当行グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものです。
(経営理念)
(経営ビジョン)
「活力創造銀行」
地域、そしてお客さまの成長と発展に貢献していくことは、地域金融機関の使命であり、役職員一同持てる力を最大限に発揮して、当行グループならではの新しい価値を生み出すことで、地域やお客さまに選んでいただける銀行グループを目指しています。
(経営環境)
当連結会計年度におけるわが国経済は、高水準の企業収益に支えられ、雇用・所得環境が改善傾向にあり、加えて、コロナ禍からの反動需要などにより、個人消費は緩やかに回復しています。一方、海外においては、経済・物価動向、地政学的リスクや資源・穀物価格の動向など依然として不確実性が高い状況が続いています。
当行グループの事業基盤である奈良県経済においても、海外景気の下振れが景気を下押しするリスクがあるものの、インバウンドや国内観光客の増加に伴い個人消費が回復しているほか、雇用情勢も持ち直しつつあります。
そうしたなか、2024年3月には、2%の物価目標を持続的・安定的に実現できる環境が整ったとして日本銀行がマイナス金利政策を解除しました。
(対処すべき課題)
当行グループでは、「地域と共に発展するサステナブル経営」を実現するため、当行グループやステークホルダーにとっての重要度を勘案して、5つの重要課題(以下、「マテリアリティ」という)を特定しています。
マテリアリティの詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しています。
当行グループは経営ビジョンである「活力創造銀行」を軸としつつ、2019年12月に2020年度から2029年度までの10年間を見据えた経営計画「なんとミッションと10年後に目指すゴール」を策定しています。
「地域の発展」、「活力創造人材の創出」、「収益性の向上」を当行グループの使命「なんとミッション」として掲げ、「活力創造NO.1グループ」すなわちジブンゴトとして地域のお客さまの不安や心配を解消・解決し、最も地域の活力を創造するグループを目指しています。
また、10年後に目指すゴールとして奈良県のGDPを2016年度比10%増加させることを目標としており、「地域と共に発展するサステナブル経営」を目指して、お客さま自身では解決できない業界・サプライチェーン単位の課題を、当行グループが自らその一部となり主体的に課題を解決することで、新たな収益機会を生み出し安定した収益基盤の確立を図ります。
(各指標の算定方法等)
・「顧客向けサービス業務利益」:貸出金平残×預貸金利回り差+役務取引等利益-営業経費
・「OHR」:「経費」÷「コア業務粗利益」
・「ROE」:「当期純利益」÷「純資産」
・「ROA」:「コア業務純益」÷「総資産」
(2024年度アクションプラン)
当行グループが持続的に成長していくためには、マテリアリティを踏まえて事業戦略を策定し、アクションプランとして具体化していく必要があります。
2024年度のアクションプランでは、当行グループの企業価値向上に向けて「収益力の強化」、「純資産のコントロール」、「地元マーケットの活性化」、「サステナブル経営の実践」に取り組みます。
当行グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ(全般)への対応
当行グループは、環境問題をはじめとするサステナビリティに関する課題への対応を経営上の重要課題の一つとして、「サステナビリティ基本方針」を策定し、グループ全体で取組を進めています。
(サステナビリティ基本方針)
① ガバナンス
当行グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、サステナビリティへの取組を経営戦略の根幹に組み込んでおり、持続可能な地域社会の実現に向け、金融仲介機能の発揮等の本業に加え、グローバルに対応が求められるサステナビリティに関する課題や地域を取り巻くさまざまな課題について、取締役会の監督のもと、サステナビリティ関連施策を推進する体制を構築しています。
具体的には、取締役会において定めるサステナビリティ基本方針と当行グループが優先的に取り組む重要課題(マテリアリティ)に基づき、経営会議において具体的な取組テーマを特定し、テーマに応じて関連部署が連携しながら具体的な施策を推進していく体制としています。また取締役会は、サステナビリティに関する課題への取組が経営戦略に照らして適切であるかを監督しています。
なお、ガバナンスの概要については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
(マテリアリティの特定プロセス)
当行グループは、サステナビリティ基本方針に基づき、ステークホルダーの皆さまや当行グループにとっての重要度を勘案して優先的に取り組むマテリアリティを特定しています。マテリアリティの特定プロセスは次のとおりです。
STEP1 課題の抽出
国連グローバルコンパクト、ISO26000、GRI、SDGsなど国際的なフレームワークに加え、世界経済フォーラムが公表したグローバルトップ10リスクや日本政府のSDGsアクションプランなどを参考にしながら、当行グループを取り巻く外部環境を踏まえ、サステナビリティ基本方針を起点に、今後、発生が予想される環境、社会、ガバナンス各面の課題を広範に抽出。
STEP2 抽出した課題の分析・評価
STEP1で抽出した課題のなかから、特に当行グループに関連性の高い課題を識別し、ステークホルダーの皆さまへの影響度と当行グループへの財務的影響度の2軸で重要性を分析・評価。
STEP3 重要課題の特定
STEP2の分析・評価結果をもとに、経営会議および取締役会において機会とリスク、優先的に取り組むべきテーマを議論し、マテリアリティを特定。
② 戦略
当行グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、経営ビジョン「活力創造銀行」を軸としつつ「地域を発展させる」・「活力創造人材を生み出す」・「収益性を向上させる」の三つを「なんとミッション」として掲げ、2020年から10年後を見据えた経営計画を進めています。
当行グループが地域とともに発展するサステナブル経営を実現していくためには、お客さま、地域及び社会全体の課題に対し当行グループの「おもしろい人材」などの経営資本を活用し、課題解決を行う必要があり、それぞれの課題解決を通じて、ステークホルダーの皆さまに付加価値を提供し、当行の営業地域を発展させていきます。
このサイクルを回転させることで、2029年度に目指すゴールである奈良県GDP約3,500億円増加、経営人材創出数350人、ROA(単体)0.35%以上を達成します。
(当行グループのマテリアリティ)
なお、マテリアリティを踏まえたアクションプランについては
③ リスク管理
当行グループでは、金融機関を取り巻く環境が大きく変化し、直面するリスクも一層多様化・複雑化しているなか、経営の健全性・適切性を維持するため、リスクの適切な管理を経営の最重要課題の一つに位置づけ、リスク管理態勢を整備しています。
具体的には、統合的リスク管理の考えのもと「信用リスク」「市場リスク」「流動性リスク」「オペレーショナルリスク」に各リスクを分類し、リスクカテゴリーごとの主管部署とリスク統括部署を定め、リスクを適切にコントロールできる体制を確立し、各リスクの状況については、毎月開催するALM委員会、半期に一度開催するオペレーショナル・リスク管理委員会において評価・分析等を行い、経営陣に報告しています。
なお、リスク管理体制の概要については、
④ 指標及び目標
当行グループではサステナビリティについて指標及び目標を設定しています。詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動に関する取組 ④指標及び目標」、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本経営に関する取組 ②指標及び目標」をご参照ください。
(2)気候変動に関する取組
① ガバナンス
当行グループは、「サステナビリティ基本方針」を策定してサステナビリティに関する課題への対応に取り組んでおり、そのなかで優先的に取り組むべきテーマを取締役会で議論し、マテリアリティ(重要課題)の一つとして「深刻化する気候変動問題への対応」を特定しています。
気候変動への対応については、半期ごとに経営会議で具体的な施策や目標、進捗等について審議し、その結果が経営戦略に照らして適切であるかを取締役会が監督する体制としています。
② 戦略
当行グループは、なんとミッションである「地域の発展」「活力創造人材の創出」「収益性の向上」の遂行を通じてステークホルダーの皆さまに価値を提供するべく、グループ全体で気候変動への対応に取り組んでいます。
地域の一員として、自らの脱炭素化への取組はもちろん、お客さまの取組についても積極的に支援します。
自らの脱炭素化への取組としては、CO2排出量の削減目標ならびにネットゼロ目標を設定し、再生可能エネルギーの導入や照明のLED化、エコカーの導入等の取組を進めています。
また、お客さまのサステナブル経営実現に向けた経営課題解決のコーディネート役を担う「サステナブル支援チーム」を本部に設置し、営業店と連携のうえ、環境関連融資や、ソリューション関連商品の提案を積極的に展開して地域のお客さまとともに経営課題の解決に取り組んでいます。
a. リスクと機会
1.5℃、4℃を含む複数の公的シナリオ(※)を前提に、気候変動に伴うリスクと機会の評価を行いました。時間軸については、短期(5年)、中期(10年)、長期(30年)で分析を行っています。
(※)参考にした公的シナリオ
脱炭素化が進む1.5℃シナリオ等:IEA NZE2050、IEA APS、NGFS Net Zero2050、IPCC SSP1-1.9、SSP1-2.6
温暖化が進む4℃超シナリオ:IEA Steps、NGFS Current policies、IPCC SSP5-8.5
b. シナリオ分析
(2)②a.リスクと機会のうち、以下についてシナリオ分析を行いました。
分析の結果、移行リスク、物理的リスクによる財務影響は限定的と評価しています。
ただし、一定の前提条件を仮定した分析であることから、引き続き分析手法の高度化や対象範囲の拡大・精緻化に取り組んでいきます。
(※1) IEA(International Energy Agency):国際エネルギー機関
(※2) IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):気候変動に関する政府間パネル
c. 炭素関連資産
当行の貸出金に占めるTCFD改訂付属書に基づく炭素関連資産割合(再生可能エネルギー発電事業を除く)は以下のとおりです。(2024年3月末時点)
当行では日銀業種分類をベースに算定しており、今年度、環境省の業種対応表を参考に業種分類の見直しを行いました。GICS(世界産業分類)を基準とした算定方法とは差異が生じる場合があります。
③ リスク管理
当行グループは、気候変動への対応を、地域社会の持続的発展にとって重要な課題として認識しています。
当行の気候変動リスクを信用リスクとオペレーショナルリスクに分類し、それぞれALM委員会とオペレーショナル・リスク管理委員会のモニタリング項目に組み込み、リスク管理の高度化を図ります。
また、当行グループは2020年10月に融資ポリシーを制定し、新設の石炭火力発電所建設を資金使途とする融資には原則として取り組まないことや、森林伐採を伴う開発等の資金使途に対する融資に取り組む際は、違法伐採ではないか、また環境への影響等について配慮し、慎重に取組可否を検討する旨を、明文化しています。
④ 指標及び目標
当行グループでは、気候変動への対応について、以下の指標を用いています。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりです。
a. CO2排出量(Scope1、2)
当行グループは、CO2排出量の削減に向けて取組を進めており、以下のとおり、今年度より2030年度の削減目標を、2013年度比「△50%以上削減」から「△75%削減」へと上方修正するとともに、「2050年度までにCO2排出量(Scope1、2)ネットゼロ」とする目標を設定しました。
2023年度のCO2排出量は5,164t-CO2であり、2013年度から△48%の削減となりました。
前年度に比べ、エネルギー使用量は減少しましたが、電力等の排出係数の上昇により排出量が増加しました。引き続き、再生可能エネルギーの使用等、排出量の低減に取り組んでいきます。
(単位:t-CO2)
(単位:t-CO2)
b. CO2排出量(Scope3)
当行グループは、以下のとおり、2022年度よりScope3の算定を開始し、2023年度はカテゴリー15の算定に着手しました。
その他カテゴリーにつきましては、今後、算定範囲の拡充に向け、算定方法を検討していきます。
(※)カテゴリー15については、当行単体を対象としています。
(Scope3 カテゴリー15の算定)
金融機関にとって投融資による間接的な排出量はScope3が大きな割合を占めており、当行の気候変動への取組において重要な指標と考えています。当行では、カテゴリー15(投融資)にかかる排出量について、PCAFスタンダード(※)に基づく排出量の算定に取り組んでおり、2023年度は国内事業法人向け融資を対象に算定を行いました。
算定結果は、お取引先との対話(エンゲージメント)に活用し、お取引先の排出量削減を支援することにより、脱炭素社会の実現に貢献していきます。また、算定対象の拡大や算定手法の精緻化にも継続的に取り組んでいきます。(算定方法の見直しやお取引先の開示状況等により排出量算定結果は今後変動する可能性があります。)
○ 算定対象
2023年9月末時点の国内事業法人向け融資(プロジェクトファイナンスは除く)
なお、算定に必要な財務データ等が不足する先は対象外としており、算定対象融資は、国内事業法人向け融資の97%をカバーしています。
○ 算定手法
PCAFスタンダードに基づき、投融資先各社ごとに、以下の算定式で算定しています。
排出量 ×(当行の融資額 ÷ 資金調達総額)
なお、炭素強度は排出量を融資額で除することで算定しています。
○ 排出量の把握
投融資先各社の排出量は、ボトムアップ方式・トップダウン方式を併用して算定しました。
・ボトムアップ方式:各社が開示する排出量を利用
・トップダウン方式:各社の売上高に、業種に応じた平均的な排出係数(環境省排出原単位データベースを利用)を掛け合わせて推計
PCAFの定めるデータクオリティスコアは「2.9」となっており、今後も情報精度の向上に取り組んでいきます。
(※)国際的なイニシアティブであるPCAF(Partnership for Carbon Accounting Financials)が作成した、金融機関の投融資ポートフォリオにおけるGHG排出量を計測・開示する基準
c. サステナブルファイナンス
当行グループは、地域やお客さまのサステナビリティ課題の解決に向けた活動を資金面から支援するため、サステナブルファイナンスの実行額について以下の目標を設定しました。
2023年度の実行額実績は1,570億円(進捗率15.7%)、うち環境系ファイナンスは448億円となっています。
(対象範囲)
環境分野・社会分野の課題解決に資するファイナンス
・環境分野:再生可能エネルギー、省エネルギー、ZEB、ZEVなど
・社会分野:地域活性化、地方創生、スタートアップ、事業承継、BCP対策など
お客さまのSDGs対応を支援・促進するファイナンス
(3)人的資本経営に関する取組
当行グループにとって人的資本すなわち人材は、もっとも重要な経営資本のひとつであり、経営戦略の実現のためには高いスキルや資質を備えた人材の確保・育成が不可欠です。
当行グループでは、お客さまや同僚から「一緒に何かに取り組みたいと一番に思ってもらえる人材」を「おもしろい人材」と定義し、「おもしろい人材」の創出・育成に向け、『成長機会の整備』や『人材の多様化』に取り組んでいます。
また、従業員の自律的なキャリア形成と挑戦を支援し、性別・年齢を問わない全ての従業員が「働きがい」を感じながら、持てる力を最大限に発揮できる環境の整備を目的として2024年4月に人事制度を改定しました。
① 戦略
(人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)
当行グループの人材における重要な価値観として、「NANTO人材コア・バリュー」=「期待を超える」を制定しています。人材コア・バリューとは当行グループ従業員らしさを表現する「ものさし」であり、当行グループは、従業員が「誠実」を基礎として、「積極」「挑戦」「創造性」「発見力」を意識して主体的に行動し、お客さまや同僚の期待を超えることを目指し、人材の育成に取り組んでいます。
具体的には、銀行業務に加え銀行以外の経験も積んだ広い視野が必要であるとの考えのもと、『成長機会の整備』として、職員の自律的なキャリア形成に向けたサポート、論理的思考力の強化に向けた各種研修や資格取得支援の強化、外部出向等の拡大等、『人材の多様化』に向け、キャリア採用拡大やダイバーシティ推進、副業制度導入等の諸施策を実施しています。
また、職員の健康が当行グループの発展や地域貢献に向けた活力の源であるとの考えにより、『健康経営』に取り組んでいます。
a. 成長機会の整備
お客さまと価値共創する関係を構築していくためには営業力や事務スキルの育成にとどまらず、経営リテラシーの向上や本業で身につけた課題解決力の更なるブラッシュアップが必要です。既存人材のポテンシャルを最大限に引き出すため、以下の取組を実施しています。
イ 自律的なキャリア形成に向けた支援
自律的なキャリア形成の促進、挑戦する職員気質の醸成、組織の活性化を目的として公募により希望職種にチャレンジできるキャリアチャレンジ制度を設けています。
ロ 論理的思考力強化に向けた取組
おもしろい人材の基礎となる論理的思考力強化への取組としては、2020年度に全従業員を対象にロジカルシンキング研修(e-ラーニング)を実施し、以降毎年4月の新入研修においてロジカルシンキングのプログラムを盛り込んでいます。
また、組織・チームの課題解決を実践する「論理的思考力強化研修」や、各参加者がディスカッション(経営課題等の考察)を行う「集合ディスカッション」を通じて、論理的思考力の習得と実践を図っています。「論理的思考力強化研修」と「集合ディスカッション」には、これまで183名が参加し、おもしろい人材の基礎を構築しています。
(各プログラムの概要)
ハ 地域やお客さまの課題解決に資する資格取得支援
お客さまのデジタル課題や、相続、資産運用などのニーズ変化を背景に、応用情報技術者、中小企業診断士、宅建、FP1級などの資格取得を推奨しています。2020年8月からは資格保有手当や奨励金を充実し、支援を強化しています。
(活力創造に関わる資格)
ニ 外部出向拡大、トレーニー派遣、グループ会社間交流
おもしろい人材には、銀行業務に加え、銀行以外の経験も積んだ広い視野が必要であるとの考えのもと、外部出向の拡大やトレーニーの派遣、グループ会社間の交流などを通じて、若手世代から成長機会を整備しています。
(2024年3月末時点の派遣人数等)
b. 人材の多様化
時代や環境の変化に伴い銀行に求められる役割が変化するなか、当行グループが今後も地域やお客さまに貢献していくためには、過去の経験等に基づく判断だけではなく、従来の枠に捉われない柔軟な考え方を取り入れる必要があります。
そのため、様々な考えやスキルを持つ多様な人材が活躍できる銀行グループとなるべく、各種施策に取り組んでいます。
イ キャリア採用の拡大
これまでから、グループ内の業務経験では習得しにくいスキルや、高い資質を持つ人材の即戦力としての活躍を期待し、外部からの人材採用に取り組んできました。今後も、IT戦略や信託コンサルティング等、当行グループが強化していく専門分野に強い人材や、マネジメントや営業活動において即戦力として活躍が期待できる人材等、多様な人材を対象にキャリア採用の拡大を図り、管理職への登用者数も現状より増加させます。
また、当行を退職した人材が、退職理由を問わず復職できる「アルムナイ制度」を設け、多様なキャリアを持つ人材の確保に努めています。
(キャリア採用者数(2024年3月末実績))
ロ ジェンダー平等などのダイバーシティ推進
女性を含む多様な人材の活躍推進に向けて、意識改革に取り組んでいます。2021年度に、固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込みの解消などを目的として、全職員に「アンコンシャス・バイアス研修」(階層別)を実施。以後、階層別研修において同内容を継続実施しています。
また当行グループでは、マネジメントを担う女性を含む管理職の育成に力を入れている他、育児休職者の復職支援施策等を通じて、妊娠・出産後も女性が活躍しやすい環境の整備に取り組んでいます。
ハ 副業制度の導入
銀行業務だけでなく、業務外活動を通じて得られる多様な経験、高度な専門性やスキル、人脈、ネットワークが不可欠との考え方に基づき、2021年から副業を行える環境を整備しています。2024年3月末時点において、25名が副業制度を利用しています。
c. 健康経営
2018年度より、職員の健康が当行グループの発展や地域貢献に向けた活力の源であるとの考えのもと、心身の健康保持・増進に向けた取組を積極的に推進しています。このような取組に対し、経済産業省および日本健康会議が実施する健康優良法人認定制度において、健康優良法人2024(ホワイト500)の認定を受けました。
また、全職員が仕事と家庭生活のクオリティを高め、「やりがい」「生きがい」「働きがい」を持って活き活きと働ける職場の実現に向け、職場環境の改善等に取り組んでいます。
② 指標及び目標
当行グループでは、人的資本経営に関する戦略(人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)について、以下の指標を用いています。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりです。
なお、当行では、当該指標に関する関連データの管理とともに具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難です。このため、以下の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しています。
a. 成長機会の整備
・なんとミッション(中期経営計画)における目標
b. 人材の多様化
・女性活躍推進法に基づく「行動計画」
目標① 役職者(課長級以上)に占める女性の比率を20%以上にする。
目標② 育児休職またはファミリーサポート休暇取得率について、5日以上の取得者を100%にする。
c. 健康経営
・健康経営戦略マップにおける目標
有価証券報告書に記載した「事業の状況」、「経理の状況」等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものです。
当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクとしましては、以下に記載したリスクのうち(1)信用リスク及び(2)市場リスク並びに(3)気候変動リスクがあげられます。
(1)信用リスク及び(2)市場リスクについては、計量したリスク量が自己資本の範囲内でリスクの種類毎に割り当てたリスク資本に収まるようにコントロールしており、各リスクの状況については、毎月開催されるALM委員会にて評価しています。あわせてALM委員会等で決定する各種損益管理や限度額管理を通じて、損失拡大防止やリスク分散を行っています。
(3)気候変動リスクについては、気候変動が当行グループの事業活動に与える影響を踏まえ、リスクへの対応を進めています。
(1) 信用リスク
① 不良債権の状況
国内外の景気動向、地価や株価、為替の動向により当行貸出先の経営状況が大幅に悪化する場合には、不良債権及び与信関連費用が増加する恐れがあり、当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 貸倒引当金の状況
当行は貸出先の状況、担保価値及び過去の貸倒実績等に基づいて予想損失額を算定し貸倒引当金を計上しています。しかし、実際の貸倒れが当該予想損失額を大幅に上回り、貸倒引当金を積み増さざるを得なくなる可能性があります。
③ 権利行使の困難性
不動産価格や有価証券価格の下落等の要因により、担保権を設定した不動産や有価証券を換金することが困難になり、当行の与信関連費用が増加する可能性があります。
(2) 市場リスク
当行グループの資産・負債は、主要業務である預金及び貸出金並びに有価証券等で構成されており、金利、有価証券価格及び為替相場など市場のリスク・ファクターの変動により、オフバランス取引を含め資産の価値が変動し損失を被るリスクがあります。主なリスクは次のとおりです。
① 金利リスク
金利リスクとは、貸出金や有価証券投資等の資金運用と預金等の資金調達との期間ミスマッチが存在するなかで金利が変動することにより、利益が低下ないし、損失を被るリスクのことをいいます。当行では金利リスクを総合的に管理していますが、予期せぬ金利変動によって金利収入減少や債券の評価損・売却損が発生し、当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 価格変動リスク
価格変動リスクとは、有価証券等の価格変動に伴って資産価格が下落するリスクをいいます。予期せぬ価格変動によって評価損・売却損が発生し、当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 為替リスク
為替リスクとは、外貨建資産・負債について、ネットベースで資産超又は負債超ポジションとなった場合に為替の価格が当初予定されていた価格と相違することにより損失が発生するリスクのことをいいます。予期せぬ為替相場の変動によって損失が発生し、当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 気候変動リスク
当行グループは、気候変動問題への対応を地域社会の持続的発展にとって重要な課題として認識しています。気候変動がもたらすリスクには物理的リスクと移行リスクがあります。物理的リスクとは、気候変動を要因とした自然災害や海面上昇などによってお客さま及び当行グループの資産や事業基盤が毀損するリスクのことであり、自然災害に伴うお客さまの業況悪化、担保価値毀損を通じて与信コストが増加する可能性があります。また、移行リスクとは、脱炭素社会への移行に伴う法規制の変化や外部環境の変化に起因するリスクのことであり、脱炭素化に向けた規制強化、技術革新や市場の変化に伴う、お客さまの事業・財務状況への影響による与信コスト増加の可能性があります。なお、気候変動に関するリスクへの対応や開示が不十分であるとみなされた場合には当行グループの企業価値が毀損する可能性があります。
当行グループは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しています。気候変動が当行グループの事業活動に与える影響を踏まえ、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」のカテゴリごとに開示を行い、リスクへの対応を進めていきます。
(4) 流動性リスク
当行グループは、資金繰りの適切な管理に努めていますが、
・運用と調達の期間ミスマッチや予期せぬ資金の流出により、必要な資金の確保が困難になる、または通常より著しく高い金利での資金調達を余儀なくされること
・保有する有価証券の売買において、市場の混乱により取引が困難になる、または通常より著しく不利な価格での取引を余儀なくされること
などにより、調達コストの増加や損失が発生し、当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5) オペレーショナル・リスク
オペレーショナル・リスクとは、業務の過程、役職員の活動もしくはシステムが不適切であることまたは外生的な事象により損失を被る下記の各リスクをいいます。各リスクの顕在化による経済的損失・信用失墜等が経営及び業務遂行に大きな影響を及ぼし得ることを認識し、各リスクを適切に管理することにより、当該リスクの極小化に努めています。オペレーショナル・リスク管理に関する主要事項は半期に1度開催しているオペレーショナル・リスク管理委員会にて協議・決定を行い、必要に応じ取締役会等に報告することで各リスク管理を適切に行うための当該リスク管理態勢の整備・充実を図っています。
① 事務リスク
当行グループの役職員が正確な事務を怠り、あるいは事故・不正等を起こした場合には、当行グループの社会的信用が損なわれることとなり、当行グループの業務遂行、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、業務遂行の過程でこうした法令違反等により訴訟等の提起を受けた場合、その結果によっては、当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② システムリスク
当行グループでは、コンピュータシステムのダウンまたは誤作動等のシステムの不具合等に伴い損失を被る可能性やコンピュータが不正に使用されることにより損失を被る可能性があります。また、インターネット等を経由したコンピュータシステムへの不正侵入や情報の窃取・改ざん・破壊、不正プログラムの実行等のサイバー攻撃により損失を被る可能性があります。これらの損失が発生した場合、当行グループの業務遂行、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、データのバックアップ、暗号化、情報漏洩対策などを講じて、より安心安全なサービスの提供に取り組むとともに、「南都銀行CSIRT※」が中心となり、各種セキュリティ対策の強化やサイバー攻撃演習を実施するなど、当行グループのサイバーセキュリティにかかる管理態勢の強化に取り組んでいます。
(※CSIRT…Computer Security Incident Response Team)
③ 法務リスク
当行グループにおいて、顧客に対する過失による義務違反及び不適切なビジネス・マーケット慣行から生じる損失及び損害(監督上の措置並びに和解等により生じる罰金、違約金及び損害賠償金等)が発生した場合、業務遂行、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 人的リスク
当行グループは、良好な職場環境の確保に努めています。しかしながら、予期せぬ人事運営上の不公平・不公正(報酬・手当・解雇等の問題)、差別的な行為(セクシャルハラスメント等)により損失・損害を被る場合、当行グループの業務遂行、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 有形資産リスク
当行グループが保有する土地、建物等の有形資産について、適切に管理しています。しかしながら、自然災害、犯罪行為、資産管理上の瑕疵等により、有形資産の毀損及び損害を被る可能性があります。また固定資産の減損会計適用に伴い、評価額が低下した場合等には損失が発生する可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合、一部業務が停止するなど業務遂行、当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 風評リスク
当行グループは風評リスクを適切に管理していますが、当行グループや金融業界に対する評判の悪化や風説が発生し、マスコミ報道やインターネット等を通じて流布した場合、当行グループの信用が著しく低下し、業務遂行、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 自己資本にかかるリスク
自己資本は、企業が将来にわたって事業活動を継続していくなかで、当行グループ全体に対するお客さま等からの信認を確保するとともに、予期しない様々なリスクの緩衝材としての役割を果たすものであるという認識から、当行グループは一定水準の自己資本額の維持とその質的向上に努めています。
当行は海外営業拠点を有しないため、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)により、連結ベースと単体ベースの双方について自己資本比率は4%以上を維持しなければなりませんが、もし、これを下回った場合には、業務の全部または一部の停止等を含む様々な措置を命ぜられることとなります。
当行グループの自己資本、自己資本比率に影響を与える要因としては、与信関連費用の増加あるいは銀行の自己資本比率基準及び算定方法の変更等があります。
(7)その他のリスク
① マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策にかかるリスク
当行グループは、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策を経営上の重要な課題の一つとして位置付け、リスクベース・アプローチの考え方に基づき、適切にリスクを特定・評価し、リスクに見合った低減策を講じるなど、積極的に取り組んでいます。しかしながら、国内外の法令規制等に抵触した場合、風評被害による当行の信用失墜のほか、多額の制裁金による経済的損失により、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 自然災害等リスク
当行グループは、様々な災害・事故の発生に備え緊急時対応マニュアルやバックアップ体制の充実等、業務継続体制の整備を図っています。しかし、台風や地震など大規模な自然災害に見舞われた場合、当行グループ自身の被災による直接的損害のほか、地域における金融・決済機能の低下が業務遂行、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 格付低下のリスク
格付機関が当行の格付を引き下げた場合、当行が市場において資本・資金調達を行うことが困難となり、資金調達コストの増加を招くなど、当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 規制変更のリスク
当行グループは、様々な規制・監督下に置かれている規制業種であるため、法規制等によるリスクを伴って業務を遂行しています。
将来の法令及び諸規制の制定または変更がなされることにより、当行グループが業務を迅速かつ柔軟に拡大できなくなる可能性があり、その後の事業展開や財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 顧客情報の漏洩リスク
当行グループは、事業の特性上、多数のお客さま情報を保有しており、顧客情報の保護は業務を適切に運営するうえで必須の事項となっています。そのため、業法及び個人情報保護法等に則り、情報の取扱いについて管理態勢を整備し、各種規程を設けるとともに研修・指導等を通じ、個人を含む顧客情報の保護に努めています。こうした対応にもかかわらず顧客情報が万が一にも漏洩・滅失又は毀損した場合には、当行グループへの信頼が損なわれ、さらに、損害賠償責任を負うこととなるなど、当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 業務委託リスク
当行グループの業務の委託先において、委託した業務に関し事務事故、システム障害、情報漏洩などが発生した場合、当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 特定地域の経済動向に影響を受けるリスク
当行グループは、奈良県を中心としてその隣接府県及び東京都に営業拠点を展開していますが、営業地域が限定されているうえ、地元奈良県の経済規模が小さく特定産業に依存している側面があるため、マクロ経済の影響はもとより、地域の経済状況の悪化は当行グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ デジタル技術の進歩による銀行取引の変化
デジタル技術の進展は従来の金融取引のあり方を大きく変えており、異業種からの銀行業への参入、給与のデジタル払いなど、デジタルインフラを前提とした金融サービスが拡がりつつあるなか、当行グループは従来からデジタルを活用したサービスの質の向上に積極的に取り組んでいます。
しかしながら、金融取引のデジタル化には、優秀なデジタル人材の確保と膨大なシステム開発コスト等の負担が必要であり、業績を圧迫する可能性があります。また、デジタル化の進展によって、外部からのサイバー攻撃や予期せぬシステムダウンまたは誤作動によって、大規模な情報漏洩や長期間のサービス停止があった場合には、金融機関としての信頼性が損なわれ、資金の流動性に支障が生じる可能性があります。
⑨ 職員の同質化による組織の硬直化
当行グループは、地域とともに発展するために、お客さまと一緒に意思決定できる人材「おもしろい人材」の創出を人材育成の基本方針としています。また、過去の経験等に基づく判断だけではなく、従来の枠にとらわれない柔軟な考え方を取り入れる必要があることから、様々な考えやスキルを持つ多様な人材が活躍できる銀行グループとなるべく、人材の多様化に取り組んでいます。
しかしながら、年功色の強い従来型の組織文化や企業体質の改革が進まない場合、多様な人材の活躍が進まず、組織が硬直化し、環境変化への対応が遅くなることで、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況は次のとおりです。
また、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当行グループが判断したものです。
(1) 経営成績等の状況の概要
○財政状態及び経営成績の状況
〔財政状態〕
貸出金については、企業向け貸出、住宅ローンが増加したことなどから当年度中226,166百万円増加して、当連結会計年度末残高は4,170,554百万円となりました。
有価証券については、債券が増加したことなどから当年度中140,550百万円増加して、当連結会計年度末残高は1,461,095百万円となりました。
預金については、個人預金が堅調に増加したことなどから当年度中82,099百万円増加して、当連結会計年度末残高は5,797,765百万円となりました。譲渡性預金は当年度中2,401百万円減少して、当連結会計年度末残高は5,738百万円となりました。
なお、純資産額は当年度中35,832百万円増加して、当連結会計年度末残高は298,631百万円となり、総資産額は当年度中244,939百万円増加して、当連結会計年度末残高は6,787,056百万円となりました。
〔経営成績〕
連結経営成績につきましては、経常収益は、貸出金利息や役務取引等収益、株式等売却益が増加したことなどから、前年度と比べ7,988百万円増加して85,736百万円となりました。
一方、経常費用につきましては、与信関連費用及び国債等債券売却損が減少したことなどから、前年度と比べ2,320百万円減少して69,105百万円となりました。
以上の結果、経常利益は前年度と比べ10,308百万円増加して16,631百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度と比べ7,306百万円増加して12,037百万円となりました。
また、連結ベースでの顧客向けサービス業務利益は、営業経費が増加したものの、貸出金利息及び役務取引等利益が増加したことから、前年度と比べ2,105百万円増加して8,000百万円となりました。
なお、当連結会計年度末の国内基準による連結自己資本比率は10.77%(前連結会計年度末は9.25%)となりました。自己資本比率の算出方法は、2024年3月末より、信用リスク計測手法を「標準的手法」から「基礎的内部格付手法」に変更しています。
セグメントの財政状態及び経営成績は、次のとおりです。
<銀行業務>
セグメント資産(総資産)は前年度と比べ242,352百万円増加の6,763,816百万円となりました。また、セグメント負債(負債合計)につきましては、前年度と比べ206,944百万円増加の6,476,968百万円となりました。
収益面では、貸出金利息や役務取引等収益、株式等売却益が増加したことなどから、経常収益は前年度と比べ6,557百万円増加して72,978百万円となりました。
一方、費用面では、与信関連費用及び国債等債券売却損が減少したことなどから、経常費用は前年度と比べ3,560百万円減少して57,092百万円となりました。
この結果、セグメント利益(経常利益)は前年度と比べ10,117百万円増加して15,885百万円となりました。
また、顧客向けサービス業務利益は前年度と比べ2,045百万円増加の6,355百万円となりました。
なお、当連結会計年度末の国内基準による単体自己資本比率は10.46%(前連結会計年度末は8.95%)となりました。
<リース業務>
グループ力を活かした営業活動を展開することにより、有力なマーケットである奈良県内及び大阪府地域を中心に、取引基盤の拡大と収益増強に努めました結果、セグメント資産(総資産)は前年度と比べ3,865百万円増加の44,639百万円となりました。また、セグメント負債(負債合計)につきましては、前年度と比べ3,810百万円増加の39,603百万円となりました。
経常収益はリース売上が増加したことから前年度と比べ1,130百万円増加して11,020百万円となりました。一方、経常費用は、リース原価や与信関連費用が増加したことなどから前年度と比べ1,297百万円増加して10,871百万円となりましたので、セグメント利益(経常利益)は前年度と比べ167百万円減少して149百万円となりました。
<その他>
証券業務においては、銀行と協働推進し顧客層の拡大を図るとともに、マーケット環境に即した提案営業等に取り組みました。クレジットカード業務においては、法人向けカードの推進と新規加盟店の獲得に積極的に取り組み、奈良県を中心とするエリア内のキャッシュレス決済市場の拡大を図りました。コンサルティング業務においては、お客さまの企業価値向上に資するコンサルティングや人材紹介サービスなどのソリューションを積極的に提供しました。
以上の結果、経常収益はクレジットカード業務の売上高は増加しましたが、証券業務の売上高が減少したことなどから、前年度と比べ121百万円減少して5,840百万円となりました。一方、経常費用は証券業務において営業経費が減少したことなどから前年度と比べ101百万円減少して4,337百万円となりましたので、セグメント利益(経常利益)は前年度と比べ20百万円減少して1,502百万円となりました。
なお、セグメント資産(総資産)は前年度と比べ1,642百万円減少の29,771百万円となりました。また、セグメント負債(負債合計)につきましては、前年度と比べ236百万円減少の13,083百万円となりました
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
○経営目標の達成状況の分析
当行グループでは、重要な経営指標として「顧客向けサービス業務利益(連結)」「OHR(連結)」「ROE(連結)」「ROA(単体)」について、2024年度までの目標設定を行っています。
2023年度においては、法人のお客さまの企業価値向上支援や、個人のお客さまの資産形成支援に取り組んだことにより、貸出金利息や役務取引等利益が増加したことから、「顧客向けサービス業務利益(連結)」については、2022年度比2,105百万円増加の8,000百万円となりました。また、「ROE(連結)」についても、当期純利益の増加により2022年度比2.56%上昇の4.28%となり、「顧客向けサービス業務利益(連結)」「ROE(連結)」の2指標については、2024年度までの中間目標を上回ることができました。
一方、「OHR(連結)」「ROA(単体)」については、スマホバンキングアプリ等の戦略的なIT投資により経費が増加したことや、投資信託解約損益等を含む有価証券利息配当金が減少したことなどが影響し、2022年度比悪化しました。
(注)「活力創造に関わる資格保有者数」については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本経営に関する取組 ②指標及び目標」に記載しています。
○当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の経営成績は、資金利益が減少し営業経費が増加しましたが、役務取引等利益、国債等債券損益及び株式等関係損益が増加し、与信関連費用は減少しました。
以上の結果、経常利益は前年度と比べ10,308百万円増加して16,631百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度と比べ7,306百万円増加して12,037百万円となりました。
(注)1. 連結粗利益=(資金運用収益-資金調達費用)+信託報酬+(役務取引等収益-役務取引等費用)
+(その他業務収益-その他業務費用)
2. 与信関連費用=貸倒償却引当費用-貸倒引当金戻入益-償却債権取立益
(部門別)
当行グループの業績については、「顧客向けサービス業務利益」「与信関連費用」「市場部門収益」の3つの区分で分析・検討しています。
①親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、顧客向けサービス業務利益及び市場部門収益が増加し、与信関連費用が減少したことから、前年度比7,306百万円増加して12,037百万円となりました。
②顧客向けサービス業務利益(連結)
当連結会計年度の顧客向けサービス業務利益につきましては、物件費等の営業経費が増加しましたが、貸出金利息及び役務取引等利益が増加したことから、前年度比2,105百万円増加して8,000百万円となりました。
a 貸出金利息、貸出金平均残高及び利回り(単体)
当事業年度の貸出金利息につきましては、貸出金残高が増加し、外貨建貸出の利回りが上昇したこと等から、前年度比2,819百万円増加して37,128百万円となりました。
b 役務取引等利益(単体)
当事業年度の役務取引等利益につきましては、法人ソリューション収益が増加したこと等から、前年度比302百万円増加して7,351百万円となりました。
イ 役務取引等収益(単体、信託報酬含む)
ロ 役務取引等費用(単体)
c 経費(単体)
当事業年度の経費につきましては、人件費は将来を担う多様な人材の確保に向けて賃金引き上げ等の施策を実施したことにより前年度比260百万円増加の21,037百万円、物件費はスマホバンキングアプリ等の戦略的なIT投資を主因として前年度比592百万円増加の14,456百万円となり、経費合計は前年度比1,092百万円増加して37,930百万円となりました。
③与信関連費用(単体)
当事業年度の与信関連費用につきましては、お客さまの事業を深く知る活動を徹底し、本業支援や業績改善のサポートに取り組んだことにより取引先の業況改善が図られたことから、前年度比1,406百万円減少して64百万円となりました。
④市場部門収益(単体)
当事業年度の市場部門収益につきましては、投資信託解約損益が減少したものの、前年度に逆鞘となっていた外国債券等の売却によりポートフォリオ再構築を進めた結果、国債等債券損益が改善しキャピタル収益が大幅に改善したことから、前年度比8,915百万円増加して9,937百万円となりました。
○当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度の主要勘定につきましては、以下のとおりです。
①貸出金
当連結会計年度末の貸出金残高につきましては、地域経済の活性化に向けてお客さまの様々なニーズにお応えしました結果、住宅ローン等を中心とした個人向け貸出金や企業向け貸出金が増加したことから、当年度中226,166百万円増加して4,170,554百万円となりました。
(業種別貸出状況(末残・構成比))
(注) 「国内」とは当行及び連結子会社です。
(参考)
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、当行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について、債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものです。
1 破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
2 危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
3 要管理債権
要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
4 正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
②有価証券
当連結会計年度末の有価証券残高につきましては、当年度中140,550百万円増加して1,461,095百万円となりました。
確実性の高い収益を獲得できる資産への投資等、今後の収益安定化を図るためポートフォリオを見直したことで、円貨債券及び投資信託等のその他の証券の残高が増加しています。
③預金及び譲渡性預金
当連結会計年度末の預金残高につきましては、安定的な資金調達に注力しました結果、個人預金等が増加したことから当年度中82,099百万円増加して5,797,765百万円となりました。
譲渡性預金残高につきましては、一般法人からの預け入れが減少したことから当年度中2,401百万円減少して5,738百万円となりました。
(預金の種類別残高(末残))
(注) 1 流動性預金=当座預金+普通預金+貯蓄預金+通知預金
2 定期性預金=定期預金+定期積金
(3)「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づく信託業務の状況
連結会社のうち、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づき信託業務を営む会社は、当行1行です。
○ 信託財産の運用/受入状況(信託財産残高表)
(注) 共同信託他社管理財産については、前連結会計年度(2023年3月31日)及び当連結会計年度(2024年3月31日)のいずれも取扱残高はありません。
○ 元本補填契約のある信託の運用/受入状況(末残)
(参考)
自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しています。
当行は国内基準を適用のうえ、2024年3月31日より信用リスク・アセットの額の算出においては基礎的内部格付手法を採用し、また、オペレーショナル・リスク相当額に係る額は標準的計測手法により算出しています。
なお、2023年3月31日は、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を、オペレーショナル・リスク相当額の算出においては粗利益配分手法を採用していました。
(4)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
①キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は961,599百万円となり、前年度末と比べ121,560百万円減少しました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動により使用した資金は26,104百万円となり、前年度と比べ使用した資金は487,760百万円減少しました。
これは、主として預金や債券貸借取引受入担保金等が増加したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動により使用した資金は91,867百万円(前年度は108,355百万円の獲得)となりました。
これは、主として有価証券の売却による収入額が減少したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動により使用した資金は3,589百万円となり、前年度と比べ使用した資金は1,582百万円減少しました。
これは、主として自己株式の取得による支出額が減少したことなどによるものです。
②資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当行グループの中核事業は銀行業であり、長期的かつ安定的な調達としてお客さまの預金による調達を重視しています。
なお、当面の設備投資及び株主還元等は自己資金で対応する予定です。
(資金運用及び資金調達の状況)
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当行グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
○生産、受注及び販売の実績
「生産、受注及び販売の実績」は、銀行業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので、記載していません。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等は行っていません。
当連結会計年度における研究開発活動につき、特記すべき事項はありません。