第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社経営の基本方針

当社は、設立当初から「時間と空間を有効に活用するためのコンテンツインフラ及びコンテンツ」を開発することで、携帯電話や携帯情報端末等のモバイル端末保有者に対し「生活に密着した情報」を提供し、更に、その情報を基に「ユーザーが行動できるようなサービス」を提供することを基本方針としております。

加えて、「鉄道・通信・放送のような既存インフラと革新を続けるIT技術との間の橋渡し」を当社の存在意義と位置付け、事業の安定的な成長を目指すこととしております。

これら基本方針に基づき、「IT技術を用いた創造的サービスを創出し、幸せな社会の発展に貢献すること」で、増収増益の実現を目指しております。

 

(2)目標とする経営指標及び中期経営計画の概要

当社は、2022年3月期から2024年3月期まで連続して営業赤字を計上しており、まずは黒字回復とその後継続して黒字計上するための収益改善が最優先課題であると認識しております。そのために、まずは各事業別の営業利益管理による収益性の向上に取り組んでいます。その具体的指標として、原価率管理に注力しております。

安定した収益管理の出来る体制を確保するため、現状の事業規模においても一定の利益を確保できるよう、損益分岐点を見極め、それに見合った経費統制を含む案件管理・進捗管理を実施してまいります。これにより稼動効率を向上させ、原価率低減と販売費の有効活用を行います。

なお、当社は2024年5月23日に取締役会にて中期経営計画を決定し、「事業計画及び成長可能性に関する事項」を同6月7日に株式会社東京証券取引所に提出いたしました。その数値目標の概要は、2025年3月期において売上高1,900百万円・営業利益50百万円、2026年3月期において売上高2,000百万円・営業利益100百万円、2027年3月期において連結にて売上高2,400百万円・営業利益250百万円、としております。

中期経営計画における各事業分野の取り組み予定は以下のとおりです。

① ワイヤレス・イノベーション事業

新たな分野として、通信事業者によるICT、IoT、ローカル5Gなどのソリューションに関する実績を積み上げる。従来の無線LAN関連については、システム構築・拡張、運用に関わる案件、EdgeCoreT、AirCompassシリーズの売上増を目指す。

② モビリティ・イノベーション事業

鉄道事業者のMaaSなど最新の技術・サービス動向に沿った事業展開に取り組む。引き続き、交通系ICカードを活用したtransit managerの販売強化、関連システム開発受注、各鉄道事業向けのアプリ開発の受注強化に努める。

③ ソリューション事業

O2O2O/MMSを事業の柱とすべく、従来の広告関連取引先だけではなくソーシャルサービスとの連携強化も進める。こんぷりんについては、コンビニをはじめとするプリンタ・複合機向けのコンテンツ配信インフラとして収益拡大を目指す。外食・流通向けソリューション(オーダーシステムなど)の販売強化を図る。引き続き、新規事業の開拓と事業の取捨選択を進める。

 

(3)会社の対処すべき課題

当社グループの属するモバイル業界においては、ビジネス環境は常に進化し続けています。とりわけ5G、MaaS等の技術革新、新サービスの登場は、既存技術・サービス、顧客を基本にした事業環境を激変させる可能性がある一方、他社に先駆けて斬新なサービスを創出するチャンスでもあります。このような環境において、当社は収益力の維持・向上を図るため、魅力的なサービスの企画提案とその提供、新たな成長機会の追求、そして事業全体の効率化の更なる推進を図るとともに、当社の最も重要なリソースである人材の採用・育成・強化に努めます。その具体的取り組みとして、以下の四点を課題に掲げております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

①顧客への提案営業力の強化

当社グループは、社会的に重要なインフラを提供する顧客を抱えており、非常にユニークな立ち位置にあることを認識しております。これら既存顧客に対し、市場環境や、技術革新、新たなユーザーニーズを踏まえた提案を重ね、より深耕し受注を受けること、又はパートナー企業と連携した共同事業の企画展開を図ることで、他社が容易に真似できない付加価値の高いサービスの実現を目指します。特に技術革新、新サービス登場により事業環境の変化に対応できる高度な人材の採用・育成により、顧客に対し魅力的な提案を行っていくことが今後の当社の成長のカギであると考えております。

 

②新規顧客からの案件獲得、当社独自商品・サービスの展開

社会インフラを中心とする主要顧客については、3月に受注・売上が集中する傾向があるため、月次ベース・四半期ベースでの収益の凹凸が顕在化しております。また、提案を行いつつシステムの完成を図る案件プロセス上の特性により、利益率が低くなるケースがあります。

当社は安定した受注・売上と高い利益率を獲得する観点から、既存顧客への提案と開発を通じて得た資産とノウハウを新規顧客に展開していくこと、当社独自の商品・サービスを展開し高収益を確保することを、最重要の課題として取り組んでまいります。

 

③案件ベースでの損益分岐点把握と原価管理の徹底

当社グループの経営成績は、2018年3月期から4期連続して当期純利益を計上いたしましたが、過去の損失により利益剰余金はマイナスであり配当等の株主還元を実現できずにおります。この状況を解消するため、収益力を向上させることが必要であります。当社としては、一定の利益を確保できるよう、事業ごとの損益分岐点を見極め、それに見 合った経費統制を含む案件管理・進捗管理を実施してまいります。

 

④工程管理・工数管理の徹底を通した品質・納期管理による収益性向上

獲得した各案件において、安定した利益を生み出すためには、技術力・品質管理スキルの向上が必須となります。過去、受託開発案件などで計画外の追加開発費や補修費が発生し、全社損益を悪化させたことがあること、また、ワイヤレス・イノベーション事業を中心に運用案件が増加していることから、システムの安定性を向上させることが非常に重要になっております。そこで、営業、生産、運用及び品質管理に関して各担当者が身に付けるべき技術力、及びそのプロセスを標準化するとともに、工数管理・工程(進捗)管理の徹底、効率的なテスト・出荷前検査・運用マニュアルの整備などの実施を通して収益性を向上させ、人材の強化に努めてまいります。

 

(4)その他、会社の経営上重要な事項

役員との間で取引を行う場合は、一般取引又は従業員との類似取引を参考にした上でこれらと同等の内容にて取引条件を交渉した上で、会社法の定める手続きに従い、取締役会において当該役員を除く全会一致の決議を経た上でその可否を決定することとしております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

ガバナンス

当社グループは、観点から企業価値向上のため、サステナビリティ推進については、代表取締役杉野文則を長とし、部長職以上から構成され毎週開催される経営会議において、経営課題の重要な一つとして協議し取り組んでおります。

 

戦略

当社グループは、「3.事業等のリスク」④優秀な人材の継続的な確保と育成 において述べているとおり、有能な人材を積極的に採用し、かつ活躍できる雇用環境を整えることが、持続可能性ある成長を目指すうえで重要な経営課題であると考え、経営トップ主導により人材の採用・育成・活用に取り組むこととしております。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

(1)採用について

当社における採用活動は、新卒採用と中途採用に区分されます。

①新卒採用

当社では、2012年4月以降、新卒採用を開始しております。新たな分野にチャレンジできるマインドを持ち、多様な発想ができる人材の獲得を目指し、協力会社に委託し候補学生の募集を行い、書面による適性検査と2回の面接を経て、成長可能性・当社グループ事業への高い関心を主な判定基準として、一定の水準以上にあると判定した学生に対して内定を出し、入社承諾を得るべく活動しております。継続して、毎年3名前後の入社者を得られることを目標としております。採用リソースの観点から、協力会社の直接の協力を得られる場合を除いて、日本国内の大学・各種学校の卒業予定者を対象としておりますが、学校名・学部学科・国籍・性別・年齢等のフィルタは設けておりません。

当社の子会社においては、新卒採用は行っておりません。

②中途採用

当社グループでは、欠員が生じた際に中途採用を行う場合があるほか、お客様・協力会社様の紹介・相談を受けて中途採用を行う場合があります。新卒採用に対して例外的であるため、特段の方針、目標数値は設けておりません。

(2)育成(教育)について

当社グループでは、自ら成長し会社に貢献しようとする従業員に対する支援を惜しまない観点から、従業員の育成に取り組んでおります。

基本的には、業務を通じて学ぶOJL(On the Job Learning)が中心ではありますが、Off-JL(Off the Job Learning)・自己啓発を併用しております。会社が承認した外部の研修については、その一部又は全部を会社が援助いたします。また、業務上密接に関連する資格・認定に対しては、種類・重要度に応じて、受験料を支援する場合があるほか、有資格者には、毎月、資格手当5~10千円を給与手当として支給しております。

(3)活用について

新卒採用で入社した従業員については、本人に特に強い希望と適性がある場合を除き、まずは当社グループでの様々な事業に携わるよう配属とジョブローテーションを設定しております。その過程で、適性を示した事業分野に配属し事業専門性を強めていく場合と、幅広く事業内容を横断し技能専門性を強めていく場合があります。加えて、毎年一回以上、全従業員が社長との面談を行っており、進路・所属の修正や、職場環境の改善を行う場合があります。

当社は、専門型裁量労働制を導入しており、一定の経験と技能を有する開発職、企画職に制度を適用しており、個人の事情に応じて勤務時間を調整することを認めております。毎月、労務担当が長時間労働の有無をレビューし、該当する従業員がいる場合は直ちに社長と上長に通知し、改善を図る体制を取っております。労働環境が心理的ストレスに及ぼす影響を把握するため、毎年秋に法定のストレスチェックを行っております。

(4)その他

当社グループは、鉄道・通信などのインフラに関わる分野からエンタメに関わる分野まで幅広い業務分野を抱えており、そのいずれにおいても斬新な新規ビジネス・サービスのアイデアを求められております。こうした環境に対応するため、ブレストのミーティングを継続的に行い、年2回以上アイデアコンテストを実施しております。優秀者には、更なる見聞の機会を得るため、海外調査(Mobile World Congress、Consumer Electronics Show等での最新技術の調査、その他先端企業・サービスの調査など)に派遣しております。

当社では、業務経験を積んだ女性従業員が、出産・育児を理由として離職することが無いように、法定の育児休業・短時間勤務制度を設けたうえで、うち短時間勤務制度については、子が小学校を卒業するまでの間、利用することができるようにしております。

 

リスク管理

採用市場における当社の訴求力が低くなると想定している人材の確保が進まなくなること、従業員の自己都合退職が増加すると会社組織の総合力が低下すること、の2点が最大のリスクと考えています。魅力ある労働環境を整備するとともに、従業員の成長の機会を提供し、チャレンジしやすい環境を整えることで、応募率を高め、離職率を軽減し、リスク低減に努めることとしています。

 

指標及び目標

現時点で、設定している指標はありません。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

現時点で、設定している指標はありません。

なお、当社の新卒採用にあたっては、女子学生の応募が少ないという課題を抱えております。結果として、採用数が少なく、従業員比率では約4分の1、現時点で女性の管理職(副部長以上)は1名に留まっております。斬新な新規ビジネス・サービスのアイデアを求められている当社の事業形態から、片寄った母集団でこれに取り組む状況は改善する必要があると考えております。目標・指標を定める前段階として、まずは応募自体が増えるよう、職場環境の充実に取り組んで参ります。

また、当社は、日本国内の売上が100%を占めておりますが、斬新なアイデアと最新技術を取り込んで発展していくためには、多様な国・地域の出身者も含めて取り組む必要があると考えております。特に方針としては定めておらず、3月末時点の従業員のうち日本国籍以外の者は3カ国に渡っておりますが、今後の事業展開に応じて方針を定める可能性があります。

 

 

3 【事業等のリスク】

本有価証券報告書に記載した経営成績及び財政状態に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避、低減及び発生した場合の対応に努める方針であります。

また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

①分配可能額が十分ではないこと

当社グループの経営成績は、2018年3月期から2021年3月期において4期連続して親会社株主に帰属する当期純利益を計上いたしましたが、2022年3月期、2023年3月期は親会社株主に帰属する当期純損失を計上いたしました。過去の損失額を含めた利益剰余金のマイナスは4億円弱であり、依然として会社法第461条第2項の計算による分配可能額はありません。これを解消するために、収益力を向上させることが必要であります。

当社としては、一定の利益を確保できるよう、事業ごとの損益分岐点を見極め、それに見合った経費統制を含む案件管理・進捗管理を実施してまいります。過去に大規模な不採算案件を発生させたことを踏まえ、進捗管理を強化するために工程管理システムの運用徹底により、案件別に早期の課題発見と対策の実施を行う体制を整えます。

 

②特定の取引先への依存の解消

当連結会計年度において、売上高の大きい有力顧客上位1社が占める割合は36.6%(2023年3月期は50.1%)と、依存度が非常に高い状況であります。有力顧客とは、複数年にわたり安定的な取引をいただいておりますが、ビジネスの継続性が確保されているわけではありません。また、有力顧客において、そのニーズ飽和や景気変動などの原因で、当社への発注が急減する可能性があります。このため、顧客ニーズの深耕を通して、より強固な関係を構築するため、多様なサービスの提案営業や人的交流に取り組んでいます。さらに、同様のサービスの横展開を通して、他業種における大口顧客の開拓を行ってまいります。

またこれらの顧客においては、期末に大型案件の納期が集中するケースが多く、その受注動向によっては業績見通しの実現に大きな影響を与えます。年間を通して安定した収益を確保するため、季節要因の少ないO2O2O、MMSなどの事業を強化することで対応しようとしておりますが、まだ十分な成果を上げておりません。

 

③特定の製品・技術等への依存
ⅰ 中心となる技術の変化

当社グループの属する業界の技術分野は、凄まじいスピードで進歩し続けております。このような変化の中、当社グループは常に市場を先取りする形で技術への対応を図ってまいりました。今後とも、次代を担う技術を見据えたサービスの開発に常に取り組んでまいります。現在急速な普及が進んでいるiPhoneOSやAndroidOSベースのスマートフォン・タブレットへの対応などにより、当社にとっても新たなビジネス機会が生まれています。しかし、それと同時にこの変化の波に乗り遅れると将来的に案件を受託することが困難になることが予想されます。

ⅱ 競合

当社グループの位置している業界、すなわち、モバイル端末機器に技術や情報を提供する事業者は極めて多く、競争が激しい状況となっております。加えて、新規参入も相次いでおり、その実数を把握するのも困難な状況であります。

当社グループは、この競争の激しい業界の中で、無線LAN、経路探索、画像・映像配信、TVメタデータ配信、コンテンツプリント、O2O2Oサービス・MMSサービスなどのコンテンツインフラの提供、生活に密着したコンテンツの提供、大手企業とのアライアンスによる事業展開などの戦略により、他社に対する高い参入障壁を築き上げていると認識しておりますが、今後、複数の企業が直接当社と競合する事業に参入してくる可能性は否定出来ません。その場合、競争の激化を招き、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

ⅲ 知的財産

当社グループの製品やサービスは、当社グループが自ら開発したものの他、他社の許諾を受けて使用している特許や技術、ソフトウエア、商標等を前提としております。当社はこれらの技術等の知的財産について、他の第三者の権利を侵害することなく製品やサービスの提供を行うことができるよう留意しております。しかしながら、これらの知的財産が他の第三者の権利を侵害した場合、もしくは他社からの技術供与・使用許諾を受けられなくなった場合、高額な権利使用料や損害賠償の請求を招きかねず、当社グループの事業に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、他社の製品やサービスと差別化できる技術とノウハウを蓄積してまいりましたが、営業上の理由等により知的財産としての十分な保護を受けられない場合があります。そのため、第三者が類似製品・サービス等を製造、販売するのを効果的に防止できない可能性があります。また、他社が、類似もしくはより優れた技術を開発した場合、当社の知的財産の価値が低下する可能性があります。

上記の他、ウクライナ情勢や世界的な半導体の供給不足に伴い、情報通信機器を始めとする原材料の製造・流通・輸送過程にも不安が生じており、当社グループによるハードウェア販売を伴う顧客への納品に遅延等が生じる可能性があります。またこれら原材料の争奪戦に対応するため、先行手配による棚卸資産の増加・長期化の傾向が出ており、計画通りの販売が出来ない場合は不良在庫となる可能性があります。

 

④優秀な人材の継続的な確保と育成

当社の経営基盤を安定化させるためには、提案営業力を強化し、獲得した案件において安定した利益を生み出すために、提案、技術、プロジェクト管理、品質管理などの優秀なスキルを持つ人材の確保が必須となります。当社では、これら人材の強化のため、優秀な人材の採用と社員の能力向上に努めておりますが、これらの施策に失敗し、もしくは優秀な人材が退職した場合、事業の継続に影響が生じる可能性があります。

 

⑤災害発生時の事業継続計画

大規模な自然災害や事故等が発生し、当社の設備・従業者に重大な損害が発生し、事業の継続が困難になる可能性があります。また、当社グループの事業ドメインであるモバイル端末を結ぶ情報ネットワークやデータセンターの情報・通信機器に重大な損害が生じる可能性があるほか、主要顧客が損害を被り事業計画の変更により当社グループへの発注額を大幅に削減する可能性があります。また、新型コロナウイルス等の感染症により、お客様のIT投資への見送りによる当社グループの機会損失や、当社の事業推進体制を維持するうえで重要な人員、設備が毀損する可能性があります。

当社では、様々な事態を想定した事業継続計画により対応を行う予定ですが、想定外の事象の発生等により、対応が困難になる可能性があります。

 

⑥時価総額が東京証券取引所が定める上場維持基準を下回っていること

当社は、東京証券取引所グロース市場に上場しておりますが、2024年3月末日以前三カ月の日々の最終価格の平均値から計算した時価総額は12.7億円であり、東京証券取引所が定めるグロース市場の上場維持基準40億円を下回り、経過措置の適用を受けております。当社は、「上場維持基準の適合に向けた計画」を策定し、東京証券取引所に提出・開示しており、同計画に基づき、企業価値向上に取り組んでおります。しかし、取り組みが不十分であったり、想定外の事象の発生等により、計画期間である2026年3月までに達成できない可能性があります。

 

⑦継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、前連結会計年度において営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上し、当連結会計年度におきましても、営業損失、経常損失を計上いたしました。こうした状況により、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。

当社グループは当該状況を早急に解消するため、以下の施策を実施してまいります。

モビリティ・イノベーション事業分野につきましては、交通系ICカードに関わるサービス(transit manager)や私鉄系のアプリ開発の拡充、更には鉄道事業者等のMaaS(Mobility as a Service)関連投資を積極的に獲得し、事業規模の早期回復を課題として取り組んでまいります。

ワイヤレス・イノベーション事業分野につきましては、従来は通信事業者と共同で主にインバウンド需要にむけたWi-Fiクラウド管理システムの構築と運用を主力としておりましたが、コロナ禍・withコロナにおいて需要が回復しないまま、様々な無線デバイスを用いたIoT・ローカル5Gなどの分野にも取り組みつつ、事業規模の回復を目指してまいります。

ソリューション事業分野につきましては、近年注力しているO2O2O・MMSサービスの主要顧客・業務提携先である流通業界の投資動向が徐々に回復しつつあり、また、こんぷりんの証明写真サービスが徐々に伸長しております。自治体・事業会社向けの無線システム販売については販売拡大策を実施し、集合住宅向けアパらくWi-Fi、病院Wi-Fiなどの新規分野にも取り組んでおります。このため、当事業分野に今後人員を集中して取り組んでまいります。

また、これらの対応策に加えて、翌連結会計年度の資金繰りについても検討いたしました。当面の事業活動の継続について重要な懸念はないと判断しております。

以上により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)におけるわが国経済は、長期化した新型コロナウイルス感染症の影響がおさまり、日経平均株価がバブル前の最高値を超えるなど景気回復の動きが見られました。一方で、ウクライナ情勢など地政学的リスクの長期化、原材料、食料、エネルギーの供給不安と高騰、急激な円安の進行、能登半島地震などの自然災害もあり、先行きが不透明の状況で推移いたしました。

当社グループの主な事業領域でありますIT関連業界におきましては、企業向けのIT投資環境は良好となっておりますが、人手不足の深刻化や受注獲得競争の激化が生じるとともに、先行きの不透明感による投資の先延ばし等も生じております。インバウンド需要につきましては、全般的な人流が回復しつつあります。

当連結会計年度におきましては、全事業分野とも、売上高は対前期を上回りましたが、計画には届きませんでした。第1四半期から第3四半期までは売上高が伸びず、対前期、対計画との乖離がみられておりましたが、第4四半期に大型案件が集中したことで、開発効率が良好となり原価率低減により売上総利益も改善いたしました。

販売費および一般管理費については、第1四半期から第3四半期まで労務費が嵩んだことと子会社化した株式会社MMSマーケティングの負担増により、対前期、対計画とも増加しました。これにより売上総利益の大幅な改善分を活かせず、営業損失、経常損失を計上いたしました。しかしながら、投資有価証券売却益204,654千円、新株予約権戻入益45,185千円を計上したことにより、減損損失28,658千円を吸収し、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高額となりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ158,466千円増加し、1,169,196千円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ33,973千円増加し、466,573千円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ124,493千円増加し、702,622千円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高1,598,968千円(前年同期比53.4%増)、営業損失71,881千円(前年同期は営業損失181,244千円)、経常損失72,902千円(前年同期は経常損失188,487千円)、親会社株主に帰属する当期純利益155,845千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失224,718千円)となりました。

 

セグメント別の状況は以下のとおりであります。

また、各事業分野のセグメント利益又は損失(営業利益又は損失、以下同)は、全社費用111,644千円を含まない額であります。

 

  (モビリティ・イノベーション事業分野)

モビリティ・イノベーション事業分野においては、鉄道など社会インフラ提供事業者向けのシステム開発・サービス提供を行っております。

当事業分野においては、交通系ICカードに関わる交通費精算クラウドサービス「transit manager」や私鉄向けアプリ開発等を行いつつ、鉄道事業者との間で商業施設や地方公共団体向けのデジタル切符サービスなど新しい事業モデルの構築に取り組んでおります。鉄道利用者減少の影響により鉄道事業者の投資が慎重になる中で、新規の事業展開も遅れておりましたが、第4四半期において、これらの来期以降にもつながる新規案件を積み上げることができました。

この結果、当事業分野の売上高119,773千円(前年同期比57.6%増)、セグメント損失は7,205千円(前年同期はセグメント損失30,644千円)となりました。

 

   (ワイヤレス・イノベーション事業分野)

ワイヤレス・イノベーション事業分野においては、無線LAN等の社会インフラ間のハブとなるシステム開発・サービス提供を行っております。

無線LANの各種システム・サービスについては、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社(NTTBP)との協力により、通信・鉄道・流通や自治体をはじめとする無線LANスポット提供事業者に対してWi-Fiクラウド管理システムの構築と運用を主力とした事業展開を進めております。第3四半期までは、保守運用案件については予定通り進捗したものの、当社独自の新商品・サービスであるAir Compass Media(車載サーバ) やEdgecore(旧IgniteNet)製品及びクラウド管理システム、ミリ波を活用したTerragraph等の無線システムの販売は、大規模な受注には至っておりませんでした。第4四半期に、大型の構築案件を計上するとともに、原価率の低減にも成果をあげました。

この結果、当事業分野の売上高は703,229千円(前年同期比8.9%増)、セグメント利益は139,275千円(前年同期比292.6%増)となりました。

 

   (ソリューション事業分野)

ソリューション事業分野においては、上記以外の映像配信システム事業、TVメタデータのASP事業、コンテンツプリント事業、O2O2O事業・MMS事業等を行っております。

ソリューション事業分野につきましては、近年注力しているO2O2O・MMSサービスの主要顧客・業務提携先である流通業界の投資動向、ひいては当社グループの事業機会が回復しつつあります。また、自治体・事業会社向けのWi-Fiハードウェア販売が好調であり、こんぷりんの証明写真サービスが伸長するなど、売上高の拡大に寄与いたしました。当期より連結子会社化した株式会社MMSマーケティングの業績も取り込み、事業規模は拡大しておりますが、一部案件の取りこぼしと販売費および一般管理費の負担増により、損失が増加いたしました。当事業分野においては、採算の低い案件も含まれている一方、将来に向けた投資として取り組んでいるものも含まれており、慎重に取捨選択のうえ利益率の改善に取り組んでおります。

この結果、当事業分野の売上高は775,966千円(前年同期比141.9%増)、セグメント損失は92,307千円(前年同期はセグメント損失80,834千円)となりました。

 

<新型コロナウイルス感染症の影響について>

各事業共通して新型コロナウイルス感染症の影響が残りました、特に、モビリティ・イノベーション事業分野においては、顧客である鉄道事業者の事業投資動向が本格的には回復しておらず、ソリューション事業分野においても、主要顧客である流通業界における大規模イベントの回復は足踏み状態にあります。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、432,709千円となり、前連結会計年度末と比べ、35,715千円増加いたしました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果減少した資金は、159,039千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益148,279千円、減損損失28,658千円などによる資金の増加と投資有価証券売却益204,654千円、売上債権及び契約資産の増加101,123千円、新株予約権戻入益45,185千円などによる資金の減少によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果増加した資金は、204,927千円となりました。これは主に有価証券売却による収入210,325千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によって減少した資金は、10,173千円となりました。これは長期借入金の返済による支出3,573千円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出6,600千円によるものであります。

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

 

2023年3月

2024年3月

自己資本比率(%)

38.7

49.0

時価ベースの自己資本比率(%)

144.3

112.0

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)

インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)

 

(注)1 各指標の計算方法は、次のとおりであります。

・自己資本比率

自己資本/総資産

・時価ベースの自己資本比率

株式時価総額/総資産

・キャッシュ・フロー対有利子負債比率

有利子負債/キャッシュ・フロー

・インタレスト・カバレッジ・レシオ

キャッシュ・フロー/利払い

 

2 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3 キャッシュ・フローは、キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。

4 有利子負債は、貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

5 2023年3月期及び2024年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオについては、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

モビリティ・イノベーション事業

43,805

171.6

ワイヤレス・イノベーション事業

320,723

104.0

ソリューション事業

512,271

220.1

合計

876,801

154.7

 

(注) 1 金額は製造原価によっております。

 

b 受注状況

・受注状況

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

モビリティ・イノベーション事業

70,425

55.7

ワイヤレス・イノベーション事業

571,805

68.2

ソリューション事業

852,075

209.4

合計

1,494,306

108.9

 

 

・受注残高

当連結会計年度の受注残高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

モビリティ・イノベーション事業

24,824

33.5

ワイヤレス・イノベーション事業

321,809

71.0

ソリューション事業

281,453

137.1

合計

628,086

85.7

 

 

c 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

モビリティ・イノベーション事業

119,773

157.6

ワイヤレス・イノベーション事業

703,229

108.9

ソリューション事業

775,966

241.9

合計

1,598,968

153.4

 

(注)1主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先名

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

構成比
(%)

金額(千円)

構成比
(%)

エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社

522,306

50.1

585,434

36.6

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、当社が採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1  連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 経営成績等

財政状況

(資産)

当連結会計年度末の資産総額は1,169,196千円となり、前連結会計年度末に比べて158,466千円増加いたしました。流動資産は1,062,172千円となり、167,346千円増加いたしました。主な原因は、現金及び預金35,714千円、売掛金100,099千円、その他20,193千円の増加などです。固定資産は107,024千円となり、8,880千円減少いたしました。主な原因は投資有価証券22,151千円の増加と建物25,875千円の減少などです。

(負債)

当連結会計年度末の負債合計は466,573千円となり、前連結会計年度末に比べて33,973千円増加いたしました。流動負債は356,997千円となり、47,109千円増加いたしました。主な原因は、1年以内返済予定の長期借入金10,719千円、未払金9,556千円、契約負債11,978千円、その他16,047千円の増加などです。固定負債は109,576千円となり13,135千円減少いたしました。主な原因は、長期借入金14,292千円の減少などです。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は702,622千円となり、前連結会計年度末に比べて124,493千円増加いたしました。主な原因は、利益剰余金155,845千円、その他有価証券評価差額金29,431千円の増加と新株予約権35,985千円、非支配株主持分20,724千円の減少などです。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末38.7%から49.0%となりました。

 

経営成績

(売上高)

売上高は、1,598,968千円(前年比53.4%増)となりました。

(営業利益)

売上原価は前連結会計年度に比べ303,509千円増加の875,704千円となりました。販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ143,652千円増加の795,145千円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、155,845千円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失224,718千円)となりました。

 

キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの主な事業領域でありますIT関連業界におきましては、IT需要は堅調に推移しましたが、人手不足の深刻化や受注獲得競争の激化の懸念が生じております。また、売上高の大きい有力顧客上位1社に占める割合は36.6%と、依存度が非常に高い状況となっております。

有力顧客とは、すでに複数年にわたる安定的な取引をいただいておりますが、ビジネスの継続性が確保されているわけではありません。また、有力顧客において、そのニーズ飽和や景気変動などの原因で、当社への発注が急減する可能性があります。このため、顧客ニーズの深耕を通して、より強固な関係を構築するため、多様なサービスの提案営業や人的交流に取り組んでいます。更に、当社は、独自事業の開発・提供に注力し、インバウンド需要等の取り込みやテレビ放送から実店舗への送客を図るO2O2Oサービス、鉄道広告をはじめとするメディアから実店舗への送客を図るMMSサービスなど、これまでに築き上げた経験・技術・人脈を最大限に活用し、事業転換に取り組むこととしております。

また、人材不足に対しては、新卒採用と育成に重点を置いて確保に努めるとともに、協力会社との緊密な関係を構築することで、機会損失の無いように取り組んでまいります。

 

c 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローが前年同期に比べ18,455千円の支出減少、投資活動によるキャッシュ・フローは前年同期に比べ358,998千円の収入減少、財務活動によるキャッシュ・フローは前年同期に比べ17,773千円の支出増加となりました。その結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より35,714千円増加し、432,709千円となりました。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社が締結する契約のうち重要なものは、以下のとおりであります。

[取引先との重要な契約]

契約先名・契約名

契約内容

契約日

契約期間

エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社
 
「業務委託契約」

エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社の所有する無線LANシステム(9種)の運用支援を当社が請け負う内容の契約

2023年3月28日

2023年4月1日から2024年3月31日まで。

 

 

 [技術上の重要な契約]

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

 該当事項はありません。