文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、1927年の創業以来約100年にわたって、時代の変化をとらえ、世の中にないものをつくり続けてまいりました。経営理念を「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」と定め、新しい価値の提供を目指して事業を展開しております。これまで事業の中心であった文具事務用品に加えて、インテリアライフスタイルの分野に事業領域を広げ、グループ経営を推進する中で、2021年にコーポレートメッセージ「おどろき、快適、仕事と暮らし」を制定しました。今後も仕事と暮らしを快適にし、「あたらしさ」にこだわり続けてまいります。
また、サステナビリティ向上のための基本的な指針を明示するものとして「キングジムグループ サステナビリティ基本方針」を定めております。
キングジムグループ サステナビリティ基本方針
キングジムグループは、企業活動を通じて持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な発展を目指します。
■仕事と暮らしを便利で快適にする商品を開発し、世の中に新しい価値を提供することで社会に貢献します。
■社会の責任ある一員として資源の有効活用を積極的に行い、企業活動の全域で地球環境の保全につとめます。
■多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮し、自分らしく活躍するための職場環境づくりを推進します。
■健全なガバナンスにより社会から信頼される経営を行い、継続的な企業価値の向上を目指します。
当社グループは、上記経営方針の実践によって、引き続き企業価値を高めてまいります。
(2) 経営環境
当社グループを取り巻く経営環境としては、コロナ禍によりペーパーレス化、デジタル化が進行する中、ファイル依存の収益構造からの脱却が課題となっております。
一方でEC市場の伸長により、EC事業は業績を伸ばしております。2023年2月に吸収合併した㈱エイチアイエムのEC店舗「Latuna(ラチュナ)」も売上に寄与しております。さらにM&Aにより事業の拡大にも継続的に取り組んでおり、2021年11月にグループ入りした生活家電・雑貨・ルームフレグランス等の企画・販売のライフオンプロダクツ㈱が当連結会計年度より当社の連結業績に寄与しております。
このような環境のもと、当社グループは第10次中期経営計画の達成に向けて、課題に取り組んでまいります。
(3) 目標とする経営指標
2024年6月期を最終年度とする第10次中期経営計画は次のとおりであります。
(4) 会社の中長期的な経営戦略と対処すべき課題
当社の経営理念およびサステナビリティの考え方に基づき、ESGの観点から当社の事業活動と社会課題の関連性が高い4つの項目、「独創的な商品の開発による社会貢献」「環境への配慮」「多様な人材の活躍推進」「ガバナンスの充実」をマテリアリティ(重要課題)として特定しております。マテリアリティ(重要課題)の解決を通して、持続可能な社会の実現と更なる企業価値の向上を目指してまいります。
新型コロナウイルス感染症の影響によって当社を取り巻く事業環境は変化しています。ペーパーレス化・デジタル化が進行する中、ファイル依存の収益構造から脱却を図る一方で、新しい働き方・暮らし方やEC市場の拡大を事業成長の機会ととらえております。
2024年6月期を最終年度とする第10次中期経営計画において、当社グループが保有している柔軟な開発体制と独創的で多彩な商品群、多様な販売チャネルといった経営資源を最大限に活用し、グループ経営を推進することで、経営基盤を固め、持続的な成長を目指します。方針として「成長分野への注力」と「基盤事業の更なる強化」を掲げ、以下の施策を実行いたします。また、サステナブルな社会の実現を重点目標として、ESGの取り組みを進めてまいります。
① 成長分野への注力
(注)当連結会計年度より、従来の「女子文具」を「スタイル文具」に名称変更いたしました。
② 基盤事業の更なる強化
当社グループは、企業活動を通じて持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な発展を目指しており、ESGに関するさまざまな施策や国際社会共通の目標であるSDGsの達成につながる取り組みを推進しております。また、気候変動課題への取り組みを進めるにあたり、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しております。以下、TCFDの枠組みに沿ってサステナビリティの情報を開示いたします。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
サステナビリティに対する取り組みについては、サステナビリティ担当役員を推進委員長とするサステナビリティ委員会において、各種方針や課題の解決に向けた詳細な目標の設定、それらを実践するための体制および具体的な施策を決定しております。サステナビリティ委員会における重要な検討・決定事項は、必要に応じて経営会議で事前に審議した上で、取締役会に付議・報告されており、経営における意思決定や取り組み状況に対する監督が適切に行われる体制を整備しております。
サステナビリティの向上を推進するにあたり、「キングジムグループ サステナビリティ基本方針」を定めております。基本方針に沿って、ESGの観点から当社の事業活動と社会課題の関連性が高い項目をマテリアリティ(重要課題)として特定し、これらに紐づく重要テーマを選定いたしました。特定したマテリアリティ(重要課題)をSDGsと関連付け、マテリアリティ(重要課題)の解決に向けた取り組みを通してSDGsの達成に貢献してまいります。
●マテリアリティ(重要課題)・SDGs対照表

<人的資本・多様性に関する取り組み>
当社グループは、性別、年齢、ワークスタイル、障がいの有無など多様な背景を持つ従業員に対応した労働環境を提供し、その従業員の発想を取り入れることが事業環境の変化への対応と会社の成長につながると考えております。
多様な人材がより自分らしく、より高いモチベーションを保ちながら働ける会社を目指し、変化に対応した制度の導入や従業員のサポートを行っております。
当社グループでは従業員ひとりひとりと会社が成長することを目指して、「人材育成・社内環境整備方針」を以下のとおり定めております。
「人材育成・社内環境整備方針」
●具体的な取り組み
当社では「人材育成・社内環境設備方針」に基づき、以下の取り組みを行っております。
①人材育成
当社では従業員の能力開発を促進し、チャレンジ意欲を高めることで、生きがい・働きがいを感じ、自己実現が可能になると考えています。また、従業員個々の自己実現と成長が会社の業績向上にも不可欠なことから、人材育成を積極的に行っております。
チャレンジ精神の奨励を目的とした「キャリアチャレンジ制度」や「社内提案制度」のほか、eラーニングや通信教育、社員自己啓発支援等の学習の機会を提供しております。
②労働安全衛生
当社は従業員の安全を第一に考え、労働安全衛生の向上に努めております。安全衛生委員会を設置し、当社本社と松戸事業所において事業所総括安全衛生管理者が安全管理者、衛生管理者などを指揮し、従業員の安全と健康を守る取り組みを行っております。
③ダイバーシティ・ワークライフバランスの推進
当社は従業員が自身の生活を充実させ、より自分らしく柔軟な働き方を選べることで、仕事へのモチベーションを最大限に引き出す組織を目指し、取り組んでおります。
時差勤務制度やテレワーク勤務制度を導入し、業務上の都合や傷病、育児・介護、感染症対策などの事由に合わせて、従業員の柔軟な勤務スタイルを実現しております。
<気候変動への対応>
気候変動が及ぼす事業へのリスク・機会による中長期的な影響の把握、対応策の検討のため、売上高構成比の高い「文具事務用品事業」を対象に、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)やIEA(International Energy Agency)の報告書を参照し、シナリオ分析を実施いたしました。
●当社が考えるシナリオ

シナリオ分析の結果、政策・法規制の強化などによる「移行リスク」、異常気象の激甚化・慢性化による「物理リスク」ともに、事業・財務への影響が大きいことが判明すると同時に、事業拡大の「機会」も存在していることが明らかになりました。
それぞれの対応策を講じることで、気候変動リスクを低減し、成長のための機会を積極的に活用してまいります。
●気候変動における事業リスクと機会、事業/財務影響への評価とその対応策

(3) リスク管理
当社グループが留意すべき気候変動をはじめとする環境課題を含むサステナビリティに係るリスクは、サステナビリティ委員会にて特定・評価し、対応策を決定しております。対応策は、各部門・グループ会社に展開し、サステナビリティ委員会がリスク状況のモニタリングを行っております。経営に重大な影響をおよぼす事象が発生するおそれが生じた場合には、直ちにサステナビリティ担当役員を通じて代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会に報告しております。報告を受け、リスクマネジメント委員会で対応を検討いたします。
「人的資本・多様性に関する取り組み」「気候変動への対応」を含む、サステナビリティに関する5つの指標と目標を設定し、それぞれの達成に向けて、活動に取り組んでおります。
なお、今後、サステナビリティの充実を図るために新たな指標と目標を検討・設定してまいります。
●サステナビリティに関する指標と目標

(注)1.CO₂排出量はScope1とScope2を対象にしております。
2.有給休暇取得日数の実績集計期間は2022年6月16日~2023年6月15日となります。
3.「CO₂排出量低減」以外の指標と目標は、当社のみが対象となっております。
<CO₂排出量低減推移>

当社は、当社グループの事業活動に影響を与える可能性のあるリスクを洗い出し、リスク項目ごとに所管部を定めて常時リスクを管理しております。各所管部は、担当するリスクの危険度をモニタリングし、経営上重要と思われる事象が発生するおそれが生じた場合は、直ちに担当役員を通じてリスクマネジメント委員会に報告するとともに、リスクマネジメント委員会が対応策を協議・承認しております。各所管部は、毎年1回、リスクの発生回避、対策、管理状況等を取締役会へ報告しております。また、リスク項目については、当社グループの事業活動を取り巻く環境の変化、影響度合いや発生頻度に応じて見直しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 研究開発投資
当社グループの事業環境は、デジタル化の進展に伴うペーパーレス化により、主力のファイル市場が縮小しております。新型コロナウイルス感染症の流行およびアフターコロナの状況に伴い変化したワークスタイルや生活スタイルに適応した、新たな商品開発に積極的に投資をしております。しかしながら、これらすべての開発投資が市場に受け入れられるとは限らず、その結果によっては当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、新しい市場を作り出す商品の開発やサステナビリティの観点から環境に配慮した商品の開発に注力し、キングファイル・テプラと並ぶ第3の柱の構築を模索してまいります。
(2) 知的財産の保護
当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しないように、また当社グループの知的財産権が第三者に侵害されないように、知的財産権保護のための体制を整備しております。しかしながら、第三者から知的財産権の侵害を理由とする訴訟が提起されたり、第三者から知的財産権を侵害されたりする可能性もあります。このような事態は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、商品化に際して、第三者の知的財産権を調査するとともに、第三者から訴訟を提起された場合は知的財産部門と社外の弁護士・弁理士と連携して対応する体制を整えております。また、当社グループの知的財産権を侵害する疑いのある商品を発見した場合は、警告文を送付する等の対応を行っております。
(3) 製造物責任
当社グループは、定められた品質管理基準に従って管理体制を確立し実施しております。しかしながら、予期せぬ欠陥が生じ顧客に損害が発生した場合には、顧客の信頼を喪失する可能性があり、また、製造物責任保険に加入しておりますが、保険で賠償額をカバーできない可能性もあるため、このような事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、継続して品質管理基準に従った管理体制の整備・構築と運用の遵守・徹底を図ってまいります。
(4) 原材料等の価格変動
当社グループの製品は、主な原材料として合成樹脂、紙、鋼板、半導体等を使用しており、これらは原油価格の市況や、世界的な需給バランスの乱れによる原料不足により、価格が大きく変動する場合があります。原油価格や原材料価格が予期せず急激に高騰し、原材料の安定的な調達が困難となった場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、原材料の複数社購買、仕入先との連携、代替品対応、生産の効率化による原価低減等の施策を実施し、リスク低減に取り組んでおります。
(5) 海外情勢
当社グループの製品は、主に海外で生産を行っております。海外における経済情勢や政治情勢の変動、戦争やテロ、新型コロナウイルス感染拡大防止のためのロックダウンによる操業禁止等により、部品の調達や製造が困難になり、当社グループ製品の安定的供給に支障をきたし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、主要商品の調達先については特定の国や地域に集中せず分散化を図っており、また部品の市場動向等の情報を収集して安全在庫を確保しております。
また、海外の販売において、新型コロナウイルス感染状況は改善傾向にあるものの、各国の行動規制により、営業活動に引き続き支障が発生する可能性があります。特に、経済復調の程度に差があることから、東南アジア圏における販売状況は依然芳しくないことが予想されます。
リスクへの対応として当社グループは、海外事業担当部門および海外現地法人が連携を図ることによって、適切にリスク管理を行う体制を整備しております。
(6) 為替変動
当社グループは、主に海外で生産を行っており、製品および原材料等の輸出入において、一部外貨建取引を行っております。また、外貨建債権債務を保有しているため、大幅な為替変動が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、為替予約取引等を行っております。
(7) 棚卸資産
当社グループでは、需要予測に基づいた生産計画等を行い、適切な在庫管理に努めております。しかしながら、市場環境の変化や販売見込みの相違により、販売実績が当初の予測を大きく下回る結果となる場合もあります。市場環境の変化や商品の陳腐化等による価値の大幅な減少や、収益性低下により、正味売却価額が取得原価よりも下落した場合、棚卸資産の評価損を計上することとなり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、外部環境や営業情報などを適宜収集し需要予測の精度を向上させるとともに、在庫水準を随時監視し生産調整を図っております。
(8) M&A
当社グループは、M&Aを事業拡大の一つの手段と考え、当社グループの成長戦略に十分貢献することができる案件、当社の既存ビジネスとのシナジー効果が期待できる案件を中心に鋭意検討しております。M&Aにあたっては、対象企業の主力商品および事業の競争力、強みと弱み、財務内容、契約関係、特許等の訴訟関係等について事前調査を行い、決定しております。しかしながら、事前調査で把握できなかった偶発債務や未認識債務等が存在した場合や、市場環境の変化等により事業の展開が計画通りに進まなかった場合には、対象企業の投資価値の減損処理を行う等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、M&Aの検討時においては、詳細な事前調査の徹底で調査漏れを防ぎ、経営統合後の事業展開や損益計画について討議・検証を実施し決定します。また、シナジー効果を早期に発揮するために、社内に部門横断の委員会を設置し、経営統合を円滑に進めております。
(9) 情報セキュリティ
当社グループは、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、ソフトウェアや情報機器の欠陥および内部からの不正な情報持ち出しによって、情報の流出、改ざん等のリスクがあります。このような事象が発生した場合、事業活動に支障をきたし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、重要な情報の紛失、個人情報・機密情報漏洩等の防止のため、アンチウイルスソフトの導入および社員教育・啓蒙活動を実施しております。また、内部からの不正情報持ち出し対策として外部ストレージの利用についてルールを定めて運用しております。
(10) 自然災害
当社グループは、国内外を問わず、地震、台風等大規模な災害が発生した場合に備え緊急時の対応を整備しておりますが、想定範囲を超えた自然災害が発生した場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、これらの復旧にも多大の費用を要する可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、「キングジムグループ危機管理規程」「危機管理細則」および「緊急災害時行動マニュアル」等を定めております。危機が発生し、またはそのおそれが差し迫ったとの情報を把握した場合は、当該規程等に定める危機管理体制に基づいて、直ちに対策を講じます。
(11) 新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症は、ワクチン接種の普及により重症化リスクが減少し、経済活動が正常に戻りつつありますが、感染の収束状況や影響が長期化した場合、国内外サプライチェーンの停滞、経済情勢の低迷によって、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
リスクへの対応として当社グループは、お客様や従業員の安全を最優先とし、テレワークの推進、時差勤務の推奨、WEB会議の積極的な活用、手指消毒の徹底等の感染予防策を取りながら事業運営を行っております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動縮小から緩やかに持ち直す動きがみられましたが、世界的な金融引き締めを背景とした金融資本市場の変動や継続的な物価上昇の影響により、依然として厳しい状況となりました。
このような状況のもと、第10次中期経営計画(2022年6月期から2024年6月期)の目標達成に向けた取り組みを実行してまいりました。
「テプラ」やファイルといった基盤事業のさらなる強化を図りつつ、インテリアライフスタイル事業や衛生・健康用品の拡販、M&Aによる事業領域拡大など、成長分野への注力をしております。
当連結会計年度の業績につきましては、2021年11月より子会社化したライフオンプロダクツ㈱と2023年2月に吸収合併した㈱エイチアイエムの売上寄与により、売上高は 393億9,389万円(前連結会計年度比 7.5%増)となりました。利益面では、製品の価格改定により収益の確保に努めましたが、急激な円安や物流費等の高騰に加え、原材料価格も依然として高い水準にあることから、営業利益は3億6,830万円(前連結会計年度比 63.4%減)、経常利益は6億3,727万円(前連結会計年度比 52.4%減)、特別利益として政策保有株式の売却による投資有価証券売却益や販売物流システム再構築遅延に伴う受取和解金等があり、親会社株主に帰属する当期純利益は4億1,979万円(前連結会計年度比 46.8%減)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
・文具事務用品事業
基盤事業である文具事務用品事業は、新たな用途提案や商品のリニューアルによって需要の掘り起こしを図り、売上拡大に努めました。「テプラ」では、スマホで手軽にラベルを作成できる「SR-R2500P」を発売いたしました。ステーショナリーでは、定番商品をトレンドカラーにリニューアルした「カラーセレクション」シリーズ、“推し活”を楽しむ人向けに8色の豊富なカラーバリエーションから選べる「favluv(ファブラブ)」を発売いたしました。成長分野の各カテゴリにおきましては、世の中のニーズに応える商品を開発し、市場に投入いたしました。デジタル文具では、デジタルメモ「ポメラ」の新機種「DM250」を発売、衛生・健康用品では、会話により発生した飛沫を吸引する「飛沫キャッチャー」を発売いたしました。オフィス・生活環境用品では、道路交通法施行規則の改正により、一般事業者までアルコールチェックが義務化対象となることに先立ち、呼気中のアルコール有無を判別できる「アルコールチェッカー」を発売いたしました。
販売拡大のための施策として、新規チャネル開拓を継続するとともに、テレビ通販の活用、教育機関や建設業への衛生・健康用品の提案などを積極的に推進いたしました。関心が高まる節電対策に向けて、エアコンに取りつけて空調効率をアップさせる「ハイブリッドファン」のキャンペーンを行っております。また、防災用品の認知拡大・売上獲得を目指し、2023年5月10日~5月12日にかけて東京ビッグサイトで開催された「第18回 オフィス防災EXPO[春]」に出展したほか、「防災アイテム丸わかりBOOK」と題したパンフレットを作成し、オフィス用品メーカーならではの切り口で新規需要獲得に取り組みました。また、㈱エイチアイエムの吸収合併に伴う売上加算もあり、EC事業が伸長いたしました。
しかしながら、昨年好調だった手指消毒器「テッテ」の反動減などの影響により、売上高は 259億3,356万円(前連結会計年度比 0.5%減)、急激な円安や物流費等の高騰に加え、原材料価格の高止まりにより、営業損失は 2,007万円(前連結会計年度は5億2,671万円の営業利益)となりました。
・インテリアライフスタイル事業
㈱ぼん家具は、収納用品を中心に家具の売上が拡大いたしました。新製品では、主力の組み立て家具に加え、新カテゴリーとしてペンダントライトなどの照明器具やキッズ用収納品の発売を開始し、売上が好調でした。また、主力店舗のゲキカグが、「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2022 家具・収納ジャンル賞」を受賞いたしました。ライフオンプロダクツ㈱では、夏物新作商材の襟エアーファンや3WAYアロマハンディファンなどが好調でした。また、社名を冠した新プロダクトブランド「Life on Products」を立ち上げ、発表会を行いました。㈱ラドンナでは、主力のキッチン家電は売上の伸びがやや鈍化し、前年並みとなりました。Toffyブランドの認知が広まり、メディアでの露出やノベルティ案件が増えております。フォトフレームは、主力のカメラ量販店向けの受注が安定しております。㈱アスカ商会では、主力の花類がフォトスタジオ装飾やブライダル需要の復調により好調でした。グリーン・観葉類も、オフィス需要の取り込みにより引き続き好調を維持しております。
この結果、㈱ぼん家具と㈱アスカ商会が好調だったことに加え、2021年11月より子会社化したライフオンプロダクツ㈱の加算もあり、売上高は 134億6,033万円(前連結会計年度比 27.3%増)、急激な円安による売上原価率の上昇により、営業利益は3億7,077万円(前連結会計年度比 19.9%減)となりました。
また、財政状態の状況については、次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して 22億9,996万円増加し、358億1,214万円となりました。これは主に、商品及び製品が12億2,813万円、投資有価証券が7億7,028万円、㈱エイチアイエムの株式取得によりのれんが2億3,575万円それぞれ増加したことによるものであります。
負債は、前連結会計年度末と比較して 16億9,854万円増加し、109億7,881万円となりました。これは主に、運転資金需要として短期借入金が 21億5,000万円増加したことによるものであります。
純資産は、前連結会計年度末と比較して6億141万円増加し、248億3,333万円となりました。これは主に、その他有価証券評価差額金が5億335万円、為替換算調整勘定が2億72万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して2億8,636万円増加し、59億2,375万円(前連結会計年度比 5.1%増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、1億6,626万円(前連結会計年度は 12億7,830万円の資金使用)となりました。これは主に、棚卸資産の増加額8億7,445万円や法人税等の支払額3億4,621万円等があった一方、税金等調整前当期純利益8億1,709万円や減価償却費6億3,163万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ 23億4,392万円減少し、12億3,486万円となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入2億3,250万円があった一方、子会社株式の取得による支出5億5,000万円や有形固定資産の取得による支出3億8,500万円、無形固定資産の取得による支出2億5,165万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、前連結会計年度に比べ 21億4,131万円減少し、10億6,532万円となりました。これは主に、配当金の支払額6億2,616万円や長期借入金の返済による支出4億4,840万円があった一方、 短期借入金の純増額 21億5,000万円等によるものであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、文具事務用品のみ生産活動を行っております。
(注)1. 金額は標準出荷価格で表示しております。
2. 当連結会計年度より、従来の「電子製品」を「電子および生活環境用品」に名称変更いたしました。当該変更については、名称変更のみであります。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 当社および連結子会社においては、大部分は見込生産であり、特注品のみ受注生産であります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. 当連結会計年度より、従来の「電子製品」を「電子および生活環境用品」に名称変更いたしました。当該変更については、名称変更のみであります。
2. 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
イ.売上高
「第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
ロ.売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度の売上原価につきましては、急激な円安や原材料価格の高騰により、売上原価率は 64.0%となり、前連結会計年度の売上原価率 63.2%より 0.8ポイントの上昇となりました。
販売費及び一般管理費につきましては、物流費等の高騰により売上高に対する割合は 35.1%となり、前連結会計年度の 34.0%より 1.1ポイントの上昇となりました。
ハ.営業利益
当連結会計年度の営業利益につきましては、売上高は増加しましたが、売上原価率と販売管理費率の上昇により 3億6,830万円(前連結会計年度比 63.4%減)となりました。
ニ.親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、特別利益1億8,019万円の計上により、4億1,979万円(前連結会計年度比 46.8%減)となりました。
② 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2[事業の状況] 3[事業等のリスク]」をご参照ください。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に係る情報
イ.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
「第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
ロ.資本の財源および資金の流動性に係る情報
当社グループの主な資金需要は、原材料調達や製品の製造費用、商品仕入費用、販売費及び一般管理費等の運転資金、企業価値向上を目的とした各種設備投資資金、また、事業拡大の一つの手段として実施しているM&Aのための資金等であります。これらは、自己資金、借入金により調達しております。
④ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」をご参照ください。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りのうち、特に重要なものは以下のとおりであります。
(棚卸資産)
「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
(固定資産の減損)
当社グループは、原則として継続的に収支の把握を行っている管理会計上の区分を考慮し資産のグルーピングを行い、遊休資産については個別に資産のグルーピングを行っております。固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、この検討は一定の仮定に基づき見積もった割引前将来キャッシュ・フロー等を基に行っております。対象となる資産または資産グループの帳簿価額に減損が生じていると判断した場合、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上します。
減損の兆候の把握、減損損失の認識および測定にあたっては、将来キャッシュ・フロー等の見積りやその前提となる仮定を用いており、今後、経営環境等の変化により前提条件や仮定に変動が生じた場合には、固定資産の減損処理に影響を及ぼす可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
繰延税金資産については、将来の利益計画に基づく課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で計上しております。市場環境の変化等により、課税所得の見積額が減少した場合は、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2024年6月期を最終年度とする第10次中期経営計画において、「成長分野への注力」と「基盤事業の更なる強化」の方針に基づき、売上高 480億円、経常利益 34億円、経常利益率 7.0%、自己資本当期純利益率(ROE) 9.0%を目標としておりました。
しかし、想定を上回る需要の変化や為替の変動等もあり、第10次中期経営計画の最終年度である2024年6月期の目標を、売上高 420億円、経常利益9億円、経常利益率 2.1%、自己資本当期純利益率(ROE) 2.4%に修正いたしました。
なお、経営者の問題認識、今後の方針については、「第2[事業の状況] 1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等] (4)会社の中長期的な経営戦略と対処すべき課題」をご参照ください。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発活動につきましては、コロナ禍における「新しい生活様式」に対応した商品、法改正などによる社会情勢の変化に対応した商品、定番人気商品群のカラーおよびデザイン刷新によるラインアップ強化などを行い、当連結会計年度は研究開発活動に対して総額
当連結会計年度中の主な新製品開発の成果は、次のとおりであります。
(1) 文具事務用品事業
① 電子および生活環境用品
「テプラ」では、手ごろな価格でさらなる普及を狙うラベルライター「テプラ」PRO SR-R2500Pを開発いたしました。スマホ専用機種で、2つの「テプラ」PRO用アプリ「Hello」「TEPRA LINK 2」とBluetooth®で接続して、お手持ちのスマホから簡単にラベルを作ることができ、オフィスや製造現場だけでなくご家庭でも幅広く、より手軽にご活用いただけます。また、スマートフォンのアプリから操作ができる、手のひらサイズのラベルプリンター「テプラ」Liteの新モデルとして、人気キャラクターの「すみっコぐらし」がデザインされた「テプラ」Lite LR30SG、および、すみっコぐらし柄の「テプラ」Liteフィルムテープを開発し、ご家庭でのテプラ活用シーン拡大に努めてまいりました。
デジタル文具では、デジタルメモ「ポメラ」の新モデル「ポメラ」DM250を開発いたしました。また、ブギーボードシリーズ初の2分割画面モデルとして「ブギーボード」BB-16を開発いたしました。それぞれの画面で書き込みと消去ができるので、各画面で別のメモを記入したり、対面での筆談時に質問欄と回答欄を分けて使用するなど、用途の幅が広がります。さらに、スリムフレームを採用し、筆記面積が増え、書きやすさや文字の見やすさを向上させた新型8.5インチモデルとして「ブギーボード」BB-17を開発いたしました。両モデルともに本体裏面にはマグネットが内蔵されているので、デスクやロッカー、冷蔵庫などのスチール面に貼り付けて使用できます。
衛生・健康用品では、会話による飛沫をすばやく吸引し、商談スペースなどの空間をすばやく浄化する「飛沫キャッチャー」を開発いたしました。2つの吸引ファンで効率的に周囲の空気を吸引し、静電HEPAフィルターで空気中に浮遊する飛沫を捕集し、空気を浄化します。加えて、近年のアルコールに対する飲酒運転根絶の意識の高まりを受けて「アルコールチェッカー」を2機種開発いたしました。「アルコールチェッカー」はいずれもアルコール検知器協議会(J-BAC)認定機器です。
② ステーショナリー
クリアーファイルやリングノート「テフレーヌ」など、好評を博している商品群のデザインを刷新した「カラーセレクション」シリーズを開発いたしました。また、好評の「カキコ」シリーズに、より一覧性の高いジャバラタイプを開発し、楽器演奏時やプレゼンテーション時により使いやすい用途を提案いたしました。さらに、環境配慮型商品としてサトウキビ由来の樹脂を配合した「バイオマス」シリーズのファイルを新たに開発いたしました。
スタイル文具ブランド「HITOTOKI(ヒトトキ)」では、人気シリーズの「KITTA」「SODA」「HITOTOKI NOTE」の新デザインを開発いたしました。また、作家とのコラボレーションを積極的に推進し、新たなファン層の獲得に努めてまいりました。
文具事務用品事業に係る研究開発費は
(2) インテリアライフスタイル事業
㈱ぼん家具では、主力商品の収納商品に加えて、照明器具の研究開発に取り組みました。㈱ラドンナでは、主にキッチン家電・雑貨の開発に力を入れ、新製品を投入いたしました。今後は、生活家電や健康雑貨などのカテゴリーの商品開発も手掛けてまいります。㈱アスカ商会では、リサイクル素材を使った商品を検討するなど、SDGsを意識した商品を開発中です。ライフオンプロダクツ㈱では、季節商材のファンにおいて、襟エアーファンなど機能や見た目において既存商材との差別化を図る商品を積極的に企画開発し、ラインアップの拡充に努めました。
インテリアライフスタイル事業に係る研究開発費は