第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は「真実と努力」「行持報恩」を基本理念とし、真実の道理に従って行動し、公正、透明性など企業倫理に基づいた企業活動の実践によって、当社を取り巻く全てのステークホルダー(あらゆる利害関係者)から信頼を得る事業の創生及び構築を基本姿勢としております。

 そして、「顧客に最大の満足と安心」を品質方針に掲げ、お客様のニーズに即応する快適商品の創造、供給を図るとともに、「地球環境との共生」を果たすため環境方針を定め、そのマネジメントシステムを構築し、積極的な事業展開を図ってまいります。これらにより持続的発展が可能な会社の実現と企業価値の最大化に邁進してまいります。

 

(2)経営戦略等

 当社を取り巻く事業環境として、かつては100万戸を超えていた新設住宅着工戸数がこの数年、80万戸から90万戸程度の水準で推移しており、将来的にも少子高齢化や人口減少の進行に伴い新設住宅着工戸数は漸減していくことが予測されております。その一方、カーボンニュートラルの施策として、木造化・木質化の普及によるCO2の長期固定化の促進が国を挙げて推進されており、大阪・関西万博に向けて世界最大級の木造建築物が建設されるなど、非住宅分野の木材需要は年々増加しています。このようなウッドファーストの潮流が広がりを見せていること、また、建築現場での大工就業者の減少および高齢化に伴う住宅建設の担い手不足、建築現場の作業負荷増加を背景に省施工化へのニーズが加速しています。

 幅広い木材加工事業を手掛ける当社においては、こうした時勢は強みを発揮できる機会と認識しており、非住宅建築への提案力強化による木造化領域の拡大、木材の利用促進による新規市場開拓やパネル事業を中心にユニット化を軸とした新たな商品開発・サービスの展開や完全プレカット階段の拡充といった省施工化の展開など、既に幾つかの取り組みを通じその成果が表れてきております。加えて内装建材事業と木構造建材事業の二つの異なる領域を持つ、当社ならではの事業構造により実現可能な展開もあり、こうしたシナジーを更に追求する施策を講じるなど、木材の可能性をあらゆる角度から追求し、コーポレートスローガンである「伝えたい 届けたい WOOD IDEA」を体現する施策を進めてまいります。

 

(3)経営環境及び優先的に対処すべき事業上並びに財務上の課題

 今後の経済の見通しについては、世界情勢の不安感を背景にエネルギー価格や各種原材料価格の高騰を受け、更なる物価上昇が懸念されるなど、先行きの不透明感が続くものと予測されます。

 当社が属する住宅業界におきましても、住宅価格の高騰や金利の上昇基調に伴う消費マインドの減退傾向から、持家を中心に市況の低迷が予測され、また、物流業界の2024年問題等更なるコストアップが見込まれるなど、これまで以上に厳しい経営環境下が懸念されます。

 この数年異例な事業環境が続くなか、当社においては、脱住宅(非住宅分野への事業領域)の拡大や省施工商品の充実化といった時代のニーズに即する製品開発及び成長分野への投資を加速させ、その成果も現れてきている一方、内装建材事業における製品群のライフサイクルが過渡期にあり、事業ポートフォリオの再構築が必要な局面にあると認識しております。

 長年に亘り培った技術や強みを維持しつつ、時代や市場の変化に沿った事業・商品へと進化を遂げていくために「Change & Create New7」を新たなスローガンとして掲げ、前述した脱住宅への展開、省施工商品・サービスの拡充に資する差別化の推進と提案力の強化に努めるとともに、新設する事業開発推進室を中心に従前の延長上ではない、当社の新たな将来を創造する事業創出に傾注してまいります。これら攻めの展開に加え、足元において内装建材事業における収支改善が急務であることから、販売価格の適正化や素材開発・変更による原価低減、生産性向上を目的とした省力化・省人化、徹底したムダの排除等、従前よりも更に踏み込んだ施策を断行し、収益体質の改善を推し進めてまいります。一方、戸建て住宅の減少と平屋率の増加により市場環境は更に厳しくなることを予測しており、自社の加工・化粧貼・塗装技術をフルに活用し、非住宅分野をターゲットとした内装建材の商品拡充を進めてまいります。

 木構造建材事業におきましては、引き続きプレカット、パネル、建装の三位一体の事業展開をコアの戦略としながら、パートナー企業とのアライアンスを強化し、加工から木工事請負まで事業範囲を拡大することにより非住宅物件の受注拡大を図ってまいります。パネルでは階段室ユニット製造や小屋裏界壁ユニットパネルといった省施工における新規取り組みの拡充、プレカットにおいては、次期に予定するプレカットラインの更新に向け、非住宅物件加工のキャパシティアップを含めた増産体制や更なる生産性向上に向けた体制整備を進めることに加え、2024年問題への対策として荷役スペースを増床(木造倉庫新設)し、物流問題への対策を講じてまいります。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、売上高営業利益率及びROE(株主資本利益率)を経営の重要指標として捉えており、売上高営業利益率3%、ROE5%以上の達成を目標としております。
 そのために、木材に特化した高い技術力を背景に、卓越した品質基準のもと、付加価値の高い製品群の拡充、非住宅分野といった新たな事業領域の拡大、そして当社の強みである内装建材事業、木構造建材事業の二つの事業の融合を図り、安定かつ持続的成長を目指しております。資本コストに関しては、不透明な経営環境が予測されるなか、自己資本は現状の水準を維持することに加え、将来のための投資及び株主価値の向上に資する配当政策を勘案し、事業効率を重視した経営を進めております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティの基本方針

当社は社是に示される「真実と努力」「行持報恩」を基本理念とし、当社を取り巻く全てのステークホルダーから信頼を得る事業の創生及び構築を基本姿勢としています。そして、「顧客に最大の満足と安心」を品質方針に掲げ、お客様のニーズに即応する快適商品の創造、供給を図るとともに、「地球環境との共生」を果たすために環境マネジメントシステムを構築し、積極的な事業展開を図ります。これらにより持続的発展が可能な社会の実現と企業価値の最大化に邁進していきます。

① ガバナンス体制

事業活動においてサステナビリティマネジメントを推進するにあたり、当社はサステナビリティの基本方針に基づき、以下の方針及び体制を定め、かかる活動を推進しております。

ガバナンスにおいては、当該事項の担当部門又は内部統制を管掌するインターナルコントロール委員会並びにコンプライアンスを管掌する企業倫理委員会から、執行役員会に報告され、そのなかでも重要な内容は取締役会において報告され、協議しております。また、独立役員を含む社外取締役、社外監査役のみの会合を通じ、それぞれの専門的かつ独立的見地からの経営に対する提案を行うなど、より健全なガバナンス体制へと強化する施策を進めております。

② リスク管理

事業の存続又は経営目標の達成に影響を及ぼすリスク管理については、「リスク管理規程」を定め、事業活動に支障を来たすことの無いよう損失を最小限に止め、企業の社会的責任を果たすとともに信用の維持を図ることとしております。リスク管理の手法においては、リスク事象に関する内容を分類し、当該リスクにかかる予見又は災害・事故などリスクが具現化した事象の検証及び対策等の管掌機関を定め、管掌機関である各委員会又は会議体の決定事項に基づき、その対策を実施するとともに対策の進捗状況等について適宜確認を行っております。また近年、気候変動にかかる風水害の甚大化に備えた対応や従業員に対する防災意識の啓発なども防災訓練等を通じて啓蒙を行っております。大規模災害など事業継続に深刻な影響が及ぶ恐れがある場合は、社長を最高責任者として全社緊急対策本部の組成及び部門毎に部門緊急対策本部を立ち上げるとともに、緊急連絡メールシステムを整備し、初動の遅れを防ぐ施策などBCPマニュアルに基づいた対策を図ることとしております。全社緊急対策本部は、情報収集及び分析、対策の決定及び指示、関係機関への連絡・連携などを行い、部門緊急対策本部は各組織が所管するインフラ、建屋・設備、生産復旧等事業継続に資するマニュアルを定め、早期に復旧できる体制を構築しています。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

① 地球環境問題への取組

地球温暖化を始めとする環境問題の認識が高まるなか、温室効果ガスの削減・カーボンニュートラルの施策として、木造化・木質化の普及によるCO2の長期固定化の促進が国を挙げて推進されています。東京2020オリンピックにおける木材活用、更に2025年の大阪万博でも同様の動きが見られますが、こうしたイベントや商業施設のみならず、行政庁舎、学校、介護施設、物流倉庫等、非住宅分野全般に対する木材需要が増加しています。加えて、建築現場での大工就業者の減少及び高齢化が進み、環境的な側面だけでなく建築現場の省施工化は社会的な課題となっています。木材の利用促進や省施工への貢献については、当社ならではの差別化と提案力が発揮できる分野と考えており、ウッドファーストの時代を見据えた木材の利用促進、省エネルギー住宅へのアプローチなど社会的な課題に応える取り組みを進めます。具体的な施策としては、施工の省力化や産業廃棄物の排出量削減、省エネに貢献する「NEO SMART PANEL」の展開や既存商品である完全プレカット階段(エコプレ)の更なる拡充を図ってまいります。

環境マネジメントに関しては、ISO14001に則った事業活動を通じ、電気使用量、CO2排出量、産業廃棄物処理量、環境関係法規の順守状況など的確な管理体制の構築及びリスク管理に努めるとともに太陽光発電設備の拡充を図るなど、サステナブルエナジー供給に向けた施策を講じてまいります。

② 人的資本及び多様性

当社は社是及びコーポレートスローガンに基づき、社会や環境に貢献する会社でありたいという企業理念をベースに、あくなき向上心とチャレンジ精神を発揮、高い倫理観を醸成することを人事諸施策の根本とし、この考え方に基づいた人事制度や研修制度を行っております。また、こうした企業理念や倫理観を集約した社員手帳(seven philosophy)にまとめ、全従業員に配布し、周知・啓蒙を図っております。

人事制度は、「風通しの良い企業風土をつくりだす」、「働きやすい職場環境を支える」、「ワーク・ライフ・バランスの推進、従業員の健康・能力開発の促進」、「従業員の暮らしやすさを支える」の観点に分け、それぞれの目的に則した諸制度を構築、運用しています。従業員教育に関しては、特に会社の将来を担う中堅社員の育成を目的として、半年以上に渡る研修講座を定期的に実施するなど、人材育成に注力するとともに士気向上を図っております。加えて、従業員に対する鮮度の高い情報発信や社内の相互理解、一体感を高めるツールとしてWeb社内報(nanairo)の運用を開始し、積極的に活用していくことで、より健全な企業風土の醸成を図っております。

採用及び登用に関しては属性等を考慮せず人物本位で行っております。また、仕事と子育ての両立支援や女性の活躍推進等に取り組み「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進企業」に登録するなど、男女を問わず育児休業の取得促進や管理職を含めた役職者の登用率を男女の従業員比率と同等にする基準を定め、この数年、この基準をクリアしております。また、当社拠点の地域特性等を踏まえ、外国人労働者の採用を増加させており、安心して働ける環境を整備することはもとより、通訳の配置や日本語検定の促進策等を実施しモチベーション向上に努めております。

 

(3)持続可能な開発目標の達成に向けた取組

当社は、「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向けた取組みを強化するために、2022年1月に「SDGs宣言」し、持続可能な社会の実現に向けた活動について組織全体で共通認識を持ち、その解決に向け活動に取り組んでおります。

 

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『木』を通じて人の暮らしも、自然環境も、豊かにしたい

セブン工業は、企業活動を通じてSDGsに取り組みます

 

(ESGの取り組みによるSDGsへの貢献)

分野

テーマ

Environment

環境

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環境方針の策定・表明

温室効果ガス削減への貢献

資源循環型社会実現への取り組み(森林、林業、木材産業)

環境負荷低減への取り組み

Social

社会

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地域や社会の問題への貢献

 地域との共生への取り組み

 建築業の職人高齢化問題、労働力不足の解消への貢献

 健康や安心・安全への取り組み

 

従業員・労働環境への配慮

 働きやすい職場づくり

 人材育成、多様性への取り組み

Governance

ガバナンス

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企業価値の向上

ガバナンス強化

リスクマネジメント・コンプライアンス

 なお、当社のサステナビリティへの取り組みの詳細につきましては当社ホームページをご参照ください。

 https://www.seven-gr.co.jp/sustainability/

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも上記のようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努めておりますが、本株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容を併せて、慎重に検討したうえで行われる必要があります。なお、以下の記載は本株式への投資に関連するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点ご留意下さい。

(1)住宅着工の動向が当社業績に影響を及ぼすことについて

 当社は、集成材を中心とした住宅部材の製造販売及び関連する製品の販売のほか施設建築、賃貸及びこれに付帯する事業を行っております。なかでも新築住宅向けの製品を主たる事業領域としていることから、当社の業績は住宅着工戸数、特に木造住宅の着工戸数の動向に大きく左右される可能性があります。

 市場における価格競争の激化は、売上ばかりでなく収益性に大きく影響を及ぼし、更に住宅様式の多様化、それに伴う顧客ニーズの変化が加速するなか、製品売上構成上に起因するリスクが業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 今後は、少子高齢化が進み将来的な人口動態の予測から住宅着工戸数が減少に向かうことが予測され、さらに廉価な海外製品の流入を含め、市場の構造変化に伴う価格競争の激化は売上、利益面に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 新設住宅着工戸数の減少に伴うリスクに関しては、特注対応力を活かしたきめ細やかな顧客ニーズに対応するとともに、非住宅分野への事業領域を拡大する取り組みを進めており、住宅のトレンドに適応する施策と新設住宅市場に限定されない事業構築を進めております。

 

(2)特定販売先依存について

 当社は、売上高の相当部分が限定された顧客に依存していることから、特定の顧客からの受注が大幅に減少した場合には、売上高及び利益に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 供給体制は、顧客の業績や経営方針の転換など自社に起因しない事象に左右される場合があり、予期しない契約の打ち切り、調達方針の変化などは業績に与える影響が大きいものと予測されます。また、これら顧客の要求に応じるための値下げの要請などは利益率を低下させる可能性があります。

 

(3)海外調達による資材の価格変動、為替変動等について

当社においては、資材調達における海外の依存度が高く、需給バランスや、自然環境の変化、原産国の政策、調達原材料の変化、また、為替の変動については、業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社はベトナムを中心に東南アジアにおける独自の調達ルートを構築していることや海外又は国産の木材資源調達における有力なサプライヤーと協調関係にあり、資材調達におけるリスク軽減を図っております。更に、資材調達リスクの分散化の観点から新規サプライヤーの開拓に努め、また為替変動リスクも勘案し、国産材、地域材の活用拡大に着手しております。

 

(4)法的規制について

当社は、集成材を中心とした住宅部材の製造販売を主な事業としております。製品及び各事業所を規制する主な法的規制は以下のとおりであります。これら法律の新たな規制の改正などは当社の事業運営に大きく影響を及ぼす可能性があります。

① 建築基準法

② 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)

③ 製造物責任法(PL法)

④ 住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品質確保促進法)

⑤ 労働基準法、労働安全衛生法及び関係諸法令

⑥ 下請代金支払遅延等防止法(下請法)

⑦ 消防法

⑧ 個人情報保護法

⑨ 環境関連法令(大気汚染防止法、水質汚濁防止法、騒音規制法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律)

特に建築基準法は大幅な改正が行われた場合、製品の仕様、資材調達の変更など事業活動の根幹部分での対応が必要となり当社の事業内容に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、近年、環境に関する認識の高まりを受け、諸規制が更に厳格化されることも予想され、これらの環境法令の改正に対応するため、新たな設備投資の導入が必要になるなど、これらに係る費用が当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

現状において経営の根幹に関わる改正等はありませんが、コンプライアンス対応は必須であり、法令面の改正動向には注視を怠らず、必要な内容に関しては着実な対応を図っております。

 

(5)製造物責任について

住宅業界においては、住宅品質確保促進法の施行など消費者保護の時勢を背景として、製造物の欠陥が業績に影響を及ぼす可能性があります。製品の品質に関しては、徹底した管理を実施いたしておりますが、木材は鉄やアルミなどとは違い、有機物であるため、環境によっては、不具合が発生し結果として欠陥が生じる場合があります。特に柱や梁など住宅の構造部分に関わる部材の欠陥については、大きな責任問題に発展する可能性があります。この場合、発生する費用はもちろん、販売先の住宅メーカー、工務店など顧客からの信頼性を失墜させ、業績及び事業運営に大きく影響を及ぼす可能性があります。
 製品の品質に関しては、品質管理システムに基づき徹底した管理を実施しております。現在においては、重大なクレームが懸念される事態はございません。

(6)人材の確保と育成について

企業価値の最大化、持続的発展が可能な会社の実現のためには、会社の基本理念に基づいた優秀な人材の確保と育成を図ることが重要課題であると捉えております。既存事業の維持、拡大、また、新製品開発や新規事業の構築を推進するにあたって、各セクションにおいて、それぞれに専門知識を有した人材の確保、また管理者の育成を図る必要があります。
 雇用の流動化が進んでいるなか、新規採用のほか、即戦力のスペシャリストの中途採用を積極的に行うなど、人材の確保に努め、その育成にも力を注いでおりますが、生産拠点が岐阜県東部に集約されている雇用環境から、適格な人材を十分確保できない場合、又は優秀な人材が社外に流失した場合には、今後の事業運営に制限を受ける可能性があり、将来的な当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
 労使間の緊密な協調関係のもと離職率は低調に推移しており、採用に関しても新規学卒並びに中途採用による人員の確保も的確に行っております。また、労働時間の削減、ワークライフバランスの浸透を図るとともに多様な人材の登用や育成を含めた人材の活性化に努めております。

(7)災害に対するリスクについて

 当社の工場及び生産関連設備、構築物が火災、地震、水害等の災害の発生により、生産活動及び業務運営に支障をきたす可能性があります。主力工場は岐阜県東部に集中しており、立地的に河川の氾濫、土砂災害など自然災害の危険性が比較的高く、また、東海・東南海大地震の影響が懸念される地域であります。

 火災に対する対策については、建物、設備を含め消防法に基づいた防火体制を整備し、従業員に対して避難訓練を行うなど罹災時における対策を徹底しております。

 全ての建物、機械設備については火災、風水害など罹災時の補償を行う保険に加入しておりますが、地震保険については、充分な補償が得られないことから加入しておりません。

 地震による工場、その他の構築物に対し滅失、焼失等が発生した場合にはこれらの物的損害はもちろん、復旧までの生産停止期間中の逸失利益は当社の事業運営や業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 こうした地震リスクに備え、被災時の初期対応、対策本部の設置、復旧の手順などを定めたBCPを策定するとともに全従業員を対象とした安否確認システムの導入、主要拠点間の通信手段確保のための衛星電話の配備、非常食の備蓄などの対策を実施しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度における我が国経済は、混沌とした国際情勢の不安感を背景にエネルギーや資源価格が高止まりしているなか、インフレが継続拡大するなど不透明な経済環境下で推移いたしました。

 当社が属する住宅業界におきましても、資材価格の値上がり等に起因する住宅価格の高騰や物価上昇及び長期金利引き上げへの警戒感から、新設住宅着工戸数は低水準で推移しており、特に持家は前年比10%以上、分譲住宅は前年比9%以上の落ち込みとなり、また比較的好調であった貸家も減少に転じるなど厳しい環境下での事業運営となりました。

 このような状況下、当社が主たるターゲットとする持家や分譲住宅の減少が続いていることを背景に従前から成長分野として取り組んでいる、非住宅分野への領域拡大を更に高め、生産面においてはロボット加工機の導入等設備増強を進め、また営業面においても需要開拓にかかる営業強化を図ってまいりました。また、もう一つの成長戦略である、省施工商品の拡充においては、完全プレカット階段(エコプレ)のバージョンアップ等による付加価値の提供及び生産体制の拡張や、新商品であるサッシ付パネル(NEO SMART PANEL)の営業強化を図り、市場に対するアピールと販路開拓に努めてまいりました。

 第2四半期において、多額の減損処理を行ったことも踏まえ、大局的には製品群の練り直し及び事業ポートフォリオの再構築を含め、成長分野に対する経営資源のシフトを検討していくと同時に、足元における収益体質の改善を急務とし、生産体制におけるムリ・ムダの排除、徹底した合理化と効率化を進めてまいりました。また、販売面においても引き続き販売価格の適正化に努めるとともに製品基材の見直し等コスト競争力の向上に努めました。

 このような結果、第3四半期以降、徐々に収益体質が改善され、2023年10月に公表した通期業績予想との比較においては上振れする結果となりましたが、目標とする利益ベースには回復しておらず、内装建材事業の再構築に資する取り組みを加速化するとともに更なる体質改善が必要と認識しております。

 これらの結果、当事業年度の売上高は、152億64百万円と前事業年度と比較し23億91百万円(△13.5%)の減収となりました。利益面では先に述べたとおり市況の低迷による減収及び為替の影響等による資材価格の高騰が進行するなか、コスト吸収にかかる十分な改善には至っておらず、営業利益は37百万円と前事業年度と比較し2億88百万円(△88.5%)の減益、経常利益は42百万円と前事業年度と比較し2億85百万円(△87.0%)の減益、当期純損失は特別損失に減損損失7億91百万円を計上したことにより、7億83百万円(前事業年度は当期純利益2億31百万円)となりました。

 

 セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。また、セグメント間取引については、相殺消去しております。

(内装建材事業)

 売上高は、階段が増加したものの、造作材等が減少し85億41百万円と前事業年度と比較し2億76百万円(△3.1%)の減収となりました。営業損失は、資材価格及び電力費の高騰等により、1億84百万円(前事業年度は営業損失3億10百万円)となりました。

(木構造建材事業)

 売上高は、プレカットをはじめ事業部全体が減少し、67億8百万円と前事業年度と比較し21億15百万円(△24.0%)の減収となりました。営業利益は、住宅着工戸数の減少及び価格競争の激化等の影響により2億16百万円と前事業年度と比較し4億14百万円(△65.8%)の減益となりました。

 なお、当セグメントの名称を2024年4月1日より「木構造事業」に変更いたしました。

(その他)

 売上高は、13百万円と前事業年度と同額となりました。営業利益は、6百万円と前事業年度と比較し0百万円(2.4%)の増益となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ、3億55百万円増加し、11億30百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は8億79百万円(前事業年度比5億98百万円の収入増加)となりました。これは主に税引前当期純損失7億59百万円及び仕入債務の減少3億1百万円があったものの、減損損失7億91百万円、減価償却費1億63百万円、売上債権の減少7億40百万円及び棚卸資産の減少2億22百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動の結果使用した資金は2億29百万円(前事業年度比26百万円の支出減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出1億84百万円及び無形固定資産の取得による支出47百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動の結果使用した資金は2億97百万円(前事業年度比2億95百万円の支出増加)となりました。これは主に長期借入れによる収入4億円があったものの、長期借入金の返済による支出3億35百万円、短期借入金の純減額2億50百万円及び配当金の支払額89百万円等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

内装建材事業(百万円)

8,219

93.4

木構造建材事業(百万円)

6,666

75.4

合計(百万円)

14,886

84.4

(注)1.セグメント間取引については、相殺処理しております。

2.金額は販売価格によっております。

 

b.商品仕入実績

当事業年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

内装建材事業(百万円)

179

115.4

木構造建材事業(百万円)

合計(百万円)

179

115.4

(注) 金額は仕入価格によっております。

 

c.受注状況

当事業年度の受注状況をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

木構造建材事業

7,036

84.2

386

660.4

合計

7,036

84.2

386

660.4

(注)1.セグメント間取引については、相殺処理しております。

2.金額は販売価格によっております。

3.当社の受注生産品は、主に木構造建材事業であり、他は概ね見込生産品であります。

 

d.販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

内装建材事業(百万円)

8,541

96.9

木構造建材事業(百万円)

6,708

76.0

  報告セグメント計(百万円)

15,250

86.4

その他(百万円)

13

100.0

合計(百万円)

15,264

86.5

(注)1.セグメント間取引については、相殺処理しております。

2.売上高の10%を超える主な相手先が存在しないため、「最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合」の記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の状況

当事業年度末における総資産は105億56百万円、純資産は62億19百万円、自己資本比率は58.9%となりました。

流動資産については、主に売上債権及び棚卸資産等が減少したことにより、69億17百万円と前事業年度末と比べ6億23百万円(△8.3%)の減少となりました。

固定資産については、主に固定資産の減損損失の計上により、36億38百万円と前事業年度末と比べ6億45百万円(△15.1%)の減少となりました。

流動負債については、主に仕入債務及び短期借入金等が減少したことにより、31億46百万円と前事業年度末と比べ5億40百万円(△14.7%)の減少となりました。

固定負債については、主に長期借入金及びリース債務等が増加したことにより、11億91百万円と前事業年度末と比べ1億43百万円(13.7%)の増加となりました。

純資産については、主に固定資産の減損損失計上による当期純損失、期末配当及び中間配当の実施により、62億19百万円と前事業年度末と比べ8億71百万円(△12.3%)の減少となりました。

このような財務基盤のもと、当社の事業方針及び施策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等 及び (3)経営環境及び優先的に対処すべき事業上並びに財務上の課題」に記載のとおりですが、財務レバレッジとのバランスを鑑みながら、設備投資を中心に成長戦略への必要な投資を行ってまいります。

b.経営成績の状況

売上高については、住宅価格の高騰、物価上昇及び長期金利引き上げへの警戒感等から、新設住宅着工戸数は減少が続いているなか、内装建材事業においては、想定以上の市況の低迷から低調な受注・販売が続き、85億41百万円と前事業年度と比較し2億76百万円の減収となりました。木構造建材事業においては、非住宅分野への領域拡大に向けた施策及び新商品の営業強化を図り販路開拓に努めてまいりましたが、価格競争の激化等の影響により67億8百万円と前事業年度と比較し21億15百万円の減収となりました。その他の賃貸事業においては、13百万円と前事業年度と同額となりました。その結果、全社では152億64百万円と前事業年度と比較し23億91百万円(△13.5%)の減収となりました。

売上原価については、急激な為替の円安進行による資材価格の高騰並びにエネルギーコストの高騰に伴い131億30百万円と前事業年度と比較し20億64百万円(△13.6%)減少し、売上原価率は0.1ポイント減少し86.0%となりました。

販売費及び一般管理費については、主に労務費等の減少により、20億96百万円と前事業年度と比較し38百万円(△1.8%)の減少となりました。

営業利益については、収益性改善の施策を図ってきたものの、急激な為替の円安進行による資材価格及び電力費の高騰等により37百万円と前事業年度と比較し2億88百万円(△88.5%)の減益、経常利益は、42百万円と前事業年度と比較し2億85百万円(△87.0%)の減益となりました。

税引前当期純損失は、特別損失に事業資産・遊休資産に係る減損損失7億91百万円を計上したことにより、7億59百万円となりました。(前事業年度は税引前当期純利益3億27百万円)

法人税、住民税及び事業税については、減益により課税所得が減少し、15百万円と前事業年度と比較し50百万円(△76.4%)の減少となりました。法人税等調整額については、8百万円と前事業年度と比較し21百万円(△70.9%)の減少となりました。

この結果、当期純損失は7億83百万円となりました。(前事業年度は当期純利益2億31百万円)

なお、セグメント等の詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析

 当社の運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入費用のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、生産性向上や合理化を目的とした設備や施設への投資のほか、既存の設備及び施設の更新であります。

 今後の経営環境につきましては不透明感が強まっているため、資金調達の重要性を認識するとともに、自己資本の水準を維持しながら、投資及び配当政策等を行ってまいります。経営資源の配分につきましては、取締役会及び執行役員会で十分な検討を行った上で決定しております。

 なお、当事業年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

b.資本の財源及び資金の流動性

 当社は事業活動の維持成長に必要な資金を確保するため、自己資金及び金融機関からの借入を有効活用しております。手元資金に関しては常に注視をしており、資金の流動性を確保しつつ資金の使途、調達を決定しております。

 なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は11億30百万円となっております。

 資金調達は、金融情勢の変化に対する対応と資金コスト削減及び調達構成のバランスを考慮し調達先の分散、調達方法及び手段等の多様化を図っており、原則として、運転資金については、短期借入金で調達し、生産設備などの長期資金は、社債や長期借入金で調達することとしております。2024年3月31日現在の短期借入金残高3億27百万円(1年内返済予定の長期借入金含む)及び長期借入金残高10億25百万円の借入金総額13億52百万円を主力銀行をはじめとする金融機関から調達しております。なお、運転資金の効率的な調達を行うため、主要取引銀行と当座借越契約及びコミットメントライン契約を締結しておりましたが、コミットメントライン契約については2023年8月2日をもって契約満了により当該契約を終了しております。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されており、財政状態及び経営成績に関する以下の分析が行われております。

当社は、財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債及び収益・費用の計上金額に影響を与える見積りを行っております。また、貸倒引当金、固定資産、株式等、繰延税金資産、退職給付、偶発事象及び訴訟等に関して見積り及び判断を実績や状況に応じ合理的な判断により継続的に検証し評価を行っております。しかしながら、これらの見積り及び判断は、不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

世界情勢の不安感を背景にエネルギー価格や各種原材料価格の高騰を受け、更なる物価上昇が懸念されるなど、先行きの不透明感が続くものと想定しております。

当社が属する住宅業界におきましても、住宅価格の高騰や金利の上昇基調に伴う消費マインドの減退傾向から、持家を中心に市況の低迷が予測され、また、物流業界の2024年問題等更なるコストアップが見込まれるなど、これまで以上に厳しい経営環境下が懸念されます。

当社が、見積り及び判断により当社の財務諸表に重要な影響を及ぼすと考えている項目は以下のとおりであります。

a.貸倒引当金

 当社は、債権の回収不能見込額について、一般債権は貸倒実績率、貸倒懸念債権等特定の債権は個別に回収可能性を検討し、不足分については追加計上しております。

b.固定資産の減損損失

 当社は、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しており、グルーピングごとに営業活動から生じる損益が継続してマイナスである場合、市場価格が著しく下落した場合及び将来の使用が見込まれていない遊休資産等減損の兆候がある場合に減損損失の認識の判定を行い、投資額の回収が困難になった場合は、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減額分を減損損失として特別損失に計上しております。

 また、回収可能価額については、正味売却価額又は使用価値により測定しており、合理的に算定された価額に基づき評価しております。

 なお、当事業年度末の固定資産の減損の認識の判定にあたっては、以下の仮定を用いております。

 ウクライナ情勢の長期化による資材価格高騰等の影響や国内外の金融政策の動向等不透明な経済環境が続いており、当社が属する住宅業界においては消費マインドの低下による新設住宅着工戸数の減少等が予測され、これらの影響は翌事業年度以降も続くものと想定しております。

 上記のとおり、非常に不透明な経済環境を背景とし、新設住宅着工戸数は減少傾向が予測されますが、経営目標及び重点課題を着実に実行していくことで、新設住宅着工戸数に影響されない事業分野への取り組み強化を図り、翌事業年度は当事業年度と比較して売上高は微増であるものの収益は回復するものと見込んでおります。

 減損の兆候の把握にあたり、これらも含めグルーピングごとの事業実態を慎重に検討し減損の兆候を判断しており、減損の兆候がある場合は、事業別の事業計画に基づき割引前キャッシュ・フローを見積り、減損の認識の要否を判断しており、結果減損損失を計上いたしました。

 割引前将来キャッシュ・フローをはじめとする見積りや当該見積りに使用された仮定は、今後の市場動向、為替相場の変動やウクライナ情勢の長期化による資材価格高騰等の影響を受ける可能性があり、主要な仮定に見直しが必要となった場合、翌事業年度の財務諸表において、新たに減損損失が発生する可能性があります。

 「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に詳細を記載しております。

c.株式の減損処理

 当社の財務諸表において、長期保有を目的とする特定の取引先の株式を所有しております。これらの株式には、価格変動性が高い公開会社の株式と、非公開会社の株式が含まれます。当社は投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、株式の減損処理をしております。公開会社の株式の場合、通常、時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合、2年間にわたり時価が取得原価に比べて30%以上50%未満継続して下落した場合、発行会社が債務超過の状態にある場合又は2期連続で損失を計上し翌期も損失が予想される場合において減損処理をしております。

 非公開会社の株式の場合、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した場合において減損処理をしております。

d.繰延税金資産

 当社の繰延税金資産については、将来減算一時差異の解消による課税所得との相殺により、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると認められる範囲内で認識しております。繰延税金資産の回収可能性は、収益力に基づく将来の課税所得の見積額、タックス・プランニング及び将来加算一時差異の解消スケジュール等に基づいて判断しております。

 当事業年度の繰延税金資産は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号)に基づき、翌事業年度の課税所得の見積額に基づいて、翌事業年度の一時差異等のスケジューリングの結果、回収可能と認められる範囲内で繰延税金資産を計上しております。

 当事業年度末の繰延税金資産の回収可能性についての判断にあたって、当社の将来の収益に与える影響を客観的に予測することが困難であることから、以下の仮定を用いて作成した翌事業年度の事業計画を基礎とした課税所得の見積額に基づき、繰延税金資産の回収可能性について判断しております。

 今後の市場動向、為替相場の変動やウクライナ情勢の長期化による資材価格高騰等の影響を受ける可能性があり、課税所得の見積額が減少し回収可能性がないと判断された場合は、繰延税金資産の取り崩しが発生し、繰延税金資産及び法人税等調整額に影響を与える可能性があります。

e.退職給付

 当社は、従業員の退職給付費用及び退職給付債務について、年金数理計算に使用される前提条件に基づいて算定しております。年金数理計算の前提条件には、割引率、退職率、死亡率、昇給率及び年金資産の期待運用収益率等の重要な見積りが含まれております。これらの前提条件の決定にあたっては、金利変動などの市場動向を含め、入手可能なあらゆる情報を総合的に判断し決定しております。

 当社は、これらの前提条件の決定は合理的に行われたと判断しておりますが、前提条件と実際の結果が異なる場合には、将来の退職給付費用及び退職給付債務に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

 当社が目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、売上高営業利益率及びROE(株主資本利益率)としております。
 この数年、特に収益性改善に資する取り組みを進めておりますが、当社を取り巻く事業環境や事業領域を勘案し、まずは売上高営業利益率3%を目標とし、付加価値の高い製品の開発、新たな事業領域(非住宅分野)の拡充、二つの事業の融合によるシナジーの追求を図ってまいります。ROEに関しては、当社の規模感や今後の事業環境を鑑みて、自己資本は現状の水準を維持していく必要性を認識しており、効率的な資本政策と財務レバレッジとのバランスを鑑みながら、ROE5%以上を持続できる体制にすべきと考えております。当事業年度の経営成績につきましては、上記、「① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 b.経営成績の状況」に記載のとおりであります。

指標

前事業年度

当事業年度

目標値

目標対比

売上高営業利益率

1.8%

0.2%

3.0%

△2.8ポイント

ROE(株主資本利益率)

3.3%

△11.8%

5.0%

△16.8ポイント

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません

 

6【研究開発活動】

 当社は「品質方針」「環境方針」に基づき、安心、安全な商品をお客様に提供することをテーマに研究開発活動に努め、特に環境問題への認識が高まるなか、木材の利用促進や省施工化といった社会的ニーズは研究開発における重要なファクターと捉えております。また、成長戦略として掲げる、「脱住宅への展開」、「省施工商品の拡充」を新商品開発のコンセプトとし、これらを通じ、差別化の推進と提案力の強化に努めております。

 内装建材事業においては、階段関連商品のブラッシュアップを行いました。省施工商品であるフルプレカット階段「エコプレ」においては加工パターンの追加のほか、部材・図面への「番付対応」を付加することで建築現場における省力化を追求した商品への改良を図りました。また、階段手摺における金具のラインナップを拡充し、より施工性を高めるなど、省施工化が求められる市場ニーズへの対応を図りました。環境面(地産地消)のアプローチとして、当社の地元である美濃加茂市の里山に自生する「あべまき」を活用した岐阜県産材への取り組みを継続するとともに新たな国産材への取り組みとして、国産広葉樹や地元の木材に拘った内装材の対応も開始しております。

 販売チャネルの拡充として、インターネット販売においては、オリジナルブランド「COMOKU」を立ち上げ、楽天市場への出店を開始しました。この市場向けに、既存商品である「アイアンシェルフ」をブラッシュアップした「アイアンシェルフ LOW slim」の開発を進め、デザインのリニューアルだけでなく、フレームカラーの追加など幅広いニーズに応える取り組みを進め、ネット販売の可能性を追求する施策に努めております。

 木構造建材事業においては、脱住宅への展開、省施工・省エネといった市場ニーズを新事業の開発又は展開するための重要なテーマとしております。新規の取り組みである、省施工商品のサッシ付き断熱パネル(NEO SMART PANEL)や階段室ユニットは、工期短縮を図ると同時に産業廃棄物の排出量削減、住宅の断熱性能向上といった環境的側面を持つ商品であるとともに内装建材と木構造の2つの事業部門を合わせ持つ、当社ならではの事業構造により実現した内容でもあり、今後、建築大工の不足問題が顕在化してくるなか、建築現場施工から工場内生産への移管が図られるモデルケースとなるような展開を期待しています。

 

 研究開発スタッフは14名で、当事業年度に支出した研究開発費の総額は114百万円となっております。

 なお、研究開発活動において、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っておりません。