第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、金融サービスに対しIT技術を活用し、金融に関わる“情報の非対称性”の解消、高品質なコンテンツによるユーザーへの情報収集・比較の機会の創出を図ることを目的に、ウェブ・サービスを開始いたしました。ただし、ウェブ・サービスにおいては、その技術革新がめまぐるしく起こり、ユーザーの行動様式の変化は早く且つ激しく、また他社による新規参入や新規サービスの出現も少なくないことから、事業環境の変化がますます激しくなっております。そこで、変化へ柔軟に対応していくとともに、事業基盤の更なる確立・強化、新規事業の展開、優秀な人材の確保・育成や組織体制の整備・拡充に注力して参ります。

 

(2)経営戦略等

 (a)事業基盤であるフィンテック・プラットフォームの更なる地位確立と強化

当社グループは、金融系メディアを事業基盤としており、今後の更なる事業成長のためには、当該メディアの規模及び提供するコンテンツの拡充、システム開発力の向上、ブランド力の強化が不可欠であります。そのために、当社のメディアを活用するユーザーへのサービス・ラインナップを順次拡充、UI/UX(注)の向上に伴うサイト基盤の強化、スマートフォン・アプリの継続的な改良と機能追加、外部企業とのコンテンツでの連携強化、コンテンツの効率的な制作体制の構築とそれに伴うコンテンツ量の増大、費用対効果を伴った広告宣伝施策による会員を中心とするユーザー層の拡大、等を積極的に推進して参ります。

(注 1): UI/UXとは、User Interface/User Experienceの略で、UIはユーザーが画面を操作する時の表示や言葉等の表現や操作感を、UXはユーザーがサービスを通じて得られる体験・感じたことを、それぞれ意味します。

 

 (b)新規事業・サービスへの積極的な取り組み

当社グループが企業価値を向上させ、高い成長を継続させていくためには、事業規模の拡大とマネタイズの多様化を図っていくことが必要と認識しております。そのためには、積極的に新規事業・サービスを立ち上げしていくことが課題と認識しております。このような環境下において、当社グループはユーザーの属性や行動履歴データの蓄積に伴うユーザーの会員化、金融免許が必要となるクラウド・ファンディングの領域等の新たなサービス展開を随時開始しており、今後も次の柱となる事業の創出に向けて取り組んで参ります。

 

 (c)アライアンスの強化による事業の拡大

当社グループでは、全国の金融事業者及び金融事業に参入を目指す非金融事業者を事業パートナーと位置付けております。今後も、既存の事業パートナーとのアライアンスの強化、新たな事業パートナーの拡大によって、双方にメリットのある取り組みを進め、強固なエコシステムの構築を目指して参ります。

 

 (d)システムの安定性確保

当社のサービスはインターネットを通じて提供されており、システムの安定的な稼働及び何らかの問題が発生した際の適切な対応が重要であると考えております。今後も事業規模の拡大に応じた適切な設備投資を行い、システムを整備・強化し、システムの安定性確保に努めて参ります。

 

 (e)優秀な人材の確保・育成

 当社グループは、今後の事業拡大や継続的な成長を目指す上で、社内外の優秀な人材(“人財”)の採用と育成が極めて重要な課題であると認識しております。そのため、能力のみならず、当社の経営理念と企業文化を共有できる人材の採用強化を心掛け、また、社外の優秀な専門家との良好な人的ネットワークの構築・維持も図って参ります。加えて、既存社員の能力及びスキルの向上のため、各種研修等の人材育成制度を充実させることによって、企業と人材が共に成長することのできる体制の整備・維持・改善を積極推進して参ります。

 

(3)対処すべき課題

 (a)組織体制の整備・拡充

 当社グループが今後更なる業容の拡大を実現するためには、業務効率化の徹底と合わせて、支障なく経営管理業務を遂行できるように社内体制や人員の強化を図り、企業としての基盤を確立させることが重要な課題であると認識しております。そのため、内部統制を有効に整備し、運用を推進することで、内部管理体制を強化して参ります。更に、事業の透明性を高めることは、ユーザー、顧客企業、株式市場等の皆様からの信頼を得るためには極めて重要なことであり、引き続き、財務報告等の開示体制の強化に努めて参ります。

 

 (b)コンプライアンス体制及び情報管理体制の強化

 当社グループの主要な顧客が属する金融業界においては、金融取引だけでなくその広告に関しても、法令、業界団体の自主規制等があります。また、顧客企業の多くが株式公開企業であることもあり、当社グループとの取引において顧客企業のインサイダー情報を取り扱う場合があります。当社グループが適正な事業活動を行うためにも、コンプライアンス及び情報管理を徹底していくよう努めて参ります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

 当社グループでは、サステナビリティの重要な項目について、取締役会で議論を行うとともに、リスク管理の統括機関として「リスク管理委員会」を設置しサステナビリティ関連のリスクを含むリスク項目の把握、対策の検討を行っております。「リスク管理委員会」は代表取締役を議長として、顕在化したリスクの報告やその対応方針、今後の対策について、優先度を選別・評価し、迅速な意思決定を図っております。

(2)重要なサステナビリティ項目

 上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下の通りであります。

 1.情報セキュリティに関する方針策定・対応

 2.人的資本の向上と多様性の確保

それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

 1.情報セキュリティに関する方針策定・対応

 当社グループはフィンテック企業として情報セキュリティ強化をサステナビリティの重要な項目に掲げ、コーポレート部情報システムグループの管轄のもと対策を強化しております。ISMSを元にした規定の検討・現状とのギャップ分析からのセキュリティガイドライン作成、グループ全体のセキュリテイ調査実施など、グループ全体のセキュリティ強化など、半期ベースでFISC安全対策基準に準ずるセキュリティ対策事項を掲げ、全社でのセキュリティ対策に取り組んでおります。また情報セキュリティ対策について定期的に内部監査を実施します。

 特定したセキュリティ面に関するリスク及び機会は、「リスク管理委員会」の場で共有・対策を検討し、全社で取り組んでおります。

 また、役員並びに従業員(契約、派遣社員など含む)、グループ会社員に情報セキュリティ教育を定期的及び随時に行います。

 2.人的資本の向上と多様性の確保

 当社グループでは「機会格差を解消し、持続的に挑戦できる世界へ」というパーパスのもと、継続的な企業価値向上をめざし、2019年より人的資本向上のための部門を構築し、5年にわたり人的資本の多様性の向上に取り組んできました。

現在、人的資本向上に向け、①~③のテーマを施策として推進しています。

①「個のキャリア支援」

・「個人が夢や目標に向かって成長できる組織」を掲げ、人的資本の向上につながる「個人の人材価値」を高める支援のため、全社員と四半期ごとのキャリア面談を行っています。また人事部門内に人材育成をミッションとする部門を持ち、 社員ひとりひとりのキャリア形成をサポートする役割を担っています。社員ひとりひとりと向き合い、将来やりたい業務や目指したいキャリア像を聞き、それに基づいたアドバイスや機会の提供を行うことで、人材価値の向上を実現しています。

・また人材育成を目的とした研修にも力を入れて取り組んでおり、新卒入社1・2年目社員を対象にした「ジュニア研修」や、リーダー職以上を対象にした「マネジメント研修」、希望者は誰でも参加可能な「金融リテラシー研修」を年間通して開催しています。

②「挑戦する機会の提供」

・当社は「多様な人材ひとりひとりに、挑戦する機会が与えられた組織を作る」という理念を持ち、自ら手を上げる人材の意思を尊重しています。その一例として、2022年度は金融教育が義務化され、当社でも「金融教育プロジェクト」を立ち上げましたが、プロジェクトメンバーは社内で公募とし、手を挙げた人材全員がプロジェクトに参画し、メディアの立ち上げ、高校での授業の実施などを行いました。

・四半期に一度の面談では、全社員と「挑戦したいテーマ」について対話することを行っており、対話した内容を社内システムで一元管理することで、データを活用したひとりひとりの挑戦機会の提供を作り出しています。

③「多様性の推進」

・2019年度より、従業員の多様性を確保するために、「性別」「経験」「国籍」の3つの多様性を掲げ、組織改革を推進しています。新卒採用における女性採用比率は、2023年度(33.3%)と30%以上の水準を保っており、管理職候補として設定するチームリーダー職における女性比率も増加中です。

・また2024年度は、新卒採用において、外国籍人材の採用を強化し、オンラインでのアジア圏人材の採用プロジェクトなど、施策を積極的に行い中国、韓国、マレーシア、バングラデシュ籍の素晴らしい仲間を迎え入れることができました。

・こうした人材の多様性を確保するために、リモートワークの推進や、人事部門内のフォロー体制の強化など、取り組みを実施しています。

(3)指標及び目標

 当社グループでは、上記において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

 

指標

目標

実績(当連結会計年度)

新規採用におけるジェンダー比率

男性:女性比率 50%:50%

男性:女性比率 66.7%:33.3%

新規採用における外国籍 人材比率

全採用数10%以上

2023年度:16.7%

新規リーダー職以上登用者数

15以上

13

 

3【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に取り組む方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

1.事業内容及び当社グループのサービスに係るリスクについて

① 広告・マーケティング収入への依存について

 当社グループが行っているフィンテック・プラットフォーム事業においては、広告・マーケティング収入が主要な収益であります。前述のとおり、インターネットの普及や同広告市場は年々拡大傾向にありますが、マーケティング活動は全般的に景気動向の影響を受けやすく、顧客企業における広告マーケティング費の支出が縮小する場合は、当社グループの事業及び業績に大きな影響を与える可能性があります。

 

② 競合について

 当社グループは、インターネットを介したメディア及び業務効率化支援をビジネス領域としておりますが、同領域においては、大手企業を含む多くの企業が事業展開をしております。その中で、当社グループとしては、コンテンツの質・量の充実、サービス内容の拡充、ウェブ・マーケティング技術の発展、ユーザビリティの向上等により、他社との差別化を図り市場における優位性を確立して参りました。今後も、当社グループでは、それら経営努力を怠ることなく一層の強化を推進していく方針ではありますが、他社による新規参入や既存事業拡大等により競争が激化した場合には、当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 自社メディアへの訪問者数の伸びについて

 当社グループでは、前記「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載しているとおり、自社メディアへの訪問ユーザー数の増加に注力しております。しかしながら、競合メディアの登場や、グーグル等の検索エンジンのアルゴリズム変更、コンテンツ制作のライターやデザイナーの確保が困難となることによるコンテンツ量の減少等により、同ユーザー数が想定どおりに増加しない可能性はあります。そして、そのように増加しない場合、自社メディアの広告媒体としての価値が低下した場合、顧客企業にとって同価値が発注の判断材料の一つであるため、フィンテック・サービス及びセールステック・サービスの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ インターネット業界における技術革新やユーザー・ニーズのスピードについて

 インターネット業界においては、急速な技術変化と水準向上が進んでおり、これに合わせるようにユーザーのニーズも著しく変化しております。現在、当社グループではこれらに対応すべく、サイト機能のサービス拡充、及び必要であれば迅速な事業戦略の修正等も行う考えであります。しかしながら、今後、予期しない技術革新等があった場合、一定のスキルを有した技術者の確保が想定どおりに進まない場合、もしくはユーザーのニーズの把握が困難となり、十分な機能拡充が提供できない場合等、ユーザーに対する訴求力が弱まり、メディアとしての価値が相対的に低下し、当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 新規事業・サービスが想定どおりに進捗しない可能性について

 当社グループでは、前記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等(b)新規事業・サービスへの積極的な取り組み」に記載しているとおり、中長期的な成長のためには、新規事業・サービスの円滑な立ち上げが永続的な課題と認識しております。そのような中で、競合企業に先んじて進出されユーザーやクライアント企業を奪われる、インターネット業界における技術革新に的確に適応できない、必要な法的許認可を取得できない、及び、必要な人材の獲得・育成が進展しない等の、新規事業・サービスの立ち上げに支障を与える可能性があります。

 

2.インターネット市場及び同関連市場に関するリスクについて

 当社グループの主力事業はインターネット関連サービスであり、同事業の継続的な成長には、更なるインターネット環境の整備と利用者増、そして、それらに伴うインターネット広告市場の拡大が必要と考えております。前述のとおり、本邦において、インターネット普及率は高く、それに伴い、インターネット広告市場及びインターネットを介した業務効率化市場も成長を続けており、我々の日常生活へインターネットは順調にその浸透を拡充させていると見受けられます。

 しかしながら、インターネットの環境整備、その利用に関する新たな規制の導入や技術革新等が生じインターネット・メディアの運営の遂行が困難になる場合、または、急激な景気変動等で広告・マーケティング需要が減じられる場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3.システムに関するリスクについて

 当社グループが行っているフィンテック・プラットフォーム事業は、インターネット環境で提供するサービスであり、サービスの安定供給のために適切なセキュリティ対策を施しておりますが、ハードウェアやソフトウエアの不具合、人為的なミス、コンピューター・ウィルス、第三者によるサイバー攻撃、自然災害等の予期せぬ事象が発生し、想定していないシステム障害等が発生した場合には、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.法的規制及び知的財産等に関するリスクについて

① 一般的なインターネットにおける法的規制について

 当社グループが展開する事業分野においては、「個人情報の保護に関する法律」、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」等をはじめとする法規制が存在しております。また、インターネット上のプライバシー保護の観点からの議論等、インターネット利用の普及に伴う法的規制の在り方については引き続き検討が行われている状況にあります。このため、今後インターネット関連分野において新たな法律の制定や既存法令の改正による規制強化等がなされた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産権等に係る方針について

 当社グループは、今後展開を検討しているサービスを含めて、それらの商標やロゴについて、主要なサービスにおいては、商標権の取得を目指す方針であり、当社グループが保有するそれら知的財産の保護について、侵害されているおそれが生じた場合、顧問弁護士や特許事務所等と連携し、必要な措置を講じて参ります。同時に、第三者の知的財産権を侵害しないように必要な対応を日々実施しておりますが、当社グループの認識していない知的財産権が既に成立している可能性等もあり、このような場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、コンテンツ制作においては、外部ライターに記事執筆を依拠しているため、編集・校正・校閲により他社制作コンテンツの内容の一部盗用が生じないよう確認を徹底しておりますが、万一、確認が不十分であった場合、若しくは正確性、公平性に欠けた内容を掲載した場合、掲載コンテンツの取り下げ等、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ その他法的規制について

 当社グループでは、主に自社メディアを訪問するユーザーに対し、当社の顧客企業への人材紹介支援を行っており、有料職業紹介事業者としての許可を取得しています。本書提出日現在において認識している限りでは、当社グループは法令に定める欠格事由に該当する事実を有しておりません。しかしながら将来、何らかの理由により許可の取消等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

5.クラウド・ファンディング事業に関するリスクについて

 クラウド・ファンディング事業について、融資型クラウド・ファンディングにおいては金融商品取引法及び貸金業法、株式型クラウド・ファンディングにおいては金融商品取引法の規制を受けております。当社グループは法令に則り、必要な体制整備及び運営を実施しておりますが、今後現行法令の改正や変更並びに新法令の制定等により、当該事業に新たな規制を受ける可能性があります。この場合、規制への対応に当たりサービス内容の変更に伴う管理コストの増加や、規制に適切な対応ができなかった場合に当社グループのレピュテーションに悪影響を与える可能性があり、その他不測の事象が発生した場合には、当該事業の運営継続や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

6.事業運営体制に係るリスクについて

① 特定人物への依存について

 当社代表取締役の冨田和成は、創業者であり、創業以来代表を務めております。同人は、富裕層や企業オーナーに対する資産コンサルティングやウェブ・マーケティングに関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定及び遂行において重要な役割を果たしております。当社は、取締役会等における役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化を図り同人に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同人が当社グループの業務を継続することが困難になった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 人材の獲得及び育成について

 当社グループが、今後更なる事業拡大を図るためには、営業やコンテンツ制作等に係る優秀な人材の確保が必要となります。人材の獲得及び社内人材の育成に加え、人材の外部流出を防止することが重要な課題であり、採用による人材の獲得を積極的に行うとともに、各種勉強会の開催や福利厚生の充実等の施策を行っております。しかしながら、当社グループが必要な人材を十分に確保できなかった場合、又は社内の重要な人材が外部に流出してしまった場合には、社員の充実及び育成が計画どおりに進まず、事業規模に応じた適正な人材配置が困難になることから、事業拡大の制約要因となり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 社歴が浅いことについて

 当社は2013年4月に設立されており、設立後の経過期間は10年程度と社歴の浅い会社であります。従って、当社の過年度の業績は期間比較を行うための十分な材料とはならず、過年度の業績及び実績のみでは今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。

 

④ 小規模組織であることについて

 当社グループは小規模な組織であり、業務執行体制もこれに応じたものとなっております。当社グループは今後の急速な事業拡大に応じて、従業員の育成、人材の採用を行うとともに業務執行体制の充実を図っていく方針ではありますが、これらの施策が適時適切に進行していかなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 内部管理体制の強化について

 当社グループは、有効に機能する適切なコーポレート・ガバナンスの導入が、企業価値向上に資するものと認識しております。今後の事業運営及びその拡大に対応するため、当社グループは内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。しかしながら、事業規模に適した内部管理体制の構築が遅れた場合、当社グループの業績及び事業展開に影響を与える可能性があります。

 

7.海外市場への進出について

 当社グループは今後、海外へのサービスの展開にも徐々に取り組む計画です。海外事業展開を行っていく上で、各国の法令、制度・規則、政治・社会情勢、為替等をはじめとした潜在的リスクに対処できないこと等により、事業を推進していくことが困難になった場合に、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、各国において事業が計画どおりに進捗しない場合等に、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

8.その他

① 配当等の株主還元政策について

 株主に対する利益還元の重要性は認識しておりますが、当社グループは成長過程であり、競争力の確保と更なる成長継続を経営上の最重要課題としております。また、内部留保の充実を図り、それを中長期的な事業原資として事業強化・拡大のための投資に充当していくことが、間接的に株主への利益還元に繋がると考えております。将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実、事業環境を勘案した上で、株主への利益還元を検討していく基本方針であります。なお、配当等の実施の可能性及び、実施時期に関しては未定であります。

 

② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社グループでは、企業価値向上を意識した経営を図るとともに、役員及び従業員への業績向上に対する意欲や士気を一層高めることを目的として、役員及び従業員に対して新株予約権を発行しております。本書提出日現在における当該新株予約権による潜在株式は183,300株であり、普通株式の発行済株式総数の3.86%に相当します。権利行使に関する条件が満たされ、これらの新株予約権が行使された場合、将来的に当社の株式価値の希薄化や株式売買需給への影響をもたらし、当社株価形成に影響を与える可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が残るものの、5類への分類変更の動きがみられる等緩和の方向となり持ち直しの動きを見せております。一方、ウクライナ情勢や円安進行による物価の高騰など、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 当社グループを取り巻く事業環境におきましては、株式会社電通発表の『2023年 日本の広告費』(2024年2月15日発表)によると、社会のデジタル化を背景に、好調な「インターネット広告費」の成長に市場全体が支えられ、日本の総広告費は前年比103.0%の7.3兆円となり過去最高となりました。インターネット広告費は、継続的に高い成長率を維持しており、3兆円を超え広告市場全体の成長を後押ししております。

 このような環境の中、当社グループはお客様や従業員の健康・安全を確保するとともに、経済を活性化させていくため、リモートワーク頻度の見直し、社内イベントのリアル開催等にも取り組んでいくとともに、「機会格差を解消し、持続的に挑戦できる世界へ」というパーパスの下、「ZUU online」等の自社メディアのユーザー層の拡大、及び他有力メディアとの連携、並びに金融トランザクションの拡大による提供サービス・商品ラインナップの強化やコンサルティング・サービスの受注効率の向上を目指しております。

 

a. 財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は5,495,780千円となり、前連結会計年度末に比べ2,769,745千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が227,158千円増加し、営業貸付金が2,453,550千円増加したことによるものであります。固定資産は3,833,756千円となり、前連結会計年度末に比べ3,493,836千円増加いたしました。これは主に投資有価証券が3,526,764円増加したことによるものであります。

 この結果、総資産は9,329,536千円となり、前連結会計年度末に比べ6,263,581千円増加いたしました。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は4,211,459千円となり、前連結会計年度末に比べ2,615,908千円増加いたしました。これは主に匿名組合出資預り金が2,763,550千円増加したことによるものであります。固定負債は196,766千円となり、前連結会計年度末に比べ81,969千円増加いたしました。これは主に長期借入金が67,608千円増加したことによるものであります。

 この結果、負債合計は4,408,225千円となり、前連結会計年度末に比べ2,697,877千円増加いたしました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は4,921,310千円となり、前連結会計年度末に比べ3,565,704千円増加いたしました。これは主に非支配株主持分が3,614,644千円増加したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は13.0%(前連結会計年度末は41.0%)となりました。

 

b. 経営成績

 当連結会計年度の業績は、売上高は2,899,531千円(前連結会計年度比14.7%減)、営業利益は115,011千円(前連結会計年度比45.4%減)、経常利益は126,142千円(前連結会計年度比39.9%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は45,163千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益90,031千円)となりました。

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同四半期比較については、前年同四半期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。詳細は 第5 経理の状況1 連結財務諸表等 注記事項 (セグメント情報等)の「4.報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。

(フィンテック・プラットフォーム事業)

 検索エンジンのアルゴリズム変更の影響が長期化し、訪問ユーザー数が想定していた程伸びず、送客事業は伸び悩みました。その結果、当連結会計年度は、売上高1,657,848千円(前連結会計年度比34.1%減)、営業利益は102,415千円(前連結会計年度比71.9%減)となりました。

(フィンテック・トランザクション事業)

 融資型クラウド・ファンディングは順調に成立案件が続き、また前連結会計年度に連結子会社化した株式会社ZUU Wealth Managementが主となり金融商品仲介業及び保険代理業が順調な伸びを示しました。一方で、株式投資型クラウド・ファンディングは案件数が伸び悩んだことから引き続きコストが先行する状況となり、PDCA関連サービス(注)については大口の受注も見られたものの新規受注件数が伸び悩みました。その結果売上高は1,242,582千円(前連結会計年度比39.7%増)、営業利益は12,596千円(前連結会計年度は営業損失154,338千円)となりました。

(注):当社のPDCAノウハウを活用した組織マネジメントSaaSサービス「PDCA Cloud」およびPDCAノウハウによるコンサルティングサービス「PDCA Engineering」等をSMB中心に提供しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は1,837,984千円となり、前連 結会計年度末と比べ344,821千円の増加となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそ れらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は120,558千円(前連結会計年度は409,852千円の収入)となりました。これは匿名組合出資預り金の増加2,763,550千円があった一方で、営業貸付金の増加2,453,550千円、顧客預り金の減少181,649千円及び法人税等の支払127,013千円があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は3,091,990千円(前連結会計年度は106,644千円の支出)となりました。これは主に投資有価証券の取得による支出3,088,899千円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は3,310,905千円(前連結会計年度は154,277千円の収入)となりました。これは主に投資事業組合等における非支配株主からの出資受入による収入3,174,186千円があったことによるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

(2)受注実績

 当社グループは受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

フィンテック・プラットフォーム

事業

1,657,848

△34.0

フィンテック・トランザクション

事業

1,242,582

40.0

合計

2,900,431

△14.7

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の記載については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しています。

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

a. 経営成績等の状況

 フィンテック・プラットフォーム事業においては、「ZUU online」を中心とする自社メディアのユーザー層の拡大及び、その他有力メディアとの連携をとおして、フィンテック・サービスの成長を図っております。この方針のもと、自社メディアの訪問ユーザー数は高い水準を確保できたものの、検索エンジンのアルゴリズム変更の影響等により計画値には未達の状態となりました。また、自社メディア構築及び運営で培ったノウハウ、当社のコアバリューである鬼速PDCAをベースとした顧客企業へのソリューション提供も実施しております。この方針のもと、従来の顧客である金融機関、不動産業のみではなくより広範な業界の顧客企業の獲得に推進して参りました。以上の状況から、当連結会計年度において、全体として過去最高の売上高を更新することができました。今後、自社メディア訪問ユーザー数の更なる成長、各種ソリューション提供企業数の更なる深耕に注力し、フィンテック・プラットフォーム事業の更なる成長を図ってまいります。

 クラウド・ファンディング事業については前連結会計年度に引き続きクラウド・ファンディングを運営する子会社のPMIを推進してまいりました。しかしながら成立案件が伸び悩んだことから引き続きコストが先行する形となりました。引き続きPMIを推進するとともに魅力ある案件を組成していくことで今後の成長を図ってまいります。

なお、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析等は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 資本政策は、財務の健全性や資本効率など、当社グループにとって最適な資本構成を考慮しつつ、会社の中長期的観点での成長のため内部留保の充実を図ることを基本と考えております。加えて、将来的には、内部留保との最適なバランスを考え、株主への利益還元を実施して参ります。

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,720,320千円(前連結会計年度末残高1,493,162千円)、有利子負債残高は260,476千円(前連結会計年度末残高125,668千円)となりました。また流動比率(流動資産/流動負債)は130.5%と十分な流動性を確保しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。