第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

当第3四半期連結累計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。

また、前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」について重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、原則として四半期連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。

 

(1)業績の状況

当第3四半期連結累計期間(2023年3月1日~2023年11月30日)における我が国経済は、5月に新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の位置づけが「5類感染症」に移行されるなど、正常化が一段と進むなか、個人消費については、物価上昇の影響を受けつつも、プラス基調を維持しております。さらに、訪日外国人数は、航空便の増便・復便や円安を背景に段階的な回復が続いており、インバウンド需要の拡大も国内景気を押し上げています。

一方、足元では、物価上昇に賃金の伸びが追い付かない実質賃金のマイナスが続いており、生活防衛意識の高まりなど、今後の個人消費は予断を許さない状況にあります。

こうしたなか、髙島屋グループ(以下、当社)において、2023年度は、回復段階から、さらに持続的な成長と飛躍に向けた経営の土台づくりを果たすための極めて重要な一年と捉えております。

この基盤構築に向け、グループ総合戦略「まちづくり」の下、経営課題である「百貨店の営業力強化」、「人的資本経営の推進」、「グループ会社の業界競争力獲得」、「グループESG戦略の深化」を推進し、グループ全体で髙島屋ブランドの価値に磨きをかけてまいります。

百貨店業におきましては、一昨年来取り組んでいるコスト構造改革は、昨年全店レベルに拡大し、利益を創出できる体制づくりは一定の成果を得ております。また、アフターコロナの消費動向変化を踏まえ、目利きができる人材の育成、お客様のニーズに即応する話題性と品質を両立する品揃え、コロナ禍では実施できなかった高鮮度な催事やプロモーションの企画開発など、営業力強化に向けた取り組みも同時に推進しております。さらに、デジタルツールを活用しながら業務効率化を推進し、販売のための時間を生み出すとともに、商品、企画のストーリーを「語る・伝える力」を高め、販売力の質的向上に一層取り組むなど、人を中心とした経営を進めることで、本質的な営業力強化を実現してまいります。

商業開発業におきましては、千葉県流山おおたかの森地区における行政と一体となった地域活性化に向けた取り組みに加え、新たな事業として、東京都足立区六町駅前の区有地において、公募型プロポーザル(※1)により選定され、当社初となるPPP(※2)事業へ参画してまいります。また、10月17日には「京都髙島屋S.C.」が開業いたしました。百貨店と専門店、さらに金融や飲食など優良なコンテンツをグループ内に有し、それらを柔軟に組み合わせた商業施設は当社独自のビジネスモデルとなります。開業後、国内外の多数のお客様にご来店いただき、30歳代以下の次世代顧客や広域からの顧客が増加するなど、百貨店とのシナジー効果発揮につながっております。さらに、11月14日にリニューアルオープンした「立川髙島屋S.C.」など、地域に根ざした魅力的なSCを実現することでリアルの体験価値向上、新たなお客様層の開拓を進めてまいります。一方、国内外において、賃貸住宅やオフィスなど、非商業分野のシェアを高めることで事業ポートフォリオの安定化を図ってまいります。

金融業におきましては、収益の柱であるカード事業について、会員基盤の強化が最重要課題であり、新規会員獲得とカードの魅力向上に取り組んでおります。8月には、法人市場領域の開拓に向け、ビジネスオーナー・個人事業主向けのビジネスカードを新たに発行、会員獲得は順調に推移しております。さらに、金融商品を取り扱うライフパートナー事業では、専門人材の育成とともに、当社の優良な顧客基盤や立地を生かした顧客接点の拡大により、着実な利益創出につなげてまいります。

その他のグループ会社、事業におきましても、それぞれが専門性を高め、強みや独自性を発揮、業界競争力を獲得しながら、更なる収益力の強化につなげていく取り組みを推進してまいります。

ESG経営におきましては、当社が生活・文化・地域社会を支えるプラットフォームの役割を発揮し、お客様やお取引先、地域社会とともに、こころ豊かな生活を実現していくための取り組みを推進しております。不要となった衣料品を回収・再生・販売する、当社の循環型ビジネス「Depart de Loop(デパートデループ)」においては、一昨年回収したデニムを再生した商品の販売を実現するとともに、回収の対象を新たに化粧品やその容器にも広げるなど、取り組みを拡大いたしました。また、脱炭素化推進に向けては、当社敷地外で発電した再生エネルギーを、事業者から直接提供を受けるオフサイトPPA(※3)において、日本初となる短期契約のスキームを導入、4月より横浜店へ省エネ電力供給をスタートいたしました。高崎店でも2024年1月より供給開始予定であり、今後も他店舗への導入を進めてまいります。さらに、「物流の2024年問題」(※4)への対応として、これまで開店時間に合わせていた納品時間を全店で開店後に見直すことでドライバーの負担軽減につなげる取り組みを業界で先行して開始しております。また、ベースアップや働きやすい環境整備によるエンゲージメントの向上など、社会課題の解決に継続して取り組んでまいります。

 

(※1)公募型プロポーザル

行政等による民間事業者の選定方式の一つ。公募に基づき民間事業者が提案を行い、コンセプト・事業計画・地域貢献等の総合評価により優先交渉権者を決定する方式。

 

(※2)PPP(Public Private Partnership)

公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間が連携して行うことにより、民間の創意工夫等を活用し、財政資金の効率的使用や行政の効率化等を図るもの。

 

(※3)PPA

「Power Purchase Agreement」電力購入契約のこと。

 

(※4)物流の2024年問題

2018年6月改正の「働き方改革関連法」に基づき、自動車の運転業務の時間外労働について、2024年4月より、年960時間(休日労働含まず)の上限規制が適用される。併せて、トラックドライバーの拘束時間を定めた「改善基準告示」(貨物自動車運送事業法に基づく行政処分の対象)により、拘束時間等が強化されることに伴う諸問題。

 

当第3四半期連結累計期間の連結業績につきましては、連結営業収益は334,192百万円(前年同期比5.2%増)、連結営業利益は33,209百万円(前年同期比45.3%増)、連結経常利益は35,829百万円(前年同期比46.4%増)となり、親会社株主に帰属する四半期純利益は24,251百万円(前年同期比5.9%増)となりました。

 

事業のセグメント別業績は、次のとおりであります。

 

<百貨店業>

百貨店業での営業収益は244,147百万円(前年同期比5.5%増)、営業利益は20,658百万円(前年同期比59.6%増)となりました。

 

国内百貨店におきましては、増収増益となりました。

社会経済活動の活性化に伴い入店客数が増加、インバウンドを除く国内顧客売上高は、婦人服、紳士服、化粧品など、ファッション関連商品を中心に堅調に推移いたしました。インバウンド売上高においても、ラグジュアリーブランドをはじめとする高額品が好調であり、円安による客単価の上昇も売上高を押し上げております。また、各店で開催した「大北海道展」などの物産展や京都店、日本橋店で開催した「御即位5年・御成婚30年記念特別展 新しい時代とともに ―天皇皇后両陛下の歩み」、夏季休暇や秋の行楽シーズン、ブラックフライデーなどに合わせた関連イベントは、多くのお客様にご来場いただきました。

さらに、新たな取り組みとしては、株式会社ジュンとのコラボレーション業態であるライフスタイルショップ「モア サロン エ ロぺ(moi salon et ropé)」を5月大阪店、6月横浜店に続き、10月京都店にオープンいたしました。引き続き、品揃えの拡充や販売力の強化を推進し、お客様のニーズにお応えしてまいります。

商品利益率についても、ファッション関連商品の売上高伸長などにより改善基調にあります。今後もコスト構造改革の継続とともに、利益拡大を推進してまいります。

海外(2023年1月~9月)におきましても、増収増益となりました。

シンガポール髙島屋は、内需の堅調な推移やインバウンドの回復もあり、売上高が大きく伸長いたしました。また、ホーチミン髙島屋でもベトナム初ブランドの導入など新たな取り組みを推進、2社については増収増益となりました。サイアム髙島屋については、ツーリストを含む入店客数の増加に伴い売上高が回復し増収となり、赤字幅が縮小しております。一方、上海高島屋は、一昨年のコロナ影響による休業(67日間)反動もあり大きく増収となりましたが、休業に伴うコロナ関連費用の特別損失への振替反動も同じく大きく、減益となりました。

 

<商業開発業>

商業開発業での営業収益は38,387百万円(前年同期比9.3%増)、営業利益は9,755百万円(前年同期比38.1%増)となりました。

 

国内におきましては、商業施設の売上増加や賃料収入の回復もあり、増収増益となりました。

東神開発株式会社は、3月に千葉県流山市と「地域活性化に関する包括連携協定」を締結し、街づくり、子育て、災害対応などにおけるさらなる相互連携と地域活性化を行政と一体となって推進しております。「流山おおたかの森S・C」では、街の魅力を一層高めるべく、5月につくばエクスプレス「流山おおたかの森駅」高架下の空間を活用した商業施設「TXグランドアベニュー おおたかの森」を全面リニューアルオープン、6月には近隣住民の交流の場・機会を提供する新たな地域コミュニティ拠点として「おおたかの森LOOP」を発足いたしました。

また、10月に「京都で一番の待ち合わせ場所」というコンセプトのもと、髙島屋京都店および専門店ゾーン「T8(ティーエイト)」からなる「京都髙島屋 S.C.」が開業、11月には地域の方々の“暮らしの場”となる「立川髙島屋 S.C.」をリニューアルオープンいたしました。今後も「まちづくり戦略」のもと、グループの総合力を発揮した商業施設の開発や運営を通して、リアルの体験価値を向上させてまいります。

新たな事業としては、東京都足立区と「六町駅前区有地活用事業」に関する基本協定書を7月に締結し、当社初となるPPP事業へ参画いたします。本事業は、つくばエクスプレス六町駅前の区有地において、公募型プロポーザルにより選定された東神開発株式会社が複合商業施設と駐輪場の整備及び運営を行います。本事業を機に今後も行政と連携したPPP事業を拡大してまいります。

海外(2023年1月~9月)におきましても、トーシンディベロップメントシンガポールPTE.LTD.が運営する「シンガポール髙島屋S.C.」が、百貨店同様入店客数が増加したことなどから、増収増益となりました。また、ベトナムでは、学校運営事業の「スターレイク・プロジェクトA計画」や住宅・オフィス・商業開発事業の「ランカスター・ルミネールプロジェクト」を着実に推進し、現地での事業基盤の拡大を進めております。

 

<金融業>

金融業での営業収益は13,044百万円(前年同期比1.7%増)、営業利益は3,423百万円(前年同期比0.8%減)となりました。

 

カード取扱高の伸長やライフパートナー事業の顧客基盤拡大などにより増収となりましたが、市場領域開拓、事業基盤拡大に向けた先行投資の影響もあり、わずかに減益となりました。

カード事業におきましては、百貨店・専門店への入店客数が増加するなか、新規会員の獲得強化を継続して進めるとともに、外部加盟店を含め利用促進を図ったことにより取扱高が伸長いたしました。さらに、8月から「タカシマヤカード《ビジネスプラチナ》アメリカン・エクスプレス®」の発行を開始、ビジネスオーナー・個人事業主に最適なビジネスカードとして、法人市場領域に参入いたしました。順調に会員を獲得しており、百貨店とのシナジー発揮による顧客満足度の向上をめざしてまいります。

ライフパートナー事業におきましては、2024年から始まる新しいNISA制度(※5)や人生100年時代のライフプランなどをテーマとしたセミナーをリアルで開催、また、「NISAとほけん」を組み合わせて相談ができるコーナーを設置するなど、相談顧客数・申込数が着実に増加しております。

さらに、ソーシャルレンディング事業では、2023年10月に貸付型クラウドファンディング(※6)に関する豊富な実績とノウハウを有する株式会社バンカーズと業務提携をいたしました。本提携を機に新たに「髙島屋ファンディング」として取り扱いの幅を広げ、金融事業の収益及び、グループとしての顧客接点拡大を図ってまいります。

「髙島屋ネオバンク」の「スゴ積み」(※7)においては、7月より積み立ての満期を迎えられたお客様の決済利用が開始となりました。タカシマヤ友の会の会員と比べ50歳以下、また、男性のお客様が多く、平均積立額も高いといった特性に合わせたアプローチを推進し、会員数の拡大、継続率アップ及び、決済の利用促進につなげてまいります。

 

(※5)新しいNISA制度

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかる。NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる制度。2024年1月からは「家計の安定的な資産形成」をさらに推し進めることを目的に非課税保有期間の無期限化、口座開設期間の恒久化、年間投資枠の拡大などを図った新制度に移行。

 

(※6)貸付型クラウドファンディング

「資金調達をしたい企業」と「お金を貸して利回りを得たい投資家」を結びつけるサービス。少額から投資ができるミドルリスク・ミドルリターンの金融商品として、投資家からの注目が集まっている。

 

(※7)スゴ積み

「髙島屋のスゴイ積立」のことで、髙島屋ネオバンクアプリに搭載された機能の一つ。毎月一定額を12ヵ月積み立てると1ヵ月分のボーナスをプラスした「お買物残高」がアプリにチャージされ、髙島屋のお買物にお使いいただけるサービスのこと。

 

<建装業>

建装業での営業収益は18,221百万円(前年同期比22.4%増)、営業損失は483百万円(前年同期は456百万円)となりました。

 

髙島屋スペースクリエイツ株式会社におきましては、ホテルなどの大型物件やラグジュアリーブランドを中心とした商業施設の受注が増加し、増収となりましたが、一部大型物件での原価増大の影響もあり、わずかに赤字拡大となりました。今後、一層の営業力とデザイン力を駆使した先行提案営業の強化により安定的な収益基盤を構築してまいります。

 

<その他の事業>

クロスメディア事業等その他の事業での営業収益は20,391百万円(前年同期比13.1%減)、営業利益は766百万円(前年同期比11.5%増)となりました。

 

百貨店の店頭売上高回復の影響により、クロスメディア事業におきましては、減収となった一方、卸売業のタカシマヤトランスコスモスインターナショナルコマースPTE.LTD.が増益となったことから、その他の事業全体におきましては、減収増益となりました。

 

(2)財政状態に関する説明

当第3四半期連結会計期間末の総資産は、1,246,494百万円と前連結会計年度末に比べ68,293百万円増加しました。これは、受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことが主な要因です。負債については、780,513百万円と前連結会計年度末に比べ38,794百万円の増加となりました。これは、支払手形及び買掛金が増加したことが主な要因です。純資産については、465,981百万円と前連結会計年度末に比べ29,498百万円増加しました。これは、利益剰余金及び為替換算調整勘定の増加が主な要因です。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析

営業活動によるキャッシュ・フローは、38,014百万円の収入となり、前年同期が17,946百万円の収入であったことに比べ20,068百万円の収入の増加となりました。主な要因は、税金等調整前四半期純利益が7,339百万円増加したことなどによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、22,318百万円の支出となり、前年同期が7,265百万円の支出であったことに比べ15,052百万円の支出の増加(収入の減少)となりました。主な要因は、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入が11,334百万円減少したこと、有形及び無形固定資産の取得による支出が3,104百万円増加したことなどによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは、16,576百万円の支出となり、前年同期が26,264百万円の支出であったことに比べ9,687百万円の支出の減少となりました。主な要因は、自己株式の取得による支出が16,694百万円減少したことなどによるものです。

これらに換算差額を加えた結果、当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ4,317百万円増加し、92,948百万円となりました。

 

 

(4)事業上及び財務上の対処すべき課題

当第3四半期連結累計期間において、当連結会社の事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。

 

(5)研究開発活動

該当事項はありません。

 

3【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。