当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) グループ理念
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当社グループは、2020年に企業活動の根本的な考え方となる企業理念や目指す姿、大切にしたい価値観を見つめ直し、社員が物事を判断する際の拠りどころとなるグループ理念体系を再定義いたしました。 「企業理念」 素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する。 「目指す姿」 アルミニウムを究めて環境負荷を減らし、軽やかな世界へ。 「価値観」 相互の理解と尊重 誠実さと未来志向 好奇心と挑戦心 グループ理念体系の社内浸透を図るため、社長執行役員を始めとする経営陣幹部と従業員との理念対話会を継続して実施しております。理念対話会は、単にグループ理念を従業員に伝えるだけではなく、従業員の声を経営に活かし、また従業員のエンゲージメントの向上にも資することから、今後も積極的に実施してまいります。 このグループ理念を世界中の従業員と共有することで、国境や世代を超えて永続的に社会・生活を支える企業グループになることを目指してまいります。 |
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(2) 経営戦略等
当社グループは、グループ理念における目指す姿の実現に向け、2030年における当社グループのありたい姿を描いた「UACJ VISION 2030」(以下、VISION 2030)及びVISION 2030を実現するための中期経営計画<2021年度~2023年度>(以下、第3次中計)を策定し、2021年5月に公表しております。
(長期経営ビジョン UACJ VISION 2030)
中長期では、世界的な人口増加や経済成長、さらには気候変動への対策の必要性の高まりから、地球環境に優しい循環型素材であるアルミニウムの需要は伸長する見込みです。このようなマクロ環境認識のもと、企業理念に掲げた「持続可能で豊かな社会の実現」に向けて、2030年に当社グループが目指していく4つの貢献を定めた VISION 2030を策定しました。
UACJ VISION 2030
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1.成長分野や成長市場での需要捕捉により、より広く社会の発展に貢献する 2.素材+αでバリューチェーン及びサプライチェーンを通じた社会的・経済的な価値の向上に貢献する 3.新規領域への展開により、社会課題の解決に貢献する 4.製品のライフサイクル全体を通じて、環境負荷の軽減に貢献する |
成長市場や成長分野においては、積極的に新たな需要を捕捉し、これまで培ってきた経営資源や強みを活かした製品の提供を通して、より広く社会の発展に貢献してまいります。また、素材製品の提供のみでなく、加工やリサイクルで新たな価値を付与するなど、バリューチェーン及びサプライチェーンを通した「素材+αの価値創出」に取り組んでまいります。さらに、2030年に向けて拡げていく新規領域としては、2030年の社会においてアルミニウムが活躍する領域として、「モビリティ」「ライフスタイル・ヘルスケア」「環境・エネルギー」の3つを選定し、これら領域における社会課題の解決を図ってまいります。また、既存領域及び新規領域のいずれにおいても、アルミニウムの特性を活かした製品とサービスの提供及びリサイクルの推進を通じて、社会全体での環境負荷の軽減に貢献します。
これら4つの貢献を通じて、「持続可能で豊かな社会の実現」を目指してまいります。
(第3次中期経営計画の振り返り)
VISION 2030で掲げた4つの貢献を目指していくにあたり、2021年からの3年間において当社グループが取り組むべきこととして、第3次中計を策定いたしました。第3次中計では、2021年からの3年間を、構造改革を完遂し、その先の成長とVISION 2030の実現に向けた基盤を確立するための期間と設定し、3つの重点方針を掲げ、様々な取組みを実行いたしました。
第3次中期経営計画<2021年度~2023年度>
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重点方針 1.構造改革の完遂 2.成長への基盤の強化 3.軽やかな世界の実現への貢献(サステナビリティ推進) |
① 構造改革の完遂
2019年9月から着手した「構造改革の実行」では、「稼ぐ力の向上」「財務体質の改善」「経営のスピードと質の向上」に向けた各施策を通して、環境変化に強い筋肉質な体質の確立を目指してまいりました。諸施策は2022年度までに完遂し、計画どおりの損益改善効果額を達成しております。
② 成長への基盤の強化
第2次中期経営計画に続き、成長市場を北米及び東南アジア、成長分野を缶材及び自動車材と捉え、日本、タイ、北米の世界3極供給体制における生産設備を最大限活用することで、拡大する需要を捕捉することを目指してまいりました。また、成長のための投資を北米地域に重点的に配分することにより、さらなる成長への基盤づくりに取り組んでまいりました。伸長する北米缶材市場への対応としては、生産設備増強への取組みに着手しました。加えて、従来のビジネスモデルだけでなく、加工やリサイクルといった素材に+αの付加価値を加えたビジネス領域の拡大に取り組んでまいりました。
リサイクルについては、アルミニウム製品の循環利用推進による環境価値提供などを進めるべく、山一金属株式会社と共同でUBC(使用済み飲料缶)の前処理から溶解までの工程を一貫で行う「溶解リサイクルシステム」の構築に向けた取組みを開始しました。また、UACJ(Thailand)Co.,Ltd.においても、ASEAN域内におけるアルミ缶クローズドループリサイクルの促進に向け、現地政府・企業とのスキーム構築に注力するとともに、リサイクル材用処理炉の能力増強投資を進めた他、北米Tri-Arrows Aluminum Inc.においてもUBC処理能力の増強に着手しました。また事業・拠点を横断したリサイクルの推進体制として、鋳造プロセスを有するグループ会社の拠点を当社に統合し、一体運営を図ることを決定しました。
さらに、VISION 2030に掲げた新規領域の拡大に向けて、グループ横断でのプロジェクトを立ち上げ、事業化に向けた取組み推進に加え、社内ベンチャー制度など新事業創生の活動をより一層強化しました。全ての事業活動を支える基盤として、技術、人材、DX推進による生産性の向上等、成長への基盤の強化を推進してまいりました。
③ 軽やかな世界の実現への貢献(サステナビリティ推進)
当社グループは、企業理念の実現に向けて、「100年後の軽やかな世界のために」というスローガンのもと、サステナビリティ活動を推進してまいりました。取組みの詳細は、「第2[事業の状況]2[サステナビリティに関する考え方及び取組]」をご参照ください。
(第4次中期経営計画)
当社グループは、2024年度から2027年度までを、第3次中計で築き上げた基盤をもとに、VISION 2030へつながる成長・価値創出拡大と体質強化を実現する期間と位置づけ、素材提供企業から「素材+αの付加価値提供企業」への変革をコンセプトとした第4次中期経営計画<2024年度~2027年度>(以下、第4次中計)を策定しました。第4次中計では、次の3つの重点方針に取り組んでまいります。
第4次中期経営計画<2024年度~2027年度> ~稼ぐ、繋ぐ、軽やかに~
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重点方針 1.価値創出拡大による収益の最大化と収益率の向上 2.筋肉質でしなやかな体質の強化 3.価値創出と安定した事業運営を支える基盤の強化 |
① 価値創出拡大による収益の最大化と収益率の向上
VISION 2030に掲げる4つの貢献の実現に向け、重点活動分野を中心に、次の4つの重点課題を設定し、社会やお客様へより広く、より高い価値を提供することにより、収益の最大化と利益率の向上を目指してまいります。
・「リサイクル推進」:サーキュラーエコノミーの心臓の役割を果たすことで、「アルミニウムの循環型社会」構築を牽引し、川上への事業領域伸展によって、単なる素材提供企業からビジネスモデルの変革を図るとともに、環境価値素材としてアルミニウムの活躍の領域拡大を目指してまいります。
・「素材+加工ビジネスの拡大」:移動手段の軽量化や熱交換機の熱交換率向上によるGHG排出量削減等の環境価値付与をメインターゲットに、多彩な事業を持つ当社グループならではの素材+加工のビジネスの拡大を目指してまいります。
・「先端分野のサプライチェーン安定化への貢献」:お客様製品の素材国産化、域内でのサプライチェーン構築へ参画するとともに、安定的かつ付加価値のある製品・サービスの提供拡大を通じて、国や産業界等のサプライチェーン安定化への貢献を目指してまいります。
・「新領域の拡大」:重点活動分野を中心に社会課題に貢献する新領域ビジネスの創出・拡大を目指してまいります。
② 筋肉質でしなやかな体質の強化
構造改革の精神を継承し、資本効率向上を目指すとともに、短期及び長期的な環境変化に対応できる筋肉質な体質への強化を目指してまいります。
・「環境変化への対応力強化」:様々な市況価格変動等に柔軟に対応する仕組みや、需要変動に対応可能な柔軟な生産体制の構築を目指してまいります。
・「資産効率化」:棚卸資産削減を中心としたCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮や設備能力の最適化等により、資産効率の向上と資金の捻出を目指してまいります。
・「自動化・無人化(安全性・生産性向上)」:安全の確保及び労働力人口の減少に対応した製造現場の段階的な自動化、無人化に長期的視点で取り組んでまいります。
③ 価値創出と安定した事業運営を支える基盤の強化
人材・技術・ブランド等の無形資産の獲得・育成、デジタルの活用、グループ内連携や社外の仲間づくり推進により、価値創出と安定した事業運営を支える基盤の強化を目指してまいります。
・「多様な人材の獲得・育成とエンゲージメント向上」:従業員一人ひとりの成長と多様な人材の掛け合わせにより戦略実行力を高めるとともに、安定した事業運営を支える組織力を強化してまいります。
・「技術・ブランド等の無形資産の獲得・強化・活用」:グループの強みとなる技術力を獲得・強化するとともに、アルミニウムの特性や当社が引き出す価値を訴求したブランディングによる無形資産の強化・活用により、アルミニウムの活躍領域の拡大と付加価値創出力を強化してまいります。
・「デジタルを活用した競争力・組織力の強化」:あらゆる領域にデジタルを活用し、業務プロセスの効率化、高度化、最適化、見える化を図るとともに、長期的な視点での製造現場の自動化を推進し、生産性向上のみならず安心安全な職場環境づくりの実現に向けた取組みを強化してまいります。
・「事業間・部門間連携やサプライチェーン・バリューチェーンとの連携・協業の更なる推進による提案力の強化」:リサイクル推進、付加価値ビジネスの拡大及び新領域の拡大に向けて、グループが保有するあらゆる資本を有機的かつ最大限に活用するため、事業間・部門間連携の更なる推進によるグループ総合力の強化を図るとともに、サプライチェーン・バリューチェーンにおける最適パートナーとの更なる連携・協業の推進により、グループの持続的な成長及び価値創出を目指してまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、株式価値向上の観点からROEを重視しております。資本コストを上回るROEを達成するとともに、エクイティスプレッドを創出・拡大することにより、株式価値の向上を目指してまいります。
ROEの目標値については、下表に示すとおりであります。
<第4次中計及びVISION 2030の目標値(連結)>
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2023年度実績 |
第4次中計 2027年度目標 |
VISION2030 2030年度目標 |
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ROE |
5.3% |
9%以上 |
10%以上 |
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
2024年度が策定した第4次中計の初年度であり、中計の目標達成に向けて、体制整備及び施策実行を進めてまいります。
文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)サステナビリティに関する考え方
「100年後の軽やかな世界のために」
当社グループは、「素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する。」という企業理念の実現に向けて、「100年後の軽やかな世界のために」というスローガンのもと、2020年度よりサステナビリティ活動を推進してまいりました。環境問題をはじめ、現代社会が抱えるさまざまな課題を将来に残さず、子どもたちの世代が、今より軽やかで楽しい未来を過ごすことができるように、当社グループは、これまでも、そして100年先の軽やかな世界をも見据えて、「サステナビリティ基本方針」のもと、120年以上にわたり受け継いできた叡智と情熱、そして社員一人ひとりの多様な個性を活かしながら、ステークホルダーの皆さまとともに、さまざまサステナビリティ活動を推進してまいります。
サステナビリティ基本方針
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1.受け継いできた叡智と情熱で 創業以来の探求心と、技術と知恵を結集したイノベーションでより便利な社会、持続可能な地球環境を追求します。 2.すべてのステークホルダーの皆さまとともに 事業を通じて向かい合う関係者はもとより、いろいろな形で関わりあう社会を思い、グループ内外の人々と協調・協働して持続可能な世界への貢献を実現します。 3.一人ひとりの多様な個性で 国籍、性別、年齢、障がいの有無などの違いに関わらずさまざまな人材を尊重し、その考えやスキルを活かすことで、既成概念にとらわれない自由な発想で課題解決に取り組みます。 |
①サステナビリティガバナンス(サステナビリティ推進体制)
当社グループは、サステナビリティ活動の責任を明確にするとともに意思決定の迅速化を図り、各種の取組みを着実に推進するために、2022年度より新たなサステナビリティ推進体制を構築しました。
社会とともに持続的に成長していく上で優先的に取り組むべき課題を「マテリアリティ」として特定しておりますが、当社グループは、これらマテリアリティごとに責任者及び管掌部署を定め、それぞれが予め設定されたKPIに基づいて進捗状況を把握するとともに、定期的に開催する分野ごとの報告会議体で報告及び討議を行うことで、取組みの実効性を高めています。
サステナビリティ活動の推進体制
当社グループのあらゆる事業活動を支える基盤であるコーポレート・ガバナンスの詳細については、「
②戦略
当社グループは、サステナビリティ活動を企業経営の存在意義が問われる中核要素として捉え、グループ一体となって推進していく必要があると考えています。
そのために、社会とともに持続的に成長していくうえで当社グループが優先的に取り組むべき課題を「マテリアリティ」として特定し、2021年度より6つのマテリアリティ(「気候変動への対応」、「労働安全衛生」、「製品の品質と責任」、「人材育成」、「人権への配慮」、「多様性と機会均等」)に対しグループ一体となって中長期的に取り組んでいます。また、サステナブルな社会の実現のためには、様々な外部機関と連携して課題解決に取り組むことが必須と考え、世界的なアルミニウム業界団体である「Aluminium Stewardship Initiative(以下、ASI)」をはじめとする国内外のイニシアチブに参画しております。
すべてのサステナビリティ活動は「企業理念」の実践に向けた活動であること、そしてその活動の主体となる従業員が当社グループを取り巻く社会のさまざまなステークホルダーと協働して軽やかな世界を目指していくこと、を基本とし、推進施策の検討を行います。
6つのマテリアリティ・SDGs優先課題とステークホルダーとの関連
2024年度以降の取組みについて
当社グループは、内部環境、並びに、外部環境の変化を適時ウォッチし見直しの必要が出てきた適切なタイミングでマテリアリティを見直すことは、時代の変化に応じた「環境・社会・経済」の持続可能性と私たちUACJグループの持続的な成長の両立にとって必要であると考えています。
6つのマテリアリティは、2019年度より検討がスタートし2020年度に適切なガバナンスによる手続きを経て特定に至りましたが、その後、新型コロナウイルス感染症の拡大をはじめとする国内・海外の情勢の変化により社会システムの大幅な転換を迎えたことから、当社グループはマテリアリティの見直しが必要と判断し、2023年度に当社グループが目指す100年後の軽やかな世界とともに5つのマテリアリティへと再整理を行いました。2024年度より施策推進を実施してまいります。
サステナビリティ羅針盤
(注)2023年度のマテリアリティの見直しにおいて、「労働安全衛生」、「製品の品質と責任」については、100年後も変わらないUACJグループの事業の基盤であることから、「UACJとしての当たり前」としてとらえ、その取組みについては、安全衛生委員会、品質委員会で引き続き進捗を管理してまいります。
(環境に関する3つのマテリアリティ)
「美しく豊かな地球がずっと続く未来」のために取り組んでいくマテリアリティとして「「アルミニウムの循環型社会」の牽引(サーキュラーエコノミー)」「気候変動への対応」「自然の保全と再生・創出(ネイチャーポジティブ)」を特定しました。
これら3つのマテリアリティは、それぞれが独立する課題ではなく、互いに関連性を持ち、支え合い、融合する関係にあります。アルミニウムの利活用の場を拡大した資源循環の輪を広げることは、新地金の使用量の最小化により、CO2等のGHG排出量の削減につながるとともに、新たなボーキサイトの採掘を抑制できることは自然への影響を軽減することにもつながると考えています。
当社グループは、アルミニウムの循環型社会において、資源循環の「動脈」と「静脈」をつなぐ「心臓」の役割を果たすとともに、2050年の「カーボンニュートラル実現」に向けて活動基盤の構築、パートナーとの様々な協業によるサプライチェーン全体でのGHG排出の最小化、アルミニウムの特性を活かしたサプライチェーン全体での自然への負荷の最小化を目指し、2024年度より環境に関わる委員会体制を見直した(注1)上で、活動を推進してまいります。
(注)1.2024年度より守りの環境を推進する「環境委員会」と攻めの環境を推進する「気候変動対策推進委員会」を「環境委員会」へと統合
美しく豊かな地球がずっと続く未来へ
(Well-beingに関する2つのマテリアリティ)
「誰もが幸せで幸せを感じられる 健やかで調和のとれた社会」 のために取り組んでいくマテリアリティとして「人権の尊重」「多様性と機会均等の浸透(DE&I)」を特定しました。
従業員一人ひとりが健康で心が充実し幸せを感じられる、そしてそれが家族や地域社会の豊かさに広がっていくような社会形成のあり方と共に多様性(ダイバーシティ)に加え、包摂性(インクルージョン)や公正性(エクイティ)への取組みが不可欠であると考えています。
当社グループは、グループ理念の価値観の一つとして「相互の理解と尊重」を掲げ、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」、国別行動計画である「ビジネスと人権に関する行動計画」で求められる人権への取組みについて、UACJグループ全体への浸透と定着を目指してまいります。また、「ダイバーシティ(DE&I)推進宣言」の下、対話に基づいた様々な施策を展開し、当社グループで働く一人ひとりが誇りと安心を感じ、自分らしく豊かに生きることで、企業理念の実現を目指し、従業員それぞれがダイバーシティへの理解を深めることにつながるよう、2024年度以降活動を推進してまいります。
誰もが幸せを感じられる 健やかで調和のとれた社会へ
(UACJグループ5つのマテリアリティの達成目標)
当社グループは軽やかな世界を実現するために、これまでも、そして100年先をも見据えて、「サステナビリティ基本方針」のもと、サプライチェーン全体での取組みを推進し、進捗を確認しながら着実に目標達成に歩みを進めてまいります。
③リスク管理
当社グループは、「企業理念の実現を不確実にするすべての事象」(損害・損失に直結しかねない事象のみならず、将来の収益・成長への機会も含む)を「リスク」として管理しています。そして、リスク管理のあるべき姿を「全員参加のリスクマネジメント」とし、役員や幹部だけではなく全従業員が常日頃からリスクの所在を意識し、自らリスクを発見・共有し、進んで管理に参画する状態と定義して、その実現にグループ全体で取り組んでいます。
当社グループのリスク管理体制の詳細は、「
④指標及び目標
当社グループは軽やかな世界を実現するために、これまでも、そして100年先をも見据えて、「サステナビリティ基本方針」のもと、サプライチェーン全体での取組みを推進し、進捗を確認しながら着実に目標達成に歩みを進めております。2021年度よりPDCAサイクルを活用した継続的な活動を推進しており、各指標の進捗状況がモニタリングされ、結果に基づき取組みに反映しています。
モニタリング体制の詳細は、上記①サステナビリティガバナンスをご参照ください。
(2023年度における6つのマテリアリティの成果)
2023年度は、当社グループ全体で「気候変動への対応」が進展し、2030年度までのScope3の30%削減とともに、アルミニウムの資源循環性を示す指標である「UACJリサイクル率(循環アルミニウムの使用率)」を公表し2030年度での80%へ引き上げを目指す、新たな目標を掲げました。Scope1、2の削減施策については、年間約220GWhの100%再生可能エネルギー由来の電力(以下、再エネ電力)を新たに購入し、当社グループのScope2におけるCO₂排出量の約20%に相当する年間約10万㌧を削減するとともに、主要国内製造拠点のうち約63%にあたる17拠点が、Scope2のCO₂排出量がゼロとなる「再エネ電力100%工場」となっています。
「人権への配慮」への取組みとしては、お取引先の皆様と共に持続的な社会の実現に取り組むための拠り所となる「UACJグループサステナブル調達ガイドライン」を制定、公開するとともに、外国人技能実習生の人権に対し、第三者機関の支援を受けながらグループ会社の人権デュー・ディリジェンスを実施しました。
また、「多様性と機会均等」については、2023年度より、サステナビリティ推進本部内にダイバーシティ推進部を設置し、ダイバーシティの浸透を深めるための活動を開始しました。初年度は「ダイバーシティ(DE&I)推進宣言」を策定し、国内外の従業員との意見交換を実施した上で、社内外に対して、UACJウェイの「相互の理解と尊重」に基づいて、当社グループのダイバーシティ(DE&I)推進に対する考え方を示しています。
イニシアチブに関しては、「ASI」でのChain of Custody(CoC)認証維持のサーベイランス監査で適合評価を受けるとともに、「International Aluminium Institute (IAI)」に加盟しており、飲料缶の循環性を高めるための提言策定への関与とCOP28における声明発表を行っています。また、「東京大学の先制的LCA研究機構」、「サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ」、「一般社団法人 日本アルミニウム協会」などへの参画を通じ、官公庁や学術界、他産業とのコミュニケーション、業界のルールメイキングへ寄与する活動を展開しております。さらに、2024年度より、2050年のカーボンニュートラル実現と社会変革を通じた持続的な成長を実現するための産官学が議論および市場創造をする場である「GXリーグ」に参画予定です。
(注)1.2019年度(原単位・Category1)をベンチマーク
2.2019年度65%をベンチマーク
3.UACJ (Thailand) Co., Ltd.が対象
2023年度の6つのマテリアリティの目標及び実績は、以下のとおりです。
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マテリアリティ |
評 価 指 標 |
2023年度 目 標 |
2023年度 実 績 |
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気候変動への対応 |
サプライチェーン全体でのCO2排出量の削減量 |
17.3%削減 (Scope1・2の2019年度比・原単位) |
2023年度実績に関しましては、第三者保証取得後に、当社ウェブサイトで公表します。 |
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製品の品質と責任 |
重大品質不具合件数 |
ゼロ |
ゼロ |
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客先クレーム件数(素材有責) |
10%減 (前年比) |
4.2%減 (前年比) |
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労働安全衛生 |
重篤災害発生件数 |
ゼロ |
1件 |
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総合度数率(注1) |
0.25 |
0.17 |
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人権への配慮 |
人権デュー・ディリジェンス(人権DD)の実施と、結果を踏まえた目標づくり、アクションプラン実行 |
4事業所以上での実施 (福井・UATH(注2)・UEXNA(注3)に加えて他1事業所以上) |
6事業所での実施 (2023年度は名古屋・UAAU(注4)・鎌倉産業の3事業所で実施) |
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行動規範、人権、ハラスメント関連の研修実施率 |
行動規範教育実施率96% ハラスメント教育実施率100% |
行動規範教育実施率98% ハラスメント教育実施率100% |
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多様性と機会均等 |
管理職(役員含む)に占める女性比率(注5) |
4% |
4.0% |
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人材育成 |
後継候補者計画の実施率 |
国内グループ会社に展開 |
100% |
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重点分野に関する教育支援活動の受益者数 |
800人/年 |
932人/年 |
(注)1.統計期間中の延べ労働時間あたりの労働災害による死傷者数(不休業を含む)を100万時間で換算した労働災害の発生状況(頻度)を評価する指標
2.UACJ (Thailand) Co., Ltd.
3.UACJ押出加工名古屋安城製作所
4.UACJ Australia Pty. Ltd.
5.UACJ本体及び国内グループ会社における比率
(2)気候変動への対応(気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への取組み)
当社グループは、総合アルミニウムメーカーとして、気候変動対策及び脱炭素社会への移行に積極的に取り組むことが重要な社会的責務であるとの認識を有しており、TCFDにも賛同しております。その上で、事業活動により排出される温室効果ガス(GHG)が、地球の気候変動に影響を及ぼしているという科学的知見に基づき、下記の「行動指針」に則った取組みを進めています。これにより、今世紀末時点での世界の平均気温の上昇幅を産業革命前と比べ2℃未満、できれば1.5℃未満に抑えるというパリ協定の目標達成への貢献を図ります。
[行動指針]
◆事業活動によるCO₂等のGHG排出量の削減活動を継続・拡大・深化して、2050年にScope1・2におけるカーボンニュートラルへの挑戦、その過程である2030年度は30%の削減(2019年度比・原単位)を目指します。
◆Scope3においては2023年12月に、2030年度における30%の削減目標(2019年度比・原単位)を設定しました。2050年に向けてサプライチェーンの様々なパートナーとの協業に取り組み、リサイクル最大化、かつ、サプライチェーン全体でのCO₂排出最小化を目指します。
◆従前より取り組んできた省エネルギーをますます加速するとともに、GHG排出量のより少ない燃料に転換、さらに、再生可能エネルギーの使用を推進します。
◆アルミニウムはLCA(注1)で見た時の軽量化やその何度でもリサイクルできるという特性で、GHG排出量削減に貢献できます。環境配慮型製品ブランドである「ALmitas⁺ SMART」をはじめとして、GHG排出量削減に貢献する製品・サービスの提供に努めます。
◆GHG排出量削減に貢献する技術開発を推進します。
◆GHG排出量削減に関するイニシアチブ活動に自主的、積極的に取り組むとともに、積極的な情報開示に努めます。
(注)1.Life Cycle Assessment。ある製品やサービスの一生(資源の採掘から、製品の製造、使用、廃棄まで)の各段階で生じる環境影響を定量化する手法
①ガバナンス
気候変動対策の取組み体制として、社長執行役員を委員長とする「気候変動対策推進委員会」を設置しています。当委員会のもとに、「カーボンニュートラル対応」「原料調達」「リサイクル推進」「アルミ化推進」の各ワーキング・グループ(以下、WG)を設置しています。また、WGの検討結果や活動成果は、必要に応じて気候変動対策推進委員会から経営会議又は取締役会へ報告し、決議を得ることとしており、経営層が直接ガバナンスを効かせています。
当社グループのあらゆる事業活動を支える基盤であるコーポレート・ガバナンスの詳細については、「
②戦略
当社は気候変動対策のシナリオ分析として、4℃シナリオ及び1.5℃シナリオの2つのシナリオについて実施しました。対象は当社の事業を代表する分野であること、またポートフォリオ上でも重要度が高いことを考慮して「アルミニウム製品事業」の「板製品関連」とし、原材料調達から廃棄・リサイクルに至るすべてのバリューチェーン上のリスクと機会を検討しました。
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4℃ |
1.5℃ |
当社グループの戦略 |
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移行リスク・機会 |
炭素価格 各国の炭素排出目標/政策 |
(日本やタイにおける)炭素税導入は想定されない |
炭素税が導入され、負担コストが上昇 (2050年カーボンニュートラル達成が不可欠) |
Scope1・2のGHG排出削減目標の設定 (2050年カーボンニュートラルへの挑戦宣言) |
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各国のリサイクル規制/政策 |
スクラップ利用率は成り行きで推移 |
スクラップ需要増によるスクラップ価格上昇、アルミニウムのリサイクル性を武器にした販売促進 |
製品におけるリサイクル率向上の推進 UACJリサイクル率の定義および2030年度の目標を設定 川上・川下顧客とのスクラップ回収スキームの確立 |
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エネルギーミックスの変化 |
エネルギーコスト(原油等)の上昇 |
アルミニウム地金製錬国でのエネルギー転換が進み、アルミニウム製錬工程のCO2排出量が低減され、他素材に対する競争力が向上 |
省エネ改善や燃料転換の実施 自社敷地内での太陽光発電の導入 再生エネルギー電力の当社グループ全体での導入(再エネ電力100%工場の誕生) |
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次世代技術の進展 |
リサイクル原料の分別技術は進展しない |
リサイクル技術開発や設備投資の増加、低CO2排出量の製錬法開発によるアルミニウム需要底上げ |
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顧客の行動変化 |
運輸・包材・電気機器分野の売上増 |
(脱炭素化の世界的潮流による)運輸・包材・電気機器分野の売上増 (4℃シナリオより大きい) |
環境配慮型製品ブランド 「ALmitas⁺ SMART」の拡大 当社独自のGHG排出量保証 「ALmitas⁺ SMARTマスバランス」の提供開始 |
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物理的リスク・機会 |
平均気温の上昇 |
高温化に伴う作業環境悪化による生産性低下、灼熱対策コスト増 |
缶材・飲料用アルミパック・クロージャ―材の売上増、空調用フィン材の売上増 |
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異常気象の激甚化 |
洪水による被害増 |
洪水による被害増 (4℃シナリオより小さい) |
事業ごと・拠点ごとのBCP策定推進とレベルアップ |
詳細につきましては、
③リスク管理
当社グループは、気候変動に関する主なリスクを含めた「企業理念の実現を不確実にするすべての事象」(損害・損失に直結しかねない事象のみならず、将来の収益・成長への機会も含む)を「リスク」として管理しています。当社グループのリスク管理体制の詳細は、「
④指標と目標
2022年6月、Scope1・2における2050年カーボンニュートラルへの挑戦を宣言し、2030年度のCO2排出量削減目標を設定しました。Scope3については、2050年にリサイクル最大化およびサプライチェーン全体でのCO2等のGHG排出削減活動によりGHG排出最小化を目指すことを目標に掲げました。さらに2023年12月に、Scope3について2030年度のCO2排出量削減目標を設定しました。UACJリサイクル率の定義および2030年度の目標を設定しました。
2030年度の目標
・Scope1・2 CO2排出量削減率(原単位) △30%(2019年度比)
・Scope3 CO2排出量削減率(原単位) △30%(2019年度比、Category1)
・UACJリサイクル率 80%(ベンチマーク(2019年度)=65%)
当社グループのCO₂排出量の推移は以下のとおりです。2022年度のCO2排出量原単位は0.998t-CO2/製品tとなり、2021年度よりも0.1%減少しました。原単位が改善した主な理由は、2022年度には生産量が減少したことによる原単位の悪化分を、各種の改善活動により挽回することができたためと考えられます。また、2023年度の実績につきましては、第三者保証報告書を取得した後、開示を予定しております。
UACJグループCO₂排出量の推移(国内+海外)
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2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
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燃料 Scope1 CO2排出量(千t-CO2/年) |
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電気 Scope2 CO2排出量(千t-CO2/年) ロケーション基準 |
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Scope1+2 CO2排出量(千t-CO2/年) |
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CO2排出量原単位 (t-CO2/製品t) |
1.118 |
1.109 |
0.999 |
0.998 |
また、Scope3におけるCO₂排出量(サプライチェーンにおけるCO2排出量)の算定結果は以下のとおりです。
2022年度UACJグループのCO₂排出量(Scope3 国内+海外)
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項目 |
GHG排出量 |
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カテゴリー1:購入した製品・サービス |
5,313 |
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カテゴリー2:資本財 |
93 |
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カテゴリー3:Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 |
132 |
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カテゴリー4:輸送、配送(上流) |
114 |
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カテゴリー5:事業から出る廃棄物 |
0.4 |
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カテゴリー6:出張 |
1 |
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カテゴリー7:雇用者の通勤 |
2 |
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合計 |
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(注)Scope3基準及び基本ガイドラインにおけるカテゴリーにて分類しております。なお、カテゴリー8~15については影響が僅少なことから、算定の対象外としております。
(3)人的資本
当社グループでは、2013年の経営統合以来、多くの事業再編等を実施してきました。企業グループとして統合から大きく変化したことを踏まえて、当社グループの社会的な意義、パーパスを見直し、2020年2月にグループ理念の再定義を行いました。また、様々なバックグラウンドを持つ社員が、新しい企業理念である「素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する」に向かうための羅針盤として、「UACJウェイ」を定めました。
UACJウェイでは、「安全とコンプライアンス」を行動原則とし、「相互の理解と尊重」「誠実さと未来志向」「好奇心と挑戦心」という3つの価値観に沿って行動することを定めています
当社グループでは、人的資本への投資により、UACJウェイに沿った行動ができる人材、すなわち「基盤人材」の充実を図り確固たる人的基盤を構築していくとともに、外部環境の変化を踏まえた中長期的な経営目標戦略の達成を牽引できる「戦略的人材」を増強していくことで、企業理念の実現を目指してまいります。
①ガバナンス
経営戦略と人材戦略の連動を図るため、2022年度に社長執行役員の諮問機関として社長執行役員を委員長、副社長執行役員、本部長、事業責任者、その他執行役員を委員とする人材委員会を新設しました。本委員会で当社グループの人材戦略の進捗状況を人事部長から報告、共有し、各委員からのフィードバックに基づき、必要な改善策を検討・実施しております。
また、当社人事部門長と国内グループ会社の人事部門長から構成される総務人事グループ連絡会を年2回開催し、グループ各社から人材戦略の目標設定と進捗状況を報告するとともに、議論や情報交換を行っております。
②戦略
a.基盤人材の充実に向けた戦略
a)人材育成方針
当社グループでは、永続的に事業を継続するための土台となるいつの時代も変わらず必要な人材として、「UACJウェイ」に沿った行動ができる人材を育成し続けてまいります。
b)社内環境整備方針
当社グループでは、UACJグループの企業理念に共感して入社し、ともに「UACJウェイ」を歩み続ける人材のために、各人の安全・衛生・健康を第一に、「UACJウェイ」を体現し、輝ける職場環境をつくり続けます。
当社グループの人材育成及び社内環境整備に関する具体的な施策については以下のとおりとなります。
・人材育成
当社グループでは、変化する事業環境に対応しながら、UACJウェイをベースに、主体的な意思決定や問題解決を主導できる人材の育成が、将来のグループの発展に不可欠なものと位置づけ、従業員一人ひとりが成長を実感し、働きがいを感じることを目指して人材育成に取り組んでいます。具体的には、「従業員一人ひとりの学びによる成長」、「仕事を通して部下を育てる」、「組織で人を育てる」の3つを基本的な考え方とし、「階層別研修」、「ものづくり学園」、「U-KI活動」、「セミナー実施」、「自己啓発プログラム」等の提供の他、「次世代ビジネスリーダー」や「DX人材」等の育成を推進してきました。

その他、UACJウェイの価値観である「相互の理解と尊重」「誠実さと未来志向」「好奇心と挑戦心」を実践できる人材を育成していく観点から、以下の人事諸施策にも取り組んでいます。
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コミュニケーション面談 |
年1回、当社の従業員を対象として、本人及びその上司が中長期のキャリアプランや能力開発等について話し合う制度 |
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360度評価 |
年1回、当社グループの役員・管理職を対象として、UACJウェイに沿った行動の実践度に関する上司・同僚・部下からの評価を対象者にフィードバックする制度 |
|
評価フィードバック |
年1回、当社の従業員を対象として、上司から本人に人事評価、評価理由、来期に関する期待等をフィードバックする制度 |
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人事ローテーションガイドライン |
当社の従業員を対象として、人材育成の観点から、人事ローテーションを適切に行っていくために、人事ローテーションの頻度の目安等を定めたガイドラインを策定 |
・エンゲージメントの向上
当社グループでは、従業員一人ひとりの働きがい・やりがいを高めて、組織力を向上させ、企業理念の実現を図っていく観点から、2019年度からエンゲージメント調査を実施しています。2023年度は、国内グループ会社全21社を対象に実施しました。調査では、従業員の総合的な働きがい・やりがいを示す指標や、それら指標を左右する因子(個人のモチベーション、職場の活気、人事諸制度やトップマネジメントへの評価)の把握を行っています。本データについては、外部専門家と連携して、社長執行役員以下経営層及び各部門長にフィードバックしています。その後、各部門内でエンゲージメント調査の結果について対話を実施するとともに、エンゲージメント向上に向けた自主改革の取組みを毎年度、各部門で策定・実施しています。その他、エンゲージメント調査の結果を踏まえて、UACJウェイの価値観の一つである「好奇心と挑戦心」の実践を後押しする人事諸制度の改善を以下のとおり実施してきました。
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グループ公募制度 |
意欲を有する従業員のキャリア開発や適材適所の機会の提供として、自ら手を挙げることによって、新規事業、新規部門、新規プロジェクト等で働くことができるチャンスを提供。2019年度の新設以来、11名が公募で異動。 |
|
キャリアカウンセリング |
従業員が自らのキャリアを自律的に構築する機会の提供として、外部キャリアカウンセリング窓口を設置。2021年度の設置以来、75名が利用。 |
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副業制度 |
従業員の主体的なキャリア形成、能力開発・スキル向上の機会の提供として、当社業務を本業とすること等を条件に、副業を許可。2024年4月時点で10名が副業中。 |
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選択型Eラーニング |
従業員の自律的な学びの機会の提供として、従業員の多種多様なニーズに対応した幅広いメニュー数(2024年4月時点1,007メニュー)を有するプログラムを提供。 |
・採用、リテンション施策の実施
当社では、当社グループの企業理念に共感いただき、UACJウェイの価値観に沿った行動ができる素養を持った方の獲得に向けて、新卒採用のほか、キャリア採用、第二新卒採用、リファラル採用等にも積極的に取り組んでいます。また、2022年度からは、当社を退職された方をアルムナイ(卒業生)と位置づけ、希望者が参加できるネットワークを構築。2024年4月時点で5名の方が登録しています。2023年度からは、このネットワークを活用し、ご本人と会社の意向がマッチした場合は再入社を可能とする「カムバック雇用制度」を導入。2024年4月時点で2名の方がカムバック雇用されています。本制度はUACJウェイの一つの価値観である「相互の理解と尊重」の文化の醸成にも繋がるものと考えています。また、当社に入社された一定の若年層の方を対象に、UACJウェイに沿って独り立ちして行動できるまでの期間、外部のコミュニケーションツールを利用して、毎月コンディションを把握し、人事部門担当がメンターとして、必要に応じ対象者の仕事の悩みや相談に対応し、将来の活躍に向けた支援を行う取組みも行っています。
[参考]UACJの求める人物像
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●自分自身の意見を持ちつつ、お互いの考え方、価値観を認めポジティブな人間関係が構築できる方 ●誠実に仕事や人に向き合って粘り強く取り組み、最後までやり切ることができる方 ●好奇心と挑戦心をもって、様々な課題に楽しみながらチャレンジし、未来に向かって変革を起こそうとすることができる方 |
・後継者計画の実行
当社では、UACJウェイに定める3つの価値観を体現した将来の経営幹部候補人材を計画的に育成・拡充していくために、優先的に取り組むべきマテリアリティ(重要課題)の一つに「後継者計画の策定」を特定しています。2020年度までは、当社の部長クラス以上を対象に後継者計画を策定し、2021年度からは課長クラスに拡大、2023年度からは国内全グループ会社の課長クラス以上に拡大して後継者候補を選出しています。当該後継者計画に基づき、対象者には経営幹部候補人材として必要な経験を積むためのローテーションを実施しているほか、必要な経営知識やスキルを学ぶためのビジネスリーダー育成プログラムの提供を進めています。
・ダイバーシティの推進
当社グループは、UACJウェイの「相互の理解と尊重」に基づき、ダイバーシティ(DE&I)の考え方を大切にしています。昨年度、その内容をより具体化した「ダイバーシティ(DE&I(デ・ア・イ))推進宣言」を策定いたしました。従業員それぞれが持つ能力の発揮とイノベーションの創出といった会社の持続可能な成長の両輪での相乗効果を目指します。具体的には、女性活躍については、2023年度までに女性管理職比率(国内グループ会社・役員含む)を4%以上とすることを目標に、女性採用割合を20%以上とする他、柔軟な働き方の整備、女性特有の健康課題への支援等に取り組んできました。これらの取組みが評価され、2024年には、女性活躍推進法に基づく優良企業「えるぼし」3段階目に認定されました。キャリア採用についても多様性と競争力強化を目的に積極的に実施しています。外国籍人材については、当社の新規学卒者全体の10%を確保することを目標に毎年度、採用活動を継続しています。高齢者については労働力人口が減少していく中で、今後、さらに活躍を推進していく観点から、定年退職再雇用者についても現役従業員同様の賃金改善を実施するとともに65歳超雇用も積極的に進めています。最後に、障がい者雇用については、特例子会社(株式会社UACJグリーンネット)の活用により法定雇用率を超える雇用(2023年6月時点2.55%)を実現しています。また、2024年度からの法定雇用率の引き上げを踏まえて、農園型障がい者雇用にも新たに取り組んでいます。
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[参考]当社の採用実績(単位:名)
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新卒採用 |
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キャリア採用 |
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採用全体 |
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男 |
女 |
小計 |
男 |
女 |
小計 |
男 |
女 |
合計 |
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2021年度 |
47 |
10 |
57 |
117 |
6 |
123 |
164 |
16 |
180 |
|
2022年度 |
54 |
12 |
66 |
120 |
11 |
131 |
174 |
23 |
197 |
|
2023年度 |
71 |
9 |
80 |
73 |
24 |
97 |
144 |
33 |
177 |
・ワークライフバランスの推進
当社では、従業員一人ひとりが仕事と生活のバランスをうまくとりながら、UACJウェイに沿って、働きがい・やりがいを持ちながら働くことができるように、「時間外労働の削減」、「有給休暇の取得推進」、「育児休業の取得推進」、「多様な勤務制度の整備」、「効率的な業務実施に向けた環境整備」に取り組んでいます。「時間外労働の削減」については月45時間超過者の削減を目標に計画人員の確保等に取り組んでいるほか、「有給休暇の取得推進」については、労働基準法を超える年6日又は年7日を最低限の必達目標に定めて、人事部門から取得状況のフォロー等を行っています。こうした取組みの結果、経営統合以降、ピーク時の2017年度には2,174時間であった年間総実労働時間は2023年度には2,060時間まで削減されています。「育児休業の取得推進」については、特に男性の育児休業の取得に関して、「取得率30%以上、平均取得期間2週間以上」を目標に、子供が生まれた男性従業員に対して人事部門から取得状況のフォローを行っています。その結果、2023年度には対象となる男性従業員の74%が平均28.9日間の育児休業を取得しました。「多様な勤務制度の整備」については、生産性の高い働き方の実現に向けて、専門型・企画業務型裁量労働制、コアレスフレックス勤務制度、短時間コアレスフレックス勤務制度、時間単位有給休暇制度、半日単位有給休暇制度等を導入しており、多くの従業員が有効に活用しています。また、新型コロナウイルス感染防止対策として2020年度から暫定的に取り組んできた在宅勤務については、2021年度より制度化し、出社と在宅勤務をハイブリッドで組み合わせて勤務することを可能としました(部門長の判断により、完全在宅勤務も可)。さらに2023年度からは、在宅勤務制度を活用して、一定条件のもと、遠隔地での勤務を可能とする制度を導入しました。本制度により結婚、配偶者の転勤、介護、単身赴任等の事情により、現事業所での継続勤務が困難となった場合でも、転勤を伴わずに、自宅での継続勤務が可能となり、ワークライフバランスの実現に寄与しています。また、「効率的な業務実施に向けた環境整備」については、RPA(Robotic Process Automation)やチャットボットの活用による定型業務、問い合わせ業務の削減や効率化を進めています。これらの取組みが評価され、2024年には、次世代育成対策推進法に基づく「子育てサポート企業」として「くるみん」認定を受けております。また、仕事と介護の両立支援に取り組み企業として「トモニン」の取得もしております。
・労働安全衛生
当社グループでは、UACJウェイにて「安全第一とコンプライアンス」を企業活動の基盤とし、「従業員の安全・衛生・健康は全てに優先する」という考えのもと、優先的に取り組むべきマテリアリティ(重要課題)の一つに「労働安全衛生」を特定して、全員参加の安全衛生活動を実施しています。具体的には、労働に関する法令や社内規則を遵守するとともに労働安全衛生マネジメントシステムを構築し、適切な管理を行うことにより安全で衛生的・健康的な職場環境づくりに取り組んでいます。
・健康経営の推進
当社グループでは、UACJウェイにて「安全第一とコンプライアンス」を企業活動の基盤とし、「従業員の安全・衛生・健康は全てに優先する」という考えのもと、2021年9月にUACJグループ健康経営宣言を発表しました。当社グループでは、健康経営宣言に基づき、以下の推進体制のもと社員の健康の維持・増進に努めています。社長執行役員を委員長とする安全衛生委員会には、全執行役員が参加し、活動内容・課題の共有と対策についての討議を行っています。2024年3月には、従業員の健康管理に戦略的に取り組む企業として、「健康経営銘柄2024」「健康経営優良法人2024(ホワイト500)」に初選定されました。
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・魅力ある処遇の実現
当社グループでは、2023年5月に発表したマルチステークホルダー方針に則り、サステナビリティ経営の推進、従業員の能力開発やスキル向上等を通じて、持続的な成長と生産性向上に取り組み、付加価値の最大化に注力しています。その上で、生み出した収益・成果を踏まえて、「UACJウェイ」に沿った行動ができる人材を獲得・育成・充実していくことを目的に、賃金の引上げをはじめとした、総合的な処遇改善に取り組むことを通じて、従業員への持続的な還元を目指してまいります。2023年度については、下表に記載の取組みを主に行ってまいりました。また、福利厚生の活用・充実に意欲的に取り組む法人を称える表彰制度「福利厚生表彰・認証制度(通称「ハタラクエール」)」において、特に優れた取組みを行う企業として、最高位の「優良福利厚生法人・総合」を当社は2024年3月に初めて受賞しました。
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賃金改善 |
・物価上昇への対応、採用競争力及びリテンションの観点から、2024年4月に前年度に続き、過去最高となる組合員平均月額約20,500円(6.5%)の賃上げ(定期昇給含む。以下同様。)を実施。国内グループ会社において過去最高となる賃上げ実施。 |
|
資産形成 |
・「UACJ VISION 2030」の達成に向けた、従業員のオーナーシップの向上及び自律的な資産形成の支援の観点から、従業員持株会の奨励金を70円/口から150円/口に引き上げ。※2024年4月時点の当社+国内グループ会社18社の加入率は50%。 ・ファイナンシャルウェルビーイングの観点から、外部金融機関とも連携し、当社の制度を活用して賢く資産形成するためのセミナーを従業員向けに初めて提供。 会社の制度を熟知した専門のコンサルタントが無料で従業員の個別相談に対応するライフプラン相談窓口も設置。 |
・健全な労使関係の継続
当社の従業員はUACJ労働組合に、その他のグループ会社従業員においては、それぞれの会社における労働組合に属しています。各社と各労働組合とは、UACJウェイに定めた「相互の理解と尊重」の価値観のもと、健全な労使関係を持続しています。
・コンプライアンスの取組み
当社グループでは、UACJウェイにて「安全第一とコンプライアンス」を企業活動の基盤としており、コンプライアンスの徹底に向けた啓発活動を強化しています。当社グループが企業としての社会的責任を果たし、社会から信頼される企業グループとなるために、役員及び従業員が遵守すべき事項を「UACJグループ行動規範」に定めるとともに、部単位で定期的かつ継続的に勉強会を行うことでコンプライアンス意識の浸透や法令知識の向上に努めています。また、コンプライアンス違反事案の未然防止、早期発見・早期解決を目的に内部通報制度を運用しています。
・人権の尊重
当社グループは、UACJウェイにおける「相互の理解と尊重」という価値観を実践していくために、「人権への配慮」を優先的に取り組むべきマテリアリティ(重要課題)の一つとして特定しています。具体的には、UACJグループ人権基本方針を定め、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」、国別行動計画である「ビジネスと人権に関する行動計画」に沿った活動を推進しています。また、「UACJグループ行動規範」において、「人権の尊重」、「ハラスメントの禁止」、「児童労働・強制労働の禁止」、「労働基本権の尊重」などを定め、階層別教育や行動規範に関する部内教育の場などにおいて、周知徹底に取り組んでいます。
[理念対話会の継続とUACJグループウェイ賞の創設とUniposの導入]
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2020年4月から理念の浸透とエンゲージメント向上を目的に、社長執行役員及びグループ会社社長、製造所長などの幹部層の社員による従業員との「理念対話会」を継続して実施しています。また、2021年度には、UACJグループ理念に沿う活動・案件を社内より募集し、理念をより体現している活動・案件について、社長執行役員が職場・チーム・個人に対して表彰する「UACJグループウェイ賞」を創設しました。さらに、2021年4月より「Unipos」(社内のだれもが見られるオープンなタイムライン上で、少額のポイントとともに感謝・称賛のメッセージを送るWebサービス)を導入し、社員同士がUACJウェイに沿った行動について褒め合うことも行っています。人事諸施策も含めた様々な活動を通じて、今後もUACJウェイの浸透を図ってまいります。 |
b.戦略的人材の増強に向けた戦略
2022年度から人材戦略プロジェクトをスタートしています。経営戦略と人材戦略の連携強化を目的に「グローバル」「事業基盤」「付加価値創出」「開発イノベーション」の4つの人材要件を定義し、「人材力の強化」「組織力の強化」及び「仕組みの整備」の観点から人事諸施策を展開し継続的な戦略的人材の獲得、育成に取り組んでいます。
2024年度からは「UACJ VISION 2030」実現の蓋然性をさらに高めるため「人材の質と量の最適化」「人材マネジメントの強化」を人材戦略の2本柱として増強を図ってまいります。
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③リスク管理
人材領域に関するリスク管理については、全社のリスク管理に統合されているため、詳細は「
④指標と目標
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[総合目標] |
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人材戦略実現に向けた要素 |
KPI |
2022年度実績 (注2) |
2023年度実績 (注2) |
目標値 (注3、4) |
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|
UACJウェイに沿った行動ができる人材「基盤人材」の充実 |
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3.42点 |
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3.34点 |
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|||
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[施策ごとの個別目標] |
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人材育成の推進 |
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3.25点 |
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|
||
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エンゲージメントの向上 |
|
3.22点 |
|
|
||
|
採用・ リテンション施策 |
|
3.01点 |
|
|
||
|
|
3.40点 |
|
|
|||
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後継者計画の実行 |
後継候補者計画の実施率 |
当社における課長職 以上100% |
国内グループ会社に展開 |
国内グループ会社に展開(2023年度) |
||
|
ダイバーシティの推進 |
|
3.03% |
|
( |
||
|
ワークライフ バランスの推進 |
|
3.29点 |
|
|
||
|
労働安全衛生 |
|
ゼロ
|
|
ゼロ ( |
||
|
|
0.25
|
|
( |
|||
|
健康経営の推進 |
健康経営度調査における 総合評価(偏差値) |
59.5 |
|
( |
||
|
魅力ある処遇の 実現 |
|
2.68点 |
|
|
||
|
健全な労使関係の構築 |
(特に指標は設定せず) |
- |
- |
- |
||
|
コンプライアンスの取組み |
|
3.54点 |
|
|
||
|
人権の尊重 |
人権DD実施と、結果を踏まえた目標づくり、アクションプランの実行 |
人権DDの仕組み構築 |
6事業所実施 |
4事業所実施 (2023年度) |
||
|
行動規範、人権、ハラスメント関連の教育実施率 |
行動規範教育 92% ハラスメント教育 100%
|
行動規範教育 98% ハラスメント教育 100%
|
行動規範教育 96% ハラスメント教育 100% (2023年度) |
|||
(注)1.エンゲージメント調査は外部機関の調査ツールを使用しております。5点満点で点数が高いほど肯定的な回答を示しております。
2.2022年度及び2023年度実績の各項目について「後継者計画の展開」「健康経営の推進」は当社の数値、「労働安全衛生」「人権への配慮」は当社及び海外を含む一部のグループ会社の数値、その他は当社及び国内グループ会社の数値を記載しております。
3.エンゲージメント調査結果を指標としている項目は、従業員数3,000~4,999人の企業の平均値(外部機関調査)を目標値とし、継続的に取り組むものです。但し、「UACJウェイの実践度」の目標値については独自に設定した値としております。
4.目標値欄に(2023年度)と記載した項目は、2023年度における目標値を示しております。
[グループリスクマネジメント体制]
当社グループは、企業理念の実現を不確実にする全ての事象を「リスク」と認識して、「UACJグループリスクマネジメント基本方針」に従い、グループ全体でリスク管理に取り組んでいます。
グループ全体のリスク管理としては、社長執行役員、副社長執行役員、経営戦略本部長及びリスクオーナーで構成されたリスクマネジメント推進会議(年4回)を開催することで経営幹部による議論を深める体制を運用しています。その上で、事業環境の変化に、より迅速に対応するために、経営会議(月2回開催)において、リスクマネジメント推進会議での議論内容について適宜報告・審議しています。この体制の下、次のような活動を実施しています。
(1)グループ全体のリスクを洗い出し、重要度が高いリスクを選定し、執行役員クラスの「リスクオーナー」を配置したリスク対応体制を決定
・幹部によるリスクアセスメント(第2四半期)
・リスクマネジメント推進会議他での議論(第2~3四半期)
・経営会議で決定(第3四半期)
(2)グループリスクマネジメントの方針・活動計画の審議
・リスクマネジメント推進会議での議論(第4四半期)
・経営会議で審議のうえ決定(第4四半期)
(3)グループ各社でのリスク管理(通年)
(4)グループリスクマネジメント活動の進捗モニタリング(PDCAの確認)
・リスクマネジメント推進会議で進捗確認(第1~4四半期)
・経営会議で報告(第4四半期)
このようなグループリスクマネジメント活動について、当社グループではリスクマネジメント担当責任者とリスクマネジメント事務局を設置しています。
各事業及び主要なグループ各社には、それぞれリスクマネジメントを推進する担当者を設置し、リスクマネジメントの実践強化に取り組んでいます。
リスクマネジメント事務局は、各事業・グループ各社との連携を図りながら、グループ全体のリスク管理を推進・支援しています。
このようなグループのリスクマネジメント活動については、定期的に取締役会に報告しています。
*PDCA:Plan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善)の略
[主要なリスク]
本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、発生の可能性・影響度等から、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると当社が考える主要なリスクには、以下のようなものがあります。
|
[凡例]「1.外部に主要因のあるリスク」「2.内部に主要因のあるリスク」では、次の項目を表形式で記載しています。 (1)「リスクの内容とその影響」:各リスクの具体的な内容と当該リスクが顕在化した場合に当社グループの事業に影響を及ぼすと想定される主な事項 「●」:「影響」のうち、当社グループの事業に対する脅威となり得るもの (2)「対応」:当該リスクに対する主な対応策 リスクに*のついている項目:UACJマテリアリティとして選択した項目 リスクに**のついている項目:UACJの当たり前として選択した項目 リスクに***のついている項目:全社重点方針として取り組む項目 |
1.外部に主要因のあるリスク
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リスク |
リスクの内容とその影響・対応 |
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気候変動等地球環境の変化* |
[リスクの内容とその影響] ● 地球温暖化による気候変動への影響が大きいと言われている温室効果ガス(GHG)排出削減への取組みの不十分さによる素材間競争での劣後や事業機会の喪失 ○軽量性、高い熱伝導性、永久にリサイクルが可能であること等、アルミニウムの特性を活かした製品とサービスの提供による社会課題解決への貢献機会拡大や事業機会の拡大 [対応] ■気候変動対策推進委員会による経営層の確認・審議の継続 ■UACJマテリアリティとして特定し、アクションプランとKPIを設定して活動継続 ■気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)賛同や、ASI(Aluminium Stewardship Initiative)の認証取得、CDP(Carbon Disclosure Project)、GXリーグ(24年度~)など、気候変動対応に関わる第三者によるイニシアチブへの積極的な参画 ■カーボンニュートラル挑戦宣言の公表、ICP(Internal Carbon Pricing)、環境保証(マスバランス方式)の運用・提供開始、CBAM(炭素国境調整メカニズム)対応開始(2024年1月~) ■環境関連マテリアリティについて、従来の「気候変動への対応」に加え、新たに 「アルミニウムの循環型社会」の牽引(サーキュラーエコノミー)」と「自然の保全と再生・創出(ネイチャーポジティブ)」を追加して見直ししたことを開示(2023年12月)。 |
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政治環境・経済動向の変化(地政学的リスク) |
[リスクの内容とその影響] ● 顧客や仕入先及び当社生産拠点のある国の政治状況・経済状況・急な規制等の導入や治安の悪化による販売・物流・調達コストの上昇、調達困難及び操業継続困難 ● 当社事業の所在国での紛争などによる従業員の安全への影響 [対応] ■特定の国・地域に集中しない原材料等の分散調達 ■必要かつ適切な在庫の確保、製造代替拠点の複数化検討 ■損益分岐点の引き下げ等外部環境変化への対応力向上策の実施継続 ■コスト上昇や相場変動を販売価格に適切に転嫁できる値決め体系の整備 ■国内外の政治経済動向のモニタリングの強化 |
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感染症の蔓延 |
[リスクの内容とその影響] ● 感染症の蔓延によるサプライチェーン(購買・調達)への影響 ● 感染症の蔓延による顧客操業状況変化に伴う生産・販売への影響 ● 感染症の蔓延による操業の遅延・中断・停止 ● 感染症の強毒化による従業員の生命への影響 [対応] ■感染症BCP(Business Continuity Plan)の強化 ■必要かつ適切な在庫の確保 ■顧客情報の早期収集及び柔軟な生産計画
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自然災害 |
[リスクの内容とその影響] ● 世界各地の事業拠点での地震、津波、台風、洪水などの自然災害による従業員及びその家族の安全、生産設備の安全、社会インフラ、顧客やサプライチェーンにダメージが生じた場合の当社の生産や販売活動への影響 [対応] ■事業ごと・拠点ごとのBCP策定推進とグループレベルでのBCM(Business Continuity Management)の継続的なレベルアップ ■実効性のあるBCM確立に向けた定期的な訓練の実施 ■有事の通信手段冗長化 |
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社会的基盤となる技術や需要構造の変化 |
[リスクの内容とその影響] ●○デジタル技術等、社会基盤となる技術の急速な変化や進展、地球環境保護に対する企業貢献への期待増等の社会情勢の変化 ●○革新的な技術によって競争激化し、代替素材との置き換えによる需要構造の変化 [対応] ■デジタル活用基盤の整備は、今後の当社事業発展の根幹を担うばかりでなく、社会課題解決への貢献を支える重要な基盤と認識し、DX推進プロジェクトでの、製造・販売・経営管理の基幹業務でデジタルを使った見える化、自動化を継続的に推進。デジタル活用人材の育成にも注力 ■現場からの発案を起点とする社内ベンチャー制度の運用により、折り畳み式ワークブース「origami」、アルミボトル備蓄水「水の架け橋」を新製品として上市。 ■需要構造の変化も捉えた新たな事業を創出する仕組みの立上げ ■各需要分野における他素材との競合度合、比較優位性、社会的要請の変化、これらに対する当社の技術開発の進捗状況を継続的に調査・評価 ■新ブランド「Almitas⁺(アルミタス)」を活用したアルミ製品の新分野、新領域への拡販やPR活動、また、環境配慮を意識した製品群「ALmitas⁺ SMART」の拡販 ■市場動向の「収集」「分析」「モニタリング」を継続 |
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市況の激変 |
[リスクの内容とその影響] ●○アルミ新地金価格の変動: 相場変動を販売価格に反映する値決め方式の定着により、大半の当社グループの事業では、中長期的にアルミ新地金価格の変動が収益に影響しない構造になっているが、相場変動と販売価格への反映時期の差異や短期間での急激な変動等が発生した場合、棚卸資産の評価の変動により、会計上の期間損益に影響を生じる可能性がある。 ●○スクラップ、UBC(Used Beverage Cans:使用済み飲料缶等)価格の変動: 今後のリサイクル需要の増減によるスクラップ、UBCの価格変動や調達への影響 ● 合金用添加金属等の原材料、物流費、エネルギー価格等の変動: 短期間での大幅な変動、サプライチェーンの慢性的かつ構造的な問題に起因する変動に見舞われ、当社単独では吸収しきれない大きな影響を生じる可能性がある。 ●○為替・金利の変動: 特に金利の急激な上昇は、国内外の当社事業全般に影響を与える可能性がある。 [対応] ■販売予測の精度向上による在庫量の適切なコントロール ■スクラップ、UBC、合金用添加金属等の原材料の需給変動・価格変動に柔軟に対応し、 物流費・エネルギー価格についても、速やかに価格変動を反映する値決め体系の導入。 ■金利上昇を睨んだ資金調達の多様化・柔軟性の確保、運転資本削減の取組み ■市況動向の「収集」「分析」「モニタリング」を継続
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2.内部に主要因のあるリスク
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リスク |
リスクの内容とその影響・対応 |
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安全衛生** |
[リスクの内容とその影響] ● 業務上の事故や疾病に伴う人的・物的被害の発生による従業員等の安全衛生確保への影響 ● 被災による当社グループの生産活動への支障の発生 [対策] ■安全衛生委員会による経営層の確認・審議の継続 ■安全衛生方針の策定と課題への取組みの継続 ■安全衛生に関する規則の整備、教育の実施の継続 ■UACJマテリアリティとして特定し、アクションプランとKPIを設定して活動、マテリアリティとの相互関係を再整理し、2024年4月以降はUACJの当たり前として活動継続 ■「安全とコンプライアンス」はUACJウェイの基盤となる当たり前の行動原則であることを確認し、安全と健康を最優先とした事業活動の継続 ■火災・爆発リスクのアセスメント等、職場の危険有害要因排除のための経営資源の配分と対策活動の取組み継続 ■デジタル技術を活用した安全対策の推進 |
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環境への配慮 |
[リスクの内容とその影響] ● 環境事故(排水環境負荷物質の流出や大気環境負荷物質の排出等)の発生の脅威 [対応] ■環境委員会による経営層の確認・審議の継続 ■環境方針の策定と課題への取組みの継続 ■環境に関する規則の整備、教育の実施の継続 |
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製品の品質** |
[リスクの内容とその影響] ● 品質保証に関わる不正や不適切な処理、品質規格未達製品の発生・流出による顧客その他のステークホルダーからの信用失墜 ● 品質仕様未達発生による顧客や市場での不具合、 供給責任の未達成 ○品質管理の徹底による顧客や市場の信頼・支持のさらなる獲得 [対応] ■品質委員会による経営層の確認・審議の継続 ■品質管理方針の策定と課題への取組みの継続 ■品質に関する規則の整備、教育の実施の継続 ■UACJマテリアリティとして特定し、アクションプランとKPIを設定して活動、マテリアリティとの相互関係を再整理し、2024年4月以降はUACJの当たり前として活動継続 ■品質確認試験の自動化拡大 ■グループ内品質相互監査の継続 ■外部専門家による試験・検査データの信頼性に特化したカスタマイズ監査の結果を基にして、「品質保証ガイドライン(UACJ版)」の改訂(2023年度) |
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人材*** |
[リスクの内容とその影響] ● 少子高齢化による人材確保競争の激化 ●○海外での事業拡大に伴う必要スキルの変化(高度化) ●○適材適所の人材活用 ● 離職による人材定着への影響 [対応] ■人材委員会による経営層の確認・審議の継続 ■UACJマテリアリティとして特定し、アクションプランとKPIを設定して活動、マテリアリティとの相互関係を再整理し、2024年4月以降はUACJの当たり前として活動継続 ■経営人材育成検討会議による組織的・計画的な後継者計画と人材育成計画の協議を継続 ■「ものづくり学園」等、現場作業技能伝承を図る教育システムの充実 ■社内公募制度による社内人材の有効活用及び採用施策(採用地域拡大、採用媒体拡充、リテンション対策、女性が活躍できる環境整備など)の取組み継続 |
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人権への配慮* |
[リスクの内容とその影響] ●○事業拠点所在国の社会的・文化的事情も考慮した人権への配慮の成否 ● サプライチェーンも含んだ人権対応が不十分である場合、ステークホルダーからの信用失墜、社会的制裁や訴訟問題の発生 [対応] ■コンプライアンス委員会による経営層の確認・審議の継続 ■UACJマテリアリティとして特定し、アクションプランとKPIを設定して活動継続 ■人権ワーキンググループによる討議・協議 ■「UACJグループ人権基本方針」にある人権デュー・ディリジェンスを実施(名古屋製造所、UACJ Australia Pty. Ltd.および鎌倉産業) ■「サステナブル調達ガイドライン」の策定・対外開示
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多様性と機会均等* |
[リスクの内容とその影響] ● 多様性と機会均等への対応が不十分である場合、ステークホルダーからの信用失墜、社会的制裁 ●○多様性と多様性の組織への包摂への十分な対応: ・不十分な場合には、VUCA(変動性,不確実性,複雑性,曖昧性)の時代に迅速かつ十分に対応が行えず企業の競争力を失うことや多様な従業員を惹きつけることができず、従業員の維持・採用が困難になる。 ・十分対応できている場合では、事業活動の活性化や将来に向けたイノベーションや事業の強靭化(レリジエンス)へ寄与する。 [対応] ■人材委員会による経営層の確認・審議の継続 (人材の項目で記載の委員会と同様) ■UACJマテリアリティとして特定し、アクションプランとKPIを設定して活動継続 ■エンゲージメントサーベイ及び職場改革の活動継続 ■ダイバーシティ(DE&I)推進宣言を策定 ■企業理念の浸透と従業員の声を聞く理念対話会グローバルに実施 ■働き方改革の各種取組みの活動継続 ■中途・新卒採用及び管理職における女性比率の目標設定 ■新規学卒採用における外国籍人材割合の目標設定 ■特例子会社を活用した障害者採用の促進 ■定年退職者再雇用制度による高齢者の活用 ■海外ローカル従業員の日本研修の拡充 ■キャリア採用の継続実施とアルムナイ(Alumni)採用の試行的導入 ■従業員のキャリア開発を支援するキャリア面談や各種研修の継続 ■ワークライフバランス実現のための施策 |
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法令遵守(コンプライアンス) |
[リスクの内容とその影響] ● 法令違反に対する刑事罰・行政処分・損害賠償責任の発生、信用の失墜による事業機会の滅失 ● 新たな法規制・制度への対応コスト ● 各種ハラスメントによる信用への影響 [対応] ■コンプライアンス委員会による経営層の確認・審議の継続 ■UACJ分科会、グループ会社分科会(コンプライアンス委員会で審議・方向付け・報告された事項をグループ内に展開・推進並びにグループ内の問題を情報共有する場)の運用開始(2023年4月~) ■「安全とコンプライアンス」が当社経営の最優先事項であることの啓蒙・浸透・各種法令教育の拡充(UACJグループ行動規範の教育継続、ハラスメント教育の実施、人事階層別教育継続実施など) ■社内通報窓口、ルートの拡充 ■内部業務監査での遵法性確認の継続実施 |
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グループガバナンス |
[リスクの内容とその影響] ●○国内外のグループ各拠点へのグループとしての重要施策浸透やグループ各拠点を統合した運営の巧拙によるグループとしての総合力の発揮への影響 [対応] ■当社グループ企業理念の浸透 ■グループ内部統制強化の継続推進 ■社長執行役員他経営幹部とグループ従業員との理念対話会の継続実施 ■内部統制監査・業務監査の継続実施 ■UACJの規程類整理の継続 |
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情報管理 |
[リスクの内容とその影響] ● 顧客から提供された情報、個人情報、営業上の秘密、技術情報等の漏えいが発生した場合の損害賠償責任、信用失墜とこれらに起因する取引機会の喪失 ● サイバー攻撃等による当社情報システムの停止による操業の中断、復旧その他の対応コストの発生 ● 経済安全保障関連法令による情報管理強化への要請の高まり [対応] ■「グループ情報セキュリティ基本方針」、「グループ情報管理規程」、「グループ電子情報セキュリティ規程」、「グループ技術情報管理規程」による管理の継続徹底 ■経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構制定の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」に基づいたアセスメントや各種セキュリティレベルの向上策の実施 ■外部監視システム及び社内検知システム導入の拡大、サイバー保険の加入 ■個人情報保護法の改正に対応 ■セキュリティ教育実施 |
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資金調達 |
[リスクの内容とその影響] ● 事業環境、金融環境の変化による資金調達の制約、資金調達コストの上昇 [対応] ■銀行借入におけるコミットメントラインによる流動性枠の設定、コマーシャル・ペーパーによる直接調達、アセットファイナンス等の資金調達手段の多様化推進 ■事業収益性、資本効率性の向上等でキャッシュ・フローの創出力を強化 |
3.会計上の評価・見積りに関するリスク
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リスク |
リスクの内容 |
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非金融資産の減損 |
当社グループの連結財政状態計算書に計上されている有形固定資産、のれん及び無形資産等の非金融資産の減損について、今後、収益性の低下及び公正価値の変動等により回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には減損損失が発生する可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループの経営成績等への影響が大きいリスクを取り上げていますが、全てのリスクを網羅している訳ではありません。また、各リスク以外にも、現時点では予測できないリスクの発生により、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。当社グループでは、上述の[グループリスクマネジメント体制]や各リスクに関する記載の中の対応等を講じておりますが、それらの対策が当社の意図するとおりに実現できない可能性もあります。
なお、文中における将来に関する事項は、別段の記載がある場合を除き、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループは、第1四半期連結会計期間より国際会計基準を適用しております。また、前連結会計年度の財務数値についても、IFRS会計基準に組替えて比較分析を行っております。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当期の世界経済について、新型コロナウイルス感染症による経済活動への制約が無くなったものの、ロシアのウクライナ侵攻の長期化、米国等の金融政策の不透明感、中国経済の減速等が経済活動に影響を及ぼしております。国内経済においては、個人消費やインバウンド需要に支えられ、非製造業を中心として景況感は総じて改善しましたが、経済全体の景気回復は足踏みの状態となっています。また、地政学リスクへの不安、円安と賃金上昇などインフレ圧力の定着等、当社を取り巻く経営環境は依然として先行き不透明な状況にあります。
アルミニウム製品業界について、板類の国内需要は前期比で減少しました。自動車関連材は前期に対して堅調に推移した一方、物価高の影響等により個人消費が減速したことで缶材が減少したほか、半導体製造装置関連および電気機械や建設分野などにおける需要の下振れもあり、国内需要は前期比で減少となりました。押出類に関しても、自動車関連材が前期比で増加したものの、押出類全体としては前期比で需要は減少となりました。
当社グループの国内向け販売数量は、板類では前期に対して缶材が微増、自動車関連材が堅調に推移した一方、半導体製造装置関連および電気機械や建材需要の下振れ等により、全体としては前期並の販売数量となりました。押出類については、自動車関連材の販売数量は前期比で増加したものの、全体での需要の下振れ等を背景に、前期比で減少となりました。
当社グループの海外向け販売数量についても、Tri-Arrows Aluminum Inc.やUACJ (Thailand) Co., Ltd.の缶材の減少により前期を下回り、当社グループの販売数量は前期比で減少する結果となりました。
(財政状態の分析)
為替換算影響等による売掛債権の増加等により、当連結会計年度末の資産については914,430百万円(前期末比2.1%増)となりました。負債については有利子負債の返済を進めたこと等により612,384百万円(同2.4%減)となりました。
資本については、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上や在外営業活動体の換算差額の増加等により、302,046百万円(同12.7%増)となりました。
(経営成績の分析)
このような環境のもと、販売数量の減少やアルミ地金価格の下落等の影響により、連結売上収益は、892,781百万円(前期比6.6%減)となりました。一方、損益については、販売数量の減少及び棚卸資産影響の悪化の影響を受けながらも、エネルギー・添加金属価格高騰等についての販売価格転嫁など価格改定の効果により、連結営業利益31,378百万円(同177.2%増)、連結税引前利益21,969百万円(前期は1,699百万円の利益)、親会社の所有者に帰属する当期利益13,858百万円(前期は1,315百万円の損失)となりました。
なお、当連結会計年度より、当社の報告セグメントを単一セグメントに変更したため、セグメント別の記載を省略しております。
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末より16,842百万円増加し、40,199百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の増加や、棚卸資産の圧縮を進めたこと等により、前期比40,699百万円増加し、94,918百万円の収入(前期は54,219百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、一般投資を中心とした有形固定資産の取得による支出が増加し、36,196百万円の支出(前期は28,223百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済を進めたこと等により、43,994百万円の支出(前期は25,075百万円の支出)となりました。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の仕入等の製造費用や販売費及び一般管理費等であります。また、投資を目的とした資金需要は、主として設備投資によるものであります。これらの資金需要に対して、自己資金及び金融機関からの借入金等により手当てしております。
資金調達の実施にあたっては、金融機関からの借入の他、コマーシャル・ペーパー、売上債権の流動化等の多様な手段の中から、市場環境や当社の貸借対照表の状況等を考慮した上で、当社に最適な手段を選択しております。
手元流動性の確保の手段としては、金融機関とコミットメントラインの契約を締結するとともに、金融情勢を勘案して保有現預金を決定することにより、短期的なリスクへの対応をしております。
また、日本ではキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、北米地域では、UACJ North America, Inc.を地域統括としたグループファイナンスの実施等で資金効率の向上に努めております。
(3) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産実績及び受注実績は、グループ内の会社間で前工程生産と後工程生産を行っている場合があり、各社の取引額の単純合計がそのまま連結生産実績とはならないこと、また受注生産形態をとらない製品もあることから、事業ごとに生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしておりません。なお、販売実績については、「(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」において記載しております。
なお、当連結会計年度において、いずれの相手先についても総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載を省略しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記4.重要な会計上の見積り及び判断に記載のとおりであります。
(5) 並行開示情報
連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表は、以下のとおりであります。
なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。
① 要約連結貸借対照表(日本基準)
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (2023年3月31日) |
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当連結会計年度 (2024年3月31日) |
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資産の部 |
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流動資産 |
409,868 |
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405,645 |
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固定資産 |
450,230 |
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462,338 |
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資産合計 |
860,098 |
|
867,984 |
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負債の部 |
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流動負債 |
338,603 |
|
330,514 |
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固定負債 |
252,236 |
|
238,870 |
|
負債合計 |
590,839 |
|
569,383 |
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純資産の部 |
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株主資本 |
209,573 |
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210,489 |
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その他の包括利益累計額 |
38,464 |
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63,099 |
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非支配株主持分 |
21,222 |
|
25,013 |
|
純資産合計 |
269,258 |
|
298,600 |
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負債純資産合計 |
860,098 |
|
867,984 |
② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書(日本基準)
要約連結損益計算書
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
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当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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売上高 |
962,885 |
|
894,736 |
|
売上原価 |
864,414 |
|
792,079 |
|
売上総利益 |
98,471 |
|
102,657 |
|
販売費及び一般管理費 |
81,264 |
|
74,364 |
|
営業利益 |
17,207 |
|
28,293 |
|
営業外収益 |
6,784 |
|
6,285 |
|
営業外費用 |
15,259 |
|
14,640 |
|
経常利益 |
8,732 |
|
19,938 |
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特別利益 |
601 |
|
657 |
|
特別損失 |
2,166 |
|
1,481 |
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税金等調整前当期純利益 |
7,166 |
|
19,115 |
|
法人税等合計 |
1,609 |
|
5,340 |
|
当期純利益 |
5,557 |
|
13,775 |
|
非支配株主に帰属する当期純利益 |
854 |
|
2,549 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
4,703 |
|
11,226 |
要約連結包括利益計算書
|
|
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|
(単位:百万円) |
|
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
|
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|
当期純利益 |
5,557 |
|
13,775 |
|
その他の包括利益 |
21,158 |
|
27,388 |
|
包括利益 |
26,716 |
|
41,163 |
|
(内訳) |
|
|
|
|
親会社株主に係る包括利益 |
24,146 |
|
35,861 |
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非支配株主に係る包括利益 |
2,569 |
|
5,302 |
③ 要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
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(単位:百万円) |
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株主資本 |
その他の包括利益 累計額 |
非支配株主持分 |
純資産合計額 |
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当期首残高 |
208,972 |
19,021 |
19,596 |
247,589 |
|
当期変動額 |
601 |
19,443 |
1,625 |
21,669 |
|
当期末残高 |
209,573 |
38,464 |
21,222 |
269,258 |
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
|
|
|
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|
(単位:百万円) |
|
|
株主資本 |
その他の包括利益 累計額 |
非支配株主持分 |
純資産合計額 |
|
当期首残高 |
209,573 |
38,464 |
21,222 |
269,258 |
|
当期変動額 |
916 |
24,635 |
3,791 |
29,342 |
|
当期末残高 |
210,489 |
63,099 |
25,013 |
298,600 |
④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
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当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
52,587 |
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95,257 |
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投資活動によるキャッシュ・フロー |
△26,928 |
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△36,196 |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
△19,089 |
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△43,233 |
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現金及び現金同等物に係る換算差額 |
1,428 |
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2,114 |
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現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
7,997 |
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17,942 |
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現金及び現金同等物の期首残高 |
14,259 |
|
22,257 |
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現金及び現金同等物の期末残高 |
22,257 |
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40,199 |
⑤ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
(ASU第2016-02号「リース」の適用)
米国会計基準を適用している在外子会社において、ASU第2016-02号「リース」(2016年2月25日。以下「ASU第2016-02号」という。)を当連結会計年度末から適用しております。
ASU第2016-02号の適用により、借手のリースは、原則としてすべてのリースについて資産及び負債を認識しております。当該会計基準の適用にあたっては、経過措置として認められている当該会計基準の適用による累積的影響を適用開始日に認識する方法を採用しております。
なお、当連結会計年度において連結財務諸表に与える影響は軽微です。
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
該当事項はありません。
(6) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRS会計基準により作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 42.初度適用」に記載のとおりであります。
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
(のれんの償却)
日本基準ではのれんを均等償却しておりましたが、IFRS会計基準では償却を行わないため「販売費及び一般管理費」が3,883百万円減少しております。
(債権流動化取引)
日本基準では譲渡時に認識を中止していた流動化債権について、IFRS会計基準では認識の中止の要件を満たさないものは債権の認識の中止を行わず、譲渡による入金額を流動負債として認識したため、「営業債権及びその他の債権」及び「その他の金融負債」が24,929百万円増加しております。
(1) 豪州におけるアルミ製錬事業参加契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約年月日 |
契約期限 |
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当社 |
RIO TINTO ALUMINIUM LIMITED 他5社 |
オーストラリア |
豪州におけるアルミ製錬事業参加契約 |
1979年8月27日 但し、1994年3月30日に 更新 |
2028年12月31日 |
(2) 米国におけるアルミニウム製品の製造に関する合弁事業契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約年月日 |
契約期限 |
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Tri-Arrows Aluminum Inc. |
Novelis Corporation |
アメリカ |
米国におけるアルミニウム製品の製造に関する合弁事業契約 |
1985年1月18日 |
定めなし |
(3) 欧州における自動車用熱交換器材の販売に関する合弁事業契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約年月日 |
契約期限 |
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当社 |
Elval Hellenic Aluminium Industry S.A. |
ギリシャ |
欧州における自動車用熱交換器材の販売に関する合弁事業契約 |
2015年4月27日 但し、2018年4月2日に 改訂 |
定めなし |
(4) 中国における自動車用熱交換器材等の製造に関する合弁事業契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約年月日 |
契約期限 |
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当社 UACJ製箔 |
広東東陽光科技控股股份有限公司 |
中国 |
中国における自動車用熱交換器材等の製造に関する合弁事業契約 |
2009年10月8日 但し、2016年2月16日、2019年2月20日に改訂 |
2052年6月17日 但し、合弁当事者の合意により延長可 |
(5) 米国におけるアルミドロスの加工処理に関する合弁事業契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約年月日 |
契約期限 |
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Tri-Arrows Aluminum Inc. |
Tennessee Aluminum Processors, Inc. |
アメリカ |
米国におけるアルミドロスの加工処理に関する合弁事業契約 |
2023年5月23日 |
定めなし |
その他、経営上の重要な契約等の決定又は締結等は以下のとおりであります。
(1) 当社連結子会社の経営統合に向けた統合基本契約締結
当社は、2022年8月31日付で、当社連結子会社である株式会社UACJ製箔と日本軽金属ホールディングス株式会社の連結子会社である東洋アルミニウム株式会社が経営統合し、JICキャピタル株式会社が統合新会社の議決権の80%を取得、当社が議決権の20%を保有することについて合意し、統合基本契約書を締結しましたが、効力発生日は未定であります。
R&Dセンターでは、「UACJ VISION 2030」の実現に向けて、お客様との丁寧な交流による成長分野と新規分野の探索および具体策立案を進め、素材+αによる付加価値拡大に取り組み、DXの活用による研究開発の加速と効率化を図っています。2023年度は、新型コロナ感染症が5類に移行されたこともあり、お客様との交流が対面で実施できる機会も増え、これまでのリモート会議も有効に活用しつつ、ご要望に迅速に応える新製品の開発や高品質化を推進しました。あわせて、マーケティングに生かせる技術の取組みを活性化させる目的にて、新設されたマーケティング・技術本部の傘下となり活動を推進させています。基礎研究の牽引の成果として、軽金属学会からは奨励賞(微細化剤添加による結晶粒径予測モデルに関する研究)、論文賞(塗装焼付温度における3104アルミニウム合金冷延板の微細組織変化と塗装焼付軟化特性に及ぼす固溶原子の役割)を、また、表面技術協会からは論文賞(電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔の鉛の表面偏析)を受賞しました。2022年度に実施した技術の棚卸の結果からコア技術を選定し、既存、あるいは、これからのお客様との共創活動とリンクさせ、全社のマーケティングに活用できるものにするための取組みを開始しました。国内外の先端研究機関との連携を継続し、最新の技術や知見の獲得を通じて、研究開発力の継続的な向上を図っています。その代表例として、東京大学に発足した「先制的LCA社会連携研究部門」に参画するとともに、同大学とは「次世代軽量アルミ合金の創製とプロフェッショナル人材育成を目指す」講座を開設し、産学の知の融合を邁進しています。未来に残すべき技術として「超々ジュラルミンなどの航空機用アルミニウム合金開発」の技術資料2件が国立科学博物館の重要化学史に登録されました。一方で、愛知県主催のあいちスタートアップフェス2023に参画し、「新産業創出」と「人材育成」にもチャレンジしております。さらに、朝日新聞社主催の「地球教室」および「SDGsジャーナル」、日本経済新聞社主催の「日経エデュケーションチャレンジ」等の教育企画への講師派遣も継続しています。
当社の主力であるアルミ板製品に関わる研究開発では、アルミ缶等の容器をはじめ、自動車ボディシート、自動車構造部品、自動車用熱交換器、エアコン、IT関連機器、メモリーディスク、船舶用厚板、半導体製造装置、リチウムイオン電池用集電体等に使われるアルミニウム材の開発に注力し、多様化・高度化するお客様に新たな価値を提供しています。アルミニウムは、資源量が多く軽い材料であり、リサイクル材の多用は環境負荷低減にもつながり、今後の世の中の成長に大きく貢献する材料です。2023年度は、アルミ缶や自動車用材料において、環境対応型材料やリサイクル性に優れた材料の開発推進に努め、お客様にご評価いただきました。東洋製罐様とは共同で、製造工程で発生する温室効果ガスをリサイクル原料の使用率を高めることで約4割削減した飲料缶用の蓋「EcoEnd™」を開発しました。一方、社内生産現場へのデータサイエンスの適用を推し進め、生産性向上、製造コスト・環境負荷低減に貢献しています。また、CPS(サイバーフィジカルシステム)を基軸にした課題遂行に向け、DX人材育成にも取り組んでいます。国家プロジェクトとしては、「資源循環型社会構築に向けたアルミニウム資源のアップグレードリサイクル技術開発(NEDO助成金)」、「製造分野における熱プロセスの脱炭素化(NEDO委託事業)」、ならびに、「自動車リサイクルにおける再生材利用拡大に向けた産官学連携推進事業(環境省委託事業)」に参画し、実証試験や評価方法の開発等で主体的に活動しています。アルミ板事業と並ぶ当社グループの中核事業であるアルミニウム形材・管・棒製品に関わる研究分野では、自動車用熱交換器材料や空調用材料の開発とともに、輸送機器用のアルミニウム材料、ならびに、部材開発を行っています。これらの製品においてもリサイクルを始めとするカーボンニュートラルに向けた取組みを進めています。また、鋳鍛製品に関わる研究開発では、付加価値の高いアルミニウム製部材の開発と品質課題に積極的に取り組んでいます。
また、当社では自動車部品事業を成長分野と位置付け、2020年10月に、自動車部品事業本部に直属の開発組織:モビリティテクノロジーセンターを発足させました。2023年4月に、新設のマーケティング・技術本部傘下にR&Dセンターとともに配置され、マーケティング活動と密に連携可能な技術開発体制としました。モビリティテクノロジーセンターでは、引き続きR&Dセンターと連携した材料や接合等の基礎技術の開発および自動車部品のバンパーや骨格部品などの部品開発に加え、大きな変革期であるモビリティ分野の最先端技術に対応するため、電気自動車向け電動化関連部品の開発、DX活用による生産技術開発にも取り組んでいます。これらの技術を、北米や中国の生産拠点を含めた、当社グループ全体に活用し、グローバルな開発対応により技術競争力の強化に取り組んでいます。
当連結会計年度の費用総額は、
2024年度もお客様と共に成長できる姿を目指して連携を深め、加えて第4次中期経営計画の初年度として、新技術の探索と既存技術の進化、ならびにイノベーションを通じて、UACJグループの成長を促しつつ、持続可能で豊かな社会の実現に貢献してまいります。