当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、当社グループのすべての役職員が活動していくうえでの基本的な考え方として、「存在意義」・「経営姿勢」・「行動規範」から構成されるグループ企業理念を制定しており、自らの存在意義を「潤いと活力ある地域の明日を創る」と定め、その基本的な経営姿勢を「最適のサービスで信頼に応える」とし、これらの具現化のための行動規範として「感謝の心でベストをつくす」を掲げております。
当社は、グループ企業理念のもと、株主さま、お客さま、地域の皆さま及び従業員等のゆるぎない信頼を確立し、地域に根差した企業グループとしての社会的責任を果たしつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図りながら、地域経済の発展に貢献していくことを経営の基本方針としております。

当社は、「新たな価値を創造・提供し続ける企業グループ」を長期ビジョンとして掲げており、「2021年度中期経営計画」では、当社グループ独自のビジネスモデルである「DHDモデル(デジタル技術を活用して、お客さまとの接点を拡大し事務手続きを徹底的に効率化することで、お客さま対応に専念すること。)」を更に深化・進化(しんか)させ、グループ一丸となってビジネスモデル変革に取り組んでまいりました。
本年4月にスタートさせた「2024年度中期経営計画」(以下、「新中計」という。)の策定においては、様々な環境・社会課題のうち、当社グループの価値創造に大きく影響する重要項目(マテリアリティ)として、「気候変動・環境負荷」「人口減少・少子高齢化」「地域経済・産業の持続的な発展」「人的資本の拡充」「インテグリティの追求」の5つのマテリアリティを特定いたしました。
次なる10年を展望したとき、地域とともに当社グループが更に発展・成長していくためには、マテリアリティを起点としたサステナビリティ経営を実践していくことが必要であり、その戦略遂行の主役は紛れもなく「人」であると考えております。
当社グループがこれまで積極化してきたデジタル実装をベースに、「DHDモデル」の「H(ヒューマン)」に更なる磨きをかけることで、10年先を見据えた「稼ぐ力」を向上させていくために、「事業ポートフォリオ」及び「人財ポートフォリオ」の再構築を中心とした「営業×人財」の構造改革を実行し、長期ビジョンの実現及び企業価値の向上を目指してまいります。
このような考えのもと、新中計では、構造改革のフェーズ1「基礎構築」の3年間として位置付け、役職員のマインドセットや行動の変革を促していく取組みを進めてまいります。
新中計では、マテリアリティを起点とした「成長」「適応」「強靭」「改善」をキーワードに、4つの戦略で構成いたします。
グロース戦略
地域経済・産業の持続的な発展によって、ステークホルダーとともに「成長」する。
アジャスト戦略
気候変動や人口減少など、当社グループ及びステークホルダーに大きな影響を及ぼす地域の課題に対して「適応」する。
レジリエンス戦略
人的資本を拡充するとともに、インテグリティの伴った事業活動を実践することで、「強靭」な人財及び組織を創り出す。
アップグレード戦略
更なるBPR推進や対面/非対面チャネルの充実、及び次期基幹系システムの構築によって、インフラや仕組み等をより高度なものに「改善」する。
新中計における経営指標は、当社グループに与える経済インパクト(財務指標)及びマテリアリティごとの社会インパクト(非財務指標)を計る「インパクト指標」として構成します。
経済インパクト
(注) 1 「気候変動・環境負荷」に関する取組の詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 重要なサステナビリティ項目 ① 気候変動に関する取組」に記載しております。
2 「人口減少・少子高齢化」におけるお客さま1人あたりの総資産残高指数は、伊予銀行または四国アライアンス証券とお取引のある18~74歳の個人のお客さまの総預り資産残高をお取引先数で除したものを指数化しております。
3 「地域経済・産業の持続的な発展」における事業所1社あたりのキャッシュフロー指数は、当社グループの瀬戸内圏営業エリアにてお取引のある法人のお客さまのキャッシュフロー(経常利益+減価償却費)をお取引先数で除したものを指数化しております。
4 「人的資本の拡充」における従業員エンゲージメントスコアは、エンゲージメント計測ツール「wevox」の総合スコアとしております。また、従業員1人あたりお客さま営業利益は、当社グループの顧客部門の営業利益を連結従業員数(除く臨時・嘱託)で除した数値としております。
なお、取組の詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 重要なサステナビリティ項目 ② 人的資本に関する取組」に記載しております。
5 「インテグリティの追求」におけるお客さまCX指標は、株式会社野村総合研究所のCXMM®(株式会社野村総合研究所の登録商標)に準拠して計測しております。ステークホルダー対話回数は、株主、機関投資家、個人投資家、及びお取引先等向けに開催したSRやIRの実施回数としております。また、ESG評価機関の評価スコアは、MSCI社、Sustainalytics社及びFTSE社によるESG評価スコアを採用しております。
当社グループを取り巻く経営環境として、人口減少・少子高齢化に伴い深刻化する人手不足や事業所数の減少による地域経済の縮小など、社会構造の変化は加速度的に進んでおります。
また、デジタル化・脱炭素化に対する官民投資の拡大や金利上昇局面への反転をはじめ、デフレ経済からの脱却に向けて、賃金と物価の双方が好循環する経済の到来が期待されるなど、大きな転換点を迎えつつあります。
このような経営環境下、新中計では、当社グループの価値創造に大きく影響する「気候変動・環境負荷」、「人口減少・少子高齢化」、「地域経済・産業の持続的な発展」、「人的資本の拡充」、「インテグリティの追求」の5つのマテリアリティを起点とした事業活動を展開していくサステナビリティ経営を実践することで、幅広いステークホルダーに対する社会インパクトを創出するとともに、当社グループの企業価値向上に向けた経済インパクトを極大化させてまいります。
引き続き、健全経営に徹するとともに経営体力を一層強化し、サステナブルに存続するための拠りどころである「潤いと活力ある地域の明日を創る」というグループ企業理念のもと、当社グループ一丸となって金融/非金融の両面から地域の発展・成長のために尽力してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、環境・社会課題等、サステナビリティを巡る課題への対応について、リスクの減少のみならず、収益機会にも繋がる重要な経営課題であると認識しており、サステナビリティ向上に資する事項を、事業活動及び社会貢献活動の両面からグループ横断的に取り組んでいくため、マテリアリティの特定、及び「サステナビリティ基本方針」を制定するとともに、「グループサステナビリティ委員会」を設置しております。
委員長:社長
構成メンバー:取締役、執行役員、関連する部室長及びグループ会社社長 等

当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下の通りであります。
・気候変動に関する取組
・人的資本に関する取組
それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
当社グループの中核企業である株式会社伊予銀行は、気候変動がお客さまや自行に及ぼすリスクを想定しながら、脱炭素社会の実現に貢献していくため、2021年2月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同表明しております。当社グループは、持続可能な地球環境の実現と事業活動の両立が新たな事業機会の創出に繋がると考え、TCFD提言の枠組みに基づき、次のとおり気候変動に関する情報開示を充実させております。
「潤いと活力ある地域の明日を創る」というグループ企業理念(存在意義)のもと、「環境方針」を制定し、環境への負荷軽減と、お客さまの環境保全活動へのご支援に、積極的かつ継続的に取り組んでおります。
また、「気候変動・環境負荷」を当社グループのマテリアリティの一つとし、当社グループが環境に配慮した事業活動を展開するとともに、お客さまの気候変動対応及び脱炭素化に向けた取組みを金融・非金融の両面から支援し、豊かな地球環境・自然資本の維持に貢献することとしております。
地域社会へ重大な影響を及ぼす気候変動は、当社グループにとってリスクである一方、新たな事業機会を創出する重要な経営課題の一つとして捉えております。
TCFDへの対応は、組織一体となって検討を進めていく必要があることから、経営企画部門やリスク管理部門をはじめとして組織横断的に、脱炭素化の実現に向けた企業活動の在り方について調査・協議しております。
協議事項は、社長を委員長とするグループサステナビリティ委員会に付議・報告し、気候変動を含む環境課題に関する対応状況及び情報開示について審議しております。また、重要事項については必要に応じて取締役会に報告し、適宜適切に、取締役会の監督を受ける体制を構築しております。
b.戦略
お客さまの再生可能エネルギー事業への投資や環境負荷低減に資する設備投資等を積極的にご支援し、ファイナンス面から、お客さまの温室効果ガス排出量削減やエネルギー効率向上に寄与し、脱炭素社会の実現に向けて取り組んでおります。
また、気候変動対策コンサルティング等、非金融面においてもお客さまの脱炭素化をご支援するソリューションを提供するため、地域の電力会社との包括的な連携協定の締結等、気候変動に強い地域づくりと持続可能なビジネスの構築に向けた取組みを開始しております。
気候変動リスクとして、移行リスクと物理的リスクを認識しており、当社グループの事業活動への直接的な影響と、お客さまが影響を受けることによる間接的な影響の両方に対応する必要があります。
ウ.シナリオ分析
<移行リスク>
移行リスクは、事業性与信先のうち「電力・ガス」セクターを対象に、NGFSが公表する「2℃シナリオ」「1.5℃シナリオ」のもとで、脱炭素社会への移行に伴う炭素排出量の規制強化及び炭素税の導入による個社の財務への影響に起因した与信関係費用の増加に関する分析を実施いたしました。
また、新たに「海運」セクターを分析対象に追加し、「環境対応船舶へのシフト」に係る移行リスクについて分析を実施いたしました。なお、分析の結果、設備投資額の増加は傭船料や船舶の価値上昇により相殺可能な範囲であり、環境対応船舶へのシフトが船主の財務内容に悪影響を及ぼすことはなく、同セクターに関する与信関係費用の増加は発生しないものと現段階では認識しております。

<物理的リスク>
物理的リスクは、事業性与信先を対象に、IPCCが公表する「2℃シナリオ」「4℃シナリオ」のもとで、水害発生による事業性与信先の財務への影響と担保不動産の損傷に起因した与信関係費用の増加に関するシナリオ分析を実施いたしました。

TCFD提言における開示推奨項目等に基づいた炭素関連資産(※)の貸出金等に占める割合は、「47.3%」(2023年度末)となりました。なお、「エネルギー」セクターの貸出金等に占める割合は、「4.0%」(2023年度末)となっております。
※ 「エネルギー」「運輸」「素材・建築物」「農業・食料・林業製品」セクターの定義に基づき、環境省「ポートフォリオ・カーボン分析を起点とした脱炭素化実践ガイダンス」掲載の業種分類に当てはめて集計しております。
今後もシナリオ分析の高度化及び分析対象セクターの拡大等を図るとともに、当該セクターとのエンゲージメントを通じて、サステナブルファイナンスのほか脱炭素に向けた様々なソリューションの提供を検討してまいります。
c.リスク管理
気候変動による移行リスク及び物理的リスクが、当社グループの事業活動・財務内容等に影響を与えることを認識しております。
今後も継続して当該リスクにかかる影響を把握・分析するとともに、統合的リスク管理の枠組みにおける管理態勢の構築を検討してまいります。
気候変動を含む環境や社会に対し、負の影響を助長する可能性が高い特定のセクターに対する投融資において、認識すべき環境・社会リスク等を示し、リスクの低減・回避に向け、お客さまの対応状況を確認するなど、各々の特性を踏まえた対応を実施のうえ、取引判断を行うよう方針を定め、これを公表しております。特に、気候変動や大気汚染の懸念が高まるリスクを内包している「石炭火力発電」セクターに対する投融資を厳格化するよう、当社グループの取組姿勢を明文化しております。
お客さまの気候変動対応及び環境保全への取組みを把握し、経営課題の抽出とその解決に資するため、従来から注力している「事業性評価」における評価項目として、環境配慮項目(気候変動・環境に配慮した経営状況)を設定しております。
d.指標と目標
<削減目標>
2026年度までにグループのCO2排出量(※)を2013年度比50%削減
2030年度までにグループのCO2排出量(※)をネットゼロ
※ 省エネ法の定期報告書の基準に準拠して集計したScope1(直接的排出)及びScope2(間接的排出)の合計
<排出量及び削減実績>
(注) 株式会社伊予銀行の実績を記載しております。今後グループ各社についても集計予定であります。
<削減施策>
施設・設備面(店舗・営業車両等)、業務運用面(業務効率化等)からの対応及び再生可能エネルギー由来の電力調達等を検討するとともに、今後開発が期待されるCO2排出量削減に向けた新たな技術の採用等によって目標を達成いたします。
<Scope3の算定>
(注) 株式会社伊予銀行の実績を記載しております。今後グループ各社についても集計予定であります。
<Scope3カテゴリー15(投融資)への対応状況>
Scope3カテゴリー15(投融資)に分類される投融資先ポートフォリオのCO2排出量(ファイナンスド・エミッション)の算定に関しては、以下の算定式(※)に基づき、トップダウン型にて推定値を算定いたしました。今後、算定内容の分析を進めるとともに、算定手法の高度化及び削減目標の設定等に向けた取組みを検討いたします。
※ 算定式(事業性融資先全先を対象とし、各先の合計値を算定)
融資先の売上高×業種別排出係数(環境省準拠)×融資先への融資額÷(融資先負債総額+融資先純資産額)
(融資先負債総額+融資先純資産額)について、純資産マイナスの融資先については(融資先負債総額+融資先資本金)を使用
イ.サステナブルファイナンス目標・実績
<目標累計実行額>
サステナブルファイナンス:1兆4,000億円(うち環境分野7,000億円)
<対象期間>
2021年度~2030年度
<サステナブルファイナンスの定義>
環境・社会課題の解決に向け、お客さまのサステナビリティへの取組みの支援を通じ、持続可能な地域社会の実現に資するファイナンス
<対象となる投融資例>
<2023年度末までの累計実行額>
合計4,462億円(うち環境分野2,816億円)
当社グループでは、人財を競争優位の源泉の一つと位置付け、全ての従業員の5つのWell-Being※(Career、Social、Financial、Physical、Community)実現を目指し、人財育成及び社内環境整備に取り組んでおります。
※ いよぎんグループWell-Being = Better Work, Better Life. より良い人生のために、より良い仕事を。
a.戦略
私たちは、「お客さま起点」を基本的な考え方とし、「専門性を高めた共創人財」や「領域ごとの専門人財」といった多様な人財が、各々の強みをつくり、得意分野を伸ばし、適材適所や適所適材で能力を最大限発揮することで、多様な価値を創造・提供できるコンサルティング集団となることを目指し、人財育成に取り組んでおります。
私たちは、「専門的かつ多様な人財」がエンゲージメント高く働けるよう、「働き方改革」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」「健康経営」の取り組みを中心として社内環境の整備に取り組んでおります。
(注) 1 人財育成に関する指標及び目標は、当社グループにおいて主要な事業を営む伊予銀行を対象としております。
2 高度資格保有者数は、法人/個人/シップ/プランニング、マーケット及びテクノロジー/プランニング(デジタルビジネス)の合計としております。
3 法人/個人/シップ/プランニングは、次の資格を保有している従業員を対象としております。
司法試験(弁護士)、公認会計士、税理士、司法書士、不動産鑑定士、MBA、中小企業診断士、土地家屋調査士、1級FP技能士、CFP、日商簿記検定1級、医療経営士1級・2級、シニアPB、通関士、AIBA認定貿易アドバイザー、社会保険労務士、介護福祉経営士1級、農業経営上級アドバイザー、弁理士、TOEIC700以上、実用英語検定準1級以上、中国語検定1級、1級建築士、金融内部監査士、CIA
4 マーケットは、次の資格を保有している従業員を対象としております。
証券アナリスト、国際公認投資アナリスト
5 テクノロジー/プランニング(デジタルビジネス)は、次の資格を保有している従業員を対象としております。
ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリスト、ITサービスマネージャ、システム監査技術者、情報処理安全確保支援士、統計検定1級、1級ウェブデザイン技能士
(注) 1 社内環境整備に関する指標及び目標は、当社グループにおいて主要な事業を営む伊予銀行を対象(従業員持株会加入率は連結ベース)としております。
2 企業型確定拠出年金活用率は、資産残高ベースでの投資信託の割合にて算出しております。
3 障がい者雇用率は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき算出しております。
4 男性育児休業取得率は、厚生労働省が定める算出方法に基づき算出しております。
5 身体的指標は、肥満・血圧・血中脂質・血糖のいずれかにリスクのある従業員の割合としております。
6 心理的指標(ストレスチェック)は、全国平均を100とした場合の総合健康リスクとしております。
7 就業上の指標(アブセンティーズム)は、「長期傷病欠勤及び傷病休職の日数÷従業員数」にて算出した日数としております。
8 就業上の指標(プレゼンティーズム)は、「東大1項目版」にて測定した割合としております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループが認識している主要なリスクのうち、特に重要なリスクとして、信用リスク、市場リスク及びオペレーショナル・リスクがあげられます。当社グループでは、統合的なリスク管理方法の一つとして、信用リスクや市場リスク等を共通の尺度(VaRなど)を用いて計測しております。
当社グループでは、過度のリスクテイクを抑制するため、半年毎に取締役会で策定するグループリスク管理計画において、リスク資本をもとにしたリスク・カテゴリー毎のリスク・リミットを設定しております。半年毎の運用・調達計画の策定に際しては、リスク・リミットを踏まえた計画を策定するとともに、リスク・リミットの遵守状況をグループALM委員会及び取締役会に報告を行っております。また、グループリスク管理計画においては、リスク・カテゴリー毎の管理施策及び管理項目を設定しております。設定した管理施策及び管理項目の状況については、リスク・カテゴリーに応じて、グループALM委員会、グループ信用リスク管理委員会又はグループオペレーショナル・リスク管理委員会に定期的に報告を行うとともに、取締役会に定期的に報告を行っております。
当社のリスク管理体制の整備の状況については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 不良債権の状況
当社グループは、地域金融機関の使命である地域に密着した金融機能を十分に発揮するとともに、より磐石な経営基盤を確立するため、不良債権の縮減に鋭意努めてまいります。しかし、国内外の景気動向、不動産価格・株価・為替、貸出先の経営状況が大幅に変動する場合には、当社グループの不良債権及び与信関係費用が増加する可能性があります。
② 貸倒引当金の状況
当社グループでは、貸出先の状況、差し入れられた担保の価値及び見積りに基づいて、貸倒引当金を計上しておりますが、実際の貸倒れが貸倒引当金計上時点における見積りと乖離した場合や、担保価値が下落した場合には、貸倒引当金を積み増さざるを得なくなる可能性があります。
③ 業種別貸出状況
当社グループでは、特定の業種への与信集中を抑制し、リスク分散を徹底することを、与信リスク管理の基本的な考え方としております。当社グループの貸出資産は各業種に分散されているものの、中には、国内外の景気動向等の様々な要因により業況の厳しさが増している業種もあります。こうした環境下、当社グループでは、業種別の貸出審査態勢を強化しておりますが、国内外の景気動向、不動産価格・株価・為替、当社グループ貸出先の経営状況が大幅に変動する場合には、当社グループの不良債権及び与信関係費用が増加する可能性があります。
④ 貸出先への対応
当社グループは、貸出先に債務不履行等が発生した場合においても、回収の効率性・実効性等の観点から、当社グループが債権者として有する法的な権利のすべてを必ずしも実行しない場合があります。また、当社グループがこれらの貸出先に対して追加貸出を行って支援をする可能性もあります。かかる貸出先に対し、追加貸出を行って支援を実施した場合は、貸出残高と与信関係費用が増加する可能性があります。また、現在、「企業再生支援」に積極的に取り組んでいるところでありますが、経営改善計画等が順調に進捗しない場合は、与信関係費用が増加する可能性があります。
⑤ 権利行使の困難性
当社グループでは、与信の安全性を確保するために、不動産や有価証券等に担保権を設定することがありますが、不動産価格や株価の下落等の要因によって、担保権を設定した不動産や有価証券等を換金することが困難となる可能性があります。
⑥ 不良債権問題等に影響しうる他の要因
市場動向により、金利の上昇が発生した場合、貸出先の金利負担増加、財務内容悪化等の影響により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、信用リスクにかかる管理体制として、リスク管理部門を営業関連部門から完全に独立した信用リスク管理部署として定め、「内部格付制度」を当社グループにおける信用リスク管理の根幹の制度と位置付け、その上で制度に関する基準を制定し、個社別の与信管理、業務運営等に活用しております。リスク管理部門では、内部格付制度の設計・基準制定及び変更、内部格付制度の検証及び運用の監視等を所管しており、内部格付制度の適切な運営や格付の正確性・一貫性の確保に責任を負う体制としております。一方、審査関連部門は個別与信にかかる審査等を担当しており、営業推進部門から分離し審査の独立性を確保するとともに、融資に関する基本原則を遵守し、お取引先の財務状況や資金使途、返済能力等を勘案した厳正かつ総合的な審査を実施しております。
当社グループの主要な資産、負債は、主要業務である預金、貸出、為替及び有価証券業務等を通じて形成されており、金利や為替レート、株価等が大きく変動した場合には、当社グループの業績及び財政状態が悪化するリスクにさらされております。主なリスクの具体的内容は次のとおりです。
① 金利リスク
金利リスクとは、貸出取引や有価証券投資等の資金運用と預金等による資金調達とのミスマッチが存在している中で、将来の金利変動などによって資金利益が縮小するリスクや金利が上昇することで保有する債券の価値が下落するリスクを指します。当社グループでは、現状及び将来の金利予想を踏まえ、金利リスクを総合的に管理する態勢を構築し、慎重な運営を行っておりますが、予期せぬ金利変動等によって、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 為替リスク
当社グループが保有する有価証券の一部は、為替レートの変動の影響を受けます。例えば、為替相場が円高に変動した場合、為替ヘッジを行っていない有価証券の価値に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 株価リスク
当社グループは市場性のある株式を保有しております。今後、国内外の景気低迷等の要因で全般的かつ大幅に株価が下落した場合には、保有有価証券に減損又は評価損が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼすとともに、自己資本比率の低下を招く可能性があります。
当社グループでは、市場リスクを適正にコントロールし、収益性と健全性を両立させていくため、グループALM委員会を中心とする管理体制のもとで市場リスクの統合管理を行っております。グループALM委員会では、ギャップ法や時価評価分析、期間損益シミュレーション、VaR等の多面的な手法を活用して、適時・的確にリスクの把握を行っております。これらの手法によるリスク分析に加え、収益構造分析、経済環境・市場予測等に基づいて、運用・調達の基本方針やリスク管理計画、ヘッジ戦略を検討しております。なお、市場取引部門については、取引を執行する部署及び決済等の事務を行う部署から独立したグループリスク管理部署を設置し、相互牽制を図っております。
① 格付低下及び資金調達条件悪化のリスク
当社グループは、当社グループの信用力を背景に資金調達を行っており、当社グループの信用状況の悪化により格付機関が当社グループの格付を引き下げた場合、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。また、本邦金融機関全体の信用度に対する懸念が高まった場合、当社グループの格付は不変であったとしても、当社グループが外国金融機関から資金調達を行う際にリスク・プレミアムを要求される可能性があります。このような場合、資金調達コストの上昇が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 市場流動性低下のリスク
金融市場の混乱等により、当社グループが保有する有価証券の市場流動性が著しく低下し、市場において取引ができなくなったり、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされ、保有有価証券の価値が下落する可能性があります。このような場合、保有有価証券の価値の下落が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、流動性リスク管理として、半期毎に運用・調達のバランスに配慮した資金計画を策定するとともに、月次ベースで予想・実績を作成し、計画との差異を検証しております。また、市場における取引状況に異変が発生していないかチェックを行い、毎月グループALM委員会に報告することにより、市場流動性リスクの顕現化による多額の損失発生を未然に防止する体制としております。さらに、運用・調達ギャップや資金化可能な有価証券残高等を、グループALM委員会等へ報告する体制としております。
① 事務リスク
当社グループは、銀行業務を中心に、総合的なサービスを提供するため多様な業務を行っております。これらの業務を遂行するにあたって、役職員が不正確な事務又は不正や過失等に起因する不適切な事務を行った場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② システムリスク
当社グループでは、コンピュータシステムの安全稼働及びシステムに関する情報保護と安全な利用に万全を尽くしております。しかしながら、想定外のコンピュータシステムの障害や誤作動、不正使用等が発生した場合や、外部からのサイバー攻撃、その他の不正アクセス、コンピュータウイルス感染等により情報の流出、システム機能の停止や誤作動等が生じた場合、また重要なシステム新規開発、更改等により重大なシステム障害が発生した場合には、業務の停止及び損害賠償の負担等が発生するとともに、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 法務リスク
a.コンプライアンスに係るリスク
当社グループは、事業活動を行う上で、会社法、銀行法、金融商品取引法等の法令の適用を受けております。当社グループでは、これらの法令に加え、社会規範を遵守するようコンプライアンスの徹底を経営の最重要課題の一つとして取り組んでおります。しかしながら、これらの法令等を遵守できなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法令が将来において変更・廃止され、あるいは、新たな法令が設けられる可能性があり、その内容によっては、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
b.マネー・ローンダリング、テロ資金供与、拡散金融及びその他制裁違反に係るリスク
当社グループは、マネー・ローンダリング、テロ資金供与、拡散金融及びその他制裁違反(以下、「マネロン等」という。)の防止を経営上の重要な課題として位置付け、国内外の法令諸規制を遵守する態勢を整備するとともに、マネロン等対策に係る態勢の強化に努めております。しかしながら、マネロン等対策が有効に機能せず、法令諸規制の違反等が発生した場合には、業務停止、制裁金等の行政処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 人的リスク
当社グループは、給与・手当・解雇等に関する人事運営上の諸問題の発生やセクシャルハラスメント等の差別的行為を未然に防止するために、適切な労務管理とコンプライアンスの徹底に努めておりますが、これらに関連する重大な訴訟等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 有形資産リスク
当社グループは、営業拠点や社宅等として有形資産を所有していますが、当該有形資産が地震・台風等の自然災害やその他の外的要因により毀損した場合には、業務の運営に支障をきたし、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、オペレーショナル・リスクを網羅的かつ効率的に管理するため、① 事務リスク、② システムリスク、③ 法務リスク、④ 人的リスク、⑤ 有形資産リスクの5つのリスク・カテゴリーに区分し、リスク管理部がオペレーショナル・リスク統括部署としてグループ全体のオペレーショナル・リスクを管理しております。顕現化したリスクのみならず潜在的なリスクの特定にも努め、グループオペレーショナル・リスク管理委員会を中心にオペレーショナル・リスク管理の高度化に取り組んでおります。
当社グループの事業は、地域の皆さま、お取引先並びに市場関係者からの信用によって成り立っております。当社グループに関する風評・風説については、対策要領を制定し役職員に徹底する等、その防止策・対応策を講じておりますが、当社グループに関する事実と異なる風評・風説が、口伝てにて、あるいはインターネット・マスコミ等の媒体を通じて世間に拡散した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、レピュテーショナルリスクの発生源である各種リスクについての管理強化はもとより、倫理、法令、社内の規定等を遵守する企業風土の醸成に向けて、全社挙げた取り組みを行っております。また、お客さまからの苦情等に対しては、リスク管理部で対応を行うとともに、速やかな経営陣への報告、さらには関連各部間での緊密な連絡・協議体制を構築し、地域の皆さま方の声をスピーディーに業務に反映させる体制を整備しております。また、経営企画部を中心とし、対外的な広報活動やディスクロージャーの充実にも努めております。
当社グループは、海外に営業拠点を有しておりますので、銀行法に定める自己資本比率規制及びレバレッジ比率規制に基づき、自己資本比率等を国際統一基準以上に維持しなければなりません。この基準が維持できない場合は早期是正措置が発動され、監督当局から業務の全部又は一部停止等を含む様々な命令を受けることになります。
当社グループの自己資本比率が大きく低下する可能性としては、以下のようなことが複合的に発生する場合が考えられます。
・経済環境の悪化等に伴う不良債権処理の増加により、自己資本が著しく毀損する場合
・株価や金利の変動に伴い、当社グループの保有する有価証券の評価益が大きく減少する場合
・予想デフォルト率の上昇や与信ポートフォリオの構成変化、又はデフォルト債権の増加等によって所要資本額(期待損失あるいは非期待損失)が増加する場合
当社グループでは、内部管理としての統合的リスク管理と自己資本比率規制に基づく所要自己資本管理を柱として、自己資本充実度の評価を行っております。統合的リスク管理では、半年毎に策定するグループリスク管理計画において、保有するリスク資本をもとにリスク・リミット及びアラームポイントを設定し、統合的に捉えたリスク量がリスク・リミットの範囲内であることを確認しております。統合的に捉えたリスク量の状況等につきましては、定期的にグループALM委員会及び取締役会に報告しております。あわせて、経済状況の悪化、市場環境の悪化及び流動性の悪化など、好ましくない変化に対する対応能力を確認するため、半年毎にストレス・テストを実施しております。一方、所要自己資本管理では、当社グループの経営計画に応じた期間単位で各比率の目標設定、管理を行っております。中期経営計画(3年)・短期経営計画(1年)において総自己資本比率、普通株式等Tier1比率の目標を設定しており、毎期の期初収支予算作成時に維持すべき自己資本比率の水準を決定した上で、期中3回の総合予算策定時及び毎月開催されるグループALM委員会にて、実績把握及びストレス・テストを踏まえた管理を行っております。
当社グループでは感染症の流行に対して、お客さまや役職員の健康と安全に配慮しつつ、状況に応じて在宅勤務や交替勤務の実施、昼時間休業の導入等により業務継続体制を整えております。しかしながら、今後、感染症が流行するなどにより、国内外の景気動向、不動産価格・株価・為替、当社グループ貸出先の経営状況が大幅に変動する場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
① 業務範囲の拡大に伴うリスク
規制緩和の進展等に伴い、今後当社グループが従来の伝統的な銀行業務以外の分野に業務範囲を拡大することが予想されます。業務範囲を拡大した場合、当該業務に関するリスクについて全く経験がないか、又は限定的な経験しか有していないことがあるため、新しく複雑なリスクにさらされることになります。また、業務範囲の拡大に際しては、十分な市場調査や収支予想に基づき取り組みますが、競争状況又は市場環境によっては、業務範囲の拡大が当初想定していた成果を得られない可能性があります。
② 競争に関するリスク
近年は、従来の伝統的な銀行業務である預貸金業務のみならず、各種商品サービス等を含めた広範な分野において、他業態・他業種との競争が激しさを増しております。当社グループがこうした競争的な事業環境下において競争優位を得られない場合、投資やコストの回収ができず、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 繰延税金資産に関するリスク
繰延税金資産は、将来の課税所得見積りを合理的に行ったうえで計上しております。しかしながら、課税所得が減少した場合や税制改正に伴う税率の変更等が生じた場合は、繰延税金資産の計上が制限され、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 退職給付債務に関するリスク
当社グループの年金資産の時価が下落した場合、当社グループの年金資産の運用利回りが低下した場合、又は退職給付債務を計算する前提の基礎率に変更があった場合には、費用負担が発生する可能性があります。また、年金制度の改定により過去勤務費用が発生し、その償却のため費用負担が発生する可能性があります。
⑤ 所有不動産に関するリスク
当社グループは、営業拠点や社宅等として不動産を所有していますが、当該不動産の価値・価格が下落した場合には減損が生じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 個人情報等の漏洩に関するリスク
当社グループは、法人・個人のお客さまに関する様々な情報を多数保有しております。これらの情報管理については管理態勢を整備のうえ、管理基準及び事務手続を制定し、研修等を通じて役職員に徹底するとともに、コンピュータのセキュリティ体制の構築、業務委託先からの漏洩リスクの排除等の対策を講じておりますが、万一、情報が外部に漏洩した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 災害リスク
当社グループは愛媛県を中心に事業を展開しており、お取引先、当社グループの人材、営業店舗及び事務センター等の施設は愛媛県に集中しております。当社グループでは、災害等の緊急事態に備え「業務継続計画」を策定し、緊急時の業務や復旧目標、業務継続手段等を定めております。また、施設等への各種災害対策や定期的な訓練を通じた基本的な防災対策・避難行動の徹底を行うなど、人的・物的被害の回避・軽減に努めております。しかしながら、今後、愛媛県を含む広域に南海トラフ地震等の大規模地震が発生した場合はもちろんのこと、愛媛県を中心とする局地的な災害等が発生した場合には、地域経済及び当社グループの人材・施設に甚大な被害が及ぶ可能性があり、その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ デリバティブ取引に係るリスク
当社グループが利用しているデリバティブ取引は、通貨、金利等が変動することによる市場リスクと、取引相手先の契約不履行による信用リスクを有しております。
⑨ 気候変動に係るリスク
気候変動リスクは、炭素排出制限等、気候関連の規制強化への対応による影響を受ける移行リスクと、自然災害によるお取引先の業績悪化や担保不動産の損傷のほか当社グループの保有資産が被災することによって事業継続が困難となる物理的リスクを認識しており、気候変動による移行リスク及び物理的リスクに起因した与信関係費用の増加等を通じて、当社グループの事業活動・財務内容等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、地域社会への重大な影響を及ぼす気候変動を重要な経営課題の1つとして捉え、当該リスクに係る影響を把握・分析するとともに、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言の枠組みに基づいた情報開示を充実させてまいります。
⑩ 持株会社のリスク
当社は銀行持株会社であるため、その収入の大部分を傘下の銀行子会社から受領する配当金等に依存しております。一定の状況下で、様々な規制上又は契約上の制限により、その金額が制限される場合があります。また、銀行子会社が十分な利益を計上することができず、当社に対して配当等を支払えない状況が生じた場合には、当社株主に対する配当の支払いができない可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当期のわが国経済は、原材料価格の高騰等による物価上昇の影響を受けながらも、好調なインバウンド需要や企業の積極的な投資意欲に支えられ、緩やかな持ち直しが継続しました。先行きにつきましては、官民連携による賃上げをはじめとする所得環境の改善や企業の積極的な投資意欲の後押しも相まって、民間需要主導の経済成長が期待されますが、世界的な金融引き締めの継続や中国経済の先行き懸念から海外経済が減速し、国内景気を下押しする可能性があります。
愛媛県経済においても、物価上昇の影響を受けつつも、個人消費の緩やかな持ち直しや原材料費の価格転嫁が進み、企業の景況感は改善しつつあります。先行きにつきましては、長引く原材料価格の高騰、人手不足感の高まり、今後の金融政策変更等が企業収益や個人消費動向に与える影響に注視する必要があり、慎重な見方となっております。
このような情勢のもと、当連結会計年度における業績は、次のとおりとなりました。
連結経常収益は、海外金利の上昇及び運用残高の増加により資金運用収益が増加したことなどから、前年度比198億4百万円増加の1,927億58百万円となりました。また、連結経常費用は、国債等債券売却損が減少したものの、海外金利の上昇により資金調達費用が増加したことなどから、前年度比36億41百万円増加の1,341億79百万円となりました。
この結果、連結経常利益は前年度比161億64百万円増加の585億79百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度比115億65百万円増加の394億64百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
○ 銀行業
経常収益は、外部顧客に対する経常収益が1,738億2百万円、セグメント間の内部経常収益が4億26百万円となり、合計1,742億29百万円となりました。
セグメント利益は前年度比151億72百万円増加して574億64百万円となりました。
○ リース業
経常収益は、外部顧客に対する経常収益が166億13百万円、セグメント間の内部経常収益が3億49百万円となり、合計169億62百万円となりました。
セグメント利益は前年度比33億54百万円減少して8億1百万円となりました。
○ その他
経常収益は、外部顧客に対する経常収益が23億42百万円、セグメント間の内部経常収益が106億42百万円となり、合計129億84百万円となりました。
セグメント利益は前年度比30億61百万円減少して70億15百万円となりました。
連結財政状態につきましては、総資産は前年度末比7,076億円増加して9兆2,583億円となり、純資産は前年度末比831億円増加して8,430億円となりました。
主要な勘定残高につきましては、譲渡性預金を含めた預金等は前年度末比1,287億円増加して6兆9,250億円、貸出金は前年度末比3,410億円増加して5兆6,453億円、有価証券は前年度末比5,804億円増加して2兆734億円となりました。
なお、株式会社伊予銀行における中小企業向け貸出金の残高は3兆1,220億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、預金の増加等により2,963億72百万円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得等により△4,814億37百万円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払及び自己株式の取得等により△110億89百万円となりました。この結果、現金及び現金同等物の期末残高は1兆1,686億68百万円となりました。
「生産、受注及び販売の実績」は、銀行持株会社における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
連結コア業務粗利益
連結コア業務粗利益は、貸出金残高の増強やファンド解約損益の改善等により資金利益が増加したことや、グループ一体での法人コンサルティング収益や預り資産収益の増加により役務取引等利益が増加したことなどから、前連結会計年度比91億70百万円増加して987億29百万円となりました。
経費
経費は、戦略投資の増加により物件費が増加したことや、ベースアップの実施等により人件費が増加したことなどから、前連結会計年度比25億29百万円増加して551億96百万円となりました。
信用コスト
信用コストは、引当率の上昇等により一般貸倒引当金繰入額の戻入が減少したことや、倒産等の増加により不良債権処理額が増加したことなどから、前連結会計年度比53億83百万円増加して27億85百万円となりました。
有価証券関係損益
有価証券関係損益は、相場動向を捉えた外債等の売却益計上により国債等債券関係損益が増加したことや、政策保有株式の売却益増加や株式等償却の減少により株式等関係損益が増加したことなどから、前連結会計年度比149億89百万円増加して149億52百万円となりました。
前中期経営計画では、以下のような2023年度目標を設定しておりました。計画最終年度である2023年度につきましては、各利益段階で計画を上回る利益水準を確保しており、連結コア業務粗利益、親会社株主に帰属する当期純利益はともに計画値を大きく上回って達成しております。高水準の利益確保を主因として、連結ROE(株主資本ベース)、連結コアOHRにおいても計画を達成しており、また、持株会社体制への移行に伴い追加した、グループ会社(除く銀行)コア業務粗利益についても、証券部門での仕組債販売縮小等の影響を各社でカバーし計画を達成しております。
以上のように、前中期経営計画の2023年度目標は全ての項目において計画を達成することができており、良好な財務上の成果を残すことができました。
キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループでは、地域における信頼性を背景にした安定的な資金調達力が、流動性確保のための基盤となっております。流動性リスク管理につきましては、半期毎に運用・調達のバランスに配慮した資金計画を策定するとともに、月次ベースで予想・実績を作成し、計画との差異を検証しております。また、市場における取引状況に異変が発生していないかチェックを行い、毎月グループALM委員会に報告することにより、市場流動性リスクの顕現化による多額の損失発生を未然に防止する体制としております。さらに、運用・調達ギャップや資金化可能な有価証券残高等をグループALM委員会等へ報告する体制としております。外貨資金につきましては、通貨スワップ等を利用した長期資金調達等によって流動性を確保し、お客さまの外貨資金調達ニーズにお応えしております。なお、固定資産の取得等の資本的支出及び株主還元等につきましては、自己資金で対応しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表『注記事項』 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(1) 国内・海外別収支
資金運用収支は829億45百万円、役務取引等収支は105億69百万円、その他業務収支は147億84百万円となりました。
(注) 1 「国内」とは、当社及び連結子会社(海外店を除く)であります。
「海外」とは、当社の連結子会社の海外店であります。
2 「相殺消去額」欄には、「国内」・「海外」間の内部取引の相殺消去額を記載しております。
3 資金調達費用は金銭の信託運用見合費用(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)を控除して表示しております。
資金運用勘定の平均残高は8兆4,673億41百万円となり、利息は1,338億62百万円、利回りは1.58%となりました。
資金調達勘定の平均残高は8兆1,224億31百万円となり、利息は509億16百万円、利回りは0.62%となりました。
(注) 1 平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、当社及び株式会社伊予銀行以外の連結子会社については、半年毎の残高に基づく平均残高を利用しております。
2 「国内」とは、当社及び連結子会社(海外店を除く)であります。
3 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度54,144百万円、当連結会計年度55,807百万円)を、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度1,345百万円、当連結会計年度1,230百万円)及び利息(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)を、それぞれ控除して表示しております。
(注) 1 平均残高は、日々の残高の平均に基づいて算出しております。
2 「海外」とは、当社の連結子会社の海外店であります。
3 資金運用勘定は、無利息預け金の平均残高(前連結会計年度392百万円、当連結会計年度513百万円)を控除して表示しております。
(注) 1 「相殺消去額」欄には、「国内」・「海外」間の内部取引の相殺消去額を記載しております。
2 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度54,536百万円、当連結会計年度56,320百万円)を、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度1,345百万円、当連結会計年度1,230百万円)及び利息(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)を、それぞれ控除して表示しております。
役務取引等収益は157億10百万円、役務取引等費用は51億41百万円となりました。
(注) 1 「国内」とは、当社及び連結子会社(海外店を除く)であります。
「海外」とは、当社の連結子会社の海外店であります。
2 「相殺消去額」欄には、「国内」・「海外」間の内部取引の相殺消去額を記載しております。
(注) 1 「国内」とは、当社及び連結子会社(海外店を除く)であります。
「海外」とは、当社の連結子会社の海外店であります。
2 流動性預金=当座預金+普通預金+貯蓄預金+通知預金
3 定期性預金=定期預金+定期積金
4 「相殺消去額」欄には、「国内」・「海外」間の内部取引の相殺消去額を記載しております。
(注) 「国内」とは、当社及び連結子会社(海外店を除く)であります。
「海外」とは、当社の連結子会社の海外店であります。
該当事項はありません。
(注) 1 「国内」とは、当社及び連結子会社(海外店を除く)であります。
「海外」とは、当社の連結子会社の海外店であります。
2 「その他の証券」には、外国債券及び外国株式を含んでおります。
3 「相殺消去額」欄には、「国内」・「海外」間の内部取引の相殺消去額を記載しております。
連結会社のうち、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づき信託業務を営む会社は、株式会社伊予銀行1社であります。
(注) 共同信託他社管理財産については、前連結会計年度及び当連結会計年度の取扱残高はありません。
自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(2006年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。
なお、当社は、国際統一基準を適用のうえ、2024年3月末からバーゼルⅢ最終化を適用しており、信用リスク・アセットの算出においては基礎的内部格付手法、オペレーショナル・リスク相当額の算出においては標準的計測手法を採用するとともに、マーケット・リスク規制を導入しております。
また、自己資本比率の補完的指標であるレバレッジ比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準(2019年金融庁告示第12号)に定められた算式に基づき、連結ベースで算出しております。
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(1998年法律第132号)第6条に基づき、株式会社伊予銀行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(1948年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
該当事項はありません。
該当事項はありません。