第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を企業ミッションとしております。日本発のエンターテインメント・カルチャーを作り出し世界中のユーザーに広めていくことにより、日本のユニークな強みであるアニメ、ゲームといった文化に関わるクリエイターの活動の場を増やしていくことを目指しております。

 

(2) 中長期的な経営戦略等

当社はこれまで掲げていた中長期戦略を発展させる形で、①VTuberビジネスの確立、②IPビジネスへの進化、③クリエイター経済圏の拡大の3段階の事業戦略を定めております。これらに沿って内製での事業開発、外部企業との戦略的パートナーシップ、又はM&A等により能力拡充を図り、持続的な成長を目指してまいります。

 

① VTuberビジネスの確立

デジタル・エンターテインメントにおいて高い成長性と収益性を安定的に維持するには、再現性高く付加価値の高いIPを生み出す仕組みの確立が重要と考えております。

 

当社ではYouTube等の動画配信プラットフォームを通じて、高頻度にVTuberのライブ配信、3Dモーション・キャプチャー・スタジオを用いたバーチャルライブ・コンサート、IPアセットを用いたアニメーション・コンテンツやミュージックビデオ等の供給を行っており、当社所有のYouTubeチャンネルの累積動画コンテンツ供給数は約9.2万本、それらの動画コンテンツの累積再生回数は約148億回に上ります。

 

また、当社では二次創作ガイドラインを定めたうえでファンによる二次創作活動を広く奨励しており、こうした大規模なPGC(注1)供給及びそれに呼応するUGC(注2)発信の文化形成の結果として、当社のVTuberは幅広いファンからの支持を得ていると認識しております。当社が保有するホロライブプロダクションのYouTubeチャンネル登録数は延べ8,841万以上、VTuberあたりの当社年間収益は2024年3月期において約3.5億円(注3)となっており、大きなファンベースの存在が魅力的な演者や国内外の主要なクリエイターとの継続的な共創を可能としております。結果として、当社は2024年3月時点で日本、北米(英語圏地域)、東南アジア地域それぞれにおいてYouTubeチャンネル登録数No.1(注4)のVTuber IPを有しております。

 

 今後は、最先端モーション・キャプチャー技術、3DCG技術の拡充、コンテンツ企画の多様化、音楽を通じたプロモーションの拡大、多言語でのコンテンツ・ローカライズの推進等を通じて、再現性高く付加価値の高いIPを生み出す仕組みを更に強固なものとして行きたいと考えております。

 

(注) 1.Professional Generated Contentの略

2.User Generated Contentの略

3.2024年3月期売上高を2024年3月期末の在籍VTuber数で除して算出

4.出所:ユーザーローカル。2024年4月30日時点。

 

 

② IPビジネスへの進化

VTuberの特徴の一つとして、コマース展開の多様性が挙げられます。アニメルック・アバターで活動するVTuberはキャラクター・コンテンツIPとしての側面を持つため、漫画、アニメ、ゲームといったコンテンツIPと同様に、必ずしも演者の稼働を前提とせずに多様な商品、サービスとしての展開が可能となっております。

 

マーチャンダイジングの商品種に関しましては、2024年3月末時点でデジタル商品も含めた同時展開商品数が2,500SKU程度まで拡大しており、消費者のニーズを鑑みた更なる拡大の余地は今後も大きいと考えております。今後はトレーディング・カードゲーム等のシリーズ商品を通じて、特定のIPのファンにブランド内の別のIPへの興味も深めていただくようなクロスセルを推進してまいります。

 

また、商品販売チャネルに関しましてもこれまで大部分を占めていたEC販売に加え、グローバルな小売店網での商品販売を拡大してまいります。こうした取り組みにより、潜在ファンのIPへの接触頻度を増加させ、よりエンゲージメントの高いファンの拡大を目指します。

 

地域展開に関しましては、日本に加えて、既にアニメ市場の浸透が進んでいる北米及びアジア地域を重視し、各地域の潜在ファンがアクセスできるイベントや商品・サービスの増加を目指します。海外現地営業代理店や現地企業とのパートナーシップ強化により、ローカライズされたコラボレーション商品の拡充や現地商圏での認知度の拡大も推進してまいります。

 

③ クリエイター経済圏の拡大

中長期の時間軸では、IPの多面的なコマース展開により得た利益をアニメ、ゲーム/メタバースといった近接するコンテンツ領域への展開に向けて投資することにより、更に広範な潜在消費者層からの認知をグローバルに獲得し、当社を取り巻くクリエイター経済圏の一層の拡大を目指します。

 

ゲーム/メタバース関連のプロジェクトについては、中期的に大きな収益源となり得る一方で、開発期間も長くかかるため、インディーズゲーム・クリエイターによる二次創作ゲーム開発プロジェクト、ゲーム開発・運用会社へのIPライセンスアウト・プロジェクト、内製開発のメタバース・プロジェクトといった類型ごとに財務リスクを分散化して管理しております。

 

メタバース・プロジェクト「ホロアース」に関しては、2024年にかけてオープンβ版の機能拡充を段階的に実施していく予定であります。これまでのYouTube等の複数のプラットフォームでのVTuberやファンの活動及び交流に加え、ホロアース上では同時性を持った臨場感のあるコミュニケーションが可能となり、より豊かな体験価値が提供可能となることを想定しております。

他のメタバース・プラットフォームの開発・運営者と比較した当社の独自性として、当社がVTuber IPを自社で保有しており、平時からVTuberと世界中のファンのリアルタイムな交流を運営していることが挙げられます。そうしたユーザー体験と統合的なサービスとして「ホロアース」を自社で開発・運営することにより、コミュニティ・サービスとしてホロアースの継続的な集客と拡大を行うことを想定しております。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社はVTuberのファン数の直接的な指標である「YouTubeチャンネル登録数」、並びに魅力的なコンテンツ制作の原資となる「売上高」及び「サービス別売上高」を重要な経営指標と位置づけ、企業価値の向上を図ってまいります。

 

 

(4) 経営環境

当社が提供するVTuber事業は、VTuberというキャラクターIPを中心として、配信/コンテンツ、ライブ/イベント、マーチャンダイジング、ライセンス/タイアップ、及び開発中のゲーム・メタバースサービス等と多岐にわたる領域に広がっております。

 

VTuber市場は2016年末にはじまり2018年までに初期的な市場が形成されてきたものの、この5~6年で急速に成長しており、国内のVTuber市場については、2023年度は800億円にのぼると推測(注5)され、2020年度から2023年度までにおける年平均成長率(CAGR)は77%の高成長が見込まれております。また近年において、グッズを展開するマーチャンダイジングやBtoBのライセンス/タイアップ領域の成長が期待されており、VTuber自体がアニメルックな見た目であることから、アニメキャラクターのようにIPとして多様なコマース展開が行いやすいため、VTuber とグッズ展開は親和性が高くなっております。また、VTuber IPの価値向上とともに若年層に広範な支持を得ていることから、主にゲームや商品サービスを提供する企業とのコラボレーションが継続的に増加しており、今後もこの成長を維持すると推測(注5)されております。

 

また、VTuber市場は比較的新しい市場であるものの、その潜在市場規模や動向は広義のグローバルなIPビジネス市場から類推可能であると考えております。2022年の同市場については動画配信プラットフォーム等を通じたアニメコンテンツ配信市場規模が1,652億円程度となっており、その他各種メディアでのコンテンツ提供、商品化、音楽、イベント興行等を含む広義アニメ市場は国内で1.4兆円程度、海外も含むグローバルで2.9兆円程度となっております(注6)

 

市場全体が好調に推移する中、当社事業の直接競合他社も複数確認されている状況にありますが、日々ライブ配信コンテンツを提供する当社のVTuberとそれに呼応する形でソーシャルメディア等を通じた自律的な発信を行うファンからなる大規模なファンコミュニティの存在が新規参入事業者に対する当社の競争優位性として機能していると当社は考えております。

 

当社事業は、VTuberによるライブ配信を通じた付加価値の高いIPの開発とファンベースの確立を軸に、足許で広義アニメ市場におけるグローバルかつ多面的展開を行っている段階にあり、今後は、ゲーム・メタバースサービスといった近接領域への展開により、グローバルコンテンツ市場規模約123.6兆円(注7)を見据えた更に大きな事業拡大を計画しております。

 

(注) 5.出所:矢野経済研究所「2023年 VTuber市場の徹底研究 ~市場調査編~」)

6.出所:一般社団法人日本動画協会「アニメ産業レポート 2023」2022年のアニメ関連市場規模

7. 出所:内閣官房『第23回新しい資本主義実現会議の基礎資料』にて記載の2019年のコンテンツ産業の世界市場規模

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 魅力的なIPの開発

VTuberの人気はアニメルック・アバターや関連するグループ又はユニットIPの魅力の影響を大きく受けるため、付加価値の高いVTuber IPを継続的に開発することは当社の経営課題であります。当社は、IPやコンテンツを共創するクリエイターにとっても意義深い活動の機会を継続的に提供するために、当社IPの認知及びブランド価値の一層の向上に努めております。

 

② コンテンツ・クリエイターの発掘及び育成

VTuberの活動はアニメルック・アバターを用いて活動するコンテンツ・クリエイターの創作活動に依存しているため、能力のあるコンテンツ・クリエイターの発掘、及びその能力を一層開花させるための育成は当社の課題であります。

当社では定期的なオーディションの実施により新しいコンテンツ・クリエイターの発掘ができるよう努めている他、採用後も社内外のクリエイター・企画チームを活用し、継続的なグッズ企画・衣装企画・ライブ企画等の多様な活動支援によってコンテンツ・クリエイターの個性をより発揮できるような環境を構築しております。

 

③ 事業拡大と収益性向上を両立した事業運営

当社は付加価値の高いVTuber IPの継続的な開発と育成を主軸に、動画配信プラットフォーム上でのサービス展開のみに留まらない、多面的なIPビジネス市場での事業展開を推進しております。そのため、より大きな市場を捉えるために複数の先行投資を実施しております。具体的には、より付加価値の高いIP開発と集客力の向上に向けた、3Dモデリング、3Dアニメーションに関する人材投資、大型モーション・キャプチャー・スタジオの取得、統合IDサービスの開発及びユーザーの体験価値の向上に向けたゲーム・メタバースサービスの開発等を行っております。

立ち上げたIPをベースとして、マーチャンダイジングやライセンス/タイアップといった収益性の高いコマース領域では更なる事業拡大を計画しており、トレーディング・カードゲーム等のシリーズ商品の企画や海外地域でのライセンシー拡充による現地商流への商品・サービスの配荷拡大等を推進しております。

 

④ 組織体制の整備

当社の成長には多様な専門性を持った優秀な人材を採用し、組織体制を整備していくことが重要であると考えております。積極的な採用活動を行っていくとともに、従業員が中長期的に働きやすい職場環境や人事制度を整備してまいります。

 

⑤ 技術力の強化

当社はコンテンツ・クリエイターの活動について、モーション・キャプチャー技術を駆使した自社開発のアプリケーション等で支えており、今後の継続的な技術改善が視聴者に新しいエンターテインメント体験を届けるために重要であると考えております。

高度なスタジオ配信を可能にするアプリケーションのアップデートや豊かな表現を可能にする3Dモデリング技術の向上等、継続的な改善を進めてまいります。

 

⑥ コミュニティの健全性維持

当社は多数のVTuberを擁しており、それぞれのコンテンツ・クリエイターの裁量で日常的に膨大な数の視聴者との双方向コミュニケーションがライブ配信を通して行われております。

継続的な創作活動や視聴者とのコミュニケーションが維持されるよう、誹謗中傷対策などのコミュニティ健全化の施策は重要であると考えております。

外部専門家と連携しての誹謗中傷対策等、コンテンツ・クリエイター保護のための施策を継続的に実施してまいります。

 

⑦ その他財務上の課題

当社は、これまで金融機関からの借入に大きく依存せず、資金需要は自己資金及び営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とした財務基盤を維持していることから、先述の「事業拡大と収益性向上を両立した事業運営」の他には、優先的に対処すべき財務上の課題はありませんが、上記事業上の課題に対する対処及び継続的な成長に資する設備投資を実行できるよう、内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを検討し、既存事業の営業キャッシュ・フローの改善等に対処するなど、財務体質のさらなる強化に努めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

当社では持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役社長谷郷元昭がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。取締役会においては、サステナビリティに係る当社の在り方を提言することを目的として、以下の内容の協議を行っております。

 

①中長期的な視点を持った、サステナビリティに関する重要課題の特定

②サステナビリティに関する重要課題のリスク及び機会の識別

③サステナビリティに関する重要課題のリスク及び機会への対応の基本方針の策定

 

リスク管理については取締役会主導のもと、体制強化を進めております。リスク管理は、リスクの発見・分析・評価・対応の4つのステップを通して行われており、特別な対応が必要なリスクはリスクオーナーを選定したうえで、取締役会のみならず、リスク・コンプライアンス委員会にて進捗管理をしております。各部門で管理可能なリスクは、各組織が中心となって対応しており、必要に応じて取締役会への報告を行っております。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

上記ガバナンス及びリスク管理を通じて識別された当社における重要なサステナビリティ項目は「インターネット上の誹謗中傷を通じた人権侵害への対応」であります。

 

①戦略

当社は「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を企業ミッションとしており、日本発のエンターテインメント・カルチャーを作り出し世界中のユーザーに広めていくことにより、日本のユニークな強みであるアニメ、ゲームといった文化に関わるクリエイターの活動の場を増やしていくことを目指しております。

ESG戦略の重要性が高まっている現在において、当社は社会的な課題解決と当社事業のリスク低減を共に達成する項目として、「インターネット上の誹謗中傷による人権侵害」を重要課題として捉えており、リスク管理のうえ対応する戦略の策定を進めております。

 

私たちの社会においては、インターネット上での誹謗中傷、プライバシーの侵害、差別的言動等により、インターネットに参加している人々の生活や、クリエイターの活動を脅かす事象が散見されております。

こうした事象を看過していると、長期的にインターネットを通じたコミュニケーションの発達や、イノベーションの創出、カルチャーの創造が妨げられることとなり、当社のミッション達成のみならず社会全体の発展を阻害する可能性があります。

そこで当社では社会に対する啓発活動や、人権侵害行為に対する法的措置といった活動を戦略的に遂行することにより、社会課題の解決と当社の持続的な成長を共に達成できるものと考えております。

 

②指標及び目標

当社では課題の解決に向けた目標指標はまだ策定されておりませんが、結果指標として誹謗中傷に対する法的措置の回数を集計しております。

実績として、2023年1月~2023年12月においては、殺害予告や書き込みによる権利侵害行為に対する法的措置を合計116件対応してまいりました。

また、誹謗中傷対策に関する声明文を発表したほか、自社独自のサポーターガイドラインを展開することにより、誹謗中傷行為に関する理解と抑制を呼び掛けております。

今後もクリエイターエコノミー協会、セーファーインターネット協会といった業界団体と共に、活動の領域を広げてまいります。

 

 

(3)人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

当社における、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

①人材育成方針

当社のミッションを達成するためには、世界に向かって挑戦していく人材の確保が重要であるという認識のもと、人材育成を行っております。具体的な施策例としては以下のとおりであります。

 

a.企業ミッション・バリューによる意識の統一

多様な社員の意識統一を図るため、企業ミッションを毎月の全社会議で共有するほか、バリューに沿った人事評価、アワード制度を設けることにより、当社の目標や行動指針を共通化する施策を積極的に行っております。

b.体系化された研修コンテンツの提供

一定の等級以上の人材には同一の研修コンテンツを提供することにより、専門知識の習得のみを目的とするのではなく、組織間で共通の価値観やスキルを醸成することを心がけております。

c.専門性に沿った外部教育機会の提供

各職種の専門性に応じた外部研修・セミナーへの参加を促進することで、それぞれの業務専門性を高める制度も導入しております。

d.キャリアパスの複線化

キャリアの観点では、マネジメントに特化したキャリアコース(M等級)と、専門性に特化したキャリアコース(P等級)の二種類を用意しており、各社員の志向や適性に応じたキャリアパスを描いていける制度を用意しております。

 

②社内環境整備方針

世界中のユーザーに楽しんでもらえるコンテンツを継続的に提供するためには、多様な人材の掛け合わせから生じるイノベーションが不可欠であります。こうした多様な人材が継続的に当社で活躍できるように、社内環境整備に関する施策にも取り組んでおります。具体的な施策例としては以下のとおりであります。

 

a.社内規程に基づいた副業・兼業の実施

社員が企業や社会に貢献しようとする意志を尊重すると共に、各自のスキルを高める機会として多様な働き方を選択できるよう、環境を整備しております。

b.帰省時のリモートワーク制度の導入など、海外社員に配慮した施策の実施

海外国籍社員など、特に帰省が難しい社員に対し、休暇期間を超えて帰省先でのリモートワークを認めることで、社員のモチベーション改善を図っております。

c.フレックスタイム制による出勤と育児休業取得の奨励

各部門別に設定されたコアタイム以外の出勤時間を社員が選択できることで、ワークライフバランスを確保しやすくすると共に、育児休業の取得を奨励しております。

d.社員のエンゲージメントレベルの把握

サーベイツールを継続的に活用することで、社員の業務に対するエンゲージメントを把握し、エンゲージメントレベルを向上させるための施策検討に活用しております。

 

③指標及び目標

当社では、上記「(3)①人材育成方針」及び「(3)②社内環境整備方針」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績

労働者の育児休業取得率

2027年3月まで80%

38

従業員エンゲージメントスコア

2027年3月まで72

67

入社1年後定着率

2027年3月まで90%を維持

93.3

外国籍社員の比率

2027年3月まで20%

10.1

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

また、顕在化可能性又は影響度が「小」と記載されたリスクについても、現に当該リスクが発生し又は当社の事業、業績及び財政状態等に重大な影響を及ぼす可能性を否定するものではなく、発生時期の記載と異なる時期に当該リスクが発生する可能性を否定するものではありません。

当社は、これらのリスク発生可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 外部の動画配信プラットフォームへの依存について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:長期)

当社はYouTube等の動画配信プラットフォームを通じて視聴者にライブ配信コンテンツを提供しております。これらの動画配信プラットフォーム事業者の動向及び事業戦略並びに当社との関係の変化等により、当社のライブ配信コンテンツ提供の継続が困難になった場合、又は経済条件に大幅な変更があった場合には、当該プラットフォーム経由で当社のコンテンツを消費していた顧客層からの収益の減少を通じて当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社では、ライブ配信のみに依存せず、マーチャンダイジング、イベント、ライセンスアウトといった収益機会の多様化が進んでいる他、コンテンツ・クリエイターの活動もYouTube以外を含む複数の動画配信プラットフォーム上で行われており、また開発中の自社プラットフォームでの活動も予定されていることから、単一のプラットフォームのみに依存することの無い体制となっております。

 
② 外的要因による消費者需要動向の変化について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は動画配信プラットフォーム上でのVTuberによるライブ配信、関連グッズ及びコンテンツの販売等を主な収益としております。近年のインターネット上での動画メディア視聴の世界的な広がり、また、アニメ、ゲーム等のコンテンツ消費の国際的な拡大などを背景として、当社コンテンツの視聴者数や当社の売上高も順調に拡大を続けており、今後も当面はこの傾向は継続するものと認識しております。

しかしながら、関連する法規制、景気動向、個人の嗜好等の変化等により、関連市場の成長が鈍化し、それに伴い、当社コンテンツの視聴者数の減少が起きる等、当社のビジネスモデルを長期的に維持できない場合や、これらの変化に対応した新しいビジネスモデルを十分に構築できない場合には、顧客数の減少を背景とした売上高成長の鈍化等を通じて当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では事業展開を行う領域の多面化、及び地域の多様化を行うことにより、当該リスクの軽減を企図しております。

 

③ 広告市場動向の変化について(顕在化可能性:中、影響度:小、顕在化の時期:中期)

当社のサービスの一部であるタイアップ広告の受注高は企業の広告出稿予算の変化等の影響を受けることが予想され、景気変動等の要因によって企業の広告出稿予算が増減した場合には、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社ではタイアップ広告以外にも、自社所有IPに基づく商品販売等収益源の多角化を行うことにより、当該リスクの軽減を企図しております。

 

 

④ 法規制・動向について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:長期)

当社が提供するサービスを規制する主な法律として「個人情報の保護に関する法律」、「特定商取引に関する法律」、「下請代金支払遅延等防止法」、及び「不当景品類及び不当表示防止法」等があります。

当社は、これらの規制に準拠したサービス運営を実施しており、今後も法令順守体制の強化や社内教育の実施などを行ってまいりますが、新たな法規制の制定や改正が行われ、当社が運営するサービスが新たな法規制の対象となる場合、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 海外ユーザーに向けたサービスのリスクについて(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は、視聴者層の拡大に向けて英語及びインドネシア語をメインにライブ配信を行うVTuberグループ「hololive English」、「HOLOSTARS English」及び「hololive Indonesia」を展開しております。

外国語圏の視聴者に向けたサービスの提供にあたっては、文化・ユーザーの嗜好・商習慣の違い、為替変動、法制度・税制度を含む各種規制、経済的及び政治的不安等の様々な潜在的リスク、事業展開に必要な人材の確保の困難性、及び展開言語地域において競争力を有する競合他社との競争リスク等が存在します。当社がこのようなリスクに対処できない場合、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では現地文化や法令規制等に精通した外部専門家との協働や展開地域の多角化により当該リスクの軽減を企図しております。

 

⑥ 競合他社の動向について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

現在、VTuber事業を含む動画配信関連事業を展開する競合企業は国内外に複数存在しております。

当社は、今後とも優れたIPの開発や技術的改善等により市場における優位性を維持しつつ競争力を向上させていく方針ですが、これらの取り組みが予想通りの成果を上げられない場合や、より競争力のある競合他社の出現により、当社が提供するコンテンツの視聴者離れ等につながる場合、又は魅力的なコンテンツ・クリエイターの継続的な確保が難しくなる場合には、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業に関するリスク

① 所属VTuberの人気、活動頻度、活動継続等に係るリスクについて(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社の業績は、当社所属のVTuberの人気及びコンテンツ供給頻度に一定程度依存しております。

当社は平時から、当社所属のVTuberに関するスキャンダル、炎上、誹謗中傷等に対処し、健康的な活動をサポートする技術的、組織的体制の拡充等を通じて対策を図っておりますが、VTuberの活動内容や頻度はアニメルック・アバターを用いて活動するコンテンツ・クリエイターの動向に依存しており、不適切なコンテンツの配信、スキャンダル、炎上、誹謗中傷、その他健康上の理由等により、当社所属コンテンツ・クリエイターが視聴者からの継続的な支持を得ることができなくなった場合、活動頻度が著しく低下した場合、又は活動の継続が困難になった場合等には、関連するIP、コンテンツ又は商品等の付加価値の低下を通じて当社のレピュテーション、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

個別のコンテンツ・クリエイターを見た場合、これらのリスクは高くない頻度で顕在化する可能性がありますが、当社では健全なコンテンツ配信を推進し、スキャンダル、炎上、誹謗中傷等に対処し、コンテンツ・クリエイターの健康的な活動をサポートする技術的、組織的体制の拡充、関連する業界団体との連携、及び多様な人気VTuberによるプロダクション全体としてのコンテンツ供給の安定化等により対策を図っております。

 
② 動画内容に不適切な内容が入ることによるレピュテーションリスクについて(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は所属するコンテンツ・クリエイターによる公序良俗の違反や知的財産権の侵害が発生することを未然に防止するために、ガイドライン等の拡充やコンテンツ・クリエイターの指導に努めております。また、そのような事象若しくはその兆候が発生した場合には、速やかにそれを認識し対処を行うための配信動画のモニタリング等の管理体制の整備にも努めております。しかしながら、日々のコンテンツ配信の中で予期せぬ事象が発生した場合には、当社や所属コンテンツ・クリエイターのレピュテーションの低下や紛争につながる等、当社の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 情報セキュリティについて(顕在化可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:中期)

当社は事業活動を通して、顧客や取引先の個人情報及び機密情報を入手することがあり、また、営業上の機密情報を保有しております。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得し社内で運用する他、従業員研修の実施等、これらの情報管理には万全な方策を講じておりますが、万一当社の従業員や業務の委託会社等が情報を漏洩又は誤用した場合には、当社が企業としての社会的信用を喪失し、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 知的財産権について(顕在化可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:中期)

当社は当社が運営する事業に関する知的財産権の取得に努め、当社が使用する商標・技術・コンテンツ等についての保護を図っておりますが、模倣品の流通、海賊版の制作等により当社の知的財産権が第三者の侵害から保護されない場合、又は知的財産権の保護のために多額の費用が発生する場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が使用する技術、コンテンツについて、知的財産権の侵害を主張され、当該主張に対する防御又は紛争の解決のための費用又は損失が発生し、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 顧客、取引先又はその他第三者との係争について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は、法令及び契約などの遵守のため、リスク・コンプライアンス管理規程を定めて社内教育やコンプライアンス体制の充実に努めております。しかしながら、今後当社が事業活動を行うなかで、顧客、取引先又はその他第三者との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟に発展する可能性があり、係る訴訟の内容及び結果によっては、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、多大な訴訟対応費用の発生や当社の社会的信用の毀損によって、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 新規事業について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社はUGCコミュニティの強化及びファン層の拡大・維持を企図して、新規事業としてメタバースサービスの開発を行っております。同サービスにより、3D仮想空間の中でVTuberとファンが直接交流できる機会等を提供できるようになる予定であります。

同新規事業は、そのリスク等について企画及び開発段階から十分な検討を行うことによりリスク低減を図る方針であります。

しかしながら、同新規事業の展開においては、不確定要素が多く存在することから、当社の想定通りに進捗しない、期待するシナジーが得られない又は法的若しくは事業上の新たなリスク要因が発生する等の可能性があり、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 新スタジオの稼働について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は配信コンテンツの拡充及び制作リソースの拡充を企図して、2023年4月より新しい配信用スタジオの稼働を開始しております。稼働開始後は十分な人員を確保したうえで、投資回収を図っていく想定でおりますが、人的リソースの不足や、稼働管理の不備等により期待した機能を達成できない可能性があり、減損損失の発生等による当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 会社組織に関するリスク

① 人材の確保・育成について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社が今後とも企業規模を拡大し、より良いサービスを提供していくためには、個性豊かなコンテンツ・クリエイター、専門性の高い技術者等の他、コーポレート部門等においても当社の理念に共感し高い意欲を持った優秀な人材を確保することが必要不可欠であります。

当社は、規模拡大やサービス向上に必要な人材確保のために、今後もより一層積極的な採用活動を行っていく予定ではありますが、人材獲得競争の激化や市場ニーズの変化等により、想定通りの採用が進まない等優秀な人材の獲得が困難となる場合や、現在在職する人材の社外への流出が生じた場合には、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② レピュテーションリスクについて(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社の事業においては、当社及び当社が提供するサービスの認知度、ブランドイメージや社会的信用の維持及び向上に努めておりますが、当社によるプロモーション活動が奏功する保証はありません。

また、当社サービスの欠陥や個人情報及び機密情報の流出等並びに当社や当社が提供するサービスに関する風評被害の発生等により、ブランドイメージや社会的信用が低下し、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 事業体制及び内部管理体制について(顕在化可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:中期)

当社は2016年6月に設立され、未だ社歴が浅く成長途上にあり、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、当社の事業体制及び内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。事業規模に適した事業体制及び内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 経営成績及び財政状態などについて

① 社歴が浅いことについて(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は2016年6月に設立されており、設立後の経過期間は8年程度と社歴の浅い会社であります。また、当社は急速な成長過程にあり、業績は新規IPの公表や大型イベントの実施等に関連した季節性にも依存するため、過年度の経営成績は期間業績比較を行うための十分な材料とはならず、過年度の業績のみでは今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。

 

② 業績の季節変動について(顕在化可能性:大、影響度:中、顕在化の時期:短期)

当社の業績は消費者の長期休暇期間や大型イベントの実施時期等に関連した売上高の季節性に依存するため、特定の四半期業績のみをもって当社の通期業績見通しを判断することは困難であります。

 

③ 配当政策について(顕在化可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:未定)

当社は、株主に対する利益還元と同時に、財務体質の強化及び競争力の確保を経営の重要課題と位置づけております。現時点では、当社は成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、事業拡大と事業の効率化のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。このことから、創業以来配当は実施しておらず、今後においても当面の間は内部留保の充実を図る方針であります。将来的には、各事業年度の経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討していく方針ですが、現時点においては配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

(5) その他

① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化可能性:中、影響度:大、顕在化の時期:中期)

当社は取締役及び従業員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして新株予約権を付与している他、今後も優秀な人材確保のため新株予約権その他のエクイティ・インセンティブプランを発行する可能性があります。これらの新株予約権が権利行使された場合等には、当社株式が新たに発行又は交付されることにより、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があるとともに、係る株式が一度に大量に市場へ流出することとなった場合などには、適切な株価形成に影響を及ぼす可能性があります。本書提出日現在でこれらの新株予約権に係る潜在株式数は4,942,200株であり、発行済株式総数及び潜在株式数の合計67,093,100株の7.4%に相当します。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における資産合計は、前事業年度末より6,826百万円増加し、22,713百万円となりました。これは主に、現金及び預金の増加873百万円、マーチャンダイジング分野が好調に推移し商品仕入高が増加したことに伴う商品の増加662百万円、自社ECの利用が増加したこと等による未収入金の増加733百万円、新スタジオ建設及び本社移転を中心とした有形固定資産の増加2,162百万円及びメタバースサービス「ホロアース」開発に伴うソフトウエア仮勘定を中心とした無形固定資産の増加1,384百万円によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債合計は、前事業年度末より2,688百万円増加し、11,569百万円となりました。これは主に、自社ECの受注販売数が増加したこと等による前受金の増加1,017百万円及び新スタジオの稼働開始、新本社オフィスへの移転等に伴い資産除去債務が918百万円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末より4,137百万円増加し、11,143百万円となりました。これは主に、利益剰余金が4,137百万円増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

当事業年度における国内外の経済環境は、防疫対策の緩和を受けて消費者のライフスタイルに変化が見られた一方で、物価、為替の変動等を背景とした先行き不透明感が継続しました。

 

このような環境のもと、当社はミッションとして「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を掲げ、日本発のエンターテインメント・カルチャーを作り出し世界中のユーザーに広めていくことにより、日本のユニークな強みであるアニメ、ゲームといった文化に関わるクリエイターの活動の場を増やしていくことを目指しております。

 

当事業年度につきましては、音楽活動を通じた多面的なメディア露出や海外及び国内におけるイベント出展等により、各地域での当社IPの認知拡大を推進し、結果として当社所属VTuberのYouTubeチャンネル登録総数(注)は2024年3月末時点で8,840万人(前期比17.0%増)まで伸長しました。新規デビューVTuberとしては、2023年7月に英語圏向け女性VTuberグループ「ホロライブEnglish」より5名、2023年9月にホロライブプロダクション傘下の新グループ「hololive DEV_IS」より5名、2023年11月に英語圏向け男性VTuberグループ「ホロスターズEnglish」より4名をそれぞれデビューさせており、所属VTuber及びそのファン層の多様化を企図しております。その結果、当事業年度の配信/コンテンツ分野の売上高は通年で7,647百万円(前期比20.6%増)となりました。

 

ライブ/イベント分野におきましては、2023年7月にホロライブプロダクション初の北米での主催ライブ《hololive English 1st Concert -Connect the World-》を実施した他、2024 年3 月に実施した大型イベント《hololive SUPER EXPO 2024 Supported By BANDAI 》と《hololive 5th fes. Capture the Moment Supported By Bushiroad》も盛況となりました。その結果、当事業年度のライブ/イベント分野の売上高は通年で5,601百万円(前期比63.4%増)となりました。

 

 

マーチャンダイジング分野におきましては、商品販売チャネルの拡充が進捗し、EC販売に加えて国内外の小売店への商品配荷が増加しました。提供商品の価格帯や商品種も多様化が進んでおり、以前にも増して幅広いお客様に商品を手に取っていただく機会が増加しております。その結果、当事業年度のマーチャンダイジング分野の売上高は通年で12,477百万円(前期比55.9%増)となりました。

 

ライセンス/タイアップ分野におきましては、IPの影響力拡大を背景として取引先企業が件数、規模ともに拡大しており、ゲーム企業のような近接業種の企業に加え、消費財企業のような非近接業種の企業との取引も増加しました。その結果、当事業年度のライセンス/タイアップ分野の売上高は通年で4,440百万円(前期比65.9%増)となりました。

 

以上の結果、当事業年度における売上高は30,166百万円(前期比47.5%増)、営業利益は5,536百万円(前期比62.0%増)、経常利益は5,623百万円(前期比66.1%増)、当期純利益は4,137百万円(前期比65.0%増)となりました。

 

(注)YouTubeチャンネル登録総数は、2024年3月31日時点の所属VTuber及び公式のYouTubeチャンネル登録数の総和

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ873百万円増加し、8,666百万円となりました。

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において営業活動により獲得した資金は4,765百万円となりました。これは主に、増加要因として、税引前当期純利益5,722百万円、前受金の増加による収入1,017百万円があった一方で、減少要因として、未収入金の増加額723百万円、法人税等の支払額1,237百万円があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において投資活動により支出した資金は3,893百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,429百万円、無形固定資産の取得による支出1,267百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において財務活動により支出した資金は0百万円となりました。これは、単元未満株式の買取に係る自己株式の取得による支出によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.仕入実績

当事業年度の仕入実績は、次のとおりであります。

サービスの名称

金額(百万円)

前期比(%)

マーチャンダイジング

 3,699

166.0

合計

 3,699

166.0

 

(注) 当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

c.受注実績

当社は概ね受注から役務提供までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。

 

d.販売実績

当事業年度における販売実績を主要サービスごとに示すと次のとおりであります。

サービスの名称

金額(百万円)

前期比(%)

配信/コンテンツ

 7,647

120.6

ライブ/イベント

 5,601

163.4

マーチャンダイジング

 12,477

155.9

ライセンス/タイアップ

 4,440

165.9

合計

 30,166

147.5

 

(注) 1.当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、上記ではサービス別の販売実績を記載しております。

   2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前事業年度

当事業年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

Google LLC

5,327

26.0

6,413

21.3

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

財務諸表の作成において適用する会計基準等につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の(重要な会計方針)、(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

当事業年度の配信/コンテンツ分野は、各地域での当社IPの認知拡大を推進した結果、当社所属VTuberのYouTubeチャンネル登録者数が伸長しました。

また、ライブ/イベント分野におきましては、ホロライブプロダクション初の北米での主催ライブを実施した他、大型イベントも盛況となり好調に推移しました。

マーチャンダイジング分野におきましては、商品販売チャネルの拡充が進捗し、EC販売に加えて国内外の小売店への商品配荷が増加しました。

ライセンス/タイアップ分野におきましては、取引先企業が件数、規模ともに拡大しており、ゲーム企業のような近接業種の企業に加え、消費財企業のような非近接業種の企業との取引も増加しました。

これらの結果、当事業年度の売上高は、30,166百万円(前期比47.5%増)となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

当事業年度の売上原価は、16,177百万円(同46.3%増)となりました。

主な要因は、マーチャンダイジング分野における販売拡大に伴う仕入の増加及びライブやイベントの開催に伴う費用の増加によるものであります。

この結果、売上総利益は13,988百万円(同48.9%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当事業年度の販売費及び一般管理費は、8,451百万円(同41.4%増)となりました。

主な要因は、グッズ販売に関する諸経費、事業規模拡大に伴う人件費、支払報酬の増加等によるものであります。

この結果、営業利益は、5,536百万円(同62.0%増)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

当事業年度の営業外収益は、116百万円(前期は2百万円)となりました。これは主に、為替差益108百万円を計上したことによるものであります。

当事業年度の営業外費用は、30百万円(同10.7%減)となりました。これは主に、和解金25百万円を計上したことによるものであります。

この結果、経常利益は、5,623百万円(同66.1%増)となりました。

 

(特別損益、当期純利益)

当事業年度においては、特別利益として受取損害賠償金160百万円、特別損失として移転損失60百万円がそれぞれ発生しました。
 法人税等(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)1,584百万円を計上した結果、当期純利益は4,137百万円(同65.0%増)となりました。

 

なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に、キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

事業年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の運転資金需要のうち主要なものは、所属VTuberへの報酬やグッズ制作原価等の売上原価の他、人件費や地代家賃、グッズ販売に伴う倉庫費用や決済手数料等の販売費及び一般管理費といった営業費用であります。

投資を目的とした資金需要は、配信用スタジオの設備更新や新規事業・新規サービスの開発費用等であります。

当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金及び設備投資資金共に自己資金での運用を基本としておりますが、資金繰りが悪化する傾向が見受けられる場合には、金融機関による借入やエクイティファイナンスによる外部からの資金調達についても資金需要の額や用途、当該タイミングにおける金利及び資本コストを比較したうえで実施することを想定しております

なお、第8期事業年度末(2024年3月31日)における現金及び現金同等物の残高は8,666百万円となっております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社の経営成績に影響を与えるおそれがあるリスクが存在していることを認識しております。

これらリスク要因の発生を回避するためにも、運営する事業の強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等」に記載のとおり、主な経営指標としてYouTubeチャンネル登録数、売上高、サービス別売上高を経営上重要な指標として位置付けております。

当社ではYouTube等の動画配信プラットフォームを通じて、所属VTuberによる高頻度なライブ配信、3Dモーション・キャプチャー・スタジオを用いたバーチャルライブ・コンサート、IPアセットを用いたアニメーション・コンテンツ等の供給を行うことに加え、二次創作ガイドラインを定めたうえでファンによる二次創作活動を幅広く奨励しております。この結果、当社のVTuberは幅広いファンからの支持を得ていると認識しており、当社が保有するホロライブプロダクションのYouTubeチャンネル登録数は延べ8,840万登録を超えました。こうした大きなファンベースの存在が魅力的な演者や国内外の主要なクリエイターとの継続的な共創を可能としております。

 

YouTubeチャンネル登録数の推移

                                  (単位:人)

前事業年度末

当事業年度末

75,577,500

88,409,800

 

 

サービス別売上の推移

(単位:百万円)

サービスの名称

前事業年度

当事業年度

配信/コンテンツ

6,342

 7,647

ライブ/イベント

3,429

 5,601

マーチャンダイジング

8,003

 12,477

ライセンス/タイアップ

2,676

 4,440

合計

20,451

 30,166

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) バーチャルYouTuber基本契約

契約締結日

コンテンツ・クリエイターにより異なる

契約の名称

バーチャルYouTuber基本契約

相手方の名称

コンテンツ・クリエイター

契約期間

コンテンツ・クリエイターにより異なる

契約の概要

当社はコンテンツ・クリエイターに対し、動画配信その他のコンテンツ・クリエイター活動を委託し、コンテン・ツクリエイター活動に用いる立ち絵を含む当社著作物及びアプリケーションの利用等を許諾する。

 

対価:

コンテンツ・クリエイター活動によって当社が得た収益のうち一定の料率を乗じたものをコンテンツクリエイターに支払う。

 

 

(2) Live2D利用契約

契約締結日

2018年6月1日

契約の名称

Live2D出版許諾契約

相手方の名称

株式会社Live2D

契約期間

期間の定めのない契約

契約の概要

 株式会社Live2Dが保有する許諾SDK(ソフトウエア開発キット)を組み込んだアプリケーション(以下、「派生アプリケーション」という)を制作し、派生アプリケーションを使用してYouTube等の動画配信プラットフォームで動画配信等を行う。
 
対価:
派生アプリケーションを使用して得た収益に一定の料率を乗じたものを株式会社Live2Dに支払う。

 

 

(3) コンテンツ管理契約

契約締結日

2021年12月9日

契約の名称

CONTENT LICENSE AGREEMENT

相手方の名称

Google LLC

契約期間

契約締結日から1年間(自動更新あり)

契約の概要

当社が著作権を有する動画コンテンツの利用許諾を行い、Google LLCから提供されるツールを使用してYouTube上で当該コンテンツを管理し、当該コンテンツから生じる広告収益を受領する。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社では、主に配信やメタバースに関する新規技術の開発を行う専門の部署を設けており、当該部署において研究開発活動を行っております。

当事業年度におけるこれらの研究開発費の総額は21百万円であります。

なお、当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。