(1) 経営方針及び経営戦略等
当社グループは、「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」というコーポレートパーパスを定めた。これは長年にわたり掲げてきた企業ビジョン「人々の生活を豊かに」を踏まえ、創業以来大切にしてきた“他がやらぬことをやる”という精神を引き継ぎながら、日産は何のために存在するか、どのように役割を果たすのか、企業としての存在意義を明確化したものである。そして、サプライヤーや販売会社の皆様との関係をさらに強化し、共にビジネスモデルを発展させていく。
グローバルなあらゆる事業活動を通じて企業として成長し、経済的に貢献すると同時に、世界をリードする自動車メーカーとして、社会が直面する課題の解決に貢献することも私たちの使命である。日産は、お客さま、株主、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーを大切に思い、将来にわたって価値ある持続可能なモビリティの提供に努める。さらに、持続可能な社会の発展に貢献し、「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタリティ」社会を目指し、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現することを目標としている。
この目標に向け、2021年11月には、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表し、2030年度に向けて、当社が進むべき道を示した。
さらに、2024年3月に、自社の価値と競争力を向上させる新たな経営計画「The Arc」を発表した。当社は新型車の積極的な投入、電動化の推進、開発・生産方式の革新、新技術の採用や戦略的パートナーシップなどで構成される本計画により、販売台数の増加と収益性の向上を目指す。
本計画は、2020年度から2023年度にかけて実行した事業構造改革「Nissan NEXT」と長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の架け橋となるもので、2024年度から2026年度までの中期の取り組みと、2030年度までの中長期の取り組みから構成されている。
中期の取り組みとしては、地域毎に最適化した戦略を通じて販売台数を拡大し、電動車両とエンジンを主動力源とするICE車のバランスの取れたポートフォリオ、主要市場での販売増、財務規律の徹底によって、事業基盤を堅固なものとする。続いて、中長期的には、電動化を加速させ、パートナーシップや新たな収益機会を活用しながら最終的な目標達成に向けて取り組む。そして、2026年度末までに年間販売台数を100万台増加させ、営業利益率は2026年度までに6%以上、2030年度には8%を目指す。
<バランスの取れた商品ポートフォリオ>
当社は今後3年間で30車種の新型車を投入するが、そのうち16車種を電動車両、14車種をICE車とし、バランスの取れたポートフォリオで多様なお客さまのニーズと市場毎に異なる電動化のペースに対応する。2024年度から2030年度の間には、計34車種の電動車両を投入してすべてのセグメントをカバーし、グローバル全体における電動車両のモデルミックスは2026年度に40%、2030年度には60%になる見込みである。
<市場毎に最適化された戦略>
主要市場において2026年度までに実行する主な取り組みは以下のとおりである。
アメリカズ
- 地域全体の販売台数を2023年度比で33万台増加させ、米国では統合型カスタマーエクスペリエンスの向上のために2億米ドルを投資
- 米国とカナダで、7車種の新型車を投入
- 米国で乗用車モデルラインアップの78%を刷新し(日産ブランド)、e-POWERとプラグインハイブリッドを搭載したモデルを投入
中国
- 日産ブランド車のラインナップの73%を刷新し、新エネルギー車8車種を投入(4車種の日産ブランド車を含む)
- 販売台数を20万台増加し、2026年度に年間販売台数100万台を目指す
- 2025年から輸出を開始し、第一段階として10万台レベルを目指す
- 継続して合弁パートナーと生産能力を最適化
日本
- 乗用車モデルラインアップの80%を刷新し、5車種の新型車を投入
- 電動車のモデルミックスを70%へ向上(乗用車)
- 販売台数を2023年度比で9万台増加させ、2026年度に年間60万台の販売を目指す
アフリカ、中東、インド、欧州、オセアニア
- 地域全体で販売台数を2023年度比で30万台増加
- 欧州:6車種の新型車を投入。EVの販売構成比を40%へ向上(乗用車)
- 中東:5車種の新型SUVを投入
- インド:3車種の新型車を投入し、10万台レベルの輸出を目指す
- オセアニア:1トンピックアップとCセグメントクロスオーバーEVを投入
- アフリカ:2車種の新型SUVを投入。AセグメントのICE車を拡大
<EVの競争力>
これらの新型車を投入していくため、当社は新たなアプローチで、手頃な価格で収益性の高いEVの商品化を実現していく。複数のEVのファミリー開発、パワートレインの一体化、次世代モジュラー生産、グループソーシング、バッテリーの革新などにより次世代EVのコストを30%削減(現行アリア比)し、2030年度までにEVでICE車と同等のコストとすることを目指す。
ファミリー開発では、メインモデルをベースに開発する後続モデルの開発費を50%、トリム部品のバリエーションを70%削減し、開発期間を4ヶ月間短縮する。また、次世代モジュラー生産方式を採用することで、車両生産ラインを短縮し、台当たりの生産時間を20%短縮していく。
また、革新的な生産技術で次世代のクルマづくりを行うとともに、カーボンニュートラルの実現に貢献するニッサン インテリジェント ファクトリーを国内外の工場に拡大し、2026年度から2030年度にかけて、日本の追浜工場と日産九州、英国のサンダーランド工場、米国のキャントン工場とスマーナ工場で導入を開始する。世界初の電気自動車生産ハブEV36Zeroについては、英国のサンダーランド工場から、米国のキャントン工場、デカード工場、スマーナ工場、日本の栃木工場、日産九州に2025年度から2028年度にかけて採用していく。
<新技術>
「The Arc」の計画下では、知能化技術もさらに進化させ、高速道路から一般道、敷地内、最終目的地までドアツードアの自動運転技術を実現する次世代プロパイロットを投入する予定である。また、当社はさまざまなお客さまのニーズに対応する多様なEVを提供するため、ニッケル、コバルト、マンガン(NCM)リチウムイオンバッテリーを進化させ、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーと全固体電池(ASSB)を投入し、多様なバッテリーをそのラインナップへ追加していく。NCMリチウムイオンバッテリーでは、アリア比で急速充電時間を50%削減し、エネルギー密度は50%向上させる。国内で開発、生産するLFPバッテリーはサクラ比でコストを30%削減する。これらの進化したNCMリチウムイオンバッテリー、LFPバッテリー、全固体電池を搭載したEVは、2028年度に投入する予定である。
<戦略的パートナーシップ及び新たなビジネス機会>
当社は競争力を維持し、グローバルな商品ポートフォリオや技術を提供するために、戦略的にパートナーシップを活用していく。欧州、ラテンアメリカ、ASEAN、インドにおいては、ルノー及び三菱自動車工業株式会社とのアライアンスを引き続き活用する。また、中国の現地資産をフルに活用し、中国とその他の国々のニーズを満たしていく。日本と米国においては、新たなパートナーシップを模索していく。それらのスマートパートナーシップの活用、EVの競争力向上、イノベーションによる差別化、新たな売上の機会などを通じて、EV移行と長期的な収益ある成長を目指す。
<財務規律の徹底:レジリエントで収益性の高い業績を実現>
当社は財務規律を徹底しながら、研究開発費と設備投資額を総売上高の7%から8%の範囲に維持し、バッテリー設備へは4,000億円以上を投資することを計画している。また、電動化への投資は段階的に増加し、2026年度までに全体の70%以上を占めるようになる。
これらの投資を適切に管理することで、すべてのステークホルダーに価値を提供していく。「The Arc」は、当社の競争力を強化し、持続可能な収益性を実現するための包括的な計画である。本計画を通じて、「Nissan Ambition 2030」を実現するために必要な確固たる基盤を構築していく。
<経営指標の改善に向けて>
2024年3月末時点の当社株価は608円30銭、PBRは0.4倍程度と割安な水準であると認識している。
当社は、株主還元と資本効率の向上、財務フレキシビリティの維持、そして将来の成長に向けて、継続的に財務パフォーマンスを改善することに取り組んでいる。
前述のとおり、「The Arc」において、販売台数については2023年度比で100万台増加、営業利益率については2026年度までに6%以上、2030年度には8%を目指すことを発表した。
当社は、電動化への投資を行った後も、M&A実行前フリーキャッシュフローはポジティブを維持し、自己株式取得と配当金の増配により、株主総還元率を30%以上確保することを目指す。また、ネットキャッシュは1兆円レベルと健全な水準を維持することを目指している。
2023年度では、ルノーグループからの5%の自己株式取得と年間配当金による株主総還元率は、約46.2%となる。また、2024年4月1日の自己株式取得と2024年度の配当見通しでは、株主総還元率30%以上を見込んでいる。
「The Arc」は、当社の競争力を強化し、持続可能な収益性を実現する。その結果、投資家やアナリストが私たちの基盤となるパフォーマンスと戦略の進展を評価し、株価とPBRの改善に寄与するものと考えている。
当社は90年にわたり、他がやらぬことに挑戦してきた。人にワクワクを提供する、先進のモビリティを提供するグローバルカンパニーであり続けるために、人・地域・社会に寄り添いながら、事業を展開していく。次世代プロパイロットに代表される運転支援技術に加え、アクティブセーフティとAI技術を融合させたシステムで、ゼロ・フェイタリティの目標へさらに近づくことを目指している。革新的な技術で次世代のクルマづくりをサポートし、カーボンニュートラルの実現に貢献するニッサン・インテリジェント・ファクトリーやEV36Zero、そして、次世代モビリティサービスを通じて、より多くの人の自由な移動を実現し、エネルギーマネジメントサービスを通じて、エネルギーをより効率的に活用していくことを目指している。
社会に貢献するという強い意志と、その取り組みを支える企業文化のもと、当社はこれからも、目標に向かってイノベーションをドライブし続け、移動の可能性を広げ、次世代のために素晴らしい未来の実現を目指す。
(2) 2023年度の経営環境及び主要な経営指標
2023年度は、新型コロナウイルスの鎮静化や半導体の供給不足の解消などにより、経済活動は正常化に向かった。しかしながら、ロシア・ウクライナ問題の長期化や中東での紛争勃発などに伴い、地政学リスクはさらに高まり、急激な為替変動やインフレーションなどの影響もあいまって、事業環境は絶えず変化した。
当社は、引き続き地政学的リスクの高まり、急激な円安、物流費の高騰、インフレーションや電動化に伴う市場の分断化などの影響を受けた。
こうした環境下で、当社グループの当期の経営成績、業績目標とその達成度は下記のとおりとなった。
当社グループのグローバル小売台数は前年度比4.1%増の344万2千台となり、売上高は12兆6,857億円と前連結会計年度に比べ2兆890億円(19.7%)の増収となった。営業利益は5,687億円と前連結会計年度に比べ1,916億円(50.8%)の増益となった。
2020年5月にスタートした「Nissan NEXT」は、当社固有の課題に対応すべく、それまでの事業規模拡大による成長戦略から転換し、収益性を重視しながらコストを最適化することで、持続的な成長と安定的な収益確保を目指すものであった。当社は一歩一歩、着実に取り組みを進めた結果、全ての地域で販売の質を重視しながら、着実に成果を挙げることができた。生産能力と商品ポートフォリオの最適化に取り組み、いずれも20%削減した。また、新型車を積極的に投入し、12車種を発売し、アリアとサクラの投入によりEVのラインアップを充実させ、e-POWERをB、Cセグメントへと拡大した。
アライアンスにおいては、より高い価値を生み出すコラボレーションに焦点を当て、新たな章を開いた。
最終的に、新型コロナウイルスの感染拡大、供給制約、その他市場の変化により、販売台数の目標を達成することはできなかったが、「Nissan NEXT」の目標はほぼ達成することができ、最も重要なことは将来に向けた強固な基盤が確立されたことである。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当連結会計年度における事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりである。
・元会長らの不正行為に関連した事項
当社の元代表取締役が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)で起訴されるとともに、元代表取締役会長においては会社法違反(特別背任罪)でも起訴された。併せて当社自身も金融商品取引法違反により起訴された。当社はこの事態を重く受け止め、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年3月27日に同委員会からガバナンスの改善策及び、将来にわたり事業活動を行っていくための基盤となる健全なガバナンス体制の在り方についての提言をまとめた報告書を受領した。これを受け、当社は指名委員会等設置会社へ移行した。
当社は、2019年9月9日の取締役会において、監査委員会よりゴーン氏らの不正行為に関する社内調査の報告を受けた。2019年9月9日付の「元会長らによる不正行為に関する社内調査報告について」と題する適時開示に記載したとおり、本報告では、ゴーン氏らによる不正行為を認定している。そのうち、ゴーン氏の会社資産の私的流用等及び販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為は、以下のとおりである。2019年9月9日以降、当有価証券報告書提出日時点において、下記の内容に特段の変更は生じていない。今後、下記の内容に重要な進展が生じた場合には、法令等に基づき開示する。
A) ゴーン氏の会社資産の私的流用等
ゴーン氏は、以下を含む様々な方法で当社の資産を私的に流用した。
・将来性のある技術に投資するとの名目で子会社Zi-A Capital社を設立させ、同社の投資資金のうち約2,700万米ドルを、ブラジル(リオデジャネイロ)及びレバノン(ベイルート)所在のゴーン元会長個人のための住宅の購入に流用したほか、会社資金で秘密裏に購入又は賃借した住宅を私的に利用した。
・2003年から10年以上にわたり、実体のないコンサルティング契約に基づくコンサルタント報酬名目で実姉に合計75万米ドルを超える金銭を支払った。
・コーポレートジェットを自身及び家族の私的用途に使用した。
・会社の資金を家族の旅費支払いや、個人的な贈答品支払いなどに充てた。
・業務上の必要性がないにもかかわらず自身の出身国の大学への200万米ドルを超える寄付を会社資金で行わせた。
・2008年、ゴーン氏は個人的に締結した為替スワップ契約のもと約18億5,000万円の含み損を抱え、事実と異なる取引内容を取締役会に説明したうえ為替スワップ契約を当社に承継させて、かかる含み損を当社に承継させた(金融当局の指摘を受け、2009年、当該為替スワップ契約は秘密裏にゴーン氏の関連企業に再承継された)。
・2018年4月以降、三菱自動車工業株式会社との間で設立した合弁会社であるNissan-Mitsubishi B.V.(以下「NMBV」)から、給与・契約金名目での取締役会決議を欠く支払い合計780万ユーロを受領した。
B) 販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為
ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、自身とその直属の特定少数の部下が承認すれば金銭支出が可能となる予備費予算(CEOリザーブ)を使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計1,470万米ドルの支払いを行わせた。
また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該販売代理店に対し、CEOリザーブを使用して、販売奨励金名目で合計3,200万米ドルの支払いを行わせた。
金融庁長官から、2019年12月13日付で審判手続開始決定通知書を受領した。これにつき、当社は、課徴金に係る事実及び納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を2019年12月23日に提出した。その後、2020年2月27日付で金融庁長官から24億2,489万5,000円の課徴金納付命令の決定の送達を受けた。
2022年3月3日、当社は東京地方裁判所から金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)により、罰金2億円に処するとの有罪判決を受けた。当社は、当社に対する当該判決を厳粛に受け止め、判決の主文並びに理由として述べられた事項を慎重に検討した結果、当該判決に対する控訴を行わないことを決定した。その後、当社及び検察官のいずれも刑事訴訟法が定める控訴期間内に控訴しなかったため、当該判決は確定した。
上記課徴金に関して、金融商品取引法第185条の8第6項の規定に基づき、当該刑事裁判の判決による罰金額である2億円を控除し、課徴金の総額を22億2,489万5,000円に変更する処分が2022年4月26日付で行われた。当該課徴金については、すでに全額納付済である。
また、ゴーン氏がNMBV及び他の当社の子会社に対してアムステルダム地方裁判所に提起した不当解雇訴訟において、NMBVは、ゴーン氏がNMBVから不正に着服した資金の返還を求めゴーン氏に対し反対請求を提起した。アムステルダム地方裁判所は、2021年5月20日に出された判決においてゴーン氏の請求を棄却し、ゴーン氏に対し約500万ユーロの返還を命じたが、ゴーン氏は2021年8月20日に控訴状をアムステルダム高等裁判所に提出した。その後NMBVが提出した交差控訴及び防御の結果、2022年8月23日にアムステルダム高等裁判所による判決が出され、ゴーン氏の請求は大部分が棄却されるとともに、ゴーン氏に対し約420万ユーロの返還が命じられた。上告期限の経過により判決は確定した。
ゴーン氏による会社資金の不正使用により購入された住居の一部については、売却が完了している。
当社は、既に英領バージン諸島においてゴーン氏及びその関係者を相手に、豪華ヨットに対する仮処分命令を申立て、同命令を得た上で、損害賠償等を求めて訴訟を提起し、また日本国内においても、2020年2月12日にゴーン氏に対し、2022年1月19日に当社元代表取締役ケリー氏に対し、損害賠償請求訴訟を提起しているが、本社内調査結果を踏まえ、今後も、ゴーン氏らの責任を明確にすべく、ゴーン氏らの法令違反や不正行為によって被った損害の回復のため法的措置を含めた必要な対応をとっていく方針である。
指名委員会の選出による経営層の新体制が2019年12月に発足、内部監査による監督機能を強化したこと、などに見られるように、種々の再発防止策に取り組んでいる。
当社は、2020年1月16日に東京証券取引所に提出した改善状況報告書に記載した改善措置の継続的実施を含め、これからも必要な改善を随時検討するなど、引き続きガバナンスの向上に努めるとともに、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めていく所存であることを表明している。
・公正取引委員会からの勧告に関連した事項
2024年3月7日、当社は公正取引委員会から、下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」という。)の適用対象となる事業者との取引に関して、下請法に基づく勧告を受けた。
これは、当社が、下請法の適用対象となる事業者36社との取引において、当該事業者から割戻金を受け取った行為の一部が、下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の違反と判断されたものである。本勧告において下請代金の減額に該当すると判断された割戻金の総額は、2021年1月から2023年4月までの約30億円である。当社は、既に、本勧告の対象下請事業者に対して、下請代金の減額に該当すると判断された金額を返金するとともに、割戻金の運用自体も廃止した。
当社は、本勧告を大変重く受け止めている。サプライヤーの皆様との強固な信頼関係なくして双方の事業の発展は成し得ない。法令の遵守状況についての定期的な点検、並びに役員や下請取引に関わる従業員への教育の徹底及び定期的な研修の実施などを通じて、法令遵守体制を強化するとともに、再発防止策の徹底に取り組み、今後の取引適正化を図っていく。
取引先との関係をさらに強化し、双方に価値を創造し、法令遵守の徹底のための更なる取り組みの一環として、法令違反の疑いなどがある場合に、取引先から匿名で意見を集約するホットラインを外部に設置する。さらに、モノづくり部門、並びに、関連部署の担当者からなる社長直轄の「パートナーシップ改革推進室」を新設した。このチームは、積極的に取引先のもとに足を運び、懸念事項を正しく理解し、頂いた声を速やかに社内にフィードバックして、必要な対応を迅速に講じることができるようにする。各部署の通常窓口に加え、新たに2つのルートを設けることで、取引先の状況把握、法令遵守の徹底をより一層図っていきたいと考えている。
日産は長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」で、よりクリーンで安全、インクルーシブな誰もが共生できる社会の実現と、真に持続可能な企業となることを目指している。サステナビリティの取り組みがその長期ビジョンを具現化し、さらにはコーポレートパーパスの実現も可能にしていく。日産は企業のあらゆる側面で、サステナビリティを推進する。
サステナビリティ戦略の目標設定や進捗確認など具体的な活動の社内横断的な管理については、チーフ サステナビリティ オフィサー(CSO:Chief Sustainability Officer)が議長を務めるグローバル・サステナビリティ・ステアリング・コミッティで議論し、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回すことで、サステナビリティパフォーマンスのさらなる向上を追求している。一方、環境課題についてはチーフ サステナビリティ オフィサーと取締役 代表執行役社長兼最高経営責任者が共同議長を務めるグローバル環境委員会(G-EMC:Global Environmental Management Committee)にて決議する。サステナビリティに関する取り組みは、戦略や重要案件に関する包括的な提案とともに、経営会議(Executive Committee)に報告される。これらの課題は、その重要性に応じて取締役会に報告される。また、2021年度より長期インセンティブ報酬の1つである業績連動型インセンティブ(金銭報酬)においてサステナビリティに関する評価指標を新たに追加し、経営によるコミットメントを明確にした。
サステナビリティは事業運営の中核をなすものであり、ステークホルダーからの信頼を得るために必要不可欠である。日産は、ステークホルダーの皆さまの関心、環境と社会のグローバルアジェンダ並びに技術革新などの最新動向を踏まえながら、サステナビリティ戦略を策定し、活動を推進している。
サステナビリティ戦略強化に向けて、日産の優先課題をより明確にするため、リスクや機会分析を踏まえた会社全体として取り組むべきマテリアリティを特定した。
マトリックスという形で日産の取り組みの優先順位を定義し、2030年度に向けた会社の方向性をより詳細にステークホルダーにお伝えすることで、協働機会の拡大や信頼関係の向上を図り、さらなる取り組み推進につなげたいと考える。
マテリアリティ特定のプロセス
STEP1. 社会・環境課題の明確化
定期市場動向分析、ステークホルダー・投資家の皆さまとの対話より得られた社会からの期待値、グローバルスタンダード、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)、SDGs、世界経済フォーラム(WEF)発行のリスクレポートなどからグローバルなアジェンダを明確化。
STEP2. 自動車セクター及び日産の重要課題特定
コーポレート長期ビジョンにより実現する世界と、そこで果たすべき自動車セクターの役割という視点からリスクと機会を分析することで、日産にとっての課題を特定。
STEP3. マテリアリティの優先度整理
日産が社会・環境へ与える価値・インパクトと、社会・環境から日産へのインパクトの2側面からリスクと機会で優先度の整理を実施し、日産のつくりだす価値と今後さらに強化して取り組むべき課題をマトリックス型により整理。有識者レビューを行い、フィードバックを反映。
STEP4. 執行役員、取締役との合意
特定したマテリアリティは、各項目の設定理由や背景を含め執行役員、取締役へ報告し、合意を得て決定。
日産のマテリアリティマトリックス

マテリアリティの詳細は当社企業サイトに掲載している
また、マテリアリティの一つである生態系サービスと生物多様性について、2010年に日産は、国連大学と共に自社の活動がバリューチェーン全体の生態系に与える影響と依存を評価し、その研究成果を報告書「Ecosystem Services and the Automotive」として発表した。これは2001~2005年に国連が主導した「ミレニアム生態系評価」に基づく「企業のための生態系サービス評価」の手法を用いたものである。この評価を通じて、自動車メーカーが優先対応すべき3つの重点領域「エネルギーの調達」「材料資源の調達」「水資源の利用」を特定した。また2013年には水に関するインパクト評価を実施し、資源調達段階での水資源の利用が、日産の事業活動での水使用量の20倍以上に上ることが試算された。
これらの評価結果はマテリアリティの判断にも反映されており、「ニッサン・グリーンプログラム」の方針や戦略、具体的なアクションに落とし込まれている。
日産はTNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)の提言に賛同するとともにTNFDフォーラムに参画している。今後は、推奨される枠組みに沿った開示についてさらに検討を進めていく予定である。
日産は2023年度に、マテリアリティで特定された重要課題をもとに、第5次中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2030(NGP2030)」、及び社会性の2030年度までの取り組みを包括的に推進する「ニッサン・ソーシャルプログラム2030(NSP2030)」を策定した。「NGP2030」は、技術やビジネスの進化によって環境負荷を低減し、社会と自然にポジティブな影響を与え、人々の生活が、持続可能で自然と調和できる社会創りを目指している。「NSP2030」は社会性に特化した初のプログラムであり、日産が従業員、サプライヤー、パートナー、社会と共に成長し、「人」を中心とした企業になることを目指し、従業員をはじめとするさまざまな「人」へ価値を提供していく。「NSP2030」の重点領域は、安全、品質、責任ある調達、知的財産、地域社会、従業員と定めており、領域毎に2030年度に向けたゴールを定義している。「NGP2030」と「NSP2030」はともに経営計画「The Arc」の土台を成し、「Nissan Ambition 2030」の実現に向けて重要な役割を果たす。
c. リスク管理
日産は「NGP2030」及び「NSP2030」の中で重要課題ごとに活動計画を策定し、先に述べたガバナンスを通じて進捗管理を行っている。また、定期的に市場動向分析を行い、投資家をはじめとするステークホルダーとの対話により得られた社会からの期待値や、グローバルスタンダード、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)、SDGs、世界経済フォーラム(WEF)発行のリスクレポートなどのトレンドも踏まえながら、グローバルなアジェンダを明確化している。さらに、「Nissan Ambition 2030」により実現する世界と、そこで果たすべき自動車セクターの役割という視点からリスクと機会を分析することで、日産にとっての課題を特定している。
具体的な活動計画、指標や目標については、当社企業サイト及び2024年7月末公開予定の「
なお、特定した重要課題に対応する日産の取り組みの中で、特にステークホルダーからの関心度が高い「気候変動」と「人的資本」について、以下に具体的な活動内容を記載する。
a. ガバナンス
グローバル環境マネジメントのフレームワークとガバナンス
日産は多様化する環境課題に対応し、包括的な環境マネジメントを確実に推進する組織体制を構築している。
チーフ サステナビリティ オフィサーと取締役 代表執行役社長兼最高経営責任者が共同議長を務めるグローバル環境委員会(G-EMC:Global Environmental Management Committee)ではバリューチェーン全体に関わる各役員が出席し、全社的な方針や取締役会への報告内容の決議を行う。また、経営層は企業としてのリスクと機会を明確にし、各部門での具体的な取り組みを決定するとともに、PDCAに基づく進捗状況の効率的な管理・運用を担っている。
また、年次のレポートを発行し、幅広いステークホルダーにその状況を発信している。最新の


中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム(NGP)」
日産は、環境理念である「人とクルマと自然の共生」を実現するため、中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム(NGP)」を2002年に発表し、環境への依存と影響を自然が吸収できる範囲に抑えるという究極のゴール達成に向けて取り組みを続けてきた。
2023年度には第五世代に当たる2030年度を見据えた「NGP2030」をスタートした。将来に向けた技術の進化と社会連携の方向性を明確にし、サプライチェーン、パートナーと目標を共有し、ともに環境対応と社会的価値の創出を目指していく。
NGP2030の取り組むべき重要課題とチャレンジ
日産は環境マテリアリティ評価に基づき、「気候変動」「資源への依存」「大気品質と水」を重要課題に設定した。また、ステークホルダーエンゲージメントを通じてそのニーズを把握し、環境課題にかかわる「事業基盤の強化」と新たな価値創出に努めている。
取り組みの指標や進捗は、クルマづくりに携わる開発・生産部門のほか、セールス・サービス部門を含む企業全体での、ビジネス基盤強化と社会価値の創出に取り組んだ成果としてサステナビリティデータブック等を通じて毎年開示している。また、後述の「d.指標と目標」においても気候変動に関連する主要項目について開示している。

CO2排出量の削減に向けた日産の取り組み
日産は、CO2排出量の削減や電動化技術の実用化の実績に加え、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体(*)におけるカーボンニュートラルを実現する新たな目標を2021年1月に発表した。企業活動では、自社及びクルマの原材料の調達、輸送にかかわるサプライヤーとともに省エネ活動やクリーンなエネルギーへの転換を進め、CO2削減に取り組む。
走行段階CO2削減に向けては、2030年代の早期には、主要市場に投入する新型車をすべて電動車とすることを目指し、電動化と生産技術のイノベーションを推進する。経営計画「The Arc」では電動化を戦略の中核に据え、2030年度までに投入する電動車のモデル数を34車種に増加、グローバルでの電動車モデルミックスは60%以上見込む。
* クルマのライフサイクルには、原材料の採掘から、生産、クルマの使用、使用済み自動車のリサイクルや再利用までを含む

カーボンニュートラルロードマップ(生産工場での事例)
日産では生産工場においてもカーボンニュートラルを目標とした活動を推進している。
達成に向けた取り組みを着実に推進するため、2021年10月、生産工場において2050年までにカーボンニュートラルを実現するロードマップを発表した。
~2030年:まず工場のエネルギーを削減しながら革新的な生産技術導入や電化を推進し、さらに再生可能エネルギーの導入や代替エネルギーの適用拡大を進める。
2030~2050年:2050年に向けては、ガスや蒸気などさまざまな動力形態で運営されている工場設備の全面電化を実施。同時に、使用電力については、再生可能エネルギーと代替燃料を用いた燃料電池で自家発電した電力を全面適用することで、生産工場におけるカーボンニュートラルを実現していく。

気候変動シナリオ分析を用いた2050年社会への戦略強化
NGPは中期目標の達成を通じて成果を収めてきたが、気候変動による異常気象の脅威は一段と高まっている。
そこで、国際エネルギー機関(IEA)の4℃と2℃シナリオ、及びIPCCの1.5℃特別報告書に基づき、2050年までの気候変動がもたらすさまざまな機会とリスクを検討した。
特に自動車セクターにおけるリスク要因を定義し、シナリオごとのリスク振れ幅を確認。また、世界170以上に及ぶ市場を前提とした。さらにお客さまや市場の受容性変化、自動車にかかわる規制の強化、クリーンエネルギーへの移行を因子として考慮し、日産の事業活動や商品、サービスについて、気候変動がもたらす機会とリスクに対する戦略のレジリエンス性を以下の4つのステップで検討した。
検討の4ステップ
・過去のマテリアリティの評価や、文献調査などで気候変動によって自動車セクターに決定的な影響を与え得るリスク要因を調査し、人口・経済・地政学、気候変動政策、技術などの区分でメインドライバーを定義
・メインドライバーは物理的リスクと移行リスクに分類され、それぞれがトレードオフの関係にあることを考慮し、地球の平均気温の上昇を1.5℃、2℃、4℃と3種類のシナリオで、そのリスク振れ幅を確認
・自動車セクターへの影響度合いとその時間軸をもとに、メインドライバーから影響力の高い項目をスクリーニング
・シナリオごとの変化、状態、影響を整理し、戦略強化に必要な要素を定性評価に基づいて導出
想定したシナリオと関連する機会とリスク
日産の電動化技術は、2℃以外のシナリオにおいても機会を創出するポテンシャルがあると考えられるが、取り組みのさらなる加速と、リスク対応のためのサプライチェーンとの連携が重要である。とくにゼロ・エミッション車の拡大は、脱炭素社会への移行だけでなく、電力や減災・防災における社会のレジリエンス性に貢献する。電気自動車の性能向上と、環境の持続可能性を確保するにはさらなる開発が伴うが、最終的には社会価値創造とビジネスの両立を可能にすると捉えている。
しかし、社会全体の気候変動対策が遅れた場合、さまざまな移行リスク、物理的リスク及び財務インパクトが生じる可能性がある。炭素税の影響評価を試みたところ、2030年時点のGHG排出量削減により、Scope1&2で炭素税の影響を約100億円抑えることができると試算された。
財務インパクト評価のシナリオ選定背景
二酸化炭素排出に対する価格付けが進み、炭素税を導入する国・地域が拡大している。国・地域により、課税の水準や対象となる業種も異なるが、企業に対する影響が大きいため、この分析では炭素税による財務インパクトを対象とする。
算定式と試算額の評価、前提条件
試算では、日産の炭素税予測の基礎としてIEAレポートなどを参照している。2030年時点のGHG排出量の炭素税を、次の条件で算出した。
①2018年時点の企業活動が継続された場合
②NGPによる環境課題への取り組みが促進され、単年度での炭素税の影響を抑えた場合

対応戦略
日産は、20年以上にわたり中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム」を実践している。また、脱炭素の推進にあたっては、バリューチェーンへの影響を把握し、負の影響を極力抑えた公平な移行(just transition)を考慮した活動を意識している。
このような戦略や、2030年度でのありたい姿を具体化し、投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまにより分かりやすく的確に伝えることが重要だと考え、日産はTCFD(*)の提言を支持し、その推奨枠組みに沿った情報開示に努めていく。また、シナリオ分析手法の精度向上とリスク量の正確な把握についても継続して取り組む。
「ニッサン・グリーンプログラム2030(NGP2030)」の詳細や、気候変動以外の取り組みについては2024年7月末に当社企業サイトに掲載する
* TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures
長期目標として掲げた、カーボンニュートラルの実現に向け、2030年度までの中期行動計画をまとめた「ニッサン・グリーンプログラム2030」では、各バリューチェーンでのKPIと目標を明確にし、その進捗を毎年報告している。
* 日本、米国、欧州、中国
上記の値は2023年度の到達状況の速報値であり、2024年7月末に当社企業サイトに掲載する
自動車のバリューチェーン全体を捉えた時に、クルマの使用時に排出されるCO2量が占める割合は、企業活動に伴う排出量に比較して著しく多く、全体の80%以上を占める。2023年度では、バリューチェーン全体(Scope 1、2、3の合計値)のCO2排出量118,525kton-CO2のうち、販売したクルマの使用時の排出量が99,276kton-CO2である一方で、企業活動に伴う排出量Scope 1、2はそれぞれ626kton-CO2、1,112kton-CO2(いずれも速報値)であった。これらはGHGプロトコルに基づいた測定結果である。
財務情報と連動したカーボンフットプリント開示の重要性を認識し、当事業年度にScope 1、2の対象範囲を下記のように定義した。それに伴い、過年度の排出量も再計算した。
・従来:日産自動車、連結子会社及び持分法適用関連会社の一部
・新スコープ:日産自動車及び連結子会社
(kton-CO2)
* 各スコープは「GHGプロトコル事業者排出量算定基準」によって以下の様に定められている。
Scope 1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
Scope 2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope 3 企業のバリューチェーンで発生するScope2以外の間接排出
上記の2023年度の値は速報値であり、2024年7月末に当社企業サイトに掲載する
コーポレートパーパスや長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を実現すべく、コアビジネスを支えるエンジニアの採用強化を進めるとともに、「人材育成」、「人材の多様性の確保」、「社内環境整備」を包含した人財戦略として「HR Ambition 2030」を2022年に設定した。
この人財戦略は、「従業員体験(エンプロイーエクスペリエンス)の強化」、「スキル重視の人財マネジメント」、「リーダーシップの強化」、「企業文化の変革とイノベーションの促進」、「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(多様性、公平性、包括性)」の5つの柱で構成される。
<HR Ambition 2030>
これらをマネジメントする仕組みとして、エクゼクティブコミッティのメンバーである最高人事責任者(Chief Human Resources Officer:CHRO)が議長を務めるグローバル人事会議にて、年2回その進捗を確認し実行を着実なものとしている。
なお、リスク管理については、前述の(1) サステナビリティの考え方 「c. リスク管理」に記載している。
b. 指標と目標
1.「Nissan Ambition 2030」では、研究開発部門における先進技術領域において3,000人以上の従業員を新規に採用する目標を掲げている。「Nissan Ambition 2030」を発表した2021年度以降2023年度末までに、新卒・中途を合わせて約1,400名を採用し予定どおり進捗している。今後も2026年度までに平均700名/年の採用を予定している。
2.女性管理職比率については、女性管理職比率と間接従業員に占める女性比率とのギャップを縮めていくことを目標とする。2024年3月末時点において、346人の女性管理職がさまざまな分野で活躍しており、全管理職に占める割合は10.7%となっている。将来的には、さらなる女性管理職比率の向上のため、女性社員の積極的な採用と育成を促進する。
3.さらに、「人材育成方針」、「人材の多様性の確保」、「社内環境整備方針」に関する総合的な指標として、グローバル従業員サーベイにおいて指標と目標を定めている。具体的には、エンゲージメントに加え、エネーブルメント、企業倫理、リーダーシップ、企業文化、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンといった全社的に優先度の高い5つの重点領域に対して、中長期的目標としてグローバルベンチマーキングスコアを上回る水準を目指し、前年度からの改善に必要な目標値を毎年設定している。2023年度の実績は目標値を上回った。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月28日)現在において当社グループが判断したものである。
1.世界経済や景気の急激な変動
当社グループの製品・サービスの需要は、それらを提供している国又は地域の経済状況の影響を強く受けている。従って、日本、中国、北米、ヨーロッパなど、当社グループの主要な市場における経済や景気、特に昨今のインフレーション・市況変動及びそれに伴う需要の変動については正確な予測に努め必要な対策を行っているが、世界同時不況やパンデミック、複雑化する地政学リスクなど予測を超えた急激な変動がある時は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
原油、天然ガス、再生エネルギー等の価格高騰など資源やエネルギー情勢の急激な変化により当社グループの製品・サービスに対する需要も大きく変動する。ガソリン価格が上昇すれば燃費の良い製品に需要がシフトすることが予測され、更に上昇すれば全体の需要は低下することも予測される。鉄、アルミ、樹脂といった従来の自動車の原材料に加えて、リチウム、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウムといった希少金属の価格に予測を超えた急激な変動がある時は、業績の悪化や機会損失の発生等、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
2.自動車市場における急激な変動
自動車業界は世界規模で非常に厳しく、不確実な競争にさらされている。当社グループもその競争に打ち勝つべく、お客様のニーズにあった製品・サービスを素早く提供できるように技術開発・商品開発や販売戦略において努力している。しかしながら、お客様ニーズに合う製品・サービスをタイムリーに提供できなかった場合や、環境や市場の変化への対応が不十分な場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
例えば、成熟市場では人口の減少や少子高齢化の進行により需要が減退したり変化したりする一方で、新興市場では大きく需要が増える可能性もある。これらはビジネスチャンスとして当社グループに有利な結果をもたらす可能性もある一方、特定商品や特定地域への過度な依存が発生し、次なる変化への対応が十分に行われない場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
また、車両の電動化が進み、各国での温室ガス排出に対する規制が強化されており、カーボンニュートラルに向けたライフサイクルでの取り組みが必須となってきている。これらの社会・環境要請に対応する取り組みが遅れた場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
さらに、近年、先進運転支援システムが製品に搭載され販売されてきているが、これらは運転支援技術のさらなる進化に伴い、次世代に向けた大きな成長・発展の機会となる。そのためには、公道走行における新たなルール作りが不可欠であり、各国規制当局との連携、自動車メーカー並びに関連技術を有する会社同士での協調が極めて重要である。その一方で、新技術の開発という点では、各国、メーカー共に激しい競争状態にあり、開発費負担の増大、車両コストの増加等により、当社グループの業績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
今後、カーシェアリング、ライドシェアリング、ロボットタクシーといった業態の普及に伴い、「自動車メーカーがハードウエアとしてのクルマを製造・販売し、お客様はそのクルマを購入・所有・使用する」という従来のビジネスモデルが大きく変革していくことが想定される。
また、付加価値の中心がハードウエアとしてのクルマの性能から、クルマに関連したサービスも含め、お客様にどのような体験を提供できるのかといったソフトウエアの方に移っていくことも想定される。
その結果、ソフトウエアの部分での魅力が他社との差異化のポイントとなり、予てより当社の強みであったクルマというハードウエアを開発・量産するというノウハウや専門性がそれ程の付加価値を生まないものとなっていく可能性もある。これら想定される変革を見据えて、ニューモビリティ等も含めた、従来の自動車業界以外からの参入の動きもある。
こういった動きに対して当社グループでは2021年11月には2030年のありたい姿を示す長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表した。これは、当社のコーポレートパーパスを具現化するために、この先目指す方向性をステークホルダーの方々にビジョンとして示したものであり、「ともに切り拓く、モビリティとその先へ」をスローガンに、よりクリーンで、安全で、インクルーシブな、誰もが共生できる世界の実現を目指し、パートナーの皆様とともに、人々の移動の可能性と社会の可能性を広げていく、という当社の想いと決意を込めたものである。
この長期ビジョンの実現に向け、2024年3月には自社の価値と競争力を向上させる新たな経営計画「The Arc」を発表した。本計画は2020年度から2023年度に実行された事業構造改革「Nissan NEXT」と長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の架け橋となるもので、2024年度から2026年度までの中期の取り組みと、2030年度までの中長期の取り組みから構成されている。
中期の取り組みとしては、地域毎に最適化した戦略を通じて販売台数を拡大し、電動車両とICE車のバランスの取れたポートフォリオ、主要市場での販売増、財務規律によって、事業基盤を堅固なものにする。続いて、中長期的には、電動化を加速させ、パートナーシップや、新たな収益機会を活用しながら最終的な目標達成に向けて取り組む。
しかしながら、我々の想定を超えた速度や範囲で変革が起き、そのような変化に対して十分に対応できない場合には、我々は新たな競争相手に対して優位性を保つことができず、競争力を失う可能性もある。
3.金融市場に係るリスク
当社グループは世界13の市場で完成車の生産を行い、およそ160の市場で販売をしている。原材料や部品、サービスの調達も多くの国で行っている。
当社の連結財務諸表は日本円で表示するため、一般的に他の通貨に対する円高は当社グループの業績に悪影響を及ぼし、反対に円安は好影響をもたらすことになる。また、当社グループが生産を行う地域の通貨価値が上昇した場合、それらの地域の生産コストを押し上げ、当社グループの競争力の低下をもたらす可能性がある。
当社グループでは、為替変動リスクを軽減するための根本的な対策として、生産の現地化や、原材料及び部品の外貨建てによる購入等の対応を行っている。しかしながら、為替リスクを完全に取り除くことは不可能であるため、想定を超えた変動が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
市場金利の上昇及びコモディティ価格の上昇は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
また、当社グループは外貨建債権債務の為替変動のリスク回避、変動金利で調達した有利子負債の金利変動リスク回避及び、コモディティの価格変動リスク回避を目的として、デリバティブ取引を行うことがある。こうしたデリバティブ取引によりリスクを回避することができる一方で、為替変動、金利変動、コモディティ価格の変動によってもたらされる利益を享受できないという可能性もある。
当社グループは、戦略的な理由や取引関係維持、キャッシュマネジメント等の理由により市場性のある有価証券を保有する場合があり、それらの有価証券の価格変動リスクを負っている。このため株価や債券価格の変動は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
金融市場では通常の想定を超える環境変化が発生する場合がある。また、リクイディティ・リスクは国内外の格付機関による格付の引き下げによっても増加する。そのような事態に対処するため、当社グループでは十分な資金の流動性を確保できるよう社内規定を整備し、内部資金の蓄積や金融機関とのコミットメントライン、調達手段や調達地域の多様化等、あらゆる資金捻出・調達ソースの確保に取り組んでいる。また、当社グループは自動車事業において未使用のコミットメントラインや十分な手元資金を維持することにより、これらのリスクを低減させている。しかしながら市場環境に予期せぬ大規模な変化が発生した場合には、当初計画どおりの資金調達に支障をきたす可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に負の影響を及ぼす可能性がある。
販売金融事業は消費者、法人顧客及び販売店に金融ソリューションを提供することにより、これら顧客による日産車の購入又は販売活動に資するものであり、当社グループにとって重要なビジネスのひとつである。販売金融事業は、徹底したリスク管理により適正な収益水準と健全な財務状態を維持しながら自動車販売をサポートしている。しかし、顧客に金融ソリューションを提供するため、販売金融事業は、金利リスク、信用リスク、残存価格変動リスク等のリスクにさらされている。これらのリスク要因が適切に管理されていないと当社グループの業績と財務状況に負の影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクを軽減するため、販売金融事業は健全なポリシーとリスクマネジメントフレームワークを導入している。
金利リスクの場合、当社グループは徹底した資産負債管理により期間と資産負債利率の不一致(固定金利対変動金利)の最小化、及び市場金利の変動に対するエクスポージャーの最小化に努めている。しかしながら、販売金融事業は国内外の格付機関による格付の引き下げ及びマクロ経済状況等の外部要因による金利コスト上昇の影響を受ける。
信用リスクは、審査から回収までのサイクル全体に対して管理されている。審査において販売金融事業は、厳格な与信審査ポリシーに従い、顧客の支払能力、支払履歴、資産状況、適切な担保価値及び融資条件を勘案したうえで与信判断を行っている。与信期間中又は支払延滞があった場合、潜在的な損失を最小限に抑えるために綿密な回収戦略が実施される。
残存価格変動リスクについては、当社グループは独立第三者による評価金額と過去の中古車価格の統計分析結果を基準に、部門横断的なチームにより適切な残存価値設定を行っている。また、新車販売のための販売インセンティブの適切なレベルおよび施策を管理、適切なフリート販売台数の維持管理および認定中古車の販売促進によるブランド価値構築を通じて日産車の将来的市場価値を高める戦略により、残存価格変動リスクの軽減に努めている。
当社グループは販売会社、金融機関、サプライヤーなど様々な地域の数多くの取引先と取引を行っており、取引先の債務不履行などが発生するリスクにさらされている。当社グループは、これらの取引先の財務情報をもとに継続的な評価を行うことで、かかるリスクを削減するよう努めている。しかしながら、世界的な経済危機をきっかけにした、販売会社、金融機関及びサプライヤーの経営破たんのような予期せぬ事態が発生した場合には、当社グループの業績と財務状況に負の影響を及ぼす可能性がある。
また、当社グループの主要サプライヤーであるマレリホールディングス株式会社は、2022年6月24日に民事再生法に基づく民事再生手続開始を申し立て、2022年7月19日の債権者集会において再生計画案が可決され、2022年8月9日をもって東京地方裁判所による認可決定が確定した。以後、再建へ向けた取り組みを進めているが、引き続きかかるサプライヤーの債務不履行など信用リスクが顕在化するなどにより、かかるサプライヤーからの供給の停止、遅延又は不足による当社グループの操業の停止、生産の遅延又は減少、もしくは財務的負担の増加やコストの上昇が生じる可能性があり、当社グループの業績と財務状況に大きな負の影響を及ぼす可能性がある。
当社グループの従業員の退職給付に備えるための退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されている。実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性がある。
4.事業戦略や競争力維持に係るリスク
当社グループは世界13の市場で完成車の生産を行い、およそ160の市場で販売を行っている。海外市場への事業進出の際には以下に掲げるようなリスクの検討も十分行っているが、アメリカ・中国及び中東をはじめとする不透明な世界情勢など進出した先で予期しないリスクあるいは想定を超えるリスクが顕在化した場合には計画どおりの操業度や収益性を実現できず、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
・ 政治的又は経済的要因
・ 法律又は規制の変更
・ 法人税、関税その他税制の変更及び移転価格税制等の国際税務問題による影響
・ ストライキ等の労働争議
・ 優秀な人材の採用と定着の難しさ
・ テロ、戦争、クーデター、デモ、暴動、大規模自然災害、伝染病、その他の要因による社会的混乱
当社グループが開発する技術は、世の中のニーズに即し、有用かつ現実的で使い易いものでなくてはならない。この目的のため当社グループは、将来のニーズを予測し、優先順位をつけ、電動化、自動運転化、コネクティビティ機能の強化、安全面の強化、モビリティサービス等にかかわる新技術の開発に投資している。しかし、予測を超えた環境の変化や世の中のニーズの変化、相対的な開発競争力の低下により、最終的にお客様にその新技術が受け入れられない可能性もあり、その結果当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性がある。
当社グループは、「Nissan Ambition 2030」及び「The Arc」の達成に向け、より高い競争力を短期間で獲得するために優れた技術・サービスを有する他の企業と戦略的に提携することがある。将来に想定されるビジネスモデルの変革も見据え、従来の自動車業界の企業との提携のみならず、業界の枠を超えた、異業種企業との戦略的な提携等の可能性も含まれる。しかしながら、当該分野の市場環境や技術動向の変化、提携先との活動の進捗状況によっては予定した成果を享受できない可能性もあり、その結果当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性がある。
当社グループは、優れた品質の製品・サービスを提供するため、開発・製造から販売・サービスまできめ細かい管理体制を敷き最善の努力を傾けている。しかしながら、より高い付加価値を提案するための新技術の採用は、それが十分に吟味されたものであっても、後に製造物責任や製品リコールなど予期せぬ品質に係る問題を惹起することがある。また、今後自動運転技術が発展し、かつ広く普及していった場合は、運転者の関与の希薄化に伴い、より製造者側の責任が問われるようになることも想定される。製造物責任については賠償原資を確保するため一定の限度額までは保険に加入しているが、必ずしもすべての損害が保険でカバーされるとは限らない。またお客様の安全のため実施したリコールが大規模なものになった場合には多額のコストが発生するだけでなく、ブランドイメージが低下する等、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
気候変動に影響を与えると言われている温室効果ガスは、2015年に採択されたパリ協定にてできるだけ早い時期にピークアウトすること、また、2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)1.5℃特別報告書では、遅くとも2050年までにはネットゼロとすることが必要とされ、国の政策や企業の取り組みが増加している。
当社グループは、事業活動やクルマによって生じる環境への依存と負荷を自然が吸収可能なレベルに抑え、豊かな自然資産を次世代に引き継ぐことを究極のゴールとしている。この実現に向け、クルマの原材料の調達から輸送、走行時などバリューチェーン各段階での排出量削減をサプライヤーと共に取り組んでおり、中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム」でグローバルKPIと目標値を設定し、年次成果を公表している。
特に自動車のバリューチェーン全体に占めるクルマの使用時に排出されるCO2量は、企業活動に伴う排出量に比較して著しく多く、全体の80%以上を占めている。よって、企業活動のみならずクルマの使用時についても、継続した削減が重要となる。
2021年1月には、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルの実現と、2030年代早期より主要市場に投入する新型車をすべて電動車とすることを目指すと発表した。環境対応と社会的価値の創出に向けて、活動を具体化させていく所存である。
また、気候変動のような不確実な将来事象に起因するリスクと機会に対して、複数のシナリオでの変化を評価し、レジリエントな戦略とすることが重要と認識している。このシナリオ分析の実施によって明確になったインパクトを鑑みた戦略構築を行っている。
2024年3月には、リスクと機会への対策と、カーボンニュートラル実現に向けた一層の取り組み拡大をまとめた「ニッサン・グリーンプログラム2030」を発表。最も排出量の多いクルマの使用時については 、2030年までに新車1台当たりのCO2排出量を2018年比で50%削減することを目標にしている。(日本、米国、欧州、中国の新車を対象)。シナリオ分析と合わせ、詳細は2024年7月末に当社企業サイトに掲載するサステナビリティデータブック2024や、第2[事業の状況]の2[サステナビリティに関する考え方及び取組]にて紹介している。
しかしながら社会全体の気候変動対策が遅れた場合、カーボンプライシングの導入や国境炭素税などの脱炭素社会への更なる政策や法規制、研究開発業務の増加、市場需要や企業評判の変化による移行リスクや、異常気象災害の増加や海面の上昇などの物理的リスクにより、それぞれのリスクに対応するコスト増とクルマの販売成績の低下によって財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
自動車業界は、(5)にて記載している気候変動以外にも、排出ガス基準、CO2/燃費基準、騒音、化学物質管理、リサイクル、水資源等、環境や安全に係る様々な規制の影響を受けており、これらの規制はより一層厳格になってきている。
多様化する環境課題に対応しながら、グローバル企業として包括的な環境マネジメントを推進するため、当社では各地域、機能部署、さまざまなステークホルダーと対話・連携する組織体制を構築。チーフサステナビリティーオフィサーと取締役 代表執行役社長兼最高経営責任者が共同議長を務めるグローバル環境委員会(G-EMC)にはバリューチェーン全体から関係する各役員が出席し、年2回の開催で全社的な方針や取締役会への報告内容の決議を行う。グローバル環境委員会の詳細については、第2[事業の状況]の2[サステナビリティに関する考え方及び取組]にて紹介している。また、気候変動を含む環境リスクは、内部統制委員会でも定期的に報告され、ガバナンスが効果的に機能している状態であると認識している。
法規制を遵守することは当然であるが、企業の社会的責任として、また競合他社に対する優位性を保つために「ニッサン・グリーンプログラム2030」を掲げ、環境に対する継続的な取り組みを社内外にコミットしているが、開発や投資の負担は増加しており、これらコストの増加は当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
また、上記取り組みを行ったとしても、株主やお客様等のステークホルダーから、他社との比較において優位性を持たないと評価された場合には株価や販売に負の影響を及ぼし、その結果当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
当社グループが事業活動を進めていく中で、様々な訴訟が起きることがある。それら訴訟については、当社グループ側の主張又は予測と異なる結果となるリスクは避けられず、場合によっては当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
当社グループは、他社製品と差別化できる技術とノウハウを保持している。これらの知的財産は今後の当社グループの発展に不可欠なものであり、当社グループは専門の部署を設け知的財産を保護しているが、第三者が当社グループの知的財産を侵害した製品を製造・販売することを、すべて防止できない可能性がある。
当社グループでは人財はモノづくりをはじめとする競争力の源泉であり、最も重要な資産と考えている。「Nissan Ambition 2030」で掲げた目標およびそれを実現するための人材戦略については、第2[事業の状況]の2[サステナビリティに関する考え方及び取組]にて述べたとおり、人財育成の投資や評価報酬制度の充実にも力を入れている。しかしながら優秀な人財確保のための競争は厳しく、計画どおりに採用や定着化が進まなかった場合は、長期的に当社グループの競争力が低下する可能性がある。
2017年に発生した、当社国内車両製造工場における完成検査に係る不適切取扱いの案件を受けて、当社は再発防止に向けた取り組みを進めてきた。特に、完成検査トレーサビリティシステムの導入、経営会議メンバーの工場訪問などによる風通しの良い職場づくり、コンプライアンス意識向上のためのコンプライアンスイベントの開催やコンプライアンス教育など、完成検査問題の風化を防止するための取り組みを継続して実施している。
一方、2018年から2019年にかけて、当社の元代表取締役による不正行為を受けて、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年6月、東京証券取引所に一連の問題の経緯とその改善措置を記載した「改善報告書」を提出し、2020年1月には改善措置の実施状況及び運用状況を「改善状況報告書」として同取引所に提出した。
2023年11月に規制当局の承認を受け、新たなアライアンス契約が発効した。これに伴い、独占禁止法等の遵守と抵触防止の活動にも、継続して取り組んでいく。
また、2024年3月に当社は公正取引委員会から、下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)の適用対象となる事業者との取引に関して、下請法に基づく勧告を受けた。これは、当社が、下請法の適用対象となる事業者36社との取引において、受け取った割戻金の一部が、下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の規定に抵触すると判断されたものである。当社は、既に、下請事業者に対して、下請代金の減額に該当すると判断された金額を返金するとともに、割戻金の運用も廃止した。当社は、本勧告を重く受けとめ、法の遵守状況についての定期的な点検体制の強化、役員や下請取引に関わる従業員への教育の徹底及び定期的な研修の実施など、法令遵守体制の強化を行うとともに、再発防止策の徹底ならびに今後の取引適正化に全社的に取り組んでいく。当社は引き続き、ガバナンスの改善、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めている。
しかしながらコンプライアンスの問題は全ての従業員、全ての執行役員、全ての執行役及び取締役のあらゆる行動にかかわっており、会社全体でコンプライアンスの重要性を明確に認識するとともにその実効性を担保するための環境を整備し、従業員、執行役員、執行役、取締役の一人一人がコンプライアンスの重要性を本当の意味で理解し、常に意識して行動することが定着しない限りは案件の発生を完全に防止することは困難である。もし求められるガバナンスを十分に実現できなかったり、再び重大なコンプライアンス違反の発生を許したりした場合には、当社グループの社会的信用及びブランドや製品に対する信頼は失われ、当社グループの業績に極めて大きな影響を与える可能性がある。2020年より、国連の「国際腐敗防止デー」が設けられた12月に「日産エシックス・デー」を開催し、全地域の従業員を対象として業務に関する行動を振り返り、日産の価値観をいかに日々の業務において実践できるかについて全社的な振り返りを行っている。
さらに守るべき法令やルールは年々増加している一方で企業の社会的責任に対する社会の期待や要求も増大している。仮に、企業の社会的責任に照らして不適切な行為を行ったのが2次3次以降のサプライヤーや販売者であったり、あるいは当社グループが想定した販売ルート以外で流通した製品に関連するものであっても、当社グループ自身が社会的責任を追及され、対応の内容や迅速性が不十分な場合には当社グループの社会的信用や評判に悪い影響を及ぼし、売上高の減少等、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
5.事業の継続
日本を本拠とする当社グループとして、地理的リスクについては地震(津波)・水害(台風・洪水)リスクを重点管理すべきリスクと位置付けている。地震リスクについて当社グループでは、地震リスクマネジメントに関する基本方針を設定するとともに、主要な経営会議メンバーで構成されるグローバルベースの災害対策組織を設置している。また、工場などの建屋や設備などの耐震補強も積極的に推進している。なお、火山の噴火についても地震対策の中で対策を講じるべく検討を推進している。しかし、想定を超えた大規模な地震により大きな損害が発生し、操業を中断せざるを得ないような場合は、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
さらに、地震(津波)、昨今急増している水害(台風・洪水)並びにパンデミックについても、事前の予防対策及び発生時の緊急対応体制の整備、停電時に電気自動車の電池を非常用電源として活用する仕組みの構築等を行っているが、想定を超えた規模で発生した場合などは当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨や2019年の台風15号・19号等の災害を契機として、下記のような従来想定していなかった様々なリスクも顕在化した。
・ 計画停電の実施や長期にわたる電力不足により、工場の操業が大きく制限されるリスク
・ 原子力発電所からの放射能汚染による立入制限や避難指示により、対象地域内の工場やサプライヤーが復旧又は操業できないリスク
・ 放射能汚染を理由とする、部品・製品の受け入れ制限や遅延のリスク、及び風評による売れ行き低下のリスク
・ 「南海トラフ巨大地震」等で想定される、従来の高さと範囲を大きく超える津波のリスク
・ 日本国内各地に数多く存在する活断層型の地震によりサプライヤーが被災し、工場の操業が大きく制限されるリスク
・ 台風・豪雨(突風)により大きな被害となる土砂崩れや広範囲での停電
当社グループではこれら顕在化した問題に対しても一つ一つ対策を検討・実行し、問題解決の努力を続けているが、当社グループだけでは対応できない問題も多く、また、対応のためのコストも発生するため、業績や財務状況に対する影響は避けられない可能性がある。
当社グループは事業の構造上、多数の取引先から原材料や部品及びサービスを購入している。また、新技術の導入に伴い、産出量が少ないだけでなく産出が特定の国や地域に限られる希少金属の使用も増えている。その結果、需給バランスの急激な変動などによる原材料の価格高騰や供給ひっ迫、災害、パンデミック、又は人権侵害などの発覚、産出国における政情の変化等のリスクにさらされている。当社グループでは、これらのリスクを最小化するため、サプライヤーと連携した事業継続計画(BCP)レベル向上の活動や、代替サプライヤーの検討、サプライチェーン全体での在庫の確保など、購入品の安定的な供給体制強化に継続的に取り組んでいる。しかし予期せぬ市況状況の変化が起こった場合は、必要な原材料・部品等を継続的・安定的に確保できなくなる可能性もあり、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
より高い品質や技術をより競争力ある価格で調達しようとすると、発注が特定のサプライヤーに集中せざるを得ないことがある。また、特別な技術や生産工程を要するものについてはそもそも提供できるサプライヤーが限定されることもある。例えば、世界的な半導体供給のひっ迫は当社グループの生産計画に対して大きな影響を与えうる。当社グループでは、リスクを最小化するため、2次3次以降のサプライヤーを含めた代替サプライヤーの検討、サプライチェーン全体での在庫の確保、半導体サプライヤーとの長期供給契約など、サプライチェーンの見直しと強化に継続的に取り組んでいるが、予期せぬ事由によりサプライヤーからの供給が停止したり、遅延や不足が生じた時は、当社グループの操業も停止し、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
また、当社グループの主要サプライヤーであるマレリホールディングス株式会社は、2022年6月24日に民事再生法に基づく民事再生手続開始を申し立て、2022年7月19日の債権者集会において再生計画案が可決され、2022年8月9日をもって東京地方裁判所による認可決定が確定した。以後、再建へ向けた取り組みを進めているが、引き続き、かかるサプライヤーからの供給の停止、遅延又は不足による当社グループの操業の停止、生産の遅延又は減少、もしくは財務的負担の増加やコストの上昇が生じる可能性があり、当社グループの業績と財務状況に大きな負の影響を及ぼす可能性がある。
当社グループのほとんど全ての業務は情報システムに依存しており、システムやネットワークも年々複雑化高度化している。今や、これらシステムネットワークのサービス無くしては業務の遂行は到底不可能である。この状況に対して大規模な自然災害、火災、停電等の事故は引き続き当該システムに対して脅威であり、更にコンピュータウイルスへの感染やより巧妙化しているサイバー攻撃など人為的な脅威も急激に高まっている。
当社グループではそれらのリスクに備え事業継続計画(BCP)の策定、システム及びインフラの老朽化更新、サイバーセキュリティ対策の向上等、ハード面・ソフト面両方にわたる様々な対策を実施している。しかしながら、想定を超える災害の発生、サイバー攻撃の発生やウイルス等への感染が発生した場合には、システムダウンによる業務の停止、重要なデータの消失、機密情報や個人情報の盗取や漏えい等のインシデントを引き起こす可能性がある。その結果、当社グループの業績や信頼性に対する評判、財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりである。
当連結会計年度のグローバル全体需要は前連結会計年度に比べ8.6%増の8,454万台となった。当社グループのグローバル小売台数は前連結会計年度に比べ4.1%増の344万2千台となった。売上高は12兆6,857億円となり、前連結会計年度に比べ2兆890億円(19.7%)の増収となった。営業利益は5,687億円となり、前連結会計年度に比べ1,916億円(50.8%)の増益となった。
営業外損益は1,334億円の利益となり、前連結会計年度に比べ49億円の減益となった。経常利益は7,022億円となり、前連結会計年度に比べ1,867億円(36.2%)の増益となった。特別損益は1,029億円の損失となり、前連結会計年度に比べ101億円の改善となった。税金等調整前当期純利益は5,992億円となり、前連結会計年度に比べ1,968億円(48.9%)の増益となった。親会社株主に帰属する当期純利益は4,266億円となり、前連結会計年度に比べ2,047億円(92.3%)の増益となった。
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動により9,609億円増加、投資活動により8,127億円減少、財務活動により1,316億円減少した。また、現金及び現金同等物に係る換算差額により951億円増加した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に対し1,118億円(5.6%)増加の2兆1,262億円となった。
(注) 台数集約期間は2023年4月から2024年3月までである。
当社グループの受注生産は僅少なので受注状況の記載を省略する。
(注) 1 台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は2023年1月から2023年12月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは2023年4月から2024年3月までである。
2 中国には合弁会社である東風汽車有限公司の販売台数が含まれる。
(注) 台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は2023年1月から2023年12月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは2023年4月から2024年3月までである。
(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであり、原則として連結財務諸表に基づいて分析したものである。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月28日)現在において当社グループが判断したものである。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
連結財務諸表を作成するにあたって、重要な見積りは以下のとおりである。なお、「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の適用に伴い、翌連結会計年度に重要な影響を及ぼす可能性のある一部の項目については、第5[経理の状況]の1[連結財務諸表等]の(重要な会計上の見積り)に記載している。
a.製品保証引当金
当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款に従い、類似の費用特性を有する製品グループごとに保証経過期間における発生費用総額に対して、過去実績に基づく保証期間内の費用発生パターンを見積もり、引当金を算定している。当社グループは、製品の安全を最優先課題として、研究開発・製造から販売サービスまで最善の努力を傾けているが、実際の製品の不具合等により発生した保証費用の発生パターンの実績が見積りと乖離した場合、引当金の追加計上が必要となる可能性がある。
b.退職給付費用
当社グループの従業員の退職給付に備えるための退職給付費用及び債務は、割引率、退職率及び死亡率などの年金数理計算上の基礎率及び年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されている。ただし、国際財務報告基準(IFRS)を適用している在外子会社においては、年金資産の期待運用収益率ではなく、利息純額として年金数理計算上の割引率と同じ指標が用いられている。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性がある。
当社グループの当連結会計年度における経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討結果は、次のとおりである。
(業績)
a.売上高
連結売上高は前連結会計年度に対し2兆890億円(19.7%)増加し、12兆6,857億円となった。これは主に、販売台数の増加、台当たり正味売上高の改善及び為替変動によるものである。
b.営業利益
連結営業利益は5,687億円となり、売上高営業利益率は4.5%となった。前連結会計年度の3,771億円の利益に対し1,916億円(50.8%)の増益となった。これは主に、販売台数の増加、台当たり正味売上高の改善及び固定費の徹底管理によるものである。
c.営業外損益
連結営業外損益は1,334億円の利益となり、前連結会計年度の1,383億円の利益に対し、49億円の減益となった。これは主に、持分法による投資利益の減少によるものである。
d.特別損益
連結特別損益は1,029億円の損失となり、前連結会計年度の1,130億円の損失に対し、101億円の改善となった。これは主に、当連結会計年度に一過性の訴訟関連損失及び減損損失を計上したものの、前連結会計年度においてはロシア市場からの撤退に関連する損失等を計上したことによるものである。
e.法人税等
法人税等は1,497億円となり、116億円(7.2%)の減少となった。これは主に、当社において繰延税金資産の回収可能性を判断する際の企業分類の見直しを行ったことによるものである。
f.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は4,266億円となり、前連結会計年度に比べ2,047億円(92.3%)の増益となった。
(事業セグメント)
a.自動車事業
当社グループのグローバル小売台数は344万2千台となり、前連結会計年度に比べ13万7千台(4.1%)の増加となった。日本、北米、欧州等中国以外の地域は前連結会計年度に比べ17.2%増加したものの、中国市場では減少した。日本国内では前連結会計年度に比べ6.5%増の48万4千台、メキシコとカナダを含む北米では前連結会計年度に比べ23.3%増の126万2千台、欧州では前連結会計年度に比べ17.2%増の36万1千台、中国では前連結会計年度に比べ24.1%減の79万4千台、その他地域は前連結会計年度に比べ14.2%増の54万1千台となった。
自動車事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は11兆7,825億円となり、前連結会計年度に比べ2兆957億円(21.6%)の増収となった。営業利益は2,216億円となり、前連結会計年度に比べ1,786億円(415.9%)の増益となった。これは主に、販売台数の増加に加え、台当たり正味売上高の改善及び固定費の徹底管理によるものである。
なお、当連結会計年度におけるセグメント間の取引消去額を含む自動車事業の営業利益は2,600億円となった。
b.販売金融事業
販売金融事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は1兆1,618億円となり、前連結会計年度に比べ1,380億円(13.5%)の増収となった。営業利益は3,087億円となり、前連結会計年度に比べ32億円(1.0%)の減益となった。これは主に、ポートフォリオの拡大や為替変動による増益影響はあったものの、金利上昇に伴う調達コストの増加及び市場の徐々な正常化に伴う貸倒引当金の繰入額の増加によるものである。
(地域セグメント)
a.日本
日本国内市場の全体需要は前連結会計年度に比べ3.2%増加し453万台となった。当社グループの小売台数は前連結会計年度に比べ6.5%増の48万4千台となり、市場占有率は前連結会計年度に比べ0.3ポイント増の10.7%となった。
この結果、日本地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は4兆9,479億円と、前連結会計年度に比べ1兆96億円(25.6%)の増収となった。営業利益は1,081億円となり、前連結会計年度に比べ2,584億円の改善となった。これは主に、インフレーションはあったものの、国内販売については新型「セレナ」等の新車投入による台数の増加及び台当たり正味売上高の改善、輸出については台数の増加及び為替変動の影響によるものである。
b.北米
メキシコとカナダを含む北米市場の全体需要は前連結会計年度に比べ13.1%増加し1,880万台となり、当社グループの小売台数は前連結会計年度に比べ23.3%増の126万2千台となった。
この結果、北米地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は7兆2,793億円と、前連結会計年度に比べ1兆3,302億円(22.4%)の増収となった。営業利益は3,345億円となり、前連結会計年度に比べ215億円(6.0%)の減益となった。これは主に、販売台数の増加、原材料価格の減少及び為替変動の影響はあったものの、販売奨励金の増加及びインフレーションによるものである。
米国市場の全体需要は前連結会計年度に比べ12.4%増加し1,568万台となった。当社グループの小売台数は前連結会計年度に比べ19.8%増の91万6千台となり、市場占有率は前連結会計年度に比べ0.3ポイント増の5.8%となった。
c.欧州
ロシアを含む欧州市場の全体需要は前連結会計年度に比べ12.3%増加し1,635万台となった。当社グループの小売台数は前連結会計年度に比べ17.2%増の36万1千台となり、市場占有率は前連結会計年度に比べ0.1ポイント増の2.2%となった。
この結果、欧州地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は1兆8,705億円と、前連結会計年度に比べ4,738億円(33.9%)の増収となった。営業損失は173億円となり、前連結会計年度に比べ127億円の悪化となった。これは主に、「日産ジューク」、「キャシュカイ」、新型「エクストレイル」等の販売台数の増加、原材料価格の減少はあったものの、販売費用の増加及びインフレーションによるものである。
d.アジア
中国を除くアジア市場の小売台数は前連結会計年度に比べ7.6%減の11万6千台となった。アジア地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は1兆6,078億円と、前連結会計年度に比べ1,689億円(11.7%)の増収となった。営業利益は1,092億円となり、前連結会計年度に比べ233億円(27.1%)の増益となった。これは主に、輸出台数の増加及び原材料価格の減少によるものである。
中国市場の全体需要は、前連結会計年度に比べ6.0%増加し2,475万台となった。当社グループの小売台数は前連結会計年度に比べ24.1%減の79万4千台となり、市場占有率は前連結会計年度に比べ1.3ポイント減の3.2%となった。これは主に、小型商用車事業の売却、価格競争の激化、及びICE車から新エネルギー車へのシフトが加速したことによるものである。なお、合弁会社である東風汽車有限公司の業績は、持分法による投資損益として営業外損益に計上している。
e.その他
大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等における当社グループの小売台数は、前連結会計年度に比べ22.1%増の42万5千台となった。中南米市場の小売台数は前連結会計年度に比べ23.9%増の16万7千台、中東市場の小売台数は前連結会計年度に比べ26.8%増の15万2千台、南アフリカ等のアフリカ市場の小売台数は前連結会計年度に比べ13.1%減の5万5千台となった。
大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は1兆5,146億円と、前連結会計年度に比べ3,487億円(29.9%)の増収となった。営業利益は273億円となり、前連結会計年度に比べ572億円(67.7%)の減益となった。これは主に、販売費用の増加及びインフレーションによるものである。
当社グループは、グローバルに展開するグループ会社の資金状況を当社にて一括管理し、グループの資金効率を高めている。
当社グループの資金需要としては、自動車事業における研究開発費及び設備投資と、販売金融事業における金融資産の取得原資などがある。これらの必要資金を安定的に確保するため、運転資金効率の改善を含めた自動車事業の営業キャッシュ・フローの向上やグループ内の余剰資金の活用により、内部資金を最大限に利用している。また、外部調達としては、銀行借入やコマーシャルペーパー及び社債の発行のほか、販売金融事業では保有金融債権の流動化も行い、各地域での金融市場の特性や状況に応じて調達手法を最適に組み合わせることで、低コストでの資金調達を実現している。なお、研究開発費及び設備投資については、電動化、モビリティ革新、グローバルなエコシステムの構築といった重点分野に集中して投入している。また、販売金融事業における自動車ローンや自動車リースを中心とした金融資産の取得については、常に資産の質を重視して管理している。株主への配当については、収益及びキャッシュ・フロー等の状況を総合的に勘案し決定している。
流動性について、当社グループは、地政学的リスクや金融市場の想定外の変化にも対応できるよう、常に十分な流動性の確保を図っている。当社グループは従来から世界の主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、自動車事業と販売金融事業を合わせたグループ全体での未使用のコミットメントラインとして2024年3月末時点で2兆1,823億円を保有している。また、2024年3月末時点での自動車事業における手元資金は2兆143億円である。これらにより当社グループの流動性は十分に高い水準にあると考えている。
当社グループによる無担保資金調達に係わるコスト及びその発行の可否は、一般に当社グループに関する信用格付によっている。ムーディーズ(Moody's)、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、フィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)及び格付投資情報センター(R&I)による2024年5月末時点での当社の長期信用格付は以下のとおりである。なお、これらの格付は当社グループの債券の売買・保有を推奨するものではない。また、当社グループの金融債務やコミットメントラインについて、格付の見直しにより強制的に返済の必要が生じたり新たな借入が制限される条件が付されているものはない。
なお、当社グループは、事業の中核と位置付けているサステナビリティの推進に必要となる資金を調達するため、2022年7月にサステナブル・ファイナンス・フレームワークを策定し、フレームワークに基づき2022年度に資金調達を行った。本フレームワークを通じて調達した資金は、バッテリーを含む電動車の開発や生産、EVエコシステム・スマートシティの実現に向けた技術開発やインフラ整備、より安全で持続可能なモビリティの開発など、幅広い取り組みに使用されている。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況と、前連結会計年度に対するキャッシュ・フローの増減は以下のとおりである。
営業活動
営業活動による収入は9,609億円となり、前連結会計年度の1兆2,211億円の収入に比べて2,602億円減少した。これは主として、自動車事業の収益の改善があった一方で、事業拡大に伴う当連結会計年度の販売金融債権の増加によるものである。
投資活動
投資活動による支出は8,127億円となり、前連結会計年度の4,470億円の支出に比べて3,656億円支出が増加した。これは主として、設備投資の増加と、販売金融事業のリース車両の取得が増加したことによるものである。
財務活動
財務活動による支出は1,316億円となり、前連結会計年度の6,706億円の支出に比べて5,391億円の支出が減少した。これは主として、販売金融事業の資金調達が増加したことによるものである。
なお、当連結会計年度における自動車事業のフリーキャッシュフローは前連結会計年度に比べ1,363億円改善し、3,230億円のプラスとなった。また、当連結会計年度末における自動車事業のネットキャッシュは1兆5,460億円となり、前連結会計年度末から3,328億円増加した。
セグメント別の内訳は以下のとおりである。
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
(百万円)
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
(百万円)
対前年度増減
(百万円)
当社は、1999年3月27日にルノーとの間で締結された「アライアンス及び資本参加契約」(Alliance and Equity Participation Agreement。以下、「AEPA」という。)並びにこれを改訂した2002年3月28日付「改訂アライアンス基本契約」(Restated Alliance Master Agreement。以下、「RAMA」という。)及びその改訂に代わる新たなアライアンス契約として、2023年7月26日にルノーとの間で「新アライアンス契約」(New Alliance Agreement)を締結した。その後、新アライアンス契約は、2023年11月7日に締結された「第1次改訂新アライアンス契約」(First Amended and Restated New Alliance Agreement。以下、「改訂新アライアンス契約」という。)により改訂され、前提条件の充足を受けて、2023年11月8日に改訂新アライアンス契約の法的効力が発効した。これにより、同日をもってAEPA及びRAMAは失効した。
改訂新アライアンス契約については、ガバナンス向上及び透明性の向上の観点から、契約上の守秘義務に抵触しない範囲で、以下のとおり内容の一部を開示する。
(株式譲渡制限及び株式取得制限)
ルノーと当社グループは、株式譲渡制限及び株式取得制限を伴う約15%の株式を相互に保有する。
(取締役候補者の推薦)
ルノーは当社の取締役会において2名の取締役を推薦する権利を有し、当社はルノーの取締役会において2名の取締役を推薦する権利を有する
(ルノーによる当社株式の信託及び売却)
ルノーは、2023年11月8日時点で同社が保有していた当社株式43.4%のうち、約28.4%をフランスの信託会社に信託し、当該株式が売却されるまでの間、当該株式のすべてに付随する経済面での権利(配当金と株式売却収入)を有する。
ルノーは、同社にとって商慣習上合理的な場合、信託会社に信託した当社株式の売却を指示するが、特定の期間内に売却する義務は負わない。ルノーは、当社と協調的で秩序あるプロセスにおいて自由に信託内の当社株式を売却できるが、当社は筆頭の売却候補として、直接又は第三者を通じてその優先的な地位を享受する。
(議決権行使)
ルノーにより信託会社に信託された当社株式に付随する議決権は、以下の場合を除き、中立的に行使される。
・ルノーが推薦する当社取締役の選任又は解任(信託会社はルノーの指示に従って議決権を行使する)
・ルノーが推薦する当社取締役以外の当社指名委員会が推薦する当社取締役の選任又は解任(信託会社は当社指名委員会の決定及び提案に賛成する)
・当社の取締役会が支持しない株主提案(信託会社は棄権する)
ルノー及び当社グループ双方による議決権行使は、行使可能な総議決権数の15%が上限とされ、両社は当該上限内で自由に相手方に対する議決権の行使が可能である。
(アライアンス オペレーティング ボード)
当社、ルノー及び三菱自動車工業株式会社との間で設立されたアライアンス オペレーティング ボードは、当社、ルノー及び三菱自動車工業株式会社の調整の場として存続する。
なお、改訂新アライアンス契約の当初有効期間は、発効日から15年となる。
当社グループは、将来にわたって持続性のあるモビリティ社会の実現に向けて、環境や安全など様々な分野での研究開発活動を積極的に行っている。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
当社グループの研究開発体制及び活動成果は次のとおりである。
当社グループの日本における研究開発は、日産テクニカルセンター(神奈川県厚木市)を中心に、車両開発を株式会社日産オートモーティブテクノロジー、日産車体株式会社、ユニット開発をジヤトコ株式会社などの関係各社が担当し、当社と密接な連携のもとで推進している。
米欧地域においては、米国の北米日産会社、メキシコのメキシコ日産自動車会社、英国の英国日産自動車製造会社、スペインの日産モトール・イベリカ会社において、一部車種の設計開発業務を行っている。また、米国の日産先進技術開発センター・シリコンバレーにおいて、自動運転車の研究、最先端のICT(Information and Communication Technology)技術開発を行っている。
アジア地域では、中国の日産(中国)投資有限公司、東風汽車集団股份有限公司との合弁会社である東風汽車有限公司、台湾の裕隆汽車製造股份有限公司との合弁会社である裕隆日産汽車股份有限公司、タイのアジア・パシフィック日産自動車会社及びインドのルノー日産テクノロジー&ビジネスセンターインディア社において一部車種のデザイン及び設計開発業務を行っている。また、ルノーとの合弁会社アライアンス研究開発(上海)有限公司を2019年に設立し、自動運転車、電気自動車(EV)、コネクテッドカーに重点を置いた研究開発を行っている。
また、南米地域のブラジル日産自動車会社、南アフリカの日産サウスアフリカ会社においても現地生産車の一部開発業務を行っている。
(2) 新商品の開発状況
国内にて、「フェアレディZ NISMO」、「スカイライン NISMO」、「アトラス」、「日産クリッパー EV」を発売した。海外では、中国において「キャッシュカイ」、「パラディン」、「パスファインダー」および、新エネルギー車(NEV)のヴェヌーシア「V-Online DD-i」、「VX6」を発売した。
日産は2021年11月に「共に切り拓く モビリティとその先へ」をスローガンとして、新しい長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表した。日産は今後10年間で、数多くのワクワクする電動車とイノベーションを提供し、グローバルに事業を拡大していく。この長期ビジョンは、2050年度までに製品のライフサイクル全体でカーボンニュートラルを実現するという当社の目標を支えるものである。
そして、バランスの取れたポートフォリオで多様なお客さまのニーズと市場毎に異なる電動化のペースに対応するため、2024年度から2030年度の間で計34車種の電動車を投入してすべてのセグメントをカバーする。その結果、グローバルな電動車のモデルミックスは2026年度に約40%、2030年度には約60%になる見込みである。
また、電動化の鍵となるバッテリーについては従来のNCMリチウムイオンバッテリーの性能を向上していくとともに、コストに優れるLFPバッテリーおよびバッテリーの革新となる全固体電池の開発を進めていく。これらの進化したNCMリチウムイオンバッテリー、LFPバッテリー、全個体電池を搭載したEVは、2028年度に投入する予定である。さらに、EVと「e-POWER」でモーター・インバーターなど主要部品の共用化・モジュール化することによりコストの大幅低減を実現する次世代電動パワートレイン「X-in-1」技術開発を通じ、電動車の競争力をさらに向上させる。
EVでは、「日産リーフ」、SUVの「日産アリア」、軽自動車の「日産サクラ」に続き、ビジネスユースもサポートする軽商用EVバンの「日産クリッパー EV」を発売した。
「日産クリッパー EV」は、軽商用バンとして必要な荷室性能と積載量を確保しながらも、モーター駆動のEVならではの力強い走りで、重い荷物も軽快に運ぶことが可能である。また、走行時や起動・停車時の静粛性も高く、早朝や深夜をはじめ、住宅街での使用にも適する。
さらに、次世代のEVに向けては競争力を確保するため、プラットフォームを共有するファミリー開発などの効率化を行い、EVのコストをガソリン車(ICE車)と同等にしていくことを目指す。
車両の電動化では、ガソリンエンジンで発電した電力を利用し、モーターの力で走行する「e-POWER」を2016年より採用している。
2023年には、新開発の「e-POWER」専用設計エンジンを搭載した「セレナ」において、燃焼効率の向上やスムースで力強い加速、優れた静粛性などが評価され2023-2024「日本カー・オブ・ザ・イヤー」において「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」、2024年次「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」において「RJCカーオブザイヤー」と「RJCテクノロジーオブザイヤー」を受賞した。さらに、グローバル市場における採用拡大のため、2023年には中国で「エクストレイル」へ「e-POWER」搭載モデルを設定した。
今後も「e-POWER」は環境性能と走行性能を高い次元でバランスさせながら、幅広い車種に搭載可能な技術として進化を続けていく。EV同様、コストのさらなる低減に向け、発電専用エンジンの開発及び定点運転に特化するシステムの簡素化に取り組む。さらに次世代の「e-POWER」向け発電専用エンジンでは、世界最高レベルの熱効率50%を実現する技術を開発し、一層のCO2排出量の削減(燃費向上)を目指す。
車両の軽量化も燃費向上に向けた重要な取り組みのひとつであり、材料、構造合理化、工法の3つの手法により推進している。材料では、高強度と高成形性を両立できる超ハイテン材の採用拡大をいち早く進めており、軽自動車からインフィニティに至るまで、幅広い車種の車体骨格部材に採用している。2020年「ローグ」、「キャシュカイ」、「ノート」、2022年「日産アリア」、2023年「セレナ」など採用車種の拡大を進めている。また、構造合理化においては、新設計したモーター、インバーターを適用した「e-POWER」システムを2020年発売の「ノート」に採用した。6%の出力向上を図りながら、モーターでは15%、インバーターでは30%の軽量化を実現している。2023年「セレナ」にも同様の技術を採用している。
当社グループは「EVを作って売る」のみならず、環境の整備をはじめEVのある生活・社会をより豊かなものにするための様々なソリューション「ニッサンエナジー」を提供しており、それらを合わせた「EVエコシステム」を構築してきた。「ニッサンエナジー」は次の3つの領域で構成される。
・充電ソリューションの拡充:安心・便利なEVライフのための各種充電ソリューションを提供
・EVを活用したエネルギーマネジメントサービス:EVのバッテリーに貯めた電力を、住宅と「シェア」することで、新たな価値を提供。さらにビル、地域社会へ拡大する取り組みを推進。日本では法人や地方自治体のお客様向けに、「ニッサンエナジー・シェア」としてエネルギーマネージメントのサービスを提供
・リチウムイオンバッテリー二次利用事業「4R」の推進:EVがさらに普及する将来を見据え、クルマで使用された後でも高い性能を有する日産のEVのバッテリーを二次利用するための取り組みを推進
加えて、EVを活用し日本が抱える地球温暖化、災害対策、再生可能エネルギーの推進、地方での観光の活性化や交通課題といった課題を解決するための活動、日本電動化アクション『ブルー・スイッチ』に取り組んでいる。再生可能エネルギーの利活用に有効な手段であるEVは、地球規模の課題である脱炭素社会の実現に大きく貢献するものであり、2024年3月末時点で自治体・企業との連携によるブルー・スイッチ活動は254件となった。
安全面において、日産は事故による犠牲者を減らすため、事故そのものを減らすことに取り組み、安全性能に係わる技術の進化と採用拡大を推進する。
日本では、自動車アセスメント(JNCAP)にて、「セレナ」、「エクストレイル」が最高評価となるファイブスター賞を獲得した。米国では、米国新車アセスメントプログラム(US-NCAP)にて「日産リーフ」、「日産リーフプラス」、「ムラーノ」、「アルティマ」、「マキシマ」、「セントラ」、「ヴァーサ」、「ローグ」、「日産アリア FWD」、「パスファインダー AWD」、インフィニティ「QX50」、「QX60 AWD」が最高評価となる5つ星を獲得した。また、米国道路安全保険協会(IIHS)にて、「パスファインダー」がトップセーフティピック+(TSP+)を獲得、「日産アリア」、インフィニティ「QX60」がトップセーフティピック(TSP)を獲得した。中国では、中国新車アセスメントプログラム(C-NCAP)にて「日産アリア」が5つ星を獲得した。
また、当社グループは交通事故低減に大きな効果が期待できる運転支援技術の採用を推進している。さらに、ドライバーの負担を軽減する技術として、2016年より「プロパイロット」、2019年より高速道路で同一車線内ハンズオフが可能なナビ連動ルート走行を実現した「プロパイロット2.0」を販売しており、2023年には「セレナ」へミニバン世界初として採用した。引き続き、プロパイロット技術を軽自動車に至るまで幅広い車種で採用を推進していく。
また、2027年度には、ドアツードアの自動運転技術を搭載した次世代プロパイロットを投入する予定である。さらに、2030年度にはアクティブセーフティとAI技術を融合させたシステムを実用化し、さらなる交通事故の低減を目指していく。
当社グループは、「Nissan Ambition 2030」に基づき、今後も競争力のある商品、将来に向けた先端技術等のための研究開発活動に積極的に取り組んでいく。