当中間連結会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、前連結会計年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当中間連結会計期間における我が国経済は、第1四半期における景気回復の足踏み状態から第2四半期には緩やかな回復基調に転じました。日銀短観6月調査によれば企業の景況感は総じて良好で、大企業・非製造業の景況感が小幅に低下したものの高水準を維持し、大企業・製造業の景況感は2四半期ぶりに上昇しました。
医薬品業界におきましては、2024年度薬価改定において「ドラッグ・ラグ/ロスの解消」の施策の一つとして「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」のルール変更が行われました。業界団体は引き続き医薬品のイノベーションを評価する薬価上の措置を求めております。我が国の医薬品産業の国際競争力の低下を懸念する声も聞かれる中、政府は医薬品産業を成長産業と位置づけ、本年5月に開催された「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議(第5回会合)」において、我が国の創薬力の強化、国民に最新の医薬品を迅速に届けること、さらに、投資とイノベーションの循環が持続する社会システムの構築等の戦略目標を含む中間とりまとめを発表しました。この中間とりまとめの中でも、スタートアップによるシーズ創出や新規モダリティ医薬品に関する提言が盛り込まれており、当社グループのような創薬ベンチャーが果たすべき役割はますます大きくなっております。
このような環境下において、当中間連結会計期間における当社グループの業績は以下のとおりとなりました。
上市済みのヒト用医薬品については、HK inno.N Corporation(本社:韓国・オソン、以下「HKイノエン社」)が韓国で販売中の胃酸分泌抑制剤K-CAB®(一般名:tegoprazan、以下「tegoprazan」)の売上が引き続き好調に推移しております。当中間連結会計期間の売上は、院外処方データで919億ウォン(前年同期比24.1%増、約101億円/1韓国ウォン=0.11円)となりました。韓国の消化性潰瘍治療薬市場でのシェア14%であり、引き続きシェア第1位を維持しております。また、韓国におけるtegoprazanの物質特許(韓国特許番号:特許第1088247号)について消極的権利範囲確認審判が請求されておりましたが、本年6月、全ての請求が棄却されました。これにより、K-CAB®の独占販売権はより強固に守られると当社は考えております。
Tegoprazanのグローバル展開も着実に進展しております。当社は、HKイノエン社との間で、tegoprazanの開発・販売及び製造の再実施許諾権(サブライセンス権)付き独占的ライセンス契約を締結しております。当中間連結会計期間においては、サブライセンス先であるLaboratorios Carnot(本社:メキシコ・メキシコシティ)が、チリ、ドミニカ共和国、ホンジュラス、ニカラグア、グアテマラ及びエルサルバドルの6カ国において、現地当局から販売承認を取得しました。さらに本年4月、HKイノエン社は、Tabuk Pharmaceutical Manufacturing Company(本社:サウジアラビア・リヤド)との間で中東・北アフリカ地域を対象地域としたライセンス契約を締結しました。これらの進展に伴い、当社はHKイノエン社から一時金を受領いたしました。
当中間連結会計期間末の時点でtegoprazanは世界46カ国に進出しており、tegoprazan製品が販売されている国は、韓国、中国、フィリピン、モンゴル、メキシコ、インドネシア、シンガポール及びペルーの8カ国です。また、タイ、ベトナム、アルゼンチン等、東南アジアや中南米の国々でも承認審査が進行中であるほか、米国及びカナダ等の国々で臨床開発が進められております。HKイノエン社は、2028年までに世界100カ国に進出することを目指しています。
ペット用医薬品については、Elanco Animal Health Inc.(本社:米国・インディアナ州、以下「Elanco社」)に導出した犬の骨関節炎治療薬GALLIPRANT®(一般名:grapiprant)、犬の食欲不振症の適応を持つENTYCE®(一般名:capromorelin)、及び慢性腎疾患の猫の体重減少管理の適応を持つELURA®(一般名:capromorelin)の売上が順調に推移しております。また、ELURA®につきましては、本年2月、Elanco社は農林水産省から日本国内における製造販売承認を取得しました。2023年に製造販売承認を取得した欧州とあわせ、Elanco社によって製品発売に向けた準備が現在進められております。
その他の導出済みプログラムにつきましても、導出先企業及びサブライセンス先において前臨床開発段階以降の取り組みが進められております。当中間連結会計期間においては、Xgene Pharmaceutical Co.Ltd.(昌郁醫藥有限公司;本社:香港、以下「Xgene社」)に導出したTRPM8遮断薬(RQ-00434739/XG2002)について、Xgene社の子会社であるXgene Pharmaceutical Pty Ltd.が、豪州において第Ⅰ相臨床試験(以下、「本フェーズ1試験」)を開始しました。これに伴い、当社はXgene社から一時金を受領しました。本フェーズ1試験では、健康なボランティアを対象とした用量漸増試験により、TRPM8遮断薬の忍容性及び薬物動態を評価することで、その後の臨床試験に重要となる情報を取得する予定です。
また、当中間連結会計期間におきましては、以前から行っておりました事業開発活動の成果として、新たな契約を獲得いたしました。本年4月、当社はVelovia Pharma, LLC(本社:米国・テネシー州、以下「Velovia Pharma社」)との間で、消化器疾患、代謝性疾患及び線維症への応用が期待される4つの開発化合物(以下、「本化合物」)について、動物用医薬品を開発するためのオプション及びライセンス契約(以下「本契約」)を締結しました。本契約に基づき、当社はVelovia Pharma社に対して、本化合物を含有する動物用医薬品の評価、開発、製造及び販売等に関する独占的ライセンスに関するオプションを付与します。Velovia Pharma社により一つまたは複数の本化合物に対してオプションが行使された場合、当社は、Velovia Pharma社からオプション行使料を受け取るとともに、その後の開発の進捗に応じた開発マイルストンの支払いを受ける権利を取得します。さらに、本化合物を含有するペット用医薬品が販売に至った場合、当社は、製品売上高に基づく販売ロイヤルティ及び売上マイルストンをVelovia Pharma社から受け取る権利を有しています。
その他の導出準備プログラムにつきましては、前年に引き続き、自社で開発を進めているグレリン受容体作動薬の前臨床試験が進行しております。また、tegoprazanにつきましては、日本における開発・製造・販売にかかる権利を当社が保有しておりますが、第1四半期に引き続き第2四半期にも提携先候補企業との協議を進めております。その他の導出準備プログラムにつきましても、対面での面談とオンライン会議を機動的に組み合わせて提携先獲得を目指した事業開発活動を実施いたしました。
探索研究段階におきましても、新たな開発化合物の創出に向けた探索研究に加えて、「モダリティ」、「創薬標的」、「疾患領域」及び「基盤技術」という4つの切り口で、既存技術と新技術の相乗効果によって次世代の自社創薬バリューチェーンの確立に向けた取り組みを進めております。当社が強みとしてきた低分子創薬の強化に当たっては、化合物デザインAIやiPS細胞由来神経細胞などの新技術の活用を進めるほか、低分子創薬の新たな取り組みとして、がん治療薬の創出を目標として、mRNAを標的とする低分子医薬品の創出に向けた共同研究を株式会社Veritas In Silico(本社:東京都品川区)と進めております。当中間連結会計期間においては、化合物の探索が順調に進展し、目標とする特性を細胞レベルで示す低分子化合物を複数取得しました。また、2023年に湘南ヘルスイノベーションパーク(神奈川県藤沢市)に設置した新たな研究拠点では、新規モダリティを用いた創薬に取り組んでおります。STAND Therapeutics株式会社(本社:東京都港区)との間で実施中である、難病・希少疾患治療薬の創製を目指した細胞内抗体技術の創薬応用に関する共同研究もその一つです。
当社連結子会社の一つであるテムリック株式会社(本社:東京都新宿区)がSyros Pharmaceuticals Inc.(本社:米国・マサチューセッツ州、以下「Syros社」)に導出したレチノイン酸受容体α作動薬(タミバロテン/AM80/TM-411/SY-1425)については、骨髄異形成症候群(MDS)及び急性骨髄性白血病(AML)を対象とした臨床試験が米国で進行中です。MDSについては、タミバロテンとアザシチジンの併用療法に関する第Ⅲ相臨床試験(SELECT-MDS-1)の主要評価項目の解析に必要な症例登録が第1四半期に完了し、完全寛解率に関するデータが第4四半期中頃までに得られる見通しです。AMLについては、現在、Syros社が、RARA遺伝子の過剰発現を有し従来の化学療法が適さない未治療AML患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験(SELECT-AML-1)を実施中であり、Syros社は本年9月に本試験の追加データを報告する予定です。加えて、本年4月、Syros社は、米国食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)よりAMLを対象としたファストトラック指定を受けたことを発表しました。ファストトラック指定を受けた医薬品候補物質は、開発計画に関するFDAとの意見交換をより頻繁に行うことができるほか、臨床データの裏付けがあれば優先審査や迅速承認の対象となる可能性があります。
また、当中間連結会計期間において、当社はファイメクス株式会社(本社:神奈川県藤沢市、以下「ファイメクス」)の発行済株式及び新株予約権(以下「本株式等」)の全てを取得し完全子会社といたしました。本件に係る対価は、①本株式等の取得時に支払う一時金(以下「クロージング対価」)と、②ファイメクスが将来得る収益に基づく支払で構成されております。クロージング対価は4,500百万円であり、2024年3月26日の本株式等の取得時に支払いを完了しました。本件に関連して、当社は株式会社みずほ銀行をアレンジャー、株式会社商工組合中央金庫をコ・アレンジャーとするシンジケート団からの借入により3,500百万円を調達いたしました。
ファイメクスは、創薬の新たなモダリティである標的タンパク質分解誘導剤を用いて、従来の技術では治療薬の創製がきわめて困難(アンドラッガブル、Undruggable)とされてきた標的に対する革新的な医薬品の創出を目指すスタートアップであり、標的タンパク質分解誘導剤に特化した独自のプラットフォーム技術であるRaPPIDS™(Rappid Protein Proteolysis Induced Discovery System)を中核として、自社のパイプラインのライセンシングによって収益を上げるパイプライン型と製薬会社との共同研究により収益を上げるプラットフォーム型を組み合わせたハイブリッド型のビジネスモデルをとっています。ファイメクスの子会社化により、当社は、①プラットフォーム技術の獲得による創薬バリューチェーンの強化、②ビジネスモデルのハイブリッド化による収益の増加、③がん領域の強化と拡充を見込んでおります。
本年5月、ファイメクスは、アステラス製薬株式会社(本社:東京都中央区、以下「アステラス製薬」)との共同研究において初期目標を達成しました。ファイメクスはRaPPIDS™を用いて、アステラス製薬とともに、がんを標的疾患として複数の標的を対象とした標的タンパク質分解誘導剤の探索に2022年から取り組んでおりますが、今回達成した目標はそのうちの特定の1つのプログラムについてのものです。これに伴い、ファイメクスはアステラス製薬から一時金を受領しました。
以上の結果、当中間連結会計期間の経営成績は、事業収益1,411百万円(前年同期比39.1%増)、営業損失154百万円(前年同期は、営業損失23百万円)、経常損失277百万円(前年同期は、経常利益36百万円)、親会社株主に帰属する中間純損失323百万円(前年同期は、親会社株主に帰属する中間純利益25百万円)となりました。
なお、事業費用の総額は、1,565百万円(前年同期比50.9%増)となり、その主な内訳は事業原価226百万円(前年同期比85.6%増)、研究開発費832百万円(前年同期比38.0%増)及びその他の販売費及び一般管理費505百万円(前年同期比62.1%増)となりました。
(2)財政状態の分析
(資 産)
当中間連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ3,253百万円増加(47.3%増)し、10,125百万円となりました。これは主に、現金及び預金の減少534百万円、のれんの増加4,000百万円及び投資有価証券の減少473百万円によるものであります。
(負 債)
当中間連結会計期間末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,726百万円増加(495.8%増)し、4,477百万円となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金増加500百万円、前受金増加165百万円及び長期借入金増加2,868百万円によるものであります。
(純資産)
当中間連結会計期間末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ472百万円減少(7.7%減)し、5,648百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する中間純損失323百万円の計上及びその他有価証券評価差額金の減少153百万円によるものであります。
以上の結果、自己資本比率は55.6%(前連結会計年度末比33.1ポイント減)となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、前連結会計年度末に比べ550百万円減少(15.0%減)し、3,114百万円(前年同期は、3,565百万円)となりました。
当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は、129百万円(前年同期比81.9%減)となりました。これは主に、税金等調整前中間純損失273百万円及び減価償却費91百万円及びのれん償却額67百万円を計上した一方で、売上債権の増加172百万円、前払費用の増加154百万円による資金の使用及び未収消費税等の減少115百万円による資金の獲得によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、3,669百万円(前年同期比1,141.6%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出33百万円及び投資有価証券の売却による収入258百万円及び連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出3,879百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は、3,194百万円(前年同期比286.4%増)となりました。これは主に、長期借入れによる収入3,357百万円、長期借入金の返済による支出131百万円及びリース債務の返済による支出32百万円によるものであります。
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当中間連結会計期間において、前連結会計年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間連結会計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、832百万円であります。また、当中間連結会計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(7)従業員数
当中間連結会計期間末におけるグループ全体の従業員数は、前連結会計年度末より従業員が16名増加し、83名となりました。これは主に、当中間連結会計期間において、ファイメクスの全株式を取得し子会社化したことによるものであります。
なお、当社グループは「医薬品の研究開発」並びにこれらに関連する事業内容を行っており、事業区分が単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(8)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、事業活動のための適切な流動性の確保及び株主価値向上のための資金調達戦略の実行を基本方針としております。
資本の財源につきましては、医薬品の上市品目が増えたことにより、長期的かつ安定的なロイヤルティ収入が主要な財源となっております。一定規模以上の臨床開発を除き、ロイヤルティ収入を財源として医薬品の研究開発を進めてまいります。また、今後の臨床開発等の資金需要に対して、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保するため、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しているほか、ファイナンス・リースや銀行借入等のチャネルの活用により財務基盤の強化を図っております。
資金の流動性につきましては、当中間連結会計期間末における流動比率は369.0%となっており、十分な流動性を確保できているものと認識しております。
当中間連結会計期間の中間連結キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(株式譲渡契約)
当社は、2024年2月14日開催の取締役会において、ファイメクスの全株式を取得することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。2024年3月26日付で全株式を取得し、子会社化しております。
詳細は、「第4 経理の状況 1 中間連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
(シンジケートローン契約の締結)
当社は、2024年3月8日開催の取締役会において、ファイメクスの株式取得資金の調達を目的とした借入を行うことを決議し、2024年3月21日付にてシンジケートローン契約を締結、2024年3月25日付で借入を実行しております。
借入の概要
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借入先 |
株式会社みずほ銀行をアレンジャー、株式会社商工組合中央金庫をコ・アレンジャーとするシンジケート団 |
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借入金額 |
3,500,000千円 |
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借入実行日 |
2024年 3月 25日 |
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借入期間 |
7年(84ヶ月) |
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利率 |
基準金利+スプレッド |
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返済方法 |
2024年6月末日を初回とし、以降3ヶ月毎に元金均等返済 |
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担保等の有無 |
ファイメクス株式及び特定債務保証 |
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財務制限条項 |
2024年12月期以降、各年度の決算期における単体の損益計算書に示される数値で計算されるEBITDAが2期連続してマイナスとならないようにすること。 ※(EBITDAの計算式)営業利益+減価償却費 |