第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、『発展と永続』の企業理念のもと、『世界最高レベルで安心感のある製品』を世の中に供給することにより、ステークホルダーからの期待に応えるとともに、社員の幸せ・成長を実現することを目指しています。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

 新型コロナウイルスの再拡大や米中貿易摩擦の長期化など、今後の日本経済及び世界経済の先行きは依然として不透明な状況が続くものと予想されます。当社グループ主力の車載市場においては、世界的な半導体不足に伴う影響が懸念されるものの、中長期的には「コネクティッド化」「自動運転化」「電動化」等「CASE」の新しい潮流による構造的な変化を背景とした電装化進展により、需要は拡大すると見込まれます。

 このような状況のもと、当社グループでは中長期ビジョンを『やりがいと顧客満足度を上げるための事業体制に変身する』とし、当社が強みとする、特に高い品質と信頼性が要求されるエンジン・モーター、ブレーキや車載電池制御、予防安全装置等が含まれる自動車のパワートレイン・走行安全系の分野に注力し、「世界最高レベルで安心感のある製品」を世の中に供給することにより、ステークホルダーの皆様からの期待に応えるとともに、社員の幸せ・成長の実現に向けて取り組んでまいります。

 環境変化を乗り越え、持続的な成長を実現するために、引き続き中期経営計画に掲げた「構造改革」と「企業品質向上」を重点的に推進してまいります。

 構造改革においては、生産改革、営業改革を推進いたします。

 生産改革は生産設備の稼働率向上による生産効率化に加え、設備の自動化、適正な生産計画の立案と実行を推進し、生産性とコスト競争力を高めるとともに、国内においては、高付加価値品に対する多品種少量生産のものづくり体制を構築してまいります。

 営業改革は新規領域における積極的な開拓を行い、当社主力の車載領域では「CASE」関連の受注伸長を実現します。新しい市場領域としては、新潟工場での開発設備投資による技術革新により5G関連市場への参入を図り、新たな事業領域の確立を目指します。

 企業品質向上においては、コンプライアンス重視による公明正大なものづくりを基盤として、高い品質と信頼性の維持・向上を推進するための品質改革により更なる製品品質の向上を図るとともに、2020年4月に導入した新人事制度により、年齢、性別、国籍等を問わず、全ての従業員が活躍できる環境のもと、コミュニケーションの活性化、活力ある職場づくりによる業務品質の向上を図ります。

 また、全てのステークホルダーの皆様より信頼される会社に向けて、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の取り組みを積極的に推進してまいります。

 当社グループといたしましては、このような重点取り組み事項を着実に実践し、この厳しく不透明な状況を乗り越え、更なる企業価値の向上に向けて全力で取り組んでまいります。

 

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)マーケット及び有力顧客への依存と産業界・消費者の需要動向による影響

 当社グループの属するプリント配線板業界は、ここ近年の各種デジタル機器の高性能化や、自動車関連機器などの電子化により、そのニーズは着実に進展しております。当社グループにおきましても、それらの市場を戦略市場と位置付け、積極的な研究開発と販売促進を行っております。しかしながら、想定外の世界の経済情勢の悪化や、それらの市場環境に悪化が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)ドル、ユーロ、人民元、タイバーツ等の対円為替相場の大幅な変動による影響

 当社グループの海外事業は、中国及び東南アジアを中心に事業を展開しております。外貨建の取引については、為替予約によるヘッジを行い為替変動リスクを最小限に止める努力をしておりますが、急激な通貨変動は当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)原材料等の価格変動及び供給体制の影響

 世界的な原油価格や素材価格の変動により、当社グループが供給を受ける材料価格に重大な影響を与える可能性があります。また、材料等を供給する特定サプライヤーの生産能力による納期逼迫により当社グループの生産面へ影響を与える可能性があります。それらの影響により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)テクノロジー及び市場ニーズの急激な変化による当社グループ製品の陳腐化

 当社グループの属するプリント配線板業界は、非常に厳しい競争環境下にあるため、市場競争力の維持、強化を図るために、継続的な研究開発活動による新製品・新技術の開発を行っております。

 当社グループの研究開発活動については、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づいてテーマ選定を行い、研究開発活動の各段階において研究開発成果を評価し、その実効性と効率性の向上に努めております。しかしながら、市場や顧客ニーズの急激な変化が、当社グループの予測を超えて起こり、新製品をタイムリーに開発・供給できない場合には、競争力が低下し、シェアを失うことにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)保有する有価証券及びその他資産の時価や固定資産の評価の変動、その他会計方針変更の影響

 保有する有価証券及びその他資産の時価や固定資産の評価の変動、その他会計方針変更により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)海外事業展開先の政治経済情勢の変化、法令制度の変更、社会インフラの機能不全による影響

 当社グループの生産及び販売は、中国及び東南アジアを中心とした海外での活動の割合が高まっております。海外市場での事業展開については、以下に挙げるようなリスクが内在しております。

① 政治、経済の混乱及び紛争

② 電力停止などの社会インフラの機能不全による混乱

③ 予期しない法令・税制・規制の変更

 これらのリスクが顕在化した場合には、安定的な製品供給ができなくなるなどの可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(7)当社グループの将来の製品又は技術が他社の知的財産権を侵害しているとされる場合のリスク

 当社グループは、技術革新の著しいプリント配線板業界に属していることから、知的財産権は重要な経営資源の一つであり、知的財産権の保護、それに絡む紛争の回避は重要な経営課題であると認識しております。

 しかし、当社グループの知的財産権が第三者により無効とされる可能性、特定地域での十分な保護が得られない可能性や知的財産権の対象が模倣される可能性によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 また、結果として当社グループが第三者の知的財産権を侵害するに至った場合や、それにより訴訟を提起された場合には、これらの訴訟に関する費用や損害賠償金等の支払いが発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)人材確保に関するリスク

 当社グループの継続的な成長には、優秀な人材を確保し、育成することが重要な経営課題の一つでありますが、人材採用環境の著しい悪化や人材流出の増加が継続した場合は、当社の人材確保が予定通りに進まず、将来の成長に影響が及び、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)情報漏洩などにより信用力の低下、賠償責任が生じるリスク

 当社グループは、情報資産を重要な経営資源の一つと定め、情報セキュリティの強化に努めておりますが、想定を超えた技術レベルによるコンピューターへの不正アクセスや、予期せぬ不正使用、機密文書の社外流出等があった場合には、当社グループの社会的信用力の低下や、損害賠償責任が生じる可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)地震等自然災害による偶発事象の影響

 地震等の自然災害の発生により、当社グループの生産拠点が損害を受ける可能性があります。当社グループは、日本、中国及びタイに工場を有しており、大規模な地震、水害等の自然災害が発生した場合、工場施設の損害、操業の停止、復旧費用などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)大規模な感染症拡大による影響

 世界的な感染症の拡大による各国の経済活動が制限されることなどにより、当社グループの事業活動の停止、世界規模のサプライチェーン停滞などが、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末の960億44百万円に対して4億56百万円増加し、965億1百万円となりました。これは主に受取手形及び売掛金が9億99百万円、現金及び預金が7億72百万円、仕掛品が1億51百万円それぞれ増加し、有形固定資産が14億83百万円減少したことなどによるものであります。

 負債は、前連結会計年度末の411億11百万円に対して38億69百万円増加し、449億81百万円となりました。これは主に電子記録債務が26億83百万円、支払手形及び買掛金が13億82百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

 純資産は、前連結会計年度末の549億32百万円に対して34億12百万円減少し、515億19百万円となりました。これは主に利益剰余金が22億23百万円、為替換算調整勘定が16億30百万円それぞれ減少したことなどによるものであります。

 

b.経営成績

 当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、経済活動が制限される中、徐々に景気の持ち直しの動きが見られていましたが、感染の再拡大に伴い、事態収束の兆しは見えず、依然として不透明な状況が続いております。世界経済においても、段階的な経済活動の再開により回復の兆しが見られる一方で、感染の再拡大に加え、米中貿易摩擦の長期化により、先行き不透明な状況が続いております。

 このような環境のもと、当社グループ主力の車載分野においても、自動車販売が中国においてはいち早く回復し、日本においても回復基調にありますが、世界全体では未だ低調に推移しております。

 当社グループは、車載向けの販売が減少し、連結売上高は699億67百万円(前年同期比15.3%の減収)となりました。

 利益面につきましては、固定費削減等を推進したものの、売上高の減少の影響などにより、営業損失は16億76百万円(前年同期は16億1百万円の営業利益)となりました。また、営業利益の減少に伴い、経常損失は15億11百万円(前年同期は7億92百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は18億68百万円(前年同期は11億28百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 (日本)

 国内の自動車販売台数は回復基調にあるものの、累計期間では減少した影響などにより、車載向けの販売が減少し、売上高は433億84百万円(前年同期比8.1%の減収)となりました。

 利益面では、売上高の減少の影響などにより、セグメント損失は10億69百万円(前年同期は21百万円のセグメント損失)となりました。

 (中国)

 中国の自動車販売台数は回復したものの、累計期間では減少した影響などにより、当社においては車載向けの販売が減少し、売上高は125億8百万円(前年同期比16.0%の減収)となりました。

 利益面では、売上高の減少の影響などにより、セグメント利益は5億32百万円(前年同期比72.1%の減益)となりました。

 (東南アジア)

 タイの自動車販売台数が減少した影響などにより、車載向けの販売が大幅に減少し、売上高は101億33百万円(前年同期比31.0%の減収)となりました。

 利益面では、売上高の減少の影響などにより、セグメント損失は7億82百万円(前年同期は15百万円のセグメント損失)となりました。

 (欧米)

 欧州、米国共に、自動車販売台数が減少した影響などにより、車載向けの販売が減少し、売上高は39億40百万円(前年同期比32.5%の減収)となりました。利益面では、売上高の減少の影響などにより、セグメント利益は1億89百万円(前年同期比39.8%の減益)となりました。

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末の166億94百万円に対して7億72百万円増加し、174億66百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況と内訳は次のとおりであります。

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、34億20百万円(前連結会計年度は55億76百万円の増加)となりました。これは主に減価償却費44億75百万円、仕入債務の増加額42億11百万円による資金の増加、その他に含まれる未払金の減少額33億75百万円、売上債権の増加額14億8百万円による資金の減少などによるものであります。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、31億85百万円(前連結会計年度は85億23百万円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出36億72百万円によるものであります。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、11億62百万円(前連結会計年度は59億22百万円の減少)となりました。これは主に借入れによる収入137億19百万円、借入金の返済による支出112億14百万円、社債の償還による支出13億52百万円による資金の減少などによるものであります。

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

27,084

△12.3

中国

24,031

△14.8

東南アジア

18,607

△21.9

欧米

合計

69,723

△15.9

 (注) 上記金額は販売価格によっており、消費税等は含まれておりません。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

43,396

△8.2

10,522

0.1

中国

13,049

△7.7

3,723

17.0

東南アジア

10,398

△22.0

2,890

10.1

欧米

3,438

△39.1

1,571

△24.2

合計

70,283

△12.6

18,708

1.7

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.上記金額は販売価格によっており、消費税等は含まれておりません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

43,384

△8.1

中国

12,508

△16.0

東南アジア

10,133

△31.0

欧米

3,940

△32.5

合計

69,967

△15.3

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

株式会社デンソー

17,809

21.6

18,755

26.8

株式会社ネクスティエレクトロニクス

9,068

11.0

8,258

11.8

3.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度の売上高は自動車販売が中国においてはいち早く回復し、日本においても回復基調にありますが、世界全体では未だ低調に推移した結果、前期比126億52百万円減少し、699億67百万円(前年同期比15.3%の減収)となりました。

 特に東南アジアにおいて、タイの自動車販売台数が減少した影響などにより、車載向けの販売が大幅に減少した結果、前期比45億42百万円減少し、101億33百万円(前年同期比31.0%の減収)、日本は国内の自動車販売台数は回復基調にあるものの、累計期間では減少した影響などにより、車載向けの販売が減少した結果、前期比38億31百万円減少し、433億84百万円(前年同期比8.1%の減収)となりました。

 営業利益は、固定費削減等を推進したものの、売上高の減少の影響などにより、前期比32億78百万円減少し、16億76百万円の営業損失となりました。中国においては売上高の減少の影響などにより、前期比13億72百万円減少し、5億32百万円(前年同期比72.1%の減益)となりました。日本も売上高の減少の影響などにより、前期比10億47百万円減少し、10億69百万円の営業損失となりました。

 経常利益は営業利益の減少に伴い、前期比23億4百万円減少し、15億11百万円の経常損失となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は経常利益の減少に伴い、前期比7億40百万円減少し、18億68百万円の当期純損失となりました。

 1株当たりの当期純損失は31円57銭となりました。

 

 当連結会計年度末の総資産は、設備投資が前期に比べて減少したことなどにより、有形固定資産が前期末比14億83百万円減少しましたが、年後半に売上が増加したことにより、受取手形及び売掛金が前期末比9億99百万円増加し、借入実行に伴い現金及び預金が前期末比7億72百万円増加したことなどから、前期末比4億56百万円増加し、965億1百万円となりました。

 負債は年後半に売上が増加したことに伴い、電子記録債務が前期末比26億83百万円増加し、支払手形及び買掛金が前期末比13億82百万円増加したことなどから、前期末比38億69百万円増加し、449億81百万円となりました。

 純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失を18億68百万円計上したことなどにより、前期末比34億12百万円減少515億19百万円となりました。

 この結果、自己資本比率は前期末に比べて3.8ポイント下がり、49.8%となりました。

 

 セグメントごとの経営成績等の詳細は「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

 (資本の財源及び資金の流動性について)

a.資金調達の基本方針

 当社グループは、金融情勢の変化に機動的に対応しつつ、調達手段の多様化等を図ることで、資金コストの低減及び調達の安定性を高めることにより、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

b.資金調達

 当社グループの資金調達は、短期運転資金については、営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び金融機関からの短期借入を基本としております。長期的な資金については、設備投資計画や既存借入金の償還時期等を総合的に勘案し、金融機関からの長期借入及び社債によって流動性を維持しております。また、設備投資の一部はリース取引によっております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は前期末比16億83百万円増加し、261億35百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前期末比7億72百万円増加し、174億66百万円となりました。

 

c.流動性の確保

 当社グループは、流動性を確保するために取引金融機関と総額50億円のコミットメントライン契約を締結しております。

 なお、当連結会計年度末の借入未実行残高は50億円となっており、資金の流動性は十分に確保されております。

 

当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

合計

返済・償還

1年以内

返済・償還

1年超

短期借入金

1,660

1,660

長期借入金

18,519

2,252

16,267

社債

5,773

4,572

1,200

リース債務

181

165

16

その他有利子負債

合計

26,135

8,650

17,484

 

③ 重要な会計上の見積り及び該当見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

 当社グループでは、新型コロナウイルスの感染拡大により、2019年5月に公表した中期経営計画2019(2019年度~2021年度)の2021年3月期及び2022年3月期の数値目標を2020年6月に取り下げましたが、当社の強みを活かせる車載市場を主軸とした高付加価値分野に注力し、収益性と資本効率の向上を図る方針を継続しており、下期にかけて自動車販売が一定の水準まで回復するという前提として、2020年11月に売上高685億円、営業損失15億円の数値目標を掲げました。自動車販売台数が主に中国や日本において、想定より強く回復したことなどにより、売上高は699億円と目標を上回りましたが、営業損失は人民元が想定より元高に推移したことなどにより、16億円と目標をわずかに下回る結果となりました。

 今後の世界経済は、新型コロナウイルスの再拡大や米中貿易摩擦の長期化など、先行きは依然として不透明な状況が続くものと予想されます。

 当社グループ主力の車載市場においては、世界的な半導体不足に伴う影響が懸念されるものの、自動車の電装化進展などにより、中長期的には需要が拡大する見通しです。

 このような状況の中、当社グループは、車載市場の中でも特に高い品質と信頼性が要求される分野において、販売拡大を見込んでおります。また、生産性の向上や徹底した経営合理化などにより収益改善を推し進め、経営指標の最大化を常に目指して取り組んでまいります。

 次期の連結業績につきましては、売上高750億円、営業利益15億円を計画しております。

<経営上の目標達成状況>

指標

2021年3月期

2022年3月期

計画

実績

計画比

計画

売上高(億円)

685

699

14

750

営業利益(億円)

△15

△16

△1

15

 

4【経営上の重要な契約等】

(合弁事業契約)

契約会社名

相手方の名称

国名

契約品目

契約締結日

契約の内容

契約期間

提出会社

丸紅株式会社

日本

プリント配線板

2001年

8月24日

3社による希門凱電子(無錫)有限公司の設立

2001年

5月15日から

20年間

パナソニックデバイスマテリアル蘇州有限公司

中国

 

5【研究開発活動】

 当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は504百万円であり、セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1)日本

 当連結会計年度の研究開発活動は、市場のニーズにあった高機能で高信頼性及び地球環境に配慮した「プリント配線板」に加え、新プロセス・新構造の検討など、長期を見据えた研究開発に取組んでおります。

 当社グループの主力製品である自動車市場は、環境規制に配慮したxEV(HV/PHV/EV/FCV)などの電動化の進展や安全意識の高まりによるADAS(先進運転支援システム)に対応した電装製品及び車載通信機器やセンサー部品向けにプリント配線板のニーズが高まっております。さらに、今後の自動運転への取組みとして、次世代車載通信システムとそれらを制御するECU機器の高機能化が必要不可欠となります。

 当社では、このような車載市場のニーズに適合した次世代のプリント配線板として、ADASや自動運転の重要部品である「ミリ波モジュール」、「センシングカメラ」、「車載通信機器」向けに高密度化した多層ビルドアップ配線板の開発を進めております。その他にも一般的な制御ECUだけではなく、次世代に向けた集中型電子制御ECUに対応する製品開発も進めております。

 また、電動化に伴う車載電装部品用途においても、多層ビルドアップ配線板の他に、高信頼性・高放熱(銅ベース、銅コア、厚銅、高熱伝導構造)・高耐熱・高電圧・大電流といった個別要求に対応したプリント配線板の開発も進めております。

 市場への提案としては、ネプコンジャパン名古屋・東京の2展示会において、航空宇宙・車載インバータ向け「1kA対応大電流基板」、JAXA(宇宙航空研究機構)向け「高速伝送測定技術」、群馬大学と連携した「ブラシレスモータ用配線板」、次世代配線板「3D配線板」など、最新技術商品を中心に出展を行ないました。

 

 第61期の具体的な研究開発活動は次のとおりであります。

① ADAS用途として、次世代のミリ波モジュール向けプリント配線板開発を開始。

② 日本初となるプリント配線板製造用3Dプリンタ装置を導入し、3D配線板構造を提案。

③ 新事業領域向け要素技術の確立を目指し、新潟工場に開発設備投資を実行。

 なお、当連結会計年度中に支出した研究開発費の金額は504百万円であります。

 

(2)中国、東南アジア、欧米

 当社グループは研究開発部門を日本に集約しているため、該当事項はありません。