第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものである。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「信用日本一」の社是のもと、「人・仕事・会社を磨き続け、建設事業を通じて、社会に貢献する。」を企業理念に据えている。質素で堅実な社風を守り、地道に本業に取組みながら長い歴史を繋いできた。今、新しい時代を迎え、様々な環境の変化が起こり、人々の生活も仕事も価値観も大きく変わりゆく中、基本を大切にして幾多の時代を乗り越えた経験を活かし、当社グループの強みを磨き続け、先進的手法への対応に注力し、会社の基盤を拡充させることによって、当社グループが更に成長し、社会貢献と安定した経営を持続していくことを目指す。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、営業利益を重視し、更なる利益の向上と財務体質の強化を目指して経営努力していく。

 

(3)事業環境及び中期経営計画

世界的な新型コロナウィルスの流行は、世界経済を大きく、長く停滞させると同時に、私たちの意識と生活を大きく変えた。また、世界では人口が増え続け、気候変動など環境問題は喫緊の課題であり、持続可能な社会の実現へ向けた具体的な取り組みが必要とされている。一方で、日本の少子高齢化の傾向は今後も続き、労働人口の減少は避けることが出来ない。多様性と包摂性を理解し、働き方を変えていかなければならない。コロナ禍を契機に社会のデジタル化も一気に加速している。このような事業環境のなかで、強靭な企業体質と状況に応じ変化を遂げる柔軟な思考を身につけるため、当社グループは以下のとおり中期的な経営戦略を掲げている。

①持続的成長の実現

デジタル社会への対応、カーボンニュートラルへの取り組み、働き方改革の実行。持続可能な社会の実現に向けた具体的取り組みにより、時代の要請に応え、持続的成長を実現する。

②本業の磨きこみ

社寺技術の維持発展、受注力強化、安全対策の徹底、品質技術の向上を実践し、顧客満足度を上げることにより、競争力を高め、お客様に選ばれ続ける企業を目指す。

③450周年へ基盤拡充

コンプライアンス意識・品格・技術知識を備えた人材の育成。資産運用の効率性、合理性を高めたポートフォリオを形成し、事業基盤充実により、不動産収益の増強を図る。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(3)に記載の、中期経営計画を実行していく上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりである。

①持続的成長の実現

・デジタル社会への対応

・カーボンニュートラルへの取り組み

・働き方改革

②本業の磨きこみ

・社寺を磨く

・業績向上へ向けた取り組み

・労働災害の撲滅

・施工品質の向上

③450周年へ基盤拡充

・コンプライアンスの徹底

・人材育成

・不動産有効活用と収益物件の購入

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものである。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、気候変動をはじめとするサステナビリティに関連する方針を策定する機関として、社長を委員長とした経営層をメンバーとする「サステナビリティ委員会」を設置している。

「サステナビリティ委員会」は原則年1回開催し、気候関連課題への対応、サステナビリティ推進に関わる具体的方針の策定、社内啓発・教育および中期経営計画への反映等に関する事項の審議決定を行っている。決定事項については必要に応じて経営会議で審議・検討され、重要事項については取締役会に付議し、決議される。

 


 

(2)戦略

気候関連のリスク及び機会に関する分析及び方針、戦略

気候変動によって自社が被るリスクと機会の特定及び評価と対応策の検討にあたり、当社グループではIPCCやIEAが公表するシナリオを用いて、産業革命期頃の世界平均気温と比較して2100年頃までに4℃上昇する4℃シナリオと、パリ協定並びにCOP26での世界的合意を踏まえた1.5℃目標の達成を前提として、気温上昇が抑制される1.5℃シナリオ(2℃未満シナリオを含む)の2つのシナリオを設定し、それぞれの世界観における2030年時点での当社への影響について分析を実施した。

4℃シナリオにおいては台風や大雨をはじめとする異常気象の激甚化に伴う物理的リスクが拡大することによる直接的な被害が想定されるほか、慢性的な気温上昇により屋外での労働環境悪化による熱中症リスクの拡大や生産効率の低下をはじめとした影響を認識している。一方で、気象災害の被害防止・抑制を見据えた、防災減災工事需要の拡大も見込んでおり、事業機会ひいては社会貢献の可能性の1つとして捉えている。

1.5℃シナリオでも4℃シナリオと同様に物理的リスクが拡大する可能性も確認しているほか、脱炭素化への移行に向けた取り組みによる影響が大きくなると想定しており、炭素税の導入や再生可能エネルギー発電の導入による電力価格の高騰をはじめとした支出増加、サプライチェーンにおける同様の影響からのセメントや鉄原材料のコスト増が想定される。一方で、省エネ・再エネ需要の拡大からZEBの普及や再エネ関連工事の増加が見込まれ、積極的な関連工事への参画による事業機会を確認している。

 

項目

2030年における影響

現在の取り組み、対応方針

種類

事象

4℃

1.5℃
(2℃未満)

シナリオ

シナリオ

移行リスク

リスク

政策・規制

日本国内での炭素税の導入による支出増加
建設リサイクル法など資源循環規制の強化による対応コスト発生

・建設時のCO2排出量の削減目標設定及び削減努力の推進
・全事業所及び作業工程における省エネ化の実施
・一部の拠点への非化石証書付きの電力の導入
・建設副産物の低減
・3R運動、ゼロエミッション活動の実施

市場

石油需要の変化や炭素税の導入による原材料価格の高騰
原油価格の上昇による燃料コストの高騰

・グリーン調達、グリーン購入の実施

機会

製品/サービス

ZEB、ZEH需要の拡大
再生可能エネルギー由来発電需要の拡大

・バリューチェーンを通じたZEB・ZEH-Mの推進
・大規模木造技術、CLT工法の推進
・オンサイトPPAモデル事業の拡大

物理リスク

リスク

急性

自社拠点の被災による損害及び損失の発生
サプライチェーンの寸断
台風や豪雨・豪雪による工期の遅れ、営業停止

・事業継続計画の策定と見直し

慢性

熱中症危険の増大と屋外作業効率の低下
豪雨日数の増加に伴う工事遅延

・安全衛生方針の策定と管理徹底

機会

レジリエンス

防災・減災・復旧工事など適応ニーズの拡大
気象災害等による災害復旧への貢献

・補強、環境整備工事の請負
・復興工事の積極的参画

参考元シナリオ

4℃シナリオ

・IPCC AR5 RCP8.5, RCP6.5
・IEA WEO2021 Stated Polices Scenario
・The 2°Investing Initiative/Limited Climate Transition Scenario

1.5℃(2℃未満)シナリオ

・IPCC AR5 RCP2.6
・IEA WEO2019 Sustainable Development Scenario
・IEA WEO2021 Net Zero Emissions by 2050 Scenario
・The 2°Investing Initiative/Ambitious Climate Transition Scenario

評価指標

大:中期経営計画における2024年度の営業利益目標に対して、±3%以上の影響があるもの
中:中期経営計画における2024年度の営業利益目標に対して、±3%未満の影響があるもの
小:影響無し、もしくは極めて影響が小さいもの
※定性的な分析を行っている項目についても、上記閾値をもとに各参考元シナリオで報告されているパラメータ等を参考にインパクト規模を想定して評価。

 

 

これら分析結果に対する現在の取り組み状況として、リスクの回避及び緩和に向けた取り組みでは、カーボンニュートラルへの取り組みとして建設時のCO2排出量の削減やグリーン調達、本社ビル照明のLED化に随時取り組んでいるほか、2021年度には当社初のZEH-M建物が完成し、一般社団法人環境共創イニシアチブが公募する「ZEHデベロッパー」に登録されている。また異常気象災害の激甚化による作業所の防災対策や従業員の安全管理についてはBCP対策の策定と定期的な見直し、大規模災害を想定した定期的な訓練を実施するなど、対策を強化している。今後は中期経営計画でも見据えるカーボンニュートラルの達成に向けてより環境配慮の取り組みを強化すると共に、気候変動に対するレジリエンス性の強化に努める方針である。なお、年次での個別具体的な取り組みについては統合報告書にて報告している。
 

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、従業員が会社の中長期的な企業価値の向上を支える重要な存在であるとの認識にたち、女性・外国人等の多様な人材が最大限の能力を発揮できる職場環境や企業風土の醸成に努めている。また、企業行動憲章において、「あらゆる差別を行わず、等しく能力開発の機会、能力発揮の場を提供し、これを公正に評価、処遇することとしており、働き甲斐のある環境を確保します。」と定め、異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観を持つ人材の確保に努めている。

尚、女性管理職(役職者)は現在3名在席している。今後も企業行動憲章の方針に則り、特定の区分での人数等の具体的な目標は設定せず、従業員が最大限の能力を発揮できる職場環境の整備に努め、意欲と適性のある従業員を育成し、能力のある人材を管理職に登用していく方針である。

 

(3)リスク管理

当社グループでは、気候変動をはじめとしたサステナビリティに関するリスクの特定と対策の立案について、サステナビリティ委員会がその一連のプロセスを統括管理している。気候変動リスクの特定については、シナリオ分析を通じて特定したリスクを、SDGsに纏わる諸課題とも相対的に評価した上で取締役会に報告することとしている。特定された重要課題の管理にあたっては、サステナビリティ委員会が事務局となり、経営会議を通じて各部門や各グループ会社へ指示監督とモニタリングを行うことで、リスクの未然防止や損失の最小化に努めている。

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、気候関連のリスク及び機会に関する指標及び人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関する指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結子会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難である。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む当社のものを記載している。

 

気候関連のリスク及び機会に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

当社では、中期経営計画における重点項目の1つであるカーボンニュートラルの達成を見据え、部門別に年度ごとの目標値を設定して取り組んでいる。CO2排出量の削減についてはパリ協定を踏まえ、政府並びに国内経済界の動向と足並みを揃える形で全体目標を設定し、各部門の業務特性に合わせたアプローチによる目標達成を目指している。なお、中長期的な目標として、2030年に施工部門のCO2排出量を2013年度比40%削減(当社2013年度7,503t-CO2)を設定している。年度ごとのCO2排出量の削減目標とその進捗については、統合報告書にて年次で報告を行っている。今後は、CO2排出量の削減目標を当社の環境経営の指標の1つとして、その進捗を追っていく方針である。なお、直近年度のScope1,2は以下のとおりである。
 

Scope1,2(t-CO2)

 

2023年度

Scope1(t-CO2)

4,425

内訳

作業所

4,337

事業所

88

Scope2(t-CO2)

907

内訳

作業所

765

事業所

142

Scope1+2(t-CO2)

5,332

 

※Scope1,2算出においては建築工事を対象としている。

 

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

1.4

男性労働者の育児休業取得率

2026年3月まで8

14.3

労働者の男女の賃金の差異

58.0

技術系女性社員の採用

2026年3月まで8

3

看護休暇取得者の割合

2026年3月まで8

32.2

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものである。

 

(1)建設業に特有であり、当社グループが直面する可能性があるものについて

①受注価格競争リスク

建設業においては、建設工事を発注者から個別に受注し生産するという構造的な特徴から、過当競争による競合他社との受注価格競争が激化した場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。

②取引先の信用リスク

建設業においては、発注者との一契約当たりの金額が大きく、また、代金回収までに長期間を要するため、工事代金を受領する前に取引先が支払不能に陥った場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。

③建設資材価格の高騰リスク

建設業においては、受注から完成引渡しまで長期間を要するため、建設資材の価格が高騰した際、契約を締結した工事の請負金額に反映することが困難な場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。

④製品の欠陥リスク

品質管理には万全を期しているが、瑕疵担保責任及び製造物責任による損害賠償が発生した場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。

⑤工事施工中の事故のリスク

工事施工にあたり安全管理には万全を期しているが、予期せぬ事故が発生した場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。

⑥法的規制等に係るリスク

当社グループの主要事業である建設事業においては、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、労働安全衛生法、独占禁止法等によるさまざまな法的規制を受けており、これらの法規の改廃や新たな規制等が行われた場合、又は当社グループにおいて法令に抵触した場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。

⑦大規模自然災害等に係るリスク

地震、津波、風水害等の自然災害や、感染症の大流行が発生した場合には、工事施工中の物件や、当社グループが保有する資産及び当社グループの役員、従業員に被害が及び、損害が発生する可能性がある。

 

(2)主に経済情勢の著しい変化に伴い顕在化する可能性があるものについて

①資産保有リスク

当社グループが保有している不動産及び市場性のある株式の株価が大幅に下落した場合、減損又は評価損が発生し、経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。

②退職給付債務

年金資産の時価が下落した場合、年金資産の運用利回りが低下した場合、割引率等の退職給付債務算定に用いる前提に変更があった場合には、将来期間において認識される費用及び債務に影響を及ぼす可能性がある。

③シンジケーション方式のコミットメントライン契約

当社は、シンジケーション方式のコミットメントライン契約を締結しているが、この契約には連結・単体共に株主資本の金額を、基準とする年度の決算期末日における株主資本の金額の80%以上を各年度の決算期末日において維持すること。連結、単体の経常損益が2期連続して損失とならないこととする財務制限条項が付されており、これに抵触した場合には借入金の返済を求められる可能性がある。

④繰延税金資産

当社グループの繰延税金資産は、将来の課税所得を合理的に見積り回収可能性を判断して計上しているが、今後将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じ、繰延税金資産の取崩が発生した場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

 ① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍脱却により経済活動の正常化が進む中、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動などの影響に注意が必要なものの、設備投資は持ち直し、雇用情勢は改善の動きがみられるなど、景気は緩やかに回復している。
  建設業界においては、公共投資は底堅く推移しているものの、資機材価格の高止まりや建設技能者の労務費の上昇等による建設コスト高騰の影響により、依然として先行き不透明な事業環境が続いている。

 このような経済情勢の中で、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなった。

連結売上高については、前連結会計年度比9.4%増969億69百万円となった。

利益については、営業利益は前連結会計年度比88.3%減2億64百万円、経常利益は同71.6%減7億67百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同31.8%減11億61百万円となった。

セグメントごとの経営成績は以下のとおりである。

(建設事業)

完成工事高については、前連結会計年度比11.2%増946億26百万円となった。利益については、完成工事利益率の低下等によりセグメント利益(営業利益)は同74.1%減6億4百万円となった。

(不動産事業等)

不動産事業等売上高は、連結子会社における開発型不動産売上の減少により、前連結会計年度比34.5%減23億42百万円となった。利益については売上高の減少により、セグメント利益(営業利益)は同18.4%減6億25百万円となった。

 

当連結会計年度末における資産合計は、未収入金が32億62百万円、投資有価証券が34億60百万円増加したこと等により前連結会計年度末に比べ9.2%増775億64百万円となった。

負債合計は、電子記録債務が33億51百万円、未成工事受入金が16億81百万円減少する一方、支払手形・工事未払金等が28億22百万円、短期借入金が50億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ11.5%増299億45百万円となった。

純資産合計は、利益剰余金が配当金の支払により8億5百万円減少する一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により11億61百万円、その他有価証券評価差額金が24億12百万円、退職給付に係る調整額が10億31百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ7.8%増476億19百万円となった。

これにより当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.8ポイント低下し61.4%となった。

 

 

 ② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の主な増減状況については、営業活動による資金の減少が161億90百万円前連結会計年度は71億80百万円の増加)、投資活動による資金の減少が18百万円前連結会計年度は5億43百万円の減少)、財務活動による資金の増加が38億4百万円前連結会計年度は9億23百万円の減少)となり、これにより資金は前連結会計年度末に比べ124億3百万円減少(前連結会計年度は57億13百万円の増加)し、85億96百万円(前連結会計年度末は210億円)となった。

各活動における主な増減の内訳については、次のとおりである。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益16億97百万円を計上する一方、売上債権の増加、未成工事受入金の減少、未払消費税等の減少、未収入金の増加により156億60百万円減少し、営業活動による資金は161億90百万円の減少となった。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金は、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入により18億28百万円増加する一方、有形固定資産の取得による支出により6億40百万円、有価証券及び投資有価証券の取得による支出により8億73百万円減少したこと等により、18百万円の減少となった。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金は、配当金の支払により8億5百万円、自己株式の取得により3億53百万円減少する一方、短期借入金が50億円増加したこと等により38億4百万円の増加となった。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

  a.受注実績

 

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

    至 2023年3月31日

(百万円)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

    至 2024年3月31日

(百万円)

建設事業

 

93,312

 

94,814

1.6%増

 

 

 

(注) 1 建設事業以外の受注高については、当社グループ各社の受注概念が異なるため記載していない。

2 セグメント間の取引については相殺消去している。

 

 b. 売上実績

 

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

(百万円)

建設事業

 

85,086

 

94,626

11.2%増

 

 

不動産事業等

3,578

 

2,342

34.5%減

 

 

合計

 

88,664

 

96,969

9.4%増

 

 

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去している。

2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。

3 前連結会計年度及び当連結会計年度において、売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。

 

 

なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

 a. 受注高、売上高及び次期繰越高

 

期別

種類別

前期繰越高
(百万円)

当期受注高
(百万円)


(百万円)

当期売上高
(百万円)

次期繰越高
(百万円)

前事業年度

(自 2022年

4月1日

至 2023年

3月31日)

建設事業

建築工事

86,367

90,432

176,800

82,583

94,217

土木工事

1,676

2,484

4,161

2,239

1,922

88,044

92,917

180,961

84,822

96,139

不動産事業等

566

1,545

2,112

1,589

522

合計

88,611

94,463

183,074

86,411

96,662

当事業年度

(自 2023年

4月1日

至 2024年

3月31日)

 

建設事業

建築工事

94,217

91,162

185,379

91,789

93,590

土木工事

1,922

1,667

3,590

1,530

2,060

96,139

92,830

188,970

93,319

95,650

不動産事業等

522

1,693

2,216

1,533

682

合計

96,662

94,523

191,186

94,853

96,333

 

(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の変更により契約金額に増減のあるものについては、当期受注高にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。

2 次期繰越高は(前期繰越高+当期受注高-当期売上高)である。

 

b. 受注工事高の受注方法別比率

工事受注方法は、特命と競争に大別される。

 

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

建築工事

16.2

83.8

100

土木工事

39.0

61.0

100

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建築工事

18.9

81.1

100

土木工事

18.9

81.1

100

 

(注) 百分比は請負金額比である。

 

 

c. 売上高

 

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

建設事業

建築工事

6,592

75,990

82,583

土木工事

1,761

478

2,239

8,353

76,468

84,822

不動産事業等

1,589

1,589

合計

8,353

78,057

86,411

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建設事業

建築工事

14,797

76,991

91,789

土木工事

1,207

322

1,530

16,005

77,314

93,319

不動産事業等

1,533

1,533

合計

16,005

78,847

94,853

 

(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。

前事業年度

中央区

中央区立本の森ちゅうおう(仮称)建設工事(建築工事)

東京都

環2築地虎ノ門トンネル仕上げ工事その2

(2一-環2築地・虎ノ門)

多賀城市

特別史跡多賀城南門等復元工事

 

当事業年度

中央区

中央区晴海特別出張所(仮称)等複合施設建設工事
(建築工事)

宗教法人大本山總持寺

大本山總持寺仏殿ほか2件・仮真殿等保存修理工事

垂井町

(仮称)旧庁舎跡地にぎわい創出施設整備事業

 

2 前事業年度及び当事業年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。

 

d. 次期繰越高(2024年3月31日現在)

 

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

建設事業

建築工事

20,606

72,983

93,590

土木工事

2,060

2,060

22,667

72,983

95,650

不動産事業等

48

634

682

合計

22,715

73,618

96,333

 

(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。

高野町

高野町学びの交流拠点整備事業

2024年7月

完成予定

戸田市

新曽小学校教室棟(含給食調理場)増築等工事

2025年1月

白川町

白川町新庁舎建設工事

2025年9月

 

 

 

 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものである。

 

 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比9.4%増969億69百万円となった。その内訳は建設事業は同11.2%増946億26百万円、不動産事業等は連結子会社における開発型不動産売上の減少により同34.5%減23億42百万円となり、売上高の97.6%を建設事業が占めている。

利益面については、完成工事利益率の低下等により完成工事総利益は前連結会計年度比28.9%減40億4百万円となり、不動産事業等総利益は売上高の減少により同26.1%減7億7百万円となったこと等により、営業利益は同88.3%減2億64百万円となった。また、経常利益は同71.6%減7億67百万円となった。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は同31.8%減11億61百万円となった。また1株当たり当期純利益金額は39円85銭、自己資本利益率は2.5%となった。

当社グループは、2022年度(2023年3月期)を初年度とする3ヵ年の「中期経営計画〈2022-2024〉」を策定している。

当社グループの中期経営計画は、企業理念である「人・仕事・会社を磨き続け、建設事業を通じて、社会に貢献する。」の実現に向けて、具体的かつ効率的に行動するための施策を次の通り掲げている。

Ⅰ.方針・施策

新たな中期経営計画では、経営方針を「会社を磨き、新たなステージへ」と位置づけ、具体的な経営施策は次の3つを柱に取り組んでいく。

①持続的成長の実現

②本業の磨きこみ

③450周年へ基盤拡充

Ⅱ.基本数値目標

当社グループの2024年度基本数値目標は次の通りである。

①業績

売上高 900億円

営業利益 30億円

②株主還元

配当性向 40%程度(下限10円)

③投資計画

2022-2024年度 80億円

当社グループは目標の達成に向け一丸となって取り組んでまいる所存である。

当連結会計年度末における資産合計は、未収入金が32億62百万円、投資有価証券が34億60百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ9.2%増775億64百万円となった。

負債合計は、電子記録債務が33億51百万円、未成工事受入金が16億81百万円減少する一方、支払手形・工事未払金等が28億22百万円、短期借入金が50億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ11.5%増299億45百万円となった。

純資産合計は、利益剰余金が配当金の支払により8億5百万円減少する一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により11億61百万円、その他有価証券評価差額金が24億12百万円、退職給付に係る調整額が10億31百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ7.8%増476億19百万円となった。

これにより当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.8ポイント低下し61.4%となった。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。

(建設事業)

完成工事高については、前連結会計年度比11.2%増946億26百万円となった。利益については、完成工事利益率の低下等によりセグメント利益(営業利益)は同74.1%減6億4百万円となった。

資産については、受取手形・完成工事未収入金等の増加及び未成工事支出金の増加等によりセグメント資産は前連結会計年度末に比べ54.4%増の365億70百万円となった。

(不動産事業等)

不動産事業等売上高は、連結子会社における開発型不動産売上の減少により、前連結会計年度比34.5%減23億42百万円となった。利益については売上高の減少により、セグメント利益(営業利益)は同18.4%減6億25百万円となった。

資産については、販売用不動産の減少等によりセグメント資産は前連結会計年度末に比べ4.5%減の135億64百万円となった。

 

 ② 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度における資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローでは、161億90百万円の減少となった。その主な要因としては、税金等調整前当期純利益16億97百万円を計上する一方、売上債権の増加、未成工事受入金の減少、未払消費税等の減少、未収入金の増加により156億60百万円減少したこと等による。

投資活動によるキャッシュ・フローでは、18百万円の減少となった。その主な要因としては、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入により18億28百万円増加する一方、有形固定資産の取得による支出により6億40百万円、有価証券及び投資有価証券の取得による支出により8億73百万円減少したこと等による。

財務活動によるキャッシュ・フローでは、38億4百万円の増加となった。その主な要因としては、配当金の支払により8億5百万円、自己株式の取得により3億53百万円減少する一方、短期借入金が50億円増加したこと等による。

以上により、現金及び現金同等物の期末残高は、124億3百万円減少し、85億96百万円となった。 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につき、運転資金のうち主となるものは、工事施工に伴う材料費、外注費等の営業費用であり、これらを主に手元のキャッシュ及び営業活動によるキャッシュ・フローにより賄っている。また、安定的かつ機動的な資金調達基盤を確保するため、取引銀行5行と総額60億円のコミットライン契約を結んでいる。

 

 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたり、過去の実績や連結決算日現在の状況を踏まえた合理的な要因に基づき見積りを行っている。これらの見積りには特有の不確実性を伴うため、実際の結果と異なることがある。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。

 

5 【経営上の重要な契約等】

特記事項なし。

 

6 【研究開発活動】

特記事項なし。