文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループの経営理念(存在意義・パーパス)は、以下の通りであります。
「インターネットイニシアティブ」との社名の通り、100年に一度の技術革新であろうインターネットの世界において、その技術革新をリードし、新たな利用形態を提案する画期的なサービス、プラットフォームの提供を通じて、ネットワーク社会の発展に貢献してまいります。
・技術革新によりネットワークインフラストラクチャ―を発展させてまいります
インターネット技術のイニシアティブを取り続け、より高速化するネットワークとコンピューティングによって新たに創出する価値を通じて、デジタル社会の未来を切り拓いてまいります。
・ネットワーク社会を支える仕組み(ITサービス)を提供してまいります
世の中の変化を捉え、その変化を先取りした高品質・高付加価値なITサービスを提供し続けることで、社会・個人によるネットワーク利用を支えてまいります。
・自己実現する職場の提供(多様な才能・価値観を有する人材が活躍できる場)
技術革新や社会貢献に積極果敢に挑戦する人材が集まり、誇りとやりがいをもって自律的に能力を発揮できる場を提供していきます。社員個々人が現状に満足せず常に先の世界を考えることで社会発展に貢献し、世間からも評価されることで成長を実感できるような会社であることを目指してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、売上高の構成、収益性、財務の健全性等に注視しつつ事業活動の推進を図っております。増収率、売上総利益率、営業利益率、ROE等の指標を参考とし、売上高の増加、売上原価、販売管理費及び設備投資水準の管理、事業及びサービス分野毎の採算管理等による収益性の向上に努めております。
(3) 中期的な会社の経営戦略
①前中期計画の振り返り
2022年3月期から2024年3月期の前3ヵ年中期計画におきまして、当初目標として連結売上高2,700億円規模及び営業利益率9%超、修正目標として連結売上高2,860億円及び営業利益315億円との業績目標を掲げておりました。業績等の推移は以下のとおりであります。
前中期計画期間におきまして、概して進展が遅かった日本企業及び官公庁等のIT利活用が、コロナ禍を契機に急進し、コロナ鎮静後も社内外ネットワークの更改も含めて強い需要が継続しております。これら需要に対して、当社グループの月額提供のネットワークサービスをシステムインテグレーションに組み込む「サービスインテグレーション」との事業モデルを展開し、契約期間総額が数十億円から100億円超の複数年にわたる大型案件を多数獲得いたしました。2021年3月期と比較すると、2024年3月期の売上高は約1.3倍の2,761億円、営業利益は約2.0倍の290億円、営業利益率は3.8ポイント向上の10.5%と推移し、前中期計画で掲げた法人ストック売上高(*)の大幅伸長とスケールメリットによる利益享受との事業の態様を実現いたしました。また、事業拡大に伴い、2024年3月期末時の従業員数は約1.3倍の4,803名となりました。

②新中期計画等
●業績目標
●中長期ビジョン及び新中期計画の位置付け
当社グループの経営理念を有効に全うしていくためには、当社グループの強みを生かしつつ、事業規模を継続拡大していくことが大変重要であると認識をしております。日本企業及び官公庁等のIT利活用は、コロナ禍を契機にようやく急進し、中長期での継続した市場拡大が見込まれます。そのような状況認識のもと、当社グループは、中長期で目指すべき通過点の姿として、以下のとおり、連結売上高5,000億円規模への伸長を含む中長期ビジョンを定めました。新中期計画は、この中長期ビジョンに至る重要な道筋・プロセスとして、実現していくべき3ヵ年の成長プランと位置付けております。
<中長期ビジョン>

●新中期計画(FY2024-FY2026)
新中期計画において、事業の根幹の絵姿は従前から不変であります。多様な人材が集い自律的に能力を発揮してインターネットとの通信インフラストラクチャー・環境を日本に創り上げたとの自負のもと、高いインターネット関連技術を源泉に、付加価値の高いネットワークサービスを開発し、インターネット関連のネットワーク及びシステムを安定的に運用し、システムインテグレーションの機能も併せて、日本企業等のIT需要に応え支えていくことで、役割を発揮し事業拡大を目指してまいります。特に、2024年3月期におけるサービスインテグレーションでの複数年大型ネットワーク構築案件の増加等の事業状況を鑑み、既存のコアビジネス領域の徹底的な強化により、売上伸長の加速とそれによる利益水準の向上を図ります。また、次の成長に向けた新規領域への取り組みにも注力いたします。それらを実現するための事業基盤の強化にも継続して取り組んでまいります。具体的な内容及び目標は、以下のとおりです。

<キャピタルアロケーション>

(4) 対処すべき課題
近年の当社グループの業績は、日本における企業や官公庁等のICT(*)利活用の進展に沿い、増収に併せた利益の向上が進展しております。経済活動におけるICT利活用の流れは今後もますます進展していくと想定しており、経営理念の継続した充足のためにも、信頼性及び付加価値の高いネットワークやシステムとのサービスを、需要に合致する態様で創出し提供していくことが、重要であると考えております。そのためには、優秀な人材の一層の獲得と育成が非常に重要であり、事業の成長に沿いながら、人的資本の一層の拡充を進める必要があります。
(1) ガバナンス及びリスク管理
当社は、経営理念を実践し、また企業価値を継続的に向上させるために、コーポレート・ガバナンスの充実と実践が重要であると考えております。当社はこれらの充足に向けて、「
① 気候変動関連に関する方針
当社グループの「環境への取り組み方針」とその方針に基づく当社の「自社データセンターにおける温室効果ガス削減の取り組み方針」は以下の通りです。
[環境への取り組み方針]
当社グループは、経営理念を継続して実現し、長期かつ持続可能な成長を遂げるために、環境関連法規を遵守し、地球環境に配慮した事業活動を通じて、社会全体の環境負荷低減に取り組むことが重要と認識しております。
当社は、国内初の本格的インターネットサービスプロバイダーとして、日本のインターネットのインフラストラクチャーを創り上げ、インターネット接続サービス等の提供を続けてまいりました。インターネットを基盤とする各種サービスやアプリケーションの利用で、30年程前と比較して社会や経済活動は明らかに効率化されていると認識されます。当社グループは、インターネットやクラウドコンピューティング等のネットワーク社会を支える信頼性の高いサービスを安定的に提供し続けることで、社会活動の更なる効率化と社会全体の環境負荷低減へ貢献をしてまいります。
一方、これらのサービス提供にあたり、電力の利用は不可欠であり、当社グループは、多くの電力が消費されるデータセンターにおいて、エネルギー効率向上や再生可能エネルギーの利用により、温室効果ガスの削減とカーボンニュートラルの実現に取り組むことが重要と認識しております。また、サービス提供に必要となる機器・サービスの外部調達についても、サプライチェーン全体での温室効果ガス低減に配慮した調達活動を推進するように努めます。
[自社データセンターにおける温室効果ガス削減の取り組み方針]
当社は、上記「環境への取り組み方針」に基づき、全電力使用量の約8割を占めるデータセンターにおいて、「再生可能エネルギーの利用」と「エネルギー効率の向上」により、温室効果ガスの削減に取り組むことが重要と認識しており、各々について取り組み目標を設定しています。
(注) 1. PUE(Power Usage Effectiveness):データセンター施設全体のエネルギー使用量÷IT機器のエネルギー使用量
2. 業界最高水準のPUE値:PUE 1.4 以下(2024年3月末時点において、資源エネルギー庁はデータセンター業におけるベンチマーク指標及び目指すべき水準をPUE1.4以下と設定し、達成事業者は省エネ優良事業者とみなされる)
②人的資本に関する方針
当社の「人材育成の方針」及び「社内環境整備に関する方針」は以下の通りです。
[人材育成の方針]
人材育成は業務を通じたOJT(On-the-Job Training)を根幹とし、従業員の年次や役割に応じた階層別研修、専門知識やスキル習得を目的とした部門別研修等にて補完しています。当社グループは、国内最大規模のインターネットバックボーン構築・運用、斬新なサービスの自社開発・運用等の業務機会を提供することが、技術者層のモチベーション向上に繋がるものと考えております。営業職は営業活動を通じたOJTに加え、技術基礎研修、当社サービス理解研修等によるネットワーク・システム等の知識の習得・定着やトップパフォーマーの成功提案事例等を共有する勉強会の開催等を実践しております。当社の新卒従業員はこれら業務における上司からの指導に加え、OJTトレーナー研修を受講した上司以外の従業員と個々の特性・志向を勘案した能力開発目標を設定し、一年を通して早期に自律的な業務遂行ができるためのサポートを受けます。2018年度以降、毎年約100名がOJTトレーナー研修を新たに受講し、トレーナー経験者は年々増加しております。これら人材の増加は全社的なOJTレベルの向上に繋がるものと考えております。当社は、若手従業員の育成が非常に重要と認識しており、OJTが有効に機能しているかを測る指標として、年次の従業員意識調査(注1)における若手従業員の「チャレンジ」、「成長」、「上司サポート」(注2)に関する評価結果を重要視しております。2023年度におけるこれら指標の評価結果は、「チャレンジ」3.9、「成長」4.0、及び、「上司サポート」4.3となりました。当社はこれらの指標の総合が3点台後半以上となるように評価結果の要因分析、改善対応に努めており、今後もそれを継続してまいります。
(注) 1. 従業員意識調査は年1回実施されるエンゲージメント調査(約50設問)であり、各項目は1(そう思わない)、2(どちらかというとそう思わない)、3(どちらともいえない)、4(どちらかというとそう思う)、5(そう思う)の5段階で評価がなされます。
2. OJT評価指標「チャレンジ」、「成長」、「上司サポート」は、以下の要素を包含する設問に係る評価結果となります。
「チャレンジ」:チャレンジ支援、新しい発想・提案の受容、再チャレンジできる風土 等
「成長」:現在の仕事での成長実感、成長支援の仕組み・制度 等
「上司サポート」:上司・先輩からのアドバイス、上司満足度 等
[社内環境整備の方針]
当社グループは従業員が心身ともに健康で安心・安全に働き続けられる環境及びワークライフバランス実現を支援するための環境の整備に積極的に取り組んでおります。
<健康の維持・メンタルヘルスケア>
当社は、健康診断又は人間ドック(年1回)並びにインフルエンザ予防接種の無料実施や産業医・保健師に定期的に健康相談ができる環境を整備しております。また、労働安全衛生法に基づくストレスチェックを年1回実施し、高ストレスにより面接指導が必要と考えられる従業員は、希望に応じ産業医との面談を実施しております。ストレスチェックの結果は、部長職以上の役職者に共有することで、職場環境の改善を役職者が主導して行う仕組みとしています。また、メンタルヘルス対策の一環として、ハラスメント研修やコミュニケーション研修(アンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション研修等)を実施しております。
<過重労働の防止・有給休暇の取得推進>
当社は、労働時間管理方針を策定し、労働基準法の遵守及び労働時間適正化に向けた取り組みを推進しております。残業の事前申請や各部門の残業状況レポート作成等により従業員の就業時間を随時把握しており、残業時間が一定水準を超過する場合には、各部門への注意喚起やヒアリング、超過者への産業医面談等を実施しております。また、年次有給休暇に加えて、アニバーサリー休暇等の特別休暇を従業員に付与しており、特別休暇を含まない年次休暇5日以上の取得を徹底しております。
<多様な働き方・ワークライフバランス等の推進>
当社では、コロナ禍以前より、場所に依存しない働き方を大きなコンセプトとして、リモートワーク(育児・介護対象者から導入)、サテライトオフィス(移動時間の有効活用による顧客対応の高速化)、フリーアドレス(コミュニケーションの活性化)等を導入しております。当社では各従業員のライフステージや価値観などを尊重しつつ、仕事と家庭生活の両立を支援するための環境整備に積極的に取り組んでおります。社内環境整備として、育児・介護休業制度、私傷病復職休暇制度等により、病気、育児、介護等においても仕事との両立が図れる諸制度を運営しております。当社は、2024年に次世代育成支援対策推進法に基づく「子育てサポート企業」としての厚生労働大臣認定(くるみん認定)を受けており、男性及び女性の育児休業制度利用率を各々10%以上及び90%以上の維持を目標としております。2023年度におけるこれら指標の実績値は、男性53.5%及び女性100%となりました。また、従業員の業務特性や個別環境に合わせて、フレックスタイム制度、ずらし勤務制度、短時間勤務制度等を運営しております。その他の施策として、IIJグループ持株会、財形貯蓄、マネーセミナーの定期開催等の資産形成支援、従業員が家族に対し職場理解を得る機会創出のためファミリーデー開催等の取り組みを推進しております。
[中核人材の登用等における多様性の確保]
2023年度の採用者における女性比率は20.6%と近年安定して2割超で推移しており、女性管理職数は徐々に増加しております。2024年3月現在の当社の管理職における女性比率は6.5%でありました。家庭生活や育児を両立させる制度や職場環境を継続的に充実させていくことにより、今後も時間経過とともに女性管理職比率は上昇していくと想定しております。当社は、女性管理職比率の目標を2026年度に8%以上としており、従前の目標達成年度を1年前倒しております。
当社グループは、上記「(2)戦略」に記載の通り、気候変動及び人的資本関連について以下の指標を用いており、当該指標に関する目標及び実績は以下の通りです。
① 気候変動
[自社データセンターにおける温室効果ガス削減の取り組み方針]
② 人的資本
[人材育成の方針]
[社内環境整備の方針]
[中核人材の登用等における多様性の確保]
※当社グループにおける重要性を鑑み、当社の指標及び目標を記載しております。
以下において、当社グループの事業の状況等に関する事項のうち、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項及びその他投資家の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を記載しております。なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、別段の記載のない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
1.当社グループの事業展開について
(1) 事業展開について
当社グループの売上高の大半は国内の顧客からのものであり、2024年3月期の売上高に占める国内売上高は87%であります。国内景気の低迷、経済情勢の変化等により、企業のネットワークサービスの需要、システム投資及び支出意欲の動向、個別案件の進捗状況や採算等が影響を受ける可能性があり、特に、システムインテグレーションは国内景気及び設備投資の状況に強く影響を受ける傾向があります。景気動向、投資意欲の減退等の様々な要因により、顧客の需要が当社グループの想定通りに伸張しない或いは減退する場合、また、変化の速い市場へ適切に対応できない等で品質面の差別化が困難となり価格低下や契約解除が進む場合は、当社グループの想定通りに売上及び利益を拡大或いは維持することが困難となり、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響が及ぶ可能性があり、そのような場合は見通し通りの配当を実施しない可能性があります。
当社グループは、インターネットに関わる技術力と法人顧客基盤を基に、主として法人及び官公庁等の事業用にネットワークを利用する顧客に対し、信頼性及び付加価値の高い法人向けネットワークサービス及びシステムインテグレーションを複合的に提供することを基本方針としております。当社グループが、技術優位性を維持できず、競合他社に対し差別化要素があるネットワークサービスの開発及び提供やシステムインテグレーションの提供を継続して行えない場合は、当社グループの想定通りに事業を展開することが困難となる可能性があります。
法人向けネットワークサービスの原価は、回線費用、減価償却費、保守費、人件費、外注費、地代家賃等の売上増減とは直接的に連動しないものが多く、新たなサービスの開発や設備投資、人員の増加や報酬及び物価水準の上昇等により順次増加する傾向にあります。法人向けネットワークサービスにおける継続的取引について、特に大口顧客によるサービス提供契約の全部又は一部の解約や大幅な価格の見直しが生じる場合等で、売上が想定通りに伸長しない或いは減少する場合は、現状の或いは増加する費用を賄うことが困難となり利益が低減する可能性があります。
主としてシステム運用保守売上に区分されるクラウドコンピューティングサービスの原価は、減価償却費、保守費、ライセンス費用、人件費、外注費、地代家賃等の売上増加に先行して生じるものが多く、設備の継続追加や新たなサービスの開発、人員の増加や報酬及び評価水準の上昇等により継続増加する傾向にあります。企業のクラウドコンピューティングサービスの利用の低調や普及の遅れ等を含み、クラウドコンピューティングサービスの売上が想定通りに伸長しない場合、既存顧客の全部又は一部の解約や大幅な価格の見直しが生じる場合等は、現状の或いは増加する費用を賄うことが困難となり利益が低減する可能性があります。
個人向けネットワークサービスでは、法人向けネットワークサービスに比べ相対的に市場変化が速く、売上及び利益の変動が大きくなる可能性があります。当社グループの個人からの認知度は高くなく、個人向けモバイルサービスでは、直接販売に加えて、代理店による販売やMVNEとの他社へのサービス提供による間接販売を推進しております。個人向けモバイルサービスについて、競合により顧客獲得が想定通りに伸張しない或いは販売価格が下落する場合、モバイル通信キャリアによるデータ通信の接続料(*)単価または音声通話の仕入価格がさほど低下せず想定より乖離する場合、代理店及びMVNE提供先とその販売規模が増加しない或いは減少する場合、マーケティング費用が想定より増加する或いは効果的なマーケティングができず顧客獲得が進展しない場合、安定したサービス提供ができず当社の信頼性が失墜する場合、サービス品質維持等のため接続料、通信料及び減価償却費等が想定以上にかかる場合等は、当社グループの想定通りに売上及び利益を拡大或いは維持することが困難となる可能性があります。個人向けモバイルサービスの販売価格につきましては、競合状況や市況或いは接続料及び音声仕入れ価格の低減等を総合的に勘案し、2021年4月に従来のものより低価格に改定したギガプラン(*)の提供を開始しております。
当社グループの販売管理費は、事業の展開に応じて、人件関連費用、地代家賃、販売手数料、支払手数料、広告宣伝費等が毎年増加しており、これらの費用が、想定以上に増加する可能性があります。また、ネットワークサービス、システムインテグレーション、ATM運営事業の粗利が増加しない或いは減少する場合は、増加する販売管理費を賄うことが困難となり利益が低減する可能性があります。
(2) 事業投資等について
当社グループは、中長期を見据えた継続的な成長のために、新たなサービス及び事業の開発等の事業投資を積極的に行っており、人材獲得や機器等の取得、ソフトウェア開発及びデータセンターの建設を含む設備投資を強化しております。2023年3月期末及び2024年3月期末における従業員数は各々4,451名及び4,803名であり、2023年3月期及び2024年3月期における従業員数の増加は各々304名及び352名でありました。2023年3月期及び2024年3月期におけるファイナンス・リースによる資産の取得を含む設備投資額は各々208億円及び225億円であり、設備投資償却額(設備投資に関連する減価償却費及び償却費)は各々153億円及び156億円でありました。
当社グループは、2009年12月よりクラウドコンピューティングサービスの提供を開始し、顧客需要及び機能の継続強化等に対応するため、データセンター、サーバ、記憶装置、通信機器及びソフトウェアの購入並びに開発等に継続的に投資を行っており、減価償却費等の費用が生じております。2023年3月期及び2024年3月期におけるクラウドコンピューティングサービス関連売上高は各々324億円及び334億円であり、各期における国内のクラウドコンピューティングサービスに係る設備投資額は各々20億円及び15億円でありました。
当社グループが取得するサーバ、記憶装置、通信機器、ソフトウェアやライセンス及びそれらの保守費用等は、米ドル建て取引或いは日本円建て取引ではあってもその原価は米ドルのものが多く含まれ、円安基調との為替相場が継続する場合には、設備投資額、設備投資償却額及び保守費用が、当社グループの想定する以上に増加する可能性があります。
当社は、今後の事業拡大に伴い必要となる設備を収容するため及び東日本地区に分散するサービス設備の一定規模を集約するために、千葉県白井市に、需要に応じ拡張が可能なシステムモジュール型の自社データセンターを建設し、2019年5月より第1期棟、2023年7月より第2期棟の稼動を開始致しました。2023年3月期及び2024年3月期における白井データセンター設備に係る設備投資額は各々54億円及び55億円でした。2025年3月期は島根県松江市で稼働中の松江データセンター向けシステムモジュール追加建設及び白井データセンター第2期棟増強を含み総額で230億円規模の設備投資を予定しております。白井データセンターは第3期棟の建設も想定しており、今後も拡張に応じた設備投資が生じる見込みです。近年、建設に係る機材や人件費等は高騰し人材供給は不足しており、データセンターの設備投資が増加する或いは想定する時期に建設できない可能性があります。
当社は、2008年1月より主としてNTTドコモから卸電気通信役務の提供を受け、MVNO形態にて法人及び個人向けにモバイルサービスを提供しております。2023年3月期及び2024年3月期におけるモバイルサービス関連売上高は各々423億円及び461億円であり、2023年3月期末及び2024年3月期末における契約回線数は各々414万回線及び481万回線でありました。モバイルサービス関連売上及び契約回線数等の規模増加に伴い、NTTドコモ及びKDDIから賃借するモバイルデータ通信回線の帯域を増加する必要があります。
当社グループは、主として海外に進出する国内企業のネットワーク及びシステム利用ニーズに対応するため、クラウドコンピューティングサービスを含むネットワークサービス及びシステムインテグレーション提供との国際事業を行っております。本書提出日現在、当社は、海外連結子会社12社及び海外持分法適用関連会社2社を有しており、米国や欧州に加え、IT関連市場の成長が見込まれるアジア地域(シンガポール、タイ、中国、香港、インドネシア、ベトナム及びマレーシア)にて事業を行っております。2023年3月期及び2024年3月期における国際事業の売上高は各々256億円及び353億円で、社内管理上の営業利益は各々20億円及び27億円でありました。当社及びIIJグローバルは、2024年3月期末迄に海外連結子会社及び持分法適用関連会社に総額46億円の資本供与を行い、2024年3月期末において海外連結子会社5社に総額2億円を貸し付けております。当社グループは、他地域でも海外子会社の設立及び現地事業者との合弁等による拠点追加を行う可能性があります。当社は、2021年4月に、ASEANビジネスの中核とすべくシンガポール事業の強化として現地システムインテグレーターであるPTC SYSTEMS (S) PTE LTDを44百万シンガポールドル(3,632百万円)で買収し、2023年12月に、マレーシアでシステムインテグレーション事業を営むPTC SYSTEMS SDN.BHD.を買収し、各々を完全子会社と致しました。国際事業は、国内事業よりも相対的に、制度、経済、宗教、文化、地政学及び外交等に係る不確実性を伴うものと想定しています。また、十分に対応しているとの認識ではありますが、不十分な統制により米国のFCPA(連邦海外腐敗行為防止法)等に違反する或いは現地法制等へ適切に対応できない場合は、事業に影響を及ぼす可能性があります。
後記の「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク 1.当社グループの事業展開について (6) グループ経営について」に記載の通り、当社の連結子会社㈱トラストネットワークスは、銀行ATM及びそのネットワークシステムを構築、運営のうえATM利用に係る手数料収入を得るATM運営事業を推進しており、ATM機器の設置にあたりATM機器を取得及び保有しております。
(3) 通信回線、ネットワーク機器、施設設備等の外部への依存について
当社グループは、インターネット接続サービス等のネットワークサービスの提供に必要となるバックボーン回線網を構成する中長距離の通信回線及びアクセス回線並びにWANサービスの提供に必要となる通信回線等を通信キャリア等から調達しております。バックボーン回線及びWANサービス提供に必要となる通信回線については、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ㈱(以下、「NTTコミュニケーションズ」といいます。)及びKDDI等より、アクセス回線については東日本電信電話㈱(以下、「NTT東日本」といいます。)、西日本電信電話㈱(以下、「NTT西日本」といいます。)及び地域電力系通信キャリア等より調達しており、またMVNO形態にて提供するモバイルデータ通信サービスにおいては通信接続料を対価にNTTドコモ及びKDDIのモバイルインフラストラクチャーを利用しており、これらの通信回線の安定的な提供を通信キャリア等に依存しております。
当社グループは、ネットワークに使用するルータ等の機器及びサービス提供や事業運営に利用するソフトウェアのいくつかの製品を主として米国の特定購入先から調達しており、購入先である第三者に依存しています。第三者から調達している機器及びソフトウェア等について、現状は重要な懸念があるわけではありませんが、セキュリティに関連する疑義が提示される等にて実質的に利用が困難となり代替の調達が必要となる可能性があります。第三者から調達している機器及びソフトウェアについて、物価水準の上昇や為替変動及びその他の要因により調達価格の上昇が生じ、調達先とその負担の調整が取れない或いは顧客への転嫁の対応が取れない若しくは遅れる、或いは機器及びソフトウェアの供給が不安定となり或いは不足し、機器及びソフトウェアの調達に追加的費用が生じる可能性があります
当社グループは、データセンター等の施設設備、事務所設備の多くを第三者より賃借しております。エネルギー資源等の供給面での制約等により、電力料金の高騰が生じ、データセンター設備調達先とのその負担の調整或いは顧客への転嫁等の対応が取れない若しくは遅れ、電力供給が不安定となり或いは不足し、電力調達に追加的費用が生じる可能性があります。
これまでにそのような事象は発生しておりませんが、当社グループの通信回線、機器及びソフトウェア、施設設備等の外部第三者への依存について、半導体供給の逼迫による要因を含み、当該第三者からの役務が提供されない場合若しくは提供される役務に大きな混乱がある場合等で、代替手段の調達ができない或いは当該第三者が良質の製品を適切な期間内に納入できない場合は、当社グループの提供する役務が長時間にわたり中断する或いは遂行できない等の事象が発生し、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
(4) 当社グループが提供するサービスの信頼性について
①サービス品質の維持及び適正な運用について
当社グループは、提供サービスの品質維持及び改善のために、想定を超えてサーバ、通信機器及びソフトウェア等への投資の増加或いは賃借する通信回線及びインフラストラクチャーの増強が必要となる可能性があります。当社グループはこれまで、このような設備等の管理を適切に行っているものと認識しておりますが、設備等の管理を適切に実行できずにサービスの品質が低下し、当社グループのサービスの差別化が適切に行えない或いは当社グループの想定を超える設備投資が必要となる若しくは過度に設備投資等を行う場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響が及ぶ可能性があります。
②サービスの中断の可能性について
当社グループのネットワーク及びシステムは、火災、地震及びその他の自然災害、電力不足、停電、通信障害、並びにテロ等の当社グループがコントロールし難い事由により、停止或いは遅延等の影響を受ける可能性があります。当社グループは、重大なセキュリティ事故を回避できるよう適切な策を講じていると認識しておりますが、コンピュータクラッキング(*)、コンピュータウイルス、人的過失及びインターネット利用者等の偶発的又は故意による行為等に起因するサービスの中断が、当社グループのサービスの提供を妨げる可能性があります。当社グループのネットワーク及びシステムは、通信回線の二重化等の耐障害性を重視した設計としており、これまでにそのような事象は発生しておりませんが、サービスの提供が中断し当社グループの信用失墜又は事業機会の逸失が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響が及ぶ可能性があります。
③個人情報等顧客情報の取り扱いについて
当社グループは、モバイルサービスに係る個人情報を含む国内外の顧客情報を保有及び管理しております。当社グループはこれらの情報資産の適切な管理に注意を払っており、また、個人情報の保護に関する法律やこれに関連する総務省及び経済産業省制定のガイドラインの要求事項遵守等に努めておりますが、外部からの不正アクセス、システム運用における人的過失、顧客情報の漏洩、消失、改竄又は不正利用等が発生し、当社グループがそのような事態に適切に対応できず信用失墜又は損害賠償による損失が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。また、欧州連合(EU)におけるGDPR(一般データ保護規則 General Data Protection Regulation)など、諸外国で個人情報保護法制が強化されています。GDPRに関して当社の連結子会社IIJ Europe Limitedは、当社グループ内で統一された情報管理ルールを文書化したBCR(拘束的企業準則 Binding Corporate Rules)を英国の監督機関に申請し、承認を取得しております。これまでにそのような事象は発生しておりませんが、意図せず各国の規則に違反し高額な制裁金が課された場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
(5) 人的資源の確保について
当社の代表取締役をはじめとする当社グループ各社の経営陣の事業運営に関する能力は、当社グループの事業推進にとって重要であります。また、当社グループの提供するサービスの安定的な提供は、当社グループの技術部門及びその他のスタッフによる継続した役務に依存しております。当社グループの事業規模拡大に伴い、グループ従業員数は増加し人件関連費用は増加しており、継続して技術、営業及び企画管理面の人的資源を適切な時期に適切に確保していく必要があります。また、昨今の経済環境に沿い、賃金水準を適切適時に上方に見直していく必要があります。当社グループが、必要とする能力のある経営陣及び従業員を確保又は維持できない、必要以上の人員採用等で人件関連費用を適切にコントロールできない、労働市場環境及び法令改定等で想定よりも人件関連費用が増加する場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
(6) グループ経営について
当社は、連結子会社及び持分法適用関連会社各社と協働し相乗効果を発揮した経営を目指しており、密接な事業連携のため、当社グループ各社の役員には当社役員及び従業員が一部兼務をしており、当社から従業員の出向も行っております。本書提出日現在、当社は関係会社として連結子会社17社、持分法適用関連会社6社を有しており、各社の損益状況は、連結子会社は当社グループの連結財務諸表に結合され、持分法適用関連会社は持分法損益として当社グループの連結財務諸表に取り込まれております。各社の事業状況により、当社の保有する関係会社株式の価値は変動する可能性があります。関係会社の損益状況が芳しくなく損失が大きい場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
当社は、持分法適用関連会社であった㈱クロスウェイブ コミュニケーションズ(以下、「クロスウェイブ」といいます。)へ投融資を行いましたが、2003年8月のクロスウェイブの会社更生手続き開始の申立により投融資全額が損失となりました。当社グループは、2003年3月期及び2004年3月期にて、クロスウェイブに関する持分法損失、投資及び預託金(拘束預金)並びに貸付金に対する評価損失及び貸倒損失として、各々12,667百万円及び1,720百万円を計上致しました。
当社は、2010年9月に、主としてWANサービス等を提供するIIJグローバルを、AT&TジャパンLLCより9,170百万円にて取得し、当社の完全子会社と致しました。2023年3月期及び2024年3月期の連結業績におけるIIJグローバルに係る売上高は各々289億円及び311億円であり、営業利益は各々19億円及び13億円でありました。2024年3月期末におけるIIJグローバルに係るのれん及び償却対象の無形資産の残高は合計で25億円であり、同社が、想定通りに売上或いは利益を達成できず将来に亘り当該のれん及び無形資産に見合う価値がないと判断する場合は、これらについて減損損失を計上する可能性があります。
2007年7月に設立した連結子会社㈱トラストネットワークスは、銀行ATM及びそのネットワークシステムを構築、運営のうえATM利用に係る手数料収入を得るATM運営事業を推進しております。当社は、本書提出日現在において、同社に対し累計26億円を出資(出資比率:79.5%)しております。2023年3月期及び2024年3月期におけるATM運営事業セグメントの売上高は各々28億円及び29億円であり、営業利益は各々9億円及び10億円でありました。ATM運営事業において、ATM台数や利用者数が減少する、消費意欲減退や店舗休業等によりATM利用回数が減少する、関係各所との良好な関係を維持できない等の場合は、同社事業の継続が困難となる可能性があります。
当社は、2016年12月に、CDN(*)サービスを提供するJOCDN㈱を合弁会社として新規設立致しました。JOCDN㈱は、2020年3月期に第三者割当増資により日本放送協会及び㈱WOWOWを新たな株主としました。当社は、本書提出日現在において、同社に対し累計1億円を出資(出資比率:16.8%)しております。
当社は、2018年1月に、デジタル通貨の取引と決済を行う㈱ディーカレットを合弁会社として新規設立致しました。㈱ディーカレットは、2019年4月より暗号資産の取引サービスを提供しておりましたが、2022年2月に暗号資産事業会社を売却し、当社の現持分法適用関連会社㈱ディーカレットホールディングス及びその子会社㈱ディーカレットDCPはデジタル通貨事業に専念することとしました。当社は、㈱ディーカレットに対して累計71億円を出資(出資比率:38.2%)しており、2024年3月末現在の持分法損失累計額は59億円でありました。また、当社は2023年3月に㈱ディーカレットDCPが発行した普通社債20億円(償還期限10年・無担保)を引き受けております。㈱ディーカレットホールディングスのデジタル通貨事業は立ち上げ途上の段階であり、同社の事業が想定通りに伸長しない場合は、㈱ディーカレットホールディングスの企業価値の棄損、当社の想定以上の持分法投資損失或いは減損の計上、追加の資金拠出が必要となる等の可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
当社は、2021年4月に、ASEANビジネスの中核とすべくシンガポール事業の強化として現地システムインテグレーターであるPTC SYSTEMS (S) PTE LTDを44百万シンガポールドル(3,632百万円)で買収し完全子会社と致しました。2024年3月期の連結業績におけるPTC SYSTEMS (S) PTE LTDに係る売上高は128億円であり、営業利益は3億円でありました。2024年3月期末におけるPTC SYSTEMS (S) PTE LTDに係るのれん及び償却対象の無形資産の残高は合計で44億円であり、同社が、想定通りに売上或いは利益を達成できず将来に亘り当該のれん及び無形資産に見合う価値がないと判断する場合は、これらについて減損損失を計上する可能性があります。
当社は、当社グループ各社との協働効果を継続し或いは更に発揮するために、各社に対する出資比率の引き上げ、金融支援の提供、保証の供与、グループ編成の変更を行う可能性があります。当社は新規事業の立ち上げにあたり、関係会社の新設或いは資本参加をする可能性があります。当社グループは、事業規模、顧客基盤及びサービス提供領域の拡大等のためM&A等の資本取引を行う可能性があります。当社グループの資本戦略の遂行にあたり、間接或いは直接金融による資金調達が必要となる可能性があります。また、子会社及び関連会社に関連する特定の法令等により当社グループ各社の事業が制約をうける場合には、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
当社が支配的持分を有していない持分法適用関連会社について、当社及び連結子会社と当該関連会社との戦略に乖離が生じる場合は、当社の利害はこれら関連会社又はこれら関連会社の当社以外の株主の利害から乖離し、グループとして連携した事業運営ができず相乗効果を発揮できない可能性があります。
(7) 技術革新について
インターネットを含む通信サービス業界においては、技術、業界標準、顧客ニーズ及び競合環境の変化が速く、頻繁に新商品及び新サービス等の導入がなされております。新技術を使用したサービスの導入又は新たな業界標準の確立等により、当社グループの提供する既存のサービスの市場性が低下する可能性があります。当社グループは、技術優位性を維持していくために技術研究開発に注力しておりますが、重要な新技術の利用権の取得、変化する技術及び業界標準の導入或いは顧客ニーズに合った新サービスの開発、導入及び品質確保等ができない或いは研究開発に当社グループが想定する以上の時間と費用が必要となる場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響が及ぶ可能性があります。
2.外部環境について
(1) 価格競争について
ネットワークサービスにおける価格競争は厳しく、また、システムインテグレーションにおける競合も激しく、競合他社はサービスの開発及びマーケティングを強化しております。低価格競争が進展する場合は、ネットワークサービス及びシステムインテグレーションの売上が想定通りに増加しない或いは利益水準が悪化する若しくは販売促進のために多額の費用を投じる必要が生じる可能性は常にあり、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
(2) ネットワーク関連コスト等について
バックボーン等の通信回線費用、通信機器に係わる費用、ネットワークオペレーションセンター等のネットワーク運営費用、ネットワーク運営に係わる人件関連費用等のネットワーク関連コストは固定的な費用が主ですが、これらの変動が当社グループの損益状況及びその変動に影響を及ぼす可能性があります。インターネットトラフィックの急激な増加等が生じた場合、バックボーン回線の調達単価の上昇により回線調達費用が増加する場合、当社グループが想定するよりも大容量の通信回線が必要となった場合、必要とする通信回線が調達できない、或いは過度に通信回線を契約した場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。当社グループは、国際回線及び通信機器等の一部費用を外貨建てで支払っており、円建てで支払っているものについてもその価格は外貨建てで算定されるものもあり、為替相場の変動により調達費用が増加する可能性があります。
当社グループは、モバイルデータ通信接続サービスの提供にあたり、NTTドコモ及びKDDI等のモバイル通信キャリアより卸電気通信役務の提供を受け、当該役務に対して「電気通信事業法」及び総務省が策定する「第二種指定電気通信設備接続料規則」に基づき算定された帯域当たり単価と契約帯域を掛け合わせた通信接続料を支払っております。通信接続料の単価は、モバイル通信キャリアより将来原価方式として3ヵ年の予測値が毎年提示されており、低減をしております。2024年3月期に利用した接続料単価は、将来原価方式としてモバイル通信キャリアより提示を受けた予測値にて2024年3月期において費用処理を行い、2024年12月頃に確定単価が通知された時点で予測値と確定値の差分を補正する予定です。2023年3月期に利用した将来原価方式に基づき費用処理していた接続料単価と2023年12月に確定した接続料単価の2024年3月期における差分の費用影響は軽微でありました。当社グループは、モバイルサービスの提供にあたり、契約回線数及び通信トラフィックの増加に伴い、モバイル通信キャリアとの契約帯域を増加する必要があり、通信接続料は継続増加する傾向にあります。通信接続料の帯域当たり単価又は音声の仕入れ価格が上昇或いは想定より低下しない或いは通信トラフィックの増加等により想定よりも多くの契約帯域が必要となる場合は、当社グループの損益状況に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 外注について
当社グループは、外注人員を活用しており、労働人口不足を背景として外注単価が上昇する、適切な外注工程管理ができない、外注費用に見合う売上を計上できない或いは必要となる外注人員を確保できない場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
(4) 競合について
当社グループの法人向けネットワークサービスの主な競争相手は、NTTコミュニケーションズ及びKDDI等を含む通信キャリア及びそれらの関係会社等であり、また、システムインテグレーションにおける主な競争相手は、日本電気㈱、富士通㈱、㈱エヌ・ティ・ティ・データ及びそれらの関係会社等を含むシステムインテグレーター(*)等であり、これら競合他社の中には、当社グループに比べ大きな資本力、技術力、販売力等の経営資源、幅広い顧客基盤及び高い知名度等を有している企業があり、また、M&A遂行等にて競争力をより強化する可能性があります。これら競合他社の中には、当社グループよりも低価格でサービスを提供するものや当社グループでは提供していないサービスを提供するもの等があります。競合先の営業方針及び価格設定は、当社グループの属する市場に影響を与える可能性があり、これらの競合先に対し効果的に差別化を図れず当社グループが想定している通りの事業進展が図れない場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループのクラウドコンピューティングサービスにおける競争相手は、上記の競合先の他にAmazon Web Services, Inc.やMICROSOFT CORPORATIONを含む外資系等があり、それらの競合先は多大な経営資源をクラウドコンピューティング及びアウトソース関連事業に投入する可能性があります。クラウドコンピューティングサービスについて、当社グループが競合他社との差別化を有効に図ることができない、想定する売上や利益を確保できない或いはクラウドコンピューティングサービスへの投資が効果的なものとならなかった場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループのMVNEを含む個人向けモバイルサービスの主な競争相手は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク㈱を含むモバイル通信キャリア及びそれらの関係会社並びにMVNO事業者であり、競合他社の多くは、当社グループに比べ高い知名度或いは大きな資本力等を有しており、積極的な広告宣伝活動、低価格でのサービス提供及びその他のサービスとの組み合わせ販売による顧客囲い込み等を行っております。今後も競合他社の新規参入や競争による低価格化等を含め競合が強まる可能性もあり、当社グループがこれらの競合先に対し効果的に差別化を図れず想定通りの事業進展が図れない場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
(5) 気候変動について
2016年に発効された「パリ協定」を受け、温室効果ガス排出量の削減を目的とした取り組みが世界的に加速しています。当社グループは、気候変動リスクへの対応及び低炭素社会への移行の取り組みが重要であると認識しております。気候変動に係るリスクとしては、自然災害や異常気象等の増加に起因する物理的な被害の可能性及び低炭素社会への移行に伴い、政策、法規制、経済、市場或いは生活等に変化が生じることに起因する影響の可能性が想定されます。具体的には、主として、自然災害により事業用設備が損壊する、或いはサプライチェーンが機能せず事業用設備や役務等の調達が困難になるリスク、事業拡大と共に増加するサーバやネットワーク機器及びデータセンター並びに事務所等の消費電力について、排出権や再生可能エネルギーを含め、調達コストが増加する、或いは調達できないリスク、脱炭素の取り組みが十分に実現できない場合のレピュテーションリスク等が想定されます。
当社グループがこれらのリスクに適切に対応できない場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 不可抗力について
自然災害、停電、テロ、武力行為、地域紛争、感染症を始めとする不可抗力が発生する場合は、安定したサービス役務の提供が困難となる、当社グループの想定を超えた費用及び投資が必要となる、当社グループが想定する通りに事業展開することが出来なくなる等の可能性があり、その場合には、当社グループの経営成績及び財政状況に重大な影響が及ぶ可能性があります。
3.業績等について
(1) 業績の変動について
当社グループの年間、半期及び四半期における売上及び営業損益の規模並びに計上時期は、国内景気の動向、企業のシステム投資及び支出の動向、ネットワークサービスにおける継続的な売上の積み上げ、システムインテグレーションにおける案件数及び規模と利益率、クラウドコンピューティング及びモバイルサービスの収支、ネットワーク関連コストの推移、モバイルサービスにおける通信接続料単価の低減率の想定及び実績の状況、減価償却費と保守費の推移、人件費の推移、ライセンス費用の推移、有形固定資産、のれん及び無形資産の減損損失等の有無と規模、販売管理費の推移状況、為替相場の変動、M&Aを含む資本取引の影響等により変動し、税引前利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益の規模並びに計上時期は、営業利益の変動に加え、金融収益及び費用の規模、持分法適用関連会社に関する持分法投資損益の変動、税効果を含む法人所得税費用の認識額、非支配持分損益等により変動し、当社グループの年間、半期及び四半期の業績は当社グループの今後の業績予想の目安とはならない可能性があります。
当社グループの業績結果は、事業等のリスクに記載する事象或いはその他の事象等により、開示する業績見通しから乖離する可能性があります。当社グループは、2014年3月期、2015年3月期、2017年3月期、2020年3月期、2021年3月期及び2022年3月期において連結業績予想修正との適時開示を行っております。新たなサービス及び事業に係わる投資及び費用の増加に対する当該売上の規模及び計上時期は、概して変動しやすい傾向があります。
(2) システムインテグレーションについて
システムインテグレーションの売上は、一時売上であるシステム構築(機器売上を含む)と継続売上であるシステム運用保守により構成されております。一般に、システム構築の取引は、多数の国内企業の決算月である3月末に偏重する傾向があります。当社グループの四半期毎の売上及び損益の変動は、システムインテグレーションにおいて大きく、売上及び利益の金額は第4四半期に増加する傾向があります。当社グループがシステムインテグレーションにより売上及び利益を計上する能力並びにかかる売上及び利益を実現する時期、特に大口案件における売上実現の時期及び利益の変動は、当社グループの売上、損益状況及びその変動に影響を及ぼす可能性があります。
システムインテグレーションにおいては、運用保守案件では継続的な売上計上が期待されますが、新規構築案件の案件数の状況や運用保守契約内容の見直し等により、売上及び損益が変動する可能性があります。クラウドコンピューティングサービス関連の案件が増加した場合、構築におけるハードウェアの売上部分が減少し、売上規模が変動する可能性があります。近年、案件の大型化及び複雑化の傾向が見られ、特に大規模な構築案件では、一般的に検収までの期間が長くなることがありより多くの人員稼働が必要であり、より緻密なプロジェクトの進捗管理が求められ、また、案件獲得のため、顧客に価格競争力のある提案をすることで収益性が低下する等の競合による利益率低下の可能性があります。システムの不具合、仕様の変更、想定外の人員稼動等の要因により当社グループが適切にプロジェクトの進捗管理を行うことができない場合は、適正な利益水準を確保できず、また案件単位にて赤字となる可能性があります。システムインテグレーションにおいては自社及び外注人員を多く活用しておりますが、人件費及びその単価は上昇しており、適切な工数管理ができず、若しくは人件費に見合う規模の売上を計上できない場合等には、適正な利益水準を確保できず、また案件単位にて赤字となる可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。当社グループが、システムインテグレーションの案件の完遂に必要な技術者、外注先を含むソフトウェア開発要員を適切に確保できない場合は、売上計上が遅延し、或いは契約が解消される可能性があります。また、顧客のデータを適切に取り扱うことができなかった場合は、訴訟の提起等の可能性があります。
(3) 有形固定資産、のれん及び無形資産の減損損失の計上について
当社グループは、主としてネットワークサービス及びシステムインテグレーション事業に係る、通信機器、サーバ機器、データセンター等の構築物、事業用ソフトウェア等の資産、また、バックオフィスシステム、事務所附帯設備等の資産を保有しております。事業の状況に重要な変化が生じている場合は、減損テストの実施により、これら有形固定資産或いは無形資産が毀損していると判断され減損損失を計上する可能性があります。
当社グループは、M&A等の資本取引を行った場合に、連結財政状態計算書にのれん及び顧客関係等の無形資産を計上する場合があります。2024年3月期末現在の当社グループの連結財政状態計算書におけるのれんの残高は103億円であり、減損判定の単位となる資金生成単位別の主な残高は、主として国内のネットワークサービス・SIに係るものが58億円、海外子会社PTCに係るものが42億円でありました。また、償却対象の無形資産である顧客関係の残高は11億円でありました。そのうち、2010年4月に吸収合併した㈱アイアイジェイテクノロジー及びIIJグローバルに係る残高は各々4億円及び3億円でありました。これらののれん及び顧客関係はこれまでに減損をしたことはありませんが、事業の状況に重要な変化が生じている場合は、減損テストの実施により、のれん及び無形資産が毀損していると判断され減損損失を計上する可能性があります。
(4) M&Aについて
当社グループは、今後も事業規模拡大のために、人材、顧客基盤、アプリケーション関連技術、海外事業基盤等の経営資源の拡充及び当社グループとのシナジー効果の発揮等を目的として、M&A取引を実行する可能性があります。これまでにそのような事象は発生しておりませんが、M&A取引実行にあたって過大な経営資源を投入した場合、取引条件が良好ではない場合、想定する業績やシナジー効果が達成されない場合、適切なM&A取引を実行できず事業拡大のための経営資源を十分に確保できない可能性があります。当社は、2021年4月に、ASEANビジネスの中核とすべくシンガポール事業の強化として現地システムインテグレーターであるPTC SYSTEMS (S) PTE LTDを、2023年12月には、マレーシアでシステムインテグレーション事業を営むPTC SYSTEMS SDN.BHD.を買収し、各々を完全子会社としております。
(5) 保有投資有価証券の価値の変動について
当社グループは、当社の関係会社以外にも、事業関係の強化を目的とした事業会社に対する出資、主として非上場企業へ投資を行う投資事業有限責任組合(ファンド)等へ投資をしております。2024年3月期末現在の当社グループの連結財政状態計算書における投資有価証券(株式)は保有上場株式の時価評価等で残高は146億円でした。その他の投資の主な内訳は、ファンド出資金76億円及び㈱ディーカレットDCP社債20億円(償還期限10年・無担保)でありました。当社グループは、今後も新たに投資有価証券を取得する可能性があります。当社グループが保有する投資有価証券の価値は、各々の時価、経営状況等により変動し、それらの公正価値の変動はその他の包括利益または純損益として認識されます。保有株式については、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品として会計処理され、保有株式の公正価値の変動に伴う含み損益或いは売却に伴う実現損益(税効果後)は連結損益計算書において純損益として認識されません。投資有価証券を処分するにあたり経済的に有利な条件で処分できるかどうかは定かではなく、処分金額の規模及びタイミングの変動により当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
4.法的規制等について
(1) 電気通信事業法について
当社及び当社グループの一部は、電気通信事業者として総務省に届出を行っており、電気通信事業法の規制を受けております。当社らの業務に関し通信の秘密の確保に支障があるとされた場合、その他当社らの業務の方法が適切でないとされた場合は、総務大臣より業務方法の改善命令その他の措置がとられる可能性があります。
また、当社は総務省への届出を行っている電気通信事業者(届出電気通信事業者)であり、総務省への登録を必要とする電気通信事業者(登録電気通信事業者)と比べて行政の監督は相対的に緩やかなものですが、当社においては、提供回線数が増大した結果、電気通信事業法第41条に基づき、利用者の利益に及ぼす影響が大きいことから電気通信設備を適正に管理すべき電気通信事業者として総務大臣に指定され、電気通信設備を所定の技術基準に適合するように維持すること等が義務付けられております。当社は、一般的な届出電気通信事業者と比べ、より強い監督を規制当局から受ける立場にあり、当社の業務遂行が適切でない場合は、前記の業務方法の改善命令等の措置がとられる可能性があります。
このほか、電気通信事業法においては、利用者保護を目的として、電気通信事業者及び取次代理店(媒介等業務受託者)を対象とした、重要事項説明義務、初期契約解除制度、取次代理店の監督義務などが定められています。これらに加えて、近年、モバイルサービス市場の競争適正化の観点から、モバイル端末の販売を伴うモバイルサービスの提供条件等に多様な規制が導入されました。当社又は取次代理店において業務の方法が適当でないとされた場合は、前記の業務方法の改善命令、社名の公表を伴う行政指導等の措置がとられる可能性があります。
業務改善命令等を受けたことにより、当該命令に基づく改善対応に係るコスト増や企業イメージの悪化等が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
(2) インターネット等に関する法的規制について
インターネットの利用態様に関する法的規制については既に多くの制度が存在しますが、インターネット上の違法及び有害情報や誹謗中傷への対処の強化、サービス利用者の本人確認厳格化、青少年保護対策、個人データの利用適正化等の観点を中心に、規制強化の必要性が継続的に議論されており、これらの点について、更なる具体的な対処義務を電気通信事業者に課する制度が検討、実施される可能性、或いは法制に至らずとも業界の自主規制として導入される可能性があります。制度の内容次第では、対応するための多くの処理コストや設備投資が発生する可能性があります。
一方で、インターネットの利用態様の一つであるIoTに関しては、業界や監督官庁が重なり合う分野であるために、今後どのような法制度が導入されるか予測がつかない部分があります。当社グループが展開する事業を制約するような法令が制定された場合や、法令解釈が不明確であるような場合は、当社の顧客獲得等に影響が及ぶ可能性があります。
また、事業の一定範囲を占める個人向けサービスの領域について、前記の電気通信事業法の他、消費者契約法、特定商取引法、不当景品類及び不当表示防止法等の消費者保護関連法令が適用されます。これらの法令に当社グループ又は当社グループの取次代理店等が違反した場合、総務省以外の行政当局による不利益処分、法的責任の追及及び企業イメージの悪化等を招く可能性があります。
このほか、当社グループの事業に関わる法規制或いは施策等が新設又は強化された場合等には、当社グループの事業運営の自由度や迅速性が損なわれ、又は、当社グループの顧客による当社のサービスの利用が制約され、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
(3) 経済安保法制について
経済安全保障推進法や経済安保情報保護法(セキュリティ・クリアランスの法制化)が成立するなど、国際情勢や社会経済構造の変化等に伴い、安全保障の確保に関する経済施策の推進が重要視されてきております。経済安全保障推進法には、基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度として、重要設備が国外からの妨害を受けることを防止するため、重要設備の導入・維持管理等の委託の事前審査、勧告・命令等が行われる内容が定められています。かかる制度の詳細はまだ確定しておりませんが、制度の運用状況によっては、データセンター施設の構築計画などに影響があり、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。また、このような安全保障確保に関する経済施策は、米国を含む国外でも導入されており、当社が提供する役務に一定範囲での制約が生ずることにより、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
(4) 外国法について
当社は、日本国外に関係会社を有しており、かかる関係会社において当該国の法令を遵守するよう努めておりますが、国によっては、法令の解釈運用が不明確な場合もあり、当社グループの意図にかかわらず法令違反が指摘される恐れがあります。このような場合には、当該国における事業展開に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
また、国外法令の中には、当該国の当該関係会社の行為に限定されず、企業集団全体に適用される法制度を設けている場合があります。例えば、米国のFCPAや安全保障に関わる法令、EUのGDPR等が挙げられますが、当社グループとしてそれらの法制度への対応を誤った場合、事業への制約や多額の罰金が課せられる等の可能性があります。
(5) 知的財産権等について
当社グループは、第三者の特許権その他の知的財産権を侵害することのないよう万全を期しておりますが、万が一、第三者の知的財産権を侵害した場合は、損害賠償の負担が生じる可能性があります。また、当社の役務に関わる基盤技術の重要な一部について第三者の特許取得が認められた場合或いは将来特許取得が認められた第三者の技術が基盤技術の重要な一部を構成することとなった場合は、当社グループは、事業遂行の必要上これらの特許権者に対してライセンス料を負担する必要が生じる可能性があります。
当社グループは、サービスの開発及び運用にあたりオープンソース(*)ソフトウェアを積極的に活用しておりますが、オープンソースソフトウェアについてはライセンス条件の法的位置付けが不明確である等の問題があり、予期しない利用上の制約が発生する可能性があります。また、AIを事業に活用していくに際し、様々な法的論点が未整理であることにより、活用に制約が生ずる可能性があります。
また、当社グループは自社が保有する知的財産権について適切な保護管理策を講じており、今後も講じていく考えでありますが、第三者が当社グループの知的財産権を侵害する可能性を完全に排除することは困難でもあり、当社グループの重要な知的財産権が第三者に不当に侵害された場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
(6) 訴訟等について
本書提出日現在、当社グループの財政状況に大きな影響が及ぶ当社グループに対する訴訟は提起されておりませんが、将来に亘り、サービスの不具合、システムインテグレーションの納期遅延や契約上の不適合(外注先に起因する場合を含みます。)、知的財産等第三者の権利の侵害、通信の秘密や個人情報を含む顧客情報の漏えい若しくは毀損、不適切な消費者対応、不適切な人事労務管理又は当社の株式等に関連して、損害賠償請求等の訴訟を起こされる可能性があります。また、仕入先との契約更新や改定にあたり、価格その他の契約条件に関して相手方との合意形成が不調となった場合、法的紛争による解決を選択せざるを得ない可能性があります。
これらの訴訟が発生し、当社グループの責に帰すものと認められた場合若しくは当社の主張が認められなかった場合や、また訴訟を起こされることにより当社グループの事業に対する信頼感が損なわれた場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響が及ぶ可能性があります。
5.大株主との関係について
(1) NTTグループ及びKDDIの出資経緯等について
本書提出日現在、NTT及びNTTコミュニケーションズが所有する当社株式数及び議決権比率は20,387,000株及び11.5%で、KDDIが所有する当社株式数及び議決権比率は20,387,000株及び11.5%であり、両社グループは同率にて当社の第一位の株主にあたります。当社グループは、NTTグループ及びKDDIから通信回線等の調達を行っており、また、主としてネットワークサービスにおいて事業競合する立場にあります。
NTT及びNTTコミュニケーションズとの間では、1996年1月の当社の資本強化のための第三者割当増資におけるNTTの資本参加、1997年9月のインターネットマルチフィード㈱のNTT(その後、NTTの組織改編によりいずれもNTTコミュニケーションズに株主が変更。)との合弁設立、2003年9月のクロスウェイブの会社更生手続開始による財務損失を補うためのNTT及びNTTコミュニケーションズを主要引受先とする第三者割当増資との資本取引がありました。2023年3月31日時点のNTTグループによる当社株式の株式所有割合は25.9%であり、NTTは当社のその他の関係会社に該当しておりました。
KDDIとの間では、1994年6月の当社の資本強化のための第三者割当増資におけるKDDIの資本参加等の資本取引があり、2023年3月31日時点のKDDIによる当社株式の株式所有割合は0.9%でありました。
NTTの当社株式の一部処分との方針を受け、2023年5月18日付けで、当社はKDDIと資本業務提携契約を締結のうえ、KDDIがNTTから当社株式18,707,000株を譲受けしました。2023年5月19日付けで、当社は東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)にて自己株式の買付けを行い、NTTは3,928,500株を売却致しました。また、この他にNTTは当社株式の一括の売却を行い、これらの結果、両社グループの所有する当社株式数及び株式所有割合は上記の通りとなり、NTTは当社のその他の関係会社に該当しなくなりました。
(2) NTTグループ及びKDDIとの商業的な関係について
当社は、インターネット接続サービス等の提供にあたり、アクセス回線、国内及び国際バックボーン回線、WAN回線、モバイル通信回線及び設備、データセンター施設設備等について、NTTグループ及びKDDIの提供するサービスを多く利用しております。NTTグループ及びKDDIとのこれらの商取引の経済条件は、出資関係にあることによる特別の取り決めは存在せず、通常の商慣習の範囲にあります。
NTTグループ及びKDDIは、当社が提供するモバイルサービスを含むインターネット接続サービス、WANサービス、セキュリティ関連等のアウトソーシングサービス及びシステムインテグレーション等の事業領域で、当社と競合するサービスを提供しております。当社グループとの間で一部の案件で一定の競合が生じることはありますが、出資関係にあることによる特段の取り決めは存在せず、当社グループとして自主性をもった経営を行っております。
2024年3月期における当社のNTT及びNTTコミュニケーションズからの売上高は3億円、KDDIからの売上高は3億円でありました。
(3) NTTとの株式引受契約及びKDDIとの資本業務提携契約について
当社は、2003年9月の当社の第三者割当増資のNTTによる引受けにあたり、NTTと株式引受契約を締結しております。当該契約において、事業遂行上の特段の重要な義務及び権利は定められておりません。
当社は、2023年5月のKDDIによる当社株式のNTTからの取得にあたり、KDDIと資本業務提携契約を締結しております。当該契約において、業務提携として、相互の企業価値の向上の実現のためにその目的に資する範囲で、当社によるKDDIの通信サービス等の最適な調達、当社とKDDIのそれぞれの子会社を含む事業領域での各種協業の検討、当社とKDDIの法人分野及びモバイルサービス領域での商材の相互活用及び共同開発等の検討及び人材の交流に関して、実行推進にあたり相互に協力する旨をKDDIと合意しています。
(4) 今後について
NTTからは、NTTグループの保有する当社株式を政策保有株式として当面は保有を継続する意向である旨の報告を受けております。KDDIからは、当社株式を政策保有株式として長期保有する予定である旨の報告を受けております。当社は、両社グループと安定的な株主としても良好な関係を継続していくことと想定しておりますが、両社グループに限らずとも、当社の大株主等に大きな変動が生じる場合には、当社の株価に一時的な影響が及ぶ可能性があります。
6.今後の資金需要について
当社グループの2024年3月期末における現金及び現金同等物の残高は455億円と、前年同期末比30億円の増加となりました。また、当社グループの2024年3月期末における銀行借入残高は302億円と前年同期末比98億円増加し、ファイナンス・リース負債(1年内返済予定を含む)残高は158億円と前年同期末比7億円減少致しました。当連結会計年度末においてIFRS第16号の適用により認識したオペレーティング・リースに関する負債は270億円でありました。
当社グループは、今後もネットワーク設備、クラウドコンピューティングサービス関連設備、バックオフィス関連設備等の維持、更新及び拡張に関わる投資及び費用、サービス開発及び運営並びに事業開発に関わる投資及び費用、自社データセンター建設に関わる投資及び費用、人員拡大に伴うオフィススペース拡張等に関わる投資及び費用、事業拡大に伴う運転資金の増加、グループ事業拡大のための投融資及びM&A取引等に資金を投下していくと想定しております。当社グループは、運転資金の調達は、銀行借入を主体に、通信機器等の購入は、リース取引による調達を主体としております。金利水準の変化により当社の想定する以上の金利コストが発生する可能性があります。事業環境の変化に起因して、当社グループの事業において想定を上回る資金需要が生じる可能性があり、今後の銀行借入及びリース取引を含む資金調達について、当社グループにとって好ましい条件で実行できる保証はなく、それが当社グループの事業進展の制約要因となる可能性があります。
7.株式の希薄化について
当社は、2013年7月に公募増資にて18,800千株(株式分割を考慮後)、2013年8月に公募増資に関連したオーバーアロットメントによる売出しにかかる第三者割当増資にて2,800千株(株式分割を考慮後)の新株を発行致しました。今後も、将来の戦略的M&Aや大規模事業投資等を目的とした資金需要に応じて、新株、新株予約権付社債又は新株予約権等を発行する可能性があり、これらの発行及び行使により当社の1株当たりの株式価値に希薄化が生じる可能性があります。
当社は、2011年6月より2024年6月までの間、取締役(非常勤取締役及び社外取締役を除く)及び執行役員に対して、各々の退職慰労金及び退職金の代替として、新株予約権方式による株式報酬型ストックオプション制度を導入しておりました。当該新株予約権の概要は、後記の「第一部 企業情報 第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2)新株予約権等の状況」に記載の通りであります。なお、当該株式報酬型ストックオプション制度は、2024年6月より在籍条件型報酬として、後述の譲渡制限付株式報酬による制度へと集約いたしました。
当社は、当社及び子会社IIJグローバルの業務執行取締役及び執行役員に対し、賞与等の現金支給の一部の代替として、譲渡制限付株式報酬を導入しております。当該報酬の概要は、後記の「第一部 企業情報 第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等 ④業績連動報酬及び非金銭報酬に関する事項」に記載の通りであります。
(1) 経営成績の状況
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の連結業績の概要
当連結会計年度における国内景気は一部に足踏みもみられましたが、緩やかに回復しました。先行きにつきましては、各種政策の効果もあり、景気の緩やかな回復が続くことが期待されるものの、物価上昇、世界的な金融引締めによる金利や為替の変動等の影響を注視する必要があります。
そのような景気動向の中、当社グループが主にかかわる法人ICT関連市場では、クラウドサービスやAI(*)等の新技術の企業活動への利活用の浸透、それらも含む要因によるインターネットトラフィックの継続増加、サイバーセキュリティ対策の重要性の高まり等が想定されます。企業のネットワーク及びシステムの領域は、旧来の社内閉域ネットワークから、インターネット技術を融合した複雑で多様なものへと変化しつつあり、今後も信頼性の高いネットワーク及びシステムの安定運用との重要性が増していくと想定をしております。
当連結会計年度は、当社グループの3ヵ年中期計画の最終年度にあたります。この中期計画期間におきまして、概して進展が遅かった日本企業及び官公庁等のIT利活用が、コロナ禍を契機に急進し、コロナ沈静後も社内外ネットワークの更改も含めて強い需要が継続しております。これら需要に対して、当社グループの月額提供のネットワークサービスをシステムインテグレーションに組み込む「サービスインテグレーション」との事業モデルを展開し、契約期間総額が数十億円から100億円超の複数年にわたる大型案件を多数獲得いたしました。前中期計画末の2021年3月期と比較すると、当期の売上高は約1.3倍の2,761億円、営業利益は約2.0倍の290億円、営業利益率は3.8ポイント向上の10.5%と推移し、中期計画で掲げた法人ストック売上の大幅伸長とスケールメリットによる利益享受との態様を実現いたしました。また、事業拡大に伴い、年度末時の従業員数は約1.3倍の4,803名となりました。その他の中期計画の振り返りは、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中期的な会社の経営戦略 ①前中期計画の振り返り」をご参照ください。
当連結会計年度の事業進展につきましては、ネットワークサービスにおいては、月額売上を堅調に積み上げ、売上総利益率は28.7%と前年同期比1.3ポイント向上いたしました。内訳につきましては、ネットワークサービス(除くモバイル関連サービス(*))は、IPサービス、セキュリティ関連サービス及びWANサービス等の需要が引き続き良好で、売上高は前年同期比8.9%増の1,052億円となりました。モバイル関連サービスは、総契約回線数は481万回線と前年度末比16.3%増加し、売上高は前年同期比9.1%増の461億円となりました。個人向けモバイルサービスは成熟市場のなかでも競争力を発揮し契約回線数は前年度末比5.6%増の127万回線、売上高は前年同期比4.5%増の220億円となり、法人向けモバイルサービスはネットワークカメラ等のIoT利用の継続普及等により契約回線数は前年度末比29.8%増の235万回線、売上高は前年同期比21.9%増の136億円となりました。システムインテグレーションにおいては、受注及び受注残高は好調であったものの、売上計上が複数年にわたる大型案件へのリソース割当等により単年度では売上伸長が鈍化し、また、売上計上に先行して生じる原価の増加もあり、売上総利益率は前年同期比1.1ポイント減の15.6%となりました。当社グループは、新規学卒者の獲得と育成を中心に戦略的な人的資本の拡張を進めており、当事業年度の期初は246名、2024年4月には307名の新規学卒者を迎えました。ネットワーク設備の拡張については、インターネットトラフィックの増加や自社サービス需要の高まりに応じ、インターネットバックボーンや自社サービス設備等を収容する自社保有データセンターを継続拡張いたしました。国際事業においては、従前からの事業進展に加えて、約28億円の海外データセンター構築案件や2021年4月に完全子会社化したシンガポールのシステムインテグレーターであるPTC SYSTEM (S) PTE LTDの貢献もあり、国際事業売上高は前年同期比38.1%増の353億円となりました。新規事業においては、当社持分法対象の㈱ディーカレットDCPにて、国内初のデジタル通貨サービスとして、非化石証書取引におけるデジタル通貨(DCJPY)の発行及び決済サービスの提供を2024年7月開始予定としております。
当連結会計年度の業績につきまして、総売上高は、前年同期比9.2%増の276,080百万円(前年同期 252,708百万円)となりました。売上原価は前年同期比8.9%増の212,214百万円(前年同期 194,800百万円)となり、売上総利益は前年同期比10.3%増の63,866百万円(前年同期 57,908百万円)となりました。内訳といたしまして、ネットワークサービスの売上高は前年同期比8.9%増の151,347百万円(前年同期 138,922百万円)、売上総利益は前年同期比14.0%増の43,493百万円(前年同期 38,146百万円)となりました。ネットワークサービスの売上原価におきましては、当第3四半期において㈱NTTドコモのモバイルデータ接続料の2022年度利用分単価確定による費用戻し効果1億円強(前年同期は5億円強の効果)がありました。システムインテグレーション(含む機器販売)の売上高は前年同期比9.8%増の121,819百万円(前年同期 110,944百万円)、内システム構築売上は49,902百万円(前年同期 42,945百万円)、システム運用保守売上は71,917百万円(前年同期 67,999百万円)となり、売上総利益は前年同期比2.6%増の19,042百万円(前年同期 18,553百万円)となりました。ATM運営事業の売上高は前年同期比2.5%増の2,914百万円(前年同期 2,842百万円)、売上総利益は前年同期比10.1%増の1,331百万円(前年同期 1,209百万円)となりました。販売管理費等(販売費及び一般管理費、その他の収益及びその他の費用の合計)は前年同期比13.5%増の34,837百万円(前年同期 30,687百万円)となりました。営業利益は、前年同期比6.6%増の29,029百万円(前年同期 27,221百万円)となりました。税引前利益は、為替差益533百万円(前年同期 365百万円の利益)及び主としてファンドに係る金融資産評価益149百万円(前年同期 303百万円)等により、前年同期比6.0%増の28,934百万円(前年同期 27,309百万円)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期比5.2%増の19,831百万円(前年同期 18,852百万円)となりました。
(2) 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末比27,395百万円増加し、273,713百万円(前連結会計年度末 246,318百万円)となりました。
当連結会計年度末における流動資産は、現金及び現金同等物、営業債権及び前払費用等の増加により、前連結会計年度末比13,211百万円増加し、119,889百万円(前連結会計年度末 106,678百万円)となりました。非流動資産は、有形固定資産、無形資産、前払費用及び投資有価証券(株式)の増加等により前連結会計年度末比14,184百万円増加し、153,824百万円(前連結会計年度末 139,640百万円)となりました。
当連結会計年度末における流動負債は、借入金、営業債務及びその他の債務、契約負債の増加等により、前連結会計年度末比20,494百万円増加し、98,358百万円(前連結会計年度末 77,864百万円)となりました。非流動負債は、前連結会計年度末比704百万円減少し、48,323百万円(前連結会計年度末 49,027百万円)となりました。
当連結会計年度末における親会社の所有者に帰属する持分の額は、自己株式の取得による11,405百万円減少もありましたが、前連結会計年度末比7,509百万円増加の125,751百万円 (前連結会計年度末 118,242百万円)、親会社の所有者に帰属する持分比率は45.9%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、45,474百万円となりました。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益28,934百万円、減価償却費及び償却費29,296百万円、法人所得税の支払い8,130百万円に対して前払費用等による支出の増加等により、営業資産及び負債の増減は9,880百万円の支出となり、40,780百万円の収入となりました。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、白井データセンターキャンパス建設関連等の有形固定資産の取得による11,744百万円の支出、ソフトウェア等の無形資産の取得による7,199百万円の支出等があり、17,927百万円の支出となりました。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加11,800百万円、自己株式の取得の支払11,405百万円、その他の金融負債の支払20,008百万円、その他の金融負債による収入6,609百万円、配当金の支払5,682百万円、長期借入金の返済2,060百万円等があり、20,797百万円の支出となりました。
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績は、以下のとおりであります。
(注)1.前年同期比の欄の%表示は、対前期比での増減率を記載しております。
2.当社グループは、ネットワークサービス並びにATM運営事業において生産を行っておりませんので、これらに係る生産実績の記載事項はありません。なお、各役務と事業セグメントの関連につきましては、本書の「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容」をご参照下さい。
当連結会計年度における受注実績及び受注残高は、以下のとおりであります。
(注)1.前年同期比の欄の%表示は、対前期比での増減率を記載しております。
2.当社グループは、ネットワークサービス及びATM運営事業において受注生産を行っておりませんので、これらに係る受注実績及び受注残高の記載事項はありません。なお、各役務と事業セグメントの関連につきましては、本書の「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容」をご参照下さい。
当連結会計年度における役務区分別の販売実績は、以下のとおりであります。
(注)1.前年同期比の欄の%表示は、対前期比での増減率を記載しております。
2.各役務と事業セグメントの関連につきましては、本書の「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容」をご参照下さい。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第28号)第93条の規定により、国際会計基準(IFRS)に準拠して作成しております。
当社グループは、IFRSに準拠した連結財務諸表の作成にあたり、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、会計上の見積り及び仮定を用いております。
これらの見積及び仮定は、過去の経験及び利用可能な情報を収集し、報告期間の末日現在において合理的であると考えられる様々な要因等を勘案した経営者の最善の判断に基づいております。
しかし、その性質上、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
詳しくは、後記の連結財務諸表の注記をご参照ください。
(2) 当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の経営成績の分析
<主要な連結経営指標>
(注)1.システムインテグレーションには機器販売を含んでおります。
2.販売費及び一般管理費(研究開発費を含む)、その他の収益、その他の費用の合計額を記載しております。
<セグメント情報>
当社グループの売上の大部分がネットワークサービス及びSI事業からのものであるため、役務別の分析により記載しております。
ⅰ)売上収益
当連結会計年度における売上収益は、前年同期比9.2%増の276,080百万円(前年同期 252,708百万円)となりました。
<ネットワークサービス売上高>
法人向けインターネット接続サービスの売上高は、法人IoT等用途向け法人モバイルサービス及びIPサービス等の売上増加があり、前年同期比11.1%増の44,725百万円(前年同期 40,253百万円)となりました。
個人向けインターネット接続サービスの売上高は、個人向けモバイルサービス等の売上増加があり、前年同期比4.3%増の25,285百万円(前年同期 24,235百万円)となりました。
アウトソーシングサービスの売上高は、セキュリティ関連サービス等の売上増加があり、前年同期比13.2%増の52,972百万円(前年同期 46,808百万円)となりました。
WANサービスの売上高は、前年同期比2.7%増の28,365百万円(前年同期 27,626百万円)となりました。
これらの結果、ネットワークサービス売上高は、前年同期比8.9%増の151,347百万円(前年同期 138,922百万円)となりました。
ネットワークサービス売上高の内訳、法人向け及び個人向けインターネット接続サービス契約数及び回線数の内訳並びに法人向けインターネット接続サービスの契約総帯域は、それぞれ以下のとおりであります。
<ネットワークサービス売上高の内訳>
<インターネット接続サービス契約数及び回線数の内訳並びに法人向けインターネット接続サービスの契約総帯域(注)1>
(注)1.法人向けインターネット接続サービス及び個人向けインターネット接続サービスの内訳において、「IIJモバイルサービス」及び「IIJmioモバイルサービス」は回線数を表示しており、それ以外は契約数を表示しております。
2.IPサービスには、インターネットデータセンター接続サービスが含まれます。
3.法人向けインターネット接続サービスのうち、IPサービス(含むインターネットデータセンター接続サービス)及びブロードバンド対応型サービス各々の契約数と契約帯域を乗じることにより算出しております。
<システムインテグレーション売上高>
システム構築及び機器販売による一時的な売上高は、前年同期比16.2%増の49,902百万円(前年同期 42,945百万円)となりました。システム運用保守による継続的な売上高は、システム運用保守案件の継続積み上げによる増加等があり、前年同期比5.8%増の71,917百万円(前年同期 67,999百万円)となりました。
これらの結果、システムインテグレーション(含む機器販売)の売上高は、前年同期比9.8%増の121,819百万円(前年同期 110,944百万円)となりました。
当連結会計年度のシステムインテグレーション(含む機器販売)の受注は、前年同期比22.4%増の147,955百万円(前年同期 120,910百万円)となりました。このうち、システム構築及び機器販売に関する受注は前年同期比35.2%増の59,864百万円(前年同期 44,293百万円)、システム運用保守に関する受注は前年同期比15.0%増の88,091百万円(前年同期 76,617百万円)でありました。
当連結会計年度末のシステムインテグレーション(含む機器販売)の受注残高は、前年同期末比31.6%増の108,893百万円(前年同期末 82,757百万円)となりました。このうち、システム構築及び機器販売に関する受注残高は前年同期末比72.2%増の23,761百万円(前年同期末 13,799百万円)、システム運用保守に関する受注残高は前年同期末比23.5%増の85,132百万円(前年同期末 68,958百万円)でありました。
<ATM運営事業売上高>
ATM運営事業売上高は、前年同期比2.5%増の2,914百万円(前年同期 2,842百万円)となりました。
ⅱ)売上原価
当連結会計年度における売上原価は、前年同期比8.9%増の212,214百万円(前年同期 194,800百万円)となりました。
<ネットワークサービス売上原価>
ネットワークサービスの売上原価は、前年同期比7.0%増の107,854百万円(前年同期 100,776百万円)となりました。セキュリティ関連サービスのライセンス費用等の増加及び㈱NTTドコモのモバイルデータ接続料の2022年度利用分単価確定による費用戻し効果1億円強(前年同期は5億円強の効果)等がありました。ネットワークサービスの売上総利益は、前年同期比14.0%増の43,493百万円(前年同期 38,146百万円)となり、ネットワークサービスの売上総利益率は28.7%(前年同期 27.5%)となりました。
<システムインテグレーション売上原価>
システムインテグレーション(含む機器販売)の売上原価は、外注関連費用及び仕入の増加等があり、前年同期比11.2%増の102,777百万円(前年同期 92,391百万円)となりました。機器販売を含むシステムインテグレーションの売上総利益は、前年同期比2.6%増の19,042百万円(前年同期 18,553百万円)となり、売上総利益率は15.6%(前年同期 16.7%)となりました。
<ATM運営事業売上原価>
ATM運営事業売上原価は、前年同期比3.1%減の1,583百万円(前年同期 1,633百万円)となりました。売上総利益は、1,331百万円(前年同期 1,209百万円)となり、売上総利益率は45.7%(前年同期 42.5%)となりました。
ⅲ)販売管理費等
当連結会計年度における販売費及び一般管理費(含む研究開発費)は、人件関連費用等の増加があり、前年同期比12.5%増の34,754百万円(前年同期 30,897百万円)となりました。
その他の収益は169百万円(前年同期は一時的な資産売却益を含む281百万円)となりました。その他の費用は252百万円(前年同期 71百万円)となりました。
ⅳ)営業利益
当連結会計年度における営業利益は、前年同期比6.6%増の29,029百万円(前年同期 27,221百万円)となりました。
ⅴ)金融収益、金融費用及び持分法による投資損益
当連結会計年度における金融収益は、為替差益533百万円(前年同期 365百万円の利益)及び主としてファンドに係る金融資産評価益149百万円(前年同期 303百万円の評価益)等により、1,019百万円(前年同期 844百万円)となりました。
当連結会計年度における金融費用は、支払利息616百万円(前年同期 529百万円)等により、649百万円(前年同期 552百万円)となりました。
当連結会計年度における持分法による投資損益は、㈱ディーカレットホールディングスに関する損失535百万円(前年同期 382百万円の損失)等があり、465百万円の損失(前年同期 204百万円の損失)となりました。
ⅵ)税引前利益
当連結会計年度における税引前当期利益は、前年同期比6.0%増の28,934百万円(前年同期 27,309百万円)となりました。
ⅶ)当期利益
当連結会計年度における法人所得税費用は、8,958百万円の費用(前年同期 8,316百万円の費用)となりました。この結果、当連結会計年度における当期利益は、前年同期比5.2%増の19,976百万円(前年同期 18,993百万円)となりました。
非支配持分に帰属する当期利益は、㈱トラストネットワークスに係る利益等により145百万円(前年同期 141百万円)となりました。この結果、当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期比5.2%増の19,831百万円(前年同期 18,852百万円)となりました。
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末比27,395百万円増加し、273,713百万円(前連結会計年度末 246,318百万円)となりました。
当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末比13,211百万円増加し、119,889百万円(前連結会計年度末 106,678百万円)となり、主な残高及び増減の内訳は、現金及び現金同等物の3,002百万円増加の45,474百万円、営業債権の4,343百万円増加の45,683百万円、設備保守及び顧客向け案件等による前払費用の4,743百万円増加の20,084百万円でありました。
当連結会計年度末における非流動資産は、前連結会計年度末比14,184百万円増加し、153,824百万円(前連結会計年度末 139,640百万円)となりました。主な残高及び増減の内訳は、有形固定資産の白井データセンターキャンパス建設関連資産の取得等による5,751百万円増加の29,072百万円、使用権資産(オフィス、データセンター等の賃借契約及び通信機器等のリース契約の利用権)の償却等による5,433百万円減少の41,242百万円、ソフトウェア購入等による無形資産の1,741百万円増加の18,357百万円、顧客向けライセンス案件等及び設備保守等による前払費用の6,833百万円増加の19,412百万円、保有上場株式の時価評価等による投資有価証券(株式)の4,532百万円増加の14,563百万円でありました。
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末比20,494百万円増加し、98,358百万円(前連結会計年度末 77,864百万円)となりました。主な残高及び増減の内訳は、営業債務及びその他の債務の3,122百万円増加の25,435百万円、借入金の13,305百万円増加(うち、自己株式取得に見合う短期借入金による調達12,000百万円、返済による減少2,260百万円及び非流動負債からの振替等3,555百万円)の30,133百万円、契約負債の2,516百万円増加の12,685百万円、その他の金融負債の70百万円減少の18,035百万円でありました。
当連結会計年度末における非流動負債は、前連結会計年度末比704百万円減少し、48,323百万円(前連結会計年度末 49,027百万円)となり、主な残高及び増減の内訳は、流動負債への振替等による借入金の3,555百万円減少の47百万円、契約負債の1,141百万円増加の8,552百万円、長期未払金等によるその他の金融負債の408百万円増加の31,103百万円でありました。
当連結会計年度末における親会社の所有者に帰属する持分の額は、自己株式の取得による11,405百万円減少もありましたが、前連結会計年度末比7,509百万円増加の125,751百万円 (前連結会計年度末 118,242百万円)、親会社の所有者に帰属する持分比率は45.9%となりました。
当社グループの資金需要のうち主なものは、ネットワークの構築と拡張、社内システムへの投資、クラウドコンピューティングサービス推進に伴う投資、データセンター等の施設設備に対する賃借料及び投資(土地取得含む)、ネットワークサービス原価及びシステムインテグレーション仕入等に伴う増加運転資金、当社グループ会社等に対する投融資、国際事業推進に伴う投資、販売活動及び運転資金等であります。こうした必要資金は、主として営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行からの借入金並びにファイナンス・リース契約等で調達されております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、45,474百万円(前年同期末 42,472百万円)となりました。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益28,934百万円(前年同期 27,309百万円)、減価償却費及び償却費29,296百万円(前年同期 28,801百万円)、うちIFRS第16号の適用によるオペレーティング・リースに係る使用権資産の減価償却費11,784百万円(前年同期 11,618百万円)、法人所得税の支払い8,130百万円(前年同期 9,958百万円) があり、営業資産及び負債の増減は、前払費用等による支出の増加が、営業債務等による支出の減少及び契約負債等による収入の増加等を上回り、9,880百万円の支出(前年同期 7,712百万円の支出)となり、40,780百万円の収入(前年同期 38,529百万円の収入)となりました。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、白井データセンターキャンパス建設関連等の有形固定資産の取得による11,744百万円の支出(前年同期 11,787百万円の支出)、ソフトウェア等の無形資産の取得による7,199百万円の支出(前年同期 5,471百万円の支出)等があり、17,927百万円の支出(前年同期 18,386百万円の支出)となりました。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加11,800百万円、自己株式の取得の支払11,405百万円、本社オフィス等のオペレーティング・リース及びネットワーク機器等のファイナンス・リースの支払等によるその他の金融負債の支払20,008百万円(前年同期 19,344百万円)、その他の金融負債による収入6,609百万円、配当金の支払5,682百万円(前年同期 4,901百万円)、長期借入金の返済2,060百万円(前年同期 1,515百万円)等があり、20,797百万円の支出(前年同期 25,731百万円の支出)となりました。
当社グループの主要取引銀行は、㈱三菱UFJ銀行、㈱みずほ銀行、㈱三井住友銀行及び三井住友信託銀行㈱であります。
当社グループの当連結会計年度末現在における短期借入金の残高は26,570百万円でありました。当社グループは、主要取引銀行を含む邦銀各行との間にて当座借越契約を締結しており、当連結会計年度末現在において、その未使用残高合計は20,080百万円でありました。また、当社グループの当連結会計年度末現在における長期借入金残高は3,610百万円でありました。
当社グループは、ファイナンス・リース契約により調達したデータ通信及びその他の設備を利用してインターネット接続サービス及びその他のインターネット関連サービスを行っております。当連結会計年度末現在のファイナンス・リース負債の残高は15,750百万円であります。
本書提出日現在、記載すべき経営上の重要な契約はありません。
当社は、当社グループの基礎技術研究の中核として、インターネットに関する新技術等の調査及び研究を行う技術研究所を社内組織として設置しており、事業部門等と連携を取りながら様々な研究開発に取り組んでおります。
インターネットに関する基礎技術については、当連結会計年度において、インターネットトラフィックの調査、計測及び解析、インターネット基盤技術、セキュリティに関する研究など幅広い活動を行いました。インターネットトラフィックの調査、計測及び解析においては、2004年から総務省及び他ISPと協力して国内インターネットのトラフィック量を把握するための調査及びその動向報告を継続的に行っております。また、ネットワーク運用を支援する目的で、インターネット上の任意のネットワークについての外部観測データを多角的に解析するツールを開発し、解析結果と共に公開しています。これらの研究は、当社にとってネットワーク設計等を検討していくうえで有用であるだけでなく、国際的にも貴重な研究成果として認知されており、情報通信業界へ広く貢献する研究と認識しております。インターネット基盤技術については、ますます大規模化、高速化するインターネットをより効率的に運用できるよう調査及び解析を行い、ソフトウェアによる通信高速化技術の研究開発、インターネットで利用されるプロトコルの標準化、運用管理の自動化(クラウドサービスに要する資源の自動割り当てモデルの設計、ネットワーク情報の収集と抽出による動的情報管理、産業用機器やIoT機器等の自動設定システムの構築等)等の研究を行いました。セキュリティについては、当社のセキュリティオペレーションセンターにて集積しているログを用いた早期警戒システムの設計、機械学習及びバイナリ解析技術を基に攻撃に繋がる可能性のある動きを未然に防ぐ技術の研究等を行いました。
当社は、当連結会計年度において、事業部門においても、事業活動と並行して、新サービスの開発、モバイルサービスの機能追加、フルMVNOサービスの開発、IoT関連サービス開発等に向けた各種PoC(*)案件推進、セキュリティ技術の評価、検討、サービス開発及び機能追加、クラウドコンピューティングサービスの機能追加、事業に必要な関連ソフトウェアの評価、検討、開発、改良及び実装、通信機器の評価及び検討、次世代システムインフラの開発、ネットワーク運用技術の評価、検討及び開発等の研究開発活動を行いました。
当社は、インターネット技術の標準化団体といえるISOC(*)及びIETF(*)、アジアと日本のインターネット運用管理組織であるAPNIC(*)及びJPNIC(*)、国際連合の専門機関ITU(*)の電気通信標準化部門であるITU-T(*)、セキュリティに関する国際組織FIRST(*)、日本のインターネット技術者及び利用者への貢献を目的としてインターネットにおける技術的事項及びそれに係るオペレーションに関する事項の議論、検討及び紹介等を行うJANOG(*)、日本の情報通信分野の安全の確保を目的として活動するICT-ISAC(*)、クラウドコンピューティングを重要な社会インフラとして普及・発展させることを目的として活動するASPIC(*)等の国内外のインターネット・通信関連技術団体に加盟及び参加しており、ネットワーク関連技術の発展に積極的に取り組んでおります。
インターネットは、通信手順を一般に公開し共通化することにより普及してきたという経緯があります。当社グループは、インターネットを含むデータ通信等に関わる研究開発において、個別に多額の予算を注ぎ込んで独自の技術を新規開発するというよりも、基礎技術の標準化過程への参画、次世代の技術情報の収集、評価及び習得、新技術の既存サービスへの応用及び実装、所与の技術による付加価値の高いサービス及びプロダクトの創出及び開発等が重要であると認識しており、主としてそのような研究開発活動を推進しております。
当社グループの研究開発は上述のような内容であり、その費用の殆どは人件費であります。当社グループは、主として基礎技術研究に従事した人員に関する人件費等を研究開発費として計上し、サービス開発等に関する費用は原価計上しております。当連結会計年度における研究開発費は、ネットワークサービス及びSI事業にかかるものであり、前年同期比16.5%増の