(当社グループの目指す姿)
『グローバルに変化する食品物流を担う低温を核とする総合物流情報企業の実現』
a.自らが保有する施設・車両による自社オペレーションに裏付けされた物流品質と、低温食品物流のパイオニアとして培ってきた経験を活かし、「新しい」物流システムを創造することで事業規模の拡大や新たな事業領域へ進出し、低温食品物流業界におけるリーディングカンパニーたる地位を確保する。
b. 物流に関連する付加価値の実現と物流品質の更なる強化により、企業価値の向上を図り飛躍し続ける物流企業となる。
c.従業員が将来に希望を持ち、生き生きと仕事に取り組める物流企業となる。
d. 企業の社会的責任を果たし、あらゆるステークホルダーに支持される物流企業となる。
当社グループは上記の目指すべき姿を達成するため、第三次中期経営計画(2022年4月1日から2025年3月31日まで)を策定いたしました。
(基本方針)
『新たなコールドチェーンのニーズをつなぐ、持続可能な低温物流の実現』
新型コロナウイルス感染拡大や急激な気候変動をはじめすべての地域社会・企業・人が様々な困難に直面する時代の中、『安心・安全な食のロジスティクス』を担う当社にとって、従来のチャネルと異なる食品をはじめとした低温管理商品の新たな供給ニーズと消費ニーズをつなげるコールドチェーンを展開・拡充することで収益体質の強化につなげていく。新たな事業領域への挑戦も踏まえた利益体質の強靭化と、変化が加速する自然環境への対策を含めたあらゆるステークホルダーにとっての課題に向き合い真摯に寄り添うことで、未来に責任を果たす持続可能な低温物流事業を構築し企業価値を向上させていく。
① 持続可能な物流事業の構築
・ 食のライフラインを守り、豊かな社会づくりに貢献する物流業務を推進する。
・ 脱炭素社会の実現に向けた地球環境にやさしい物流基盤を構築する。
・ 多様性を重視し、すべての従業員にとって働きやすい・働きがいのある職場環境をつくる。
② 戦略的な財務構成による企業価値の向上
・ 資本と負債のバランス最適化などを能動的に実行し、ROE8%以上を維持・継続させる経営を行う。
・ 資本効率を向上させるため、適切な資金配分を行うと同時に資本コストを意識した投資を行う。
・ 株主還元や株主との対話をより充実させることで株式価値の向上を図る。
③ 共同配送事業を軸とした既存事業の機能強化と収益基盤強化
・ ネットワークの再編や新たな機能の開発によって共同配送事業の利益体質の強靭化を推進する。
・ 「荷主・顧客」または「温度帯」といった従来の事業会社別のビジネスモデルの枠組みを超えた、新たな共同配送事業を構築し、事業機会を獲得する。
・ 顧客・市場のニーズに対応した既存事業モデルの再編・強化を遂行する。
④ 成長分野への投資促進
・ EC(電子商取引)関連物流への進出をはじめとした、成長する市場への経営資源の投入を推進する。
・ 温度管理技術を活用した新たな事業領域の拡大を図る。
・ 海外事業は、カントリーリスクへの感度を高めながら安定的な成長が期待できる案件への投資を行う。
(中期経営計画の見直しについて)
当社グループは、2023年6月16日に『中期経営計画の見直しについて』として開示しましたとおり、第三次中期経営計画(2022年度~2024年度)につきまして、2025年度を最終年度とする3カ年計画として見直しを実施いたしました。
基本方針及び基本戦略に大きな変更はありませんが、低温商材の流通チャネルの多様化や社会・経済環境の変化を踏まえ、以下の項目を重要施策として追加しております。
① サステナビリティ関連として、環境対策に資する新技術の開発とその導入及び省力化・省人化による生産性の向上にかかる投資
② 成長分野(海外・EC・医薬品等)における投資の促進や他社との協業・提携なども視野に入れた成長スピードの加速
③ 既存事業の強靭化に資するM&Aなどを活用した更なる収益力の強化と事業の拡大
また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応として、今後の中長期的な取り組み方針や一部財務目標数値を策定し、開示しております。
(資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応)
① 投資の更なる促進による収益基盤の強靭化及び持続可能な成長の実現。
・ 選択と集中を基本とした、“低温物流事業”の強靭化
・ 新技術開発・環境対策に資する投資の拡充。
・ 人材への投資拡大による人的資本経営の実現。
② 財務的アプローチからの効率的な経営の実行。
・ 最適な資本構成による株主価値・企業価値の向上。
・ 株主還元政策の強化。
③ ステークホルダーとのコミュニケーション活性化による、株主との建設的な対話の促進。
・ IR体制の充実に伴う自社の取組みや成長戦略の正確かつ客観的な発信及びステークホルダー
エンゲージメントの取組み。
④ 社内体制の充実によるガバナンス強化及び企業価値の向上。
・ グループ横断の委員会の運営を通じた企業価値の向上。
当社グループは、業容の拡大を前提に安定した収益基盤の実現と経営効率の向上を推進するため、第三次中期経営計画において、ROE(自己資本当期純利益率)・自己資本比率・配当性向の数値を経営指標の目標として設定しておりますが、2023年6月に実施した中期経営計画の見直しに伴い、各数値は以下のとおりといたしました。
また、2024年3月15日に開示いたしました「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」において、長期的な視点に立ち、以下の目標数値を設定しております。
人流の活性化に伴い社会活動が本格的に再開する一方で、不安定な国際情勢等を背景とした原材料・エネルギー価格の高止まりや、円安の更なる進展、人件費の高騰等に伴う継続的な物価上昇を受け、個人消費は伸び悩み、日本の経済環境は依然として不透明な状況が続いております。加えて世界的に気候変動への対策が求められ、企業活動の持続可能性の重要性もますます高まるなか、特にプライム市場上場企業については、サステナビリティの観点を踏まえた持続可能な成長について、社会・市場から強く要請されております。
また、当社グループが主軸をおく低温食品物流業界におきましては、食品メーカーを中心にコスト増加に対応した価格改定が進捗する中、消費者においては節約志向や選別消費の傾向が根強く、市販用冷凍冷蔵食品の取扱物量は伸び悩みの状況が続いている一方で、業務用食品の取扱物量は回復傾向にあることや、Eコマースをはじめとした流通チャネルの多様化が進行するなど、市場環境が急速に変化しております。一方で、いわゆる物流の2024年問題と称される人員などの輸送リソースの減少が懸念されており、物流事業者の事業継続性リスクはこれまで以上に高くなっております。
このような社会・経済環境の変化を踏まえ、当社グループは、2022年4月より第三次中期経営計画(2022年度~2024年度)を推進しております。基本方針として「新たなコールドチェーンのニーズをつなぐ持続可能な低温物流の実現」を掲げ、成長著しいEC関連物流や医薬品物流といった新規事業の拡大、新規拠点の設立をはじめとした既存物流事業の強靭化に取り組んでまいりました。
さらに、低温商材の流通チャネルの多様化などの環境変化を踏まえ、2023年6月16日に開示しましたとおり、第三次中期経営計画につきまして、2025年度を最終年度とする3カ年計画として見直しを実施いたしました。当社グループが誇るチルド・フローズンの物流機能を通じ、食のライフラインの維持と豊かな社会の実現を達成するための各種施策の展開は当初計画通り継続しつつ、重要施策を追加し、これらを実現するために、約100億円の追加投資を実施してまいります。
加えて、当社は2024年3月15日に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について開示いたしました。2022年4月よりスタートしました第三次中期経営計画を踏まえつつ、低温物流の知見・ノウハウを最大限活用し、既存事業の枠組みにとらわれない成長領域の拡大をこれまで以上に推進すること、ならびに堅調な需要が見込まれる既存の低温食品物流事業の能力増強投資による持続可能な物流基盤の構築などにより長期的な目標として売上高2,000億円の達成を目指してまいります。その一方でCO2排出量削減の取組みや、機械化・DXによる省力化・省人化への取組みも加速させ、持続可能性を担保した企業成長を実現し、社会・市場からの要請に応えてまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において、当社グループが判断したものであります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において、当社グループが判断したものであります。
[サステナビリティに関する考え方について]
当社グループは、経営の基本方針として『グローバルに変化する食品物流を担う低温を核とする総合物流情報企業の実現』を掲げており、その中で「企業の社会的責任を果たし、あらゆるステークホルダーに支持される物流企業となる」と謳っております。
サステナビリティに対し取り組むことは、持続可能な社会の実現に貢献することであり、社会的責任を果たすことに繋がるものと考えております。
そのため当社グループでは、「サステナビリティ方針」を定め、「マテリアリティ(重要課題)の特定」を行い、サステナブル経営の推進体制を構築しております。
「サステナビリティ方針
C&Fロジホールディングスグループは、持続可能な物流事業の実現に向け事業を通じた社会課題解決に取り組み、国際社会で合意された持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献することを宣言し、ステークホルダーとともに次世代物流を創造するサステナブル経営を実践する。」
「マテリアリティ(重要課題)の特定
当社グループは、SDGsをはじめとした社会課題の重要度を確認・整理したうえで、事業およびステークホルダーの双方の観点から社会・環境への影響度が大きく、かつ当社グループの企業価値向上や事業継続における重要度の高いテーマを抽出し、サステナブル経営を行ううえで、重点的に取り組むべき課題として5つのマテリアリティを特定しております。」

[サステナビリティに関する取組について]
(1) ガバナンス
当社はサステナブル経営の推進のため、取締役会の諮問機関としてサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会では、気候変動や人的資本をはじめとするサステナビリティに関する課題の抽出や対応策の検討、また取組状況の把握・分析を行い、定期的に取締役会へ報告を行います。
サステナビリティ委員会は社長執行役員を委員長として、各執行役員及び事業会社社長で構成し、事業会社と機能部門が幅広く連携できる体制を組んでおります。また必要に応じて外部有識者の助言を仰ぎ、公正で的確な検討が行えるよう努めております。
当事業年度はサステナビリティ委員会を9回実施し、取締役会へは4回報告を行いました。
<サステナビリティ経営体制>

<2023年度取締役会報告内容>
(2) 戦略
① 気候変動に関する戦略
a)方針
当社グループは、気候変動に対する基本的な考え方として「C&Fロジホールディングスグループ環境方針」を定め、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みに沿って管理しております。
「C&Fロジホールディングスグループ環境方針
C&Fロジホールディングスグループは、低温物流企業として地球環境の恩恵のもと、事業活動を行っており、事業活動を持続していくために地球環境を保全することは当社グループの重要な経営課題であると認識しています。」
b)シナリオ分析の概要
当社グループでは、気候変動に関するリスク・機会を識別し、それが事業に及ぼす影響に対して、個々に対応策を検討いたしました。その対応策が各シナリオで発生しうる事態に現実的に対応できるかを評価するためにシナリオ分析を実施しております。
使用した主なシナリオは、移行リスクにおいては、IEA(国際エネルギー機関)によるWEO(世界エネルギー見通し)のうち、平均気温上昇をパリ協定で定めた2.0℃より十分低く保ち1.5℃に抑える努力をするSDS(持続可能な開発シナリオ)と、2050年に排出量ネットゼロを達成するNZE2050を用いました。また物理リスクにおいては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による更なる温暖化対策を施さずに平均気温が4.0℃上昇するとされるRCP(代表的濃度経路)8.5シナリオを使用いたしました。
c)気候関連のリスク・機会と影響及び対応策
シナリオ分析の結果1.5℃シナリオにおいて炭素税の導入により、燃料費や動力費など各種コストに転嫁され、利益を圧迫することが想定されるものの、再生可能エネルギーへの転換や次期低炭素車両などの新しい技術を導入することで、対応が可能であると考えます。
各シナリオによるリスク・機会は、次の表のとおりであります。それぞれの発現可能性と影響度を考慮し、対応策を実行いたします。
<移行リスク(1.5℃シナリオ)>
<物理リスク(4.0℃シナリオ)>
d)2023年度の具体的な取組事項
・系統電力を再生可能エネルギー由来電力へ切り替え(13拠点)、自社設備への太陽光パネルの新規設置(㈱ヒューテックノオリン東北支店カーポート、同中部支店倉庫屋上、同関西支店近畿圏共配センター倉庫屋上)、オフサイトPPAによる太陽光発電由来電力導入(12拠点)
・主要冷蔵庫の冷媒を今後すべて自然冷媒化
・グリーンローンによる資金調達(110億円調達)
・持続可能な物流網の構築のため、トラック予約受付システム導入(㈱ヒューテックノオリン主要拠点すべて)、中継拠点施設の計画、冷凍食品パレット輸送実装実験、他
・プラスチック削減のため、エコタイプの梱包資材を使用
② 人的資本に関する戦略
a)方針
当社グループは『グローバルに変化する食品物流を担う低温を核とする総合物流情報企業の実現』を会社の経営の基本方針とし、その中で「従業員が将来に希望を持ち、生き生きと仕事に取り組める物流企業となる。」と謳っております。その実現のためには社員一人ひとりが自ら考えチャレンジできる人物に成長すること、また、個々の適性・能力を最大限発揮できる社内環境であることが重要であると考え、以下の「人材育成方針」と「社内環境整備方針」を策定しております。
「人材育成方針
C&Fロジホールディングスグループは、個人の成長を企業の成長と認識し、社員一人ひとりが自ら考え、環境変化を踏まえ新たな改革にチャレンジし、それぞれが担当する分野で最高のサービスを提供できるプロフェッショナルを育成します。」
「社内環境整備方針
C&Fロジホールディングスグループは、社員一人ひとりが物流で社会を支える誇りと使命感を持ち、個人の適性・能力を最大限発揮できる社内環境を提供します。
また、それぞれの多様性を尊重し、皆が快適で働き甲斐のある社内環境を整備します。」
b)2023年度の具体的な取組事項
・研修制度の充実(階層別研修プログラム増加他)
・職場環境の整備(トラックのオートマチック車両化、多言語での動画マニュアル作成他)
・従業員満足度の把握と向上(エンゲージメントサーベイの実施と対応他)
・女性活躍推進チームの組成と提言(女性のキャリア形成研修への参画、女性制服改善提案、女性に関する制度の周知・活用推進他)
・採用競争力の強化(給与・福利厚生の向上、正社員雇用の促進、グループ一括の採用計画他)
・ビジネスと人権への取組(救済措置の周知・活用推進、人権デュー・ディリジェンスの着手他)
(3) リスク管理
a)気候変動に関するリスク・機会の抽出
当社グループでは、気候変動に関するリスク・機会の抽出に際して、バリューチェーン上のステークホルダー(サプライヤー、自社、顧客)ごとに移行リスクと物理リスクの各観点において検討いたしました。
<移行リスク(1.5℃シナリオ)>
- 政策規制:GHG排出に関する規制強化
- 市場 :エネルギー需給の変化/低炭素製品の需要変化
- 技術 :次世代技術の進展・普及
- 評判 :ステークホルダーの評判変化
<物理リスク(4.0℃シナリオ)>
- 慢性 :地球温暖化による環境変化
- 急性 :自然災害の激甚化
b)気候変動に関するリスク・機会の評価
当社グループでは、抽出したリスク・機会について、想定される事業への影響度の大きさと、その発現の可能性の2つの視点で評価・識別いたしました。
想定される影響度の大きさ
想定される発現可能性
(4) 指標及び目標
① 気候変動に関する指標及び目標
当社グループは気候変動に関するリスク・機会を管理していくため、次のようにCО2排出量の削減目標を定め、実績を把握しております。
a)目標値
削減目標の対象は、まずは自ら管理可能であるScope1・2とし、その達成目標年度は日本の排出削減目標に合わせて2030年度といたしました。また削減目標値はNear-term SBTに基づき1.5℃水準で毎期基準年度排出量の4.2%削減を満たす値を設定いたしました。(注) 1・2
b)実績及び見込値 (注) 3・4 (単位:t-CO2e、%)
c)参考値 (注) 3・4 (単位:t-CO2e、%)
(注) 1.SBT(Science Based Targets)パリ協定が求める水準と合致した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標
2.基準年はSBTが推奨する直近年度にあたる2021年度としております。
3.査定対象は各年度(4~3月)の当社及び国内関係会社13社の合計。
4.Scope1・2・3の査定方法は「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の査定に関する基本ガイドライン(Ver.2.6)」「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.4)」及び当社算定手順書に準拠。
5.2021年度及び2022年度の排出量実績については、一般社団法人日本能率協会地球温暖化対策センターの検証を受け、限定的保証を受けております。
6.2023年度の見込値は前年度の算定方法に基づき当社が独自に判断した値であり、前年度同様に第三者機関の検証を受ける予定です。検証の結果、値に変更が生じた場合は、速やかに当社ホームページにて開示を行います。
② 人的資本に関する指標及び目標
(注) 1.対象は提出会社及び連結国内子会社であります。
2.対象は提出会社及び連結子会社であります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
[リスク管理の方針]
当社は企業価値の向上、資産の保全、事業の継続、ステークホルダーの信頼維持を目的として、事業活動を展開しております。それに対して予見することの難しい影響を、事業上のリスクととらえ、それが生じた際にもたらす脅威を低減し、また機会を獲得するため、取締役会自らが組織を指揮統制するリスクマネジメントを行っております。
[リスク管理の体制]
有効なリスクマネジメントを行うため、当社は取締役会の諮問機関として「リスク管理委員会」を設置し、「リスク管理委員会規程」を定め、当社グループ全体または横断的に潜在するリスクの識別、評価、対応策の検討、実施した対応策のモニタリングを行い、取締役会へ定期的に報告いたします。
取締役会では、リスク管理委員会の報告を受け、リスク対応を協議・承認し、各事業・各部門へその実行を指示いたします。その際、リスク対応策の実行性を高めるため、必要性に応じて、実行責任者や管轄部門を選定し、規程やマニュアルなど統制システムの整備を指示いたします。
監査等委員会では、当社のリスクマネジメント活動全体が有効に機能しているかを監査いたします。また監査室では、各事業・各部門への内部監査の一環として、リスク対応策の実行性を監査いたします。

[リスクの特定]
当社グループが展開する事業領域と地域において、また当社グループが重点的に取り組むべき課題として特定した5つのマテリアリティ(重要課題)において、想定されうる潜在的リスク及び過去に顕在化したリスクを考慮し、リスクの洗い出しを行いました。
それらを類似性や関連性により6つのカテゴリーに分類し、30のリスクとして特定いたしました。
[リスクの分析]
特定したリスクに対し、当社グループにおける具体的な影響度と対応策を分析し、その重要度を図るため、当社グループの上級管理職を対象にアンケートを実施いたしました。
アンケートでは具体的なリスクごとに対し、「発生可能性」「影響度」「想定される具体的な影響」「有効な対応策」を挙げてもらい、582件の回答を得ました。
発生可能性と影響度はそれぞれ4段階で評価し採点。その際、影響度は傾斜配点といたしました。
[リスクの評価]
アンケートで挙げられたリスクごとにその「発生可能性」と「影響度」の平均点を算出し、それらを乗じた得点から、各リスクの重要性を一次評価といたしました。
一次評価の結果において、重要性が軽微なリスクを除き、内容が重複するリスクについては他のリスクと併合するなどし、結果22のリスクとして評価を行いました。

リスク評価の結果、当社グループにとって、甚大なリスク(発生可能性が高く、かつ事業継続が不可能)の発現は想定されないものの、重要なリスクや中程度のリスクが多数潜在していることが分かりました。
具体的には重要なリスクは5つ「人員・人材不足」「異常気象・大規模自然災害」「事故・火災等」「システム障害」「事業用資産・回収可能性」、中程度なリスクのうち、発生可能性の高いリスクは4つ「人材の育成不足」「労務課題」「業務サービスの品質低下」「役職員の不正」、また影響度の高いリスクは2つ「カントリーリスク」「M&A・事業提携」が挙げられました。
リスク評価結果を分布図で表示

[リスクの影響度と対応策]
リスク評価の結果、重要なリスクと、中程度のリスクのうち発生可能性もしくは影響度の高いリスクの具体的な影響と対応策を下表にまとめました。
また事業活動とは別に、当社グループが保有する資産の価値変動に対するリスクは、その発生可能性などの評価に関わらず、当社グループに影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い社会活動が本格的に再開する一方で、不安定な国際情勢等を背景とした原材料・エネルギー価格の高止まりや、円安の更なる進展、人件費の高騰等に伴う継続的な物価上昇の中、個人消費は伸び悩み、景気は依然として不透明な状況が続いております。
当社グループが主軸をおく低温食品物流業界におきましては、食品メーカーを中心にコスト増加に対応した価格改定が進捗する中、消費者においては節約志向や選別消費の傾向が根強く、市販用冷凍冷蔵食品の取扱物量は伸び悩みの状況が続いている一方で、人流の活性化に伴い、業務用食品の取扱物量は回復傾向にあります。
このような社会・経済環境の変化を踏まえ、当社グループは、2022年4月より第三次中期経営計画(2022年度~2024年度)を推進しております。基本方針として「新たなコールドチェーンのニーズをつなぐ持続可能な低温物流の実現」を掲げ、成長著しいEC関連物流や医薬品物流といった新規事業の拡大、新規拠点の設立をはじめとした既存物流事業の強靭化に取り組んでまいりました。
また、低温商材の流通チャネルの多様化などの環境変化を踏まえ、2023年6月16日に開示しましたとおり、第三次中期経営計画(2022年度~2024年度)につきまして、2025年度を最終年度とする3カ年計画として見直しを実施いたしました。当社グループが誇るチルド・フローズンの物流機能を通じ、食のライフラインの維持と豊かな社会の実現を達成するための各種施策の展開は当初計画通り継続しつつ、以下の項目を重要施策として追加し、これらを実現するために、約100億円の追加投資を実施してまいります。
① サステナビリティ関連として、環境対策に資する新技術の開発とその導入及び省力化・省人化による生産性の向上にかかる投資
② 成長分野(海外・EC・医薬品等)における投資の促進や他社との協業・提携なども視野に入れた成長スピードの加速
③ 既存事業の強靭化に資するM&Aなどを活用した更なる収益力の強化と事業の拡大
以上の結果、当連結会計年度の業績につきましては、営業収益は1,160億28百万円(前年同期比2.4%増)、営業利益は47億77百万円(前年同期比8.5%増)、経常利益は51億94百万円(前年同期比5.3%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、32億83百万円(前年同期比7.4%増)となりました。
セグメント別の経営成績を示すと、次のとおりであります。
a.TC事業(通過型センター事業)
コンビニエンスストアや量販店におけるチルド食品の取扱物量の回復は緩やかではあったものの、コストアップに応じた適正料金の収受に加え、新規業務の獲得やEC関連物流業務の拡大により、営業収益は743億53百万円(前年同期比2.7%増)となりました。
セグメント利益につきましては、従業員の処遇改善や正社員化促進ならびに人員確保を背景とした労務費の増加や、燃油単価の高騰による燃料費の増加があったものの、車両メーカーの供給体制に起因する買い替えの遅延などが営業原価の上昇を抑制したこと、また成長分野を含めた収益性の高い業務の取込・拡大が利益を押し上げたことで、42億16百万円(前年同期比23.3%増)となりました。
b.DC事業(保管在庫型物流事業)
市販用冷凍食品の出庫物量が低調に推移したこと、ならびに一部取引先の物流再編の影響による減収要因はあったものの、業務用冷凍食品の物量回復や、コストアップに応じた適正料金の収受、前期中に稼働開始した物流施設における物量増加により、営業収益は396億99百万円(前年同期比1.3%増)となりました。
セグメント利益につきましては、電力契約変更などによる動力費の減少はあったものの、人員確保に伴う労務費の増加や新規物流施設稼働に伴う償却負担増加等により、46億70百万円(前年同期比7.7%減)となりました。
c.その他
警備輸送業・病院等関連物流業・人材派遣業・保険代理店業等により営業収益は19億75百万円(前年同期比9.5%増)、セグメント利益は2億9百万円(前年同期比24.1%増)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ42億46百万円増加し124億14百万円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた「資金」は、81億23百万円(前年同期 90億51百万円の資金の獲得)となりました。
これは主に、「税金等調整前当期純利益」及び「減価償却費」等、資金の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用された「資金」は、80億67百万円(前年同期 58億32百万円の資金の使用)となりました。
これは主に、「有形固定資産の取得による支出」等、資金の減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた「資金」は、41億89百万円(前年同期 8億78百万円の資金の使用)となりました。
これは主に、「自己株式の取得による支出」等、資金の減少はあるものの、「長期借入れによる収入」等、資金の増加によるものであります。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を払っているすべての負債を対象としております。また利払いについては連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
a.営業収益実績
当連結会計年度の営業収益実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、当社グループの事業内容は、輸配送、保管、荷役等の物流サービスであり、生産、受注及び販売に該当する金額あるいは数量は開示しておりません。
(注) 1.金額はセグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.主要受託先別の営業収益実績及び当該営業収益実績の総営業収益実績に対する割合は次のとおりであります。
b.外注実績
当社グループは、保管・荷役及び輸配送等の一部を外注に依存しております。
当連結会計年度における外注実績をセグメントに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.外注比率は事業の種類別セグメントの営業収益実績に対する外注実績の割合であります。
2.外注内容は主に外注配送、外注倉庫、外注荷役、外注委託作業であります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用した重要な会計方針等につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表(注記事項)(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載し、会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表(注記事項)(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当連結会計年度における営業収益は、食品メーカーを中心にコスト増加に対応した価格改定が進捗する中、消費者においては節約志向や選別消費の傾向が根強く、市販用冷凍冷蔵食品の取扱物量は伸び悩みの状況が続いている一方で、人流の活性化に伴う業務用食品の取扱物量の回復傾向により、1,160億28百万円(前年同期比2.4%増)となりました。各報告セグメントの外部顧客に対する営業収益に占める割合は、TC事業64.1%、DC事業34.2%、その他1.7%となりました。
財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ141億55百万円増加し1,055億6百万円となりました。このうち流動資産につきましては、前連結会計年度末に比べ63億70百万円増加し275億59百万円となりました。これは主に現金及び預金が42億46百万円増加したことなどによるものであります。また、固定資産につきましては、前連結会計年度末に比べ77億84百万円増加し779億47百万円となりました。これは主に建物及び構築物(純額)が61億2百万円、リース資産(純額)が17億円増加したことなどによるものであります。
(負債)
負債は、前連結会計年度末に比べ150億1百万円増加し587億5百万円となりました。このうち流動負債につきましては、前連結会計年度末に比べ41億63百万円増加し211億57百万円となりました。これは主に短期借入金が5億87百万円、1年内返済予定長期借入金が9億83百万円、その他で19億17百万円増加したことなどによるものであります。また、固定負債につきましては、前連結会計年度末に比べ108億38百万円増加し375億47百万円となりました。これは主に長期借入金が89億89百万円、リース債務が19億52百万円増加したことなどによるものであります。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度末に比べ8億46百万円減少し468億1百万円となり、自己資本比率は43.5%となりました。
キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、労務費、外注費であります。投資を目的とした資金需要は、設備等によるものであります。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本としており、設備投資につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入金を基本としております。
資金需要を満たすための資金は、原則として、営業活動によるキャッシュ・フローを財源としますが、巨額の資金需要に対応する場合等は、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保及び財務の健全性・安定性を維持するため、金融機関等から借入等を行う方針であります。資金調達を行う際は、期間や国内の市場金利動向等、また自己資本比率、DEレシオ(負債資本倍率)やROEといった財務指標への影響度等を総合的に勘案しながら、最適な調達を実施しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。