第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループでは「わたしたちは、すべての人の、クオリティ オブ ライフに向きあいます。いつでも、どこでも、あなたに。」を企業理念とし、「あなたの、いちばん近くにある安心」をスローガンとして掲げ、患者さまのQOL向上に役立つ医療サービスを提供することを基本方針としております。
 また、当社グループの全役職員は、コンプライアンスの精神に則り、各種法令、規則等の遵守、自律的に何が倫理的に正しい行為かを考え、その価値判断に基づき行動いたします。

 

(2)目標とする経営指標

資本効率を重視する連結業績管理制度を採用し、自己資本利益率(ROE)や総資産利益率(ROA)を基準とした経営管理を行っております。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

当社グループは、総合ヘルスケアカンパニーへ躍進するために、更なる成長に向けて連結売上高3,000億円、営業利益240億円を中期目標として掲げております。実現のためのキーワードとして、「質の向上」「規模の拡大」「更なる成長」を掲げ、全事業一体となって取り組んでまいります。

また、サステナビリティの実現に向けて、環境負荷の低減に努めるとともに、SDGsへの理解を全社的に促進し未来につながる取り組みを実施します。そして、事業活動を通してステークホルダーの皆さまにとっての社会的価値や経済的価値の向上のための議論を進めており、具体的な価値や進捗の見える化に取り組んでまいります。

 

事業戦略については次のとおりであります。

 

① 保険薬局事業

保険薬局事業においては、患者さまの求める薬局のあり方を追求し続け、更なる利便性や安心の提供を目指します。そして、医療の継続や質の平準化を進め、地域医療の安定化に寄与できる体制を引き続き構築してまいります。

当社グループの教育制度を最大限に活用して高度な医療へ対応できる薬剤師を配置していくことにより、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局の認定取得に取り組むとともに、より多くの患者さまにクオールの価値を届けてまいります。また、在宅基幹店を中心に施設と各店舗間の調整・サポートを行う等、在宅・施設調剤に戦略的に取り組むことで、患者さまに寄り添う医療の実現に注力いたします。

そして、今まで以上に良質な医療を患者さまへ届け続けるために、コストの見直しをゼロベースで行うとともに、生産性の向上に取り組んでまいります。

DXについては、薬局のビジネスモデルを改革するとともに、電子処方箋対応等、国が求める医療DXへ迅速に対応してまいります。

規模の拡大においては、M&Aや新規出店を積極的に行うとともに、異業種との協業による認知度向上を図ってまいります。その一環として、2023年4月より、サントリーウエルネス株式会社との健康支援に関する協業を開始いたしました。薬局を通じて、患者さまやお客さまに未病領域から健康を支援できるよう努めます。

 

 

 

② 医療関連事業

CSO事業においては、MRの派遣数を増加させ、更なる事業の拡大に注力してまいります。また、医療現場からの多様化するニーズに応えていくために、医療の発展に則した様々な領域の営業も受託してまいります。

紹介派遣事業においては、自社サイト刷新により集客数を拡大するとともに、データベース自動化等の仕組みを強化することで生産性を向上させ、更なる成約件数の拡大を目指します。2023年4月にグループ化した株式会社オンコールとのグループ化によるシナジーを活かして、更なる事業拡大につなげてまいります。

出版関連事業においては、従来取り組んできた、クライアントニーズの変化やデジタルシフトへの対応力強化と組織力強化によって、既存事業の拡大を目指してまいります。また、コンベンション事業やコンプライアンスサービス事業等の新規事業の、更なる拡大及び安定化に取り組んでまいります。

医薬品製造販売事業においては、工場への設備投資を継続して実施し、医薬品の品質管理と安定供給に取り組んでまいります。また、第一三共エスファ株式会社のグループ化に伴い、2024年4月付で製薬事業推進部を新設し管理面の支援を行うとともに、新製品の開発に注力しパイプラインの拡充を図ることで、持続的な成長基盤を構築してまいります。

 

※CSO:Contract Sales Organizationの略

※MR:Medical Representativeの略

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ基本方針

あらゆるステークホルダーと共に、事業を通じて、社会的な課題の改善、新しい技術による新しい価値の提供に取り組み、すべての人の持続可能なQOL向上を目指します。

 

(2)ガバナンス

当社グループは、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会はサステナビリティに関する事項の議論を行い、その内容は取締役会に報告しております。取締役会は、サステナビリティ委員会から答申された重要事項の決定を行い、同委員会の監督を行います。

また、当社グループの関連部門長をメンバーとするサステナビリティ委員会事務局をサステナビリティ委員会の下部組織として設置し、当社グループ全体が取り組むべき施策とKPIについて審議検討後サステナビリティ委員会に上程しております。また、サステナビリティ委員会で決定された施策の進捗管理を行っております。

 


 

(3)戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

当社グループは、総合ヘルスケアカンパニーへ躍進するために、「規模の拡大」「利益最大化」「デジタル化」をキーワードとして掲げ、全事業一体となって協調して取り組んでおります。この取り組みに求められる、優秀な人材を採用・育成するために、以下の人事戦略を策定しております。

 

人材育成方針

当社グループでは、持続的な成長の実現に向けて、組織力と収益力の二つの強化を人材育成の軸としております。組織力を強化するために、各階層別に人間力・判断力・実行力の養成を行うとともに、収益力を強化するために、専門的な知識や職能の向上につながる実践的な教育を行ってまいります。

 

社内環境整備方針

当社グループでは、持続的な成長の実現に向けて、生産性の向上と働きやすい環境の整備が重要であると考えております。そしてこれらを実現するために、成長を後押しする人事制度、多様な人材が活躍できる環境、及び優秀な人材を安定的に確保できる採用の仕組みを整備してまいります。

具体的には、挑戦意欲の高い社員が早期に昇給や昇格を目指すことのできる人事制度を設計し、子育てと業務の両立を可能とする体制を充実させるとともに、保険薬局事業と紹介派遣事業のシナジーを活かした採用を行ってまいります。また、当社グループでは、職種を問わず、業務遂行に求められる能力をもつ従業員の活躍の場を広げたいと考えております。店舗責任者の任命要件を改変し、保有資格によらず店舗ごとに最適な従業員を店舗責任者とする人事制度を導入するなど、従業員が生き生きと働き続けられる人事制度を構築してまいります。

さらに、従業員自身が健康であることが安心・安全な医療を提供する土台であると考え、スポーツ庁「スポーツエールカンパニー2024」認定を取得するなど、従業員の健康増進のために様々な施策を実施しております。

 

(4)リスク管理

当社グループは、全社より抽出した事業全般に関わるリスクを、経営影響度、発生可能性などをふまえて重要度を識別し、サステナビリティ委員会で当社グループとして対応すべき事項を管理しております。また、その内容は取締役会に適宜報告を行っております。

 

 

(5)指標及び目標

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、以下の指標及び目標を用いております。

なお当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社で行われているわけではないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、以下の指標に関する目標は、当社及び連結グループにおける主要な事業を営むクオール株式会社のものを記載しております。

 

 

管理職に占める
女性労働者の割合(%)

(注2、4)

男性労働者の
育児休業等取得率(%)

(注5)

労働者の男女の賃金差異(%)(注2、6)

全労働者

うち正規雇用
労働者

うちパート・
有期労働者

提出会社

(注3)

クオール
株式会社

30

50

80

75

110

 

 

(注)1.上記指標についての実績は、「第1 企業の状況 5 従業員の状況」に記載しております。

2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)(以下、「女活法」といいます。)の規定に基づき算出したものです。

3.提出会社は、「女活法」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)(以下、「育休法」といいます。)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

4. 管理職に占める女性労働者の割合については、出向者を出向元の労働者として集計しております。

5. 男性労働者の育児休業取得率については、「育休法」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育休法施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。なお、「配偶者が出産した男性労働者の数」のうち、「育児休業等をした男性労働者の数」の割合を示しております。また、出向者を出向元の労働者として集計しております。

6. 労働者の男女の賃金差異については、男性労働者の賃金に対する女性労働者の賃金の割合を示しております。なお、同一労働の賃金に男女差はなく、職種や等級別人数構成の差によるものであります。出向者は出向先の労働者として集計しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)法的規制等について

a. 当社グループの行う事業について

当社グループの行う事業では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法といいます。)」「健康保険法」「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」等の法令による規制を受けております。各都道府県等の許可・登録・指定・免許を受けることができない場合、関連する法令に違反した場合、または法令が改正された場合等において、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

b. 薬剤師の確保について

保険薬局業務においては、「薬剤師法」第19条に基づき薬剤師以外の調剤が禁じられております。また、薬局、店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令に基づき、1日平均取扱処方箋40枚に対して1人の薬剤師を配置する必要がある旨定められております。

このため、新規採用者数の減少・退職者数の増加などにより薬剤師の必要人数が確保できない場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)医療業界の事業環境について

a. 医薬分業の動向について

医薬分業は、医療機関と保険薬局がそれぞれ専門分野で業務を分担し、国民医療の質の向上を図ろうとするものであり、国の政策として推進されてきました。今後、動向が変化する場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

b. 調剤報酬・薬価改定について

調剤売上は、薬剤料収入と技術料収入から成り立っており、調剤報酬及び薬価は厚生労働省により定められております。また、調剤報酬及び薬価は、国民医療費を抑制するため、段階的に改定されております。今後、調剤報酬・薬価改定が行われ、調剤報酬及び薬価の点数、金額等が変更になった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)新規出店について

当社グループは、当連結会計年度末現在、920店舗を運営しております。当社グループの業容拡大には、店舗数の拡大が大きく寄与しております。

今後ともM&Aを含めて店舗数の拡大を図っていく方針でありますが、当社グループの出店条件に合致する新規案件を確保できないことにより計画どおりに出店できない場合には当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)調剤過誤について

当社グループでは、調剤過誤を防止するために、社内教育の徹底、調剤過誤防止システムの導入、社内イントラネットを活用した実績の収集等、様々な対策を講じております。しかし、調剤過誤が発生することで、訴訟による多額の損害賠償の支払いや、社会的信用を損なうことがあった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)個人情報の利用・管理について

当社グループは、業務上多くの個人情報を保有しておりますが、その管理については、適切に行っております。当社では2005年4月の「個人情報保護法」の施行にあわせて、個人情報保護に関する当社の基本方針を明確化した「個人情報保護方針」及び個人情報取扱いに関する基本事項を定めた「個人情報保護基本規程」を制定して、個人情報の保護について十分注意し漏洩防止に努めております。万一個人情報が漏洩した場合、当社グループの社会的信用の低下、損害賠償責任の発生等、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。

 

(6)消費税等の影響について

保険薬局事業においては、社会保険診療に係わる調剤売上は消費税法上非課税となる一方、医薬品等の仕入は同法において課税されております。このため、当社グループ内の保険薬局事業会社は、消費税等の最終負担者となっており、仕入先に支払った消費税等は、売上原価に計上されております。

過去の消費税等の導入時及び消費税率改定時には、消費税率の上昇分が薬価の改定において考慮されておりましたが、今後、消費税率が改定され、その影響が薬価に反映されなかった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)他社との提携について

他社との提携においては、知的財産権の侵害や機密情報の漏洩等のリスクがあります。また、提携に関する契約の条件変更等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)医薬品の品質・副作用について

当社グループの事業活動において、予期せぬ副作用の発生や何らかの原因による品質不良等により、販売中止・製品回収等の事態が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)サプライチェーンについて

当社グループの事業活動において、何らかの理由により原材料・商品の仕入れや製造活動に遅延または停止等の事態が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、製造販売を外部に委託している医薬品において、何らかの理由により製造委託先との契約の条件変更等が発生した場合、製品が供給できなくなることにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)環境・安全について

医薬品の研究・製造等の過程で使用される化学物質の中には、人体や生態系に悪影響を与える物質も含まれております。当社グループでは、医薬品等の管理には万全を期しておりますが、万一、大気汚染、土壌汚染、水質汚濁等の環境問題が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)資金調達について

当社グループの事業資金の一部は、金融機関からの借入により調達しております。このため、景気の後退、金融市場の悪化、金利の上昇、当社グループの信用力の低下、業績の見通しの悪化等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達を行えない可能性があります。万一当社グループが今後資金調達を望ましい条件で実行できない場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)のれんの減損について

当社グループは、M&A等により事業拡大を図ることを経営戦略として推進しております。M&A等においては、将来にわたり安定的な収益力を確保できることを十分に検討しておりますが、将来、計画どおりに収益を確保出来ない場合にはのれんに係る減損損失が発生し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)知的財産権について

当社グループでは、他者の持つ特許権、商標権等の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っておりますが、万一、他者の知的財産権を侵害した場合には、多額の損害賠償責任を負う可能性があります。

一方、当社グループの持つ知的財産権を侵害されないよう細心の注意を払っておりますが、他者からの侵害を把握しきれない、もしくは適切な対応ができない場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関連する訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(14)その他の規制について

当社グループでは、「薬機法」による広告の制限等の規制、または公正取引委員会による「医療用医薬品製造業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」等の医薬品業界特有の各種規制に対して、特段の注意を払っております。

今後においても、各種規制については十分に留意して事業運営を行う方針ですが、業界の様々な動きに対して、法令や業界団体による規制等の改廃、新設が行われる可能性があります。これらの新たな動きに当社グループが何らかの対応を余儀なくされた場合や、当社グループがこれらに対応できない場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)災害等について

予期せぬ火災、テロ、戦争、疫病、地震、異常気象等により、店舗、工場、事業所等の施設の損壊、施設への商品供給の停止及びその他事業継続に支障をきたす事態が発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)新型コロナウイルス感染症の影響について

保険薬局事業においては、経済活動の正常化に伴い、医療機関の外来診療の抑制等による影響が緩和されたものの、その経済環境への影響が変化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、新型コロナウイルス感染症対策として、アクリル板の設置や従業員へのマスク配布を行う他、当社グループの全社員を対象とした「新型コロナウイルス(COVID―19)関連行動指針」を定め、感染拡大防止に尽力しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、見積りが必要になる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績等の状況

当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類感染症へ移行したことに伴い、経済活動の正常化に向けた動きが着実に進行いたしました。しかしながら、エネルギー価格や原材料価格の高騰に伴う物価上昇等、景気の先行きにつきましては依然として不透明な状況が続いております

2024年1月に発生した令和6年能登半島地震では、社員の人的被害はありませんでした。一方で、石川県の3店舗において、一時休業を要する大きな被害を受けましたが、全国から約70名の社員を派遣し、「医療の継続」を最優先に安心・安全な医療の提供につとめてまいりました。クオール能登町薬局では、断水が続き営業再開に時間を要したため、行政に確認のもと能登町立松波中学校に仮設店舗を開設いたしました。また、被災者への支援や被災地の復興に役立てていただくために、日本赤十字社を通じての義援金、及び市町村への支援を行いました。

当社グループは、このような大きく変化する事業環境においても、患者さまにいちばん近い会社であり続けることを目指しており、「規模の拡大」「利益の最大化」「デジタル化」という三つのキーワードを掲げ、中期目標を実現するために、全事業一体となって取り組んでまいりました。2023年5月には、第一三共エスファ株式会社の全株式を段階的に取得することについて決議し、2023年10月に株式の30%を、2024年4月に株式の21%を取得し、連結子会社化いたしました。新たな事業への進出による経営基盤の強化を図っておりますが、第一三共エスファ株式会社を当社グループに受け入れる体制を整えるための費用が発生しております。また、第一三共エスファ株式会社が第一三共グループの対象から外れるための体制整備にも費用が発生しており、持分法による投資利益は当初の見込みを下回りました。

当連結会計年度における当社グループ連結業績は、売上高180,052百万円(前年同期比5.9%増加)、営業利益8,324百万円(前年同期比12.3%減少)、経常利益9,256百万円(前年同期比8.3%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,880百万円(前年同期比13.7%減少)となりました。また、EBITDAについては、13,566百万円(前年同期比5.7%減少)となりました。

 

 

セグメント別の財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。
 

a. 保険薬局事業

保険薬局事業においては、M&A、新規出店及び在宅・施設調剤の推進による規模の拡大、生産性向上による利益の最大化、次世代薬局等のデジタル化による患者さまの利便性向上に取り組みました。

当連結会計年度において、出店状況は、新規出店18店舗、事業譲受3店舗、子会社化による取得14店舗の計35店舗増加した一方、閉店により7店舗減少した結果、当事業全体で店舗数は920店舗となりました。今後も付加価値の高い薬局を展開していくために、戦略的なM&Aや新規出店により規模の拡大を図ってまいります。

薬局運営においては、新たな事業の柱としている在宅・施設調剤において、在宅調剤の全店実施に向けて取り組むとともに、在宅基幹店を増やすことで受け持つ施設数を大幅に増やしてまいります。

また、サントリーウエルネス株式会社との健康支援に関する協業を2023年4月より開始いたしました。サントリーウエルネス株式会社の健康食品を取り扱い、薬剤師からの説明を通じて適切な理解を促進することで、未病領域への取り組みを拡大してまいります。

2023年9月には薬局DX推進コンソーシアムの理事企業として、「調剤業務の一部外部委託」を内閣府地方創生推進事務局へ共同提案いたしました。今後も、地域における薬剤師の対人業務の強化につながる仕組みを検証してまいります。また、2024年4月付で、中核子会社であるクオール株式会社において、日本緩和医療薬学会の「在宅緩和ケア対応薬局」の認証を取得いたしました。質の高い緩和薬物療法を通じて、緩和ケアを必要とする患者さまをサポートすることで、地域コミュニティへ貢献してまいります。

業績につきましては、前期に実施したM&Aや新規出店の寄与と在宅・施設調剤の推進、及び流行性感染症の感染者数の増加等により、受付回数及び運営コストが増加いたしました。また、薬価改定及び調剤報酬の改定に係る地域支援体制加算の経過措置終了等により、薬剤料単価及び技術料単価は低下いたしました。

その結果、売上高は165,099百万円(前年同期比6.3%増加)、営業利益は10,730百万円(前年同期比6.7%減少)となりました。

また、当連結会計年度末の資産合計は、92,409百万円となり、前連結会計年度末から262百万円増加しております。

当社グループの属する保険薬局業界においては、調剤報酬・薬価改定が行われ、調剤報酬及び薬価の点数、金額等が変更になった場合や関連する法令が改正された場合等において、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
 詳細については、「第2  事業の状況  3  事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 

b. 医療関連事業

医療関連事業においては、引き続き主力事業であるCSO事業、紹介派遣事業、出版関連事業、医薬品製造販売事業の拡大に尽力し、総合ヘルスケアカンパニーへと前進するために着実な成長を目指します。

CSO事業においては、MR派遣需要の拡大により、派遣数が増加する一方、採用に係る費用は増加いたしました。今後も、医療現場からの多様化するニーズに応えていくために、幅広い経験を持つ人財を採用し専門領域MRの育成に注力するとともに、医療の発展に即した様々な領域の営業も受託してまいります。また、医薬品や食品等の開発業務の受託事業においては、食品試験を中心とした受注の増加により拡大いたしました。

紹介派遣事業においては、各職種において紹介派遣の需要が順調に拡大するとともに、取引先数の増加や営業の業務分業化等の各種取り組みにより、成約件数が増加いたしました。また、医師・看護師の短期求人案件のマッチングプラットフォームを有する株式会社オンコールを、2023年4月にグループ化いたしました。M&Aに伴う費用が発生しておりますが、グループ化によるシナジーを活かして、更なる事業拡大につなげてまいります。

出版関連事業においては、既存顧客に向けて、がん領域やデジタル資材等の成長性の高い資材を提供するとともに、学会等の製薬企業以外の顧客との取引を拡大しております。また、安定した収益が見込まれるコンベンション事業を拡大するとともに、新規に立ち上げたコンプライアンスサービス事業と既存の資材制作事業を組み合わせることにより、各種規制に則した質の高いサービスを提供してまいります。2024年2月には、一般社団法人 日本循環器協会が主催する、Go Red For Japan 健康セミナー「女性のココロと心臓のはなし」を運営いたしました。

医薬品製造販売事業においては、第一三共エスファ株式会社のグループ化によるシナジー効果を実現するための取り組みを行っております。また、既存製品に加え、2022年12月に発売を開始した、新型コロナウイルス抗原検査キット『テガルナ®スティックSARS-CoV-2 Ag』の販売促進を引き続き行っているものの、薬価改定による売上高の減少や原材料価格の高騰、工場の修繕等が業績へ影響いたしました。

その結果、売上高は14,952百万円(前年同期比2.0%増加)、営業利益は1,136百万円(前年同期比25.9%減少)となりました。

また、当連結会計年度末の資産合計は、11,403百万円となり、前連結会計年度末から418百万円増加しております。

当社グループが行う医療関連事業の運営においては、法令による規制を受けており、各都道府県等の許可・登録・指定・免許を受けることができない場合や、関連する法令に違反した場合、または法令が改正された場合等において、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
 詳細については、「第2  事業の状況  3  事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

※EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却額

 

(2) 販売、処方箋応需の実績

a. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

構成比(%)

前年同期比(%)

保険薬局事業

薬剤に係る収入

114,285

63.5%

6.2%

調剤技術に係る収入

39,142

21.7%

7.4%

一般薬等売上

11,671

6.5%

3.0%

小計

165,099

91.7%

6.3%

医療関連事業

14,952

8.3%

2.0%

合計

180,052

100.0%

5.9%

 

 

b. 処方箋応需実績

当連結会計年度における保険薬局事業の処方箋応需実績は、次のとおりであります。

 

処方箋応需枚数(千枚)

前年同期比(%)

16,467

10.1

 

 

(3)キャッシュ・フロー

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが13,533百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが13,155百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが7,969百万円の収入となりました。この結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ8,347百万円増加し26,944百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前当期純利益8,860百万円及びのれん償却額3,393百万円等により、13,533百万円の収入(前年同期11,662百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

関係会社株式の取得による支出7,570百万円及び連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出3,233百万円、有形固定資産の取得による支出2,072百万円等により、13,155百万円の支出(前年同期7,013百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

長期借入れによる収入18,300百万円及び長期借入金の返済による支出8,810百万円、配当金の支払額1,205百万円等により、7,969百万円の収入(前年同期2,569百万円の支出)となりました。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは商品の仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、新規出店及びM&A等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。また、多額な資金需要が発生した場合にはエクイティファイナンス等による調達手段を検討し対応することを基本としております。

 

 

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 

(のれんの減損の兆候に関する判断について)

保険薬局事業においてのれんを含む、より大きな単位について減損の兆候に該当する事象がある場合には、のれんを含む、より大きな単位で減損を認識するかどうかの判定を行いますが、当社グループにおいては営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスとなっているかどうかだけでなく、経営環境の著しい悪化に該当するかどうかの検討も重要となります。

経営環境の著しい悪化に該当するかどうかの検討は、主として、のれんを含む、より大きな単位ごとに重要な指標である売上高及びその見積りにおける主要な仮定の処方箋枚数について、当連結会計年度における傾向分析及び当連結会計年度の実績と将来の見積りの整合性を検討することにより実施されます。

 

(第一三共エスファ株式会社の営業権の評価及びのれんの償却期間)

第一三共エスファ株式会社(以下、DSEP)の持分法の適用に当たっては、持分法の適用日において、持分法適用会社の資産及び負債を時価により評価し、その結果生じた投資日における投資とこれに対応する被投資会社の資本との差額をのれんとし、投資に含めて処理しています。

DSEPの資産及び負債の時価評価には、時価評価の対象となる資産及び負債の把握並びにそれらの公正価値算定が必要となります。時価評価の対象となる資産のうち営業権については、経営者が策定した製品ごとの成分市場規模、後発医薬品への置換率、市場シェアの見込み、新規製品の投入見込等を主要な仮定とする事業計画及び加重平均資本コスト等の主要な仮定を用いたインカム・アプローチ法(超過収益法)により算定し、評価モデルの選定及び割引率に当たっては外部の専門家を利用しています。

また、のれんの償却期間は事業計画及び市場環境の見通しを基礎としてDSEPの製品の予想販売期間に基づいて決定しております。

営業権の公正価値算定の主要な仮定は、経営者が策定した製品ごとの成分市場規模、後発医薬品への置換率、市場シェアの見込み、新規製品の投入見込等を主要な仮定とする事業計画及び加重平均資本コスト等の主要な仮定を用いたインカム・アプローチ法(超過収益法)により算定される期間と判断しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社は、2023年5月16日開催の取締役会において、第一三共エスファ株式会社の全株式を段階的に取得することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結しました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」をご参照ください。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。