(注)
1.信用格付業者から提供され、もしくは閲覧に供された信用格付
(1)株式会社日本格付研究所(以下JCRという。)
本社債について、当社はJCRからAA-(ダブルAマイナス)の信用格付を2024年7月4日付で取得している。
JCRの信用格付は、格付対象となる債務について約定どおり履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
JCRの信用格付は、債務履行の確実性の程度に関してのJCRの現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性の程度を完全に表示しているものではない。また、JCRの信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するものではない。JCRの信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外の事項は含まれない。
JCRの信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。また、JCRの信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCRが格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
本社債の申込期間中に本社債に関してJCRが公表する情報へのリンク先は、JCRのホームページ(https://www.jcr.co.jp/)の「ニュースリリース」右端「一覧を見る」をクリックして表示される「ニュースリリース」(https://www.jcr.co.jp/release/)に掲載されている。なお、システム障害等何らかの事情により情報を入手することができない可能性がある。その場合の連絡先は以下のとおり。
JCR:電話番号 03-3544-7013
(2)株式会社格付投資情報センター(以下R&Iという。)
本社債について、当社はR&IからA+(シングルAプラス)の信用格付を2024年7月4日付で取得している。
R&Iの信用格付は、発行体が負う金融債務についての総合的な債務履行能力や個々の債務等が約定どおりに履行される確実性(信用力)に対するR&Iの意見である。R&Iは信用格付によって、個々の債務等の流動性リスク、市場価値リスク、価格変動リスク等、信用リスク以外のリスクについて、何ら意見を表明するものではない。R&Iの信用格付は、いかなる意味においても、現在・過去・将来の事実の表明ではない。また、R&Iは、明示・黙示を問わず、提供する信用格付、またはその他の意見についての正確性、適時性、完全性、商品性、および特定目的への適合性その他一切の事項について、いかなる保証もしていない。
R&Iは、信用格付を行うに際して用いた情報に対し、品質確保の措置を講じているが、これらの情報の正確性等について独自に検証しているわけではない。R&Iは、必要と判断した場合には、信用格付を変更することがある。また、資料・情報の不足や、その他の状況により、信用格付を取り下げることがある。
利息・配当の繰り延べ、元本の返済猶予、債務免除等の条項がある債務等の格付は、その蓋然性が高まったとR&Iが判断した場合、発行体格付または保険金支払能力とのノッチ差を拡大することがある。
一般に投資にあたって信用格付に過度に依存することが金融システムの混乱を引き起こす要因となり得ることが知られている。
本社債の申込期間中に本社債に関してR&Iが公表する情報へのリンク先は、R&Iのホームページ(https://www.r-i.co.jp/rating/index.html)の「格付アクション・コメント」および同コーナー右下の「一覧はこちら」をクリックして表示されるリポート検索画面に掲載されている。なお、システム障害等何らかの事情により情報を入手することができない可能性がある。その場合の連絡先は以下のとおり。
R&I:電話番号 03-6273-7471
2.振替社債
(1) 本社債は、社債、株式等の振替に関する法律(以下社債等振替法という。)の規定の適用を受け、別記「振替機関」欄記載の振替機関の振替業にかかる業務規程等の規則に従って取り扱われるものとする。
(2) 社債等振替法に従い本社債の社債権者が社債券の発行を請求することができる場合を除き、本社債にかかる社債券は発行されない。
3.社債の管理
本社債には会社法第702条ただし書に基づき、社債管理者は設置されておらず、社債権者は自ら本社債を管理し、または本社債に係る債権の実現を保全するために必要な一切の行為を行う。
4.期限の利益喪失に関する特約
当社は、次の各事由に該当したときは直ちに本社債について期限の利益を失う。
(1) 当社が別記「償還の方法」欄第2項の規定に違背したとき。
(2) 当社が別記「利息支払の方法」欄第1項の規定に違背し、7日を経過してもこれを履行することができないとき。
(3) 当社が別記「財務上の特約(担保提供制限)」欄の規定に違背したとき。
(4) 当社が本社債以外の社債について期限の利益を喪失し、または期限が到来してもその弁済をすることができないとき。
(5) 当社が社債を除く借入金債務について期限の利益を喪失したとき、もしくは当社以外の社債またはその他の借入金債務に対して当社が行った保証債務について履行義務が発生したにもかかわらず、その履行をすることができないとき。ただし、当該債務の合計額(邦貨換算後)が10億円を超えない場合は、この限りではない。
(6) 当社が破産手続開始、民事再生手続開始もしくは会社更生手続開始の申立をし、または取締役会において解散(合併の場合を除く。)の決議を行ったとき。
(7) 当社が破産手続開始、民事再生手続開始もしくは会社更生手続開始の決定、または特別清算開始の命令を受けたとき。
5.公告の方法
本社債に関し社債権者に対し公告を行う場合は、法令に別段の定めがあるときを除き、当社定款所定の電子公告によりこれを行う。ただし、電子公告によることができない事故その他のやむを得ない事由が生じたときは、当社定款所定の新聞紙ならびに東京都および大阪市において発行する各1種以上の新聞紙(重複するものがあるときはこれを省略することができる。)に掲載することによりこれを行う。
6.社債要項の公示
当社は、その本店に本社債の社債要項の謄本を備え置き、その営業時間中、一般の閲覧に供する。
7.社債要項の変更
(1) 本社債の社債要項に定められた事項(ただし、本(注)11を除く。)の変更は、法令に定めがあるときを除き、社債権者集会の決議を要する。ただし、社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(2) 裁判所の認可を受けた前号の社債権者集会の決議は、本社債の社債要項と一体をなすものとする。
8.社債権者集会に関する事項
(1) 本社債および本社債と同一の種類(会社法第681条第1号の定めるところによる。)の社債(以下本種類の社債と総称する。)の社債権者集会は、当社がこれを招集するものとし、社債権者集会の日の3週間前までに社債権者集会を招集する旨および会社法第719条各号所定の事項を本(注)5に定める方法により公告する。
(2) 本種類の社債の社債権者集会は、東京都においてこれを行う。
(3) 本種類の社債の総額(償還済みの額を除く。また、当社が有する本種類の社債の金額の合計額は算入しない。)の10分の1以上に当たる本種類の社債を有する社債権者は、当社に対し、社債権者集会の目的である事項および招集の理由を記載した書面を当社に提出して本種類の社債の社債権者集会の招集を請求することができる。
9.費用の負担
以下に定める費用は当社の負担とする。
(1) 本(注)5に定める公告に関する費用
(2) 本(注)8に定める社債権者集会に関する費用
10.元利金の支払
本社債にかかる元利金は、社債等振替法および別記「振替機関」欄記載の振替機関の振替業にかかる業務規程等の規則に従って支払われる。
11.財務代理人、発行代理人および支払代理人
株式会社みずほ銀行
該当事項なし
上記差引手取概算額14,929百万円は、後記「募集又は売出しに関する特別記載事項」に記載の当社グリーン/トランジションファイナンス・フレームワークに基づき、「省エネ・高効率化等に関する取り組み」に対応する設備投資資金に充当する予定であります。なお、調達資金の全額が適格プロジェクトへ充当されるまでの間、現金または現金同等物等にて管理する予定であります。また、資金充当状況及び環境改善効果を年次で開示します。
第2 【売出要項】
該当事項なし
【募集又は売出しに関する特別記載事項】
トランジションボンドとしての適合性について
当社は、トランジションボンドの発行を含むグリーンまたはトランジションファイナンス実施のために「グリーンボンド原則2021」(注1)、「グリーンローン原則2023」(注2)、「グリーンボンドガイドライン2022年版」(注3)、「グリーンローンガイドライン2022年版」(注4)、「クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック2023」(注5)および「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針(2021年5月版)」(注6)に即したグリーン/トランジションファイナンス・フレームワークを策定し、適合性に対する外部評価(セカンドオピニオン)をJCRより取得しております。
また、本社債は、経済産業省の「令和5年度温暖化対策促進事業費補助金(クライメート・イノベーション・ファイナンス推進事業)」の補助金交付対象となることについて、指定外部評価機関であるJCRは一般社団法人低炭素投資促進機構より交付決定通知を受領しています。
(注)1.グリーンボンド原則2021とは、ICMAが事務局機能を担う民間団体であるグリーンボンド・ソーシャルボンド原則執行委員会(Green Bond Principles and Social Bond Principles Executive Committee)により策定されているグリーンボンドの発行に係るガイドラインです。
2.グリーンローン原則2023とは、ローン・マーケット・アソシエーション(LMA)、アジア太平洋ローン・マーケット・アソシエーション(APLMA)およびローン・シンジケーション&トレーディング・アソシエーション(LSTA)により策定された環境分野に使途を限定する融資のガイドラインです。
3.グリーンボンドガイドライン2022年版とは、グリーンボンド原則との整合性に配慮しつつ、市場関係者の実務担当者がグリーンボンドに関する具体的対応を検討する際に参考とし得る、具体的対応の例や我が国の特性に則した解釈を示すことで、グリーンボンドを国内でさらに普及させることを目的に、環境省が2017年3月に策定・公表し、2022年7月に最終改訂したガイドラインです。
4.グリーンローンガイドライン2022年版とは、グリーンローン原則との整合性に配慮しつつ、借り手、貸し手その他の関係機関の実務担当者がグリーンローンに関する具体的対応を検討する際に参考とし得る、具体的対応の例や我が国の特性に即した解釈を示すことで、グリーンローンを国内でさらに普及させることを目的に、環境省が2020年3月に策定・公表し、2022年7月に改訂したガイドラインをいいます。
5.クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック2023とは、グリーンボンド・ソーシャルボンド原則執行委員会の主導の下でクライメート・トランジション・ファイナンス・ワーキング・グループにより策定され、特に排出削減困難なセクターにおいて、トランジションに向けた資金調達を目的とした資金使途を特定した債券またはサステナビリティ・リンク・ボンドの発行に際して、その位置付けを信頼性のあるものとするために推奨される、発行体レベルでの開示要素を明確化することを目的にしたハンドブックです。
6.クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針(2021年5月版)とは、金融庁・経済産業省・環境省の共催で、クライメート・トランジション・ファイナンスを普及させ、より多くの資金の導入による国内における2050年カーボンニュートラルの実現とパリ協定の実現への貢献を目的として策定されたものです。
グリーン/トランジションファイナンス・フレームワークについて
当社が策定したグリーン/トランジションファイナンス・フレームワークの概要は以下のとおりです。
1.当社の概要
当社は、JFEグループ全体の経営戦略の策定、グループ会社の経営とリスク管理、グループIR等の対外説明、グループ全体の資金調達等の機能を集約した、グループを代表する上場会社として、スリムなグループ本社機能を担う会社であります。
JFEグループは、銑鋼一貫メーカーとして各種鉄鋼製品の製造・販売を主力事業とし、鋼材加工製品、原材料等の製造・販売、ならびに運輸業および設備保全・工事等の周辺事業を行う「JFEスチール㈱」、エネルギー、都市環境、鋼構造、産業機械等に関するエンジニアリング事業、リサイクル事業および電力小売事業を行う「JFEエンジニアリング㈱」、鉄鋼製品、製鉄原材料、非鉄金属製品、食品等の仕入、加工および販売を行う「JFE商事㈱」の3つの事業会社により、事業分野ごとの特性に応じた最適な業務執行体制の構築を図っております。
2.クライメート・トランジション戦略とガバナンス
2-1.JFEグループのESG「JFEグループ環境経営ビジョン2050」
当社グループは、気候変動問題を極めて重要な経営課題ととらえ、カーボンニュートラルの実現に向けて「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定しております。
鉄はこれまでと同様にカーボンニュートラル社会においても引き続き必要不可欠な素材という認識のもと、高い目標である「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けて、脱炭素インフラの整備とグローバルなイコールフッティングの実現を前提としつつ、世界の競合他社に先んじて、必要な脱炭素技術を可能な限り早い時期に確立することを目指します。2050年に向けて、グリーンスチール需要の増加が予想され、我が国の鉄鋼業においては着実な低炭素化を進めると共に、世界に先駆けたカーボンリサイクル高炉や水素還元製鉄等の革新技術の確立を目指します。
そのような背景の中、2021年5月に第7次中期経営計画(24年度まで)を公表しています。第7次中期経営計画期間を創立以来最大の変革期ととらえ、新たなステージへ飛躍するための4年間と位置付け、鉄鋼事業のCO2排出削減については今中計期間末に2013年度比18%の削減を計画しております。なお、カーボンニュートラルを目指す投資(以下、「グリーントランスフォーメーション投資」)額として、第7次中期経営計画期間で、鉄鋼事業における1,600億円を含めグループ全体で3,400億円を計画しております。
なお、鉄鋼事業における投資(1,600億円)の内訳としては、製鉄所における燃料・蒸気・電力運用ガイダンスシステム(サイバーフィジカルシステム)導入による国内の製鉄所における省エネルギー・CO2削減への対応、CO2排出量の少ない電炉法の利用拡大にあたり電炉法の課題である生産性を向上し、高級鋼製造の制約を解除するための技術開発や転炉でのスクラップ使用量を増加させるための技術開発への対応等も含まれます。また、高炉内での鉄の還元効率を改善させるフェロコークス技術の活用や、水素還元やCCS等によるCO2排出量削減が期待される革新的製鉄プロセス開発(COURSE50)を業界一体となり進めていきます。それに加えて、当社では独自の取り組みとして、高炉から排出されるCO2をメタン化し、還元材として吹き込むカーボンリサイクル高炉にも取り組んでいきます。これらの技術開発に複線的に取り組み、最終的な「ゼロカーボン・スチール」の実現を目指していきます。
エンジニアリング事業においては、バイオマス・地熱・太陽光・洋上風力発電といった再生可能エネルギー事業のさらなる拡大と、カーボンリサイクル技術の開発・実用化により、社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献していきます。
また、当社はグリーントランスフォーメーション戦略の推進を機動的かつ確実に実行し、持続的な利益成長を続けるために、さらに強固な財務基盤の構築および財務柔軟性の向上が必要と判断し、本中期計画の道筋が見えたこのタイミングで、2023年9月に海外募集による新株式の発行および自己株式の処分と2028年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行を実施しました。資金使途は、公募増資分は成長性の高い電磁鋼板関連投資に、転換社債分はカーボンニュートラル関連投資等に充当する予定です。
2-2.ESG経営の推進に向けたガバナンス体制
当社グループは、「JFEグループ企業行動指針」の中で、地球環境との共存を図るとともに、快適な暮らしやすい社会の構築に向けて主体的に行動することを定めており、環境保全活動の強化や気候変動問題への対応等の「地球環境保全」は持続可能な社会を実現するうえで非常に重要な課題として認識しています。
従来から取り組んできた製鉄プロセスにおけるCO2削減や環境配慮型商品の開発と提供等の取り組みについて、円滑にPDCAを回し適切にマネジメントを推進するために、2016年度に「地球温暖化防止」をCSR重要課題(マテリアリティ)として特定しました。2021年は、重要課題に経済的な観点の項目を加えるとともに、より重要度の高い項目を選定することで、経営上の重要課題として新たに取り組みを開始しました。その中で、課題の分野に気候変動問題解決への貢献(2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組み)を設定し、「JFEグループのCO2排出量削減」および「社会全体のCO2削減への貢献」の2項目を重要課題として特定しました。
これらの取り組みについては、当社社長が議長を務める「グループサステナビリティ会議」のもと、グループを横断する「グループ環境委員会」を設置し、目標の設定、達成状況のチェック、グループ全体のパフォーマンスの向上等について議論することにより、監督・指導しています。
特に気候変動問題等、経営にとって重要なテーマについては、グループ経営戦略会議で審議し、さらに取締役会への報告を行っています。取締役会は気候変動問題等の環境課題について審議・決定し、または報告を受けています。取締役会での事案例としては、TCFD最終報告書の趣旨に対する賛同表明、TCFD提言に沿った情報開示(シナリオ分析等)、第7次中期経営計画「JFEグループ環境経営ビジョン2050」の策定等があります。
3.ビジネスモデルにおける環境面のマテリアリティ(重要度)
当社グループは事業活動を通じて、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない」存在としての地位を確立し、社会の皆様に広く認めて頂ける企業となることが、使命であると考えています。これを具現化するために、「環境的・社会的持続性(社会課題解決への貢献)」を確かなものとして、「経済的持続性(安定した収益力)」を確立することを目指して中長期の経営を行っております。
当社グループでは、2021年度から2024年度までの4年間を創立以来最大の変革期ととらえ、長期の持続的成長のための強靭な経営基盤を確立し、新たなステージへ飛躍するための期間と位置づけて、必要な施策に大胆に取り組み、変革に挑戦していくべく第7次中期経営計画を策定しております。特に、気候変動問題への取り組みは経営の最重要課題と位置付けており、2016年度に特定した「5分野・13項目」のCSR重要課題の一つとして取り組みを推進してきました。2021年には、これらCSR重要課題に経済面の重要課題を加えて再編し、経営上の重要課題として13項目を特定し新たに取り組みを開始しました。課題の分野として気候変動問題解決への貢献(2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組み)を設定し、「JFEグループのCO2排出量削減」および「社会全体のCO2削減への貢献」の2項目を「経営上の重要課題」として特定しています。また、特定した重要課題に対するKPIを設定し、取り組みを推進しています。
4.科学的根拠のあるクライメート・トランジション戦略
4-1.カーボンニュートラル実現に向けたロードマップと具体的な取り組み
当社グループは、2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みで、鉄鋼事業のCO2排出量削減を進めるにあたり、当社独自技術であるカーボンリサイクル高炉とCCUを軸とした、超革新技術への挑戦を複線的に進め、水素製鉄の技術開発も積極的に推進します。
また、社会全体のCO2削減への貢献も拡大していきます。エンジニアリング事業において太陽光発電や地熱発電等、様々な再生可能エネルギー発電事業を実施している他、商社事業ではバイオマス燃料や鉄スクラップ等の取引拡大、鉄鋼事業では高機能鉄鋼製品等を通じてCO2削減に貢献していきます。また、洋上風力発電にはグループをあげて取り組んでいく方針です。
当社グループは、気候変動への取り組みを経営の最重要課題として位置づけており、TCFD提言に沿った情報開示を進めています。シナリオ分析を行うことで事業に影響を及ぼす重要な要因を選定し、リスクと機会と特定・評価しています。これらを経営戦略に反映し、2021年5月には、第7次中期経営計画として「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を公表しました。
本ビジョンでは、グループ全体におけるグリーントランスフォーメーション投資を4年間で3,400億円とし、中でも鉄鋼事業については1,600億円を計画しています。そして、鉄鋼事業における2024年度のCO2排出量目標を2013年度比18%削減とし、グループとしての2050年カーボンニュートラルの実現を目指していきます。なお、2020年に発表した2030年度目標(鉄鋼事業におけるCO2排出量20%以上削減)については、2022年2月に見直しを実施し、30%以上削減を新たな目標として設定致しました。
これは、2021年10月に経済産業省より公表された「「トランジションファイナンス」に関する鉄鋼分野における技術ロードマップ」において示されている、国内における各政策やパリ協定と整合する2050年カーボンニュートラルの実現に向けた道筋にも沿っているものと考えております。
当社は、気候関連リスクを正しく認識した上で、現在の事業戦略に及ぼす影響を評価し、将来の事業戦略策定に活用しています。前述の通り、当社事業は気候変動の影響を大きく受ける可能性のある事業であるため、2つのシナリオ(いずれも国際エネルギー機関(IEA)が公表しているシナリオ)を設定した上で、分析を行っております。
[鉄鋼事業の2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ]
2022年度は、鉄鋼事業における2050年に向けたロードマップを策定・公表しました。2030年までをトランジション期と考え、低炭素鉄鋼プロセスへの転換を促進、以降2050年までをイノベーション期と定義し、超革新技術の確立・実装によりカーボンニュートラルの達成を目指します。
■トランジション期:低炭素鉄鋼プロセスへのトランジションとして、カーボンリサイクル高炉や水素還元製鉄等の革新的技術の完成・実装に至るまでのCO2排出量削減に資する開発等は以下の通りです。
<低炭素製造プロセスへの転換>
4-1-1.既設電気炉増強/高効率・大型電気炉導入(実装年:順次導入予定):
スクラップ発生量の増加を背景に炭素排出量が小さい電炉法への注目度は高まっており、足元では仙台における電気炉増強や千葉地区のステンレス製造プロセスにおける電気炉の導入を決定、倉敷における高効率・大型電気炉導入の検討などを進めることを公表しており低炭素鉄鋼プロセスへのトランジションを目指します。なお、電気炉での高品質鋼材製造等のためにスクラップに加え還元鉄を活用していきます。
4-1-2.水素インフラの構築(実装年:2030年代):
将来的に大規模な水素利用が期待されるエリアにおいて、CO2フリー水素の受入・貯蔵・供給拠点の整備および利活用に関する検討を行います。他社との連携も積極的に活用し、2030年までにCO2フリー水素サプライチェーン構築を目指し、2030年以降の水素利用拡大を見据えたサプライチェーンの拡大と脱炭素社会の実現に向けた水素の有効な利用方法についての検討も実施します。
4-1-3.日本起点のCCSバリューチェーン構築(実装年:2040年代):
製鉄所で排出されるCO2を回収・液化・貯蔵したのち、国内外の枯渇油ガス田・帯水層などの貯留地まで船舶輸送し、地下貯留する事業について他社との連携も活用し検討・調査を行い、CCS事業において必要な技術やコスト等に関する諸課題を整理することで事業の実現性を評価し、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、検討を加速していきます。
<省エネ・高効率化等(最先端の省エネ技術や設備により生産工程のCO2削減を目指す)>
4-1-4.AI・IoTの活用(実装年:既に導入済み):
国内の製鉄所に保有する全ての高炉に対して、最新のデータサイエンス技術(CPS:AIを用いて設備内部の状態把握や状態予測を行うシステム)の導入を進めています。導入により、異常予兆の検知や、安定操業において重要な炉内の熱の状態を予測できる等の成果が確認されています。今後、さらなる高炉の安定・高効率操業を実現し、生産性を格段に向上させていきます。
4-1-5.スクラップ活用(実装年:既に導入済み):
現状、転炉でのスクラップ比率は12~15%となっております。スクラップ使用量が増加すると熱供給量が不足するため、スクラップ比率向上に向けては新たな熱付与技術の開発が必要となりますが、バーナーの大型化・耐久性向上、カーボンフリー燃料活用を進め、スクラップ比率を20%以上とする目標達成を目指します。
また、上記の鉄鋼事業におけるCO2排出量削減の施策に加え、社会全体のCO2削減への貢献拡大のための下記施策などを進めていきます。
<エコプロダクトの製造(高機能鋼材として最終製品として使用される段階においてCO2削減に貢献)>
4-1-6.高付加価値電磁鋼板(既に製造中):
社会全体でのCO2削減への貢献が期待されるエコプロダクトとして、高付加価値電磁鋼板の供給・流通加工体制の拡大を図っております。
カーボンニュートラルに向けた取り組みが全世界的に進む中、自動車の電動化に向けた動きが加速しており、電動車の需要は世界的な環境規制の強化に伴い、さらなる急伸が見込まれています。需要は2019年比で2026年に6倍以上、2035年には14倍以上に及ぶと想定され、これに伴い駆動モーターに不可欠な高級無方向性電磁鋼板の需要も増加すると見込んでいます。伸長する需要を確実に捕捉するため、トップグレードの無方向性電磁鋼板の製造能力を現行比3倍に増強します。
また、電力需要の継続的な増加や再生可能エネルギーの導入拡大等を背景に、変圧器に使用される方向性電磁鋼板の世界的な需要増大を想定しており、当社とJSWスチール社は、インドにおける方向性電磁鋼板の製造販売に関して、事業化に向けた詳細検討を進めてきましたが、2023年8月に合弁会社設立の契約締結に至りました。インド国内におけるグリーンな送配電インフラの整備に寄与し、インド経済の著しい成長に貢献していきます。
<再生可能エネルギーに関連する取組み(エンジニアリング・商社事業)>
4-1-7.バイオマス・地熱・太陽光発電(既に取り組み中で今後加速化させる予定):
エンジニアリング事業においては、バイオマス・地熱・太陽光発電等の設計・調達・建設・運営を事業として展開しています。今後、洋上風力発電や水力など電源の多様化に取り組んでいきます。
4-1-8.商社事業におきましては、JFEグループの中核商社として、保有するグローバルネットワーク等の経営資源を活かし、グループ各社と協力して社会全体のカーボンニュートラル実現を目指していきます。
<循環型社会への貢献>
4-1-9.廃プラスチックの資源化(既に取り組み中で今後加速化させる予定):
製鉄業では通常焼却処理される廃プラスチックの資源化によるCO2排出削減を推進しています。従来の廃プラスチックに加え産業廃棄物由来のものも活用することで廃プラスチックの種類および代替利用量を拡大し、活動を加速していきます。
■イノベーション期:主には脱炭素技術として、既存の鉄鋼製造プロセスへの様々な超革新技術の開発等は以下の通りです。
<超革新製鉄プロセスの開発>
4-1-10.排出されるCO2の回収及び有効利用(実装年:2030年代):
高炉法の大量・高効率生産、高級鋼製造の特性を活かすために、高炉におけるCO2削減技術が重要と考えております。カーボンリサイクル高炉と余剰CO2の有効利用(CCU)技術を組み合わせることにより、製鉄所内でのCO2再利用を可能とし、実質CO2排出ゼロを目指します。
カーボンリサイクル高炉、CCUともに、要素技術開発、小型設備試験等を実施し、2027年までのプロセス原理実証の完了を目指しております。
水素製鉄(直接還元)の開発や、電気炉での高級鋼製造の為の不純物除去技術開発にも取り組み、複線的に超革新技術開発を行います。
4-2.外部イニシアチブへの参加
4-2-1.気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同
当社グループは、気候変動問題のリスクと機会への対応について、シナリオ分析をはじめとするTCFD提言に沿った情報開示を進めていきます。
4-2-2.鉄鋼業界の取り組み
日本鉄鋼連盟は、2020年度を目標年次とする低炭素社会実行計画の達成に向けて取り組んできました。低炭素社会実行計画は2021年度に「カーボンニュートラル行動計画」へと改め、フェーズⅡ目標(2030年度目標)が改訂されました。それに加えて、2018年11月には2030年以降の「長期温暖化対策ビジョン」を策定し、公表しました。JFEスチールはこの長期ビジョンの策定に中核的な立場で参画しました。「長期温暖化対策ビジョン」は、鉄鋼製造における2℃シナリオの達成とともに、1.5℃シナリオへの超革新技術の必要性を示したもので、最終的な「ゼロカーボン・スチール」への挑戦を意味するものです。さらに、日本鉄鋼連盟では、2021年2月15日、「我が国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針」を発表し、日本鉄鋼業としてゼロカーボン・スチールの実現に向けて、果敢に挑戦することを宣言しました。
5.グリーン/トランジションファイナンスによる調達の意義
本フレームワークに基づき、2つの種類による調達ができるものとします
ⅰ.グリーン・ファイナンス: グリーン事業に区分される適格事業のみに関連する支出または投資の新規ファイナンスまたはリファイナンスに充当される債券・ローン
ⅱ.トランジション・ファイナンス:グリーン事業に区分される適格事業及びトランジション事業に区分される適格事業の両方またはトランジション事業に区分される適格事業のみに関連する支出または投資の新規ファイナンスまたはリファイナンスに充当される債券・ローン
当社はグリーンまたはトランジションファイナンスによる調達を、上記「JFEグループ環境経営ビジョン2050」の実現のための資金調達と位置づけているほか、ステークホルダーの皆様に対して、改めて当社の取り組みを発信する契機となるものと考えております。
6.実施の透明性/調達資金の使途等
6-1.実施の透明性
当社は、第7次中期経営計画(24年度まで)期間において、グリーントランスフォーメーション投資として鉄鋼事業における1,600億円を含めグループ全体で3,400億円を計画しており、2050年のカーボンニュートラル実現を目指していきます。
JFEスチール東日本製鉄所(京浜地区)は1912年(明治45年)に南渡田地区で日本鋼管として創業以来、100年以上にわたり京浜工業地帯の発展の一翼を担ってきました。一方で、国内最適生産体制の構築に向けた構造改革の実施や2050年カーボンニュートラルの実現を背景に2023年9月16日に高炉等上工程を休止しました。当該地域はカーボンニュートラルとイノベーションを実現する先進的な取り組みに挑戦するフィールドを創出することで、地域・社会の持続的な発展及び国の重点課題の解決に資する都市をめざしますが、同時に倉敷における高効率・大型電炉導入などへの対応を背景に社員の大量転換なども見込まれます。このように、トランジションの実施に伴い、労働者、地域、周辺環境に様々な影響を及ぼす可能性がありますが、川崎市とともに関係者への説明や雇用関係の支援策を順次実施していきます。
6-2.調達資金の使途
グリーンまたはトランジションファイナンスで調達された資金は、以下の適格クライテリアを満たす適格プロジェクトに関連する新規投資及び既存投資のリファイナンスへ充当します。なお、既存投資の場合は、グリーンまたはトランジションファイナンス調達から2年以内に実施した支出に限ります。
[グリーン/トランジションファイナンス適格プロジェクト]
※グリーンプロジェクトとして認識しているプロジェクト
なお、対象となるプロジェクトの選定の際には、以下の通り想定される環境・社会的リスク低減に配慮した対応を行っていることを確認します。
■大気への排出抑制
JFEスチールでは、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)の主要排出源である焼結工場への脱硫・脱硝装置の設置をはじめ、加熱炉への低NOxバーナ導入、低硫黄燃料等への転換により排出抑制に努めています。また、構内清掃の強化、原料ヤードへの散水設備・防風フェンスの設置、集塵機の増強・能力向上等により、粉塵飛散の抑制に努めています。
JFEエンジニアリングでは、大気汚染防止法や関連する地方条例にしたがい、横浜本社(鶴見製作所を含む)と津製作所において排出される窒素酸化物(NOx)濃度を定期的に計測する等、ばい煙発生施設の適正な管理を実施しています。また、建設工事現場においてはNOx・PM法およびオフロード法(特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律)に適合した建設機械、工事連絡車を使用して環境の保全に努めています。
■水資源の汚染防止
製鉄プロセスで使用した水を公共用水域へ排水する場合、徹底した浄化処理により環境負荷低減に努めています。水質汚濁防止法で定められた排水基準よりも厳しい内容を含む協定を各地域の行政と締結していますが、継続的に協定を達成するために、より厳しい自主管理基準を定めて水質改善に取り組んでいます。
JFEエンジニアリング横浜本社(鶴見製作所を含む)および津製作所からの排水は、公共用水域もしくは公共下水道に排水されています。それぞれの排水は、窒素、リン、COD等を定期的に測定し、水質汚濁防止法および下水道法にしたがって適正に管理しています。
■化学物質の管理・排出抑制
JFEスチールは、化学物質の自主的な削減を進め、環境負荷低減に努めています。PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)の届出物質については、法令にしたがって排出・移動量を報告しています。
■生物多様性の保全
事業活動による周辺地域の生態系への影響を最小限にとどめるために、拠点の状況に応じた生物多様性のモニタリングや、構内の緑化・希少種の保全活動等を行っています。新たな製造拠点の建設や新規事業を開始する場合は、法令に則り環境影響評価(アセスメント)を実施し、周辺地域や敷地内の生物多様性の状況の確認、必要な配慮・保全を行っています。また、水辺や山間部、あるいは大規模な建設工事では、周辺環境の保全の重要性に応じてお客様や関係機関による調査が事前に実施され、工事に対して生物の保護を含むさまざまな環境保全の条件が提示される場合があります。JFEエンジニアリングは提示された条件にしたがい、例えば騒音や排水等による周辺の生物への影響を最小限にする施工方法を提案する等、建設工事による影響を最小限にとどめることで生物多様性の保全に配慮しています。製作所においては、周辺地域や敷地内の生物多様性の状況の確認、必要な配慮・保全を行っています。
6-3.除外クライテリア
グリーンまたはトランジションファイナンスで調達された資金は下記に関連するプロジェクトには充当しません。
・所在国の法令を遵守していない不公正な取引、贈収賄、腐敗、恐喝、横領等の不適切な関係。
・人権、環境等社会問題を引き起こす原因となり得る取引。
6-4.レポーティング
6-4-1.資金充当状況レポーティング
当社は、適格クライテリアに適合するプロジェクトに調達資金が全額充当されるまで、資金の充当状況を年次でウェブサイト上に公表します。なお、ローンの場合は貸し手に対して直接報告することも選択できるものとします。
開示内容は、資金使途カテゴリー単位での資金充当額、調達資金の未充当資金額及び調達資金の充当額のうち既存の支出として充当された金額です。
なお、調達資金の充当計画に大きな変更が生じる等の重要な事象が生じた場合は、適時に開示します。
6-4-2.インパクトレポーティング
当社は、グリーンまたはトランジションファイナンスの償還/返済までの間、以下の指標及びプロジェクト概要を実務上可能な範囲で当社ウェブサイトにてレポーティングします。なお、ローンの場合は貸し手に対して直接報告することも選択できるものとします。
[グリーン/トランジションファイナンス適格プロジェクト]
※グリーンプロジェクトとして認識しているプロジェクト
◆超革新製鉄プロセス開発の研究成果は開示可能な範囲でレポーティング
6-4-3.プロジェクトの評価及び選定のプロセス
JFEホールディングス傘下の各事業会社が上記で定めた適格事業を選定し、適格事業の最終決定はJFEホールディングス財務担当執行役員が行います。事業の適格性の評価については、適格クライテリアを踏まえた議論等を通じて、総合的に分析・検討しています。プロジェクトの運営・実施にあたっては、関係する各部において周辺環境の保全に取り組んでおります。
6-4-4.調達資金の管理
当社ではグリーンまたはトランジションファイナンスによる手取金について、全額が充当されるまで、四半期毎に当社財務部が内部管理システムを用いて調達資金の充当状況を管理します。調達資金はグリーンまたはトランジションファイナンスの調達手取の全額が充当されるまでの間は、現金又は現金同等物にて管理されます。
第3 【第三者割当の場合の特記事項】
該当事項なし
該当事項なし