年同期比5.9%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは、持続的企業価値向上に向けた投資、株主への利益還元及び将来の更なる成長のための内部留保など総合的に最適なバランスを考え、財務の健全性維持と資本の効率的運用を基本としております。

これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で賄うことを基本とし、資金調達を行う場合には、経済情勢や金融環境を踏まえ、あらゆる選択肢の中から当社グループにとっての最良の方法で行いたいと考えております。

なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積もりに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(3)経営者の問題認識と今後の方針について

ドラッグストア業界におきましては、上位企業による積極的な出店や大型M&Aなどによる再編の動きに加え、インターネット販売を含めた業態の垣根を越えた競合激化、少子高齢化や商圏人口の減少などにより、更に厳しい経営環境になるものと予想されます。

このような状況のもと、当社グループは、経営戦略に沿った専門性・利便性・サービスの拡充と、出店による地域シェアの拡大に注力するとともに、生産性の向上によるオペレーション負担の軽減とローコスト化を進め、高い資本効率による持続的な成長と安定的かつ継続的な増配をベースとした配当水準を維持しながら企業価値を高めてまいります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。