(1) 経営の基本方針
当社グループは、『グローバルな市場で選ばれる電解銅箔メーカーとして、永続的な発展を目指します。』を経営理念とし、経営ビジョンには以下の事項を掲げております。
当社グループでは、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、生産数量(㌧数)、営業利益及びEBITDAであります。
生産数量(㌧数)は、当社グループの生産販売活動の進捗状況について、銅価格の騰落による影響額を除外して把握するための指標として重視しております。また、当社グループの収益獲得状況を測る基礎的な指標として営業利益を、当社グループは生産設備を多数保有しているため、減価償却費や金利負担等の影響を補正した経営指標としてEBITDAを重視しております。
EBITDAは、以下の計算式により算定しております。
● EBITDA = 営業利益 + 減価償却費
2024年度の目標値は生産数量9,500㌧、営業利益0百万円、EBITDA1,200百万円としております。当該KPIの各数値については有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
(主要製品の内容)
当社グループは、硫酸銅を主成分とする電解液から電気分解により析出した金属銅を、薄膜状の銅箔に生成加工する電解銅箔製造事業を営んでおります。
当社の製品には、車載電池用銅箔と回路基板用銅箔があり、車載電池用銅箔は、電動自動車に搭載されるLIBの素材に、回路基板用銅箔は、スマートフォン等の電子機器に実装する回路基板の素材等に使用されております。
(市場の状況)
当社で製造する銅箔製品は、主としてBEV(Battery Electric Vehicle)やHEV(Hybrid Electric Vehicle)に搭載されるLIB(Lithium Ion Battery)の素材、スマートフォン、携帯端末等の高速通信デバイスを含む電子機器に実装する回路基板の素材等に使用されています。これらの用途における市場動向等は以下のとおりです。
車載電池用市場においては、主要各国におけるカーボンニュートラル(実質二酸化炭素排出量ゼロ)導入・強化の動きが後押しとなり、xEV(BEV、HEV、PHEV等の総称)と呼ばれる、電動モーターを動力源とする電動自動車の市場は拡大してきました。また、次世代LIB等の様々なLIBで用途に適した新しい銅箔製品が求められています。
世界的なカーボンニュートラルの流れの中、自動車の2023年世界販売に占めるBEV、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)及びHEVの電気自動車比率は約23%まで拡大し、前年からの増加率は減少したものの、増加傾向を維持しています。中国におけるBEV販売台数が堅調に推移する一方、欧州では増加率が鈍化し、米国ではインフレ抑制法(IRA法)の成立に伴った初期需要が一巡したことやインフレによる金利上昇などの影響で、増加率が減少しました。LIBの負極集電体には一部の種類を除いて電解銅箔が使用されており、全世界におけるxEVの需要拡大は減速傾向がみられるものの、車載電池用銅箔の需要は2022年から2035年にかけて世界市場年平均11.8%(株式会社富士経済「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望 2023 電動自動車・車載電池分野編」をもとに当社で試算)の成長が予測されています。
今後、電動自動車に搭載するLIBにおいては、液体有機系電解質を用いる液系LIBの需要が拡大する中、LIBに使用されるリチウム、ニッケル、コバルト等の金属元素の価格変動、資源逼迫リスクが顕在化し、省資源化と代替素材の開発が進んでいます。また、次世代マーケットに向けた全固体電池等の次世代電池の技術開発も加速されています。
回路基板用市場においては、第5世代移動通信システム(5G)に代表される高速通信が2020年春より順次開始され、対応する基地局や電子機器端末の普及が進んでおり、今後、電子機器の高性能化、通信機器の5Gへのシフトが急速に進むことで、5Gや高周波HDI(High Density Interconnection:高密度相互接続)等のニーズに適合する銅箔製品が求められることが予想されます。高速通信の適用により、自動運転技術や遠隔医療等の社会インフラや、VR(Virtual Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:人が知覚する現実環境をコンピュータ技術により拡張する拡張現実)等の領域への応用も進んでいます。
また、新型コロナウイルス対策によるWeb会議、テレワークの浸透で、関連する電子機器の需要が急速に高まっており、今後数年間は基地局や5G対応の移動体通信端末等の需要が高機能回路基板市場を牽引することが予想されます。
さらに自動車の運転支援技術、自動運転の開発と普及が進み、自動運転レベル4(高度運転自動化)対応モデルが実用化されつつあり、ADAS(Advanced driver-assistance systems:先進運転支援システム)や自動運転機能に対応するレーダー、超音波センサー、カメラ、レーザー及びLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging:レーザー画像検出と測距)等の電子機器に実装する高機能回路基板の更なる需要が期待されております。
(競合他社との競争優位性)
当社の車載電池用銅箔、回路基板用銅箔ともに、国内外の銅箔メーカーの製品と競合する分野がありますが、当社では、銅箔の機械特性や表面処理の独自技術を付与することで、品質や性能の高さを最大の差別化要因として製品の競合を回避しております。今後も高品質の製品を開発していくことにより製品の競争力を確保する方針です。
当社グループでは、今後の更なる成長を実現するため、今後の事業方針として①高付加価値分野へのシフト、②技術力の更なる強化、③連結子会社との事業シナジー拡大を掲げております。
①の高付加価値分野へのシフトについては、当社の技術優位性と品質・信頼性が活かせる高性能車載電池用銅箔や高速通信分野をターゲットにした高周波基板用銅箔に注力し、収益性の高い製品の販売比率向上を目指します。
②の技術力の更なる強化については、プロセス技術開発の推進を通じ、製品の更なる品質向上や生産効率改善によるコスト競争力確保に努めてまいります。また、並行して、今後の市場ニーズに適合する製品の開発も推進します。車載電池用銅箔においては、先進LIBや全固体電池等の次世代LIBの要求特性に適合した機械特性や表面処理に特徴を有する製品の開発及び市場投入、回路基板用銅箔においては、高速通信や高密度実装領域をターゲットとした製品の開発及び市場投入を継続的に進めます。
③の連結子会社との事業シナジー拡大については、全世界におけるxEVの需要拡大は減速傾向がみられるものの、長期的には自動車産業界において電動自動車シフトが継続的に進み、車載用LIB向けの銅箔需要が世界的に高まることが見込まれていることから、今後、連結子会社にて車載電池用銅箔の生産開始に向けた体制の整備を進め、当社及び連結子会社より車載電池用銅箔が供給できる体制を推進します。また需要に応じた生産能力の検討を進めます。連結子会社は、米国で長年の生産実績を有する電解銅箔メーカーであるとともに、顧客であるLIBセルメーカーが新規工場を米国内に建設している状況であることから、その立地条件を活かして、米国市場への製品供給を進めます。
このほか、当社が製造する回路基板用銅箔について、連結子会社が有する顧客基盤を通じた輸出販売を促進すること、連結子会社が製造する汎用箔の品質向上のため当社より技術支援を行うことに取り組むとともに、LCY Technology Corporation及びLee Chang Yung Group International Pte. Ltd.との2024年1月10日付けの業務提携契約に基づき、LCY Technology Corporationとの地理的顧客ポートフォリオの相互補完と拡大、回路基板分野での技術協力を進め、シナジーの創出をはかってまいります。
またESGへの取り組みとして、当社の事業活動を通じて、脱炭素社会・循環型社会の実現に取り組みます。
当社においては、銅材料の100%再利用及び車載電池用銅箔によるxEV普及への寄与を通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。
● 地球温暖化対策は喫緊の課題であり、脱炭素社会の実現が求められています。当社グループでは、車載電池用銅箔の供給及び高品質化による電気自動車の更なる普及に寄与することを通じて、脱炭素社会の実現に貢献します。
● 当社グループでは、銅箔の原材料となる銅材料はすべてリサイクル品を使用しており、また製造過程で発生する銅箔屑もリサイクルし、限りある資源を有効活用する、持続可能な社会の実現に貢献します。
当社グループは、前連結会計年度に続き、当連結会計年度においても重要な営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上いたしました。また、当連結会計年度末において、手元資金と比べて短期借入金及び1年内返済予定の長期借入金の残高の水準が高いことから、当該借入金の返済が困難な状況にあります。
これらの状況により、当社グループは継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
このような状況に対し、当社グループでは、当該事象又は状況の解消に向け、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (18) 継続企業の前提に関する重要事象等」に記載した対応策の実施により、収益性の向上や財務体質の改善及び強化を図ってまいります。
また、当社グループでは、以下の重要課題にも取り組んでまいります。
(新製品の開発)
当社グループでは、「未来に貢献する銅箔の製品化」を開発の基本方針とし、市場ニーズや技術動向を先取りした製品開発に取り組み、次世代LIB及び高機能回路基板に対応する新製品の開発を推進しております。
車載電池用銅箔においては、高容量LIBや全固体電池等の次世代LIBの要求特性に適合した、薄箔化や機械特性及び表面処理に特徴を有する銅箔の開発及び市場投入、回路基板用銅箔においては、5Gに代表される高速通信及び高密度実装などの付加価値の高い領域に適した製品の開発及び市場投入を継続的に進めてまいります。
(内部管理体制の強化)
当社グループは、経営の健全性、実効性及び透明性を確保し、持続的な成長及び中長期的な企業価値の向上を通じて社会から信頼される企業となるため、コンプライアンスの徹底を図るとともにコーポレート・ガバナンスの充実に努めます。特に、グループ全体のリスク管理機能強化を重要課題として捉え、子会社を含めた内部監査の充実等の施策を適時実施いたします。
(人材の育成)
当社グループの経営理念や経営ビジョンを達成し、持続可能な企業価値の向上を実現するために、人材の育成が重要な課題であると認識しております。
当社では、多様な働き方の中で競争力を持った組織運営を行い、社員一人ひとりの『個人の成長』と『会社の成長』を実現させるため、育児休業やリモートワーク、フレックスタイム制度の導入等により多様な働き方を支援するとともに、人材育成教育等により個人の育成を通じた組織力向上を図っております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、様々な要因により実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループは、経営理念である「グローバルな市場で選ばれる電解銅箔メーカーとして、永続的な発展を目指します。」のもと、持続的な成長と企業価値向上のため、ESG等の社会的要請への視点を導入したガバナンスへの取組みと環境への配慮が一体となったサステナビリティ経営を推進いたします。
当社では、経営理念に基づき、持続可能な企業価値の向上を実現し、気候変動への適切な対応や人的資本の向上といったサステナビリティ課題への対処に向けて、サステナビリティリスクに係る重要課題及び目標について、以下の体制により、取締役会に報告し、取締役会にて審議・監督することで当社グループのサステナビリティに対する取組みを推進していくとともに、ガバナンス体制の強化を目指してまいります。

①気候変動への対応
当社の掲げる環境方針の基本理念「持続可能性に向けた循環型社会を形成することを会社経営の最重要課題の一つと位置づけ、グローバルに展開する当社の事業活動において、資源の効率的な利用、ならびに地球にやさしいエネルギーへの転換を図っていきます。」のもと、原材料の調達から生産・物流・適正処理・顧客製品のリサイクルに至る全ライフサイクルにおける環境負荷低減を目指したモノづくり、環境に配慮した事業活動を推進します。具体的な取組みは以下のとおりです。
a. カーボンフットプリントに向けた取組み
2050年におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、計画的にCO2量削減を行うことが必要であり、蓄電池用銅箔や基板用銅箔において、原料サプライヤーやお客様とも連携してサプライチェーン全体のカーボンフットプリント評価とその削減ロードマップの明確化が求められています。当社では、中間目標として、2030年におけるCO2排出削減量の目標、ならびに2030年までの削減ロードマップの策定を進めております。
b. 資源循環型システム構築
国内で使用された蓄電池リサイクルの一端を担うべく、蓄電池リサイクル企業と共同して、銅集電体のリサイクル技術の検討を開始しました。
回収された銅集電体屑を用いて、新たに集電体用銅箔へとリサイクルすることで、環境にやさしく、資源調達リスクへ対応した資源循環型システム構築を目指しています。
②人的資本
当社はサステナビリティに関する課題解決を重要課題と認識しており、当社の経営理念・経営ビジョンを達成するためその中でも人財の価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値向上へ直結する人的資本経営に注力します。
また、変化する環境や顧客ニーズに対応し当社が成長し続けるために、人材育成委員会を中心に若手層から管理職層に対し幅広い育成機会を提供しております。
当社における、多様な働き方を実現する取組み、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針、持続的成長に向けた多様な働き方を実現する取組みは、以下のとおりであります。
経営ビジョン「広く世界に目を向け多様性を尊重し、社会から信頼される企業市民を目指します。」を実現するため、多様な人財の能力発揮を目指した職場環境作りを実施します。
a. グローバル人財の育成
米国の連結子会社(現Denkai America, Inc.)の取得に伴い、現地スタッフと活発にコミュニケーションを行い業務遂行するグローバル人財の育成が急務となりました。社内研修や現地スタッフとの業務交流を通じて、異文化理解をはじめ主体性と積極性を身につけた自律型人財の育成を実施しています。
b. 柔軟な働き方の実現によるダイバーシティ推進
リモートワーク勤務制度の導入、フレックスタイム勤務制度や時間単位年次有給休暇制度の整備など、時間や場所にとらわれない多様で柔軟な働き方を可能とした環境を整備しています。
c. グローバル人財の育成ボランティア休暇の新設
ボランティア活動を通じて社会還元する選択肢を増やすとともに、ボランティア活動を通じた社内外のネットワーク構築、社会参加による人的成長、コミュニケーション能力・リーダーシップの向上を期待し、ボランティア活動の促進を図るためボランティア休暇を新設しました。
経営ビジョン「技術のパイオニアたるプライドを持って先端技術を探求し、研究開発に愚直に取り組みます。」を実現するため、深い知識や経験を咀嚼し新しい価値のある知識の醸成を引き出す仕組みを構築します。
a. 専門人財の育成
部門横断的に専門的な知識を吸収する教育の場を提供するため「モノづくり部会」を中心に製造系従業員を対象とした、モノづくりに特化した研修を実施しています。同時に、品質に関し、顧客視点で高品質高機能の製品を提供できる従業員の意識啓発を図るべく「品質実務教育」を行っています。また、専門人財を育成するための機能を人事制度へ盛り込むべく、人財棚卸を実施し、組織設計や人財配置に反映しています。
b. 全社研修の充実化
専門性を身につけ、研究開発における成果へ結びつけるためには、業務の意味や目的を考え「問い」を立て試行錯誤することが不可欠です。「問い」を立てる具体的なロジックを学び日常業務に活かすため、全社教育として「論点研修」を導入しました。
また、行動変容研修による能力サーベイを定期的に実施し、行動目標の指標としながら個人が常に進化し続ける契機としています。
c. 産学連携体制の整備
市場ニーズの探求と銅箔製造技術向上のため、教育機関との産学連携に取り組んでいます。
経営ビジョン「個性や人格を認め合い、健康と安全に配慮した働きがいのある職場環境を創出します。」を実現するため、以下の施策を実施しております。
a. 健康経営
全社員が常に健康な状態を維持し、能力を最大限に発揮し業務にあたることを経営の重要課題の一つと認識し、職場の健康づくりに取り組む環境を整え、健康保険組合東京連合会の健康優良企業認定である「金の認定」取得に向け申請を行い、健康企業宣言を行っています。
b. 従業員エンゲージメント
中期的な組織力の維持・向上を目指し、当社にとって重要なエンゲージメント項目を整理し、ストレスチェックやエンプロイサーベイの実施により従業員のエンゲージメントレベルを定期的に把握しています。また、全社的に表彰する「社長賞」による表彰を実施することで従業員のモチベーション向上を図るとともに、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い代表取締役社長と従業員が直接コミュニケーションを図る機会として、ランチョンミーティングを再開しました。
c. デジタル化の推進
デジタル化により従業員の定型業務を自動化して負担を軽減し、また、在宅勤務が可能な環境を整備しました。具体的には、RPAを利用した業務効率化、社内イントラネットの充実等コミュニケーションのデジタル化、ワークフローを活用した社内決裁の簡素化等を促進しています。結果として、組織と個人の生産性向上にも貢献しています。
①気候変動への対応
気候変動リスク低減のため、リスクの把握・分析をリスク管理委員会で実施し、リスクの重要性を定期的に評価しています。環境・社会への影響が懸念される特定の事項については、環境管理委員会とリスク管理委員会が連携し、対象となる事業の環境・社会に対するリスク又は影響を特定し、評価するプロセスを導入しています。環境・社会にかかる機会及びリスクへの対応方針・取組み状況は、テーマに応じて各種委員会・各部門においても審議・報告を行っています。各委員会の審議内容は部長会議への報告後、取締役会において報告・審議され、取締役会が環境・社会課題に関するリスクを監督する体制としています。
②人的資本
人財育成は、代表取締役社長を委員長とする「人材育成委員会」にて教育・人材育成推進の企画立案及び実行を行なっております。「人材育成委員会」の下に3つの部会(安全・衛生教育部会、モノづくり部会、品質実践部会)を設置し、継続的な教育を通じて従業員の意識・知識・力量の向上に取り組んでおります。人財戦略は、常勤取締役及び執行役員を委員とする「人事案件審議会」にて組織改編・人員計画や人事施策の新設等、具体的な課題や施策に関する検討と進捗状況の共有を行っています。人的資本に関わる課題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクとして位置づけ、内部監査室による定期監査のもと、適切に管理しています。
当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
当社グループの事業内容、経営成績及び財政状態等に関するリスク要因について、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。
なお、以下に記載したリスクは、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。また、本項における将来に関する事項については、本書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループにおいて合理的であると判断したものであります。
事業活動にかかるもの
(1) エネルギー・資源価格について
当社グループの生産活動において、エネルギー・資源価格の高騰は、製造コストの上昇につながります。特に、電力料金の高騰は、当社グループのすべての製品において製造コストの上昇につながり、当該上昇を反映した販売価格設定や製造現場における生産効率化の対応が計画通りに進まない場合には、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 銅材料価格について
当社グループの製品は、純度の高い銅材料を主原料としております。銅材料の仕入価格は、国際商品市場における銅価格に基づき決定されるため、市況変動による影響を受けます。
当社グループでは、主要顧客との営業取引において、銅の相場価格を基準として販売価格を決定する「銅価スライド制」を導入し、銅材料価格の変動リスク回避に努めておりますが、実際に銅価格が変動してから販売価格に反映されるまでに数か月程度のタイムラグがあり、必ずしも価格変動リスクが全て回避できる訳ではありません。
銅材料価格の変動に対応しきれない場合には、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの販売活動において、一部の在外顧客への販売は外貨建てにより行っております。当社では、外貨建ての債権債務が発生した場合や、在外子会社への投資を実行する場合には、為替予約の実行等により為替変動リスクをヘッジしております。
また決算時においては、当社及び在外子会社の外貨建て資産、負債、収益並びに費用は、為替換算ルールに基づき各々円貨換算されます。その円貨換算額は、為替換算レートに応じて増減するため、為替相場の状況によっては、当社グループの財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの主要販売先のうち、パナソニックグループへの販売実績における総販売実績に占める割合は、前連結会計年度及び当連結会計年度共に約5割強を占める状況にあります。最近2連結会計年度における同社への販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は下表のとおりです。
(注)パナソニック㈱は、2022年4月1日より事業会社制に移行しております。
現時点において、上記取引先との関係は良好であり、今後も友好的関係を維持し、安定的な取引関係を継続する方針ですが、今後将来の時点において、何らかの理由により受注数量の減少や、取引条件の変更等が生じた場合には、今後の事業運営や経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、今後の成長が見込まれる高付加価値領域や、海外顧客の獲得も視野に入れた販路拡大に取り組むことにより、特定の取引先への取引依存度を順次低減させる方針です。
当社グループの製品は日本及び米国で生産され、日本、米国、欧州並びにアジアで消費されます。これらの国又は地域における経済活動や景気変動の状況、政治、政策及び社会情勢に関する動向は、当社グループ製品の需要や生産・販売動向に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが主要業務として手掛ける電解銅箔製造事業に対する固有の法的規制はありませんが、本社工場の設置や操業に関わる法令として、工場立地法、水質汚濁防止法、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律、電気事業法、エネルギーの使用の合理化等に関する法律等があります。これらの規制については、環境保全や生体系への影響に対する世界的な意識の高まりを受け、年々厳格化される傾向にあり、今後将来の時点において、法令の改正内容によっては当社グループの事業活動が制約を受け、ないしはその対策費用の発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、顧客の求める品質で製品を安定的に供給することを基本方針としております。そのため、品質マネジメントシステムの認証取得に基づく品質保証体制を確立し、その維持及び継続的な改善による品質管理に万全を期しております。しかしながら万が一、品質不良、品質事故等が発生した場合には、対応コストの発生や当社グループの製品に対する評価の低下により、今後の経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
当社グループの製品販売先の一つである電子機器業界は、技術的な進歩が急速であり、当社グループでは常に技術革新に対応できる最先端の製品開発に努めております。しかしながら、当社グループが顧客企業又は市場のニーズにマッチした製品をタイムリーに提供できない場合、もしくは競合他社が先んじて製品を開発した場合には、当社グループの製品の競争力が鈍化し、今後の経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、製品の技術的優位を確保するため、当社グループ独自の技術やノウハウ等については特許等の出願による保護を図っております。
当社グループでは、保有する知的財産権の管理を厳正に行っており、また他者の知的財産権を侵害することがないよう充分に留意しておりますが、今後将来の時点において、当社グループの技術やノウハウ等を模倣した不正製品が流通した場合や、知的財産を巡って他社との紛争が生じた場合には、当社グループの製品の競争力低下等により、今後の経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
当社グループでは、更なる回路基板用銅箔の需要獲得のため、5G、高周波領域の分野におけるニーズをとらえ、市場開拓や新製品開発に取り組む方針です。しかしながら当該分野は、市場ニーズや技術動向は急速に変化する可能性があり、また市場拡大スピードや成長規模によっては、当社グループが想定通りに収益等を獲得できない可能性もあります。このような場合には、今後の経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
当社グループは、製造現場を擁する企業として、安全確保と環境保全については事業運営上、最も重視すべき事項のひとつと認識し、設備保全や生産技術の改善、管理体制の強化、さらに役員及び社員を対象とした教育研修の実施等を通じて、安全かつ安定的な操業の維持と環境保全に万全を期しております。しかしながら、ひとたび操業中の事故、輸送・外部保管中の事故、化学薬品の漏出等が発生した場合には、操業の停止、対策コストの発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
当社グループでは、顧客情報をはじめ、事業運営にかかる多種の機密情報を有しております。その情報資産を適切に管理するため、社内システムへのセキュリティ対策を講じるとともに、情報管理に関する社内規則等を整備し、役員及び社員への教育研修を通じ情報管理の重要性を周知徹底しております。しかしながら、外部者によるハッキングあるいは、役員又は社員の過失等により不測の情報漏洩が発生した場合には、信用失墜による営業機会の喪失や損害賠償費用の発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループは、持続的成長を実現すべく、多様で優秀な人材の採用、育成に努めております。しかしながら、雇用情勢の悪化等により、必要な人材を確保できない場合には、今後の事業活動に制約が生じ、今後の財政状態や経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
当社グループは、より高度な付加価値サービスの提供や海外の製造拠点を確保するため、同業他社に対するM&Aや戦略的事業提携を行うことも、事業戦略上の選択肢の一つと認識しております。
M&Aや事業提携の個別案件については、事前に充分な検討や資産査定を行い、各種リスク要因の低減に努める方針ですが、事前に想定されなかった事象が発生した場合、又はM&Aや事業提携に見合う効果が創出されなかった場合には、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、保有する資産を有効活用し、効用等の最大化に努めております。しかしながら、当社グループが保有する資産の一部に事業等の用途に供していないものもあり、これら遊休資産については減損会計を適用しております。今後将来の時点において、経営環境が著しく悪化し、収益性の低下や市場価格の下落等により減損処理が必要となる場合には、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、運転資金や設備資金の一部を金融機関からの借入により調達しております。2024年3月末時点での有利子負債の額(借入金とリース債務の合計)は、13,880百万円(総資産額に占める割合は58.1%)であり、有利子負債への依存度が高い水準にあります。当社グループでは多様な資金調達手段を検討しておりますが、新たな資金調達が困難となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループの借入金の一部には財務制限条項が付されております。当該財務制限条項に抵触した場合、当社グループは期限の利益を喪失し、借入金の一部又は全額の返済を求められることにより、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、収益力の向上等により財務体質の強化を図るとともに、金融機関と財務制限条項の削除及び縮小について、経済環境や当社グループの業績状況を共有した上で、交渉を継続的に行っております。
(17) 設備に関するリスクについて
当社グループは、生産設備の維持更新のための計画的な修繕及び一部交換等を行なっておりますが、大型設備に、重大な故障が生じた場合において、部品の調達等が容易にできないことによる修繕の遅延により、生産活動に重大な支障が生じた場合、当社グループの財政状態や経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループは、前連結会計年度に続き、当連結会計年度においても重要な営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上いたしました。また、当連結会計年度末において、手元資金と比べて短期借入金及び1年内返済予定の長期借入金の残高の水準が高いことから、当該借入金の返済が困難な状況にあります。
これらの状況により、当社グループは継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
このような状況に対し、当社グループでは、当該事象又は状況の解消に向けて、今後の事業方針として(A)高付加価値分野へのシフト、(B)技術力の更なる強化及び(C)価格改定による利幅の改善・製造コスト低減を掲げ、収益性の向上に取り組んでまいります。
(A)の高付加価値分野へのシフトについては、当社の技術優位性と品質・信頼性が活かせる高性能車載電池用銅箔や高速通信分野をターゲットにした高周波基板用銅箔に注力し、収益性の高い製品の販売比率向上を目指します。
(B)の技術力の更なる強化については、プロセス技術開発の推進を通じ、製品の更なる品質向上や生産効率改善によるコスト競争力確保に努めてまいります。また、並行して、今後の市場ニーズに適合する製品の開発も推進します。車載電池用銅箔においては、先進LIBや全固体電池等の次世代LIBの要求特性に適合した機械特性や表面処理に特徴を有する製品の開発及び市場投入、回路基板用銅箔においては、高速通信や高密度実装領域をターゲットとした製品の開発及び市場投入を継続的に進めます。
(C)の価格改定による利幅の改善・製造コスト低減については、適切なマージンを確保するべく、電力価格変動を販売価格に反映する範囲の拡大に継続して取り組むとともに、費用削減に加え、生産現場におけるDX・IoT化の効果刈り取りなどにより製造コスト低減を図ります。
更に、資金面では、当連結会計年度末において財務制限条項に抵触しておりますが、取引先金融機関から期限の利益等の喪失の権利行使をしないことに合意を得ていることから、引き続き金融機関の支援を得られる見通しです。加えて、保有資産の売却や設備投資案件の厳選及び抑制等により、事業及び運転資金の安定的な確保と維持に努めるとともに、財務体質の改善及び強化を図り、運転資本の充実のため、あらゆる資本政策の可能性についても検討しており、その取り組みとして、2024年6月24日付でテックス・テクノロジー株式会社との間で資本業務提携契約を締結しております。なお、詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。
しかしながら、現時点において、当社グループの対応策は実施途上にあり、今後の事業進捗や追加的な資金調達の状況等によっては、当社グループの資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性があるため、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。
偶発的リスクにかかるもの
当社グループでは、地震、落雷、大雨等による不測の生産設備等への被害を防ぐため、防災設備や防災体制の整備、防災訓練の実施等の対策に努め、リスク低減を図っております。しかしながら、これらの対策により自然災害による被害を完全に回避することは困難であり、万一、生産設備等が被災した場合には、操業の停止、対策コストの発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は、以下のとおりであります。
なお、当社グループの事業は、電解銅箔製造事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
当連結会計年度における世界経済は、中東情勢やウクライナ戦争に起因するエネルギー価格高騰やインフレ圧力の高まりにより経済の不安定要因が増し、欧州・中国において弱さが見られるものの、世界貿易の回復や堅調な個人消費を受け、景気は持ち直しの動きが見られました。
米国では、消費者マインドに悪化の兆しが見られつつも、堅調な雇用所得環境が持続し、景気が拡大しました。中国では、米中貿易交渉の影響を受けた中国への直接投資受入れ減少や、住宅販売の不振による不動産市場の停滞により、景気回復のペースは鈍化しました。日本では、令和6年能登半島地震や物価上昇の加速を受け個人消費に足踏みもみられたものの、所得環境の改善が見込まれ全体の景気としては緩やかに回復しました。
車載用リチウムイオン二次電池(LIB)の市場では、初期需要の一巡やローンの金利上昇により、米国において自動車メーカーが掲げた当初の目標に比べ足元の電気自動車(EV)販売は伸び悩み、従前の見通しから減速する状況となりました。回路基板用銅箔の主な市場である電子部品業界では、中国国内での人気スマートフォンの新機種発売を契機に需要が増加し、市場に回復の兆しが見られていますが、高速通信用については伸び悩みが見られています。
このような情勢のなか、当社グループにおける車載電池用分野において、国内では顧客新規工場向けの量産化が開始し販売に貢献したものの、引き続き米国インフレ抑制法(IRA法)の影響により輸出セル用銅箔の需要は低迷しました。回路基板用分野においては、米国子会社における整流器故障により売上は減少しましたが、国内新規顧客において当社銅箔の評価が完了し採用が決定するなど、拡販の成果を挙げつつあります。
収益面においては、前期比で車載電池用の売上高が回復するも、輸出セル用銅箔の需要低迷、整流器故障の影響が大きく、営業利益以下の各段階利益は赤字となりましたが、親会社株主に帰属する当期純損失は、連結子会社の整流器故障に対する受取保険金や新株予約権の行使期間満了による権利消滅に伴う新株予約権戻入益により、赤字幅が縮小しました。
これらの結果、当連結会計年度の生産実績数量(㌧数)は、全品種合計で8,308㌧(前連結会計年度比2.5%減)、売上高は16,650百万円(同2.3%減)、営業損失は1,034百万円(前連結会計年度は営業損失1,611百万円)、経常損失は1,288百万円(前連結会計年度は経常損失1,840百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は874百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失1,933百万円)となりました。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ1,229百万円(前連結会計年度末比5.4%)増加し、23,908百万円となりました。流動資産は主に現金及び預金の減少203百万円、売掛金の減少472百万円、製品の減少46百万円、原材料及び貯蔵品の減少134百万円により764百万円(同8.2%)減少し、8,580百万円となりました。固定資産は主に機械装置及び運搬具の減少512百万円、建設仮勘定の増加2,367百万円により1,993百万円(同14.9%)増加し、15,327百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ1,952百万円(同12.8%)増加し、17,183百万円となりました。流動負債は主に短期借入金の増加1,711百万円、1年内返済予定の長期借入金の増加498百万円により2,658百万円(同28.8%)増加し、11,885百万円となりました。固定負債は主に長期借入金の減少686百万円により706百万円(同11.8%)減少し、5,298百万円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、主に親会社株主に帰属する当期純損失874百万円、為替換算調整勘定の減少24百万円、退職給付に係る調整累計額の増加176百万円により前連結会計年度末に比べ722百万円(同9.7%)減少し、6,724百万円となりました。
以上の結果、自己資本比率は28.1%(前連結会計年度末は32.8%)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ203百万円減少し3,376百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とその主な増減要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果増加した資金は、698百万円となりました(前連結会計年度は697百万円の増加)。これは主に、税金等調整前当期純損失870百万円、減価償却費1,225百万円、売上債権の減少額579百万円、棚卸資産の減少額138百万円、利息の支払額219百万円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果減少した資金は、2,108百万円となりました(前連結会計年度は6,495百万円の減少)。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,101百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果増加した資金は、1,110百万円となりました(前連結会計年度は6,606百万円の増加)。これは主に、短期借入金の純増額1,646百万円、長期借入れによる収入300百万円、長期借入金の返済による支出952百万円があったことによるものです。
(生産の状況)
当社グループの事業は、電解銅箔製造事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。なお、主要品種ごとの第8期連結会計年度における生産実績は下表のとおりです。
(受注の状況)
当社グループの事業は、電解銅箔製造事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。なお、主要品種ごとの第8期連結会計年度における受注実績は下表のとおりです。
(販売の状況)
当社グループの事業は、電解銅箔製造事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。なお、主要品種ごとの第8期連結会計年度における販売実績は下表のとおりです。
なお、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は下表のとおりです。
(注)1.パナソニック㈱は、2022年4月1日より事業会社制に移行しております。
2.当連結会計年度のIsolaグループに対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成しております。この作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
a.経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高を主要品種ごとに見ると、車載電池用銅箔は、米国インフレ抑制法(IRA法)の影響により輸出セル用銅箔の需要は低迷しましたが、一方、国内では顧客新規工場向けの量産化が開始し販売に貢献したこと等により、品種別生産実績(㌧数)は6,709㌧(前連結会計年度比6.9%増)、品種別売上高は12,542百万円(同10.8%増)となりました。
回路基板用銅箔は、主に米国子会社における整流器故障により、品種別生産実績(㌧数)は1,599㌧(同28.7%減)、品種別売上高は4,108百万円(同28.3%減)となりました。
これらを合せて生産実績合計は8,308㌧(同2.5%減)、売上高合計は16,650百万円(同2.3%減)となりました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は16,460百万円(同2.9%減)となりました。
当社において銅材料価格高騰の影響が大きかったものの、エネルギー価格の低下や生産工程における効率化や経費削減の取り組みを実施したこと等により、売上高原価率は98.9%(同0.5ポイント減)となりました。
その結果、当連結会計年度の売上総利益は190百万円(同82.6%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は1,224百万円(同28.6%減)となりました。連結子会社において前期に発生した一過性の費用である米国新工場建設関連費用の発生がなくなったこと等により、売上高販管費比率は7.4%(同2.7ポイント減)となりました。
これらの結果、営業損失は1,034百万円(前連結会計年度は営業損失1,611百万円)となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は730百万円となりました。これは主として、屑売却収入36百万円、為替差益540百万円、助成金収入150百万円によるものです。
当連結会計年度の営業外費用は985百万円となりました。これは主として、支払利息221百万円、資本政策全般に関するフィナンシャル・アドバイザリー・サービスに関する契約を締結した証券会社等への支払報酬644百万円によるものです。
これらの結果、経常損失は1,288百万円(前連結会計年度は経常損失1,840百万円)となりました。
(特別利益、特別損失及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の特別利益は752百万円となりました。これは主に第2回新株予約権の行使期間満了による権利消滅に伴う新株予約権戻入益209百万円、2023年6月に連結子会社に於いて発生した電気設備不具合に対する受取保険金534百万円によるものです。
当連結会計年度の特別損失は334百万円となりました。これは、固定資産除売却損65百万円、連結子会社の電気設備不具合の発生に伴い操業度が低下した期間中に発生した製造固定費相当額である臨時損失268百万円によるものです。
税金等調整前当期純損失は870百万円(前連結会計年度は税金等調整前当期純損失1,862百万円)、法人税、住民税及び事業税4百万円、法人税等調整額△0百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は874百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失1,933百万円)となりました。
b.財政状態の分析
当連結会計年度における財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の仕入を含む製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に銅箔製造設備の新設及び維持並びに更新であります。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、長期運転資金及び設備資金等の調達については、金融機関からの長期借入を基本としております。
当連結会計年度末における借入金とリース債務を合せた有利子負債残高は13,880百万円、現金及び現金同等物の残高は3,376百万円です。
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。なお、最近2連結会計年度における営業利益、EBITDA及び生産数量は、下表のとおりであります。
(注) EBITDA=営業利益+減価償却費
当社が締結している重要な契約
当社は、2024年6月24日開催の取締役会において、テックス・テクノロジー株式会社との間で資本業務提携を行うことに関する資本業務提携契約を締結することを決議し、同日付で本資本業務提携契約を締結いたしました。
詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
研究開発の基本方針
当社グループでは、今後の市場ニーズや技術動向を先取りした製品を提案し、「未来に貢献する銅箔の製品化」を開発の基本方針とし、研究開発に取り組んでおります。
また、改正RoHS指令(Restriction of Hazardous Substances:電子機器における特定有害物質の使用を制限するEU(欧州連合)の指令)をはじめとする有害物質規制に適応し、新規化学物質を使用する場合は、社内の化学物質審査専門委員会で安全性を確認した後に製品への適用を実施しております。当社では環境に配慮しつつ、顧客ニーズに対応する製品を提供します。
当連結会計年度における品種別の研究成果は以下のとおりです。
電動自動車の高性能化に伴い、LIBの高機能化、次世代電池の開発のため、負極集電体に用いられる電池用銅箔にも様々な特性が要求されています。各種電池の技術要求に対応するため、当社ではベース銅箔の機械特性制御や表面処理技術を適用した多様な電池用銅箔の研究開発を進めております。また、大学等、外部研究機関との共同研究を進め、先端の分析技術や解析技術の活用も行っております。
その中で、車載電池用銅箔においては、国内外xEV関連企業と共同で、
① 高容量化を実現する次世代LIBに対応する銅箔の開発
② 全固体電池に対応する銅箔の開発
③ 電池サプライチェーン強靭化に対応するため、蓄電池に用いられた銅箔の再利用技術の開発
について各々研究開発を進めました。
①の高容量化を実現する次世代LIBに対応する銅箔の開発については、充電時間の短縮や航続距離・加速性能の向上(高容量・高エネルギー密度化)等を実現するため、高強度・高密着性表面処理銅箔の研究開発を進め、既に新規負極材料や工法に最適化した表面処理銅箔を実現し、良好な評価結果を確認しております。この結果に基づき、顧客と共同して、LIBの実装評価を進め、量産スケールを見据えた設備による評価に移行しております。
②の全固体電池に対応する銅箔の開発については、安全性・信頼性の飛躍的向上、高エネルギー密度化等を実現するため、全固体電池用負極集電体への最新の要求特性調査、国内自動車メーカーとの共同研究の推進、国内外電池メーカーへのサンプル供試等を進めておりますが、顧客による製品化がやや後ろ倒しとなり、製品採用は遅れる見込みとなっています。
③については、蓄電池に含まれる不純物成分が再利用する銅原料に混入することを防止する必要があり、回収された銅溶液から不純物を除去する技術の検討を行いました。
移動体通信の5G規格に代表される高周波領域に対応するため、また、HDI(高密度相互接続)基板に用いられる微細配線に対応するため、銅箔にはより低い表面粗さと樹脂基材との密着性が要求されます。
回路基板用銅箔においては、
① 高速通信(高周波領域信号)に対応するための低損失銅箔形成技術
② 低損失銅箔を低誘電率基材に密着させるための銅箔表面処理技術
について各々研究開発を進めました。
①の高速通信、5Gに対応する銅箔については、銅箔の平滑化技術及び伝送特性を損なわない表面形状の最適化技術の高度化を図り、電気信号損失の最小化と樹脂基材との密着性の両立を実現し、5G分野の顧客製品に採用されました。さらに次世代の高速通信(6G等)に対応した銅箔を実現するべく要素技術の開発を行っております。
②の技術を適用する低損失銅箔は、次世代の高速通信に適用可能なものですが、様々な低誘電率基材を用いても高い密着性が要求されます。そのため、適用される低誘電率基材の種類に応じて銅箔の表面処理技術を顧客要求に応じた設計をする必要があり、その基盤技術を開発しています。今後、顧客から要求される様々な種類の低誘電率基材に対応した極低損失表面処理銅箔の製品化を進めていきます。
当連結会計年度における研究開発費の総額は