当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは企業理念を「時空を超えてヒトやモノをつなぎ、豊かな社会を創造する」としております。大手通信事業者が求めるキャリアグレード(短時間の停止も許されない公共的社会インフラを支える技術や品質)の製品・サービスを提供するとともに、グローバルスタンダードであるインターネット技術をベースにした先進的なコミュニケーション・サービスを提供してまいります。
(2)経営戦略等
当社グループは、NTTの技術者を中心に創業され、電話公衆網で必要とされる技術・品質レベルを理解し、かつ短時間の停止も許されない信頼性を実現する技術力を持っています。また、ネットワークやコミュニケーションの最新技術を同時に活用し、クラウドサービスとして提供することが可能です。従来得意としている、グローバルスタンダードな海外製品を、日本国内の制度やシステムに適応させ、多種多様なソリューションとして提供するなど、当社グループの特性を活かしたビジネスモデルを展開しています。
ボイスコミュニケーションにおいては、働き方の多様性やオフィス移転、従来のハードウェア型PBX(内線・外線電話交換機システム)の生産終了などの要因により、スマートフォンの内線利用などに適したクラウドPBX(内線・外線電話交換機能をクラウドサービスとして提供)への移行が近年増えつつあります。従来多くの企業が導入してきたハードウェア型のPBXは、電話通信からインターネット技術への移行の影響により、コストの削減や業務の効率化を図るため、クラウドPBXへの移行が加速しています。この市場の変化に対応し、当社グループは、あらゆるメーカーのハードウェア型のPBXやビジネスホンのリプレイス需要を獲得し、クラウドサービス化を推進していきます。具体的には、ハードウェア型PBXやビジネスホンの顧客基盤を有する企業とのパートナーシップを強化し、OEM/Enabler型のサービスモデルを展開し、PBX市場におけるシェアを拡大します(Enabler型とは、パートナーが行っているクラウドサービス事業の中に当社のクラウドPBX及びその他クラウドサービスなどを組み込み、パートナーブランドの追加のサービスとして販売頂き、場合によっては運用もパートナーが行うビジネスモデル)。さらに近年、コンタクトセンターでは、PBX/CTI関連における通信コミュニケーション・サービスの手段として、チャットやSMSなど様々な手段を活用したシームレスなコミュニケーションが求められるようになっており、このようなニーズに対応すべくCPaaS(Communications Platform as a Service:様々なコミュニケーションのための共通基盤)を、従来の海外製から、自社開発のサービスに切り替えました。
コミュニケーションDXは、当社グループの強みであるコミュニケーション技術である音声認識/AIやCPaaSを活用し、特定の業種や用途に特化したDXソリューション・サービスを提供しています。建設や工事現場における危険予知、コンタクトセンターのオペレーション支援(ニアリアルタイムの音声認識技術)、CSM(Customer Service Management)のDX化として使えるクラウドIVR(自動音声応答)などを提供しています。また新規事業として5Gの本格導入に必須となるビル建物内のネットワーク展開を行うDAS(Distributed Antenna System)インフラ・シェアリング事業への参入の検討や、特殊詐欺電話対策として、重要な連絡・必要な電話には安心して出られるようにする発信者証明サービスなど、当社グループの技術力である相互接続やAI等の技術を組み合わせて、新しい価値の創出やビジネスにおける変革をもたらすことを目指して、今後取り組んでいきます。
当社グループはこれらの事業分野において、さらなる成長と市場シェアの拡大を目指していきます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの中長期的な見通しにつきましては、経営環境の変化に柔軟に対応し、より現実的な数値目標を設定すべく、毎年、直前事業年度の業績等を踏まえて次年度以降の中期経営計画の見直しを行っております。
事業の成長とともにキャッシュを稼ぐことが重要であるとの経営判断に基づき、2027年3月期(通期)の連結業績として、売上高50億円、EBITDA8億円を計画しております。
(4)経営環境
当社グループの主要事業である通信サービス分野においては、大手通信事業者、各種サービス事業者による価格競争や商品及びサービスの差別化、新たな事業者の参入による市場競争は激しさを増しており、各社の製品開発や技術革新に向けた取り組みは、一層加速しています。こうした中、当社グループが創業以来培ってきたボイスコミュニケーションの市場は電話系コミュニケーションに限定しない、各種サービスと音声の連携の動きがますます広がっており、コミュニケーション技術や大規模・低遅延・高速通信が可能な5Gや通信事業者の装置インタフェースのオープン化、さらには6Gの通信インフラの技術革新も進み、当社グループの事業機会は拡大していくものと認識しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
株式会社東京証券取引所の新市場区分の見直しに伴い、2024年3月31日時点において当社が選択したグロース市場の上場維持基準の時価総額について基準を充たしておりません。当社グループが今後優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。
① 収益力の向上
当社グループの事業における売上の拡大と安定した利益の確保は、重要な課題であると認識しております。利益率も高く安定した収益源である保守サービスやクラウドサービス事業は順調に成長しております。また、国内外の販売パートナーとの連携によりさらなる売上成長を目指してまいります。
収益確保の上で課題である新規大型プロジェクトのプロセス管理・進捗管理を見直し、着実に収益を上げることができるよう、品質管理体制の強化に努め、無駄なコストが発生しない開発プロセスを実現してまいります。
② 新製品の企画開発
前期に開発完了し、市場導入したコミュニケーション・プラットフォーム・サービス(Communications Platform as a Service : CPaaS)は、従来、輸入していた製品サービスを自社開発のソフトウェア、クラウドサービスとして置き換え、音声通話、ショートメッセージ(SMS)、オンラインチャット等、様々なコミュニケーションツールをシームレスに使用できる統合的な基盤となり、その上に容易に新たなサービスを開発できるプラットフォームを提供します。
当社グループはAI音声認識において産学連携を進めており、人材交流や共同研究により、基礎的な技術蓄積を進めており、その技術を安全管理に応用した工事現場での安全ミーティングの音声収録・評価システム「工事KY(工事危険予知)」を製品化しております。
広報活動を通じて当社グループの提供するソリューション・サービスをわかりやすくステークホルダーの方々へ伝えていくことが重要であると考え、ニュース・リリースやビデオ映像による事業紹介等をより一層充実させてまいります。
③ 品質向上に向けた活動
当社グループの創業以来培ってきた通信事業者向けソフトウェア開発においては、通信事業者の厳しいサービス運用基準への適合が要求されます。これらのソフトウェアをクラウド上で提供するクラウドサービスにおいても、品質の確保は必須であり、事業を継続していく上で当社グループの重要課題であると認識しております。より高いレベルでの品質確保のため独立かつ客観的な立場で判断ができる品質管理担当を設け、全ての開発プロジェクトに品質プロセスを適用し品質の担保に努めております。
④ 働き方改革への対応
当社グループの属する情報通信分野においては、高度化する技術への対応、高度な専門知識を持った技術者の不足等の難題を抱えており、人材採用・育成、働き方改革は重要な経営課題となっています。
当社グループではかねてから柔軟な働き方に対応した制度の導入や生産性を向上させるため、自社ソリューションを活用してきました。このため遠隔地へ転居しても勤務を継続することや育児・介護を行いつつ仕事も進められる環境が整い、能力ある人材が無理なく仕事を継続できるようになっております。多様な働き方が許容され、テレワークが普通である働き方改革は、優秀な人材の確保に役立ち、当社グループの重要な強みとなっております。当社グループは、引き続きワークスタイルの変革・制度改革を推進し、優秀な人材の採用・育成を進めてまいります。
当社グループは「時空を超えてヒトやモノをつなぎ、豊かな社会を創造する」という企業理念の下、社会の発展に貢献できるビジネス展開や、自社の制度改革などを実践してまいりました。
環境・社会・ガバナンスの3つの観点から成る以下の取り組みを、今後も社員一人ひとりが意識し継続していくことで「SDGs」の達成に貢献できると考えています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループは、環境・社会・ガバナンスの3つの観点から重要性の高い課題について方針を定め、管理・報告する組織を決定し、リスクに対しては適切な回避策を策定する一方、マーケットの変化に対応していく等、新たな成長機会の獲得を目指すための取り組みをしています。活動内容については、当社の課題管理担当組織より定期的に経営会議に報告し、さらに執行役員から取締役会に報告することで、取締役会の監督が適切に図られるよう体制をとっています。
(2)戦略
<環境>
① 環境対策推進のためのパートナーシップのプログラムへの参加
② グリーン調達を意識した取引
③ リモートワーク対応可能なサービスの提供
④ 契約締結やFAX受信のオンライン化によるペーパーレスの推進
<社会>
① コミュニケーション基盤となる共通プラットフォームの提供
② 字幕電話サービスの提供
③ リモートワーク推進
<ガバナンス>
① 商用システムにおける製品バグを起因とする運用停止時間の低減
② クラウドサービスにおける高稼働率の実現
③ 社内勉強会開催
④ 社内DXの推進
(3)リスク管理
<環境>
① 気候変動に影響する炭素排出量への取り組み
環境負荷軽減が配慮されたサーバーやネットワーク機器を利用するなどの購買管理を実施する。
② 自然災害の発生による事業の中断を回避するための取り組み
働く場所を限定しないリモートワークを取り入れ、災害の被害を逃れた社員で事業継続をするためのリソースを確保できる体制を整備している。サービス提供については、基本はクラウド上でデータを管理しており、ロケーションの拠点冗長については今後のサービスビジネスの伸びを考慮して検討を進める。
<社会>
① 労働管理への取り組み
問題を放置することによる人材流出や採用活動の停滞が発生しないような取り組みを実施する。
② 多様性な人材の確保
少子高齢化の進行による人材不足が懸念される中、多様な(シニア、国籍、性別、生活環境などを問わず)人材が働きやすい職場環境をつくる。
③ 人的資本の開発
採用方針の策定や社員育成プランの企画を行い人的資本の開発を行う。
④ 製品の安全性と品質管理への取り組み
製品・サービスの品質低下を防止するため、管理体制を徹底した取り組みを実施する。
⑤ プライバシーとデータセキュリティに関する取り組み
クラウドサービスの提供に伴うプライバシー情報や秘密情報の漏洩を防止するための対策を検討し実施する。
⑥ 責任ある投資判断
ソフトウェア開発や、事業買収の検討をする際には、十分な検討を行い、短期、中期、長期における影響について議論した上で責任ある投資判断を決定する。
<ガバナンス>
① 企業行動
コンプライアンスを意識した企業の社会的信頼への取り組みを実施する。
製品・サービスの品質や維持のために必要な従業員のスキルアップへの取り組みを実施する。
(4)指標及び目標
<環境>
① 取引先と環境負荷軽減の取り組み連携



<社会>
① ボイスコミュニケーション技術を活かしたサービス提供
② 働き方改革の推進






<ガバナンス>
① 従業員が倫理観をもって働ける環境作り
② 製品・サービスの品質維持、向上




(5)人的資本・多様性についての取り組み
<基本指針>
人的資本の活用にあたって、当社グループでは、社員との良好な信頼関係の構築が重要であると考えており、組織全体の成長を実現するため、従業員が高いパフォーマンスを発揮できる環境整備と社員教育の充実を図るとともに適材適所への配置と有機的な組織づくりを進めております。
<多様な働き方の推進・環境整備>
当社グループではリモートワークの推進、コアタイムの無いフレックス制度の導入、養育する子が中学校就学の始期に達するまで取得可能な短時間勤務制度、定年制度の廃止等により、個人の要望に沿った柔軟な勤務を支援しております。また女性活躍推進法に基づく取り組みを進めており、キャリアアップ支援やワークライフバランスの改善など、様々な取り組みを通じ、女性の活躍を促進しています。これは、企業としての社会的責任を果たすと同時に、多様な人材の確保という観点からも重要な取り組みであると考えています。
<社員教育の充実>
社員が自律的に、かつ能力が最大限に発揮されるために、個別の能力や志向に応じたスキルアップ支援を積極的に行っています。業務に関連するテーマについて各社員が主体となり講師を担う、社内勉強会「ビジネスビレッジ」を随時開催しております。また、社員の意見やフィードバックを取り入れることで、組織全体の成果を向上させることを目指しています。
(参考)女性活躍推進に関する取り組み
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指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度末) |
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当社グループの正規雇用者に占める 女性の割合 |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループの事業展開上、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また必ずしも事業上のリスクに該当しない事項であっても、投資判断上あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。当社グループではこれらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、すべてのリスク予測及びそれらに対する回避を保証するものではありません。また以下の記載は、当社株式への投資に関連するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点にご留意ください。
(1)市場環境の変化について
当社グループの主要事業である通信サービス分野においては、大手通信事業者、各種サービス事業者による価格競争や商品及びサービスの差別化、新たな事業者の参入による市場競争は激しさを増しており、各社の製品開発や技術革新に向けた取り組みは、一層加速しています。こうした中、当社グループが創業以来培ってきたボイスコミュニケーションの市場は電話でのコミュニケーションに限定しない、各種サービスと音声の連携の動きがますます広がっており、当社グループの事業機会は拡大しているものと認識しております。しかしながら、環境変化に当社グループが追随することができなかった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(2)新規事業について
当社グループは、将来的な事業拡大に向け、当社グループの技術や製品を活用した新規事業及び新サービスの開発に積極的に取り組んでおります。新規事業等の展開にあたっては、人材の採用、研究開発費や設備費への先行投資や、広告宣伝費等に追加的な支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。また事業方針の変更や事業の見直し、事業からの撤退等何らかの問題が発生する可能性も想定されます。
新規事業の拡大・成長が当初の予測どおりに進まない場合、それまでの投資負担等により当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
そして、これらの新規事業には不確定要因が多く、事業推進の過程において急激な市場・技術動向の変化、当社グループの経営方針や取引先企業との関係の転換等により、事業計画の変更を余儀なくされる可能性があります。
また、新規事業及び新サービスの展開に先立ち、製品開発やシステム構築を行う必要がありますが、これらの対応が人員不足等の原因により計画どおりに進捗せず、収益化が遅れる可能性があります。これらの場合は、それまでの投資負担等により当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(3)投資活動について
当社グループは将来に向けて社会と技術の変化に対応すべく、M&A等(買収、合併、事業の譲渡・譲受、事業投資)の投資活動は効果的な手段の一つと考えております。
これら投資活動の実施に当たっては十分に検討を行いますが、その想定したとおりに事業を展開できない場合、投資を十分に回収できないリスクや投資活動に伴い発生したのれん等の減損損失が発生するなどのリスク等が存在しており、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(4)知的財産権について
当社グループにとって知的財産権の保護は重要な課題であるとの認識に基づき、特許等知的財産権の出願・登録を積極的に行っております。なお、当連結会計年度末における当社グループが保有する特許は10件、出願中の特許は2件となっております。
第三者の知的財産権を侵害するリスクを最小限にするため、当社グループにおける知的財産分野の体制及び人員の強化を図り、最善の努力を行っております。しかしながら、当社グループの技術は広範囲に及ぶ一方、情報通信産業における知的所有権の調査・確認作業は繁雑であり、かつ今後に向けてどのような知的財産権が成立するかを把握することはきわめて困難であるため、現在、または将来に向けて当社グループが利用または提供する技術が、第三者の知的財産権を侵害しているという主張が当社グループに対してなされる可能性があります。そのような事態が発生した場合は、訴訟費用や損害賠償金の支払い等の発生により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(5)ソフトウェア資産の減損損失の可能性について
当社グループは通信システムに関わるソフトウェアを開発しており、現時点で適正と考えられるソフトウェア資産を計上しております。しかしながら今後、事業環境の変化により保有するソフトウェアの収益性が著しく低下し投資額を回収できなくなった場合には、減損損失が発生し当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(6)プロジェクトの納期変動リスクについて
当社グループでは、プロジェクトごとに売上規模や利益率が異なり、その売上計上時期によって業績が大きく変動します。想定外の仕様の変更など顧客側の都合等により契約上、当初予定されていた期間内に、顧客による検収を受けることができない場合、またシステムの不具合等の要因によりサービスの納品時期がずれ込んだ場合、当社グループの四半期ごとの業績が大きく変動する可能性があります。
(7)人材の確保について
当社グループの事業領域は情報通信分野における先端技術を必要とすることから、高度な専門知識と経験を有する人材の確保が経営上の重視すべき事項となっております。また、当社グループの人員は現段階では事業規模に対して適正と考えておりますが、効率性重視の観点から各組織に配置されている従業員数は最小単位となっており、業務によっては特定個人の属人性に依存している部分もあります。人材の確保や社内の情報・ノウハウ共有には十分な措置を講じておりますが、必要な人材を必要な時期に常に確保・維持できる保証はなく、人材に急な欠員が生じた場合、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)資金調達について
当社グループの中長期的な継続成長のために必要な重点事業分野については、新製品のための研究開発投資やM&A等による事業拡大のための投資活動、ソフトウェア及びハードウェア等のシステム投資等を継続する予定であり、そのための資金需要に対応していく必要があります。これらの資金需要に対し、環境変化によって十分な資金調達を行えない場合には事業機会を逸し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(9)大規模自然災害・感染症拡大等について
当社グループは大規模な自然災害や感染症が拡大した場合においても、平常時よりテレワークを推進することで事業継続が可能な体制整備を進めておりますが、当社グループや取引先の事業活動の停滞や、社会的な生産・物流の停滞に伴う調達への支障が生じるおそれがあり、これらが当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当社グループは、「第1 企業の概況 3事業の内容」に記載のとおり、事業分野を変更しております。 以下の前連結会計年度との比較は、変更後の区分に基づいております。
① 財政状態及び経営成績の状況
当社グループをとりまく情報通信分野は、様々な環境下の中で、ライフスタイルにあった働き方やコミュニケーションの手法を選択できるよう、企業による前向きな設備投資が進んでおり、クラウドサービスへの移行、DX(デジタル・トランスフォメーション)の推進による需要が増加しています。国内のICTサービス市場規模は、今後さらに拡大化されることが見込まれます。業界再編計画、通信の大容量化と通信サービス提供価格の変化、クラウドサービスの拡大、第5世代移動通信システム(5G)/IoTソリューションの開発・利用環境の整備、AI技術を活用したサービス提供など、引き続き構造変化が進行しています。
こうした状況の下、当社グループ活躍の場はさらに広がるものと期待して、以下のとおり事業を展開してまいりました。
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、3,277,838千円となり、前連結会計年度と比べ273,750千円の増加となりました。増加の主な要因は、現金及び預金が54,336千円、売掛金が75,243千円、原材料及び貯蔵品が61,847千円、製品が10,100千円、ソフトウエア資産が70,066千円(新規開発及び取得等により366,576千円増加、減価償却により296,510千円減少)、繰延税金資産が23,205千円増加したことによるものであります。減少の主な要因は、仕掛品が9,955千円、のれんが10,916千円、差入保証金が15,212千円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債の総額は、1,317,904千円となり、前連結会計年度と比べ109,987千円の増加となりました。増加の主な要因は、買掛金が31,773千円、賞与引当金が25,785千円、未払法人税等が28,805千円、流動負債「その他」に含まれる未払費用が13,444千円、未払消費税等が41,389千円増加したことによるものであります。減少の主な要因は、長期借入金及び1年内返済予定の長期借入金が42,776千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は1,959,934千円となり、前連結会計年度と比べ163,762千円の増加となりました。増加の主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が166,920千円増加したことによるものであります。減少の主な要因は、子会社株式の追加取得により資本剰余金が5,000千円減少したことによるものであります。
なお、2023年6月23日開催の第22回定時株主総会決議に基づき、資本準備金及び利益準備金の額の減少並びに剰余金の処分による欠損填補を行っております。これにより、資本剰余金が387,482千円減少し、利益剰余金が同額増加しております。
b.経営成績
当社グループの経営成績については、ボイスコミュニケーション事業において、通信事業者及び官公庁や鉄道会社向けに収益性の高い自社ソフトウェア販売の増加があったことや大手電力会社向けにサービス運用安定化を目的としたバックアップシステムの構築案件の獲得に加え、通信事業者向けのクラウドサービスの増加がありました。また、コミュニケーションDX事業において、前連結会計年度末にMVNO事業者向けに提供を開始したサブスクリプション型サービス販売が積み上がったことに加え、導入済みのモバイルコアシステムのセキュリティ強化や運用の簡易化に向けた更改対応を実施したこと、さらには、継続案件として企業DXに関連したシステム開発案件が増加したことなどにより、売上高は、3,522,737千円(前連結会計年度比15.4%の増加)となりました。
損益面につきましては、売上高の増加に伴う増益の影響に加え、ソフトウェア開発投資の減少、人件費や業務委託費が減少したほか、レイアウト変更による家賃等の減少に伴う固定費の削減により売上総利益は1,305,309千円(前連結会計年度比13.7%の増加)、営業利益は、181,391千円(前連結会計年度比479.6%の増加)、経常利益は、173,759千円(前連結会計年度比629.7%の増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は、166,920千円(前連結会計年度は、454,411千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
受注面につきましては、ボイスコミュニケーション事業において、保守サービスやクラウドサービスについて、堅調に受注が増加したことや、コミュニケーションDX事業において、サブスクリプション型サービスの受注獲得や企業DXに関連したシステム開発案件等を受注したことにより、受注残高は1,735,795千円(前連結会計年度比11.1%の減少)となりました。
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区分 |
第 22 期 (2023年3月期) |
第 23 期 (当連結会計年度) (2024年3月期) |
増減 |
増減率(%) |
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|
売上高 |
(千円) |
3,053,432 |
3,522,737 |
469,305 |
15.4 |
|
売上総利益 |
(千円) |
1,148,046 |
1,305,309 |
157,263 |
13.7 |
|
営業利益 |
(千円) |
31,298 |
181,391 |
150,092 |
479.6 |
|
経常利益 |
(千円) |
23,813 |
173,759 |
149,945 |
629.7 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△) |
(千円) |
△454,411 |
166,920 |
621,332 |
- |
|
受注残高 |
(千円) |
1,952,616 |
1,735,795 |
△216,821 |
△11.1 |
当連結会計年度における事業区分別の概況は、以下のとおりです。
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事業区分の名称 |
第22期 (2023年3月期) |
第23期 (当連結会計年度) (2024年3月期) |
増 減 |
増減率(%) |
|
ボイスコミュニケーション事業(千円) |
2,631,117 |
2,693,320 |
62,203 |
2.4 |
|
コミュニケーションDX事業(千円) |
422,315 |
829,417 |
407,101 |
96.4 |
〔ボイスコミュニケーション事業〕
ボイスコミュニケーション事業は、あらゆるビジネスユーザーの音声通信をサポートするソリューションやサービスを、通信事業者や多様な販売パートナーを通じて提供します。
当連結会計年度では、DX関連においては、働く場所の多様化に伴い、法人電話のスマートフォン需要が引き続き高い傾向にあります。仕事の電話をいつでもどこでも自身のスマートフォンで受発信できる「スマートフォン内線ソリューション」の販売が引き続き好調でした。
このようなDX化に向けた各企業の取り組みの中で、自社でクラウドサービスを展開される企業も増加傾向にあります。当社グループはこのような企業のパートナーとなり、自社のクラウドサービス基盤を提供し、導入に伴う環境構築や運用面でのサポートを行うことで堅調に実績を積み上げています。都築電気株式会社のクラウドPBXサービス「TCloud for Voice」もそのひとつであり、オンプレミスからクラウドサービスへ切り替える企業より好評をいただいております。
また、大手通信事業者を介してクラウドPBXの需要の拡大化による、当社グループのクラウドPBXサービス「U-cube voice」も様々な企業に継続的にご利用いただいています。運用の利便性を向上する新機能を追加したことにより、さらにサービスが充実しました。
そのほかに、コンビニエンスストア各拠点の店頭にあるマルチメディア端末を接続するSIPサーバーとして、ソフトウェア「NX-C1000 for Enterprise」を提供しました。こちらは多店舗展開をする小売業界のニーズに応えた事例となります。
当社グループのIPセントレックスサービスをご利用の大手電力会社向けには、災害等に直面した場合においても、安定した運用の継続を可能にするバックアップシステムを構築し、提供しました。導入実績のある顧客に向けたフォローとサポート体制の充実により、更なる案件の獲得へとつながった事例となります。
当社グループでは、クラウドサービスの展開を拡大している中で、利用者に安心してサービスをご利用いただける環境の整備を実施しています。それに伴い、サービス運用やシステム保守を担うシステムサポート部において、国際規格である情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証「ISO/IEC 27001:2013」ならびにISMSクラウドセキュリティ認証「ISO/IEC 27017:2015」を取得しました。自社クラウドサービスのセキュリティ維持・改善においてより高いレベルを推進し、一層信頼される企業を目指します。
PSTNマイグレーション関連においては、大手通信事業者に向けたソフトウェアSBC「NX-B5000」を販売しました。昨今では一般企業においても、働く場所やデバイスの多様化により、IP電話サービスの需要が拡大しています。これによるトラフィックの増加が見込まれており、マルチ接続ゲートウェイ「NX-B5000 for Enterprise」の販売へと繋がっています。大規模IVRサービス事業者の設備IP化に向けた販売や、クラウドPBXサービス事業者のゲートウェイとして、当社グループの通信事業者向けの製品の実績が評価され採用されました。これは、エンタープライズユーザーやコンタクトセンターでもIP化が加速している表れであり、引き続き顧客のニーズを捉えつつ、案件の獲得に取り組んでいきます。
音声認識&AIサービス関連においては、通話音声・録音音声をテキスト化することにより、コンプライアンス強化に向けて有効に活用できる音声認識BPOサービス「U-cube cogni」を、金融機関にご利用いただいています。
また、株式会社NTTドコモによる携帯電話向け通話録音サービスや、通信事業者向けに通話録音の自動テキスト化を実現する機能「U-cube rec」を提供しています。導入される際に、サーバーなどの設備やシステム管理者を用意する必要がなく、通話録音データの蓄積や管理をクラウド上で行い、セキュリティ対策も万全なサービスとなります。
そのほかに、全国に拠点を持つ官公庁や、複数の拠点を有する鉄道会社向けに、通話録音システム「LA-6000」を提供しました。通話の録音から録音データの収集・蓄積・管理まで実現することができ、全国の拠点展開を実施しています。
このように当社グループの「LA-6000」は、通話録音システムとして多くの実績がありますが、世の中のDX化が加速する中で活用方法の多様化に取り組んでいます。録音データの保存のみならず、複数の企業が提供している音声認識サービスのキャプチャサーバーとしても活用できることから、全国に拠点を持つ官公庁や保険会社のコールセンター向けに導入されました。音声を取得した後、音声認識エンジンに受け渡して音声をテキスト化することが可能となり、文字でいち早く情報を検索・分析することによって、多くのオペレーターを抱えるコールセンターなどの業務効率化に需要が見込まれます。
保守サポート・サービスにおいては、堅調に推移しています。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、2,693,320千円(前連結会計年度比2.4%の増加)となりました。
〔コミュニケーションDX事業〕
コミュニケーションDX事業は、オムニチャネルコミュニケーションやAI技術を活用して業務のDX化に貢献するクラウドサービス、音声認識/AIやCPaaSといった技術を活用したDXソリューション・サービス、等の研究開発活動に取り組んで様々な商用サービスを提供します。
DX/AIソリューション関連においては、業務のDX化が加速する中、電話システム機能の拡充、コールセンター支援、スマートフォンのアプリケーションに関するシステム開発などを実施し、当社グループの「U-cube connect」、「U-cube cogni」により音声認識後のデータの利活用を提供しています。さらに「U-cube connect」にSMS送信、FAX送受信機能を拡充したマルチチャネル対応IVRサービスも開始し、企業のDX導入に貢献します。
継続案件として、一般社団法人建設技能人材機構に、既存の電話システムと当社グループのオムニチャネルコミュニケーションサービス、CTIと連携したコールセンターソリューションを導入しています。簡易なお問い合わせに対しては、受付からSMS送信での情報提供まで自動で行えるようになり、スーパーバイザーによるモニタリングや対応履歴の管理・共有も高度化され、一層の顧客対応品質の向上と業務効率化を可能とするものとなります。
音声通話、メッセージング、ビデオ通話などのコミュニケーション機能をAPIで提供するクラウド型通信プラットフォームCPaaSを、自社で開発し「U-cube CPaaS」として提供しています。国内の通信事業者をはじめ多くの企業への導入実績を持つ当社グループのソフトウェアが活用されており、異なる事業者間やサービス間の相互接続性に優れたサービスです。NECネッツエスアイ株式会社が提供するAIによる電話取次ぎサービス「Canario」の基盤として採用されているほか、エクシオグループ株式会社と実施したServiceNowへの電話応対業務自動化ソリューション連携にも活用されており、パートナー企業を含む多くの企業で活用されています。当社グループの長年の通信事業者への導入実績から、安定した品質で永続的なサービスや、グローバルパートナーを含む主要なCPaaSプロバイダとの連携によって創造する新しい機能を、いち早く提供しています。またこれにより、ユーザー企業は日本のレギュレーションに沿った機能提供やサポートを受けながら、安定的で新規性の高い独自アプリケーションの開発を行うことができます。当社は、「U-cube CPaaS」を用いてパートナー企業が開発したクラウドアプリケーションを相互に利用できる会員制のコミュニティ「NextGen CaMP」を本年度より発足しており、先に記載した一般社団法人建設技能人材機構に向けたコールセンターソリューションも、まさにこの活動から生まれた都築電気グループとのコラボレーションによる導入事例となります。さらに、当該コミュニティの会員である株式会社電話放送局と協業して、IVRサービス事業の拡大とともに、CPaaSやAIを活用した新規ビジネスの共創に取り組んでいます。会員数の拡大及び会員間の交流や情報交換を通じて、国内市場におけるCPaaSの効果的な利用促進と市場のさらなる拡大を今後も目指していきます。
また、NTTタウンページ株式会社の「Digital Lead for DX SMSソリューション」に、当社グループの「U-cube connect」がIVRオプション機能として採用され、提供を開始しました。カスタマーセンターやコールセンター事業者などに対し、電話応対業務のDX化を推進する取り組みであり今後の需要がさらに見込まれます。
BSSソリューション関連においては、前期に引き続き、モバイル事業者のユーザー制御、サービス制御、接続先毎の通信速度を制御するシステムの運用支援を行っています。また、導入済みのモバイルコアシステムのセキュリティ強化や、運用の簡易化に向けた更改対応を実施しました。そのほかには、モバイルサービスの運用支援を手掛けてきた実績から、モバイル通信制御システムの更改案件やMVNO設備の運用支援を実施しています。
こうしたクラウドベースの業務支援システムの構築経験を活かし、企業における業務の実態を分析・整理した上で改善策を提案するなど、業務改善に向けたコンサルティングも行っています。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、829,417千円(前連結会計年度比96.4%の増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して54,336千円増加し1,262,035千円となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
a.営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により獲得した資金は484,283千円(前連結会計年度は、414,482千円の獲得)となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益173,759千円、減価償却費315,329千円、のれん償却額10,916千円、賞与引当金の増加25,785千円、仕入債務の増加31,773千円、未払又は未収消費税等の増減額41,680千円等によるものであります。主な減少要因は、売上債権の増加75,243千円、棚卸資産の増加61,992千円等によるものであります。
b.投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動により使用した資金は380,764千円(前連結会計年度は、608,905千円の使用)となりました。増加要因は、差入保証金の回収による収入15,212千円によるものであります。減少要因は、有形固定資産の取得による支出21,810千円、無形固定資産の取得による支出362,066千円、資産除去債務の履行による支出12,100千円によるものであります。
c.財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動により使用した資金は49,183千円(前連結会計年度は、155,702千円の獲得)となりました。増加要因は、長期借入れによる収入200,000千円によるものであります。主な減少要因は、長期借入金の返済による支出242,776千円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出5,000千円等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、音声を中心とする通信技術に関するソリューション提供を行う単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
a.生産実績
当社グループは、ソフトウェアの開発・販売を主たる事業としており、生産という概念は薄く、かつ受注形態が多岐にわたり生産実績の把握が困難であるため、生産実績の記載を省略しております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績を事業区分別に示すと、次のとおりであります。
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事業区分の名称 |
受注高 |
前年同期比(%) |
受注残高 |
前年同期比(%) |
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ボイスコミュニケーション事業(千円) |
2,499,320 |
- |
1,224,342 |
86.3 |
|
コミュニケーションDX事業(千円) |
806,596 |
- |
511,452 |
95.7 |
|
合計(千円) |
3,305,916 |
91.1 |
1,735,795 |
88.9 |
(注)当連結会計年度より事業区分を再編したことにより、受注高の前年同期との比較分析は行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業区分別に示すと、次のとおりであります。
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事業区分の名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
ボイスコミュニケーション事業(千円) |
2,693,320 |
102.4 |
|
コミュニケーションDX事業(千円) |
829,417 |
196.4 |
|
合計(千円) |
3,522,737 |
115.4 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 |
402,638 |
13.2 |
383,936 |
10.9 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、以下のとおりであります。
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、3,277,838千円となりました。流動資産は2,455,575千円となり、主な内訳は、現金及び預金が1,262,035千円、売掛金が967,341千円、製品が21,152千円、仕掛品が5,531千円、原材料及び貯蔵品が120,438千円であります。
固定資産は、822,262千円となり、主な内訳は、有形固定資産が52,436千円、のれんが9,096千円、ソフトウェア資産が651,923千円、差入保証金が44,518千円、繰延税金資産が58,360千円であります。
(負債)
当連結会計年度末における負債の総額は、1,317,904千円となりました。流動負債は、1,007,239千円となり、主な内訳は、買掛金が302,740千円、1年内返済予定の長期借入金が188,946千円、前受金が230,264千円であります。
固定負債は、310,665千円となり、主な内訳は、長期借入金が285,871千円であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、1,959,934千円となりました。主な内訳は、資本金が1,127,092千円、資本剰余金が686,740千円、利益剰余金が145,204千円であります。
b.経営成績
経営成績の状況に関する分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
c.経営成績に重要な影響を与える要因について
Ⅰ ソフトウェア資産の減損損失の可能性について
当社グループは通信システムに関わるソフトウェアを開発しており、現時点で適正と考えられるソフトウェア資産を計上しております。しかしながら今後、事業環境の変化により保有するソフトウェアの収益性が著しく低下し投資額を回収できなくなった場合には、減損損失が発生し当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
Ⅱ プロジェクトの納期変動リスクについて
当社グループでは、プロジェクトごとに売上規模や利益率が異なり、その売上計上時期によって業績が大きく変動します。想定外の仕様の変更など顧客側の都合等により契約上、当初予定されていた期間内に、顧客による検収を受けることができない場合、またシステムの不具合等の要因によりサービスの納品時期がずれ込んだ場合、当社グループの四半期ごとの業績が大きく変動する可能性があります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
キャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
Ⅰ 資金需要
当社グループの資金需要は主に大きく分けて運転資金需要と設備資金需要の2つがあります。
運転資金需要のうち主なものは営業活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための引合費用等の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、設備資金需要としましては、主に通信システムに関わるソフトウェアの開発費(外注費及び人件費等)によるものであります。
Ⅱ 財務政策
当社グループの財務政策は、資産構成や投資内容に最適な資金調達を行うことを基本方針としており、その運転資金及び設備資金について現状では自己資金又は長期を中心とする金融機関からの借入によって対応しております。今後も、調達手段の選択においては、資本コスト、資金調達環境及び条件、自己資本比率、手許流動性の水準などを総合的に勘案し、長期的な企業価値向上に最も資すると考える方法により対応してまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、決算日における財政状態及び報告期間における経営成績に影響を与える見積り・予測を必要としております。当社グループは、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき、継続してこの見積り・予測の評価を実施しておりますが、不確実性が伴うため、当初の見積り・予測数値と実際の数値に乖離が生じる可能性があります。
当社グループでは特に以下の会計方針を重要と認識しており、連結財務諸表作成において必要となる見積り・予測に影響を与える可能性があると考えております。
a.市場販売目的ソフトウェアの減価償却方法
市場販売目的のソフトウェアについては、見込販売収益に基づく償却額と残存見込販売有効期間(3年)に基づく均等償却額とのいずれか大きい金額を計上する方法により減価償却金額を算出しております。
この見込販売収益は、各ソフトウェアの製品カテゴリー別に、顧客単位で積み上げられた販売計画を基礎としております。
なお、販売実績収益又は将来の販売見込収益が当初見込と比べて大きく乖離した場合、追加の費用計上が必要となる場合があります。
また、今後、事業環境の変化により保有する市場販売目的ソフトウェアの収益性が著しく低下し投資額を回収できなくなった場合には、一時費用が発生し当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
b.繰延税金資産
当社グループの連結財務諸表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との間に生じる一時差異に係る税効果については、当該差異の解消時に適用される法定実効税率を使用して、繰延税金資産を計上しております。将来の税金の回収可能予想額は、当社グループの将来の課税所得の見込額に基づき算出されておりますが、将来の課税見込額の変動により、繰延税金資産が変動する可能性があります。
c.のれんの減損
のれんの償却方法については、投資効果の及ぶ期間にわたり、定額法により償却しております。なお、のれんの減損の兆候を識別した場合には、のれんの対象事業の将来キャッシュ・フローの見積りを毎期末実施しております。その結果、減損の必要性を認識した場合には、のれんの減損処理を行う可能性があります。
d.自社利用のソフトウェア及びソフトウェア仮勘定の減損
自社利用のソフトウェア及びソフトウェア仮勘定については、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上しております。なお、減損の兆候が識別され、将来の収益獲得見込額に基づき算定された割引前将来キャッシュ・フローと帳簿価額を比較し、減損損失を認識すべきであると判定された自社利用のソフトウェア及びソフトウェア仮勘定については、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
④ 経営上の目標の達成状況について
当連結会計年度の業績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」で述べたとおりとなりました。
また、現ステージにおいては事業の成長を持続することが重要であるとの経営判断に基づき、CAGR(年平均成長率)を重要な指標と位置付けておりますが、当連結会計年度においては15.4ポイント増加いたしました。引き続き、目標とする経営指標を達成できるよう改善に取り組んでまいります。
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契約会社名 |
相手方の名称 |
契約の名称 |
契約内容 |
契約期間 |
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株式会社ネクストジェン |
株式会社協和エクシオ (現エクシオグループ株式会社) |
資本・業務提携契約 |
2017年2月に締結した資本業務提携関係を強化・拡充し、今後さらに両社の協業体制を向上させることを目的とした資本業務提携 |
2019年12月20日から 2022年12月19日まで (以後1年ごとの自動更新) |
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株式会社ネクストジェン |
株式会社タカコム |
資本・業務提携契約 |
多様なサービスの提供、広範な顧客層の開拓による営業基盤の強化、新技術の開発による競争力の向上を目的とした資本業務提携 |
2019年12月20日から 2022年12月19日まで (以後1年ごとの自動更新) |
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株式会社LignApps (連結子会社) |
NECネッツエスアイ株式会社 |
業務提携契約 |
DX実現のためのCPaaS事業における両社の協業による付加価値の高いサービス、アプリケーションの共同開発や相互流通による拡販が進み、新規顧客や新たなマーケットの開拓を目的とした資本業務提携 |
2019年3月25日から 2024年3月24日まで (以後1年ごとの自動更新) |
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株式会社ネクストジェン |
都築電気株式会社 |
資本・業務提携契約 |
クラウドサービスの関連分野において、事業の加速・推進のための投資を実行し、事業基盤強化及び事業の拡大・成長に役立てることを目的とした資本業務提携 |
2021年12月24日から 2024年12月23日まで (以後1年ごとの自動更新) |
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株式会社ネクストジェン |
NECネッツエスアイ株式会社 |
資本・業務提携契約 |
開発したアプリケーションをパートナー会社間で相互利用・販売できるマーケットプレイスの仕組みを構築することを目的とした資本業務提携 |
2022年12月23日から いずれかの当事者が契約を解除するまで |
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株式会社ネクストジェン |
岩崎通信機株式会社 |
資本・業務提携契約 |
オンプレミス型製品に加えてCPaaSを使用したクラウドサービスの展開を行うにあたり、スピードアップを図ることを目的とした資本業務提携 |
2022年12月23日から 2025年12月22日まで (以後1年ごとの自動更新) |
当社グループの研究開発活動は、進化の早い通信ネットワークのインフラを中心に、通信システム・サービスに利用可能性のある最新技術の調査・研究、新製品の開発、既存製品の改良を行っております。
当連結会計年度における研究開発費は
(1)AIを活用したIVR高度化のための研究開発
・AIとIVRを組み合わせた製品化、サービス化を実現するための研究開発。既存IVR(U-cube connect)について、AIを活用して更なる高度化を目指す。
(2)クロスプラットフォームのフレームワークを利用したモバイルアプリの研究開発
・クロスプラットフォームのフレームワークを活用し、効率的なモバイルアプリ開発を実現するための研究開発であり、クラウドサービスを利用するユーザーのニーズに応えるべく、スピード感ある対応が必要不可欠となる。
(3)オンライン診療や受付業務支援のための研究開発
・病院の電話受付等、音声認識(U-cube cogni)とIVR(U-cube connect)を使った受付業務の自動化に関する研究開発を実施。AIだけで完結できる受付業務システム、生成AIの導入を検討。
(4)音声認識エンジンに関する研究
・静岡大学との産学連携をはじめとする音声認識エンジンに関する研究。複数エンジンについて定点観測を可能とする体制を構築し実施。
(5)クラウドサービスの高度化に向けた研究開発
・パートナービジネスにおいて、参入を検討される企業の障壁を取り除くため、属人性を排除した構築及びプロセスの自動化や標準化、また多種多様なクラウドサービスやユーザー数の増加に対応可能な課金処理システムなどの研究開発を実施。