第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社の社名「アーレスティ」は、R・S・T<Research><Service><Technology>の三つの言葉の統合です。この社名には、より品質の高いResearch、Service、Technologyを追求し、さまざまな製品を通して、広く社会のお役にたちたいという想いが込められています。こうした当社の想いを実現するため、当社は経営基本方針を定め、グループ全体に考え方が浸透し行動に結びつくよう活動を行っています。

 

(経営基本方針)

常に生きいきと活動し

理論と実験と

創意と工夫を尊重して

品質のすぐれた製品と

行き届いたサービスを提供しよう

 

(2)目標とする経営指標

当社は、2040年に向けて進むべき方向として「2040年ビジョン」を定め、これに基づく長期経営計画である「10年ビジネスプラン」、及び3カ年中期経営計画の中で具体的な経営指標の目標値を設定しております。投資価値のある企業を目指して、売上高、売上高営業利益率、電動車搭載部品売上比率等を指標としております。

 

(3)中長期的経営戦略、経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの主力事業であるダイカスト事業は、営業収入の9割以上を自動車関連が占めていることから、業績は国内外における自動車生産台数により大きく影響される状況にあります。また、自動車産業は、100年に一度の大変革期とも言われており、各国の産業政策や燃費規制、モビリティとしての自動車の役割の変化等により今後CASE(Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化))などが進み、当社が現在主力としている製品群が将来的には変化していくことが予想されております。

このような経営環境の変化に対処すべく、短期的には自動車メーカーの内製部品のアウトソーシングが進むことを想定し、その受注増加の機会をしっかり捕捉していきます。中長期的には電動化に伴う車体軽量化ニーズへの対応の中で、電動車搭載部品の更なる受注拡大、足回り部品やボディ・シャーシ等の車体系部品分野への進出を強化する所存です。

当連結会計年度においては、自動車生産における半導体不足の緩和が世界的に進み、受注量が回復したことで、当社グループの業績も回復基調が続きました。また受注量が回復する中においても省人化投資の推進、遊休設備活用による設備投資抑制等の生産体制効率化、エネルギー価格や労務費等の高騰影響の価格是正、電動車部品に強い顧客との新規取引や取引拡大等を進めてきました結果、営業損益、経常損益とも前年度比増益となりました。一方で当期損益については、日系自動車メーカーの販売不振による減産影響を受けた中国拠点を中心に保有する事業用資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額したことによる減損損失の計上が主因で純損失計上を余儀なくされました。基礎的収益力の回復基調は続いており、来年度の全利益段階での黒字化達成に向けては従前からの生産性向上と原価低減の取り組みに加え、グローバル拠点間の生産補完開始によるグローバルベースでの生産設備の最適な有効活用、適正価格による受注活動の徹底、地域毎の受注環境に応じた生産設備や人員体制の最適化、地域毎の成長性等に応じた設備投資アロケーションの最適化に取り組み、事業構造の改革を深掘して参ります。

当社グループを取り巻く経営環境は、自動車の電動化スピードで大きく影響を受ける状況にあり、今後の動向を引き続き注視していく必要があります。しかし、こうした変化の激しい経営環境であればこそ変革のチャンスと捉え、ものづくりの基本を究めると同時に体質の強化に努めることにより、今後も前進してまいります。

 

(10年ビジネスプラン)

当社は2038年に創業100周年を迎えます。100年を超え、更なる発展・成長する企業となるために、2040年に向けた当社グループの進むべき方向として「2040年ビジョン」を定め、これに基づく長期経営計画として「10年ビジネスプラン」を策定しました。

 

1.電動車向け部品・車体系部品群中心へ事業ポートフォリオをシフト

リサイクル性・省エネルギーに優れたアルミニウム二次合金を主原料とするアルミニウムダイカストは、従来のパワートレイン系部品だけでなく、電動系部品、車体系部品群への採用拡大により、燃費・電費向上を目的とした車体軽量化ニーズ、CO2排出量削減、環境保全や循環型社会の形成など地球環境の未来に貢献できます。将来にわたり自動車メーカー各社のモビリティ事業に貢献していくために、急速に進む電動化を捉え、製品ポートフォリオを電動車向け部品・車体系部品群中心にシフトしてまいります。

 

2.技術探求を続け、唯一を生み出す

製品ポートフォリオシフトを実現するために、製品開発のデジタルトランスフォーメーションによって開発リードタイムを短縮するなど技術開発力を強化し、市場の変化やお客様のニーズにいち早く応えていきます。工法・技術・素材の各分野で将来の事業に貢献する先駆的な技術探求を続け、新規需要の創出を図ります。また、製品製造の際のCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルダイカストの開発に挑戦していくことで地球環境に貢献するとともに、当社の競争力向上を目指します。

 

3.Ahrestyで良かった!の実現

お客様からの最上位評価獲得、従業員エンゲージメントの向上、ダイバーシティの実現を目指します。経営幹部の多様化、従業員及び管理職の女性比率向上においては、ダイバーシティ&インクルージョンに対する理解を深める意識改革、多様な人材が活躍できる職場の拡大、人事戦略・運営とキャリア支援を実施します。

 

4.信頼の獲得と事業を通じた社会課題の解決による持続的成長

ステークホルダーの皆様からの更なる信頼の獲得と事業を通じた社会課題の解決による持続的成長実現のために、「アルミダイカスト製品供給によるクルマのエネルギー消費効率向上」と「エネルギー効率の改善等による使用化石燃料資源の低減」を重要課題として取り組みます。カーボンニュートラル項目において2030年度CO2排出量原単位50%削減(2013年度比)を目指し、CO2排出量削減活動に取り組みます。

 

5.財務体質と経営基盤の強化

当社は取締役会での議論を経て、10年ビジネスプランにおける財務戦略を策定しました。当社グループの置かれた事業環境や当社グループ事業の特性を踏まえ、株価純資産倍率1倍の達成を目指して、①資本コストを上回る自己資本利益率(以下「ROE」)の達成による中長期的資本効率の向上、②機動的な受注と成長投資を継続するための健全な財務体質の堅持、③軽量化・電動化需要の捕捉、電動化部品の新規顧客開拓、省人化・省力化を推進するための成長投資の継続、④連結業績に基づいた継続的株主還元の実施、を財務戦略の4本柱に据えました。具体的には自己資本利益率9%の達成、健全性の目安として自己資本比率40%以上の堅持、2030年までの成長投資1,400億円実施を可能にする営業キャッシュ・フローの創出、株主還元目標として利益回復による配当性向35%以上の実施を目指してまいります。そしてこの財務戦略を実現していくためには、電動化シフトする市場でのプレゼンスを確保するための攻めの受注戦略と設備投資効率の最大化を両立していく必要性があり、設備投資規律を強化しつつ、地域戦略や電動化の進捗状況、新規受注見込みを総合的に分析しながら創出したキャッシュの最適なアロケーションを目指していく所存です。当社としましては、10年ビジネスプラン、22-24中期経営計画及び今回策定した財務戦略を推進していくことで、売上高と収益力を一層高めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループが企業として社会的責任を果たし、持続的に成長していくためには、強みを活かし事業活動を通じて社会課題に対応していくことが重要であると考えています。創業100周年に向けて「期待を超える」更なる持続的な成長を目指す企業となるため「2040年ビジョン」を策定し、その実現に向けて、取り組むべき社会課題(SDGs)の視点も加味した長期経営計画「10年ビジネスプラン」を策定しています。

ステークホルダーに与える影響度と当社グループに与える影響度の2軸で、取り組むべき社会課題を整理し、社会課題解決に対して貢献度が高く、かつ当社グループの事業であるアルミニウムダイカスト製品製造との関連性が大きいSDGsの目標7と目標13を重要取り組み課題に定めています。

目標13においては「アルミダイカスト製品供給によるクルマのエネルギー消費効率向上」に取り組み、2030年度目標値として電動車向け売上比率55%、車体系部品群売上高40億円を掲げ、電動化・軽量化への貢献を目指します。目標7においてはカーボンニュートラルに向け「エネルギー効率の改善等による使用化石燃料資源の低減」に取り組み、Scope1,2におけるCO2排出量50%削減(2013年度比)を目指します。また、ダイバーシティの推進やワークライフバランスの実現、従業員満足度の向上等その他のモニタリング課題においても要対応課題として取り組み、目標達成に向けた活動の推進は10年ビジネスプラン、中期経営計画の枠組みの中で実施しております。

当社グループではサステナビリティに関する情報収集、リスクや機会の把握、影響分析及び対応策の取りまとめは、管理本部管掌取締役を議長とし、サステナビリティ課題を所管する部門長で構成されるサステナビリティ会議で行っています。その中の業務執行上の重要事項については経営会議で審議・報告されると共に、取締役会長を議長とする取締役会も定期的に経営会議から報告を受け、サステナビリティへの取り組みの監督を行っています。また、経営企画部に設置されたリスクマネジメント事務局がサステナビリティ会議と連携し、分析・特定されたサステナビリティに関するリスクをもとにリスクマネジメント計画を策定、その実施状況を管理し、経営会議、取締役会へ報告する体制としています。

事業を通じた社会課題の解決に貢献し、ステークホルダーの皆様からの更なる信頼の獲得と当社グループの持続的成長を目指していきます。

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(2)気候変動への対応

当社グループでは、気候変動を重要な経営課題の1つと捉え、想定されるリスクと機会を分析し、10年ビジネスプラン、中期経営計画の枠組みの中でCO2排出量削減活動を推進しています。鉄に比べて軽量であるアルミダイカスト製品の供給拡大により、クルマのエネルギー消費効率をアップし、CO2排出量低減に貢献するとともに、製品製造時等におけるCO2排出量に対し削減目標を定めています。

2023年3月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、TCFD提言のフレームワークに基づく情報開示を行いました。

TCFD提言に沿った情報開示に継続的に取り組み、企業価値の向上とともに、脱炭素社会の実現に貢献し持続可能な社会の実現を目指しています。

 

① ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティ会議にて気候関連リスクや機会の把握、影響分析、対応策の取りまとめを行っています。サステナビリティ会議で議論された重要事項については、経営会議で提案・報告を行います。取締役会長を議長とする取締役会では、定期的に経営会議内容の報告を受け、TCFD提言への対応状況を含むサステナビリティへの取り組みの監督を行っています。

 

(サステナビリティ推進体制)

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※所管部署:所管する業務(機能)につきグループ全体を統括する㈱アーレスティの部・室

 

(サステナビリティ推進体制における会議体と役割)

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② 戦略

当社グループでは、環境課題に係るリスクは長期間にわたり、自社の事業活動に影響を与える可能性があるため、環境ロードマップ、サステナビリティロードマップを作成し、改善に取り組んでいます。中期経営計画の実行フェーズである2022~2024年度、10年ビジネスプランのターゲット年度である2030年度を見据え、気候変動がもたらす異常気象などの物理的リスク、政府による政策規制の導入、及び市場ニーズの変化などの移行リスクの検討を行い、特定したリスク・機会はグループの戦略に反映して対応しています。

気候変動によるリスクと機会の特定及び、財務計画への影響度と対応策に関する開示を行うにあたり、IEAやIPCCが公表する1.5~2℃シナリオと4℃シナリオを用いて、2030年度断面でのリスクと機会の抽出を行っています。

IEA…Net Zero Emissions by 2050 Scenario、Sustainable Development Scenarioなど

IPCC…RCP2.6、RCP8.5

 

(戦略のレンジ)

業績水準に照らし2023年度に影響度評価の基準を見直しました。

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※CNDC=カーボンニュートラルダイカスト

③ リスク管理

当社グループでは、サステナビリティ会議で気候関連リスクの抽出・影響度の分析を行っています。

影響度が大きいと分析されたリスクは、リスクマネジメント事務局で全社リスクと統合し評価・管理を行っています。

 

(リスク管理プロセス)

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④ 指標及び目標

当社グループでは、温室効果ガス総排出量の約9割を占めるCO2に対し削減目標を定めています。Scope1,2のCO2排出量を指標とし、CO2排出量削減に取り組んでいます。Scope3のCO2排出量算出については22年度分の算出を完了いたしました。排出量が最も大きいカテゴリ11(販売した製品の使用)に関しては10年ビジネスプランの電動車搭載部品売上比率の向上など、目標をもって取り組んでいます。鉄に比べて軽量であるアルミダイカスト製品の供給拡大により自動車のエネルギー消費効率をアップし、CO2排出量低減に貢献します。

・ガソリン車(ICE)に対する重量当たりのCO2削減効果  HEV:約54%、PHEV:約60%、BEV:約70%

・電動車搭載部品重量比率が10%上がると約31,500 t-CO2の削減効果(Scope3全体の2.8%に相当)

※CO2排出量(Scope1,2,3)参照元に記載のガイドライン、又22年度の動力源別販売重量の割合に基づき算出

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集計範囲:国内全製造拠点8カ所+本社・テクニカルセンター、東京本社、海外全製造拠点7カ所

参照元:Scope1:環境省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」における各エネルギー形態に応じた係数を使用

 

Scope2:マーケット基準/各電力会社公表係数を使用 マーケット基準が近年主流になってきており、精度も高いため2024年度からマーケット基準での開示に変更

ロケーション基準/IEA「IEA Emission Factors」における各国及び各年度実績に応じた係数を使用

※参考 2023年度 Scope2 ロケーション基準:145千t-CO2

Scope3:環境省及び経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に基づいた算出

 

(3)人的資本への対応

① ガバナンス

人的資本に関するリスクや機会に係わるガバナンスについては、気候変動への対応と同様、サステナビリティ会議にてリスクや機会の把握、影響分析、対応策の取りまとめを行い、その中の業務執行上の重要事項については、経営会議で審議・報告を行う体制を構築しました。また、2224中期経営計画における重点活動項目については、四半期ごとに取締役、本部長や国内外の工場長・部長が参加する全社方針推進会議にて活動指針及び計画に対する活動状況と課題の報告、議論を行い、顕在化した課題に対する対応方針を指示する体制で推進しております。

 

② 戦略(人財戦略)

当社経営基本方針が「常に生きいきと活動し」から始まることで示す通り、当社グループは会社の進化・成長の原動力は人財であると考えています。このため2040年ビジョンの重点戦略のひとつとして「Ahrestyで良かった!を実現する」を掲げ、従業員がお互いの価値観を尊重し、国籍、年齢、性別を超えて常に生きいきと活動する会社であり続けることを目指しております。

 

a.D&I改革(ダイバーシティの実現)

アーレスティグループは2040年ビジョンにダイバーシティの実現を掲げ、これに基づき策定された2030年のマイルストーン10年ビジネスプランにおいて「経営幹部の多様化(国籍、年齢、性別、職歴等)」「女性従業員比率(国内)20%以上」「女性管理職比率(国内)10%以上」を目標値として設定し、多様な人財が活躍できる企業を目指し取り組みを進めています。

経営幹部の多様化として「海外拠点長の現地化」、「本社機能部の多様化」、「経営執行の多様化」に取り組んでいます。最初のフェーズである「海外拠点長の現地化」では、日本人従業員が社長を務めていた海外現地法人におけるガバナンスやマネジメント体制の見直しを進め、2024年6月にメキシコにあるアーレスティメヒカーナS.A. de C.V.の取締役社長にJurio Cesar Doctoriarena Torres氏が就任しました。引き続き経営幹部の多様化を推進して参ります。

国内においては2022年3月に発足したダイバーシティ推進室が主体となり、拠点ごとに推進者を設置し、グループ一体となってダイバーシティに対するマネジメント層の適切な理解と意識改革を促すための研修会や新卒採用比率の見直しを行って来ました。工場現場の改革においては年齢や性別にかかわらず働きやすい職場づくりも進めています。これまで2019年度から職場作業の重量物運搬や負荷の大きい姿勢での作業など約500にのぼる作業改善を進めてきました。この活動を発展させ、ジェンダーフリーな職場・職域拡大を図るとともに、ワークライフバランスが実現できる制度の拡大など、誰もが働きやすく働きがいのある職場づくりに努めていきます。こうした取り組みを通じて、2023年3月にアーレスティは女性活躍企業として「えるぼし認定」において最高評価である3つ星認定を取得しました。

当社グループでは職場で活躍し仕事にやりがいを感じることも、生活の充実につながるワークライフバランスの一環であると考えます。マネジメントの素養がある若手世代の従業員(30代)の活躍の場を設けるために、リーダーシップ研修やeラーニングによるマネジメント知識の学習機会を提供し、また業務経験を積むためのジョブローテーションを行い、中堅・若手社員の管理職登用に取り組んでいます。

障がい者雇用・育成の促進については、当社グループでは多様性を持つ人たちが働く職場の創出を目指し2020年10月「㈱アーレスティインクルーシブサービス」を設立、2021年6月に障害者の雇用の促進などに関する法律に基づく特例子会社としての認定を取得しました。グループ内の管理業務の効率化を目的に事務業務を担うシェアードサービス会社としてハンディキャップのある従業員を含め一人ひとりが適性に応じた役割を担っています。「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」で優良な事業主として認定されております。㈱アーレスティインクルーシブサービスで働く障がい者の方々が「生きいきと働くための施策」として、ジョブ型雇用制度の導入、テレワークやフレックスの利用を推進し、個人の自主性を尊重した柔軟な働き方を取り入れることで、やりがいを感じて職場で活躍されています。その結果、㈱アーレスティインクルーシブサービスでは91.6%と高い定着率(外部資料では全国平均49.5%~71.5%『障害者の就業状況等に関する調査研究』2017年、JEED)を維持しています。

2023年度は、新たに障がい者2名を採用し雇用を推進しています。また職場適応援助者(ジョブコーチ)を活用するなどしてひとり一人の障がい特性に応じた職場環境の整備を進めました。シェアードサービスの状況としては当社のグループ会社2社の給与計算や社会保険・雇用保険の補助業務等の受託を新規にスタートさせ、従業員の活躍の場を拡大させると共に、グループ内の業務効率化に貢献しています。次年度も引き続き受託範囲を拡大させ、更なる雇用促進を進めて参ります。

定着率…設立から雇用した従業員の総数に対する、就業開始(入社)から1年経過時まで継続して就業している従業員の割合

項目

2030年度目標

2023年度の実績

男女の賃金格差(国内)

(注)

女性従業員比率(国内)

20以上

14.7

女性管理職比率(国内)(注)

10以上

2.5

管理職登用年齢の平均(国内)

40.3歳

障がい者雇用率(23年度法定雇用率2.3%)

2.41%

(注)男女の賃金格差(国内)及び女性管理職比率(国内)につきましては、第1 企業の概況 5 従業員の状況 に会社別の実績を記載しております。

 

b.エンゲージメント向上と健康経営

従業員から、「Ahrestyで良かった!」と感じられる会社となるべく、従業員アンケート及びストレスチェック項目から、拠点毎に従業員と共に優先順位付けをし、その優先3項目の肯定的回答率を総合的な数値指標として、従業員満足度(エンゲージメント指数)肯定的評価を設定しています。この評価結果の数値を高める取組みを、国内外全ての拠点で取り組んでいます。取組み内容としてはエルゴノミクスを用いた作業負担軽減や暑熱環境改善、労働災害の撲滅、職場風土改善、経営情報の共有など多岐に及んでいます。職場風土改善の一つとして、管理職の部下指導やサポートを通じて従業員が働き甲斐を感じられるように管理職のマネジメント力向上に取り組んでいます。具体的には管理職に部下指導の方法やリーダーシップに関する教育を推進しています。

当社グループの持続的な成長には、社員とその家族の健康が必要不可欠で職場で生きいきと働く源泉であるという考えの下、アーレスティは社員の健康促進・維持を経営課題の一つと位置付け、「健康経営」を推進します。具体的には、健康診断フォローや生活習慣の改善推進、病気治療と仕事の良質支援、メンタル相談体制の充実などに取り組んでおり、健康保険組合連合会東京連合会から「健康優良企業 銀の認定」、経済産業省並びに日本健康会議から「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」認定を2年連続で取得しております。

 

項目

2030年度目標

2023年度の実績

従業員満足度(エンゲージメント指数)肯定的評価(国内外)

80以上

31.6%~83.0

健康経営度評価(偏差値)(国内)

55.5

(前年度から↑0.6)

業務中の災害件数(国内外)

22件

業務中の死亡者数(国内外)

0件

(注)1.従業員満足度(エンゲージメント指数)肯定的評価の対象となるアンケート項目は各拠点や施策により異なります。

2.健康経営度評価は、健康経営優良法人認定制度に基づいて日本健康会議が認定した結果で、大規模法人部門の認定対象企業における偏差値になります。なお、同業種(非鉄金属)の偏差値の平均は52.2になります。

3.業務中の災害件数及び死亡者数は自社構内における請負工事業者の災害についてもカウントしています。

c.人財育成

企業の成長を支えるひとづくりとして人財の戦略的な採用と育成の仕組み構築を進めております。ものづくりに関わる各講座を体系的に学ぶことができる「アーレスティ学園」を設け、グローバル各拠点で同水準の教育を実施しております。近年では生産現場における新たな教育ニーズに対し、統計の基礎や多変量解析の講座を設けているほか、技術者向けIoTワークショップの開催や社外のデータサイエンス指導会への人財派遣など、デジタル基盤の強化・データ解析のリーダー育成にも力を入れています。

またキャリアプランニングにおいてはキャリアサポート制度の充実を図っています。従業員一人ひとりが自分のこれまでの経歴、強み・弱み、将来の希望を人財データベースに登録し、これを基に上司との面談を通じ、キャリアを自発的に考える機会を増やしています。この制度を通じ潜在的な能力を引き出し、適材適所への人財配置を進めるとともに、常に仕事への視野を広げながらチャレンジする意欲を持った人財を増やしていくことを目指しています。

中長期的な事業戦略や事業環境に照らした人的資源の確保と一人一人のキャリア育成を進めていくため、当社は将来の事業展開において育成が必要となる人財ニーズを把握し、その要件と候補者を明確化して、計画的に育成していく「人財ロードマップ」の枠組みを整備してきています。現在この枠組みで、「次世代管理職候補者の育成」を1つのテーマとして取り組んでおり、人財を登録して数年後の管理職登用を目標に育成を計画的に進めています。

③ リスク管理(人財マネジメント管理)

前述で説明した、人財ロードマップの枠組みの活用により、当社の人的資源の充足状況を把握し、事業継続の観点でサクセッションプランを策定することで、キーパーソンの育成とともに人的資源の不足や偏りといったリスクの低減を図っております。その一つとして、管理職候補者の育成と計画的な登用を進めており、また前述の「a. ダイバーシティの実現」の女性管理職比率の向上や若手世代従業員の管理職登用にも繋がる取り組みとして展開しています。また、リスク管理の観点では、将来の事業戦略から当社グループの持続的成長に必要となる人財や欠員や退職等により影響度が大きいと分析されたリスクは、経営企画部に設置するリスクマネジメント事務局で全社リスクと統合し評価・管理を行っております。

項目

2023年度の実績

管理職ポストの後継者の有無(国内)

87.5%

人財ロードマップ登録者から管理職に登用された者の割合(国内)

66.7%

アーレスティグループの自己都合退職率(国内)

2.0%

 

④ 指標及び目標

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3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)景気動向による需要変動及びサプライチェーンの部品供給支障による自動車OEMの生産変動に関わるリスク

当社グループの営業収入はダイカスト事業の依存度が高く、ダイカスト事業の営業収入の9割以上を自動車関連で占めております。自動車の生産台数及び販売台数は、国内外の景気動向の影響を受けることが予想されるほか、自動車部品供給サプライチェーンの部品供給支障による自動車OEMの操業停止や減産の影響を受ける可能性があります。

当社としましては、これらの需要変動及び生産変動に関わるリスクを最小限にとどめるべく、日本、北米、アジアを含む当社グループの主要市場の情報収集を行い、変動に応じた生産体制となるよう努めておりますが、想定を超える景気後退及びそれに伴う需要の縮小あるいはサプライチェーンの混乱による自動車OEM生産の減少が生じた場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2)自動車市場の構造変化に関わるリスク

各国の産業政策や燃費規制、モビリティとしての自動車の役割の変化等によりCASE(Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化))などが進み、当社が現在主力としている製品群が将来的には変化していくことが予想され、事業構造に影響を及ぼす可能性があります。

当社としましては、短期的には自動車OEMの構造変化によるダイカスト関連投資の抑制からダイカストのアウトソーシングが進むことも想定し、その受注増加の機会もしっかり捕捉していく考えですが、中長期的には電動化に伴う車体軽量化ニーズへの対応の中で、従来のパワートレイン系部品だけでなく、電動車搭載部品の受注拡大、足回り部品等の構造部品分野への進出を強化する所存です。

(3)為替レート及び金利変動に関わるリスク

当社グループの事業には、北米、アジアの生産と販売が含まれており、生産を行う地域の通貨価値上昇はそれらの地域の製造と調達コストを上昇させる可能性があります。また連結財務諸表において、現地通貨における価値が不変でも、為替レートにより円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。更に、各種設備投資や事業継続のために金融機関からの資金調達を行っており、金利上昇により金融コストを上昇させる可能性があります。

当社グループでは、ヘッジ契約を用いてそれらのリスクの影響を軽減することとしております。ヘッジ契約の利用は、為替及び金利の変動リスクをある程度軽減する効果がある一方、ヘッジコストを支払うことになるほか、相場が想定とは逆サイドに変動した場合、得べかりし利益を逸失する可能性があります。また、ヘッジ契約の相手方の信用リスクにさらされるリスクもあり、取引相手の債務不履行があれば、当社グループに悪影響を及ぼす可能性があります。

(4)原材料市況変動に関わるリスク

当社グループのダイカスト事業における原材料(アルミニウム二次合金地金)及びアルミニウム事業における原料(アルミニウム合金屑等)の価格は、他の非鉄金属価格の動向、アルミニウム一次地金価格の動向、特にLME(ロンドン金属取引所)等の海外市況の動向の影響を受けます。

ダイカスト事業では顧客との間で製品価格に転嫁できる契約形態(顧客によって契約内容は異なるものの一般的には3ヶ月ごとに市況の変動に合わせて原材料の契約価格を改定しております)となっており、売上高は原材料市況の影響を受けますが、長期的には利益への影響はほとんどありません。しかしながら、短期的には原材料価格の変動が収益に影響を及ぼす可能性があります。

アルミニウム事業では、市況により販売価格及び原料価格が変動しますが、一般的には販売価格と原料価格は連動しており、売上高への影響はあるものの利益への影響は基本的に限定的です。しかしながら、原料価格が急上昇すると販売価格との乖離が一時的に広がり利益にも影響を及ぼす可能性があります。

(5)製品の品質に関わるリスク

ダイカスト製品については、グローバル展開により当社グループの製品が世界各国で使用されております。そのため、当社グループはISO9001/IATF16949を取得し、厳密な品質管理のもと、個々の取引先の製品規格に従い検査を行った上で、納品しております。万一賠償問題につながるクレーム及びリコールが発生した場合には、その問題が世界に波及するリスクが生じます。製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的な賠償額をカバーできる保証はありません。また、検査においてデータ書き換えやねつ造が行われた場合も同様です。その結果、損害賠償等の経済的負担及び信用失墜により、当社グループの業績及び財務状況に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)知的財産権に関わるリスク

当社グループは、長年にわたり、自社が製造する製品に関連する多数の特許及び商標を保有し、もしくはその権利を取得しています。これらの特許及び商標は、当社グループのこれまでの事業の成長にとって重要であり、その重要性は今後も変わりません。当社グループは、いずれの事業も単一の特許又は関連する複数の特許に依存しているとは考えておりませんが、このような知的財産が広範囲にわたって保護できないこと、あるいは広範囲にわたり当社グループの知的財産権が違法に侵害されることによって、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。一方で、当社グループが認識の範囲外で第三者の知的財産権を侵害した場合、多額の損害賠償責任を負う可能性や当社グループの事業活動が制限される可能性があります。

(7)海外進出に潜在するリスク

当社グループの生産及び販売については、北米、アジア等、日本国外に占める割合が年々高まる傾向にあります。そのため、当社グループが進出している国や地域において、戦争、テロ等の予期せぬ事象の発生やストライキ等労務問題の発生によって、原材料や部品の購入、生産、製品の販売及び物流やサービスの提供などに遅延や停止が生じる可能性があります。これらの遅延や停止が起こり、それが長引くようであれば、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

(8)災害や事故、パンデミックに関するリスク

大規模な地震や大型の台風等の自然災害、火災、事故、パンデミック等が発生した場合には、当社グループ従業員の被災、感染拡大、生産施設等の機能麻痺、取引先の被災、公共インフラの復旧遅れ、あるいは公的規制により、生産・納入・サービス活動が遅延、停止する可能性があります。

(9)情報セキュリティ(重要情報・顧客情報・個人情報・知的財産)に関わるリスク

当社グループは自己のものに限らず顧客からの重要情報等を取り扱うことがあることから、これらの情報については、社内規程を整備し情報へのアクセス制限を設ける等の対応をとっています。しかしながら、社内あるいは取引先における内部不正、もしくは社外からのサイバー攻撃による情報漏洩・破壊・改ざん等の情報セキュリティ事故が発生した場合、当社グループの社会的信頼の低下に伴う新規受注停止や取引停止、顧客からの損害賠償請求、それらの影響による株価の低下から、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、原材料、エネルギー価格の高止まり、各国中央銀行による金融引き締め効果の顕在化や中国経済の成長率鈍化などにより、減速感が続く状況となりました。米国経済は、これまでの利上げの効果が経済全般に広がる一方、労働市場の人手不足とサプライチェーンの供給制約が緩和し、経済活動の正常化とインフレの鈍化が同時に進行、2024年の年央まで減速が続くもののFRBの利下げも開始されて回復に向かう見通しとなりました。中国経済については、不動産部門の調整長期化や人口減、米中対立といった構造的下押し要因が続き、成長率の鈍化が続く見通しとなっています。日本経済は、高水準の企業収益が賃金、設備投資に回ることで経済活動は回復を維持するものの、実質雇用者報酬の伸び悩みやサービス消費、インバウンド需要等の回復の一服で、緩やかな回復にとどまる見通しであります。

このような経済状況の中、自動車生産における半導体不足の緩和が世界的に進み、受注量が回復したことで、当社グループの業績も回復基調が続きました。エネルギー価格等の高止まりの影響について、価格是正が順調に推移したことも寄与し、営業損益、経常損益とも増益となりました。一方でアジアにおいては中国市場での日系自動車会社が現地メーカーとの競合激化等の影響を受け苦戦を強いられました。その結果、当期純損益については減産影響を受けた中国拠点を中心に保有する事業用資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額したことによる減損の損失計上が主因で純損失計上を余儀なくされました。

当社グループでは、当連結会計年度より2030年を目標年度とする長期経営計画である10年ビジネスプランと、その最初の3年間のマイルストーンとなる2224中期経営計画を推進しております。2224中期経営計画においては自動車の電動化の加速やカーボンニュートラルなどの外部環境変化を踏まえ、「低コストで生産性の高いものづくりの確立」「生産時のCO2排出量の削減」「電動車向け部品中心の事業ポートフォリオへの転換」を戦略の柱に据えて、売上高の確保、生産性の向上、稼ぐ力の強化に取り組んでおります。加えて昨年6月には10年ビジネスプランの財務戦略を策定し、公表済の収益目標に加え、自己資本比率40%、配当性向35%、設備投資1,400億円、ROE9%達成を10年ビジネスプラン期間における4本柱の財務目標として掲げております。当連結会計年度は当期純損失となりましたが、基礎的収益力の回復基調は続いており、来期以降も効率的な生産体制づくり、電動車部品に強い顧客との新規取引や取引拡大等の事業体質強化を継続して参ります。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の総資産は131,763百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,305百万円の減少となりました。

当連結会計年度末の負債は80,146百万円となり、前連結会計年度末に比べ273百万円の減少となりました。

当連結会計年度末の純資産は51,617百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,032百万円の減少となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高158,254百万円(前期比12.3%増)、営業利益2,291百万円(前期は23百万円の営業利益)、経常利益2,574百万円(前期は94百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失7,699百万円(前期は84百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

ダイカスト事業 日本は、売上高62,007百万円(前期比5.1%増)、セグメント利益595百万円(前期比137.6%増)となりました。ダイカスト事業 北米は、売上高47,967百万円(前期比29.7%増)、セグメント利益1,242百万円(前期はセグメント損失676百万円)となりました。ダイカスト事業 アジアは、売上高35,098百万円(前期比4.2%増)、セグメント損失650百万円(前期はセグメント利益8百万円)となりました。

アルミニウム事業は、売上高7,057百万円(前期比11.5%減)、セグメント利益141百万円(前期比48.6%減)となりました。

完成品事業は、売上高6,123百万円(前期比87.2%増)、セグメント利益891百万円(前期比212.1%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて1,397百万円減少し11,594百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により増加した資金は、18,319百万円(前期は10,727百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失8,431百万円等の資金減少要因に対し、減価償却費12,797百万円、減損損失10,399百万円、棚卸資産の減少額1,113百万円、仕入債務の増加額832百万円等の資金増加要因があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により減少した資金は、13,939百万円(前期は6,331百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出13,115百万円、定期預金の預入による支出724百万円等の資金減少要因があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により減少した資金は、5,951百万円(前期は1,534百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入れによる収入10,900百万円等の資金増加要因に対し、長期借入金の返済による支出11,834百万円、自己株式の取得による支出599百万円、自己株式取得のための預け金の増加額403百万円等の資金減少要因があったことによるものであります。

③生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

ダイカスト事業 日本(百万円)

59,403

106.7%

ダイカスト事業 北米(百万円)

45,037

125.2%

ダイカスト事業 アジア(百万円)

34,482

99.6%

アルミニウム事業(百万円)

8,370

103.9%

完成品事業(百万円)

1,674

65.2%

合計(百万円)

148,969

108.8%

(注) 金額は製造原価によっており、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。

 

b. 受注実績

当社グループの事業の大部分は、顧客からの受注内示に基づいた見込み生産を行い、納入指示日の数日前に確定する受注に基づいて出荷(売上計上)する形態であるため、受注実績の記載を省略しております。

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

ダイカスト事業 日本(百万円)

62,007

105.1%

ダイカスト事業 北米(百万円)

47,967

129.7%

ダイカスト事業 アジア(百万円)

35,098

104.2%

アルミニウム事業(百万円)

7,057

88.5%

完成品事業(百万円)

6,123

187.2%

合計(百万円)

158,254

112.3%

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱SUBARU

15,580

11.1

17,527

11.1

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成においては、連結会計年度末日における資産・負債の金額及び偶発債務の開示、並びに連結会計年度における収益・費用の適正な計上を行うため、見積りや前提が必要となります。当社グループでは、過去の実績、又は各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しておりますが、見積り特有の不確実性があることから、実際の結果と異なる可能性があります。

以下、当社グループの財政状態や経営成績にとって重要であり、かつ相当程度の経営判断や見積りを必要とする重要な会計方針についてご説明いたします。

なお、重要な会計上の見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積りに関する注記」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積りに関する注記」に記載しております。

 

(投資有価証券及び投資)

当社グループは、長期的な取引関係維持のために、特定の顧客及び金融機関に対する少数持分を所有しております。これらの投資有価証券には価格変動性が高い公開会社の株式と株価決定が困難である非公開会社の株式が含まれます。

当社グループは、公開会社株式については市場価格などの時価をもって連結貸借対照表に計上し、評価差額は税効果会計適用後の金額を全額純資産の部に計上しております。しかし、時価が著しく下落した場合(50%以上下落した場合)に下落した額について、原則として減損を認識しております。また30%以上~50%未満下落している銘柄については、3年間の時価の推移を捉え時価が回復しない場合に減損を計上しております。

また、非公開会社株式については、投資先の純資産価額の当社持分と、当社グループの帳簿価額とを比較することにより減損の判断を行っております。減損の判断にあたっては、下落幅及び当該投資先会社の財政状態及び将来の業績見通し等を考慮しております。

(貸倒引当金)

当社グループは、将来の顧客の支払不能時に発生する損失に備えるため、債権を一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権に分類し、一般債権については過去3年間の貸倒実績率に基づいた貸倒見積高、貸倒懸念債権及び破産更生債権については回収可能額を控除した全額を貸倒見積額として引当計上しております。

(固定資産の減損)

当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」及び企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(平成15年10月31日)に基づく固定資産の減損会計を適用しております。有形固定資産等、「固定資産の減損に係る会計基準」において対象とされる固定資産について、その帳簿価額の回収が懸念される企業環境の変化や経済事象が発生した場合には、減損の要否を検討しております。

その資産の市場価額及びその資産を使用した営業活動から生ずる損益等から減損の兆候があると判定された固定資産については、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合、回収可能価額まで減損処理を行っております。回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額となりますが、正味売却価額につきましては不動産鑑定評価額及び動産評価額を合理的に調整した価格とし、使用価値については見積将来キャッシュ・フローの現在価値とすることを会計方針としております。今後、事業計画や市場環境の変化等によりこれらの見積りが変更された場合、減損金額の増加及び新たな減損損失認識の可能性があります。

(繰延税金資産)

企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額との間に生じる一時的な差異に係る税効果については、当該差異の解消時に適用される法定実効税率に基づいて繰延税金資産又は繰延税金負債を計上しております。

当社グループは、繰延税金資産の計上にあたり連結グループ内の個々の会社について今後5年間の利益計画をもとに将来の課税所得の十分性、タックスプランニングの存在の有無及び将来加算一時差異の十分性により繰延税金資産の回収可能性を判断しております。繰延税金資産のうち、将来において実現が不確実であると考えられる部分に対して評価性引当額を計上して繰延税金資産を減額しておりますが、将来の課税所得の見込額の変化や、その他の要因に基づき繰延税金資産の回収可能性の評価が変更された場合、繰延税金資産の減額部分の増減変更により法人税等調整額が増減し親会社株主に帰属する当期純利益(又は親会社株主に帰属する当期純損失)が増減する可能性があります。

(退職給付に係る負債)

当社グループは、将来の従業員の退職金の支払に備え、確定給付型の制度として退職一時金制度及び確定給付企業年金制度、確定拠出型の制度として確定拠出年金制度を採用しております。一部の連結子会社においては、従業員が少ないため高い信頼性をもって数理計算上の見積りを行うことが困難であるため簡便法による処理を行っております。簡便法では決算日における従業員の自己都合退職によった場合における要支給額より年金資産額を控除した額を引当計上しております。当社及び一部の連結子会社においては、原則法により数理計算上の見積りを行っております。原則法によった場合、従業員の退職給付費用及び債務は数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されます。これらの前提条件には、割引率、将来の昇給率、退職率、死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率などが含まれております。割引率は主に日本の国債の市場利回りを基礎に算出しております。長期期待運用収益率は年金資産が投資されている資産の種類ごとの長期期待運用収益率の加重平均に基づいて計算されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響額は累積され将来にわたって規則的に認識されていくため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

(資産合計)

資産は、131,763百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,305百万円の減少となりました。流動資産は61,777百万円で、前連結会計年度末に比べ477百万円の増加となり、その主な要因は、現金及び預金が668百万円減少した一方、売上債権が1,002百万円増加したことによるものです。固定資産は69,985百万円で、前連結会計年度末に比べ5,783百万円の減少となり、その主な要因は、投資有価証券が280百万円増加した一方、有形固定資産が6,065百万円減少したことによるものです。

(負債合計)

負債は、80,146百万円となり、前連結会計年度末に比べ273百万円の減少となりました。流動負債は59,741百万円で、前連結会計年度末に比べ464百万円の増加となり、その主な要因は、短期借入金が2,961百万円、1年内返済予定の長期借入金が704百万円減少した一方、仕入債務が1,315百万円、その他に含まれる設備債務が1,423百万円、同じく前受金が614百万円、未払消費税等が366百万円、未払費用が316百万円増加したことによるものです。固定負債は20,404百万円で、前連結会計年度末に比べ738百万円の減少となり、その主な要因は、長期借入金が670百万円増加した一方、繰延税金負債が1,183百万円、退職給付に係る負債が271百万円減少したことによるものです。

(純資産合計)

純資産は、51,617百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,032百万円の減少となりました。その主な要因は、為替換算調整勘定が2,874百万円増加した一方、利益剰余金が8,432百万円減少したことによるものです。

以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末41.2%から39.1%となりました。

2)経営成績

(売上高)

売上高は、半導体供給不足の緩和が進み、各自動車メーカーの生産増加を受け、ダイカスト事業日本及び北米での受注量が回復したことに加え、円安進行の影響もあり、前連結会計年度から17,316百万円増加し158,254百万円(前期比12.3%増)となりました。

そのうち、国内売上高は75,188百万円(前期比4,922百万円増)、海外売上高は83,066百万円(前期比12,393百万円増)となりました。

(売上原価、販売費及び一般管理費、営業損益)

売上原価は、受注量回復に伴う生産回復と原材料の地金仕入単価、エネルギー価格などの諸コスト上昇の影響により、前連結会計年度から13,891百万円増加し144,349百万円(前期比10.6%増)となりました。

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度から1,156百万円増加し11,614百万円(前期比11.1%増)となりました。

以上の結果、営業利益は2,291百万円(前期は23百万円の営業利益)となりました。

(経常損益)

営業外収益は前連結会計年度から176百万円増加し1,087百万円(前期比19.4%増)となりました。これは主に前期は雇用調整助成金が147百万円発生した一方、受取利息が81百万円、為替差益が127百万円、スクラップ売却益が117百万円増加したことによるものです。

営業外費用は前連結会計年度から35百万円減少し804百万円(前期比4.2%減)となりました。これは主に支払利息が28百万円減少したことによるものです。

以上の結果、経常利益は2,574百万円(前期は94百万円の経常利益)となりました。

(特別利益)

特別利益は前連結会計年度から3,048百万円減少し291百万円(前期比91.3%減)となりました。これは主に補助金収入が80百万円増加、当期は投資有価証券売却益が34百万円発生した一方、固定資産売却益が3,162百万円減少したことによるものです。

(特別損失)

特別損失は前連結会計年度から7,887百万円増加し11,298百万円(前期比231.3%増)となりました。これは主に特別退職金が221百万円減少した一方、減損損失が8,020百万円増加したことによるものです。

(親会社株主に帰属する当期純損益)

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は7,699百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失84百万円)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の1株当たり当期純損失は300円55銭(前期は1株当たり当期純損失3円26銭)となりました。

(EBITDA)

当連結会計年度のEBITDA(営業利益+減価償却費)は15,089百万円(前期比16.7%増)となりました。

 

3)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッ

シュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

c.資本の財源及び資金の流動性についての分析

資金需要及び財務政策

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及び事業拡大のための設備投資資金、配当金の支払等であります。これらの資金需要に対して当社グループでは、主として金融機関からの借入金と自己資金(手元資金と営業活動によって獲得した資金)により事業活動に必要な運転資金や将来の設備投資等に向けた充分な資金を確保しております。

資金調達手段としては、金融機関からの短期借入金、長期借入金で行っており、短期借入金については運転資金として月次の売上高の2分の1程度を調達する方針としております。長期借入金については、設備投資のための長期資金として3年~5年の借入期間で調達を行っております。また、短期借入金については、月次の資金繰り状況に応じ当座借越限度額の範囲内で反復利用を行い、長期借入金については、新規調達を行う一方で約定計画に基づき返済を行っております。

なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標は下記のとおりであります。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

自己資本比率(%)

46.5

41.9

40.7

41.2

39.1

時価ベースの自己資本比率(%)

7.3

9.4

7.4

9.8

16.3

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

204.5

578.2

519.6

405.7

221.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

38.2

16.7

15.7

15.3

24.1

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注)1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

資金の流動性

当社及び国内連結子会社はCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、国内のグループ内資金を当社が一元管理しております。各グループ会社において創出したキャッシュ・フローを当社に集中することで資金の流動性を確保し、また、機動的かつ効率的にグループ内で配分することにより、金融負債の極小化を図っており、余剰資金が生じた場合には有利子負債の返済に充てる方針であります。

 

d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(ダイカスト事業 日本)

日本自動車市場では、半導体供給の安定化により自動車の生産が回復した影響で受注量が回復し売上高は62,007百万円(前期比5.1%増)となりました。収益面においては、受注量の回復に加え、エネルギー費等の価格是正も順調に進んだことも寄与し、セグメント利益595百万円(前期比137.6%増)となりました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ3,765百万円増加し54,597百万円となりました。

 

(ダイカスト事業 北米)

北米自動車市場では、半導体供給の安定化により自動車の生産が回復した影響で受注量が回復し売上高は47,967百万円(前期比29.7%増)となりました。収益面においては、労務費等の上昇による製造コスト増加はあったものの、受注量回復に伴う生産回復の影響により、セグメント利益1,242百万円(前期はセグメント損失676百万円)となりました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ788百万円増加し32,385百万円となりました。

 

(ダイカスト事業 アジア)

アジア自動車市場では、中国市場において当社主要顧客の日系自動車メーカーの販売不振により受注量が減少しましたが、インド工場において新規製品の量産が開始したことによる受注量の増加により、売上高は35,098百万円(前期比4.2%増)となりました。収益面においては、中国工場における受注量減少に伴う生産減少とインド工場における一部製品の生産が安定しないことに伴うコスト高の影響により、セグメント損失650百万円(前期はセグメント利益8百万円)となりました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ3,246百万円減少し38,917百万円となりました。

 

(アルミニウム事業)

アルミニウム事業においては、販売重量は前年比17.2%減となりました。売上高は一部取引先にて減産となり、売上高は7,057百万円(前期比11.5%減)となりました。収益面においては、販売重量減少の影響を受け、セグメント利益は141百万円(前期比48.6%減)となりました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ17百万円増加し4,103百万円となりました。

 

(完成品事業)

完成品事業においては、主要販売先である半導体関連企業のクリーンルーム物件等の受注が増加し、売上高は6,123百万円(前期比87.2%増)となりました。収益面においては、売上高の増加もあり、セグメント利益は891百万円(前期比212.1%増)と安定的な利益を確保しております。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ631百万円減少し2,639百万円となりました。

 

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の締結、重要な変更もしくは解約はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、お客様に信頼され、グローバルで顧客ニーズに応える企業を目指して、主にダイカスト事業で当社技術部が推進しております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、683百万円(前期比22.4%増)であります。

当連結会計年度は自動車車体部品のダイカスト製造技術の熟成と電動部品の性能向上そして、カーボンニュートラルを目指し、量産工場と一体となった取り組みを継続して進めてまいりました。また、㈱ジーテクトとの間で車体部品とEV関連部品における新たな価値創造に向けた共同開発を進めております。カーボンニュートラルに向けた自動車ボディ構造を共に考えることで顧客に貢献できる開発を進めています。そして、車両全体の軽量化に貢献することにより、電動化が進展する中で車体系部品群の開発・受注の強化を図ってまいります。