第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

(1)経営の基本方針・経営戦略等

 当社は「テクノロジーとマーケティングの力で、住宅・不動産業界で働く“人“の力が最もうまく活かされる仕組みを創り上げたい」をミッションとしてクラウドサービス事業を営んでおります。当社は当該ミッションを達成するために、マーケティング・オートメーションツール(KASIKA)、SMS送信オプション、AI査定オプション等の関連オプションの開発及び改良を継続的に行っております。

 後述のとおり企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は多くの企業において経営課題として意識されているものの、不動産会社の営業活動は依然として架電、紙チラシの配布、表計算ソフトを使った管理が中心となっているものと当社では想定をしております。

 このような環境の中、当社は集客後に不動産会社が消費者に対して行う「追客」を自動化・効率化するサービスを提供する企業としてのポジションを確立することを目指しております。また、サービス開発にあたっては、一般的なオフィスワーカーの方をはじめとしてどんな職種の方でも親しみやすいUI(ユーザインターフェース)や高度なITスキルをもたない方でもシンプルで使いやすい操作性・機能性を追求することにより、幅広い職種の方々、小規模から大規模な不動産会社の方々にご利用いただけるサービスの展開を進めてまいります。具体的にはKASIKAのオプション機能の拡充、サービス付き高齢者住宅の提供会社やリフォーム等の不動産購入後の領域への提供等も注力してまいります。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社が提供するKASIKAは、料金を顧客の使用店舗数、ユーザ数等に応じて定期定額契約(サブスクリプション)として課金することで、継続的な収益を獲得することができるものであるため、MRR(注1)、有料契約社数(注2)及び単月解約率(年間平均)を指標として重視しております。

(注)1.Monthly Recurring Revenueの略語であります。2024年5月におけるMRRは87百万円となっております。

2.2024年5月末時点における当社のサービスにおける有料契約社数は1,093社となっております(1つの法人で複数のKASIKAアカウントを利用している場合でも1社としてカウントしております)。

 

(3)経営環境

 日本国内の経済環境は、生産年齢人口の減少に伴う労働力不足が問題視される一方で、政府主導による時間外労働時間の上限引き下げをはじめとした労働法規の改正等、働き方改革が推進される中、労働生産性の向上に向けた取組みへの期待が高まっているものと認識しております。さらには、2020年初めに感染拡大の影響が出始めた新型コロナウイルス感染症を契機としたテレワークの普及により、リモート環境における労働生産性の向上が以前にも増して重要視されており、企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は喫緊の経営課題として広く意識されているものと考えられ、このような傾向は新型コロナウイルス感染拡大にともなう生活様式の変化により中長期的に継続すると想定されます。

 当社では、「ソフトウェア」という市場の中に、「マーケティング・オートメーションツール市場」があり、「マーケティング・オートメーションツール市場」は「SaaS型(クラウド型)」と「オンプレミス型」(注1)に分類され、KASIKAはマーケティング・オートメーションツール市場のSaaS型に分類されるものとして位置付けております。

 当社が主要な市場と想定しているSaaS型ソフトウェア(CX・デジタルマーケティング)の市場規模は2022年度から年平均9.8%で成長し、2027年度には3,740億円となる(予測)ことが見込まれております(注2)。

 加えて、不動産取引業の事業者数は66,942社となっており、就業数も352,108人とサービス提供拡大の余地が大きい市場と見込んでおります(注3)。

 このような市場環境の下、当社が提供するサービスに対する需要も市場の拡大に伴い高まっていくものと考えております。

(注)1.オンプレミス型とはソフトウェアの提供及び稼働等に必要となるサーバや関連機器等を自社で保有し、運用する形態をいう。

2.株式会社富士キメラ総研『ソフトウェアビジネス新市場 2023年版』より

3.事業者数及び就業数のいずれも総務省統計局 令和3年経済センサス-活動調査 事業所に関する集計及び企業等に関する集計 2023年6月27日公表 「68_不動産取引業」従業者数_男女計より

なお、同計数は2021年6月1日時点のもの。

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社の優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりです。なお、優先的に対処すべき財務上の課題については、無借金経営を行っていること、キャッシュ・フロー及び手元流動性共に大きな問題はないため、該当事項はございません。

① 顧客に対する提供価値の向上と販路の拡大

 当社が開発したサービスであるKASIKAの提供を開始後も顧客の声を取り入れ、KASIKA及び関連オプションの継続的な開発・改良の提供を行うことにより、顧客への提供価値の向上を図ることが重要であると考えております。また、今後も継続して広告宣伝活動、提携代理店等との連携強化等を通じ、KASIKAの販路の拡大を進めてまいります。

 

② 優秀な人材の継続的な採用と育成

 当社が中長期的に成長するにあたり、提供するサービスの付加価値を高め、新規顧客を獲得するとともに、サービスの解約率を低く抑えることが重要であると考えております。そのためには、優秀な人材の確保と育成が重要であると考えております。現時点においても優秀な人材が集まる環境は実現できておりますが、引き続き従業員が能力を最大限発揮できる体制を構築し、優秀な人材の採用と併せて、優秀な人材の育成を進めてまいります。

 

③ 情報管理体制の強化

 当社は、顧客が保有する個人情報を含め様々な情報を預かっているため、当該情報管理を継続的に強化し続けることが重要であると考えております。そのため、外部の監査機関の監査を受け、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム(JIS Q 27001:2014))を取得するといった対策を行っております。また、情報セキュリティマニュアル等に基づき管理を徹底するだけでなく、社内教育・社内研修の実施やシステムの整備等を継続して行っております。

 

④ システムの安定性の確保

 当社は、インターネットを利用して顧客にサービスを提供しているため、システムの安定稼働が必要不可欠であります。このため、顧客の増加に合わせたサーバーの処理能力を増強する施策を継続的に実施し、システムの安定性の確保に努めてまいります。また、パブリッククラウドサーバーの利用を積極的に推進することで、データ量の増加にもフレキシブルな対応が可能となり、ディザスタリカバリー(注)による安全性も担保しやすくなります。

(注) ディザスタリカバリーとは、地震や津波等の天災や、テロ、不正侵入等によりシステムが壊滅的な状況になった際に効率的、かつダウンタイムを最小限にして復旧・修復すること、また、その災害に備えたシステムや体制を指します。

 

⑤ 内部管理体制の強化

ⅰ)コーポレート・ガバナンスの強化

 株主を含めたステークホルダーとの良好な関係の構築のためには、社会的信用を維持・向上させていく必要があると認識しております。取引先をはじめとした社外関係者との良好な取引関係を維持していくには、当社も社会的信用を維持していく必要があります。

 そのため、コーポレート・ガバナンス体制を構築し、内部管理体制の強化を推進してまいります。また、内部監査人と監査役との連携強化等の施策により業務執行の適法性・妥当性を監視する機能を強化し、財務報告に係るリスクを最小化して、経営の健全化に努めてまいります。

 

ⅱ)経営管理体制の強化

 更なる事業拡大を推進し、企業価値を向上させていくためには、効率的なオペレーション体制を基盤としつつ、経営管理体制を強化していくことが重要であると認識しており、コンプライアンス体制及び内部統制の充実・強化を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

 当社は、「テクノロジーとマーケティングの力で、住宅・不動産業界で働く“人”の力が最もうまく活かされる仕組みを創り上げたい」というミッションを掲げ、企業の生産性を向上させるべくクラウドサービス事業を顧客に提供しております。当該事業により顧客の課題を解決することで継続的に企業価値を向上させるとともに、社会の持続的な発展に貢献してまいります。

 当社は、「リスク・コンプライアンス規程」に基づき、戸塚裕二取締役CFOを委員長とし、山本考伸代表取締役、富田祐司取締役、手塚恭庸取締役、杉本悠樹執行役員、鬼頭麻由佳常勤監査役で構成されるリスク・コンプライアンス委員会を設置しております。原則として毎月開催しておりますが、各部門長(富田祐司取締役、手塚恭庸取締役、杉本悠樹執行役員)は3か月に1度出席しております。同委員会では当社の事業活動に関連する潜在的なリスクの把握と当該リスクに対する各部門における対応状況について協議及び共有されております。同委員会での協議の内容を踏まえ、各部門で行われているリスク・コンプライアンス管理体制の運用、改善を行い、当該取り組みが同委員会にて共有されるという仕組みとなっております。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

 上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社における重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。

・人的資本

・情報管理体制の強化

 それぞれの項目にかかる当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。

① 人的資本

 当社が中長期的に成長するにあたり、優秀な人材の確保と育成が重要であると考えており、性別や年齢、国籍などを問わず、多様性に富んだ優秀な人材の積極的な採用、リモートワークの促進、社内教育・社内研修等に取り組んでおります。引き続き従業員が能力を最大限発揮できる体制を構築し、優秀な人材の採用と併せて、優秀な人材の育成を進めてまいります。

 

② 情報管理体制の強化

 当社は、顧客が保有する個人情報を含め様々な情報を預かっているため、当該情報管理を継続的に強化し続けることが重要であると考えております。そのため、外部の監査機関の監査を受け、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム(JIS Q 27001:2014))を取得するといった対策を行っております。また、情報セキュリティマニュアル等に基づき管理を徹底するだけでなく、社内教育・社内研修の実施やシステムの整備等を継続して行っております。

 

 なお、上記方針に関する指標、当該指標を用いた目標及び実績については、現時点において指標を定めていないため記載をしておりませんが、今後、指標を定めて取り込んでいく予定であります。

 

3【事業等のリスク】

 当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があるリスク要因として考えられる主な事項には、以下のものがあります。必ずしも、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 当社のリスク管理体制につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 ニ.リスク・コンプライアンス委員会」に記載のとおりとなっております。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 各リスクについて、発生可能性、影響度、発生時期は下記のとおりとなっております。

分類

リスク

発生可能性

影響度

発生時期

(1)事業環境に係るリスク

① 市場全般の景気変動によるリスク

中期

② 優秀な人材の採用及び定着のリスク

中期

③ 技術革新への対応について

中期

④ 法的な規制について

中期

(2)事業固有のリスク

① 当社と競合するシステムの普及に伴う解約リスク

短期

② 特定の他社事業サービスへの依存について

中期

③ システム障害やサイバー攻撃によるリスク

中期

(3)その他

① 情報漏えいにより信用を失墜するリスク

短期

② 潜在株式の顕在化による1株当たりの指標悪化のリスク

中期

③ 特定の事業サービスへの依存について

中期

④ 投融資について

中期

⑤ コンプライアンス違反による信用失墜のリスク

中期

⑥ 訴訟等に関するリスク

中期

⑦ 第三者の知的財産権を侵害するリスク

長期

⑧ 自然災害等に関するリスク

長期

⑨ 特定人物への依存について

長期

⑩ 配当政策について

長期

⑪ 当社における経営管理体制・内部統制について

長期

⑫ 当社取締役の兼職について

不明

 

 

(1)事業環境に係るリスク

① 市場全般の景気変動によるリスク(発生可能性:中、影響度:中、発生時期:中期)

 将来、経済情勢や景気動向の悪化等により、企業のITシステム投資等への低迷が生じた場合には、市場の拡大が当社の想定を下回る可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社の顧客が属する不動産業界は、景気変動、経済情勢、金利動向、地価の動向、資材価格の高騰等の影響を受けやすい特性があり、これら景気変動等により当社がターゲットとしている不動産会社のITシステム投資意欲に影響し、当社の事業運営、経営成績及び財政状態にも影響を及ぼす可能性があります。

 

② 優秀な人材の採用及び定着のリスク(発生可能性:中、影響度:小、発生時期:中期)

 当社が継続して事業拡大を進めていくためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が不可欠であると認識しております。そのため、継続的な人材採用や育成に加え、定着率向上に向けた各種施策を行っております。

 しかしながら、優秀な人材が必要な時期に十分に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合等には、経常的な業務運営及び事業拡大等に支障が生じ、当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術革新への対応について(発生可能性:低、影響度:中、発生時期:中期)

 当社が属するインターネット業界においては、新技術の開発や新サービス出現のスピードが速く、顧客ニーズも早期に変化する等、変化の激しい業界となっております。当社では、最新の技術動向や環境変化に関する情報収集、優秀な人材の確保や教育によるノウハウの蓄積等に積極的に取り組み、技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。しかしながら、何らかの理由で技術革新や顧客ニーズへの対応が遅れた場合や、新技術への対応のため想定を超える投資が必要となった場合、当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 法的な規制について(発生可能性:低、影響度:中、発生時期:中期)

 当社は、国内において基本的な企業活動に関わる法的規制に加え、クラウドサービスにおけるセキュリティ、個人情報及びプライバシー保護等の法的規制を受けております。これら当社に適用される法的規制の整備・強化が生じることにより、当社業務に制約が生じ、当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では外部の顧問弁護士等の専門家との連携、「個人情報の保護に関する法律」の当局となる個人情報保護委員会等の関連機関が提供する情報の収集を行うことで、当該規制の整備・強化に適時に対応をするよう努めております。

 

(2)事業固有のリスク

① 当社と競合するシステムの普及に伴う解約リスク(発生可能性:中、影響度:中、発生時期:短期)

 当社が事業を展開するマーケティング・オートメーションツール市場は、競合企業が複数存在しており、今後SaaS等のクラウド市場の普及に伴い、規模の大小を問わず競合企業が新規に参入する可能性があります。当社は、サービス開発力の強化や継続的なサービス改善活動により競争力の維持に努めておりますが、競合企業や新規参入企業との競争激化により、当社が想定している事業展開が図れない場合等には、当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 特定の他社事業サービスへの依存について(発生可能性:低、影響度:大、発生時期:中期)

 当社が提供するサービスは、安全性、安定性、拡張性及び価格等を総合的に勘案し、さくらインターネット株式会社が提供しているクラウドコンピューティングサービス「さくらのクラウド」を基盤として運営されております。さくらのクラウドのデータセンターの処理能力が、当社の求める処理能力を満たさない場合、さくらのクラウドに障害が生じた場合等には、当社が提供するサービスへのアクセスが中断又は遅延した結果、顧客からの信用が損なわれ、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、さくらインターネット株式会社による経営戦略の変更、又は、価格改定等が行われた場合には、当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社では代替となり得るクラウドコンピューティングサービスを検討する等により、さくらのクラウドに障害が生じた場合であっても当社のサービスを継続して提供を行えるよう努めております。

 

③ システム障害やサイバー攻撃によるリスク(発生可能性:低、影響度:大、発生時期:中期)

 当社が提供するサービスは、その基盤をインターネット通信網に依存しております。このため、大規模な自然災害やテロ、戦争その他予期せぬ原因によりインターネット通信網が使用できない状態が生じた場合は、当社のサービス提供の継続が困難となります。また、想定を超えるアクセス増加あるいはサイバー攻撃その他予期せぬ事象によるサーバーダウンや当社が提供するサービスの予期せぬ不具合の発生等により、サービス提供が停止する可能性があります。このような事態を避けるため、システムやサーバの冗長化や稼働状況の監視、品質管理体制の強化等の対策を講じておりますが、将来においてこれらのような事態が発生した場合には、当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)その他

① 情報漏えいにより信用を失墜するリスク(発生可能性:中、影響度:大、発生時期:短期)

 当社は、顧客が保有する個人情報を委託により預かっております。また、当社自体の機密情報を保有、管理しております。これらの情報の外部への流出、破壊、改ざん等を防止すべく、当社では、委託先を含めた管理体制を構築し、各種規程の整備や役職員への継続的な教育を行っております。しかしながら、万一、当社の役職員の故意や過失により、これらの情報の外部への流失を発生させた場合には、当社の信用低下のほか、被害を受けた事業者や関係者による損害賠償の請求を受ける可能性があり、その場合は当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。更に、情報流出の原因調査の過程においては、通常業務の遂行に多大な影響を受ける可能性があります。

 

② 潜在株式の顕在化による1株当たりの指標悪化のリスク(発生可能性:高、影響度:中、発生時期:中期)

 当社は、役職員の業績向上に対する意欲や士気を一層高めることを目的として、当社の役職員に対して新株予約権を付与しており、本書提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は17.41%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化し、当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 特定の事業サービスへの依存について(発生可能性:中、影響度:大、発生時期:中期)

 当社の売上高はKASIKAに依存したものとなっております。このため、KASIKAの売上高が著しく減少した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社としては、KASIKAを外部環境の変化に左右されず安定的な収益獲得が継続できるようその競争力の維持・強化に努めるとともに、他のサービスの開発・売上拡大を図り、KASIKAへの依存度を逓減させることが重要と考えております。

 

④ 投融資について(発生可能性:中、影響度:中、発生時期:中期)

 当社は、現在において投融資を行っている事実はありません。しかしながら、今後の事業拡大のために、国内外を問わず出資、子会社設立、合弁事業の展開、アライアンス、M&A等の投融資を実施する場合があります。投資判断においては、投資先候補企業の事業内容を吟味し、当社との事業シナジーが得られること、投資先候補企業の事業計画、当社の財務状況や投資先候補企業への影響力等を考慮し、投資先候補企業の評価額が適切な水準であることを慎重に確認し、投資判断を行う予定です。ただし、投資先企業の事業が計画通りに進捗しない場合や投融資額を回収できなかった場合、減損の対象となる事象が生じた場合には、当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ コンプライアンス違反による信用失墜のリスク(発生可能性:低、影響度:大、発生時期:中期)

 当社は会社設立以来、各種コンプライアンス上の法令、慣習、常識を厳守すべく、各種規程の整備や役職員への継続的な教育等、最大限の努力を重ねてまいりました。しかしながら、コンプライアンスのルールは年々、高度化し、深化していることもあり、法令の改正等による事業活動の影響を通じて、当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 そのため、最新の法令及び各種ルールに対する情報収集に努めるとともに、四半期毎のリスク・コンプライアンス委員会において、最新の状況を確認し、更なる改善を目指すべく、意識の高揚を図っております。

 

⑥ 訴訟等に関するリスク(発生可能性:低、影響度:中、発生時期:中期)当社は、現在において訴訟を提起されている事実はなく、法令等遵守体制の強化を通じて訴訟等が提起されることを防止するべく努めております。しかしながら、将来の法的規制等の改正等に適時適切に対応できないことや各種契約等の解釈の齟齬が生じたこと等を原因とする訴訟が提起された場合、内容及び結果によっては当社の事業運営、経営成績、財政状態及び企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 第三者の知的財産権を侵害するリスク(発生可能性:低、影響度:大、発生時期:長期)

 当社は、当社が提供するサービスが他社の保有する知的財産権を侵害しないよう、開発段階において採用したビジネスモデルや技術等については、必要に応じて適切な調査を実施しております。しかしながら、当社の事業領域において第三者が有する知的財産権を完全に把握することは困難であり、当社が認識していない知的財産権が既に成立している可能性、あるいは今後新たに成立する可能性があります。このような場合において、ロイヤリティ支払や損害賠償請求、事業の全部又は一部の差止により、当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 自然災害等に関するリスク(発生可能性:低、影響度:大、発生時期:長期)

 当社の本社は東京にあり、当地域内において地震、水害等の大規模災害が発生することにより拠点が被害を受けた場合、また当社施設内において、クラスターが発生する等、当社の想定を超える異常事態が発生した場合には、通常勤務が困難になることによりサービスレベルが低下する可能性等があり、その内容及び結果によっては当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような事態を避けるため、勤務場所の分散化、リモートワーク時における安否確認方法の確立など異常事態が生じた場合でもできる限り業務への影響を低減することに引き続き努めてまいります。

 

⑨ 特定人物への依存について(発生可能性:低、影響度:中、発生時期:長期)

 当社の代表取締役である山本考伸は当社の創業者であり、創業以来代表取締役を務めており、当社の経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を果たしております。当社は取締役会等の会議体を整備・運用するとともに、役職員への情報共有の強化を行うことにより、同人に過度に依存しない経営体制の整備・強化を図っております。しかしながら、何らかの理由により同人が当社の業務を継続することが困難になった場合には、当社の事業運営、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑩ 配当政策について(発生可能性:中、影響度:小、発生時期:長期)

 当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして位置付けておりますが、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に充当することが株主に対する最大の利益還元につながるものと考えております。そのため当社は創業以来、配当を実施しておりません。

 内部留保資金については、財務体質の強化と人員の拡充・育成をはじめとした収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に活用する方針であります。

 将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針でありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

⑪ 当社における経営管理体制・内部統制について(発生可能性:低、影響度:中、発生時期:長期)

 当社は事業規模に応じた組織体制を志向しており、内部管理体制についても組織の規模に応じたものとなっております。当社は今後、業容の拡大に応じて人材の採用を行うとともに社内管理体制の強化・充実に努める予定であります。しかしながら、当社が事業の拡大に応じて適切かつ十分な対応ができなかった場合には、当社の事業遂行及び拡大に制約が生じ、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ 当社取締役の兼職について(発生可能性:低、影響度:小、発生時期:不明)

 当社取締役である手塚恭庸は個人事業としてコンサルティングサービスを提供しておりますが、当該提供先の一部に当社の顧客数社が含まれております。当該個人事業は当社が運営する事業とは競業関係にはなく、また、当該個人事業を開始及び提供した契機も当社の取締役としての地位を援用したものではありません。

 当社としては、手塚恭庸が当該個人事業を行うことは、不動産業界に対する知見を得られる等の当社取締役としてもメリットが認められることから、各種法令及び当社取締役としての法的義務を遵守すること、当社取締役としての業務に影響が生じない範囲に留めた態様(取引社数、時間等への上限設定等)とすること、当該個人事業について当社は一切の責任を負わないこと等を前提として、承認しております。

 また、当社は手塚恭庸の当該個人事業について、毎月の取締役会においても手塚恭庸から個人事業の概況(取引社数、時間等)につき報告を受け、取締役会が承認した前提の範囲となっていることを確かめるとともに、当社取締役としての法的義務等に違反していないかを確認しております。

 なお、仮に当該個人事業が当社との間において取り決めた遵守事項に違反する可能性が高まった場合には、当社は当該個人事業を解消させることを予定しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

(1)財政状態等の状況の概要

① 財政状態の状況

財政状態の分析

(資産)

 当事業年度末における流動資産は754,824千円となり、前事業年度末に比べ413,965千円増加いたしました。これは主に前払費用が10,486千円減少したものの、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う公募増資および事業の伸長により、預金が402,858千円増加、売掛金が23,271千円増加したことによるものであります。固定資産は37,370千円となり、前事業年度末に比べ5,725千円増加いたしました。これは主に繰延税金資産が2,778千円増加したこと、サーバ代の長期前払によるその他の資産が3,058千円増加したことによるものであります。

 この結果、総資産は、792,194千円となり、前事業年度末に比べ419,689千円増加いたしました。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債は129,418千円となり、前事業年度末に比べ24,074千円増加いたしました。これは主に未払金が12,251千円増加したことによるものであります。

 この結果、負債合計は、129,418千円となり、前事業年度末に比べ24,074千円増加いたしました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は662,776千円となり、前事業年度末に比べ395,616千円増加いたしました。これは、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う公募増資による資本金の増加122,820千円及び資本剰余金の増加122,820千円、利益剰余金が149,976千円増加したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は83.7%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末より402,857千円増加し、641,972千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の営業活動による資金の増加は157,505千円(前事業年度は120,306千円の増加)となりました。これは主に、税引前当期純利益によるキャッシュ・フローのプラスの影響が203,233千円発生、売上債権の増加によるキャッシュ・フローのマイナスの影響が23,270千円発生、法人税等の支払額によるキャッシュ・フローのマイナスの影響が64,634千円発生したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の投資活動による資金の減少は288千円(前事業年度は投資活動によるキャッシュ・フローは生じておりません)となりました。これは有形固定資産の取得による支出によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の財務活動による資金の増加は245,640千円(前事業年度は11,075千円の減少)となりました。これは株式の発行によるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績を示すと、次のとおりであります。

サービスの名称

当事業年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

クラウドサービス事業

1,027,747

128.9

合計

1,027,747

128.9

 (注)1.当社はクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

2.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上の相手先が存在しないため、主な相手先別の販売実績等の記載は省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 また、当社はクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。この財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

 当社の主要サービスは、料金を顧客の使用期間及び使用店舗、ユーザ数等に応じて定期定額契約(サブスクリプション)として課金することで、継続的な収益を獲得することができるものであるため、MRR、有料契約社数及び単月解約率(年間平均)を指標として重視しております。

 当事業年度における売上高は、「工務店・ハウスメーカー」「不動産売買仲介業者」「分譲マンション事業者」のいずれの領域においても営業部門のリソースを費やし積極的な営業活動を行い、また顧客へのサポート活動も継続的に行った結果、2024年5月時点のMRRが87百万円、有料契約社数が1,093社、単月解約率(年間平均)が1.1%となり、1,027,747千円(前年同期は797,145千円)となりました。

 

(売上原価及び売上総利益)

 当事業年度における売上原価は426,779千円(前年同期は328,173千円)となりました。当社ではカスタマーサクセス部門に所属する従業員の人件費を全て売上原価に算入していますが、売上高の伸びに応じてカスタマーサクセス部門を中心に採用を行った結果として人件費が増加したことによります。

 この結果、売上総利益は600,967千円(前年同期は468,971千円)となりました。

 

(販売費及び一般管理費並びに営業利益)

 当事業年度における販売費及び一般管理費は、385,922千円(前年同期は328,648千円)となりました。これは事業の伸長により、採用費用、業務委託費、販売代理店への支払手数料等が増加したことによります。

 この結果、営業利益は215,045千円(前年同期は140,323千円)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

 当事業年度における営業外収益は927千円(前年同期は1,770千円)となりました。これは主にクレジットカードの利用によるポイント収入や広告収入によります。

 また、営業外費用は12,739千円(前年同期は1,382千円)となりました。これは主に上場関連の費用によります。

 この結果、経常利益は203,233千円(前年同期は140,710千円)となりました。

 

③ 経営戦略の現状と見通し

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

④ 経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針については、次のとおりであります。

 当社は、「テクノロジーとマーケティングの力で、住宅・不動産業界で働く“人”の力が最もうまく活かされる仕組みを創り上げたい」というミッションを掲げ、企業の生産性を向上させるべくクラウドサービス事業を拡大しております。今後、当社が更なる事業拡大を図るためには、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対処するため、経営者は最新のIT技術を探求し、あわせて事業環境を把握し、KASIKAの継続的な改良、オプションサービスの開発等、顧客に対する提供価値を向上し続けていく方針であります。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社の運転資金需要のうち主なものは、人件費、業務委託費等であります。資金の源泉と流動性を安定的に確保することを目的とし、資金需要の額や使途に合わせて自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載したとおり、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。市場動向及び業界動向に対して常に情報を集め、また、優秀な人材の獲得と育成に取り組むとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に迅速かつ最適な対応に努めてまいります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はございません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はございません。