第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

① 会社の経営の基本方針

 当社グループは、「北海道に根ざした総合ヘルスケア企業グループとして健康を願う人々を支えつづけます」を基本理念としております。医薬品卸売事業と医療機器卸売事業の二つの事業をコアとして「予防・診断・治療・調剤・リハビリ・介護」という地域における健康ネットワーク全体の円滑な活動を支えて、患者様とご家族の満足の実現をめざします。

② 中長期的な会社の経営方針

 わが国は、急速な少子高齢化社会による人口構成の変化と人口の減少が予測される中で、高齢者ができる限り住み慣れた地域で医療・介護・福祉のサービスを享受するための「地域包括ケアシステム」の実現へ向けた取り組みが進められております。この事業環境の大きな変革を迎えて、当社グループは「ホールディングスはひとつ」を合言葉に、存在感のある企業グループをめざしての「次の一手」を推進してまいります。

a.お得意先との新たな関係作り

 「コミュニケーション№1」を合言葉に、グループ企業の競争力の強化に努め、お得意先とのコミュニケーションレベルを高めて、求められる新たな機能やサービスの開発・提案をもって、新しい時代にふさわしい関係作りに取り組んでまいります。

b.地域包括ケアシステムへの対応

 当社グループは、「地域包括ケア」構築へと進む流れにあって、医薬品卸売事業と医療機器卸売事業、薬局事業、介護事業、ICT事業などヘルスケア全体を網羅する事業を営む企業群で構成されております。この総合ヘルスケア企業グループとして、事業相互間の連携による利便性の高い機能の開発と柔軟なサービス体制の構築をもって、お得意先や患者様の多様なヘルスケアに関するニーズの変化にお応えしてまいります。

c.ソリューション営業の推進

 お得意先の経営改善の一助となる提案を含む医薬品・医療材料の物品管理業務などをはじめ、経営課題解決へ向けた様々なサービスをご提供してまいります。

d.IT戦略

 お得意先の情報化推進のためのIT基盤開発や諸システムのご提案などを推進しております。またグループ内部の効率性と生産性向上のために、基幹システム統合や情報システム整備も積極的に行ってまいります。

e.人材育成

 グループ各社の事業の相互理解を深め、総合ヘルスケア企業グループにふさわしい人材育成のためにグループ間の人事交流を積極的に行っています。当社の事業活動のすべては、お得意先ごとのニーズにこたえる「顧客満足度の追求」からはじまります。個別のニーズに応じて社員一人ひとりが、グループ各社が持つ専門ノウハウと経営資源を最大限に活用できる人材を育成します。

f.収益の改善

 各企業における個別コストの削減に加えて、グループ間の共通業務の集約と効率化をすすめ、経費効率の改善を行います。

 

 

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になり、日本の超高齢社会がさらに進む「2025年問題」と、「団塊ジュニア世代」が65歳以上となり生産年齢人口(1564歳)が急速に減少していく「2040年問題」という2つの社会課題は、社会保険制度の維持を今後財政面からさらに厳しくさせるだけでなく、医療や介護の人材確保をも難しくすると予想されています。そのような中、2024年は医療、介護、障害福祉サービス等の報酬改定が重なるトリプル改定の年となっています。

 

 この報酬改定の意味は、足元の物価高を克服するために医療従事者の賃上げが期待されるというものです。さらに、医療関係者のマンパワーの確保や医師の働き方改革という課題も注目されています。これに関連して、より良い医療が提供されるための環境の整備の一環として医療の情報通信技術(DX)の活用が計画されております。そのため、本年以降医療機関の機能分化と連携、医療・介護の総合確保、デジタル化が同時並行して進行していくことが予想されます。

 

 これまで、ほくやく・竹山ホールディングスは「地域包括ヘルスケア企業」を掲げて事業を継続してまいりました。今後、我々を取り巻く環境は、地域に根ざす医療・介護・福祉の垣根のない連携が必要となる市場へとさらなる変貌を遂げることは疑いようもない状況です。これらに対応するとともに当社グループの事業間連携を強化し、グループが一体となって地域固有のニーズに対応できるサービスを展開していく必要があります。

 

 2024年2月に持続可能なサービス提供体制を維持・拡大し、企業価値のさらなる向上を目指すサステナビリティ経営を推進すべく「サステナビリティ委員会」を設置しました。その活動として、中長期的な当社の経営戦略および社会課題、取引先をはじめとしたステークホルダーの置かれた環境を踏まえてリスクと機会の分析を行い、それらをもとに当社グループの戦略・方針に影響を与える可能性がある重要課題(マテリアリティ)を特定しました。

 

 様々な変化に対し当社グループがいかに迅速に対応し、事業の継続性を高める諸政策を遂行できるかが当社グループが対処すべき課題となります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的と判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループを取り巻く環境は、人口動態や社会保障制度などさまざまな変化が続く中、地域に根ざす医療・介護・福祉の垣根のない連携がさらに必要となる市場へと変貌しております。医療機関の機能分化と連携、医療・介護の総合確保、デジタル化が同時並行で進行する中、グループ各社が専門性を強化することに加え、これまで以上にグループが一体となって地域固有のニーズに対応するサービスの展開が必要となります。

 当社は「地域包括ヘルスケア企業」というビジョンを掲げ事業を推進しており、このたび、さらに「ほくたけのサステナビリティ方針」として「事業間連携により、地域の実状に沿った社会保障基盤の構築にむけて付加価値を創造し『健やかな地域社会』の実現をめざします」という方針を打ち出しました。当社グループは本方針においてサステナビリティへの取組を重要な経営課題と位置付け、未来に向けて持続可能な経営を行います。

 

 当社は2024年1月に取締役会出席者が参加する懇話会において当社グループのサステナビリティに関する取組方針について討議いたしました。この結果を受け、同年2月、持続可能なサービス提供体制を維持・拡大し、企業価値のさらなる向上を目指すサステナビリティ経営を推進すべく、「サステナビリティ委員会」を設置しました。

 サステナビリティ委員会は、代表取締役社長 眞鍋雅信を委員長とし、管理統括本部長、経営統括本部長、人事部長、リスク管理部長および関係部門の代表者によって構成され、年2回程度開催することとしています。委員会は当社グループにとって最もふさわしいサステナビリティに関する基本方針および活動計画を策定、計画の進捗について評価し、必要に応じて活動を修正してまいります。また、委員会は取締役会の監督を受け、活動計画およびその進捗を経営会議に対して報告し、強固なガバナンス体制の下で運営されております。

 

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 当期は、2024年3月13日に委員長である代表取締役社長以下各部門代表の総勢16名が参加し、サステナビリティ委員会の初会合を実施いたしました。検討内容は、1.当社グループのサステナビリティの取組方針とこれまでの経緯の確認、2.委員会の今後のアクションプランの説明、3.担当カテゴリごとの「機会とリスク分析」の説明を行い、4.今後の具体的なアクションの確認と各委員の役割分担、作業期間等の確認を行いました。この会合で、第1に当社グループの機会とリスク分析、第2として重要課題(マテリアリティ)の特定、第3にサステナビリティ方針の策定を行うことを確認いたしました。さらに、6月末の有価証券報告書でのサステナビリティ情報の開示ならびに7月以降に当社ホームページにおいてサステナビリティに関するコンテンツを新設し情報開示することを確認いたしました。委員会は担当カテゴリごとの分科会に分かれて活動を継続しております。なお、委員会全体での会合は年2回程度を目処として開催してまいります。

 

 当社は、コーポレート・ガバナンス体制の主たる機関として、取締役会、経営会議および監査役会を設置しております。原則として毎月1回定例の取締役会を開催し、必要に応じて臨時取締役会を開催しております。監督体制として取締役会は、月次の営業報告に加え、法令、定款および取締役会規程等(注)に定められた事項について審議を行い、取締役相互に質疑、提案ならびに意見を交換することにより、取締役の業務執行状況を監視・監督しております。また、監査役からも、質疑および意見を述べることにより、取締役の業務執行状況を監査しております。

 経営会議は代表取締役社長、取締役9名、上席執行役員3名で構成され、常勤監査役がオブザーバーとして出席し、原則として毎月1回定例の経営会議を開催し、必要に応じて臨時経営会議を開催しております。執行体制として経営会議は、付議基準に定められた事項に加え、各本部およびグループ各社から上程された事項について審議を行い、質疑、提案ならびに意見を交換することにより経営の執行状況を確認しております。また、取締役会付議事項の事前協議も行っております。さらに、事業運営におきまして、経営会議が必要に応じグループ内から横断的に委員を招集し、時限的な事業運営委員会を設置する運営体制を採用しています。事業運営委員会には内規が定められ、事業運営における最重要課題に集中的に取組んでおります。

 監査役会は、常勤監査役1名および社外監査役2名で構成され、原則として毎月1回定例の監査役会を開催し、必要に応じて臨時監査役会を開催しております。監査役会では、会計監査人、グループ各社の監査役および当社リスク管理部と連携し、取締役会の意思決定過程および取締役の業務執行状況について監査しております。

 2023年7月にはガバナンス体制強化の一環として、「法務本部」を新設し、その下に「リスク管理部」に加えて「法務部」を新設しました。法務部では、企業法務に関する事項と当社グループ全体の規程の作成、改廃等文書管理に関する指導を強化しました。今後は、リーガルマインドの充実強化を図ってまいります。

 前述のとおり、2024年2月に持続可能なサービス提供体制を維持・拡大し、企業価値のさらなる向上を目指すサステナビリティ経営を推進すべく「サステナビリティ委員会」を設置しました。

 「(5)サステナビリティ関連のリスク及び機会」に特定されているサステナビリティ関連のリスク及び機会については、サステナビリティ委員会をはじめ経営会議および取締役会により継続的に監視・管理され統制されております。

 

 (注)戦略・経営方針として重要なこと、業務・業績・プロジェクトの進捗状況、投資・出資・M&A・重要財産処分・合併・配当に関すること、人事に関すること、戦略・報酬・雇用条件に関すること、資金調達に関すること、未来へ向けた取組や提言に関すること、全般的話題の意見交換等について審議を行なっております。

 

(2)戦略

①事業環境の状況

 2024年は医療、介護、障害福祉サービス等の報酬改定が重なるトリプル改定の年となっており、足元の物価高を克服するために医療従事者の賃上げが期待されております。さらに、医療関係者のマンパワーの確保や医師の働き方改革という課題も加わり、これらに関連して、より良い医療が提供されるための環境の整備の一環として医療の情報通信技術(DX)の活用が計画されております。今後、医療機関の機能分化と連携、医療・介護の総合確保、デジタル化が同時並行して進行していきます。

 これまで、ほくやく・竹山ホールディングスは「地域包括ヘルスケア企業」を掲げて事業を継続してまいりました。今後、我々を取り巻く環境は、地域に根ざす医療・介護・福祉の垣根のない連携が必要となる市場へとさらなる変貌を遂げることは疑いようもない状況です。これらに対応するとともに当社グループの事業間連携を強化し、グループが一体となって地域固有のニーズに対応できるサービスを展開していく必要があります。

 以上を踏まえ、当社グループの戦略・方針に影響を与える可能性がある重要課題(マテリアリティ)について次のような方法で特定作業を行いました。

 

②重要課題の特定方法

 当社グループでは、「医薬品卸売事業」・「医療機器卸売事業」・「薬局事業」・「介護事業」・「ICT事業」における各事業間の連携による、地域の実状に沿った社会保障基盤の構築を通じて付加価値を創造し、「健やかな地域社会」の実現へ貢献することを一番の使命と考えています。持続可能な社会の実現が求められる中、当社グループは事業を通じた社会課題の解決を重要なミッションと捉えた上で、自社の事業における課題の検討を行いました。そのうえで、中長期的な当社の経営戦略および社会課題、取引先をはじめとしたステークホルダーの置かれた環境を踏まえてリスクと機会の分析を行いました。

 そこから社会的貢献度と自社における重要度のより高いものを「ほくたけの重要課題(マテリアリティ)」として特定いたしました。特定プロセスおよび特定マップについては以下をご参照ください。

 

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③重要課題の内容

 上記のプロセスの結果、以下の4項目を当社グループの重要課題(マテリアリティ)として特定いたしました。

 

1) 事業間連携により、地域の実状に沿った社会保障基盤の構築に向けて付加価値を創造し「健やかな地域社会」の実現を目指す

 

2) 企業統治(ガバナンス)を強化し、事業活動の透明性を確保する

 

3) 株主利益の最大化を主眼として、将来にわたり持続可能な事業としての基盤を築く

 

4) 従業員の力を最大限に活かすべく多様性・公正性・包括性(DE&I)を推進し、職場における個々の成長が実感できる環境を整備する

 

④事業戦略(「企業集団が対処すべき課題」「経営戦略と今後の見通し」に同様の記載がございます。)

 今後、「在宅医療へのシフト」「医療と介護の連携」が北海道内のすべての地域で進むことが予想されます。各地域固有の状況を的確に分析し、最適なニーズを把握するため、2024年3月期から、当社社長はじめ道内各地域の事業会社の責任者がその地域で一堂に会して実施するエリア・サミットの体制を強化しました。当社グループでは医療機関および調剤薬局向けにサービスを行う医薬品卸売事業と、医療機関向けにサービスを行う医療機器卸売事業に加えて、薬局事業および介護事業では地域社会の一人ひとりに直接につながる事業を行なっております。そのため、「在宅医療へのシフト」や「医療と介護の連携」における地域固有のニーズをいち早くとらえることが可能となっております。過去数回のエリア・サミットで発見した地域ニーズに対応して当社グループ各社で使えるサービス紹介ツールや独自の営業活動方法について企画することができ、現在試行している状況です。

 

 一方、政府による医療DX工程表が公表されるなど、医療・介護業界におけるDXの進展もまた待ったなしで進むことが予想されます。当社グループはDXを戦略の大きな要と位置付けております。当社が取り組むDXは1.プロセスの構造改革による省力化、2.経営指標の見える化、さらに3.各地域における地域包括ケアを目指した事業連携を支援することを柱に進めております。これらの柱に共通する目的は「デジタルでつながる」ということであり、人財・モノ・組織さらには地域を「つなげる」ことで新しい価値・製品やサービスを創造してまいります。

 DXにおける当社の取組としては、既存の「基盤事業」への投資と、今後強化する革新的な「戦略事業」への投資との2つを検討しております。基盤事業においては、ICT要員の育成や当社グループ内での情報共有化、作業品質の向上や最新IT技術の導入など、主に人材開発など人財への投資を中心に行なってまいります。一方、戦略事業においては、新しい技術の応用や大規模開発案件への対応をはじめとする技術および技術を支える「能力」を獲得するために、社外も意識した人財投資を検討してまいります。

 当社グループは本年2月に、一部サーバが外部からの不正アクセスによりランサムウェア攻撃を受け、データの一部が暗号化される被害を受けました。本件を社内のICTに関する様々な面での反省と見直しの機会とし、今後情報共有など「デジタルでつながる」というDXの目標に向け大きく前進するための糧として取組を強化してまいります。

 

⑤人的資本に関する戦略

 当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、グループ全体の強みの実現、効率的な運営を目指してシステム開発と生産性向上、市場変化の対応、情報共有、役割の明確化を実践するために、従業員一人ひとりが指示待ちではなく、自ら考え求めて組織での役割を果たし新たな課題へ挑戦する組織風土作りを進めております。

 そのための実現にあたっては下記の3つの柱をテーマに推進しています。

 

・「自らの課題形成による変化への挑戦」

・「グループ交流による人材の多様性確保、教育、育成」

・「職場環境の改善」

 

 「自らの課題形成による変化への挑戦」は1on1ミーティングを軸に社員意識の確認を行い、目標の設定、実行、確認、フィードバックを通じて自ら挑戦課題を決め実践していくことでエンゲージメントの向上と組織の活性化を進めております。

 「グループ交流による多様な人材の確保、教育、育成」においては、グループ共同研修によるコア人材の育成とシナジー創出、グループ全体で大切にしている考え方の共有を図ることを目的に地域大学と連携し「ビジネススクール」を実施し、全社的な視野で、今後の新たな戦略を考え具体化させる場を作り実践的なマネジメント力の習得、向上につなげております。

 また、「職場環境の改善」として2016年からは、日本の労働安全衛生法に基づき実施しているストレスチェック制度を毎年継続して実施し、社内環境整備に努めています。

 

(3)リスク管理

 当社では、コンプライアンス基本規程を定め、コンプライアンスの遵守を経営方針とするとともに、自然災害やデータセキュリティ関連の事態などへ迅速的確に対応するためのリスク管理規程を定め、各種マニュアルの整備、訓練の実施などによりリスクへ対応するための仕組みを構築しております。

 また、当社は、事業間連携により地域の実状に沿った社会保障基盤の構築にむけて付加価値を創造し、「健やかな地域社会」の実現を目指すことをサステナビリティ方針として定めました。この方針に基づき、企業統治(ガバナンス)の強化、事業活動の透明性の確保、持続可能な事業としての基盤構築、職場環境の整備を重要テーマと考え、重点課題(マテリアリティ)と特定して事業活動に取り組んでおります。

 気候変動やサステナビリティに関連するリスクにつきましては、サステナビリティ委員会において、事業リス

クおよび機会を識別・評価し、経営会議および取締役会に報告しています。

 主な取組は、以下のとおりです。

 

①コンプライアンスの遵守

 当社グループでは、コンプライアンスの遵守はサステナビリティにおける重要事項と捉え、法令等の遵守に基づく公正な経営によって、企業倫理と調和した経営の効率化を達成し、企業価値の一層の向上を図るとともに、企業の社会的責任を果たすことを目的として「コンプライアンス基本規程」を定めております。

 この規程は、当社グループ全ての役員および従業員に適用しており、コンプライアンス経営を基本方針とした企業行動基準を制定し、法令等に対する違反行為の是正と撲滅に努めております。

 また、コンプライアンス経営を推進するための必要不可欠な要素として、

・内部統制システムの確立

・法令等に従った経営状況の適正な開示

・営業秘密、機密情報、個人情報その他一切の情報の保護管理

・公益通報者保護法の趣旨を尊重した内部通報制度の確立(なんでも相談ホットライン)

・コンプライアンス教育研修の継続実施

等をコンプライアンス基本規程に基づいて推進しております。

 

②コンプライアンス違反の防止

 当社グループでは、法令等の遵守による公正な経営の実現を目指して、法令等の違反に対する社内外からの通報を受け付け、これを早期に内部的に把握し、自浄作用をもってその是正を図るため、グループ全ての役員および従業員を対象とした「法令等違反行為の認知時における報告・通報に関する規程」を定め運用しております。

 この制度は、公益通報者保護法および労働施策総合推進法(通称「パワハラ防止法」)へ対応する「内部通報制度」および「ハラスメント相談」の窓口として運用しております。

 

③なんでも相談ホットライン

 この制度は、通報の対象事項はあらゆる法令違反や規程等、企業理念、企業倫理、苦情等と定め、通報窓口をリスク管理部に置き、通報できる者は現職社員のみならず、家族・委託事業者・退職した者も含むこととし、違反行為の早期発見に努めております。

 また、リスク管理部は、通報内容から法令等違反行為と認識したときは速やかに代表取締役社長に報告、重要な問題の可能性があるときは、直ちに取締役会および監査役に報告しております。

 さらに、公益通報者保護法が求める不利益な取り扱いを禁止するなどの通報者保護、情報管理の徹底や通報者を探索する行為を禁止するなど、違法行為の早期把握、適正な識別と評価、法令や就業規則に基づく公平・適正な対応をとり、違反行為等の未然防止・再発防止に努めております。

 

④クライシスマネジメント

 当社グループでは、経営に重大な影響を及ぼす危機の未然防止と危機が発生した際の被害の拡大防止、再発防止を図ることを目的として「リスク管理規程」を定めております。

 この規程は、当社グループ全ての役員および従業員に適用しており、気候変動に伴う自然災害のみならず、パンデミック、コンピュータ障害、個人情報の漏洩等、会社の存続に関わる重大事案を「経営危機」と定義しています。

 この規程に基づき、経営危機の発生に際しては、社長を長とする対策本部を設置して、経営危機を迅速かつ正確に識別し、事態の軽重を評価の上、緊急対応を図っております。

 また、普段からリスク管理部と関係部署が連携して、全ての役員・従業員への教育、訓練を継続的に推進しております。

 リスク管理規程に基づき、発生頻度の高い事象を対象とした

・災害対策マニュアル

・事業継続マニュアル

・新型インフルエンザ対応マニュアル

・システム障害等発生時の対応マニュアル

を作成し、毎年改定した上で全役員・従業員へ周知徹底を図っております。

 

⑤自然災害への備え

 当社グループは、毎年、事業継続マニュアル等を更新するとともに、グループ各社の拠点ごとに年1回以上の災害訓練を実施し、結果を集約の上で経営会議に報告しております。また、災害訓練と並行して、自家発電装置、防災用通信機材、防災関連施設、防災備品の整備充実を推進しております。

 当社グループでは、生命関連商品・サービスを取り扱う事業の性格上、特に大規模災害の発生時には行政機関が行う災害応急対策への速やかな連携が要求されます。当社グループの保有する自動車の多くを道路交通法第39条に規定する「緊急通行車両等」として、北海道公安委員会(北海道警察)へ事前の届出を行っており、大規模災害時に災害対策基本法等に基づく交通規制が行われた場合にも被災地や避難地域における医薬品・医療機器の需要に対して迅速かつ持続的に対応する体制を構築しております。

 

⑥パンデミックへの備え

 当社グループは、新型インフルエンザ等対策特別措置法第4条に基づく事業者の責務を果たすため、パンデミック等の発生に際しても事業を継続的に実施するための備えに努めております。

 当社グループは、医薬品・医療機器の迅速・的確な供給や介護その他のサービスの提供など総合ヘルスケアグループ企業として事業継続の社会的責任を果たすための計画の基準として、未知の感染症を対象とする「新型インフルエンザ対応マニュアル」を策定し、グループ全社に周知しています。この度の新型コロナウイルス感染拡大に際しても対応の基準として運用したところであります。

 当社グループでは、パンデミック対策の基本理念は、会社の財産である従業員(家族を含む)の健康と命を守り、社会機能の維持を担う医療関連企業としての社会的使命を果たすこととして、事前の備えから感染拡大時までの措置を明確に定め、対策の基本について常に見直しを行っています。

 

⑦プライバシー保護リスクへの備え

 災害、故意、過失、原因不明その他に関わらず、全てのグループ会社を対象として、コンピュータ関連の障害、サイバー犯罪および情報漏洩事案に迅速的確に対処するため、「システム障害等発生時の対応マニュアル」を策定し、教育・訓練を行っております。

 特に個人情報漏えい等への対応については、法令、システム障害等発生時の対応マニュアルおよび個人情報関連規程との整合性を持たせるため、法改正その他の情勢変化に応じ見直しを行っております。本年2月のランサムウェア被害の発生時には、このマニュアル等の備えにより、迅速的確に初動対応を実施しております。

 

(4)サステナビリティに関する指標及び目標

 「(1)ガバナンス」でも記載のとおり、「地域包括ヘルスケア企業」というビジョンを掲げ事業を推進しており、「事業間連携により、地域の実状に沿った社会保障基盤の構築にむけて付加価値を創造し『健やかな地域社会』の実現をめざします」というサステナビリティ方針の下、事業活動を推進しております。

 本方針において当社グループは、サステナビリティへの取組を重要な経営課題と位置付け、未来に向けて持続可能な経営を行うこととしています。そのため、気候変動やサステナビリティに関連するリスクにつきましては、サステナビリティ委員会において、事業リスクおよび機会を識別・評価し、経営会議および取締役会に報告していきます。

 

 また、当社グループではROE(自己資本利益率)、PBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)、配当性向、DOE(株主資本配当率)、およびキャッシュ・フロー等の指標を重要な経営課題と認識しております。特に配当性向を意識した安定配当を目指しておりますが、そのために十分な手元流動性資金を確保したうえで、積極的な設備投資を行い、資本効率の向上を図ることを基本方針としております。

 

 また、当社グループの4つの事業課題の4)に該当する「従業員の力を最大限に活かすべく多様性・公正性・包括性(DE&I)を推進し、職場における個々の成長が実感できる環境を整備する。」を目指し、併せて、女性活躍推進法の行動計画で掲げている「従業員の能力が十分に発揮できる環境を整備することにより、すべての従業員が働きがいをもっていきいきと働ける企業となること」を目指し、政府が掲げている「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合を30%程度」、「男性育休比率を2025年までに30%程度」という目標を踏まえ、当社グループ内の環境整備をはじめとした取組を行っていきます。

 

 また、当社グループにおける上記「(2)戦略」において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針に基づく、多様性に関する指標は以下のとおりとなります。

セグメントの名称

男女間賃金差異 (注)4

(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)

女性管理職比率

(注)4

男性育児休業取得率

(注)5

正社員

非正規社員

すべての

労働者

その他事業

(株)ほくやく・竹山ホールディングス

82.8%

42.9%

72.5%

37.5%

100.0%

医薬品卸売事業

(株)ほくやく

76.4%

52.6%

52.8%

16.0%

58.3%

医療機器卸売

事業

(株)竹山

72.5%

58.6%

57.0%

4.7%

0.0%

(株)ノバメディカル

92.5%

16.4%

72.2%

50.0%

(注)2  -

薬局事業

(株)そえる

(注)3 63.3%

51.0%

61.3%

40.0%

75.0%

介護事業

(株)マルベリー

69.8%

66.5%

54.8%

35.1%

25.0%

(株)モルス

88.9%

77.5%

82.0%

50.0%

0.0%

ICT事業

(株)アドウイック

90.3%

35.9%

86.3%

16.7%

(注)2  -

(注)1.当社グループにおいて、賃金体系および制度上の男女差はありません。

2.男性の育児休業取得の対象となる従業員はおりません。

3.薬剤師に関しては、85.6%と男女間の賃金差異は小さくなります。

4.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

5.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

 

(5)サステナビリティ関連のリスク及び機会

①リスクと機会の特定のプロセス

 持続可能な社会の実現が求められる中、当社グループは事業を通じた社会課題の解決を重要なミッションと捉えた上で、自社の事業における課題の検討を行いました。そのうえで、サステナビリティ委員会を中心に、中長期的な当社の経営戦略および社会課題、取引先をはじめとしたステークホルダーの置かれた環境を踏まえてリスクと機会の分析を行いました。

 当社グループのステークホルダーが抽出したリスクと機会を、当社グループの「事業」に親和性のある3つの分野(「環境・資源」、「地域貢献」、および「社会課題」)とそれを支える当社グループの「基盤」(「人権・人財」、「戦略・ガバナンス」)となる2分野の合計5分野に分類し、分野ごとにおける当社グループ事業への影響度を考慮して優先順位を決定いたしました。当社グループの特定したリスクと機会は以下(表1)のとおりです。ここに特定されているサステナビリティ関連のリスク及び機会については、サステナビリティ委員会をはじめ経営会議および取締役会により継続的に監視・管理され統制されております。

 

(表1)

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②リスクと機会に対する取組

 5分類におけるリスクと機会について、短期、中期および長期にわたり当社グループに影響を与えることを鑑み、以下(表2)に示す取組を継続的に行ってまいります。

 

(表2)

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3【事業等のリスク】

当社および当社グループでは、現時点で考えられるリスクとその発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対処に努めております。当社グループを取り巻く様々なリスクの要因の分析と対応に関しましては、経営会議において、事業に対する検討ならびに必要な意思決定とその推進に取り組んでおります。

なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を確認した上で、発生の回避および発生した場合の対処に努めております。

また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)国の医療費抑制策の影響について

 当社の主力商品である医療用医薬品ならびに医療機器の販売においては、引き続き国の医療費抑制策や税と社会保障の一体改革により大きな影響を受けております。これらによる薬価基準や償還価格の引き下げ等は、当社の売上や利益を左右する大きな要因になっております。

 このような事業環境において当社では、市場の変化に耐え得る強靭な財務体質の構築が不可欠であるとの認識のもと、従来から財務体質の強化を図ってまいりました。今後もキャッシュ・フローを重視した経営を進め、全国トップレベルの経営効率を目指してまいります。

(2)債権管理について

当社の事業では、医療機関をはじめとしたお得意先に対し、多額の売上債権を持っております。そのお得意先においては、近年の医療費抑制政策等に伴う財務状況の悪化が懸念される先もあり、当社の債権管理にも悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社は、取引の信用リスクの最小化を目的に「与信管理システム」による個別売上債権の管理を強化しております。また、売上債権の保全を目的として、一部のお得意先から保証・担保を受け入れ、回収不能時に発生する損失の見積額については、個別状況に応じて貸倒引当金を計上しております。

当社では、今後、債権管理を一層強化していく方針でありますが、お得意先の財務状況等の悪化により、売上債権回収不能が発生した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

(3)物流機能について

 当社では、お得意先に対する「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)をはじめとする法令に準拠した安定的かつ安全な物流機能が不可欠であるとの認識にもとづき物流管理を行っております。特に、当社内においては、インシデント(物流に関わる事故)や遅配・誤配が発生した場合には、当社に対するお得意先の信頼を損なう事態にもなりかねないとの認識をしております。このため、インシデントを毎月、物流安全委員会に報告して原因から経過までの問題を認識し、再発防止を社内で共有する管理体制を取っております。

 また、当社では自然災害を含めた有事に対して、地域の医療緊急体制への対応ならびにお得意先への医薬品の安定供給機能を維持することを目的とした「事業継続計画」をもって有事に備える体制を確立しております。

 当社は、今後とも、お得意先をはじめ地域の自治体等との連携に向けた物流機能の万全を期して行く方針でありますが、予測が出来ない事故等の発生は、当社の事業の業績に影響を与える可能性があります。

(4)カスタマーセンターの運用ならびに情報システムについて

 当社グループの主力事業である医療用医薬品事業では、業務の効率化と標準化を目的として、医療機関等のお得意先からの電話による受注業務ならびに仕入先への発注業務について「カスタマーセンター」での一元管理を推進しております。この「カスタマーセンター」の業務は情報システムに大きく依存しております。

 当社の情報システムは、当社事業運営のインフラ(基盤)として、全ての業務の最適化と競争力強化を目的に構築しており、上記の受・発注業務のほか、物流業務、経理業務等についても活用しております。このため、予測不可能な災害や通信網提供業者による障害の発生等の事態が生じた場合には、一時的にも通常の業務が出来なくなる可能性があることも認識しております。

 当社では、その対策として、「カスタマーセンター」独自の通信網の二重化ならびに受注情報データのバックアップ体制を取っております。

(5)法律の規制について

当社の中心的な取扱商品は医薬品等であることから、日常の業務については「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)等の規制を受け、麻薬・向精神薬・劇薬や高度医療機器などについては厳重な管理を求められており、万一、紛失等の事故が起きた場合には社会的にも影響が出る可能性があります。そのため、このような医薬品等を保管する場所には、これらの法律に精通した管理薬剤師を常時配置し、厳格な対応を行っております。子会社の㈱ほくやくに薬事管理室を設置し、管理マニュアルに基づいた医薬品の管理体制を徹底するとともに、チェック体制におきましても、管理部門やリスク管理部による定期的な監督・指導を実施しており、その結果は物流安全委員会に報告され具体的な対策を講じております。また、社内教育として、全社員を対象とした薬事研修を実施するなど、全社を挙げて管理体制の充実を図っております。

 

(6)個人情報の管理について

当社が関わる事業においては、多くの患者様やご利用者様からの重要な個人データを取り扱っております。医療従事者をはじめ患者様やご利用者様に関する個人データは、その価値および高秘密性から、その取り扱いに不備があった場合、一般的な個人データの漏洩の場合に比べ、より重い責任を生ずる可能性があり、全社を挙げて安全管理に努めております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概況

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、社会経済活動の動きが活発になり緩やかに回復しつつあります。一方で、地政学リスクや円安、さらに物価や労務費の上昇といった影響もあり、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 このような事業環境の中、2024年2月に当社グループの一部サーバが外部からの不正アクセスによりランサムウェア攻撃を受け、データの一部が暗号化される被害を受けましたが、現在は復旧し業務に支障はありません。

 本件では、発覚後速やかに内閣府個人情報保護委員会への報告ならびに北海道警察への被害申告および相談を行うとともに、二次被害の防止対策、復旧作業や分析調査等の実施、また外部専門機関の助言のもと、被害状況、原因等の調査を進めてまいりました。調査の結果、被害の概要および原因が判明し、暗号化の対象となったデータの漏洩等の痕跡は確認されておらず、これまで二次被害の情報がないことから、当社は、不正アクセス被害において、個人情報等のデータの漏洩等はなかったものと判断いたしました。詳しくは、2024年5月31日発表の当社ニュースリリースをご確認ください。

 当社グループにおいては、再発防止策として、より強固なセキュリティ対策ソフトの導入をはじめ、外部専門機関の意見も踏まえ、社内のサイバーセキュリティ対策委員会による最新の対策を戦略的に実行してまいります。

 また、当社社長はじめ道内各地域の事業会社の責任者がその地域で一堂に会して実施する「エリア・サミット」では、発見した地域ニーズに対応して、当社グループ各社で使えるサービス紹介ツールや独自の営業活動方法について企画・試行しました。

 以上の結果、当連結会計年度における売上高は2,753億64百万円(前年同期比4.9%増)、営業利益は28億27百万円(同11.7%減)、経常利益は35億33百万円(同9.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、前年度は投資有価証券売却益が4億8百万円あった一方、当期は投資有価証券評価損として1億34百万円発生した影響などにより21億75百万円(同20.3%減)と大幅減益となりました。

 

 セグメント別の状況は、次のとおりであります。

 

(医薬品卸売事業)

 医薬品卸売事業におきましては、2023年4月に薬価改定が実施されたことにより厳しい市場環境が続いています。また、長期収載品の売上減少に加え、後発医薬品における供給面での混乱が未だに継続している状況です。このような厳しい環境ではありますが、新型コロナ治療薬の売上が増加したことと、抗がん剤など新薬の販売にも積極的に取り組んだ結果、売上全体では前年を上回る結果となりました。また、利益では、品目ごとのきめ細かい価格管理に取り組みましたが、仕入原価の上昇および新型コロナワクチン物流受託料の減少により減益となりました。

 その結果、売上高は1,994億95百万円(前年同期比6.6%増)、営業利益は13億99百万円(同8.9%減)となりました。

 

(医療機器卸売事業)

 医療機器卸売事業におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響は収まり、主要なお得意先における手術や検査などの件数が回復傾向となったため医療材料の売上は前年度を上回りました。備品においては前年度までの新型コロナウイルス感染症対策予算等の減少による影響がありましたが、売上全体では増収、利益につきましては2023年4月の診療報酬改定に伴うお得意先との医療材料の価格交渉などの影響もあり、減益となりました。

 その結果、売上高は665億37百万円(前年同期比0.2%増)、営業利益は13億10百万円(同16.6%減)となりました。

 

(薬局事業)

 薬局事業におきましては、2023年5月から新型コロナウイルス感染症の位置づけが「2類」相当から「5類」へ変わった影響もあり、処方箋枚数は前年対比で1.2%増加しております。売上は薬価改定の影響による薬剤料の減少はあるもののほぼ計画通りに推移しました。利益につきましては、4社統合の効果もあり大幅な改善となりました。

 その結果、売上高は132億89百万円(前年同期比1.4%減)、営業利益は1億20百万円(前年同期は0百万円の営業利益)となりました。

 

(介護事業)

 介護事業におきましては、福祉用具のレンタル・販売および住宅改修と介護ロボットの普及推進における営業員の増員・育成の強化を図りました。また、福祉用具サービス計画の作成提案から納品後のモニタリングの徹底まで、一貫した顧客重視の方針により、売上は安定的に推移しましたが、サービス付き高齢者向け住宅の新棟の入居の遅れに加え、例年実施されている介護ロボット導入支援事業の納入が、一部次年度になったことなどもあり減益となりました。

 その結果、売上高は42億92百万円(前年同期比5.9%増)、営業利益は3億26百万円(同2.9%減)となりました。

 

(ICT事業)

 ICT事業におきましては、一般企業や当社グループ各社からのICT投資案件を堅調に受注し、売上は前年度とほぼ同じ水準を維持しました。しかし、利益面では、当社グループのシステムを開発するための外注費や、当社グループへのランサムウェア攻撃による被害復旧作業などで生産性が低下し、前年度より減少しました。

 その結果、売上高は16億円(前年同期比1.4%増)、営業利益は39百万円(同32.9%減)となりました。

 

(その他事業)

 その他事業(子会社の経営指導・保険代理店・SPD・新規開業支援等)におきましては、売上高は18億4百万円(前年同期比14.4%減)、営業利益は3億84百万円(同46.5%減)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は1,041億14百万円となり、前連結会計年度末に比べ58億8百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が27億90百万円、受取手形及び売掛金が24億19百万円、および商品及び製品が4億35百万円増加したことによるものであります。固定資産は431億86百万円となり、前連結会計年度末に比べ35億54百万円増加いたしました。これは主に土地が17億12百万円、投資有価証券が23億82百万円増加した一方、建物及び構築物が5億2百万円減少したことによるものであります。

 この結果、総資産は、1,473億円となり、前連結会計年度末に比べ93億63百万円増加いたしました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は831億91百万円となり、前連結会計年度末に比べ56億7百万円増加いたしました。これは主に支払手形及び買掛金が51億円、未払法人税等が1億83百万円増加したことによるものであります。固定負債は34億24百万円となり、前連結会計年度末に比べ5億14百万円増加いたしました。これは主に繰延税金負債が7億27百万円増加した一方、退職給付に係る負債が2億56百万円減少したことによるものであります。

 この結果、負債合計は、866億16百万円となり、前連結会計年度末に比べ61億21百万円増加いたしました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は606億84百万円となり、前連結会計年度末に比べ32億41百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が16億55百万円、その他有価証券評価差額金が17億17百万円、および退職給付に係る調整累計額が1億56百万円増加した一方、自己株式の取得により3億20百万円減少したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は41.2%(前連結会計年度末は41.6%)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ27億90百万円増加し、208億13百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は57億27百万円(前年同期は8億28百万円の資金の支出)となりました。これは、資金の増加要素として税金等調整前当期純利益35億48百万円(前年同期比16.1%減)、減価償却費10億63百万円(同1.9%減)、仕入債務の増加50億83百万円(前年同期は4億37百万円の減少)、未払消費税等の増加2億51百万円(前年同期は2億19百万円の減少)などがありましたが、減少要素として売上債権の増加23億38百万円(前年同期比7.5%増)、棚卸資産の増加4億45百万円(同68.4%減)、法人税等の支払額10億53百万円(同20.1%減)、投資有価証券売却損益1億38百万円(同64.0%減)、持分法による投資利益1億23百万円(同8.2%増)などによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は20億39百万円(前年同期比45.2%増)となりました。これは主に、投資有価証券の売却3億14百万円(同48.4%減)、補助金の受取額99百万円(前年同期は実績なし)の資金の獲得があった一方、有形固定資産の取得22億53百万円(前年同期比32.5%増)、無形固定資産の取得1億25百万円(同50.9%減)、投資有価証券の取得95百万円(同21.2%増)の支出があったことなどによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は8億98百万円(前年同期比7.5%増)となりました。これは主に自己株式の取得3億20百万円(同16.6%減)、配当金の支払い4億88百万円(同28.9%増)、リース債務の返済87百万円(同23.8%増)があったことによるものです。

 

④ 仕入及び販売の実績

a.商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

医薬品卸売事業(百万円)

189,549

106.9

医療機器卸売事業(百万円)

60,498

100.8

薬局事業(百万円)

706

72.7

介護事業(百万円)

683

115.0

ICT事業(百万円)

903

114.6

その他事業(百万円)

合計(百万円)

252,340

105.3

 (注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

b.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

医薬品卸売事業(百万円)

191,141

107.0

医療機器卸売事業(百万円)

66,009

100.1

薬局事業(百万円)

13,276

98.6

介護事業(百万円)

4,284

105.8

ICT事業(百万円)

595

122.0

その他事業(百万円)

57

96.1

合計(百万円)

275,364

104.9

 (注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

「(1)経営成績等の状況の概況」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 a.キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 b.財務政策

 当社グループは、これまでキャッシュ・フロー重視の経営を行ってきており、運転資金および設備資金につきましては、基本的には手元流動資金により賄うことを基本方針としております。この方針は今後も継続することとしておりますが、子会社個々の資金ポジションや拠点設備の狭窄化・老朽化に伴う設備投資など新たな投資計画の集中化も予想され、一時的に運転資金が不足することも考えられます。そうした場合には、当座貸越など、金融機関からの一時的な借入も合わせて検討していく予定であります。

 c.資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等によるものであります。また、株主還元については、財務の健全性等に留意しつつ、会社業績と配当政策に基づき実施してまいります。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、主力事業である医薬品卸売事業、医療機器卸売事業、薬局事業の経営における、国の医療費抑制策や診療報酬改定と薬価や償還価格の引き下げなどは、当社の売上や利益を左右する大きな要因となっております。また、国より薬価制度の抜本改革に向けた基本方針が示され薬価の毎年調査・改定と国主導で医療用医薬品の流通改善に継続した取り組みが必要となっております。さらに「医薬品の供給と品質管理に関する実践規範(JGSP)」改定に伴い物流品質の保証をする監視・監査の機関の設置や医薬品販売情報提供活動ガイドライン施行に伴って医薬品販売情報を監視・監査することで適正に推進する必要があります。

⑤ 経営戦略の現状と見通し

 当社グループを取り巻く環境は、地域に根ざす医療・介護・福祉の垣根のない連携がさらに必要となる市場へと変貌していきます。医療機関の機能分化と連携、医療・介護の総合確保、デジタル化が同時並行で進行する中、グループ各社がそれぞれの専門性を強化することに加え、これまで以上にグループが一体となってそれぞれの地域固有のニーズに対応するサービス展開が必要となります。

 

 今後、「在宅医療へのシフト」「医療と介護の連携」が北海道内のすべての地域で進んでまいります。各地域固有の状況を的確に分析し、最適なニーズを把握するため、前期からエリア・サミットの体制を強化しました。当社グループでは医療機関および調剤薬局向けにサービスを行う医薬品卸売事業と、医療機関向けにサービスを行う医療機器卸売事業に加えて、薬局事業および介護事業では地域社会の一人ひとりに直接につながる事業を行なっております。そのため、「在宅医療へのシフト」や「医療と介護の連携」における地域固有のニーズをいち早くとらえることが可能となっております。過去数回のエリア・サミットで発見した地域ニーズに対応して当社グループ各社で使えるサービス紹介ツールや独自の営業活動方法について企画することができ、現在試行している状況です。

 

 一方、政府による医療DX工程表が公表されるなど、医療・介護業界におけるDXの進展もまた待ったなしで進むことが予想されます。当社グループはDXを戦略の大きな要と位置付けております。当社が取り組むDXは①プロセスの構造改革による省力化、②経営指標の見える化、さらに③各地域における地域包括ケアを目指した事業連携を支援することを柱に進めております。これらの柱に共通する目的は「デジタルでつながる」ということであり、人財・モノ・組織さらには地域を「つなげる」ことで新しい価値・製品やサービスを創造してまいります。

 DXにおける当社の取組としては、既存の「基盤事業」への投資と、今後強化する革新的な「戦略事業」への投資との2つを検討しております。基盤事業においては、ICT要員の育成や当社グループ内での情報共有化、作業品質の向上や最新IT技術の導入など、主に人材開発など人財への投資を中心に行なってまいります。一方戦略事業においては、新しい技術の応用や大規模開発案件への対応をはじめとする技術および技術を支える“能力”を獲得するために、社外を意識した人財投資を検討してまいります。

 当社グループは本年2月に、一部サーバが外部からの不正アクセスによりランサムウェア攻撃を受け、データの一部が暗号化される被害を受けました。本件は、社内のICTに関する様々な面での反省と見直しの機会になりました。今後情報共有など、「デジタルでつながる」というDXの目標に大きく前進する機会といたしたく考えております。

 

 今後の戦略および方針として、医療機関の分化と連携や地域包括ケアシステムの推進に対応して、当社グループはこれまで以上に医療・介護業界に貢献することが可能であると信じております。①医薬品卸売事業では在宅医療を含む地域医療を支える選ばれた卸となるために、物流体制への投資と整備を図り、コストの最適化の対応を推進し、医療環境の変化を支えるインフラ機能とその継続性を高めてまいります。②医療機器卸売事業では、医療機関の新しい変化に対応するとともに、医療機器メーカーの適正な商材物流管理のニーズを支援できる流通の革新に挑むことで北海道内でのシェアを高めてまいりたいと考えております。さらに、③薬局事業や介護事業というBtoCの事業は、地域社会の一人ひとりに直接つながることができるという当社グループの1つの強みでありますため、2つの事業を推進するブランドの促進、人材育成、組織力の強化などに取り組んでまいります。④ICT事業では前述のDXを推進し「デジタルでつながる」を目指してまいります。

 

 当社グループは2024年度から始まる第6次中期経営計画の終了する2026年度には、ほくやく・竹山ホールディングスが設立して20周年目を迎えることになります。医療・介護業界のインフラを支える企業グループとして、地域医療・介護に貢献できる事業の継続性をさらに高める課題に取り組んでまいる所存でございます。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。