文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
企業の社会的ニーズ、社会の変化するスピード、そして企業を取り巻く諸環境に対する、当社グループの取り組み姿勢をより明確にするため、ミッションとして「私達の未来を考える ~すべては持続可能な社会のために~」、ビジョンとして「変化をとらえ、進化につなげる」、バリューとして「SPIRIT of Challenge」の3構成からなる当社グループの基本理念を2020年3月期に再構築しました。
使命・存在意義であるミッションは「私達=社会の一員」であるという認識の下、持続可能な社会の実現を目指すために、絶えず未来を考え続けることが私達の使命であり、存在意義であるとの考えを持ち続けることが重要であると考え、「私達の未来を考える ~すべては持続可能な社会のために~」としました。
近未来の姿であるビジョンについては、今、必要なことは変化の波を的確にとらえ、その大きさ、方向性そして速さを認識することであるとの考えをもとに、独自性を発揮しつつ、自らも変化していかなければならないこと、そして私達の未来は変化に富み、予想しえない事象が起こりうることを認識することが重要であり、これまで以上に、「変化をとらえ、進化につなげる」企業にならなければならないとの思いを込めて定めました。
そして、私達は、変化をとらえるために必要とするバリュー(価値観)を明確にし、それらのバリューを発揮することによって変化に対応していくことができると考えました。常にチャレンジ精神を持ちバリューを発揮していくことを役職員全員がしっかりと認識することを目的に「SPIRIT of Challenge」を当社グループのバリューとして掲げました。以下8項目がバリューの構成要素です。「Speed:迅速性」「Professionalism:専門性」「Integrity:高潔な倫理観」「Responsibility:当事者意識」「Imagination:想像力」「Toughness:タフネス」「Challenge:挑戦」「Leadership:リーダーシップ」
これら「ミッション・ビジョン・バリュー」の下、当社は創業以来、培ってきたノウハウを活用し、総合エネルギー事業の積極的な展開に取り組むと共に、安定的に収益を確保できる事業基盤の拡充を目指し、持続的な企業価値の向上とステークホルダーに対する一層の付加価値の提供を進めてまいりたいと考えております。また、事業活動を通じ幅広い人財を育成すると共に、経済合理性と強い倫理観を併せ持った企業活動及び社会活動を行ってまいります。
当社グループは、資本政策の重要性を十分認識し、株主資本を効率的に活用することによって、強固な財務基盤を構築し、併せて期間収益の安定的確保を目指してまいりたいと考えています。
持続的成長性を測る手段として継続的な「株主資本の増加」を第一に考え、1株当たりの純資産の増加を目指し、加えて「フリーキャッシュ創造力」及び「投資効率」についても重視してまいります。
また、資本コストと資本収益性の状況を分析し、資本コストを上回る収益性を確保できる収益構造の構築を目指してまいります。
当社グループは、SDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献を事業活動の基本に位置付けております。それは、個々の企業の存続だけでなく、社会全体の持続的な発展が求められている中で、当社グループのビジネスモデルが、その実現のための価値提供を果たすことができると考えているからです。
当社グループは、創業から続くアセット・マネジメント事業とディーリング事業による資産運用中心の事業展開から、収益源の多様化を図るべく2012年の太陽光発電事業参入を機に再生可能エネルギー関連事業を徐々に拡充させ、さらに2016年には電力取引関連事業、そして2020年には小売事業への参画等により、「総合エネルギー事業会社」を目指してまいりました。事業及び社会環境、ビジネスモデル、技術等の変化のスピードは従来にも増して加速化しておりますが、当社グループは、これらの諸環境の変化も捉え、電力を中心とした総合エネルギー事業をより発展させていく所存であります。
加えて、当社は、持続可能な社会の成長に資する脱炭素社会の実現を視野に、エネルギー資源の有効活用を図ると共に、効率的かつ利便性に優れたサービスの提供者にならなければなりません。そのためには当社グループの事業領域における近未来のサービスの在り方をいち早く見極め、必要な外部パートナーとの提携等をより広げ、システム人財・IT人財の確保、プラットフォームの確立に向け、経営資源を集中する必要があると考えております。
これらを具体的に進めるにあたり、当社グループは、「(4)対処すべき課題 ①新たな事業への挑戦と事業モデルの構築」に記載のとおり「中期ビジョン2025」を策定しております。本中期ビジョンは、2025年3月期を最終年度としており、掲げている目標の達成を目指すとともに、次期中期ビジョンへ繋がる土台作りにも注力してまいります。
当社グループは今後更なる事業及び収益の持続的拡大を図るために、以下の課題に取り組んでまいります。
当社グループは、祖業のアセット・マネジメント事業、ディーリング事業に加え、そのノウハウを活かし2012年度以降、再生可能エネルギー関連事業や電力取引関連事業を展開しております。2021年3月期には既存ビジネスをさらに拡充するために小売事業(電力・ガス)を立ち上げました。
今後も社会の変化のスピードに遅れることなく、社会的要請及び時代の方向性に即するために、一歩先の動きを見据えた事業展開をさらに進めていく必要があると考えており、これを実現するために、当社は、2021年11月に、2022年3月期から2025年3月期までを対象期間とする「中期ビジョン2025 事業の深化と進化」を策定いたしました。2022年9月に創業30周年を迎えた当社グループは、本中期ビジョンにおける3年半を第2の創業期と捉え、総合エネルギー事業会社への変革を加速化させ、会社の飛躍的な成長を図ってまいります。
本中期ビジョンに掲げた優先して取り組む事項は以下の5項目です。
1. 『電力利用の新しい日常』を創造
2. 電気は『つくって、ためて、賢く使う』時代を先取り
3. 蓄電池を活用した事業・ビジネスの拡大
4. 地域電力設立の支援強化(地域脱炭素化の支援)
5. 小売電気事業者様向けマネジメントサービス提供型ビジネスの一層の拡大
これらの取り組みを推進するにあたり、所有する資産から収益を得るアセット型事業から電力に係る需給管理やリスク管理等各種マネジメントやオペレーションにより収益を得るノンアセット型の事業により重心を移していくことを指向しております。とりわけ、蓄電池については、脱炭素社会に向けて急速に拡大する再生可能エネルギーを効果的に活用するために重要な分野と認識しており、2021年2月より大型蓄電池を用いたエネルギーマネジメントサービスの提供を開始しております。さらに2025年秋に運転開始が予定されている北海道札幌市新川の大規模系統用蓄電所において、当社は運転開始までの管理と、運転開始後はAIを活用した市場予測等に基づき、卸電力市場や需給調整市場、容量市場での取引業務を請け負います。
これらマネジメント/オペレーションサービスの確立及び継続的発展のためには、現行の電力関連事業(再生可能エネルギー関連、電力取引関連、小売)で培いつつあるノウハウはもとより、これまでディーリング事業で培ってきたトレーディングや各種マネジメント等に係るノウハウや、アセット・マネジメント事業で培ってきたアセットオーナーとのコミュニケーション、新規事業投資等に係るノウハウを最大限活用するとともに、資金調達手段の多様化を図り、より一層のAIの活用等によるDXの推進や、人的資本投資の拡充に取り組んでいくことが必要であると考えております。
なお、2025年3月期における定量的目標として、連結営業収益:200億円以上、税金等調整前当期純利益:7億円以上、1株当たり純資産額:500円以上、の3つを設定しております。
当社グループは、当社グループのエネルギー事業に係る事業領域を、電力サプライチェーン全体に広げ、より機能的なサービスの提供と収益機会の開拓を図ることを目的に、2020年より小売事業(電力・ガス)に参入しております。当社グループが「総合エネルギー事業」を目指す過程においては、小売電気事業の環境変化により、2022年夏以降、小売電気事業の「特別高圧・高圧」の当社の顧客契約数は一気に増加いたしました。電力販売量の増加は電力仕入の増加へと繋がり、顧客数の増加は新たな顧客向けサービスのビジネスチャンスとなる等、当社グループの他の事業にも好影響を及ぼします。引き続き新規顧客の獲得と既存顧客の維持管理を並行して行い、事業規模の拡大を図ってまいります。
総合エネルギー事業をコアとし、金融及び市場取引分野において蓄積したノウハウを活用しつつ事業展開を進めている当社グループにとって、事業規模の拡大と今後の新しい事業モデルを構築するためには、株主資本を充実させ企業体力を強化させることと持続的な収益力を確保していくことが最も重要な課題であります。事業展開の優先度を重視し、各セグメントに対する経営資源配分の最適化を図り、事業目標の進捗管理の強化と資本効率をさらに向上させることが必要であると考えています。人財育成等を含め、人的資源の一層の活用を通じて収益力の向上に取り組んでまいります。
また、継続的に経費構造を見直し、経費率の改善を同時に進めることも重要であると考えており、引き続きコスト削減を徹底してまいります。
上記の目標達成のためには、適材適所の人材配置と業務効率の向上を実現させる組織運営が必要であると考えております。特にDXを推進する上では、システム人材の拡充が課題であると認識しており、外部登用や社内の人材活用も含め積極的に取り組んでまいります。
さらに、市場取引に係るリスク、信用リスク、流動性リスクに加え、セキュリティリスク、自然災害発生及び感染症拡大等に伴う事業継続に係るリスク等、当社グループの事業を取り巻くリスクは、今後、従来想定していない新たなカテゴリーのものも発生し得ると考えられます。こうした事業を取り巻くリスクを迅速かつ的確に管理することの重要性を明確に認識し、不測の事態に備えたリスク管理体制の一層の強化に努めてまいります。
当社グループは、環境・社会・経済という3つの観点において、持続可能な状態の実現に貢献するため、長期的に良好な企業活動を維持し続けることを、サステナビリティ経営として捉えております。
当社は、この経営方針を推進するため、代表取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、気候変動や人的資本をはじめとした重要課題や基本方針を特定・策定の上、そのリスク管理状況等について、同委員会より取締役会に報告を行う体制を構築しており、今後強化してまいります。
2023年3月に東京証券取引所より、プライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請がなされました。資本コストや株価を意識した経営を実践する観点から、自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し、その内容や市場評価に関して、取締役会で現状を分析・評価した上で、改善に向けた計画を策定・開示し、その後も投資者との対話の中で取り組みをアップデートする、といった一連の対応を継続的に実施することを求められております。
当社においては、現在、資本収益性等の分析を進めており、今後の対応等につき検討をしております。
再生可能エネルギー関連事業においては、「持続可能な開発目標(SDGs)」や国のエネルギー基本計画に鑑み、2030年までに最大年間66,000トン(太陽光発電100MW相当)のCO2削減を目指しております。
本事業を取り巻く環境としては、再エネ特措法の改正、競合他社の参入、優良案件の減少等、案件確保が容易ではない状況が引き続き継続することが想定されます。こうした環境下、当社は、長年に亘り培ってきた再生可能エネルギーに係るノウハウとネットワークの力を活用し、固定価格買取制度に頼らない、非FIT太陽光発電設備を用いたPPAの展開にも取り組んでおります。また、併行して固定価格買取制度上のセカンダリー市場(完成した発電所の売買市場)での案件確保、保有している既存発電設備について譲渡を行うこと等を含め、事業ポートフォリオの一部入替を検討する等、期間利益を確保し、FITモデルから非FIT又はFIPモデルへの転換を図りながら、事業採算性の向上に取り組んでおります。
その一方で、全国的に太陽光発電設備が増加したことにより、出力抑制が課されるエリアが拡大されてきており、さらに経済的出力抑制の制度もスタートし、出力抑制が営業収益に与える影響は増加しております。当社グループはこれまで以上に出力抑制が実施される可能性を十分に認識し、業務効率化や経費見直し等を行ってまいります。
地熱発電事業については長期に亘る事業ではありますが、既に宮崎県において掘削した生産井2本・還元井1本・貯留層のモニタリング用井戸1本から、発電事業に必要な能力を有するとした調査結果を得ており、事業化に向けて着実に前進していると考えております。地熱発電事業は太陽光発電に比べリスクが高いことは認識してはおりますが、再生可能エネルギー関連事業の新たな中核の一つとなるよう、潜在的なリスク検証も含め、パートナー企業とともに取り組みを加速・拡大させてまいります。なお、九州電力送配電株式会社との契約により、当初計画の2MWは2026年度工事完了予定として連系承諾を得ております。計画規模拡大に伴う追加の送電容量については、現在も系統確保に向けて関連手続きを進めておりますが、連系時期の不確実性や物価上昇等による建設コストの増加に伴い、並行して送電容量の拡大等を含む計画の見直しの検討も行っております。
電力取引関連事業においては小売電気事業者向けの業務代行の受注に加え、顧客の多様な電力調達ニーズに対応するため電力の仕入・販売に注力してきた結果、着実に収益基盤の強化が進んできております。しかしながら、事業を取り巻く環境は2021年1月の電力需給ひっ迫、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻等によるエネルギー価格の高騰、電力の仕入価格が販売価格を上回る状況が断続的に発生する等、当事業の顧客である小売電気事業者にとって、厳しい事業環境が続いております。今後もAIを用いた電力の需要予測等、引き続き質の高いサービスと独自のネットワークを武器に安定した顧客基盤の拡充を図り、一層の収益力の拡大と事業基盤の強化を目指してまいります。
当社グループは小売電気事業者を有するアストマックス・エネルギー株式会社を2020年4月に買収し、2022年3月期から小売電気事業を積極的に展開しております。2022年4月から販売を開始した低圧顧客向けの電力プラン「フリープラン」は、電力の価格を変動料金と固定料金を組み合わせ、カスタムメイドな電気プランを実現できるプランであり、2022年夏からは高圧及び特別高圧の法人顧客に対しても販売を開始しました。これは、大手電力会社が引き受けを停止し、電力プランが実質的に市場連動に切り替わることがアナウンスされた時期であり、当社の「フリープラン」に対する比較優位性があらためて認識され、2022年夏以降顧客数が大きく増加し、2024年3月期に初めて年間を通じてセグメント黒字となりました。
サービスへの理解促進と拡充のため、顧客訪問に加え、顧客向けにWebセミナーを開催し、2024年4月から始まる容量拠出金制度や、固定価格と市場価格を組み合わせたハイブリッド・フリープラン、キャップ付きフリープランなど新商品の概要説明を行い、理解を深めていただく機会を設けました。今後も様々な取り組みを通じて、サービスへの理解促進と拡充し更なる顧客の獲得に努め、一層の収益力の拡大と事業基盤の強化を目指してまいります。また、コーポレートPPAや蓄電池の活用等を小売事業とも連携させ、質の高いサービスを提供してまいりたいと考えております。
当事業を主として推進しているアストマックス・ファンド・マネジメント株式会社では、学校法人東京理科大学が主に出資する大学発ベンチャーキャピタルファンドの営業者としてファンド運営業務等を担うほか、2020年3月に運用開始した基金の安定運用のファンド、2022年10月に運用開始した学校法人東京理科大学が支援する再生可能エネルギーファンドの運用業務を行っております。運用対象が拡大するに伴い、この運用業務を適切に行うとともに、ベンチャーキャピタルファンドについては、投資先企業の成長にも寄与できるよう、引き続き努力を継続してまいります。
ディーリング事業は、ここ数年にわたり、取引対象の拡大や取引インフラを整備し収益源の多様化と収益力の拡大を目指してまいりました。当事業は市場環境に左右される側面があり、現状の取引対象市場における市場規模は従来に比べ縮小してきている事実は否めない一方、取引にかかるコストは海外を中心に年々上昇していることから、引き続き管理部門の業務効率化やコストコントロールを積極的に行ってまいります。2020年度には原油と石油製品を除く商品先物が東京商品取引所から日本取引所グループ傘下の大阪取引所に移され、総合取引所が発足しましたが、期待した程の参加者の増加は未だ見受けられないものの、当社グループの得意とするリスク管理手法を用いて収益の最大化、利益率及び資本効率の向上を目指して事業展開を行ってまいります。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大は約4年の経過を経て収束しておりますが、その間、業務システム導入等によるIT化やデジタル化を進めた結果、ニューノーマルな生活や勤務体制が一般化しました。在宅勤務の利便性が確認できたとともに、リアルな時間や場所を共有できないことに伴う弊害についてもあらためて認識しつつ、アフターコロナの時代において、ハイブリッドな勤務体制を維持しつつ、当社の全てのステークホルダーにとっての最適解を導くべく、今後も様々な施策にトライしてまいります。
また、今後起こりうる別種のウイルス等による感染拡大や自然災害に対しての想定も必要になってくるものと考えております。
上場企業として、再生可能エネルギー関連事業、電力取引関連事業、小売事業、アセット・マネジメント事業を展開している当社グループは、極めて公共性の高いビジネスの担い手であると強く認識しております。よって役職員一人一人に高いモラルが求められており、当社グループの全役職員に対して社内規程で法令等の遵守を求めるとともに、誓約書を提出させております。コンプライアンスについては、研修を行う等継続的な啓蒙活動とチェックが必要であり、引き続きその徹底を図ってまいります。
当社グループでは、事業別に業務上の全てのデータにアクセス権を設定するだけでなく、情報にアクセスする場所やデバイスにおいても制限を施すことで、情報漏洩のリスクを低減させる取り組みを行っております。
その上で、役職員の高い意識が重要であるとの認識のもと、役職員全員を対象としたサイバー攻撃に関する訓練や研修を定期的に実施しております。
今後も継続して役職員の啓蒙、意識の醸成に努めてまいります。
当社グループの事業は複数で構成されているため、既存株主様や投資家からそれぞれの事業が分かり難いとのご意見をいただいております。IRについては、月次開示(当社グループが保有する発電所の売電状況)、四半期決算の補足説明資料開示、年に2回のオンライン決算説明会、年次の株主通信の充実や、各種適時開示等にて、事業全体の関連性及び状態をより分かり易く可視化に努めております。今後もIRの一層の充実に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
企業活動は「環境・社会・経済」に大きな影響を与えるため、企業活動においてその影響を考慮することは、事業の長期的な維持及び継続には欠かせないファクターであります。また、当社グループは、これら3つの要素の持続可能性に貢献することを、企業経営上の重要な課題のひとつとして認識しております。企業価値を継続的に向上させるためにも、「環境・社会・経済」それぞれの観点から、長期的に良好な企業活動を維持し続けることを「サステナビリティ経営」と捉え、この経営方針を推進する体制を構築し強化してまいりたいと考えています。
サステナビリティ委員会は、代表取締役を委員長とし、気候変動や人的資本を始めとした重要課題(マテリアリティ)や基本方針を特定・定義の上、そのリスク管理状況等について、同委員会より取締役会に報告を行う体制となっております。
当社のサステナビリティ経営推進体制は以下のとおりです。

代表取締役は気候変動及び人的資本に関する当社方針に責任を持ち、これらに関するリスクと機会の評価と管理の責任を有します。気候変動、人的資本をはじめサステナビリティに係る当社の重要課題(マテリアリティ)に関するサステナビリティ委員会の対応等の報告を受け進捗状況を管理します。また、サステナビリティ委員会にリスク管理等に関する検討を指示します。
当社の事業が継続するための課題を分析し、気候変動や人的資本を始めとしたグループ全体の重要課題(マテリアリティ)を特定し、リスク分析、必要に応じ戦略、指標及び目標に関する検討を行い、サステナビリティに関する方針を策定します。各課題について全社的な取り組みを推進し、対応策の実行については執行役員会と協議を行い各事業部門が方針に従って実行します。取り組み状況やリスク管理状況等については、同委員会より取締役会に報告を行う体制としています。
当社グループは、サステナビリティ関連リスクとして認識される重要課題について、取締役会の監督のもと、サステナビリティ委員会において対応策の策定を行い、執行役員会及び関連部署とともに対応策を実行する体制となっています。
気候変動リスクと人的資本・多様性に関するリスクは、当社にとって重要なリスクの一つであるとの認識のもと、気候変動リスクについては当社が事業を推進する上で影響があり得る可能性のある事項について、公表されている関連報告書等も参考に評価を行うこととしています。
また、人的資本・多様性については、当社は管理職や中核人財の登用に、男女差や国籍による区別は設けておらず、判断力・協調性・独創性等の人財としての総合力と様々な分野における専門性の2軸による評価を行う人事評価制度に加え、高度専門性を別途評価する職群を定めた制度を採用すること等により、多様性の確保を図っております。人的資本・多様性に関するリスク管理に関しては、当社のこれらの体制のもと、人財の確保・育成を進めるためのリスクの評価を行っております。
当社は中期ビジョンに掲げる『総合エネルギー事業会社への変革』や『GXとDXの推進』を実現するため、従業員の個々のリスキリングを目的とした人財育成への取り組み、個々の専門性を適正に評価するための人事考課制度の見直し等を含め運用を進めてまいります。
人財の多様性の確保については、これまで通り、性別・国籍・年齢等を問わず、能力・適性を判断した採用及び人事評価を行います。その結果として、当社における同一労働同一賃金を維持します。
採用はキャリア採用を中心に行い、多様な価値観を相互に尊重できる社内風土を醸成します。
・従業員のエンゲージメントを高めるための施策を検討・導入するため、従業員満足度調査を行い、人事戦略の取り組みにおける成果の数値化を行います。
・ハラスメント防止体制の確立やメンタルヘルス対策の拡充をはかり、従業員が安心して働ける環境を構築します。
・受動喫煙の防止のため、職場内の分煙だけでなく、会食の場での受動喫煙の防止も励行します。
炭素税やリサイクル規制の導入、再生可能エネルギー導入支援等、厳しい気候変動に対する対策を講ずることによって、気温上昇を2℃未満に抑えることが可能であると想定されつつ、慢性的な物理リスクとして気温上昇、急性的な物理リスクとしての気象変動の激甚化を想定しております。
リスク:
機会:
リスク:
機会:
当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
(連結ベース)
※ 当社グループにおける基幹職は、管理監督者の役割を任せることができる程度の知見を有する従業員を指します。
有価証券報告書に記載した当社グループの事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、当社グループでは、事業等のリスクを、将来の経営成績に与えうる影響の程度及び発生の蓋然性等に鑑み、「特に重要なリスク」「重要なリスク」に分類しております。当社グループは、これらの重要なリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存ですが、これらのほかにも様々なリスクが存在しており、ここに記載されたリスクが当社グループの全てのリスクを表すものではありません。当社の株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
当社グループは、総合エネルギー事業をコアとし、金融及び市場取引分野において創業以来培ってきたノウハウを活用し事業を展開しております。
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)における我が国の経済状況は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行により経済社会活動の正常化が進みました。物価の上昇幅は政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって抑えられている面もあり、個人消費も緩やかな増加をみせる等、景気回復の傾向は継続しております。一方、中東地域やウクライナ情勢の長期化、海外の経済・物価動向、日銀の金融政策等の動向、急激な為替変動などの先行きには、十分な注視が必要です。
このような中、当社グループは、2021年11月に策定した3.5ヵ年計画の「中期ビジョン2025」に基づき、前連結会計年度は、事業構造と経営資源配分の見直しに着手し、当連結会計年度においては、主に前連結会計年度から開始した特別高圧・高圧市場の需要家向けマーケティングの更なる注力と、系統用蓄電池の事業化のアレンジメント、コア事業向けの資金調達等に取り組みました。
その結果、前者については、マーケティング開始から約半年の2023年3月に400件であった特別高圧・高圧市場の顧客数(請求単位)は2023年5月に500件を達成し、2024年3月末現在550件超となっております。
後者については、当社を含む三社で匿名組合出資する合同会社DAXにおいて北海道札幌市内で系統用蓄電池事業を取り進めることとなり、本事業開発に係るアレンジメント業務等により289百万円の営業収益及び60百万円の営業外費用(持分法による投資損失)を計上いたしました。運転開始は2025年秋を予定しており、これまで培ってきた再生可能エネルギー発電所の運営、維持・管理及びリスク管理等の知見を活かし、電力需給バランスの安定化と電力供給の効率化に貢献する系統用蓄電池事業に注力してまいります。
当社グループは、引き続き「中期ビジョン2025」の目標に掲げている「総合エネルギー事業会社への変革」に向けて、グループ一丸となって取り組んでまいります。
当連結会計年度における経営成績は以下のとおりです。
前連結会計年度セグメント損失であった4事業(再生可能エネルギー関連事業、電力取引関連事業、小売事業、アセット・マネジメント事業)が当連結会計年度にセグメント利益に転じたことにより、全体として営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期間比増加いたしました。
(単位:百万円)
※1 「法人税等合計」には、「法人税、住民税及び事業税」と「法人税等調整額」を含みます。
※2 当連結会計年度の営業収益における電力取引関連事業に係るヘッジ目的で行う電力先物取引による影響の内容については、「セグメント毎の経営成績及び取り組み状況<2 電力取引関連事業>」をご参照ください。
※3 当連結会計年度の営業収益におけるディーリング事業に係る影響の内容については、「セグメント毎の経営成績及び取り組み状況<5 ディーリング事業>」をご参照ください。
セグメント毎の経営成績及び取り組み状況は次のとおりです。
セグメント利益:再生可能エネルギー関連事業、電力取引関連事業、小売事業、アセット・マネジメント事業
セグメント損失:ディーリング事業
(セグメント別営業収益・セグメント損益) (単位:百万円)
※1 当連結会計年度の営業収益における電力取引関連事業に係るヘッジ目的で行う電力先物取引による影響の内容については、「セグメント毎の経営成績及び取り組み状況<2 電力取引関連事業>」をご参照ください。
※2 当連結会計年度の営業収益におけるディーリング事業に係る影響の内容については、「セグメント毎の経営成績及び取り組み状況<5 ディーリング事業>」をご参照ください。
※3「その他」は、地方創生事業等、事業セグメント化されていなかった事業を示しています。
※4 セグメント損益は、当連結会計年度の経常損益と調整を行っており、セグメント間の内部取引消去等の調整額が含まれております。各事業に帰属する特別利益及び特別損失は含んでおりません。
当事業は当社及びアストマックスえびの地熱株式会社が推進しており、当事業を通じて、更なる再生可能エネルギーの導入及び拡大に寄与する方針の下、2030年までに最大年間66,000トン(太陽光発電100MW相当)のCO2削減を目指しております。本事業を通じて、再生可能エネルギーの導入加速と電力系統の安定化に貢献するとともに、カーボンニュートラルの実現、GXの推進に取り組んでまいります。
当事業が従事した完工済みの案件は合計31.4MWであり、2024年3月末日現在着工中の案件は以下の①のとおり、1か所、2.1MWになります。
当事業では、長年に亘り培ってきた再生可能エネルギーに係るノウハウとネットワークに加え、小売事業部門と連携を取りながら潜在顧客の発掘とアプローチを行い、固定価格買取制度に頼らない、非FIT太陽光発電設備を用いたPPAの展開を中心にマーケティングを行っております。FITモデルから非FIT又はFIPモデルへの転換により、事業採算性の向上に取り組んでおります。
① 栃木県大田原市 出力規模:約2.1MW 2024年4月完工
稼働後は当社が維持・運営管理(O&M事業)を行います。
当連結会計年度に運転開始した案件はありません。
新たな案件についても精査を行っております。
当連結会計年度に入替を実施した案件はありません。
当社が開発に携わった案件等19サイト、合計29.5MWの太陽光発電所の維持・運営管理(O&M事業)を行っております。
なお、当社グループが所有及び管理している栃木県の発電所(あくとソーラーパーク)において、2024年2月に電気ケーブルの一部が切断される被害が発生いたしました。このため、被害発生時から本書の日付現在において、当該発電所の発電能力は半分程度に低下しております。当該発電所では、2023年3月に発生した電気ケーブル盗難被害の再発防止策として警備会社との契約や警察の巡回強化等を行っておりました。今回の被害については、盗難こそ未遂に終わったものの、電気ケーブルの一部が切断されており、改めて今回の被害を重く受け止め、地元警察、警備会社や現地管理会社と連携し、更なる対策を検討しております。
本発電所には損害保険を付保しており、発電停止期間の休業補償については保険金の請求を行う予定ですが、復旧工事完了後に補償金を受領するため、翌連結会計年度(2025年3月期)に計上される見込みです。一方、復旧工事に要する費用については、当該発電所での被害が2回目であるため、当社が全額負担することとなり、13百万円を当連結会計年度に特別損失として計上いたしました。
当社は北海道山越郡長万部町と包括連携協定を締結し、「持続可能な街づくりと脱炭素化・再生可能エネルギー推進を同時実現することを目的とした事業」を協同で推進しており、本案件は運転開始済です。このほか、民間企業との案件が順次運転開始する予定となっております。
当社は大和エナジー・インフラ株式会社、芙蓉総合リース株式会社と共同で匿名組合出資する合同会社DAXより、北海道札幌市内で、系統用蓄電池(定格出力5.0万kW、定格容量10.0万kWh)事業のオペレーターとして、運転開始前は本事業の工程管理及び運用準備業務を、運転開始後は蓄電所の運営、維持・管理、AIを活用した需給調整や市場予測等の機能を活用した電力取引の業務を請け負います。当該系統用蓄電所は2023年度に着工し、スケジュールどおり工程が進んでおり、2025年秋の運転開始を予定しております。
また、当該エリアに加え他のエリアでの展開も検討しており、幾つかの案件について具体的な事業化に向けて取り組みを進めております。
なお、本事業のうち、事業の運転開始前の工程管理に係る損益は本セグメントに計上いたします。
当事業では、ベースロード電源である地熱を利用した発電事業の取り組みも進めております。
宮崎県えびの市尾八重野地域では、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構による「地熱資源開発調査事業費助成金交付事業」(以下、「助成事業」という。)の採択を受け、2MW規模の地熱発電の事業化を目指して、2016年度~2018年度に3本の調査井を掘削、その後計画規模を4~5MWに拡大し、2019年度助成事業として4本目の調査井を掘削いたしました。これら4坑井(生産井2本・還元井1本・貯留層のモニタリング用井戸1本)から、発電事業に必要な能力を有するとした調査結果を得ており、事業化に向けて取り組んでおります。
その中で、当初より計画していた2MW分の連系については、九州電力送配電株式会社との契約により2026年度工事完了予定となっております。一方、計画規模拡大に伴う追加の連系容量については、現在も系統確保に向けて関連手続きを進めておりますが、連系時期の不確実性や物価上昇等による建設コストの増加に伴い、並行して送電容量の拡大等を含む計画の見直しの検討も行っております。
冒頭に記載したとおり、系統用蓄電池事業の取り進め開始に伴い、合同会社DAXとの業務委託契約及びアレンジメント契約を締結したことにより、営業収益及び営業外費用(持分法による投資損失)を当連結会計年度に計上いたしました。一方、太陽光発電事業では、経済的出力制御(オンライン代理制御)が2022年12月から運用開始されており、当連結会計年度に精算した電力販売のマイナス調整負担が九州地方で大きく発生しております。また、営業費用の側面では、O&M事業にかかる資材高、工賃の上昇、昨今の自然災害やケーブル盗難の増加に伴う保険料の上昇のほか、系統用蓄電池にかかる事業のコスト負担増等により営業費用も前年同期間比増加いたしました。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は883百万円(前年同期間比212百万円(31.7%)の増加)、126百万円のセグメント利益(前年同期間は12百万円のセグメント損失)となりました。
当事業は、当社が推進し、①小売電気事業者向け電力取引及び電力小売顧客向け固定価格取引等の提供、②需給管理業務を中心とした業務代行サービスの提供を行っております。
①については、顧客毎の電力調達及びリスクヘッジニーズに対応し、電力現物先渡取引、デリバティブ取引である電力スワップ取引、電力先物取引に取り組んでおります。②については、既存顧客へ安定したサービスの提供をしながら、引き続き新規取引先を増やすべく、電力取引のリスク管理コンサルティング等の新メニューを加え、顧客ニーズにあったきめ細かいサービスの提案を行っております。電力取引の増加及び多様化に伴うリスク管理の重要性の高まりを受け、当社グループでは、リスク管理体制の強化も推進し、変動率が高い相場展開の中、リスクを適切に抑制しながら取引を実行しております。
当連結会計年度においては、電力卸売価格が前連結会計年度比低位で推移し、取引量当たりの平均単価が下落したことが大きく影響し、営業収益、営業費用は共に前年比減少したものの、ヘッジニーズの高まり等を受け、取引量が前年比増加したこと等によりセグメント利益は増加いたしました。
なお、当連結会計年度のヘッジ目的で行う電力先物取引による営業収益への影響は以下のとおりです。当連結会計年度末を越えて受渡しが行われる電力現物先渡取引は時価評価の対象ではありませんが、当該取引をヘッジする目的で行う電力先物取引はデリバティブ取引として時価評価の対象となります。電力先物取引のうち、一部取引所では取引所の規定によって3か月以上の期間のポジションは期末が近付いた段階で決済され、より短い期間の新たなポジションに分割されます。これに伴う決済損失10百万円(純額①-1)と、当連結会計年度末を越えて限月を迎える電力先物取引の時価評価損24百万円(純額①-2)は、当連結会計年度末を越えて受渡しが行われる電力現物先渡取引と同一の会計期間に認識されないため、当連結会計年度の営業収益を押し下げ、電力取引関連事業のセグメント利益を減少させる要因となっております。
一方、同様の理由で、当連結会計年度に受渡しが行われる電力現物先渡取引をヘッジする目的で行われた電力先物取引に係る前連結会計年度に認識された決済損失75百万円(純額②-1)及び時価評価損158百万円(純額②-2)は当連結会計年度の営業収益を押し上げ、電力取引関連事業のセグメント利益を増加させる要因となっております。
①と②を総合すると、結果として当連結会計年度の営業収益とセグメント利益はそれぞれ合計198百万円(198=-10-24+75+158)押し上げられております。
以上の結果、電力取引関連事業の当連結会計年度の営業収益は8,155百万円(前年同期間比1,668百万円(17.0%)の減少)となり、セグメント利益は382百万円(前年同期間は537百万円のセグメント損失)となりました。
当事業は、当社及びアストマックス・エネルギー株式会社(以下「AEKK社」)が推進して、当社は特別高圧・高圧市場の顧客へ電力販売を行い、AEKK社では個人を中心とする低圧市場の顧客へ電力とガスの販売を行っております。
特別高圧・高圧の電力市場では電力価格の高騰により、2022年度にはみなし小売事業者を含む多くの小売事業者が顧客への供給契約の停止や撤退を進めた結果、電力供給を絶たれた多くの顧客は送配電事業者による最終保障契約に移行いたしました。その結果、送配電事業者は2022年9月より最終保障契約の値上げを発表し、実質的な市場連動型料金に変更しております。こうした動きもあり、特別高圧・高圧電力市場では市場連動型料金体系が従来に比べ一般的になり、当社は2022年夏より特別高圧・高圧向け「フリープラン」の営業に注力してまいりました。その結果、同プランの優位性が認知され、撤退する事業者の顧客引受や媒介店からの流入を中心とした新規顧客が大幅に増加し、2023年5月には特別高圧・高圧の顧客数(請求単位)が500件を超える水準となりました。2023年度は、2022年度のような最終保障契約からの流入は一巡し、新規顧客の増加率は鈍化傾向となり、2024年3月末現在の特別高圧・高圧の顧客数(請求単位)は550件超となっております。なお、当社は、2024年1月の特別高圧・高圧のみを対象とした電力販売量ランキングで第44位(資源エネルギー庁電力調査統計より集計、みなし小売電気事業者を除く)となっております。
既存顧客向けに、第3回目となるWebセミナーを2023年12月から2024年1月にかけて開催し、2024年4月から始まる容量拠出金制度や、固定価格と市場価格を組み合わせたハイブリッド・フリープラン、キャップ付きフリープランなど新商品の概要の説明を行い、理解を深めていただく機会を設けました。今後も様々な取り組みを通じて、サービスへの理解促進と拡充に努めてまいります。
一方、低圧市場の事業環境は、2022年11月以降、みなし小売電気事業者から新電力への切替数が伸び悩む傾向にありますが、当事業においては、2023年9月より低圧市場向け電力プランを「フリープラン」に一本化することを発表し、9月より他プランの既存顧客についてはフリープランへの移行を実施いたしました。これにより一部既存顧客の離脱も見られましたが、電力市場価格の低位状況が続いていることから、低圧法人顧客の流入の動きも徐々に出てきております。
AEKK社では株式会社グローバルエンジニアリングのガス小売取次店として電気とガスのセット販売を継続しております。
以上の結果、年間を通じて顧客への電力供給が安定的に行われたことから、小売事業の当連結会計年度の営業収益は5,588百万円(前年同期間比4,465百万円(397.8%)の増加)となり、124百万円のセグメント利益(前年同期間は196百万円のセグメント損失)となりました。当事業は立ち上げから4年目で初めて年間を通じてセグメント利益を達成いたしました。
当事業は、当社とアストマックス・ファンド・マネジメント株式会社(以下、「AFM社」という。)が推進し、学校法人東京理科大学が主に出資する大学発ベンチャーキャピタルファンドの営業者としてファンド運営業務等を担うほか、2020年3月に運用開始した基金の安定運用のファンド、2022年10月に運用開始した学校法人東京理科大学が支援する再生可能エネルギーファンドの運用業務を行っております。再生可能エネルギーファンドにおいては、当社グループの「中期ビジョン2025」でも優先課題となっている「地域の地産地消のための再エネ導入」を、産官学連携の力も活用して行うことを目指しております。
AFM社が営業者として運用しているファンドは順調に運用資産を増加させており、当セグメントの営業収益に計上する運用報酬額は前連結会計年度比増加しております。2024年1月以降、単月で安定した利益を確保できる体制となっており、当連結会計年度としても僅かながら黒字となりました。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は186百万円(前年同期間比16百万円(9.5%)の増加)となり、3百万円のセグメント利益(前年同期間は45百万円のセグメント損失)となりました。
当事業は、当社が推進し、OSE、TOCOM、TFX、CME、ICE、INE等、国内外の主要取引所において商品先物を中心に、株価指数等の金融先物を取引対象とした自己勘定取引を行っております。また、AIを活用した分析やトレーディングシステムを開発し、為替やプラチナ等の取引において実稼働しております。
原油市場は、第3四半期連結会計期間は米欧や中国の景気減速見込みを受け下落、第4四半期連結会計期間は明確な材料を欠く中横ばいで推移し、3月中旬には需給見通しを背景に上昇いたしました。金市場の価格は、欧米の利下げ見込みを背景に、引き続き、高い水準で推移いたしました。
裁定取引については、プラチナを中心に国内外取引所の値差が大きく動きプラスに貢献したものの、通期では裁定取引の機会は限定的で収益は伸び悩みました。
なお、当連結会計年度末においては、日本市場は2024年3月29日まで取引が行われていましたが、海外市場はイースター休暇により29日が休場となっていたため、それぞれの市場の評価日付が異なることにより、12百万円の一時的な評価損が発生しております。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は337百万円(前年同期間比120百万円(26.3%)の減少)、セグメント損失は14百万円(前年同期間は33百万円のセグメント利益)となりました。
当事業では、今後も引き続き経費節減に努めると同時に、ディーリング資金の効率的な運用を行い引き続き収益力の強化を目指してまいります。
当部は、当社が推進する総合エネルギー事業の様々な領域において、当部が中心となり各事業部門との連携を図り、DXの推進や新しいビジネスモデルを組み立てていくことを業務目的としております。
AI活用による需給管理や、発電/供給サイドの事業と、販売/需要サイドの事業のアグリゲート(集約化)及び、双方のマッチングによる新たなサービスを展開する等、独自性の高いビジネスフィールドを念頭に置いており、既に、AI等を活用した電力の需要予測や太陽光発電出力予測等の需給管理、リスク管理の高度化に取り組み、 電力取引関連事業にて提供している業務代行サービスにて実稼働しております。
また、系統用蓄電池事業で利用するAIアルゴリズムの開発等にも取り組んでおります。これは、系統用蓄電所の運転開始後に、電力需給バランスの安定化と電力供給の効率化を図るために必要なもので、需給調整や電力関連市場予測及び入札価格や入札量の最適化等の機能にAIを活用します。系統用蓄電池事業は当社グループの中期ビジョンにおいても優先課題の一つとなっており、再生可能エネルギー関連事業部と連携しながら本事業に取り組んでおります。
なお、蓄電池事業の進展に伴い、2024年1月1日付けで組織改編を行い、新機能開発部を発展的に解消し、新機能開発部が担っていた業務は新設した蓄電池ビジネス企画推進委員会が基本的に推進し、蓄電所の開発に関連する業務の受託は再生可能エネルギー関連事業にて、また系統用蓄電池事業で使用するAIアルゴリズムの開発等は電力取引関連事業にて取り進めることといたしました。
上記、セグメント利益又は損失は当連結会計年度の経常利益と調整を行っており、セグメント間の内部取引消去等の調整額が含まれております。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、3,667百万円(前年同期間比25.0%増)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主として税金等調整前当期純利益(499百万円)、減価償却費(276百万円)等により、610百万円(前年同期は239百万円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として有形固定資産の取得による支出(△283百万円)、投資有価証券の取得による支出(△301百万円)等により、△515百万円(前年同期は259百万円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として短期借入れによる収入(短期借入金の返済による支出との純額は979百万円)等により、638百万円(前年同期は△211百万円)となりました。
当連結会計年度における営業収益実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当社グループのアセット・マネジメント事業、ディーリング事業は生産・受注といった区分が困難であるため、「生産・受注及び販売の状況」に代わり「営業収益の状況」を記載しております。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(注) 割合が10%未満の場合は、「金額」と「割合」それぞれに「-」を表示しております。
以下の表は、当社グループが保有する太陽光発電所の発電実績を示したものです。
(注) 1 環境省の制定する「CO2削減効果算定マニュアル」に基づき算出し、端数は四捨五入しています。
CO2排出係数(代替値):0.55kg-CO2/kWh
(注) 2.オンライン代理制御とは、オンライン制御事業者がオフライン制御事業者の代わりに出力制御を行い、オフライン制御事業者がオンライン事業者に対価を支払う経済的出力制御のこと。オンライン代理制御による調整電力量はおよそ3か月後に判明します。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、連結営業収益14,855百万円(前期比3,081百万円の増加)、営業費用14,175百万円(前期比1,650百万円の増加)、営業利益679百万円(前期は750百万円の営業損失)、経常利益512百万円(前期は857百万円の経常損失)となりました。
営業収益の増加は、小売電気事業の特別高圧・高圧向けの顧客増加に伴い、売電収入が増加したことが主な要因です。また、営業費用の増加は、小売電気事業の顧客増加に伴う電力仕入と支払い手数料が増加したことが主な要因となっています。
税金等調整前当期純利益は499百万円(前期は369百万円の税金等調整前当期純損失)、法人税等合計は61百万円(前期比83百万円の増加)、非支配株主に帰属する当期純損失は7百万円(前期比17百万円の減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は445百万円(前期は357百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
自己資本は2023年3月期末の5,201百万円から5,426百万円と225百万円増加し、純資産は5,968百万円となりました。
再生可能エネルギー関連事業では、保有する太陽光発電所の売電収入が、経済的出力抑制の制度開始直後の2023年2月~3月の期間におけるマイナス調整額の計上が当連結会計年度となったことに加えて、九州の発電所においては契約上の上限近くまで抑制が実施されたこと等から、前年同期間比減少しました。しかしながら、当連結会計年度においては系統用蓄電池の事業化のアレンジメントによる報酬が大きく、当事業の営業収益は前年比31.7%増加となりました。営業費用については、従来より、地熱開発を含む発電所の開発に係るコストを負担しておりますが、当連結会計年度においては、O&M事業にかかる資材高、工賃の上昇、昨今の自然災害やケーブル盗難の増加に伴う保険料の上昇のほか、系統用蓄電池にかかる事業のコスト負担増等により営業費用も増加いたしました。これらの結果として、126百万円のセグメント利益を計上いたしました。
2014年度から着手している宮崎県えびの市における地熱発電事業は、匿名組合契約を締結いたしましたパートナー企業である大和エナジー・インフラ株式会社様とJFEエンジニアリング株式会社様と共に、引き続き協働しております。当初より計画していた2MW分の連系については、九州電力送配電株式会社との契約により2026年度工事完了予定となっております。一方、噴気試験等の結果を受け、発電規模を2MWから4.8MWに拡大した分の連系につきましては、接続検討の方法が何度か変更になりましたが、現在は一括検討プロセスにて、引き続き系統連系確保に向けて、取り組んでおります。一方、計画規模拡大分の連系時期の不確実性や物価上昇等による建設コストの増加に伴い、並行して送電容量の拡大等を含む計画の見直しも検討中です。
電力取引関連事業では、電力卸売価格が前連結会計年度比低位で推移し、取引量当たりの平均単価が下落したことの影響が大きかったこともあり、営業収益、営業費用は共に前年比減少しましたが、ヘッジニーズの高まり等を受け、取引量が前年比増加したこと等により、382百万円のセグメント利益となりました。なお、当事業の当連結会計年度の営業収益における電力取引関連事業に係るヘッジ目的で行う電力先物取引による影響の内容については、「セグメント毎の経営成績及び取り組み状況<2 電力取引関連事業>」をご参照ください。
小売事業では、特高・高圧需要家様の顧客数(請求単位)が前期末の400件から当連結会計年度末550件超と増加いたしました。その結果、営業収益は前年比397.8%増加し、当連結会計年度は124百万円のセグメント利益となりました。更なる顧客獲得を目指し、引き続き積極的な事業展開を進めてまいりたいと考えております。
アセット・マネジメント事業では、運用しているファンドの運用資産は増加しており、当セグメントの営業収益は前連結会計年度比9.5%増加しました。前連結会計年度までは持分法適用関連会社による損失を計上していましたが、当連結会計年度の計上はなく、また、運用資産の増加により、2024年1月以降は、単月で黒字化できる体制となっており、当連結会計年度は3百万円のセグメント利益となりました。
ディーリング事業では、裁定取引の機会は、プラチナを中心に国内外取引所の値差が動きプラスに貢献したものの、通期では裁定取引の機会は限定的で、営業収益は前連結会計年度比26.3%減少しました。また、当連結会計年度末は、日本市場は2024年3月29日まで取引が行われていましたが、海外市場はイースター休暇により29日が休場となっていたため、それぞれの市場の評価日付が異なることにより、12百万円の一時的な評価損が発生した影響もあり、14百万円のセグメント損失となりました。
なお、当連結会計年度の経営成績と事業の種類別セグメント情報の詳細やその背景となる当社を取り巻く環境等につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
引き続き積極的に経営資源を投入し、太陽光発電事業の更なる拡大と地熱発電事業等への取り組みを継続するとともに、系統用蓄電池事業の取り組みに注力してまいります。並行して、電力の自家消費モデルを企業や、自治体へ展開していくことに取り組んでおります。
なお、同事業は、市場の変動の影響を受けにくい安定収益源として営業収益への貢献が期待できる一方で、「事業等のリスク」に記載のとおり、過度な出力抑制や不測の事態が生じた場合は、同事業の業績にマイナスの影響を与える可能性があります。
(電力取引関連事業)
当事業においては、国内における電力契約の切替ニーズの変化や小売電気事業者数の増減等が同事業の経営成績に影響を与える可能性があります。また、業務代行サービスを利用する顧客数及び顧客の取り扱う電力量や需給逼迫等による電力価格の高騰が経営成績に影響を与えることとなります。
(小売事業)
当事業も、国内における電力契約の切替ニーズの変化や小売電気事業者数の増減等が同事業の経営成績に影響を与える可能性があります。また、当事業では2022年秋以降、特高・高圧需要家様向けの販売が順調に伸び、顧客数(請求単位)は当連結会計年度末時点で550件超となっておりますが、2025年3月期も、当社サービスの認知により更なる特高・高圧の顧客獲得に努めてまいりたいと考えております。しかしながら想定以上に顧客の解約が発生する場合は経営成績に影響を与えることとなります。
(ディーリング事業)
当事業にとって、取引対象銘柄の出来高の大幅な減少や市場変動率の著しい低下(または、その反対に著しく急激な上昇)などの市場環境によって取引機会が減少する場合、同事業の業績は大きな影響を受ける可能性があります。2020年度に貴金属を中心とする銘柄は日本取引所へ移管が完了しましたが、東京商品取引所と大阪取引所の旧東京商品取引所銘柄を合算した日次出来高は前連結会計年度末の数字をやや上回る状況となっております。市場参加者の増加と市場流動性の向上を今後も期待するものの、市場参加者や市場の流動性が減少する場合は同事業の業績に影響を与える可能性があります。
当社の経営者は、現状の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めております。
2024年3月期は前期の流れをさらに拡大できるよう、セグメント間の連携を一層強化し、更なる特高・高圧顧客の獲得により、電力小売事業の規模の拡大、PPA事業の拡大、電力取引の拡大へと繋げていくこと、を掲げており、5事業中4事業の黒字化を達成することができました。2025年3月期は、本中期ビジョンの最終年度となり、各セグメントの収益を更に伸ばし、定量的目標達成に向けて全社一丸となって取り組んでまいります。
一方、当社の各事業に関連する事業の成果は、内外の金融商品市場、電力関連市場及び商品先物市場等の動向の影響のほか、電力システムを取り巻く環境は、新たな市場や新制度の導入が諸々予定されており、注視が必要です。想定と異なる動きやそもそもの動きが想定できない可能性もあり、それらの影響を大きく受ける可能性があります。このため、これらの市場等に関する情報を幅広く入手し、市場動向に迅速に対応すべく努力することは以前にも増して重要となっております。
業績と事業計画に大きな乖離が生じる可能性がある場合には、事業計画を抜本的に見直すことも含めて、環境変化への対応を適切に行ってまいります。
当連結会計年度における総資産は、主に現金及び預金の増加(732百万円)、営業未収入金の増加(355百万円)等により、14,293百万円(前年同期比10.4%増)となりました。
負債は、主に小売事業に係る短期借入金の増加(979百万円)等により、8,325百万円(前年同期比16.0%増)となりました。
純資産は、主に利益剰余金の増加(354百万円)等により、5,968百万円(前年同期比3.6%増)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、3,667百万円(前年同期間比25.0%増)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主として税金等調整前当期純利益(499百万円)、減価償却費(276百万円)等により、610百万円(前年同期は239百万円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として有形固定資産の取得による支出(△283百万円)、投資有価証券の取得による支出(△301百万円)等により、△515百万円(前年同期は259百万円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として短期借入れによる収入(短期借入金の返済による支出との純額は979百万円)等により、638百万円(前年同期は△211百万円)となりました。
再生可能エネルギー関連事業における資金需要については、主としてプロジェクトファイナンスによって投資資金を確保することを想定しております。なお、手元流動性を超える資金需要の増加が見込まれる場合におきましては、銀行借入れ等による財務活動を通じた資金調達も視野に入れております。
電力小売事業における資金需要については、手元流動性に加え、銀行借入れにより確保しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
当社グループでは、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」に基づき、収益性が著しく低下した資産又は資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
また、地熱発電開発事業に係る固定資産の評価に関する会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。