文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
当社グループは「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションのもと、人生の大半を過ごすことになる「働く」という時間において、ただ生活の糧を得るためだけではなく、1人でも多くの人がより楽しく、自由な創造性を存分に発揮できる社会を実現することを目指し、仕事の効率化や新しく創造的な働き方を実現する製品やサービスの開発・提供に取り組んでおります。
こうした経営方針のもと、現在は主力サービスであるビジネスチャットツール「Chatwork」の普及とこれに関連するサービスの提供により、国内企業を中心とした顧客企業の働き方の変化への対応や労働生産性の向上に貢献してまいる所存です。具体的な販売普及戦略としましては、まず、これまで自然流入と紹介を中心に獲得してきた無料ユーザー(フリーミアムユーザー)について、広告宣伝費を投資して顧客基盤の拡大を目指します。また、従来より行ってきましたサービス品質の向上及び連携サービスの充実による無料ユーザーの課金化に加えまして、カスタマーサクセスによる初期活用支援を強化し、課金ID数の拡大を目指します。
また、業界特有の顧客課題に対し、専門チームが共に解決するコミュニケーションプロセスの構築を昨年度から取り組んでおります。業界ごとの業務プロセスや課題を研究し、ビジネスチャットの活用方法の型化を行うことで、より質の高い提案とプロダクト機能強化を実現させ、ユーザーの更なる拡大を目指します。これらの施策を通じてChatworkセグメントの高い成長を実現してまいります。
当社グループの主力事業であるChatworkセグメントの収益の源泉は課金IDからの利用料であります。そのため、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標は、課金ID数であると考えております。当該ID数の成長やその他付加サービスの拡大及び単価向上施策を推進することで、中期経営計画(2021年12月期~2024年12月期)におけるChatworkセグメントの年平均売上成長率については、40%を目指していきたいと考えております。
国内経済環境といたしましては、生産年齢人口減少に伴う労働力不足が問題視される一方で、政府主導により時間外労働時間の上限引き下げ等の労働法規の改正といった働き方改革が推進される中、労働生産性の向上に向けたソリューションへの期待が高まっているものと認識しております。また、昨年からの新型コロナウイルスの影響で在宅ワークが一気に普及し、ニューノーマルとも呼ばれる働き方の根本的な変化が発生しています。現在ビジネスチャットの普及率は15.6%(当社依頼による第三者機関調べ)ですが、今後3年程度で大きく普及が広まるものと考えられます。こうした環境を踏まえると、当社の「Chatwork」の認知度拡大に伴い当サービスへの需要はこれまでよりも早いスピードで拡大していくものと期待しております。
上記の経営方針・経営目標等を推進する上で、当社グループとして捉えている対処すべき主要課題は以下のとおりです。
当社グループの主要サービス「Chatwork」が今後も継続的な成長を果たしていくためには、より幅広い業種・業態の顧客に支持されるとともに、継続的に選ばれる必要があると考えております。そのためには、当該サービスの優位性となっているユーザビリティの維持向上が不可欠であると認識しております。今後とも顧客のニーズの変化を迅速に把握し、継続的なユーザー・インターフェースの改善やタスク管理ツールの機能強化や絵文字等の拡充といった製品機能強化により、競合他社との差別化を図ってまいります。
労働生産性向上に対する社会的要請並びに新型コロナウイルスの影響による在宅ワーク需要の高まりに伴い、ビジネスチャットツールは国内企業において導入に対する期待が急速に高まっているものと認識しております。
これまでは、自然流入と顧客ユーザーからの紹介による無料ユーザー(フリーミアムユーザー)の獲得を中心としてきましたが、今期はさらに広告宣伝費を投資し、顧客基盤の更なる拡大を目指しました。また、業界ごとの深い理解を元にした提案活動を行い、既に展開している士業や介護、建設等の業種ごとの人脈やネットワークを活用した営業アプローチの推進を拡大、推進してまいります。
また、ビジネスチャットツールは世界的に利用が普及しつつあります。当社では、「Chatwork」にかかる日本語を含む6か国語への多言語対応を行っており、現在は、将来におけるサービス普及が期待されるアジア地域、特にベトナム及び台湾にて、日系企業の子会社・駐在所を中心としたターゲット顧客に対する営業活動及び将来の収益獲得の布石としてフリープランによる顧客獲得等を中心としたテストマーケティングを実施しております。今後において、各地域における外部環境やサービスにかかる認知向上等の状況を考慮しつつ、営業体制の拡充を含めた営業展開や更なる地域展開を検討してまいる所存であります。
ビジネスチャットツールの国内における導入期待が急速に高まり、今後3年で普及が大きく進むものと考えております。当社グループの人員、サポート体制の整備に伴い、今後適切な販促活動を行うことが、中長期の事業成長のために必要と判断し、昨期以上のマーケティング費用の投入を行う予定です。なお、マーケティング費用に関しましてはこれまで同様、費用対効果を見極めながら、適宜コントロールしてまいります。
当社グループが競争優位性を確保しながら持続的に成長するためには、前述のユーザビリティ向上に加えて、サービスの提供する付加価値を高め、高い継続率を確保することが重要であると認識しております。当社グループは、付加価値向上のため、経営資源サポート領域やデータ活用といったプラットフォームサービスにおける新たな提供サービスの開発・展開を推進し、「Chatwork」のビジネスインフラとしての価値向上に努めるとともに、収益基盤を強化してまいります。
⑤ セキュリティの継続的な向上
当社の提供するビジネスチャットツールは、ビジネスコミュニケーションの根幹となるインフラ機能であるため、継続利用の前提としてセキュリティの確保は必要不可欠であります。当社では、自社による監視体制のみならず、外部業者による脆弱性の確認を継続的に実施し、必要な対策をとることでセキュリティの向上に努めております。当該対策には終わりはないと認識しており、今後も継続してセキュリティ向上に向けた対応を行ってまいります。
当社グループが持続的に成長するためには、優秀な人材を数多く確保・育成することが重要であると認識しております。特にサービス利便性及び機能の向上のためには、優秀なエンジニアの継続的な採用が課題であると認識しております。
当社は、従業員の多様な働き方を推進することで求職者への提供価値を高め、採用力を強化するとともに、既存人材の能力及び技術の向上のため、教育・研修体制の充実化を進めていく方針であります。
当社の提供する「Chatwork」サービスは、顧客ビジネスのインフラとなり得る機能であり、当該サービスの普及・利用にあたっては顧客企業よりインフラ提供会社である当社への信頼が獲得できるかが重要な点であると考えております。そのため当社では個人情報管理体制をはじめ、アクセス制限等のシステム統制、当社自身の内部統制体制の強化等を継続して検討・推進していくことで、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実を図り、顧客からの信頼を獲得できるよう努めてまいります。
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。
当社グループはこれらのリスクの発生可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針です。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。
コロナ禍におけるニューノーマルとも呼ばれる働き方の根本的な変化や労働生産人口減少に伴う企業の業務効率化に対する社会的要請等により、ビジネスコミュニケーションの効率化に対するニーズは急速に高まっているものと認識しております。また、効率的なビジネスコミュニケーション手段として、その機動性等からチャットツールは有効であると考えております。
近年、チャットツールの導入企業は増加傾向にあると認識しておりますが、現時点における導入率は限定的であり、その潜在的需要は大きいものと考えております。
しかしながら、将来において経済情勢や景気動向の悪化等により、企業のITシステム投資、とりわけビジネスコミュニケーションへの投資の低迷が生じた場合には、市場拡大が当社グループの想定を下回る可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが事業を展開するビジネスコミュニケーション市場においては、各種ハードウエア・ソフトウエア及びサービスを提供する企業が多数参入しており、近年においては、クラウドサービス形態により関連サービスを提供する企業も増加しているものと認識しております。当該領域においてビジネスチャットツールを提供する企業も複数存在しており、これら企業との間で競合が生じております。また、一般にインターネット上で提供されるクラウドサービスは参入障壁が低いものと認識しております。
当社グループは、ユーザビリティや汎用性の高さ、強固なセキュリティ機能等を追求することにより、他社との差別化を図っており、今後も継続的にユーザー・インターフェースの改善や企業ニーズに応じた機能強化を実施していくことにより、サービスの競争力の維持向上に努めていく方針であります。
なお、当社グループは、競合企業の参入や拡大については、ビジネスチャットツール全体の認知度向上に繋がるものと考えられ、当社グループの事業にとっても一定のメリットがあるものと考えておりますが、過度な価格競争等を含む競合の激化が生じた場合や、当社グループにおける十分な差別化が困難となり競争力が低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが属するインターネット業界においては、市場及び顧客ニーズ、技術の変化が非常に速く、それに基づく新サービスの投入が相次いで生じております。
当社グループは、このような変化に迅速にキャッチアップすべく、最新の技術動向や企業ニーズ等を注視し、これら情報の収集やノウハウの習得、サービス開発に積極的に取り組んでおります。しかしながら、新技術や顧客需要の変化への対応が困難となる又は対応に遅れが生じる場合には、当社グループのサービスの競争力が低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業における、Chatworkセグメントについて、主として「電気通信事業法」及び関連法令等の規制を受けており、届出電気通信事業者としての届出を実施しており、ユーザーの通信の媒介にかかる通信の秘密の遵守等が義務付けられております。なお、当該届出について有効期限の定めはありません。また、セキュリティセグメントについては、主として通信販売事業者として特定商取引法及び関連法令等の規制を受けております。また、当社グループは「Chatwork」サービスを、日本語を含め6か国語にて展開しており、海外各国に登録ユーザーを有しております。
当社グループの事業は、比較的新しいビジネス領域であるため、国内外において今後新たな法令等が成立することで追加の規制を受ける可能性があります。現時点では特段認識しているものはありませんが、今後既存の規制への抵触あるいは何等かの新たな規制による当社グループの事業運営への影響が生じる場合は、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、近年、海外においては、EU加盟諸国における一般データ保護規則(GDPR)やベトナムにおけるサイバーセキュリティ法等の制定・施行等、各地域における個人情報やデータ保護にかかる規制強化が広く推進されており、これら動向により今後における当社グループの海外展開について制約を受ける可能性があります。
当社グループは「Chatworkセグメント」を主力事業と位置付けており、今後も当該事業を主軸とした事業展開に注力していく方針であることから、当社グループの事業成長は当該事業に依存しているものと認識しております。
当社グループは、上記「(1)ビジネスチャットツールにかかる需要動向について」に記載のとおり、今後も継続した市場拡大を想定しておりますが、事業環境の変化や当社グループのサービスの競争力低下が生じた場合、ビジネスチャット以外のビジネスコミュニケーションツールが普及する場合等には、当社グループの事業における依存度が高いが故に、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
Chatworkセグメントにおけるユーザー獲得は、フリーミアムによるものが多くを占めており、課金ユーザーの獲得においても、フリープランによるユーザー獲得から有料プランへの転換を促す手法が一定の割合を占めております。
フリープランにおいては利用可能なストレージ容量やグループチャット数の制限を設定しており、ユーザー企業における本格的な導入及び利用に際しては、当該制限の解消やユーザー管理機能等の必要性から一定割合にて有料プランへの移行が発生するものと想定しております。
しかしながら、将来において、ユーザー利用がフリープランの範囲で完結するようなライトユーザーの割合が増加した場合、結果的に有料プランの拡大に結び付かず、当社グループの事業成長が想定通りに進展しない可能性があります。
当社グループは、「4 経営上の重要な契約等」に記載のとおり、KDDI株式会社に対してChatworkをOEM提供しております。同社との関係は良好であり、現時点において特段の懸念事項は生じておりませんが、今後において同社の販売戦略等の変更が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは販売体制の強化を目的として、2018年12月期より販売代理店による営業活動を開始しており、現時点においては代理店開拓に注力しております。各販売代理店企業の事業展開等により今後の事業展開が当社グループの想定通りに進展しない可能性があり、その場合においても、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Chatworkセグメントについては、チャットツール利用にかかる付加価値向上等を目的として、プラットフォーム事業を展開しております。当社グループにおいては、これらサービス拡大は、「Chatwork」のビジネスインフラとしての地位確立及び当社グループの収益基盤の多様化に寄与するものと考えており、今後もプラットフォーム事業の拡充を含めて新たな事業領域におけるサービス展開を検討していく方針であります。
しかしながら、新たな事業領域やサービス展開にかかる追加的支出の発生や新規サービスにおいて収益獲得が進展しない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9)サービス価格について
当社グループの事業においては、顧客ニーズを踏まえた適正なサービス価格設定に努めておりますが、自社サービスの機能強化や競合対応等を目的として、サービスにかかる価格改定を行う場合があります。
今後において、価格改定については顧客及び競合状況等を慎重に判断した上で実施していく方針でありますが、
当社グループの価格戦略と顧客ニーズにミスマッチが生じた場合には顧客獲得等に影響が生じる可能性があり、当
社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループのセキュリティセグメントは、Chatworkセグメントへの経営資源の集中を図るため、経営資源の投入を抑制する形で事業を運営しており、今後についても、当社グループとして積極的に事業拡大を図る方針は有しておりません。
なお、セキュリティセグメントについては、セキュリティ対策ソフト市場における競合や当社グループ取扱製品の競争力の動向、メーカー又は日本総代理店の販売戦略の変更等の外部要因によって、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社の代表取締役兼社長執行役員CEOである山本正喜は、当社設立以来、当社の経営戦略の構築や実行及び技術的判断において重要な役割を担っております。
こうした状況を踏まえ当社では、特定の人物に依存しない体制を構築すべく執行役員制度を導入し各部門責任者への権限委譲を随時推進する等により組織体制の強化を図り、安定的な経営体制の構築に努めております。
しかしながら、成長段階である現状において何らかの理由により、当人が当社の業務を継続することが困難となった場合は、当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの人員は、2021年12月末現在251名であります。当社グループは今後の事業規模の拡大に応じて人材の確保及び育成を進めるとともに、業務執行体制の強化を図る方針であります。
しかしながら、一般的にインターネット業界では人材の流動性が高く、特に足許ではITエンジニアに対して業界内の各社が獲得競争を行っている状況であると認識しております。こうした環境から、今後人材が機動的に確保できない場合、又は急な従業員の減少等があった場合には、当社グループの事業運営及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは今後の事業拡大に対応するため、内部管理体制についても一層の充実を図っていく方針でありますが、事業の急速な拡大等により、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業においては、サービス利用にかかるコミュニケーション等において、ユーザー企業等にかかる個人情報や機密情報が含まれており、これら情報にかかるデータ等を大量に取り扱っております。
当社グループは、役職員に対する個人情報取扱いにおける研修の実施、システム上のセキュリティ対策やアクセス権限管理の徹底に加え、情報セキュリティマネジメントシステム「ISO 27001」、「ISO27017」及び「ISO 27018」の認証を取得し、当該公的認証に準拠した規程・マニュアルの整備・運用を行うことで、情報管理体制の強化に努めております。
なお、当社グループでは、2019年7月以降、第三者からのパスワードリストアタック攻撃(※)を受けたことから、ユーザーに対する二段階認証設定の喚起及び不正アクセスと見受けられる通信機器からのアクセスの遮断等の対策を講じることで、情報の漏洩防止にかかる一層の強化を図っております。
しかしながら、このような対策をとっているものの、万が一、外部からの不正アクセス、システム運用における人的過失、その他想定外の事態の発生により個人情報等が社外に流出した場合、当社グループの社会的信用の失墜又は損害賠償請求の発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
※パスワードリストアタック攻撃とは、外部の攻撃者が独自に入手した何らかのシステムに係るユーザーIDとパスワード対応リストを用いて、様々なITサービスへの侵入を試みる行為を指します。
当社グループの事業は、そのサービス特性からサービス及びシステムについて高い安全性及び安定性が求められております。当社グループのサービスは、インターネットを介してサービスを提供する形態であり、自然災害、火災等の事故、外部委託事業者における障害発生により、通信トラブルが生じた場合、継続したサービス提供等に支障が生じる可能性があります。
また、当社グループのシステムにおいて、ソフトウエア又はシステム機器等の瑕疵・欠陥等によるトラブル発生した場合、コンピュータウイルスやハッカーの侵入等によりシステム障害が生じた場合、サイトへの急激なアクセス増加や予測不可能な様々な要因によってコンピュータシステムがダウンした場合にも、同様のリスクがあります。
当社グループにおいては、顧客へのサービス提供が妨げられるようなシステム障害を回避すべく、定期的なバックアップ、システムの多重化等により未然防止策を実施しております。しかしながら、当該対応にも拘らず、何らかのトラブル等に起因して大規模なシステムトラブルが発生し復旧遅延が生じた場合、サービス継続に支障が生じた場合には、当社グループのシステム及びサービスに対する信頼性の低下やクレーム発生その他の要因により、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループのサービスのうちエンタープライズプラン及びKDDI Chatworkについては、サービス品質保証(SLA)を設定しており、サービスにかかるサーバー稼働率が設定された水準を下回った場合、利用料の一部を返還することとしており、障害等によって稼働率が低下しユーザー企業から返還申請が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは提供サービスの商標権等必要な知的財産権については登録を行い、また提供サービスの他社の知的財産権の侵害可能性についても弁理士等専門家を介して適宜確認をしております。当社グループはこれまで、特許権、商標権、意匠権等の知的財産権に関しては、他社の知的財産権を侵害したとして損害賠償や使用差止めの請求を受けたことはなく、知的財産権の侵害を行っていないものと認識しております。しかしながら、当社グループの事業に関連する知的財産権について、第三者における、当社グループが認識しない知的財産権が存在した場合、又は新たな特許等が成立した場合、当該第三者より知的財産権の侵害を理由とした損害賠償や使用差止め等の請求が行われることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは税務上の繰越欠損金を有しており、期限内にこれら繰越欠損金の繰越控除を受ける予定であります。しかしながら、当社グループの業績が順調に推移することで繰越欠損金を上回る課税所得が発生した場合には、所定の税率に基づく法人税等の納税負担が発生するため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(17)固定資産の減損リスクについて
当社グループは、ソフトウエア等の固定資産を有しておりますが、固定資産の減損に係る会計基準等により、当社グループが保有する固定資産が、収益状況の悪化等の事由により、減損処理が必要になった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しており、剰余金の配当については、内部留保とのバランスを考慮して適切な配当を実施していくことを基本方針としております。
しかしながら、当社グループは現在、成長過程にあると認識していることから、内部留保の充実を図り、収益力強化や事業基盤整備のための投資に充当することにより、なお一層の事業拡大を目指すことが、将来において安定的かつ継続的な利益還元に繋がると考えているため、今後の配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。
当社では、当社の役職員(元役職員を含む)に対して、インセンティブを目的として新株予約権を付与しており、本書提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式の割合は7.4%となっております。
これら新株予約権が行使された場合には、当社の株式が発行され、既存株主が有する株式の価値及び議決権が希薄化する可能性があります。
当社グループは、長期ビジョンであるビジネス版スーパーアプリの実現に向けた事業規模の拡大とサービス拡張のための手法の一つとして、M&Aや資本提携を強化していきます。M&A前の段階において、対象会社の財務内容や契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行い、リスクを吟味した上で判断及び実行しております。しかしながら、投資後に偶発債務や未認識債務の判明等、事前の調査において認識できていなかったリスクが生じた場合や、投資後の事業の統合が計画通り進まない場合は、対象会社の株式価値や譲受けた事業資産の減損処理を行う必要が生じる等、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を与える可能性があります。
また、当社グループが過去に実行したM&Aに伴い、のれんを計上しておりますが、今後、株式取得時の業績計画が達成できない見込みとなり減損処理が必要となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前連結会計年度との比較・分析の記載はしておりません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度末における総資産は、5,145,401千円となりました。その主な内訳は、現金及び預金3,200,053千円、前払費用446,392千円、のれん318,894千円であります。
当連結会計年度末における負債は、1,765,568千円となりました。その主な内訳は、前受金649,262千円、未払金447,048千円、長期借入金365,500千円であります。
当連結会計年度末における純資産は、3,379,832千円となりました。その主な内訳は、資本金2,525,611千円、資本剰余金2,511,471千円であります。
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が進み、感染状況にも改善傾向が見られ、景気の持ち直しが期待されているものの、変異株が急激な拡がりを見せており、引き続き先行き不透明な状況が続いております。一方で、新型コロナウイルス感染症対策に伴うテレワーク需要増加を背景に、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関連するシステム投資が、一層注目を集めております。
このような環境の中、当社は「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションのもと、人生の大半を過ごすことになる「働く」という時間において、ただ生活の糧を得るためだけではなく、1人でも多くの人がより楽しく、自由な創造性を存分に発揮できる社会を実現することを目指し、仕事の効率化や新しく創造的な働き方を実現する製品やサービスの開発・提供に取り組んでおります。
当事業年度は、主力のChatworkセグメントの拡販に努める一方で、新たな機能のリリース等、計画に沿った開発にも注力しました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は3,372,285千円、営業損失は693,934千円、経常損失は710,964千円、親会社株主に帰属する当期純損失は745,631千円となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
Chatworkセグメントは、主力サービスである「Chatwork」の利点を訴求し、新たな機能追加と顧客の開拓に努めました。以上の結果、売上高は3,153,280千円、セグメント損失は740,328千円となりました。なお当セグメントが当社グループの主力事業であり、本社機能も含めて各間接費の全てが当セグメントの維持・拡大のために費やされていることから、間接費の全額を当セグメントにおける費用として計上しております。
セキュリティセグメントについては、当社グループとしては積極的な事業拡大は行わない方針としております。その結果、売上高は219,005千円、セグメント利益は46,394千円となりました。なお、当セグメントのセグメント利益については、前述のとおり間接費を全てChatworkセグメントにて計上していることから、当セグメントの売上高より当セグメントに要した広告宣伝費、販売促進費及び業務委託費等の直接経費のみを控除した金額を計上しております。
当連結会計年度において現金及び現金同等物の残高は3,200,053千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、475,251千円の支出となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失844,096千円の計上、前受金が318,186千円増加したことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、840,207千円の支出となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出453,900千円、無形固定資産の取得による支出304,681千円によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,668,039千円の収入となりました。これは主に、株式の発行による収入2,162,087千円、長期借入れによる収入510,000千円によるものであります。
当社は生産活動を行っていないため、記載を省略します。
当社事業は、提供するサービスの性質上受注実績の記載になじまないため、記載を省略します。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に見積り、計上しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当連結会計年度における売上高は、3,372,285千円となりました。内訳としては、主力事業であるChatworkセグメントの売上高が3,153,280千円、セキュリティセグメントの売上高が219,005千円であります。これは、Chatworkセグメントにおける新規顧客開拓の強化やサービスの機能強化を行った結果、当サービスの利用企業数(登録アカウント数)が2020年12月期末29万社から当連結会計年度末に34万社超となり、課金ID数が2020年12月期末458千名から当連結会計年度末549千名と大幅に増加したことによります。
なお、Chatworkセグメントにおける事業別の売上高の状況は以下のとおりです。
当連結会計年度における売上原価は、993,543千円となりました。主な内訳は、労務費442,995千円、サーバー費用313,139千円であります。また、ソフトウエア開発に関わる費用のうち、資産性がある新規開発プロジェクトについて無形固定資産として304,681千円計上しております。この結果、当連結会計年度の売上総利益は2,378,741千円となりました。
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、3,072,676千円となりました。主な内訳は、給料手当が862,821千円、広告宣伝費が823,046千円、支払手数料が313,986千円、採用費が203,336千円であります。これにより、当連結会計年度の営業損失は693,934千円となりました。
当連結会計年度における経常損失は、710,964千円となりました。これは、営業外収益1,713千円を計上する一方で、営業外費用にて株式交付費15,447千円等が計上されたことによるものであります。
法人税等を△34,860千円計上し、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純損失は、745,631千円となりました。
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況の概要 ①財政状態の状況」をご参照下さい。
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照下さい。
当社グループのビジネスモデルは、サブスクリプション型のユーザー課金モデルとなっており、課金対象となっている既存顧客が利用を継続する限りにおいては、安定的な収入が計上されます。従って、今後の収益獲得の予測を考慮し事業戦略も踏まえ、どのように費用充当していくかが重要であると考えております。
今後の基本方針としては、営業部門の人件費や広告宣伝費といった更なる販売促進に係る費用として充当していき、長期ビジョンであるビジネス版スーパーアプリの実現に向けたM&Aや新ビジネス開発といった成長投資資金の源泉としていきたいと考えております。
なお、資金の流動性については、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,200,053千円となっており、流動性を確保しております。
当社グループは、経営上の目標の達成状況をChatworkセグメントにおける「課金ID数」及び「売上高成長率」の指標で判断しております。当連結会計年度における課金ID数は549千名と2020年12月期末の458千名対比で19.9%増加しております。加えて、Chatworkセグメントにおける当連結会計年度における売上高は3,153,280千円と2020年12月期の2,132,045千円に対して47.9%増加しております。現時点においては予定を大幅に上回る事業進捗となっており、また当社グループのビジネスモデルがサブスクリプション型であり足許の収入の安定化や新規の案件獲得により今後の業績以上の売上が期待できることから、順調に推移しているものと認識しております。
該当事項はありません。